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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/10 20060101AFI20231219BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20231219BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01F27/10
H01F37/00 S
H01F37/00 M
H01F37/00 J
H01F37/00 T
H01F27/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019205078
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021077814
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】服部 邦章
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-118610(JP,A)
【文献】特開2017-028199(JP,A)
【文献】特開2005-286020(JP,A)
【文献】特開2011-199238(JP,A)
【文献】実開昭64-029797(JP,U)
【文献】特開2021-019074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/06
H01F 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口する冷却水路を備える設置対象物に、前記開口を塞ぐように固定され、冷却液と接触するリアクトルであって、
コアと、
前記コアに装着されるコイルと、
前記コア又は前記コイルのうち一方を樹脂で被覆する第1の樹脂部材と、
前記第1の樹脂部材に被覆された前記コア又は前記コイルと、前記第1の樹脂部材によって被覆されていない前記コア又は前記コイルとを一体に成形する第2の樹脂部材と、
を備え、
前記第1の樹脂部材又は前記第2の樹脂部材は、前記コイルが前記冷却液と接触する部分を被覆し
前記コイルの下面は、前記冷却水路に挿入され、
前記コイルは、前記第1の樹脂部材又は前記第2の樹脂部材を介して前記冷却液に接触していること、
を特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記コアの下面と、前記コアの下面と対向する前記コイルの内周面は離間して設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記コアの下面は、樹脂に被覆されず露出していること、
を特徴とする請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記リアクトルの底面に設けられた封止部を更に備え、
前記封止部は、前記リアクトルが前記設置対象物に設置された際に、前記設置対象物と当接していること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のリアクトル。
【請求項5】
前記設置対象物に前記リアクトルを固定する固定部を更に備え、
前記第2の樹脂部材は、前記第1の樹脂部材に被覆された前記コア又は前記コイル及び前記第1の樹脂部材に被覆されていない前記コア又は前記コイルとともに、前記固定部を一体に成形していること、
を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは、ハイブリッド自動車、電気自動車や燃料電池車の駆動システム等をはじめ、種々の用途で使用されている。例えば、車載用の昇圧回路に用いられるリアクトルとして、圧粉磁心から成る環状コアの周囲を樹脂によって被覆し、その外周にコイルを巻回したものが知られている。
【0003】
