(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】チーズ複合食品
(51)【国際特許分類】
A23C 19/09 20060101AFI20231219BHJP
A23C 19/068 20060101ALI20231219BHJP
A23C 19/076 20060101ALI20231219BHJP
A23C 19/072 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A23C19/09
A23C19/068
A23C19/076
A23C19/072
(21)【出願番号】P 2019208250
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】水野 礼
(72)【発明者】
【氏名】東海林 毬子
(72)【発明者】
【氏名】増島 修平
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-257829(JP,A)
【文献】特開平5-91833(JP,A)
【文献】特開2018-153126(JP,A)
【文献】世界中で愛されて130年以上のフィラデルフィアからの新提案 スライスタイプでは日本「初」の3層構造チーズ フィラデルフィア贅沢3層仕立ての濃厚クリーミーチーズ 9月1日(木)より、新発売のお知らせ,morinaga NEWS RELEASE,2016年,pp.1-4
【文献】七訂食品成分表2016本表編,2016年,p.186
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 19/00-19/16
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを隣接して含み、
チーズ組成物Aの水分含有率をA1、チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合、以下の条件を満たす複合食品。
<条件>
-4<A1-B1<2 (質量%)
-410<A2-B2<-15 (mg/100g)
【請求項2】
前記チーズ組成物Aが、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、
前記チーズ組成物Bが、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類である、請求項1に記載の複合食品。
【請求項3】
前記チーズ組成物Aの原料チーズ全量に対して、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含み、
前記チーズ組成物Bの原料チーズ全量に対して、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含む、請求項2に記載の複合食品。
【請求項4】
チーズ組成物Bの半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズが低塩チーズである、請求項2または3に記載の複合食品。
【請求項5】
前記チーズ組成物Bが、さらに、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含み、前記チーズ組成物Bに含まれる軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズが、チーズ組成物Aに含まれる主要な原料チーズと同一種類である、請求項2~4の何れか一項に記載の複合食品。
【請求項6】
前記チーズ組成物Aが、クリームチーズ類であり、前記チーズ組成物Bが、チェダーチーズ類またはゴーダチーズ類である、請求項1~5の何れか一項に記載の複合食品。
【請求項7】
前記チェダーチーズ類またはゴーダチーズ類の原料チーズとして、低塩チェダーチーズまたは低塩ゴーダチーズを含む、請求項6に記載の複合食品。
【請求項8】
チーズ組成物A及びチーズ組成物Bをそれぞれ異なるポンプに充填して移送し、一方のポンプ内のチーズ組成物Aと他方のポンプ内のチーズ組成物Bとを合流させ、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを混合する工程を含む、
チーズ組成物Aの水分含有率をA1、チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合に、以下の条件を満たす、複合食品の製造方法。
<条件>
-4<A1-B1<2 (質量%)
-410<A2-B2<-15 (mg/100g)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上のチーズ組成物が隣接した、複合食品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の食生活の多様化に伴い、チーズを利用した様々な複合食品が登場してきている。チーズ複合食品として、チーズ鱈、チーズかまぼこ、及びチーズちくわ等が挙げられる。
【0003】
しかし、多量の水分を含むチーズは、他の食品、又は異なる種類のチーズと組み合わせると、食品間で水分が移行する問題があった。
