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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】端子金具、及び、コネクタ構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/24 20060101AFI20231219BHJP
   H01R 13/193 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01R13/24
H01R13/193
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019201426
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021077477
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴斗
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-504676(JP,A)
【文献】特開2013-222618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/24
H01R 13/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側端子が挿入される筒状部と、前記筒状部の筒内に設けられる接点部と、を備える端子金具であって、
前記接点部は、
前記筒状部に挿入された前記相手側端子を前記筒状部の筒外に押し返す向きに付勢するように弾性変形可能な板状の形状を有し、且つ、前記筒状部の前記筒外に露出しないように配置され、
前記筒状部の内壁面から前記筒内に向けて突出する突起部を、更に備え、
前記接点部は、
固定端と自由端とを有するとともに前記固定端と前記自由端との間が前記押し返す向きに突出するように湾曲した片持ち梁状の形状を有し、
前記突起部は、
前記接点部が前記相手側端子に接触して弾性変形するとき、前記自由端に当接して前記自由端の移動を規制する、
端子金具。
【請求項2】
第1コネクタと、前記第1コネクタに嵌合可能な第2コネクタと、を備えるコネクタ構造であって、
前記第1コネクタは、
端子金具と、前記端子金具を収容するインナハウジングと、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの嵌合方向における前方及び後方に移動可能であるように前記インナハウジングを支持するアウタハウジングと、前記インナハウジングを前記前方に付勢可能な弾性部材と、を有し、
前記端子金具は、
相手側端子が挿入される筒状部と、前記筒状部の筒内に設けられる接点部と、を備え、
前記接点部は、
前記筒状部に挿入された前記相手側端子を前記筒状部の筒外に押し返す向きに付勢するように弾性変形可能な板状の形状を有し、且つ、前記筒状部の前記筒外に露出しないように配置され、
前記第2コネクタは、
前記端子金具の前記筒状部に挿入可能な先端部を有する相手側端子と、前記相手側端子を収容する相手側ハウジングと、を有し、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合されるとき、
前記インナハウジングは、
前記後方に移動して前記弾性部材による前記前方への付勢力を及ぼされた状態にて、前記アウタハウジングに支持され、
前記端子金具は、
前記接点部と前記相手側端子の前記先端部とが押圧接触された状態にて、前記相手側端子と導通される、
コネクタ構造。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタ構造において、
前記接点部は、
前記筒状部の内壁面から前記筒内に向けて突出する突起部を、更に備え、
前記接点部は、
固定端と自由端とを有するとともに前記固定端と前記自由端との間が前記押し返す向きに突出するように湾曲した片持ち梁状の形状を有し、
前記端子金具は、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合されるとき、前記接点部と前記先端部とが押圧接触するとともに、前記接点部の前記自由端が前記突起部に押圧接触する、
コネクタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具、及び、その端子金具を用いたコネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、相手側端子(例えば、オス端子)が挿入される筒状部と、その筒状部の内部に設けられた接点部と、を備えた端子金具(例えば、メス端子)が提案されている。具体的には、従来の端子金具の一つは、筒状部の筒軸方向に弾性変形可能なバネ状の接点部を、その接点部の先端が筒状部の開口端から露出した状態にて、筒状部の筒壁に組み付けた構造を有している(例えば、特許文献1を参照)。この従来の端子金具は、同様の構造を有する相手側端子と接点部の先端同士を弾性的に接触させた状態にて、相手側端子と導通されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-049083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の端子金具では、筒状部の開口端から接点部が露出している。そのため、端子金具の搬送時やハウジングへの組み付け時などにおいて、周辺の部材との接触などの理由によって接点部に大きな外力が及んだ場合、弾性域を超える変形が接点部に生じ、接点部が塑性変形してしまう可能性がある。相手側端子にも同様の塑性変形が生じる可能性がある。端子金具や相手側端子の接点部にこのような塑性変形が生じると、接点部同士が十分な弾性力を生じた状態で押圧接触せず、端子金具と相手側端子との電気的接続の信頼性が損なわれる可能性がある。よって、このような接点部の塑性変形は、出来る限り抑制されることが望ましい。
【0005】
本発明の目的の一つは、相手側端子との電気的接続の信頼性を向上可能な端子金具、及び、その端子金具を用いたコネクタ構造、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る端子金具およびコネクタ構造は、下記[1]~[3]を特徴としている。
[1]
相手側端子が挿入される筒状部と、前記筒状部の筒内に設けられる接点部と、を備える端子金具であって、
前記接点部は、
前記筒状部に挿入された前記相手側端子を前記筒状部の筒外に押し返す向きに付勢するように弾性変形可能な板状の形状を有し、且つ、前記筒状部の前記筒外に露出しないように配置され、
前記筒状部の内壁面から前記筒内に向けて突出する突起部を、更に備え、
前記接点部は、
固定端と自由端とを有するとともに前記固定端と前記自由端との間が前記押し返す向きに突出するように湾曲した片持ち梁状の形状を有し、
前記突起部は、
前記接点部が前記相手側端子に接触して弾性変形するとき、前記自由端に当接して前記自由端の移動を規制する、
端子金具であること。
[2]
第1コネクタと、前記第1コネクタに嵌合可能な第2コネクタと、を備えるコネクタ構造であって、
前記第1コネクタは、
端子金具と、前記端子金具を収容するインナハウジングと、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの嵌合方向における前方及び後方に移動可能であるように前記インナハウジングを支持するアウタハウジングと、前記インナハウジングを前記前方に付勢可能な弾性部材と、を有し、
前記端子金具は、
相手側端子が挿入される筒状部と、前記筒状部の筒内に設けられる接点部と、を備え、
前記接点部は、
前記筒状部に挿入された前記相手側端子を前記筒状部の筒外に押し返す向きに付勢するように弾性変形可能な板状の形状を有し、且つ、前記筒状部の前記筒外に露出しないように配置され、
前記第2コネクタは、
前記端子金具の前記筒状部に挿入可能な先端部を有する相手側端子と、前記相手側端子を収容する相手側ハウジングと、を有し、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合されるとき、
前記インナハウジングは、
前記後方に移動して前記弾性部材による前記前方への付勢力を及ぼされた状態にて、前記アウタハウジングに支持され、
前記端子金具は、
前記接点部と前記相手側端子の前記先端部とが押圧接触された状態にて、前記相手側端子と導通される、
コネクタ構造であること。
[3]
上記[2]に記載のコネクタ構造において、
前記接点部は、
前記筒状部の内壁面から前記筒内に向けて突出する突起部を、更に備え、
前記接点部は、
固定端と自由端とを有するとともに前記固定端と前記自由端との間が前記押し返す向きに突出するように湾曲した片持ち梁状の形状を有し、
前記端子金具は、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合されるとき、前記接点部と前記先端部とが押圧接触するとともに、前記接点部の前記自由端が前記突起部に押圧接触する、
コネクタ構造であること。
【0007】
上記[1]の構成の端子金具によれば、筒状部の筒内に設けられる弾性変形可能な接点部が、筒状部の筒外に露出しないように(換言すると、接点部の全体が筒内に格納されるように)配置される。そのため、端子金具の搬送時やハウジングへの組み付け時などにおいて、接点部に周辺部材などが意図せず接触することが抑制される。したがって、本構成の端子金具は、上述した従来の端子金具に比べ、接点部が適正な弾性力を生じ得る状態を維持でき、相手側端子との電気的接続の信頼性を向上可能である。
