(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】バイオセンサ、及び、そのバイオセンサの使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/48 20060101AFI20231219BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20231219BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20231219BHJP
G01N 27/411 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01N25/48
G01N37/00 101
B81B1/00
G01N27/411
(21)【出願番号】P 2019208574
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽登
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 広和
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-128261(JP,A)
【文献】特表2009-501606(JP,A)
【文献】国際公開第2006/022113(WO,A1)
【文献】特開2009-020087(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0133939(KR,A)
【文献】特開2005-040784(JP,A)
【文献】特開2011-053111(JP,A)
【文献】特開2018-105821(JP,A)
【文献】特開昭60-237993(JP,A)
【文献】特開2011-196716(JP,A)
【文献】特開2017-120240(JP,A)
【文献】特開2005-308720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00-25/74
G01N 35/00-37/00
B81B 1/00
G01N 27/411
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料に含有される特定成分と前記特定成分に対応した対応物質との接触反応により生じた反応熱に基づいて、前記特定成分に関する情報を取得するバイオセンサであって、
前記バイオセンサは、
前記液体試料が流入可能な流路
が形成された流路部材と、
前記流路内に配置されている共に、前記対応物質を保持している保持シートと、
前記保持シートに対応するように配置され、前記反応熱を検出する第1の温度センサ
を備えたセンサ部材と、
前記流路部材と前記センサ部材を分離可能に固定する固定装置と、を備え、
前記対応物質は、前記保持シート内に保持され
、
前記保持シートは、前記保持シートの一方面から他方面に通じる複数の連通路を有し、
前記流路部材は、
親水化処理された表面を有し、樹脂材料で構成された第1のフィルムと、
親水化処理された表面を有すると共に、前記流路に対応する領域の一部に第1の開口を有し、樹脂材料で構成された第2のフィルムと、
前記流路に対応する形状の溝を有し、前記第1及び第2のフィルムの間に介在するように前記第1及び第2のフィルムに貼り付けられ、樹脂材料で構成されたたスペーサと、
一方の主面に粘着層を有し、前記第1の開口を閉塞するように前記第2のフィルムに貼り付けられ、樹脂材料で構成された第3のフィルムと、を備えており、
前記保持シートは、前記第3のフィルムの前記粘着層に貼り付けられており、
前記センサ部材は、
前記第1の温度センサを含むセンサチップと、
前記センサチップが実装された実装部材と、を備え、
前記第3のフィルムと前記実装部材は、前記保持シートと前記第1の温度センサとの間に介在し、
前記流路部材と前記センサ部材とが接合されておらず、前記流路部材と前記センサ部材とが分離可能であるバイオセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオセンサであって、
前記保持シートは、布、紙、多孔質体、又は、網状体であるバイオセンサ。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のバイオセンサであって、
前記バイオセンサは、前記対応物質を含有した樹脂材料を備えており、
前記樹脂材料は、前記保持シートに入り込んだ状態で硬化しているバイオセンサ。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか一項に記載のバイオセンサであって
、
前記固定装置は、相互に重ねた前記流路部材と前記センサ部材を挟む一対の板状の加熱部材を備えているバイオセンサ。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のバイオセンサであって、
