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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】加工果実の製造方法、及び加工食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20231219BHJP
   A23B 7/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23B7/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019206429
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021078366
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山口 研志
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-046027(JP,A)
【文献】いろはイロハ,果汁じゅわ~!大量消費!みかんの切り方 レシピ・作り方 ,楽天レシピ,2016年01月08日,https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1410009168/,[検索日2023年6月21日]
【文献】果汁がガッツリ2倍しぼれる!レモンの切り方はこれだ!!,暮らしニスタ,2019年11月07日,https://kurashinista.jp/column/detail/4905,[検索日2023年6月21日]
【文献】たまご母さん,すだちの1番良い切り方無駄のない絞り方,クックパッド,2019年10月08日,https://cookpad.com/recipe/5801616,[検索日2023年6月30日]
【文献】トロピカルマリア スペイン産 レモン カット 500g[冷凍],Amazon.co.jp,2019年01月16日,https://www.amazon.co.jp/[業務用]トロピカルマリア-スペイン産-レモン-カット-500g/dp/B07MV1D2YQ,[検索日2023年8月3日]
【文献】ストックして便利★柑橘類を冷凍保存, クックパッド,[online],2018年08月21日,[2023年11月28日検索], Retrieved from the Internet:<URL: https://cookpad.com/recipe/5208236>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果心を有する柑橘類の果実を、前記果心に直交する方向から見て、前記果心上の中心点から放射状に延びる複数の切断線であって、隣接する二つの切断線の間に前記果心が位置するように設定された切断線に沿ってカットすることにより、4以上のくし形の果実片に分割する分割工程と、
前記果実片を冷凍する冷凍工程とを有し、
前記分割工程において、前記果実における前記果心の端に位置する蔕及び先端部分を除去する処理を行う加工果実の製造方法。
【請求項2】
前記分割工程において、前記果実を5以上のくし形の果実片に分割する請求項1に記載の加工果実の製造方法。
【請求項3】
前記果心を挟んで隣接する二つの前記切断線がなす角度をθ1としたとき、
前記果心の軸線と、前記果心を挟んで隣接する二つの前記切断線のうち前記軸線に近い前記切断線とがなす角度は、(θ1/2)±5°の範囲内である請求項1又は請求項2に記載の加工果実の製造方法。
【請求項4】
前記果実は、香酸柑橘類の果実である請求項1~のいずれか一項に記載の加工果実の製造方法。
【請求項5】
果心を有する柑橘類の果実をくし形にカットした複数の冷凍果実片と、複数の前記冷凍果実片を収容する収容具とを備える加工食品であって、
複数の前記冷凍果実片は、前記果実を前記果心に直交する方向から見て、前記果心上の中心点から放射状に延びる切断線に沿ってカットすることにより形成される第1切断面及び第2切断面を有し、
少なくとも一つの前記冷凍果実片は、前記第1切断面に露出する果肉と前記第2切断面に露出する果肉との間に前記果心が位置しているとともに前記果実における前記果心の端に位置する蔕及び先端部分が除去されている加工食品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工果実の製造方法、及び加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
レモンやライム等の柑橘類の果実の流通形態の一つとして、くし切りにカットした複数の果実片を袋詰めしたものを冷凍状態で流通させる形態が知られている。上記果実片は、例えば、冷凍状態のままで氷の代用とする用途や、解凍して食品等に果汁を絞り出す用途に用いられる。
【0003】