【0008】
更に、端子金具の接点部は、筒状部に挿入された相手側端子を筒状部の筒外に押し返す向きに付勢する板状の形状を有する。そのため、相手側端子を筒状部の筒壁に押し付ける構造を有することで相手側端子が相対的に摺動することになる接点部を用いる場合に比べ、端子金具と相手側端子との導通および解除が複数回にわたって繰り返されても、接点部の摩耗や接点部に設けられるメッキの摩耗が生じ難い。その結果、そのような摩耗で生じる摩耗粉に起因する接触抵抗の増大を抑制できる。このような観点からも、上記構成の端子金具は、相手側端子との電気的接続の信頼性を向上可能である。
【0009】
更に、上記[]の構成の端子金具によれば、接点部が片持ち梁状の形状を有し、その接点部が相手側端子と接触して弾性変形するとき、接点部の自由端が筒状部の筒内に突出する突起部に当接する。これにより、接点部の自由端の移動が規制される。その結果、接点部の過大な変形が抑制される。したがって、本構成の端子金具は、接点部が適正な弾性力を生じ得る状態を維持でき、相手側端子との電気的接続の信頼性を向上可能である。
【0010】
上記[]の構成のコネクタ構造によれば、第1コネクタと第2コネクタとが嵌合されるとき、端子金具の筒状部に相手側端子の先端部が挿入される。そして、端子金具の接点部と相手側端子の先端部とが互いに弾性的に押圧された状態にて、端子金具と相手側端子とが電気的に接続される。更に、この嵌合時、端子金具を収容する第1コネクタのインナハウジングは、弾性部材によって嵌合方向における前方に付勢された状態にて、アウタハウジングに支持される。その結果、端子金具の接点部が生じる弾性力に加え、第1コネクタに設けられた弾性部材が生じる弾性力によっても、端子金具と相手側端子とが押圧接触されることになる。よって、例えば、第1コネクタに複数の端子金具が収容される場合であっても、個々の端子金具ごとに生じる弾性力のばらつき(即ち、端子金具ごとの導通性のばらつき)が生じ難い。したがって、本構成のコネクタ構造は、コネクタ構造の全体としての電気的接続の信頼性を向上できる。
【0011】
上記[]の構成のコネクタ構造によれば、端子金具の接点部の自由端の移動(換言すると、接点部のたわみ)が筒状部に設けられた突起部によって規制された状態で、第1コネクタと第2コネクタとが嵌合される。その結果、第1コネクタに設けられた弾性部材が生じる弾性力が、端子金具の接点部のたわみによって低減(吸収)されることなく、端子金具と相手側端子との押圧接触に利用されることになる。よって、本構成のコネクタ構造は、コネクタ構造の全体としての電気的接続の信頼性を更に向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、相手側端子との電気的接続の信頼性を向上可能な端子金具、及び、その端子金具を用いたコネクタ構造を提供できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコネクタ構造の分解斜視図である。
図2図2(a)は、相手側端子を前方からみた斜視図であり、図2(b)は、相手側端子の上面図である。
図3図3(a)は、図1に示す端子金具を前方からみた斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のB-B断面図である。
図4図4は、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合前の状態を示す図1のA-A断面に相当する断面図である。
図5図5(a)は、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合途中の状態を示す図4に対応する断面図であり、図5(b)は、図5(a)に示す状態における第1コネクタ及び第2コネクタの上面図である。
図6図6(a)は、第1コネクタと第2コネクタとの完全嵌合状態を示す図4に対応する断面図であり、図6(b)は、図6(a)に示す状態における第1コネクタ及び第2コネクタの上面図であり、図6(c)は、図6(a)のC部の拡大図であり、図6(d)は、図6(a)のD部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、第1コネクタ2と、第1コネクタ2に嵌合可能な第2コネクタ3と、を備える本発明の実施形態に係るコネクタ構造1について説明する。以下、説明の便宜上、図1に示すように、「前後方向」、「幅方向」、「上下方向」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、第1コネクタ2と第2コネクタ3との嵌合方向と一致している。第1コネクタ2及び第2コネクタ3の各々について、嵌合方向の正面側を「前」とし、その反対の嵌合方向の背面側を「後」とする。