食品間の水分移行は、食品の風味や物性に影響を与える。特にポーションタイプのチーズやスライスタイプのチーズは、水分移行により食品がべたつく結果、チーズを包むアルミ箔、及びフィルム等の包装材の剥離性が悪くなるという問題があった。
【0004】
食品間の水分移行を抑制する手段として、今まで種々の方法が提案されてきた。
特許文献1には、水相が連続相である複数の食品を、それぞれが個別に存在する形態で組み合わせた組み合わせ食品であって、それらのうちの特定の相に食物繊維、デキストリン、グリセリンのうち1種又は2種以上を他の相より高い水中濃度で含ませることで、食品相互間の水分移行を抑制する方法が開示されている。
特許文献2には、水相が連続相である複数の食品を、それぞれが個別に存在する形態で組み合わせた組み合わせ食品であって、それらのうちの特定の相に、加水分解処理された蛋白質を他の相より高い水中濃度で含ませることで、食品相互間の水分移行を抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-091833号公報
【文献】特開平6-197689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、水分が多量に含まれるチーズが、2種以上隣接した新たな複合食品について研究を進めてきた。
本発明は、2種以上のチーズが隣接した複合食品において、新たな水分移行抑制技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、異なる2種のチーズ組成物における、水分含有率の差、及びNa含有量の差を特定の範囲内に調節することで、チーズ組成物間の水分移行が抑制されることを見出した。
【0008】
前記課題を解決する本発明は、
チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを隣接して含み、
チーズ組成物Aの水分含有率をA1、チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合、以下の条件を満たす複合食品である。
<条件>
-4<A1-B1<2 (質量%)
-410<A2-B2<-15 (mg/100g)
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記チーズ組成物Aが、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類であり、前記チーズ組成物Bが、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むプロセスチーズ類である。
【0010】
また、本発明は、前記チーズ組成物Aの原料チーズ全量に対して、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含み、前記チーズ組成物Bの原料チーズ全量に対して、半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを50質量%以上含むことがより好ましい。
【0011】
本発明は、前記チーズ組成物Bの半硬質チーズ、硬質チーズ、および超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズが低塩チーズであることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記チーズ組成物Bが、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含み、前記チーズ組成物Bに含まれる軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズが、チーズ組成物Aに含まれる主要な原料チーズと同一種類であることがより好ましい。
【0013】
本発明は、前記チーズ組成物Aがクリームチーズ類であり、前記チーズ組成物Bがチェダーチーズ類、またはゴーダチーズ類であることが好ましい。
前記チーズ組成物Bは、前記チェダーチーズ類又はゴーダチーズ類の原料チーズとして、低塩チェダーチーズ、又は低塩ゴーダチーズを含むことがより好ましい。
【0014】
また、前記課題を解決する本発明は、
チーズ組成物A及びチーズ組成物Bをそれぞれ異なるポンプに充填して移送し、一方のポンプ内のチーズ組成物Aと他方のポンプ内のチーズ組成物Bとを合流させ、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを混合する工程を含み、
チーズ組成物Aの水分含有率をA1、チーズ組成物A100gあたりのNa含有量をA2とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1、チーズ組成物B100gあたりのNa含有量をB2とした場合に、以下の条件を満たす、複合食品の製造方法である。
<条件>
-4<A1-B1<2 (質量%)
-410<A2-B2<-15 (mg/100g)
【発明の効果】
【0015】
本発明の複合食品は、チーズ組成物間の水分移行が抑制され、アルミ箔及びフィルム等の包装材の剥離性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<1>各用語の定義