リアクトルは、コイルに電流が流れることにより発熱する。リアクトルの温度が高くなると、コアの磁気特性が変化して、リアクトルの電気特性が低下する虞がある。そのため、リアクトルに発生する熱は、リアクトルの外部に放出する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-037869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リアクトルの熱を外部に放出するため、放熱シートや充填材を用いる構造が知られている。例えば、放熱シートを用いる場合、リアクトルを放熱シートの上に配置することで、コイルから発生した熱をリアクトルの底面から放熱シートを介して外部に放出する。また、充填材を用いる場合には、アルミニウムなどの金属製のケースの中にコアに巻回されたコイルを収容し、ケースの隙間に充填材を充填し、固化させることで、コイルから発生した熱を充填材を介してケースに伝導させることで外部に放出している。
【0006】
リアクトルは様々な用途で使用され、設置箇所によっては振動を伴うことがある。この振動によって、放熱シートや充填材の界面が剥離する虞がある。界面剥離が生じると、リアクトルの熱を効率良く外部に放出できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、放熱性の向上を図ることができるリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリアクトルは、上面が開口する冷却水路を備える設置対象物に、前記開口を塞ぐように固定され、冷却液と接触するリアクトルであって、コアと、前記コアに装着されるコイルと、前記コア又は前記コイルのうち一方を樹脂で被覆する第1の樹脂部材と、前記第1の樹脂部材に被覆された前記コア又は前記コイルと、前記第1の樹脂部材によって被覆されていない前記コア又は前記コイルとを一体に成形する第2の樹脂部材と、を備え、前記第1の樹脂部材又は前記第2の樹脂部材は、前記コイルが前記冷却液と接触する部分を被覆し、前記コイルの下面は、前記冷却水路に挿入され、前記コイルは、前記第1の樹脂部材又は前記第2の樹脂部材を介して前記冷却液に接触していること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放熱性の向上を図ることができるリアクトルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】リアクトルが設置対象物に設置された状態を示す平面図である。
図2】設置対象物と封止部を示す模式図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4図1のB-B断面図である。
図5】他の実施形態におけるリアクトルの断面図である。
図6】他の実施形態におけるリアクトルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
(概略構成)
本実施形態のリアクトルについて図面を参照しつつ説明する。図1は、第1の実施形態に係るリアクトルの全体構成を示す平面図である。図2は、設置対象物と封止部を示す模式図である。図3図1のA-A断面図である。図4は、図1のB-B断面図である。なお、図1では、リアクトル100の底面に設けられる封止部5も示している。
【0012】
リアクトル100は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品であり、電圧の昇降圧等に使用される。本実施形態のリアクトル100は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等で使用される大容量のリアクトルである。
【0013】
リアクトル100は、図1及び2に示すように、コア1、コイル2、第1の樹脂部材3、固定部4、封止部5及び第2の樹脂部材6を備える。コア1は、磁性体から成る、例えば、圧粉磁心である。コイル2は、エナメルなどで絶縁被覆した1本の導電性部材により構成される。コイル2の内外周面は、樹脂から成る第1の樹脂部材3に被覆され、コイル2はコア1に装着される。第1の樹脂部材3に被覆されたコイル2、コア1及び固定部4は、第2の樹脂部材6によって一体に成形される。即ち、リアクトル100は、コイル2を第1の樹脂部材3で被覆させる1次モールドを行ったうえで、第1の樹脂部材3で被覆されたコイル2、コア1及び固定部4が第2の樹脂部材6で2次モールドされ一体成形された、所謂、二重モールド構造のリアクトルである。
【0014】