【0016】
図1に示すように、第1コネクタ2は、端子金具10と、インナハウジング20と、アウタハウジング30と、弾性部材40と、を含む。第2コネクタ3は、相手側端子60と、相手側ハウジング70と、を含む。以下、コネクタ構造1を構成する各部品の構成について順に説明する。先ず、第1コネクタ2を構成する各部品について順に説明する。
【0017】
先ず、端子金具10について説明する。端子金具10は、銅又は銅合金材料等からなる1枚の金属板に対してプレス加工及び曲げ加工等を施すことで形成される。図3に示すように、端子金具10は、前後方向に延びる形状を有し、角筒状の筒状部11と、筒状部11の後方に位置する芯線加締め部12と、芯線加締め部12の後方に位置する被覆加締め部13と、を一体に備える。筒状部11には、相手側端子60の後述する先端部61が挿入されることになる。即ち、端子金具10は、本例では、メス端子である。
【0018】
端子金具10(メス端子)に接続される電線50は、図1に示すように、芯線51と、芯線51の周囲を覆う被覆52と、により構成される。電線50の端末では、被覆52が除去されて芯線51が露出している。電線50の端末における露出した芯線51及び被覆52が、端子金具10の芯線加締め部12及び被覆加締め部13にそれぞれ加締め固定されることで、電線50が端子金具10に固定され且つ電気的に接続される。
【0019】
再び図3を参照して、筒状部11の内部には、相手側端子60の後述する接点部67(図2参照)と押圧接触することになる接点部14が配置されている。接点部14は、本例では、筒状部11を構成する上壁の内壁面の前後方向中央部に固定された固定端15から、筒状部11の内部にて、前向きに突出するようにU字状に湾曲して自由端16まで延びる片持ち梁状の板状の形状を有している。自由端16は、筒状部11を構成する下壁の内壁面における固定端15の下方に位置する部分より僅かに上方に離れて位置している。接点部14における最も前方に位置する頂部17が、相手側端子60の接点部67と押圧接触することになる。
【0020】
接点部14は、その全体が筒状部11の筒外に露出しないように配置されている。接点部14は、頂部17が後方に移動する向きに弾性変形可能となっている。即ち、接点部14は、筒状部11に前方から挿入された相手側端子60の接点部67により頂部17が後向きに押圧された際に、接点部67(即ち、相手側端子60)を前向きに押し返す弾性力(弾性復元力)を発生するようになっている。
【0021】
筒状部11の下壁における接点部14より後方の領域には、上下方向に貫通する係止孔18が形成されている(図3(b)参照)。係止孔18の前端縁は、インナハウジング20の後述するランス22に係止されることになる(図4参照)。係止孔18の前端縁からは、筒状部11の内部に向けて上方に突出する突起部19が切り起こし形成されている。
【0022】
突起部19は、(弾性変形していない)接点部14の自由端16から後方に寸法L1だけ隙間を空けた位置から上方に突出している(図3(b)参照)。よって、頂部17が後方に移動する向きに接点部14が弾性変形する際、自由端16が寸法L1だけ後方に移動すると、自由端16が突起部19と接触して、自由端16がそれ以上後方に移動不能となる。これにより、接点部14の過大な変形が抑制されるようになっている。
【0023】
次いで、インナハウジング20について説明する。樹脂製のインナハウジング20は、図1に示すように、略直方体状の形状を有する。インナハウジング20の内部には、図4に示すように、端子金具10を収容するための複数の端子収容室21が前後方向に貫通するように形成されている。本例では、3つの端子収容室21が上下2段で幅方向に並ぶように(計6つ)設けられている。端子金具10は、端子収容室21の後端開口から端子収容室21に挿入される。端子収容室21の前端開口から相手側端子60が挿入されることになる。
【0024】
各端子収容室21には、図4に示すように、端子収容室21内に下側から臨むように、上下方向に弾性変形可能な片持ち梁状のランス22が、端子収容室21の前後方向略中央位置から前方へ延びるように設けられている。端子金具10が後方側から端子収容室21の正規位置まで挿入されると、端子金具10の係止孔18の前端縁がランス22に係止されることで、ランス22は、端子金具10の後方側への抜け止め機能を発揮する。
【0025】