図7に示すように、柑橘類の果実50は、蔕から延びる果心51を有しており、この果心51の周りに果肉を内包する小袋状のじょうのうが放射状に並んでいる。非特許文献1には、果実50をくし切りする方法として、図7に示す果実正面図の方向、すなわち、果心51に直交する方向から見て放射状に延びる複数の切断線52a~52hに沿ってカットする方法が開示されている。
【0004】
この場合、果実50から分割された各果実片53は、少なくとも一方の切断面として、果心51を通らない切断線52b~52d,52f~52hによりカットされた切断面53aを有する。図8(a)に示すように、切断面53aは、直線部分の中央に果心51が位置し、果心51から弧状の果皮54に向かって、切断されたじょうのう膜55が放射状に延びるとともに、じょうのう膜55の間に果肉56が露出する切断面となる。果実片53は、切断面53aから果汁を効率的に絞り出すことができるとともに、外観の良い切断面53aを有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】レシピサイトぷちぐる、「レモンの切り方:フランス人はこう切る」、令和1年9月25日検索、インターネット「https://oisiso.com/lemon.html」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の方法により得られる果実片53のうち、果心51を含む果実片53は、果心51を通る切断線52a、52eによりカットされた切断面53bを有する。図8(b)に示すように、切断面53bは、直線部分の中央から弧状の果皮54に向かって果心51が太い線状に露出する切断面となる。すなわち、果心51を含む果実片53は、一方の切断面が切断面53aであり、他方の切断面が切断面53bである果実片となる。
【0007】
そのため、非特許文献1の方法を採用した場合、二つの切断面が共に切断面53aである果心51を含まない果実片53と、一方の切断面が切断面53aであり、他方の切断面が切断面53bである果心51を含む果実片53とが得られることになる。柑橘類の果実を、くし切りにカットした複数の果実片の状態で流通させることを考えた場合、果実片の切断面の外観にばらつきが生じることは好ましくない。
【0008】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、柑橘類の果実をくし切りにカットした果実片の切断面のばらつきを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する加工果実の製造方法は、果心を有する柑橘類の果実を、前記果心に直交する方向から見て、前記果心上の中心点から放射状に延びる複数の切断線であって、隣接する二つの切断線の間に前記果心が位置するように設定された切断線に沿ってカットすることにより、4以上のくし形の果実片に分割する分割工程を有する。
【0010】
上記構成によれば、果心を含む果実片についても、一方側の切断面に露出する果肉と、他方側の切断面に露出する果肉との間に果心が位置することにより、切断面から果心が見え難くなり、両方の切断面が共に他の果実片と同様の形状の切断面となる。したがって、果実片の切断面のばらつきを抑制できる。
【0011】
前記分割工程において、前記果実を5以上のくし形の果実片に分割することが好ましい。
前記果心を挟んで隣接する二つの前記切断線がなす角度をθ1としたとき、前記果心の軸線と、前記果心を挟んで隣接する二つの前記切断線のうち前記軸線に近い前記切断線とがなす角度は、(θ1/2)±5°の範囲内であることが好ましい。
【0012】
前記分割工程において、前記果実の蔕を除去する処理を行うことが好ましい。
前記果実は、香酸柑橘類の果実であることが好ましい。
上記課題を解決する加工食品は、果心を有する柑橘類の果実をくし形にカットした複数の果実片と、複数の前記果実片を収容する収容具とを備える加工食品であって、複数の前記果実片は、前記果実を前記果心に直交する方向から見て、前記果心上の中心点から放射状に延びる切断線に沿ってカットすることにより形成される第1切断面及び第2切断面を有し、少なくとも一つの前記果実片は、前記第1切断面に露出する果肉と前記第2切断面に露出する果肉との間に前記果心が位置している。
【0013】
上記課題を解決する果実の分割方法は、果心を有する柑橘類の果実を複数のくし形の果実片にカットする果実の分割方法であって、前記果心に直交する方向から見て、前記果心上の中心点から放射状に延びる複数の切断線であって、隣接する二つの切断線の間に前記果心が位置するように設定された切断線に沿ってカットすることにより、4以上のくし形の果実片に分割し、各果実片の切断面の形状を揃える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、果実片の切断面のばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】分割工程の説明図。
図2】カッターの斜視図。
図3】(a)、(b)は、カッターを用いた分割工程の説明図。