前記流路は、前記流路の他の部分と比較して、前記第1の温度センサに向かって内径が拡大している拡大部を有し、
前記保持シートは、前記拡大部に配置されているバイオセンサ。
【請求項6】
請求項
1~5のいずれかに一項に記載のバイオセンサであって、
前記センサチップは、前記第1の温度センサが形成された梁部を有
し
前記センサチップは、
前記第1の温度センサの一部を構成する半導体層を含む基板と、
前記基板の一方面側に設けられ、前記第1の温度センサに電気的に接続された電極と、を備えており、
前記基板の他方面側に前記電極が露出するように、前記基板において前記電極に対応する部分が除去されて
、前記基板に切欠部が形成されているバイオセンサ。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに一項に記載のバイオセンサであって
、
前記
実装部材は
、
前記センサチップを保持する保持フィルムと、
前記センサチップを収容した第2の開口を有すると共に、当該第2の開口を閉塞するように前記保持フィルムが貼り付けられた配線板と、
前記センサチップの電極と前記配線板の配線を接続する接続体と、を備えたバイオセンサ。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載のバイオセンサであって、
前記バイオセンサは、前記流路に連通するように前記流路の入口に配置された筒体を備えており、
前記筒体の内孔は、前記流路の容積以上の容積を有しているバイオセンサ。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載のバイオセンサであって、
前記特定成分は、基質、又は、酵素の一方であり、
前記対応物質は、酵素、又は、基質の他方であるバイオセンサ。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれかに記載のバイオセンサであって、
前記バイオセンサは、前記流路内において前記対応物質が配置されていない部分に対応するように配置された第2の温度センサを備え、
前記第1の温度センサと前記第2の温度センサは、前記流路の幅方向に沿って並んで配置されているバイオセンサ。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載のバイオセンサであって、
前記バイオセンサは、
前記流路内において前記対応物質が配置されていない部分に対応するように配置された第2の温度センサと、
前記第1の温度センサによる第1の検出結果と、前記第2の温度センサによる第2の検出結果とに基づいて、前記特定成分の量を演算する演算装置と、を備えたバイオセンサ。
【請求項12】
請求項
8に記載のバイオセンサの使用方法であって、
前記流路の出口を閉塞する第1の工程と、
前記筒体の前記内孔に前記液体試料を注入する第2の工程と、
前記出口を開放する第3の工程と、
前記第1の温度センサにより前記反応熱を検出する第4の工程と、を備えたバイオセンサの使用方法。
【請求項13】
請求項
12に記載のバイオセンサの使用方法であって、
前記第2の工程が完了してから所定時間経過後に前記第3の工程を実行するバイオセンサの使用方法。
【請求項14】
請求項
12又は13に記載のバイオセンサの使用方法であって、
前記バイオセンサの使用方法は、前記バイオセンサから前記流路部材を取り外す第5の工程を備えたバイオセンサの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロリメトリック方式のバイオセンサ、そのバイオセンサに用いる流路部材、及び、そのバイオセンサの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにより製造されたバイオセンサでは、温度センサを含むセンサチップとマイクロチャンネルとが一体的に形成されており、架橋構造状の薄膜上に設けられた温度センサの温接点電極に酵素が電着により直接固定されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の半導体製造プロセスによるマイクロチャンネルの形成は高コストであり、特に使い捨て型(所謂ディスポタイプ)のバイオセンサの提供の支障となる。そのため、使い捨て型のバイオセンサの提供には、センサチップからマイクロチャンネルを分離して、当該マイクロチャンネルを半導体製造プロセス以外の方法で製造することが有効である。
【0005】
しかしながら、センサチップからマイクロチャンネルを分離する場合には、マイクロチャンネルを画定する流路壁が酵素と温度センサとの間に介在するため、液体試料中の基質と酵素との接触反応熱を温度センサが検出し難くなってしまう、という問題がある。
【0006】