インナハウジング20の上面及び下面の後端縁の幅方向中央部にはそれぞれ、図4に示すように、上下方向外側に突出する係合突起23が設けられている。係合突起23は、アウタハウジング30の後述する係合アーム32(図4参照)と係合することになる。
【0026】
インナハウジング20の外周面の前後方向中央部の4角部にはそれぞれ、図1に示すように、外側に突出する前側支持部24が設けられている。前側支持部24は、弾性部材40の前端部を支持する機能を有する(図4参照。この点については後述する)。
【0027】
次いで、アウタハウジング30について説明する。樹脂製のアウタハウジング30は、図1及び図4に示すように、略矩形筒状の形状を有する。アウタハウジング30の前方領域の内部空間は、第1コネクタ2と第2コネクタ3との嵌合時に、第2コネクタ3の相手側ハウジング70が挿入される挿入空間31として機能する。
【0028】
アウタハウジング30における挿入空間31より後方側の内壁は、インナハウジング20を前後方向に移動可能に支持可能な形状を有している。その内壁の前端部(挿入空間31との境界部分)の上面及び下面の幅方向中央部にはそれぞれ、図4に示すように、インナハウジング20の係合突起23に対応して、片持ち梁状の係合アーム32が、後方へ延びるように且つ上下方向外側に弾性変形可能に設けられている。
【0029】
アウタハウジング30の内壁面の後端部近傍の4隅部にはそれぞれ、図1に示すように、インナハウジング20の前側支持部24に対応して、内側に突出する後側支持部33が設けられている。後側支持部33は、弾性部材40の後端部を支持する機能を有する(図4参照。この点については後述する)。
【0030】
アウタハウジング30の一対の側壁にはそれぞれ、図1に示すように、片持ち梁状のロックアーム34が、前方へ延びるように且つ幅方向外側に弾性変形可能に設けられている。ロックアーム34は、第1コネクタ2と第2コネクタ3との嵌合時に、第2コネクタ3の相手側ハウジング70に設けられた後述するロック突起74(図1等参照)と係合することで、第1コネクタ2と第2コネクタ3との完全嵌合状態を維持する機能を果たす。
【0031】
次いで、弾性部材40について説明する。弾性部材40は、インナハウジング20の前側支持部24とアウタハウジング30の後側支持部33との間に介挿されて、アウタハウジング30に対してインナハウジング20を前側へ付勢する機能を果たす。本例では、弾性部材40は、直線状に延びる金属製のコイルスプリングで構成されており、1つのコネクタ構造1に対して4本の弾性部材40が使用される。以上、第1コネクタ2を構成する各部品について説明した。
【0032】
次いで、第1コネクタ2の組み付けについて説明する。第1コネクタ2を組み付けるためには、4本の弾性部材40の後端部をアウタハウジング30の4つの後側支持部33にそれぞれ支持させた状態で、インナハウジング20を、アウタハウジング30の前側開口からアウタハウジング30内に挿入する。この挿入の過程において、一対の係合突起23が一対の係合アーム32の突起部に接触した段階以降、一対の係合アーム32が一対の係合突起23からの押圧によって上下方向外側に弾性変形し、その後、一対の係合突起23が一対の係合アーム32の突起部を通過したとき、一対の係合アーム32が弾性復帰する。この結果、一対の係合突起23が一対の係合アーム32の突起部と係合し(図4参照)、インナハウジング20の抜けが防止される。
【0033】
一対の係合突起23が一対の係合アーム32の突起部と係合した状態(図4参照)では、4本の弾性部材40それぞれが、対応する前側支持部24と後側支持部33とで前後方向に挟持されている。この状態において、弾性部材40は、圧縮方向に撓んでいても(付勢力を発生していても)、撓んでいなくても(付勢力を発生していなくても)よい。
【0034】
即ち、この状態にて、インナハウジング20をアウタハウジング30に対して後側に押圧すると、インナハウジング20は、弾性部材40の付勢力に対抗しながらアウタハウジング30に対して後側へ相対移動する。その押圧を解除すると、弾性部材40の付勢力により、インナハウジング20が、アウタハウジング30に対して前側へ相対移動し、一対の係合突起23が一対の係合アーム32の突起部と係合する位置(即ち、図4に示す位置。以下「初期位置」と呼ぶ)まで戻る。
【0035】
次いで、インナハウジング20の各端子収容室21に、電線50が接続された端子金具10が後方から正規位置までそれぞれ挿入される。以上により、第1コネクタ2の組み付けが完了し、図4に示す第1コネクタ2が得られる。
【0036】