<チーズ組成物>
本発明において、「チーズ組成物」とは、少なくとも1種以上の原料チーズが配合された組成物であって、乳等省令(「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」、昭和26年12月27日厚生省令52号)及び公正競争規約で定めるナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード、乳等を主要原料とする食品の規格のうちいずれかに該当するものである。
【0017】
<水分含有率>
本発明におけるチーズ組成物全量に対する水分含有率は、常圧加熱、乾燥助剤法により測定する。チーズ組成物から採取した試料1gを乾燥温度99±1℃で乾燥させ、乾燥後の試料の質量を得て、下記式により水分含有率(単位:質量%)を求める。
水分含有率={(乾燥前の試料の質量-乾燥後の試料の質量)/乾燥前の試料の質量}×100
【0018】
<Na含有量>
本発明のおけるチーズ組成物のNa含有量は、チーズ組成物100gあたりに含まれるNaの含有量であり、単位はmg/100gである。
チーズ組成物のNa含有量は、原料に含まれるNa含有量から計算により算出することができる。また、チーズ組成物のNa含有量は、マイクロウェーブ分解法により調製し、誘導結合プラズマ発光法により測定することができる。
【0019】
<チーズ類>
本発明において、チーズ組成物をクリームチーズ類、チェダーチーズ類、およびゴーダチーズ類等の、「チーズ類」と表現した場合、当該チーズ組成物中のチーズ分の50質量%超がクリームチーズ、チェダーチーズ、およびゴーダチーズ等のチーズであることを意味する。
また、本発明において、「プロセスチーズ類」とは、乳等省令、および公正競争規約で定めるプロセスチーズ、チーズフード、または乳等を主要原料とする食品の規格のうちいずれかに該当するものであって、一般にプロセスチーズ類あるいはプロセスチーズ様食品とされるものをすべて包含するものとする。
【0020】
<原料チーズ>
本発明において、原料チーズを、軟質、半軟質、半硬質、硬質、及び超硬質チーズと分類する場合には、コーデックスのチーズの一般規格(Codex General Standard for Cheese(CODEX STAN 283-1978))の定義に準ずる。
【0021】
<低塩>
本発明において、「低塩」とは、アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)が公布する連邦規則集(Code of Federal Regulations:CFR)のTitle21、part101.61に記載の“Low sodium”の定義に準ずる。
【0022】
<2>複合食品
本発明の複合食品は、異なる2種のチーズ組成物を隣接して含む。以下、説明の便宜上、異なる2種のチーズ組成物のうち一方を「チーズ組成物A」、他方を「チーズ組成物B」と称する。
異なる2種のチーズ組成物とは、少なくとも組成が異なる2種のチーズ組成物である。
異なる2種のチーズ組成物として、好ましくは味、又は食感が異なる2種のチーズ組成物である。
【0023】
本発明において、「異なる2種のチーズ組成物を隣接して含む」とは、一方のチーズ組成物の少なくとも一部分が、他方のチーズ組成物の少なくとも一部分に接することを意味する。異なる2種のチーズ組成物が隣接する形態として、異なる2種のチーズ組成物がマーブル模様を形成している形態、一方のチーズ組成物の内部に、他方のチーズ組成物が包含されている形態、及び異なる2種のチーズ組成物が積層している形態等が挙げられる。
異なる2種のチーズ組成物が積層している形態としては、異なる2種のチーズ組成物が交互に積層している形態を含む。チーズ組成物Aの層をA、チーズ組成物Bの層をB、AとBの界面を「/」として表現した場合に、異なる2種のチーズ組成物が交互に積層している形態としては、「A/B/A」、「A/B/A/B」、「A/B/A/B/A」、「B/A/B」、「B/A/B/A」、「B/A/B/A/B」等に積層している形態が挙げられる。
【0024】
本発明の複合食品は、チーズ組成物A及びBが隣接する形態であればよく、チーズ組成物A及びBがマーブル模様を形成して隣接する形態、及びチーズ組成物A及びBが積層して隣接する形態であることが好ましく、マーブル模様を形成して隣接する形態がさらに好ましい。チーズ組成物A及びBが積層して隣接する形態としては、チーズ組成物AとBとが交互に積層して隣接する形態を含む。
本明細書において、「マーブル模様」とは、波状、縞状、線状、階調模様等の模様、又はこれらの模様が組み合わされた模様などを含む広い概念である。
本発明の複合食品は、プロセスチーズ類であることが好ましい。
本発明の複合食品の形態は、ポーションタイプ、スライスタイプ、ダイスタイプおよびシュレッドタイプ等の形態であってもよく、ポーションタイプまたはスライスタイプが好ましく、ポーションタイプがさらに好ましい。
【0025】
本発明の複合食品は、チーズ組成物Aの水分含有率をA1、Na含有量をA2とし、チーズ組成物Bの水分含有率をB1、Na含有量をB2とした場合に、水分含有率の差「A1-B1」、及びNa含有量の差「A2-B2」が、以下の条件を満たす。