図4】袋詰めされた加工果実の斜視図。
図5】果心を含む果実片の切断面の平面図。
図6図5の6-6線断面図。
図7】従来のレモンのくし切りの説明図。
図8】(a)、(b)は、従来の果実片の切断面の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態の加工果実の製造方法に用いる果実は、果心を有する柑橘類の果実である。上記果実としては、例えば、レモン、ライム、シークワサー、スダチ、ユズ、ダイダイ、カボス等の香酸柑橘類、グレープフルーツ、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、サワーオレンジ、ハッサク、温州ミカン、イヨカン、ポンカン、あま夏、ブンタンが挙げられる。これらの果実のなかでも、香酸柑橘類が好ましく、レモンがより好ましい。以下では、一例として、レモンを用いた加工果実の製造方法について説明する。
【0017】
本実施形態の加工果実の製造方法は、生果の状態のレモンを複数のくし形の果実片にカットする分割工程を有している。
図1に示すように、分割工程においては、まず、レモン10から蔕11及び先端部分12を切り取ることにより、蔕11及び先端部分12が除去された本体部分13を得る。蔕11及び先端部分12は、図1に示す果実正面図の方向、すなわち、レモン10の果心14の軸線14aに直交する方向から見て、軸線14aに直交し、かつ中央の果肉に達しない第1切断線21に沿ってカットすることにより切り取られる。蔕11及び先端部分12の切断幅Dは、例えば、4mm以上18mm以下である。なお、果心14の軸線14aは、果心14の中心を通る線を直線に近似した線である。
【0018】
次に、本体部分13に対して、果心14の軸線14aに直交する方向から見て、軸線14a上の任意の一点である中心点14bから放射状に延びる複数の第2切断線22に沿ってカットすることにより、本体部分13を4以上のくし形の果実片15に分割する。
【0019】
第2切断線22の本数は、4本以上であり、好ましくは5本以上であり、より好ましくは6本以上である。また、第2切断線22の本数は、好ましくは12本以下であり、より好ましくは10本以下である。なお、図1においては、第2切断線22が8本である場合を図示するとともに、8本の第2切断線22をそれぞれ第2切断線22a~22hとして図示している。本明細書において、第2切断線22は、個々の第2切断線22a~22hをまとめた概念を意味している。
【0020】
本体部分13は、第2切断線22と同数の果実片15に分割される。したがって、第2切断線22に沿って本体部分13をカットした場合の分割数(カット数)は、4カット以上であり、好ましくは5カット以上であり、より好ましくは6カット以上である。また、上記分割数は、好ましくは12カット以下であり、より好ましくは10カット以下である。
【0021】
複数の第2切断線22は、中心点14bを中心として、等角度間隔に設定される。例えば、第2切断線22が8本である場合、第2切断線22の角度間隔は、45°である。
第2切断線22の角度間隔は、好ましくは30°以上であり、より好ましくは36°以上である。また、第2切断線22の角度間隔は、好ましくは90°以下であり、より好ましくは72°以下であり、更に好ましくは60°以下である。第2切断線22の角度間隔が90°以下である場合には、氷の代用として適した形状の果実片15、及び果汁を絞り出しやすい形状の果実片15が得られる。
【0022】
また、複数の第2切断線22は、隣接する二つの第2切断線22の間に果心14が位置するように設定されている。なお、隣接する二つの第2切断線22の間に果心14が位置するとは、中心点14bを中心とする円周方向において、一方の第2切断線22が果心14の端部14cよりも円周方向一方側に位置するとともに、他方の第2切断線22が果心14の端部14cよりも円周方向他方側に位置することを意味する。図1においては、第2切断線22aと第2切断線22hとの間、及び第2切断線22dと第2切断線22eとの間に果心14が位置している。
【0023】
複数の第2切断線22は、好ましくは、隣接する二つの第2切断線22の中央付近に果心14が位置するように設定されている。例えば、果心14を挟んで隣接する二つの第2切断線22がなす角度(例えば、第2切断線22aと第2切断線22hとがなす角度)を「θ1」とする。この場合、果心14の軸線14aと、果心14を挟んで隣接する二つの第2切断線22のうち軸線14aに近い第2切断線22(例えば、第2切断線22a)とがなす角度θ2が、「(θ1/2)±5°」の範囲内となるように複数の第2切断線22を設定する。
【0024】
例えば、角度θ1が45°である場合、角度θ2が17.5°以上27.5°以下となるように複数の第2切断線22を設定する。角度θ1の範囲は、上述した第2切断線22の角度間隔の範囲と同じである。
【0025】
複数の第2切断線22に沿って本体部分13をカットする方法は、特に限定されるものではない。例えば、全ての第2切断線22に沿ったカットを同時に行ってもよいし、複数の第2切断線22のうちの1又は複数の第2切断線22に沿ったカットを複数回、行ってもよい。