リアクトル100は、固定部4によって設置対象物7に固定される。設置対象物7は、例えば、車に搭載されたPCUケースなどを挙げることができる。設置対象物7には、冷却液が流れる冷却水路8が形成されている。冷却水路8は、リアクトル100が固定される平面から窪んでおり、底面と、底面の縁から立ち上がる側面と、を有し、上面が開口している。リアクトル100は、この開口からコイル2を冷却水路内に挿入し、開口を塞ぐように、冷却水路8の上に設置される。即ち、リアクトル100が冷却水路8の上に設置された際に、コイル2は、冷却液と直接接触する。封止部5は、設置対象物7と、設置対象物7と接触するリアクトル100の底面の間に配置され、冷却液が漏れだすことを防止する。
【0015】
(詳細構成)
コア1は、一対のU字型コアによって構成される。このU字型コアの端部を接合することで、環状形状となっている。なお、本実施形態では、コア1は一対のU字型コアにより構成されているが、これに限定されず、例えば、E字型コア、I字型コアなど種々の形状のコアを用いることができる。
【0016】
U字型コアの端部は、第1の樹脂部材3によって内外周面を被覆されたコイル2の内部に挿入される。即ち、コア1の外周とコイル2の内周の間には第1の樹脂部材3が介在し、コア1の外周には第1の樹脂部材3が設けられている。もっとも、コア1の下面11は、図3及び4に示すように、第1の樹脂部材3に覆われていない。つまり、コア1の下面11は露出している。コア1の下面11とは、リアクトル100の設置面と平行であり、後述する冷却液と接触するコイル2の内周面と対向する面である。
【0017】
コイル2は、2つ設けられている。この2つのコイル2は、巻軸方向が平行になるように隙間を介して横並びに配置される。コイル2の下面22は、リアクトル100を設置対象物7に設置した際に、冷却水路8内に挿入される。即ち、コイル2の一部は、冷却水路8内を流れる冷却液に第1の樹脂部材3を介して直接接する。コイル2の下面22とは、冷却水路8の底面と対向するコイル2の外周面である。図3に示すように、冷却水路8内に挿入されたコイル2は、巻軸方向が冷却液の流れ方向と平行になるように挿入されている。なお、図3に示す矢印の方向が、冷却液の流れ方向を示す。
【0018】
コイル2の内外周面は、1次モールドにより第1の樹脂部材3によって被覆されている。もっとも、コイル2は、第1の樹脂部材3によって被覆されていない露出面21を有する。露出面21は、コイル2の上面に設けられている。即ち、露出面21は、コイル2の下面22の反対側のコイル2の外周面である。
【0019】
第1の樹脂部材3で被覆されたコイル2の内部にコア1を挿入することで、コイル2はコア1に装着される。コイル2の内周面とコア1の外周面は、第1の樹脂部材3を介して密接に配置される。第1の樹脂部材3によってコイル2とコア1の絶縁が図られる。
【0020】
もっとも、図3及び図4に示すように、コア1の下面11とこの下面11と対向するコイル2の内周面の底面23は、離間している。即ち、コア1の下面11とコイル2の底面23との間に隙間がある。このように、下面11と底面23の間に隙間を設けることで、当該隙間に冷却液を流入させることができる。
【0021】
第1の樹脂部材3を構成する樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等が挙げられる。特に、熱伝導性の高い樹脂を用いることが望ましい。熱伝導性の高い樹脂でコイル2を被覆することで、より効率良くコイル2の熱を冷却液に伝達することができる。
【0022】
第1の樹脂部材3は、露出面21を除いて、コイル2の内外周面を被覆する。なお、本実施形態では、第1の樹脂部材3は、露出面21を除いてコイル2の内外周面を被覆しているが、少なくとも、コイル2が冷却液と接触する箇所のみ第1の樹脂部材3で被覆すれば足りる。この場合、第2の樹脂部材6をコア1の外周とコイル2の内周との間に介在させることで、コア1とコイル2の絶縁を図ることができる。
【0023】
固定部4は、リアクトル100を設置対象物7に固定する。固定部4には、ネジ挿入孔が設けられ、このネジ挿入穴に金属製の円筒状のカラーが埋め込まれている。本実施形態では、固定部4は4つ設けられており、リアクトル100の四隅にそれぞれ設けられている。設置対象物7にも、固定部4と同数のネジ挿入孔71が形成されている。このネジ挿入孔71と固定部4のネジ挿入孔を重ね合わせ、ここにネジが挿入され、ネジ締結されることでリアクトル100が設置対象物7に固定される。
【0024】
封止部5は、リアクトル100の底面に設けられる。リアクトル100の底面とは、リアクトル100が設置対象物7に設置された際に、設置対象物7と接触する端面である。封止部5は、図2に示すように、冷却水路8の開口の形状に倣っている。もっとも、封止部5の形状は、開口よりも若干大きく、封止部5がこの開口を囲うようにリアクトル100は設置対象物7に固定される。