次いで、第2コネクタ3を構成する各部品について順に説明する。先ず、相手側端子60について説明する。相手側端子60は、銅又は銅合金材料等からなる1枚の金属板に対してプレス加工及び曲げ加工等を施すことで形成される。図2に示すように、相手側端子60は、前後方向に延びる形状を有し、角柱状の先端部61と、先端部61の後方に位置する角柱状の中央部62と、中央部62の後方に位置する芯線加締め部63と、芯線加締め部63の後方に位置する被覆加締め部64と、を一体に備える。先端部61は、端子金具10の筒状部11に挿入されることになる。即ち、相手側端子60は、本例では、オス端子である。
【0037】
相手側端子60(オス端子)に接続される電線80は、図1に示すように、芯線81と、芯線81の周囲を覆う被覆82と、により構成される。電線80の端末では、被覆82が除去されて芯線81が露出している。電線80の端末における露出した芯線81及び被覆82が、相手側端子60の芯線加締め部63及び被覆加締め部64にそれぞれ加締め固定されることで、電線80が相手側端子60に固定され且つ電気的に接続される。
【0038】
再び図2を参照して、先端部61の前端部には、接触片65が配置されている。接触片65は、本例では、先端部61の前端面の幅方向一側端部から延出して前向きに突出するように幅方向他側にU字状に折り返され、その先端が先端部61の幅方向他側の側面に形成された係合溝66に係止されている。接触片65における最も前方に位置する接点部67が、端子金具10の頂部17と押圧接触することになる。
【0039】
中央部62の下壁には、上方向に窪んだ係止凹部68が形成されている(図2(a)を参照)。係止凹部68の前端縁は、相手側ハウジング70の後述するランス73に係止されることになる(図4参照)。
【0040】
次いで、相手側ハウジング70について説明する。樹脂製の相手側ハウジング70は、図1に示すように、略直方体状の形状を有する。相手側ハウジング70の前方領域には、前方に開口する凹形状のフード部71が形成されている。フード部71には、第1コネクタ2と第2コネクタ3との嵌合時に、第1コネクタ2のインナハウジング20が挿入されることになる。
【0041】
相手側ハウジング70のフード部71より後方側の内部には、図1及び図4に示すように、インナハウジング20の複数の端子収容室21に対応して、相手側端子60を収容するための複数の端子収容室72が前後方向に貫通するように形成されている。本例では、3つの端子収容室72が上下2段で幅方向に並ぶように(計6つ)設けられている。各端子収容室72は、フード部71の底面と連通している。相手側端子60は、端子収容室72の後端開口から端子収容室72に挿入される。
【0042】
各端子収容室72には、図4に示すように、端子収容室72内に下側から臨むように、上下方向に弾性変形可能な片持ち梁状のランス73が、端子収容室72の前後方向略中央位置から前方へ延びるように設けられている。相手側端子60が後方側から端子収容室72の正規位置まで挿入されると、相手側端子60の係止凹部68の前端縁がランス73に係止されることで、ランス73は、相手側端子60の後方側への抜け止め機能を発揮する。
【0043】
相手側ハウジング70の一対の側壁にはそれぞれ、図1に示すように、ロックアーム34に対応して、幅方向外側に突出するロック突起74が設けられている。以上、第2コネクタ3を構成する各部品について説明した。
【0044】
次いで、第2コネクタ3の組み付けについて説明する。第2コネクタ3を組み付けるためには、相手側ハウジング70の各端子収容室72に、電線80が接続された相手側端子60が後方から正規位置までそれぞれ挿入される。これにより、相手側端子60は、先端部61がフード部71の底面から前方に突出してフード部71内に位置する状態で、相手側ハウジング70に保持される。以上により、第2コネクタ3の組み付けが完了し、図4に示す第2コネクタ3が得られる。
【0045】
次いで、第1コネクタ2と第2コネクタ3とを嵌合させる際の動作について説明する。第1コネクタ2と第2コネクタ3とを嵌合させるためには、図4に示すように、第1コネクタ2と第2コネクタ3の前面同士を対向させた状態から、図5に示すように、インナハウジング20が相手側ハウジング70のフード部71に内挿され、相手側ハウジング70がアウタハウジング30の挿入空間31に内挿され、且つ、相手側端子60の先端部61が端子収容室21の前端開口を介して端子金具10の筒状部11に挿入されるように、第1コネクタ2と第2コネクタ3とを前後方向に近づけていく動作(以下、「嵌合動作」と呼ぶ)を継続する。
【0046】
嵌合動作の過程において、一対のロックアーム34が一対のロック突起74に接触すると、その段階以降、図5(b)に示すように、一対のロックアーム34が一対のロック突起74からの押圧によって幅方向外側に弾性変形するようになる。
【0047】