【0026】
全ての第2切断線22に沿ったカットを同時に行う場合には、例えば、図2に示すカッター30を用いることができる。カッター30は、筒状のフレーム31と、フレーム31内に配置される複数の分割刃32とを備えている。複数の分割刃32は、上述した複数の第2切断線22に一致する放射線状に配置され、フレーム31の径方向中心側において互いに接続されるとともに、径方向外側においてフレーム31に接続されている。複数の分割刃32の刃先32aは全て、フレーム31の第1端縁31a側に設けられている。
【0027】
図3(a)に示すように、第1端縁31aを上に向けて配置したカッター30の上に、レモン10から蔕11及び先端部分12を除去した本体部分13を載置する。このとき、本体部分13の果心14とカッター30の分割刃32との位置関係が図1に示す本体部分13の果心14と第2切断線22との位置関係に一致するように、本体部分13の向きを調整する。
【0028】
次に、図3(a)及び図3(b)に示すように、カッター30の分割刃32に対応する位置に分割刃32を挿入可能なスリット33aを有する押込部材33を用いて、本体部分13をカッター30に向かって押し込む。これにより、本体部分13は、カッター30の分割刃32を通過する際に、複数のくし形の果実片15に分割される。そして、カッター30を通過した果実片15は、カッター30の下に配置された容器34により落下収集される。
【0029】
上記の分割工程により、加工果実としての複数のくし形の果実片15が得られる。図4に示すように、得られた複数の果実片15に対して、果実片15を冷凍庫等により冷却して冷凍果実片とする冷凍工程、及び冷凍果実片を袋や箱等の収容具40に収容する収容工程が順に行われる。冷凍工程における冷却温度は、例えば、-50℃以上-10℃以下である。一つの収容具40には、複数、例えば、4~120個の果実片15が収容される。冷凍工程及び収容工程を経ることにより、複数の果実片15が収容具40に収容された加工食品が得られる。加工食品には、果心14を含む果実片15が少なくとも一つ含まれている。
【0030】
次に、本実施形態の作用について説明する。
レモン10の本体部分13をくし形の果実片15に分割する分割工程において、果心14上の中心点14bから放射状に延びる複数の第2切断線22であって、隣接する二つの第2切断線22の間に果心14が位置するように設定された第2切断線22に沿って本体部分13をカットしている。
【0031】
これにより、図5に示すように、果心14を含む果実片15である、第2切断線22aと第2切断線22hによりカットされる果実片15及び第2切断線22dと第2切断線22eによりカットされる果実片15の切断面も、他の果実片15と同様の形状になる。すなわち、くし形の果実片15の直線部分の中央に果心14が位置し、果心14から弧状の果皮16に向かって、切断されたじょうのう膜17が放射状に延びるとともに、じょうのう膜17の間に果肉18が露出する切断面となる。
【0032】
図6に示すように、果心14を含む果実片15において、果心14の端部14c側の大部分は、一方側の切断面である第1切断面15aに露出する果肉18aと、他方側の切断面である第2切断面15bに露出する果肉18bとの間に挟まれて位置している。これにより、果実片15の第1切断面15a及び第2切断面15bを見たときに、果心14は、果肉18a,18bに隠れて見え難くなる。このように、本実施形態の分割工程を用いることにより、得られる全ての果実片15の各切断面が図5に示すような形状に揃えられる結果、果実片15の切断面のばらつきを抑制できる。
【0033】
なお、果心14を含む果実片15における第1切断面15aと第2切断面15bとがなす角度は、上記角度θ1に一致する。第1切断面15aと第2切断面15bとがなす角度が30°以上である場合、すなわち、角度θ1が30°以上となるように第2切断線22を設定した場合には、果心14を含む果実片15における果肉18a,18bに隠れて果心14が見え難くなる効果がより顕著に得られる。
【0034】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)加工果実の製造方法は、レモン10の本体部分13を、果心14に直交する方向から見て、果心14上の中心点14bから放射状に延びる複数の第2切断線22であって、隣接する二つの第2切断線22の間に果心14が位置するように設定された第2切断線22に沿ってカットする分割工程を有する。
【0035】
上記構成によれば、果心14を含む果実片15についても、第1切断面15aに露出する果肉18aと、第2切断面15bに露出する果肉18bとの間に果心14が位置することにより、第1切断面15a及び第2切断面15bから果心14が見え難くなり、第1切断面15a及び第2切断面15bが共に他の果実片15と同様の形状の切断面となる。したがって、果実片15の切断面のばらつきを抑制できる。