【0025】
封止部5は、リアクトル100が設置対象物7に設置された際に、設置対象物7と当接し、設置対象物7に押し付けられる。封止部5が設置対象物7に押し付けられることで、冷却水路8から冷却液が外部に漏れ出すことを防止する。なお、封止部5は、例えば、ゴムリングなど、冷却液が冷却水路8から漏れ出すことを防止できるものであれば種々のものを用いることができる。
【0026】
第2の樹脂部材6は、第1の樹脂部材3に被覆されたコイル2と、コア1及び固定部4といったリアクトル100を構成する部材を一体に成形する。第2の樹脂部材6によって、リアクトル100を構成する各部材は固定される。つまり、一体に成形するとは、リアクトルを構成する各部材を互いに固定することを意味する。
【0027】
なお、本実施形態では、封止部5は第2の樹脂部材6によって一体に成形されておらず、別体となっている。第2の樹脂部材6には、封止部5が挿入される溝が形成されており、封止部5はその溝に挿入される。そして、リアクトル100を設置対象物7に設置することで、封止部5は、リアクトル100の底面と設置対象物7の間に配置され、冷却液が漏れ出すことを防止する。
【0028】
第2の樹脂部材6は、コイル2の露出面21は被覆していない。また、第2の樹脂部材6は、コイル2が冷却液と接触する箇所は被覆していない。即ち、コイル2が冷却液と接触する箇所は、第1の樹脂部材3のみによって被覆されている。
【0029】
第2の樹脂部材6を構成する樹脂の種類は、第1の樹脂部材3として用いることができる種類の樹脂を挙げることができる。そして、第2の樹脂部材6は、第1の樹脂部材3と同じ種類の樹脂を用いてもよいし、異なる種類の樹脂を用いてもよい。
【0030】
(作用)
リアクトル100は、コイル2に電流が流れることにより発熱する。また、コア1もリアクトル100の温度上昇の要因の1つとなる。リアクトル100の温度が高くなると、コア1の磁気特性が変化して、リアクトル100の効率が低下する。そのため、リアクトル100に発生する熱は、リアクトル100の外部に放出する必要がある。
【0031】
本実施形態のリアクトル100は、上面が開口する冷却水路8を備える設置対象物7に、開口を塞ぐように固定され、冷却液に接触するコイル2と、コイル2のうち少なくとも冷却液と接触する部分を樹脂で被覆する第1の樹脂部材3と、を備える。このように、本実施形態では、コイル2を第1の樹脂部材3を介して冷却液に直接接触させる。これにより、リアクトル100の発熱源であるコイル2から効率良く冷却液に伝達させることができる。よって、リアクトル100の放熱性が向上する。
【0032】
また、コイル2が冷却液と接触する箇所は第1の樹脂部材3によって被覆されている。これにより、コイル2が冷却液と接触しても、ターン間に冷却液が入り込んで、噴き出すことを防止できる。
【0033】
さらに、本実施形態のように、コイル2を冷却液に接触させて冷却することで、放熱シートといった放熱部材を削減することができるので、部品点数を削減することができ、コスト削減を図ることができる。また、放熱部材を削減することで、リアクトル100と放熱部材を組立てる工程を削減することができるので、作業効率が向上する。
【0034】
コア1の下面11と、コア1の下面11と対向するコイル2の内周面の底面23は離間しており、隙間が設けられている。そのため、冷却液はこの隙間に流入することができる。よって、冷却液は、コイル2の外周面だけではなく、内周面にも接触する。即ち、コイル2と冷却液が接する表面積を増加させることができる。そのため、リアクトル100の熱は、コイル2の外周面からだけではなく、内周面からも放出できる。したがって、リアクトル100の放熱性をより向上させることができる。
【0035】
特に、本実施形態では、コイル2は、巻軸方向が冷却液の流れ方向と平行となるように冷却水路7内に挿入される。コイル2の巻軸方向と冷却液の流れ方向とを平行にすることにより、冷却液が下面11と底面23の隙間に流入しやすい。仮に、コイル2の巻軸方向を冷却液の流れ方向と直交するように、コイル2を冷却水路8に挿入すると、コイル2の外周面が障壁となり、圧力損失が大きくなる。圧力損失が大きくなると、冷却液の循環が悪化し、放熱効果が低下する。
【0036】