本発明の目的は、反応熱を精度良く検出することが可能なバイオセンサ、そのバイオセンサに用いる流路部材、及び、そのバイオセンサの使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明に係るバイオセンサは、液体試料に含有される特定成分と前記特定成分に対応した対応物質との接触反応により生じた反応熱に基づいて、前記特定成分に関する情報を取得するバイオセンサであって、前記バイオセンサは、前記液体試料が流入可能な流路と、前記流路内に配置されている共に、前記対応物質を保持している保持シートと、前記保持シートに対応するように配置され、前記反応熱を検出する第1の温度センサと、を備え、前記対応物質は、前記保持シート内に保持されているバイオセンサである。
【0008】
[2]上記発明において、前記保持シートは、前記保持シートの一方面から他方面に通じる複数の連通路を有していてもよい。
【0009】
[3]上記発明において、前記保持シートは、布、紙、多孔質体、又は、網状体であってもよい。
【0010】
[4]上記発明において、前記バイオセンサは、前記対応物質を含有した樹脂材料を備えており、前記樹脂材料は、前記保持シートに入り込んだ状態で硬化していてもよい。
【0011】
[5]上記発明において、前記バイオセンサは、前記流路が形成された流路部材と、前記第1の温度センサを含むセンサ部材と、を備え、前記流路部材と前記センサ部材とが分離可能であってもよい。
【0012】
[6]上記発明において、前記流路部材は、前記保持シートを保持すると共に、前記流路を画定する流路壁を含み、前記センサ部材は、前記第1の温度センサを含むセンサチップと、前記センサチップが実装された実装部材と、を備え、前記流路壁と前記実装部材は、前記保持シートと前記第1の温度センサとの間に介在しており、前記流路壁と前記実装部材とが接合されておらず、前記流路部材と前記センサ部材とが分離可能であってもよい。
【0013】
[7]上記発明において、前記バイオセンサは、前記流路部材と前記センサ部材を固定する固定装置を備え、前記固定装置は、相互に重ねた前記流路部材と前記センサ部材を挟む一対の板状の加熱部材を備えていてもよい。
【0014】
[8]上記発明において、前記流路は、前記流路の他の部分と比較して、前記第1の温度センサに向かって内径が拡大している拡大部を有し、前記保持シートは、前記拡大部に配置されていてもよい。
【0015】
[9]上記発明において、前記バイオセンサは、前記保持シートを保持すると共に、前記流路を画定する流路壁を含み、前記流路壁の内面の一部は、親水化処理が施された親水化処理面であり、前記拡大部における前記流路壁の内面の一部は、前記親水化処理面と比較して疎水性を有していてもよい。
【0016】
[10]上記発明において、前記バイオセンサは、前記流路が形成された流路部材を備え、前記流路部材は、親水化処理された表面を有する第1のフィルムと、親水化処理された表面を有すると共に、前記流路に対応する領域の一部に第1の開口を有する第2のフィルムと、前記流路に対応する形状の溝を有し、前記第1及び第2のフィルムの間に介在するように前記第1及び第2のフィルムに貼り付けられたスペーサと、一方の主面に粘着層を有し、前記第1の開口を閉塞するように前記第2のフィルムに貼り付けられた第3のフィルムと、を備えており、前記保持シートは、前記第3のフィルムの前記粘着層に貼り付けられていてもよい。
【0017】
[11]上記発明において、前記バイオセンサは、前記第1の温度センサが形成された梁部を有するセンサチップを備え、前記センサチップは、前記第1の温度センサの一部を構成する半導体層を含む基板と、前記基板の一方面側に設けられ、前記第1の温度センサに電気的に接続された電極と、を備えており、前記基板の他方面側に前記電極が露出するように、前記基板において前記電極に対応する部分が除去されていてもよい。
【0018】
[12]上記発明において、前記バイオセンサは、前記第1の温度センサを含むセンサ部材を備え、前記センサ部材は、前記第1の温度センサを含むセンサチップと、前記センサチップを保持する保持フィルムと、前記センサチップを収容した第2の開口を有すると共に、当該第2の開口を閉塞するように前記保持フィルムが貼り付けられた配線板と、前記センサチップの電極と前記配線板の配線を接続する接続体と、を備えていてもよい。
【0019】
[13]上記発明において、前記バイオセンサは、前記流路に連通するように前記流路の入口に配置された筒体を備えており、前記筒体の内孔は、前記流路の容積以上の容積を有していてもよい。
【0020】
[14]上記発明において、前記特定成分は、基質、又は、酵素の一方であり、前記対応物質は、酵素、又は、基質の他方であってもよい。
【0021】
[15]上記発明において、前記バイオセンサは、前記流路内において前記対応物質が配置されていない部分に対応するように配置された第2の温度センサを備え、前記第1の温度センサと前記第2の温度センサは、前記流路の幅方向に沿って並んで配置されていてもよい。