<条件>
-4<A1-B1<2 (質量%)
-410<A2-B2<-15 (mg/100g)
【0026】
「A1-B1」及び「A2-B2」の何れもが上記条件を満たす本発明の複合食品は、チーズ組成物A及びB間の水分移行が抑制され、複合食品を包むアルミ箔及びフィルム等の包装材の剥離性に優れる。
【0027】
前記水分含有率の差は、好ましくは-3.8<A1-B1<1.8であり、より好ましくは-3.7<A1-B1<1.7であり、さらに好ましくは-3.6<A1-B1<1.6である。
【0028】
前記Na含有量の差は、好ましくは-400<A2-B2<-15であり、より好ましくは-350<A2-B2<-20であり、さらに好ましくは-300<A2-B2<-25であり、特に好ましくは-288<A2-B2<-28である。
【0029】
チーズ組成物A及びBは、上記条件を満たすものであれば特に限定されない。
例えば、NaCl等のNa源、及び水を添加することで、上記条件を満たすようチーズ組成物を調節してもよい。
複数の原料チーズを混合することで、上記条件を満たすようチーズ組成物を調節してもよい。
【0030】
以下、上記条件を満たし得る本発明の複合食品を構成するチーズ組成物A及びBの好ましい形態について詳述する。チーズ組成物A及びBを以下の好ましい形態に調製することで、添加物の含有量を必要最低限に抑えることができ、チーズ分を高くすることができるため、チーズ本来の風味を有し、かつ水分移行抑制効果が高い複合食品とすることができる。
【0031】
<チーズ組成物A>
チーズ組成物Aにおける原料チーズの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
また、チーズ組成物Aにおける原料チーズの含有量は、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0032】
チーズ組成物Aに配合される原料チーズは、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むことが好ましい。
【0033】
チーズ組成物Aの原料チーズ全量に対して、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは50質量%超であり、さらに好ましくは65質量%以上であり、さらにより好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは95質量%以上である。
チーズ組成物Aの原料チーズ全量が、軟質チーズおよび半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズで構成されていてもよい。
【0034】
チーズ組成物Aに配合する原料チーズとして、具体的には、クリームチーズ、モッツァレラチーズ、及びカッテージチーズ等が例示でき、クリームチーズを配合することが好ましい。
【0035】
チーズ組成物Aは、プロセスチーズ類であることが好ましい。
また、チーズ組成物Aは、クリームチーズ類であることが好ましい。
【0036】
チーズ組成物Aの水分含有率は、上述した条件を満たすものであればよいが、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは30~70質量%であり、さらに好ましくは40~60質量%であり、特に好ましくは45~55質量%である。
【0037】
チーズ組成物AのNa含有量は、上述した条件を満たすものであればよいが、好ましくは200~1000mg/100gであり、より好ましくは400~800mg/100gであり、さらに好ましくは450~750mg/100gであり、特に好ましくは500~700mg/100gである。
【0038】
チーズ組成物Aの脂肪含有率は、好ましくは20~50質量%であり、より好ましくは20~40質量%であり、さらに好ましくは30~40質量%であり、特に好ましくは30~35質量%である。
【0039】
チーズ組成物Aのタンパク質含有率は、好ましくは1~20質量%であり、より好ましくは3~15質量%であり、さらに好ましくは5~10質量%であり、特に好ましくは7~9質量%である。
【0040】
チーズ組成物Aの炭水化物含有率は、好ましくは1~20質量%であり、より好ましくは2~15質量%であり、さらに好ましくは2~10質量%であり、特に好ましくは4~8質量%であり、最も好ましくは5~7質量%である、
【0041】
チーズ組成物Aの灰分含有率は、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.1~5質量%であり、さらに好ましくは0.5~5質量%であり、特に好ましくは1~3.5質量%である。
【0042】
チーズ組成物AのNaCl含有量は、好ましくは0.1~10g/100gであり、より好ましくは0.1~5g/100gであり、さらに好ましくは0.5~3g/100gであり、特に好ましくは1.1~2.6g/100gである。
【0043】
チーズ組成物A100gあたりのCa含有量は、好ましくは30~100mg/100gであり、より好ましくは40~80mg/100gであり、さらに好ましくは50~70mgであり、特に好ましくは55~65mg/100gである。
【0044】