しかし、本実施形態のように、巻軸方向を冷却液の流れ方向と平行にすることで、冷却液が流れに沿ってスムーズにコア1の下面11とコイル2の底面23の隙間に流入することができ、圧力損失を低減させることができる。よって、圧力損失を低減しつつ、リアクトル100の放熱性を向上させることができる。
【0037】
ここで、一般的に、コア1とコイル2の距離が遠ざかるとインダクタンス値が低下すると言われている。コア1とコイル2の距離を遠ざけて配置する場合において、インダクタンス値を低下させないためには、コイル2の巻数を増加させる必要があり、その分コイルの全長が長くなる虞がある。また、発熱が大きい場合、コイルを構成する導電性部材の板厚を厚くする必要がある。
【0038】
しかし、本実施形態では、上述のとおり放熱性を向上させることができるので、コイル2を構成する導電性部材の板厚を薄くすることができる。そのため、巻数を増やしたとしても、板厚を薄くすることで、結果として、インダクタンス値が低下することを抑制しつつ、コイル2の全長の長さを短くすることができる。よって、良好な電気特性を維持しつつ、リアクトル100の小型化を図ることができる。
【0039】
さらに、コア1の下面11は、第1の樹脂部材3及び第2の樹脂部材6に被覆されず露出している。そのため、コア1の下面11とコイル2の底面23の間の隙間に流入した冷却液は、コア1の下面11に直接接触する。コア1もリアクトル100の温度上昇の要因の1つなので、コア1の下面11に冷却液を直接接触させることでコア1から効率良く熱を冷却液に伝達させることができる。よって、リアクトル100の放熱性が向上する。
【0040】
リアクトル100の底面に設けられた封止部5は、リアクトル100が設置対象物7に設置された際に、設置対象物7と当接して、押し付けられている。そのため、冷却水路8の開口から冷却液が外部に漏れることをより確実に防止することができる。
【0041】
冷却液が、外部に漏れ出すと、コイルやコア等といった冷却したい部分に向かう冷却液の流量が減るため、コイルやコアから冷却液に伝達させることができる熱が少なくなる。そのため、リアクトルの放熱性が悪化する虞がある。また、冷却液が外部に漏れることで、外部機器のショートを招く虞がある。しかし、本実施形態では、封止部5によって、冷却液が外部に漏れ出すことを防止できる。よって、外部機器のショートを防止できるとともに、コイル2やコア1を直接冷却することによる放熱性向上の効果を維持することができる。
【0042】
コイル2は、第1の樹脂部材3に被覆されていない露出面21を有する。コイル2の内外表面が第1の樹脂部材3で全て被覆されると、熱膨張係数の違いから第1の樹脂部材3にひびが入ったり、割れてしまったりする場合があり、当該箇所が冷却液と接触する箇所の場合、冷却液がコイル2のターン間に入り込んで噴き出す虞がある。しかし、本実施形態では、露出面21を設けたことで、第1の樹脂部材3が割れてしまうことを防止できる。
【0043】
また、この露出面21は、第2の樹脂部材6によっても被覆されていない。即ち、露出面21は、外気に触れている。そのため、この露出面21からもリアクトル100の熱を放出することができるので、リアクトル100の放熱性が向上する。
【0044】
(効果)
本実施形態のリアクトル100は、上面が開口する冷却水路8を備える設置対象物7に、開口を塞ぐように固定され、冷却液と接触するリアクトル100であって、コア1と、コア1に装着され、冷却液に接触するコイル2と、コイル2のうち少なくとも冷却液と接触する部分を樹脂で被覆する第1の樹脂部材3と、コア1と第1の樹脂部材3によって被覆されたコイル2を一体に成形する第2の樹脂部材6と、を備える。
【0045】
これにより、コイル2に直接冷却液を接触させることができるので、発熱源であるコイル2の熱を効率良く冷却液に伝達させることができる。よって、リアクトル100の放熱性が向上する。また、放熱部材が不要となるので、部品点数を削減することができ、コスト削減を図ることができる。さらに、放熱部材が不要となるので、リアクトル100と放熱部材を組立てる工程を削減することができ、作業効率が向上する。
【0046】
また、コイル2の冷却液と接触する部分は第1の樹脂部材3で覆われ、コア1と第1の樹脂部材3に覆われたコイル2は第2の樹脂部材6によって一体に成形されている。そのため、コイル2のターン間の隙間やコア1とコイル2を組付けた際に生じる隙間は、第1の樹脂部材3又は第2の樹脂部材6によって埋められている。よって、リアクトル100を設置対象物7に設置するのみで、当該隙間から冷却液が漏れ出すことを防止できるともに、コイル2を冷却液に直接接触させることができる。