【0022】
[16]上記発明において、前記バイオセンサは、前記流路内において前記対応物質が配置されていない部分に対応するように配置された第2の温度センサと、前記第1の温度センサによる第1の検出結果と、前記第2の温度センサによる第2の検出結果とに基づいて、前記特定成分の量を演算する演算装置と、を備えてもよい。
【0023】
[17]本発明に係る流路部材は、液体試料に含有される特定成分と前記特定成分に対応した対応物質との接触反応により生じた反応熱に基づいて、前記特定成分に関する情報を取得するバイオセンサに用いられる流路部材であって、前記流路部材は、前記液体試料が流入可能な流路と、前記流路内に配置されている共に、前記対応物質を保持している保持シートと、を備え、前記対応物質は、前記保持シート内に保持されている流路部材である。
【0024】
[18]本発明に係るバイオセンサの使用方法は、上記のバイオセンサの使用方法であって、前記流路の出口を閉塞する第1の工程と、前記筒体の前記内孔に前記液体試料を注入する第2の工程と、前記出口を開放する第3の工程と、前記第1の温度センサにより前記反応熱を検出する第4の工程と、を備えたバイオセンサの使用方法である。
【0025】
[19]上記発明において、前記第2の工程が完了してから所定時間経過後に前記第3の工程を実行してもよい。
【0026】
[20]上記発明において、前記バイオセンサの使用方法は、前記バイオセンサから前記流路部材を取り外す第5の工程を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、特定成分と対応物質との接触反応により生じた反応熱が保持シートに蓄熱されてからゆっくりと拡散されるので、温度センサにより反応熱を検出可能な状態を長く確保することができ、反応熱を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態におけるバイオセンサの全体構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態におけるバイオセンサを示す正面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態におけるバイオセンサを示す断面図であり、
図1のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態におけるバイオセンサを示す分解断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態における流路部材を示す平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態における流路部材を示す断面図であり、
図5のVI-VI線に沿った断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態における流路部材の拡大部を示す断面図であり、
図6のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態における流路部材の拡大部及びセンサチップを示す断面図であり、
図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態における流路部材の拡大部内の保持シートの配置の変形例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態におけるセンサ部材を示す底面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態におけるセンサチップを示す平面図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態におけるセンサチップを示す断面図であり、
図11のXII-XII線に沿った断面図である。
【
図13】
図13は、
図10のA-A線に沿った断面図であり、センサチップを保持フィルムに貼り付ける前の状態を示す図である。
【
図14】
図14は、
図10のA-A線に沿った断面図であり、接続配線を形成した後の状態を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態におけるバイオセンサの使用方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は本実施形態におけるバイオセンサの全体構成を示す平面図、
図2は本実施形態におけるバイオセンサを示す正面図、
図3は本実施形態におけるバイオセンサを示す断面図であり、
図1のIII-III線に沿った断面図、
図4は本実施形態におけるバイオセンサを示す分解断面図である。なお、
図4では、理解の容易化のためにクランプ63も図示している。
【0031】