<チーズ組成物B>
チーズ組成物Bにおける原料チーズの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは75質量%以上である。
また、チーズ組成物Bにおける原料チーズの含有量は、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0045】
チーズ組成物Bに配合される原料チーズは、半硬質チーズ、硬質チーズ、及び超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むことが好ましい。
【0046】
チーズ組成物Bの原料チーズ全量に対して、半硬質チーズ、硬質チーズ、及び超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは50質量%超であり、さらに好ましくは60質量%以上である。
また、チーズ組成物Bの原料チーズ全量に対して、半硬質チーズ、硬質チーズ、及び超硬質チーズから選択される1種以上の原料チーズの含有量は、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0047】
半硬質チーズ、硬質チーズ、及び超硬質チーズとしては、低塩チーズを含むことが好ましい。
低塩チーズを含むことで、水分移行を抑制する効果が向上し、よりアルミ箔及びフィルム等の包装材の剥離性が向上する。
【0048】
低塩チーズを含む場合、チーズ組成物B全量に対する低塩チーズの含有量は、好ましくは20~70質量%であり、より好ましくは30~70質量%であり、さらに好ましくは40~70質量%である。
また、チーズ組成物Bに含まれる原料チーズ全量に対する低塩チーズの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0049】
チーズ組成物Bに配合する原料チーズとして、具体的には、チェダーチーズ、ゴーダチーズ、及びパルミジャーノ・レッジャーノ等が例示でき、チェダーチーズ、及び/又はゴーダチーズを配合することが好ましい。
【0050】
チーズ組成物Bは、プロセスチーズ類であることが好ましい。
また、チーズ組成物Bは、チェダーチーズ類、又はゴーダチーズ類であることが好ましい。
【0051】
チーズ組成物Bは、上述した半硬質チーズ、硬質チーズ、及び超硬質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズに加え、さらに軟質チーズ、及び半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズを含むことが好ましい。
この場合、軟質チーズ、及び半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズは、上述したチーズ組成物Aに含まれる主要な原料チーズと同一種類であることがより好ましい。
このような組成とすることで、より容易に水分含有率の差、及びNa含有量の差を上記条件に調節することができる。また、食品添加物を多量に添加せずに、組成物中のチーズ分を維持することが可能となるため、チーズ本来の風味を有する複合食品を調製することができる。
【0052】
チーズ組成物Bに含まれる、軟質チーズ、及び半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズの含有量は、好ましくは10~60質量%であり、より好ましくは15~55質量%であり、さらに好ましくは20~40質量%であり、特に好ましくは25~35質量%である。
【0053】
また、チーズ組成物Bに含まれる原料チーズ全量に対する、軟質チーズ、及び半軟質チーズからなる群から選択される1種以上の原料チーズの含有量は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは20~40質量%である。
【0054】
チーズ組成物Bの水分含有率は、上述した条件を満たすものであればよいが、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは30~70質量%であり、さらに好ましくは40~60質量%であり、特に好ましくは45~55質量%である。
【0055】
チーズ組成物BのNa含有量は、上述した条件を満たすものであればよいが、好ましくは500~1500mg/100gであり、より好ましくは600~1300mg/100gであり、さらに好ましくは700~1200mg/100gであり、特に好ましくは800~1100mg/100gであり、最も好ましくは800~1000mg/100gである。
【0056】
チーズ組成物Bの脂肪含有率は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは10~40質量%であり、さらに好ましくは15~35質量%であり、特に好ましくは20~30質量%であり、最も好ましくは25~30質量%である。
【0057】
チーズ組成物Bのタンパク質含有率は、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは3~25質量%であり、さらに好ましくは5~20質量%であり、特に好ましくは10~20質量%である。