嵌合動作が更に進行して、相手側端子60の先端部61の接点部67が端子金具10の接点部14の頂部17に接触すると、その段階以降、接点部67が頂部17を後方へ押圧するようになる。この接点部67による頂部17への後向きの押圧力は、接点部14に付与されると共に、接点部14、端子金具10、係止孔18、ランス22、インナハウジング20、前側支持部24を介して、弾性部材40にも付与される。このため、この段階以降、接点部14が、頂部17が後方に移動する向きに弾性変形を開始すると共に、弾性部材40も、圧縮方向に弾性変形を開始する。この結果、インナハウジング20がアウタハウジング30に対して初期位置から後方へ移動開始する。
【0048】
その後、嵌合動作の進行に応じて、接点部14及び弾性部材40の弾性変形量が増大していき、接点部14の自由端16が突起部19と接触すると、その段階以降、接点部14の弾性変形量が維持された状態で、弾性部材40の弾性変形量のみが増大していく。即ち、自由端16の突起部19への押圧接触が維持された状態で、インナハウジング20の初期位置から後方への移動量が増大していく。
【0049】
そして、一対のロック突起74が一対のロックアーム34の開口の前端縁を通過すると、一対のロックアーム34が幅方向内側に弾性復帰する(図6(b)参照)。この結果、一対のロック突起74が一対のロックアーム34の開口の前端縁と係合することで、第1コネクタ2と第2コネクタ3との完全嵌合状態が得られる。
【0050】
完全嵌合状態では、端子金具10の接点部14の弾性変形により、接点部14の自由端16が突起部19に押圧接触し(図6(c)参照)、且つ、弾性部材40の弾性変形により、一対の係合突起23と一対の係合アーム32の突起部との間に隙間L2が発生している(図6(d)参照)。即ち、インナハウジング20は、初期位置から後方に移動して弾性部材40による前方への弾性力を及ぼされた状態にて、アウタハウジング30に支持され、且つ、端子金具10は、接点部14の頂部17と相手側端子60の接点部67とが押圧接触された状態にて、相手側端子60と導通されている。
【0051】
<作用・効果>
本実施形態に係る端子金具10によれば、筒状部11の筒内に設けられる弾性変形可能な接点部14が、筒状部11の筒外に露出しないように(換言すると、接点部14の全体が筒内に格納されるように)配置される。そのため、端子金具10の搬送時やインナハウジング20への組み付け時などにおいて、接点部14に周辺部材などが意図せず接触することが抑制される。したがって、本実施形態に係る端子金具10は、接点部14が適正な弾性力を生じ得る状態を維持でき、相手側端子60との電気的接続の信頼性を向上可能である。
【0052】
更に、端子金具10の接点部14は、筒状部11に挿入された相手側端子60を筒状部11の筒外に押し返す向きに付勢する板状の形状を有する。そのため、相手側端子60と摺動しながら相手側端子60を筒状部11の筒壁に押し付ける構造の接点部を用いる場合に比べ、端子金具10と相手側端子60との導通および解除が複数回にわたって繰り返されても、接点部14の摩耗や接点部14に設けられるメッキの摩耗が生じ難い。その結果、そのような摩耗で生じる摩耗粉に起因する接触抵抗の増大を抑制できる。このような観点からも、本実施形態に係る端子金具10は、相手側端子60との電気的接続の信頼性を向上可能である。
【0053】
更に、本実施形態に係る端子金具10によれば、接点部14が片持ち梁状の形状を有し、接点部14が相手側端子60と接触して弾性変形するとき、接点部14の自由端16が筒状部11の筒内に突出する突起部19に当接する。これにより、接点部14の自由端16の移動が規制される。その結果、接点部14の過大な変形が抑制される。したがって、本実施形態に係る端子金具10は、接点部14が適正な弾性力を生じ得る状態を維持でき、相手側端子60との電気的接続の信頼性を向上可能である。
【0054】
本実施形態に係るコネクタ構造1によれば、第1コネクタ2と第2コネクタ3とが嵌合されるとき(完全嵌合状態にて)、端子金具10の筒状部11に相手側端子60の先端部61が挿入される。そして、端子金具10の接点部14と相手側端子60の先端部61とが互いに弾性的に押圧された状態にて、端子金具10と相手側端子60とが電気的に接続される。更に、この嵌合時、端子金具10を収容する第1コネクタ2のインナハウジング20は、弾性部材40によって嵌合方向(前後方向)における前方に付勢された状態にて、アウタハウジング30に支持される。その結果、端子金具10の接点部14が生じる弾性力に加え、第1コネクタ2に設けられた弾性部材40が生じる弾性力によっても、端子金具10と相手側端子60とが押圧接触されることになる。よって、本実施形態のように、第1コネクタ2に複数の端子金具10が収容される場合であっても、個々の端子金具10ごとに生じる弾性力のばらつき(即ち、端子金具10ごとの導通性のばらつき)が生じ難い。したがって、本構成のコネクタ構造1は、コネクタ構造1の全体としての電気的接続の信頼性を向上できる。