本実施形態におけるバイオセンサ1は、カロリメトリック方式のバイオセンサであり、基質と酵素との接触反応(触媒反応)で生じる反応熱に基づいて液体試料90(
図16(b)及び
図16(c)参照)に含有される基質の量を測定するセンサである。このバイオセンサ1は、
図1~
図4に示すように、流路部材10と、センサ部材20と、固定装置60と、演算装置70と、を備えている。
【0032】
流路部材10は、液体試料90が流入可能な流路101を有しており、この流路101内に設けられた保持シート15Aに酵素が固定されている。センサ部材20は、保持シート15Aに対応するように第1の温度センサ35(
図11参照)が形成されたセンサチップ30を有している。この第1の温度センサ35は、保持シート15Aに固定された酵素と、液体試料90に含有される基質との接触反応により生じた反応熱の温度を検出する。相互に重ねられた流路部材10とセンサ部材20は、固定装置60により分離可能に固定されている。演算装置80は、第1の温度センサ35からの出力信号に基づいて基質の量を演算する。
【0033】
液体試料90の具体例としては、血液、尿、汗、唾液、及び、涙等のヒトから取得した体液を例示することができる。なお、液体試料90が生体由来の液体であれば、特に上記に限定されず、例えば、犬、及び、猫等の動物から取得した体液であってもよい。
【0034】
また、基質の具体例としては、特に限定されないが、グルコース、尿酸、乳酸、タンパク、脂肪、クレアチニン、及び、ビリルビン等を例示することができる。また、酵素の具体例としては、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、トリプシン、リパーゼ、クレアチニナーゼ、及び、ビリルビンオキシダーゼ等を例示することができる。
【0035】
以下に、バイオセンサ1を構成する各部材の構成について説明する。先ず、
図5~
図9を参照しながら、流路部材10の構成について説明する。
【0036】
図5は本実施形態における流路部材を示す平面図、
図6は本実施形態における流路部材を示す断面図であり、
図5のVI-VI線に沿った断面図、
図7は本実施形態における流路部材の拡大部を示す断面図であり、
図6のVII-VII線に沿った断面図、
図8は本実施形態における流路部材の拡大部及びセンサチップを示す断面図であり、
図7のVIII-VIII線に沿った断面図、
図9は本実施形態における流路部材の拡大部内の保持シートの配置の変形例を示す断面図である。
【0037】
流路部材10は、
図5及び
図6に示すように、液体試料90を流入可能な流路101が形成されたシート状の部材である。この流路101内に、酵素を保持している保持シート15Aと、酵素を保持していない保持シート15Bとが配置されている。すなわち、保持シート15Aには、酵素が固定されているのに対し、保持シート15Bには、酵素は固定されていない。
【0038】
本実施形態では、この流路101は、実質的に一定の幅で線状に延在する平面形状を有している。流路101の一方の端部(図中の右側端部)に入口102が設けられ、当該流路101の他方の端部(図中の左側端部)に出口103が設けられており、入口102と出口103の間に拡大部104が設けられている。
【0039】
この拡大部104は、
図7に示すように、当該流路101の他の部分の幅W
0よりも広い幅W
1を有している(W
1>W
0)。また、この拡大部104は、
図8に示すように、当該流路101の他の部分の高さH
0よりも高い高さH
1を有している(H
1>H
0)。この拡大部104に保持シート15A,15Bが配置されている。
【0040】
本実施形態では、入口102から拡大部104までの間に流路を蛇行させることで、入口102から拡大部104までの距離を、拡大部104から出口103までの距離よりも長くしている。これにより、入口102から流路101内に進入した液体試料90が拡大部104に到達するまでの間に、当該液体試料90の温度を流路部材10の温度に合わせることができる。なお、流路101の平面形状は、
図5に示す形状に特に限定されず、任意の形状とすることができる。
【0041】
この流路部材10は、
図5及び
図6に示すように、第1~第3のフィルム11~13と、スペーサ14と、保持シート15A,15Bと、を備えている。
【0042】
第1のフィルム11は、ポリエステル等の樹脂材料から構成されたフィルムであり、特に限定されないが、100μm程度の厚さを有している。この第1のフィルム11の下面(スペーサ14に対向する面)は、その全面に親水化処理が施された親水化処理面111である。親水化処理の具体例としては、第1のフィルム11の下面への界面活性剤や親水性高分子の塗布やプラズマ処理等を例示することができる。
【0043】
第2のフィルム12も、上述の第1のフィルム11と同様に、ポリエステル等の樹脂材料から構成されたフィルムであり、特に限定されないが、100μm程度の厚さを有している。この第2のフィルム12の上面(スペーサ14に対向する面)も、その全面に親水化処理が施された親水化処理面121である。