【0058】
チーズ組成物Bの炭水化物含有率は、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~8質量%であり、さらに好ましくは1~5質量%である。
【0059】
チーズ組成物Bの灰分は、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~8質量%であり、さらに好ましくは1~6質量%であり、特に好ましくは2~5.5質量%である。
【0060】
チーズ組成物BのNaCl含有量は、好ましくは0.01~10g/100gであり、より好ましくは0.05~5g/100gであり、さらに好ましくは0.05~2g/100gであり、特に好ましくは0.1~2g/100gである。
【0061】
チーズ組成物B100gあたりのCa含有量は、好ましくは100~800mg/100gであり、より好ましくは150~700mg/100gであり、さらに好ましくは200~600mgであり、特に好ましくは220~560mg/100gである。
【0062】
<好ましい形態のチーズ組成物A及びBからなる複合食品のパラメーター>
上記好ましい形態のチーズ組成物A及びBからなる複合食品のパラメーターは、以下の値となり得る。
チーズ組成物AとBの脂肪含有率の差は、好ましくは1~20質量%となり、より好ましくは2~10質量%となり、さらに好ましくは2~8質量%となり、特に好ましくは4~7質量%となる。
【0063】
チーズ組成物Aとチーズ組成物Bのタンパク質含有率の差は、好ましくは-20~-1質量%となり、より好ましくは-15~-1質量%となり、さらに好ましくは-10~-1質量%となり、特に好ましくは-9.5~-2質量%となる。
【0064】
チーズ組成物Aとチーズ組成物Bの炭水化物含有率の差は、好ましくは0.5~20質量%となり、より好ましくは0.5~10質量%となり、さらに好ましくは1~5質量%となり、特に好ましくは2~5質量%となる。
【0065】
チーズ組成物Aとチーズ組成物Bの灰分の差は、好ましくは-10~-0.1質量%となり、より好ましくは-5~-0.1質量%となり、さらに好ましくは-3~-0.2質量%となり、特に好ましくは-2.7~-0.2質量%となる。
【0066】
チーズ組成物Aとチーズ組成物BのNaCl含有量の差は、好ましくは-5~5g/100gとなり、より好ましくは-3~3g/100gとなり、さらに好ましくは-2~2g/100gとなり、特に好ましくは-1~1.5g/100gとなる。
【0067】
チーズ組成物Aとチーズ組成物Bの、100g当たりのCa含有量の差は、好ましくは-1000~-100mg/100gとなり、より好ましくは-800~-100mg/100gとなり、さらに好ましくは-600~-150mg/100gとなり、特に好ましくは-500~-150mg/100gとなる。
【0068】
<3>複合食品の製造方法
(1)調製工程
本発明の複合食品の製造方法は、まず、上記条件を満たすよう、チーズ組成物A及びBをそれぞれ調製する。
チーズ組成物の調製は、乳化機を用いて行うことができ、例えば、密閉式乳化釜、水平型チーズクッカー、高速乳化釜、直接加熱式連続乳化機(ショックステリライザー)、間接加熱式連続乳化機(コンビネーター、ボテーター)等の公知の各種乳化装置を用いて、乳化・殺菌を行う。
また、本技術では、加熱殺菌専用の装置と、乳化専用の装置を組み合わせた装置を使用してもよい。
【0069】
それぞれ調製したチーズ組成物A及びチーズ組成物Bを混合して容器に充填し、又はチーズ組成物A及びBをそれぞれ同一の容器に充填することで、チーズ組成物A及びBが隣接した複合食品を製造することができる。
それぞれ同一の容器に充填する場合には、チーズ組成物A及びBを2つのポンプを用いて同時充填してもよく、交互に充填してもよい。
【0070】
チーズ組成物A及びBがマーブル模様に隣接する複合食品を製造する場合は、チーズ組成物A及びBを調製した後、以下の(2)混合工程、及び(3)充填工程を行うことで製造することができる。
【0071】
(2)混合工程
調製したチーズ組成物A及びチーズ組成物Bをそれぞれ異なるポンプに充填して移送し、一方のポンプ内のチーズ組成物Aと他方のポンプ内のチーズ組成物Bとを合流させ、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを混合する。
【0072】
前記混合工程において、一方のポンプの経路中に、他方のポンプの経路の一部を挿入することが好ましい。
また、ポンプとしては、ピストンポンプ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、一軸ねじポンプ、ロータリーポンプ、ベーンポンプ、サインポンプ、及びペリスタルティックポンプからなる群より選ばれる二つの異種のポンプであることが好ましい。
これにより、流動性を有する二つの食品原料を効率良く混合することが可能となる。
また、チーズ組成物A及びBの粘度が異なる場合であっても、効率良く混合することが可能となる。
【0073】
前記それぞれ異なるポンプは、異なる流速とすることが好ましい。これにより、流動性を有するチーズ組成物A及びBをさらに効率良く混合することが可能となる。また、チーズ組成物A及びBの間に色素がある場合においては、マーブル模様がより美しい食品が得られる。