【0055】
更に、本実施形態に係るコネクタ構造1によれば、端子金具10の接点部14の自由端16の移動(換言すると、接点部14のたわみ)が筒状部11に設けられた突起部19によって規制された状態で、第1コネクタ2と第2コネクタ3とが嵌合される。その結果、第1コネクタ2に設けられた弾性部材40が生じる弾性力が、端子金具10の接点部14のたわみによって低減(吸収)されることなく、端子金具10と相手側端子60との押圧接触に利用されることになる。よって、本実施形態に係るコネクタ構造1は、コネクタ構造1の全体としての電気的接続の信頼性を更に向上できる。
【0056】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0057】
上記実施形態では、第1コネクタ2と第2コネクタ3との完全嵌合状態にて、端子金具10の接点部14の自由端16が突起部19に押圧接触している(図6(c)参照)。これに対し、第1コネクタ2と第2コネクタ3との完全嵌合状態にて、端子金具10の接点部14の自由端16が突起部19に接触していなくてもよい。
【0058】
更に、上記実施形態では、接点部14の過大な変形を抑制するために接点部14の自由端16が当接する突起部19が設けられている。これに対し、接点部14の過大な変形を抑制するための突起部19が設けられていなくてもよい。
【0059】
ここで、上述した本発明に係る端子金具10及びコネクタ構造1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
相手側端子(60)が挿入される筒状部(11)と、前記筒状部(11)の筒内に設けられる接点部(14)と、を備える端子金具(10)であって、
前記接点部(14)は、
前記筒状部(11)に挿入された前記相手側端子(60)を前記筒状部(11)の筒外に押し返す向きに付勢するように弾性変形可能な板状の形状を有し、且つ、前記筒状部(11)の前記筒外に露出しないように配置される、
端子金具(10)。
[2]
上記[1]に記載の端子金具(10)であって、
前記筒状部(11)の内壁面から前記筒内に向けて突出する突起部(19)を、更に備え、
前記接点部(14)は、
固定端(15)と自由端(16)とを有するとともに前記固定端(15)と前記自由端(16)との間が前記押し返す向きに突出するように湾曲した片持ち梁状の形状を有し、
前記突起部(19)は、
前記接点部(14)が前記相手側端子(60)に接触して弾性変形するとき、前記自由端(16)に当接して前記自由端(16)の移動を規制する、
端子金具(10)。
[3]
第1コネクタ(2)と、前記第1コネクタ(2)に嵌合可能な第2コネクタ(3)と、を備えるコネクタ構造(1)であって、
前記第1コネクタ(2)は、
上記[1]又は上記[2]に記載の端子金具(10)と、前記端子金具(10)を収容するインナハウジング(20)と、前記第1コネクタ(2)と前記第2コネクタ(3)との嵌合方向における前方及び後方に移動可能であるように前記インナハウジング(20)を支持するアウタハウジング(30)と、前記インナハウジング(20)を前記前方に付勢可能な弾性部材(40)と、を有し、
前記第2コネクタ(3)は、
前記端子金具(10)の前記筒状部(11)に挿入可能な先端部(61)を有する相手側端子(60)と、前記相手側端子(60)を収容する相手側ハウジング(70)と、を有し、
前記第1コネクタ(2)と前記第2コネクタ(3)とが嵌合されるとき、
前記インナハウジング(20)は、
前記後方に移動して前記弾性部材(40)による前記前方への付勢力を及ぼされた状態にて、前記アウタハウジング(30)に支持され、
前記端子金具(10)は、
前記接点部(14)と前記相手側端子(60)の前記先端部(61)とが押圧接触された状態にて、前記相手側端子(60)と導通される、
コネクタ構造(1)。
[4]
上記[3]に記載のコネクタ構造(1)において、
前記端子金具(10)は、
前記第1コネクタ(2)と前記第2コネクタ(3)とが嵌合されるとき、前記接点部(14)と前記先端部(61)とが押圧接触するとともに、前記接点部(14)の前記自由端(16)が前記突起部(19)に押圧接触する、
コネクタ構造(1)。
【符号の説明】
【0060】
1 コネクタ構造
2 第1コネクタ
3 第2コネクタ
10 端子金具
11 筒状部
14 接点部
15 固定端
16 自由端
19 突起部
20 インナハウジング
30 アウタハウジング
40 弾性部材
60 相手側端子
61 先端部
70 相手側ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6