【0036】
(2)果心14を挟んで隣接する二つの第2切断線22がなす角度をθ1としたとき、果心14の軸線14aと、果心14を挟んで隣接する二つの第2切断線22のうち軸線14aに近い第2切断線22とがなす角度θ2は、(θ1/2)±5°の範囲内である。
【0037】
上記構成によれば、上記(1)の効果がより顕著に得られる。また、果心14を含む果実片15の切断面を見た場合に、果心14が果肉18a,18bに透けて見えてしまうことを抑制できる。
【0038】
(3)加工果実の製造方法は、果実片15を冷凍する冷凍工程を有する。
果心14を含む果実片15は、第1切断面15aに露出する果肉18aと、第2切断面15bに露出する果肉18bとの間に果心14が位置している。これにより、果心14によって果肉18a,18bが内側から支持された状態となり、果実片15を冷凍して冷凍果実片として用いた場合に、解凍して使用する際における果肉18a,18bの形崩れを抑制できる。
【0039】
(4)分割工程において、レモン10の蔕11及び先端部分12を除去する処理を行っている。
上記構成によれば、得られる全ての果実片15の外形が図5に示すような形状に揃えられる結果、果実片15の外形のばらつきも抑制できる。
【0040】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・放射状に延びる複数の第2切断線22の中心は、果心14に直交する方向から見て、果心14上に位置する点であればよく、果心14の軸線14a上に位置する点に限定されない。
【0041】
・上記角度θ2が「(θ1/2)±5°」の範囲外となるように第2切断線22を設定してもよい。この場合に得られる果心14を含む果実片15は、第1切断面15aと第2切断面15bとの間の中心よりも第1切断面15a又は第2切断面15bに果心14が大きく偏って位置するが、こうした果実片15が得られる製造方法も本発明に含まれる。
【0042】
・上記実施形態では、生果の柑橘類の果実を用いて分割工程を行っていたが、冷凍状態の果実を用いて分割工程を行ってもよい。なお、果実を容易にカットできることから、生果の果実を用いることがより好ましい。
【0043】
・複数の第2切断線22の角度間隔は、等間隔であることが好ましいが、必要となる果実片15に応じて、一部又は全てが異なっていてもよい。例えば、得られる各果実片15に含まれる果肉の量の均一化を図る場合、すなわち、果肉の量が均一な複数の果実片15を得るように分割する場合、果心14を含む果実片15を切断する第2切断線22a間の角度間隔を、他の果実片15を切断する第2切断線22間の角度間隔よりも大きくするとよい。
【0044】
・分割工程において、蔕11及び先端部分12を除去する処理は、複数の果実片15に分割した後に行ってもよい。また、蔕11及び先端部分12のいずれか一方のみを除去する処理としてもよいし、蔕11及び先端部分12を除去する処理を省略してもよい。
【0045】
・果実片15を冷凍する冷凍工程の前に収容工程を行ってもよい。
・収容工程及び冷凍工程の一方又は両方を省略してもよい。
・加工食品を構成する果実片15は冷凍された状態であってもよいし、冷凍されていない状態であってもよい。
【0046】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)前記果実片を収容具に収容する収容工程を有する前記加工果実の製造方法。
(ロ)前記果実片を冷凍する冷凍工程を有する前記加工果実の製造方法。
【0047】
(ハ)果心を有する柑橘類の果実をくし形にカットした複数の果実片と、複数の前記果実片を収容する収容具とを備える加工食品であって、複数の前記果実片は、第1切断面及び第2切断面を有し、前記第1切断面及び前記第2切断面は、直線部分の中央に前記果心が位置し、前記果心から弧状の果皮に向かって、切断されたじょうのう膜が放射状に延びるとともに、じょうのう膜の間に果肉が露出する切断面であり、前記第1切断面と前記第2切断面とがなす角度は、30°以上90°以下であり、少なくとも一つの前記果実片は、前記第1切断面に露出する果肉と前記第2切断面に露出する果肉との間に前記果心が位置している加工食品。
【0048】
(ニ)果心を有する柑橘類の果実をくし形にカットした果実を用いた冷凍果実片であって、前記果実片は、前記果実を前記果心に直交する方向から見て、前記果心上の中心点から放射状に延びる切断線に沿ってカットすることにより形成される第1切断面及び第2切断面を有し、前記第1切断面に露出する果肉と前記第2切断面に露出する果肉との間に前記果心が位置している冷凍果実片。
【符号の説明】
【0049】
10…レモン
14…果心
14a…軸線
14b…中心点
15…果実片
15a…第1切断面
15b…第2切断面
16…果皮
17…じょうのう膜
18,18a,18b…果肉
22,22a~22d…第2切断線
40…収容具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8