【0047】
コア1の下面11と、コア1の下面11と対向するコイル2の内周面は離間して設けられている。これにより、コア1の下面11とコイル2の内周面の隙間に冷却液を流入させることができる。そのため、コイル2の内周面にも冷却液を接触させることができるので、冷却液と接触するコイル2の表面積を増加させることができる。よって、より多くのリアクトル100の熱を冷却液に伝達させることができるので、リアクトル100の放熱性を更に向上させることができる。
【0048】
コア1の下面11は、樹脂に被覆されず露出している。即ち、コア1の下面11は、樹脂を介在することなく冷却液と接触する。これにより、コア1の下面11からも効率良く熱を冷却液に放出することができるので、リアクトル100の放熱性を向上させることができる。
【0049】
本実施形態のリアクトル100は、リアクトル100の底面に設けられた封止部5を備え、封止部5は、リアクトル100が設置対象物7に設置された際に、設置対象物7と当接している。これにより、冷却水路8から冷却液が漏れだすことをより確実に防止することができる。
【0050】
本実施形態のリアクトル100は、設置対象物7にリアクトルを固定する固定部4を更に備え、第2の樹脂部材6は、コア1及び第1の樹脂部材3に被覆されたコイル2とともに、固定部4を一体に成形している。このように、本実施体形態のリアクトル100は、第2の樹脂部材6によってリアクトル100を構成する各部材が固定される二重モールド構造のリアクトルである。即ち、ケースやケース内に充填する充填材が不要となる。そのため、ケース等を削減する分、リアクトル100の低背化を図ることができる。
【0051】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0052】
本実施形態では、コア1の下面11は樹脂で覆わず、露出させていた。しかし、図5に示すように、コア1の下面11は、露出させず、第1の樹脂部材3に被覆されていてもよい。また、コア1の下面11は、第1の樹脂部材3に被覆されるのではなく、第2の樹脂部材6によって被覆されていてもよい。
【0053】
本実施形態では、コア1の下面11とコイル2の内周面の底面23は離間して設けていたが、図6に示すように、コア1の下面11とコイル2の底面23は、隙間を設けなくともよい。即ち、コア1の下面11も含めてコア1の外周面とコイル2の内周面との間に、第1の樹脂部材3を介在させてもよい。
【0054】
本実施形態では、第2の樹脂部材6と別体であった封止部5は、第2の樹脂部材6の溝に挿入させたが、第2の樹脂部材6には封止部5を挿入する溝を設けなくてもよい。この場合、設置対象物7の冷却水路8の周囲を囲うように溝を形成し、その溝に封止部5を挿入して、その上からリアクトル100を設置対象物7に設置してもよい。このようにしても、封止部5は、リアクトル100の底面と設置対象物7の間に配置され、冷却液が冷却水路8から漏れ出すことを防止できる。
【0055】
また、封止部5は、第2の樹脂部材6によって一体に成形されず、別体としていたが、第2の樹脂部材6によって一体に成形してもよい。例えば、封止部5を設ける箇所の第2の樹脂部材6に弾性を有する樹脂を用いて一体に成形してもよい。
【0056】
本実施形態では、コイル2は1次モールドによって第1の樹脂部材に覆われていたが、1次モールドによって第1の樹脂部材に覆われているのは、コア1であってもよい。即ち、コア1を1次モールドによって第1の樹脂部材3によって被覆し、第1の樹脂部材3に被覆されたコア1にコイル2を装着して、固定部4とともに2次モールドとして第2の樹脂部材6によって一体に成形させてもよい。この場合、コイル2が冷却液と接触する部分を第2の樹脂部材6によって覆うことで、コイル2のターン間から冷却液が漏れ出すことを防止できる。
【0057】
本実施形態では、封止部5を設けたが、封止部5を設けなくても、冷却液が冷却水路8から漏れ出すことを防止できる。例えば、リアクトル100と設置対象物7の接触面を凹凸のない平面にし、リアクトル100と設置対象物7を密着させることで、冷却液が漏れ出すことは防止できる。
【符号の説明】
【0058】
100 リアクトル
1 コア
11 下面
2 コイル
21 露出面
22 下面
23 底面
3 第1の樹脂部材
4 固定部
5 封止部
6 第2の樹脂部材
7 設置対象物
71 ネジ挿入孔
8 冷却水路
図1
図2
図3
図4
図5
図6