【0074】
具体的には、例えば、前記二つのポンプとしてピストンポンプと一軸ねじポンプを用いた場合、ピストンポンプ側の食品原料が混合される際の流速:0.22m/秒に対し、一軸ねじポンプ側の食品原料が混合される際の流速を0.35~0.5m/秒とすることが好ましく、0.40~0.45m/秒とすることがより好ましい。
【0075】
ピストンポンプと一軸ねじポンプとを組み合わせた場合、各々のポンプの稼働/停止のタイミングや流速をコントロールすることによって、二つの食品原料の混合度合いのコントロールや、混合後の最終食品における二つの食品原料の位置・ポジションによる風味の出方もコントロールすることが可能となる。
【0076】
(3)充填工程
次いで、前記チーズ組成物A及びBを混合した混合物を容器に充填する。
前記容器は、アルミ箔で個別に包装したポーション形態用の容器であることが好ましい。前記容器は、例えば、扇形、立方体、円盤状又は直方体の形状であり、アルミ箔で包装された個々の容器は、さらに数個(例えば、4個、6個、8個など)がまとめられ、紙製の箱に充填されて流通する。
【0077】
本発明では、前記容器に充填する際の前記混合物の充填速度(1容器あたりの充填時間)は、320~1000m秒/個であることが好ましく、480~700m秒/個であることがより好ましい。これにより、充填効率が向上する。また、二つの食品原料の間に色差がある場合においては、マーブル模様がより美しい食品が得られる。
【0078】
また、本発明では、前記容器に充填する前記二つの食品原料を混合した混合物の量は、3~30gであることが好ましく、10~20gであることがより好ましい。
【実施例】
【0079】
<試験例1>
(1)チーズ組成物の調製
高速せん断式乳化釜を使用し、以下の表1、及び表2に記載の配合に従い、チーズ組成物Aを調製した(CR1~CR9)。また、表2に、市販品のクリームチーズ(CR10)の物性を示す。
また、高速せん断式乳化釜を使用し、以下の表3、及び表4に記載の配合に従い、チーズ組成物Bを調製した(CH1~CH11)。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
(2)複合食品の調製
以下の表5及び表6に記載の組み合わせを用いて、複合食品を調製した。
具体的には、調製したチーズ組成物Aを、サージタンクを経由して充填機ホッパータンクへ貯留し、ピストンポンプにより充填ノズルへ移送した。一方、調製したチーズ組成物Bについてはサージタンクを経由してホッパータンクへ貯留し、一軸ねじポンプにより充填ノズルへ移送した。チーズ組成物A及びBをノズル内で合流させ、かつ2エレメントのスタティックミキサーに通すことにより混合した。包装用アルミ箔の成形体である容器へ混合物の定量を吐出した。アルミリッドにより蓋をし、アルミ箔折り込み後ヒートシールにより密封したのち、冷却機へ移送、冷却し、複合食品を調製した。
【0085】
(3)試験方法
各複合食品を調製後、それぞれ10℃の環境下で保存した。所定の期間1~48日後にアルミ箔を剥がし、アルミ箔の剥離容易性を評価した。評価は、以下の判定基準に従って行った。結果を表5及び表6に示す。
【0086】
<判定基準>
〇:複合食品が付着せず、綺麗にアルミ箔を剥がせる。
△;剥離時に、複合食品がわずかにアルミ箔に付着する。
×:剥離時に、複合食品がアルミ箔に付着し、綺麗にアルミ箔を剥がせない。
【0087】
【0088】
【0089】
表5に示す通り、水分含有量の差が-4<A1-B1<2であり、かつNa含有量の差が-410<A2-B2<-15である実施例1~8の複合食品は、調製後、30日以上保管した後であっても、チーズ組成物A及びB間の水分移行が抑制され、複合食品からアルミ箔を綺麗に剥がすことができた。
【0090】
一方で、表6に示す通り、水分含有率の差、及びNa含有量の差がいずれも上記数値範囲外である比較例1及び2は、調製後、4日、及び6日保管すると、複合食品がアルミ箔に付着し、剥離性に劣っていた。
【0091】
また、水分含有率の差が上記数値範囲内であり、Na含有量の差が上記数値範囲外である比較例3及び4は、調製後、1日及び6日保管すると、複合食品がアルミ箔に付着し、剥離性に劣っていた。
【0092】
特に比較例3は、水分含有率の差が小さく、Na含有量の差も小さいにも関わらず、水分移行による剥離性の劣化が生じているのに対し、比較例3と水分含量の差が同等で、Na含有量の差が顕著に大きい実施例1が、優れた水分移行抑制効果、及び剥離性を有していた。この結果から、チーズ組成物Aとチーズ組成物BのNa含有量の差がある程度大きいほうが、優れた剥離性を有していることがわかる。
【0093】
以上の結果より、水分含有率の差が-4<A1-B1<2であり、かつNa含有量の差が-410<A2-B2<-15である、チーズ組成物A及びチーズ組成物Bを隣接して含む本発明の複合食品は、チーズ組成物A及びB間の水分移行が抑制され、結果として、長期間保存した場合であっても、アルミ箔及びフィルム等の包装材の剥離性に優れることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、複数種のチーズが隣接する複合食品に利用できる。