【0044】
スペーサ14は、第1のフィルム11と第2のフィルム12との間に介在している。このスペーサ14は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料から構成されるフィルムであり、特に限定されないが、500μm程度の厚さを有している。このスペーサ14には、上述した流路101に対応した平面形状を有する溝141が形成されている。
図7に示すように、この溝141において拡大部104に対応する幅広部分142の幅W
1は、当該溝141の他の部分の幅W
0よりも広くなっている(W
1>W
0)。
【0045】
図6及び
図8に示すように、第1のフィルム11は、粘着層(不図示)を介して、スペーサ14の上面に貼り付けられている。第1のフィルム11の親水化処理面111において溝141に対向する部分が、流路101内に露出している。この第1のフィルム11には、溝141の両端に対向するように一対の開口112,113が形成されており、それぞれの開口112,113は、上述の流路101の入口102及び出口103として機能する。
【0046】
同様に、第2のフィルム12も、粘着層(不図示)を介して、スペーサ14の下面に貼り付けられている。第2のフィルム12の親水化処理面121において溝141に対向する部分が、流路101内に露出している。この第2のフィルム12においてスペーサ14の溝141の幅広部分142に対向する部分には、開口122が形成されている。このため、流路101の内径が、拡大部104で、当該流路101の他の部分と比較して下方(センサ部材20側)に向かって拡大している。
図7に示すように、この開口122は、溝141の幅広部分142と同じ幅W
1を有している。
【0047】
第3のフィルム13は、ポリエステル等の樹脂材料から構成されたフィルムである。この第3のフィルム13の厚さt
1は、特に限定されないが、16μm程度である(t
1=16μm)。
図6及び
図8に示すように、この第3のフィルム13の上面(第2のフィルム12に対向する面)の全体には粘着層131が形成されている。この第3のフィルム13は、第2のフィルム12の開口122を閉塞するように、当該第2のフィルム12の下面に貼り付けられている。
【0048】
この第3のフィルム13上に2つの保持シート15A,15Bが設けられている。一方(
図7中上側)の保持シート15Aに酵素が固定されているのに対し、他方(
図7中下側)の保持シート15Bには酵素は固定されていない。これらの保持シート15A,15Bは、流路101の幅方向に沿って間隔を空けて並んで配置されている。より具体的には、流路101の幅方向に沿って切断した場合に、保持シート15A,15Bは、当該流路101の同一の開口内に、当該流路101の幅方向に沿って所定間隔を空けて並んで配置されている。この保持シート15A,15Bの間のピッチP(中心間距離)は、後述するセンサチップ30の梁部33A,33B間のピッチPと実質的に同一である。以下において、保持シート15A,15Bを「保持シート15」とも総称する。
【0049】
保持シート15は、当該保持シート15の一方面151から他方面152に通じる複数の連通路を有するシート片である。保持シート15の具体例としては、特に限定されないが、キュプラ繊維からなる不織布(旭化成株式会社製ベンコット(登録商標)PS-2)を例示することができ、例えば、直径1mm程度の円形形状を有していると共に、30μm程度の厚さを有している。或いは、特に限定されないが、日本製紙クラシア株式会社製のワイプオール等の不織布ワイパを、保持シート15として用いてもよい。或いは、保持シート15として、上記以外の不織布を用いてもよいし、不織布以外の布を用いてもよい。
【0050】
保持シート15として、不織布に代えて、紙を用いてもよい。保持シート15として用いることのできる紙の具体例としては、不織紙、濾紙、吸取紙、和紙等を例示することができる。特に限定されないが、日本製紙クラシア株式会社製のキムワイプ等の紙ワイパを、保持シート15として用いることができる。こうした布や紙で保持シート15を構成することで、当該保持シート15の低コスト化を図ることができる。
【0051】
或いは、保持シート15として、布及び紙に代えて、多孔質体、又は、網状体を用いてもよい。保持シート15として用いることのできる多孔質体の具体例としては、連続気泡構造を有するスポンジを例示することができる。また、保持シート15として用いることのできる網状体としては、10μm程度の金属細線を編み込むことで形成されたメッシュ部材を例示することができる。
【0052】
或いは、保持シート15として、上記した布、紙、多孔質体、又は、網状体以外の毛細管現象により吸水可能なシート片を用いてもよい。
【0053】
そして、一方の保持シート15Aに酵素が固定されている。具体的には、この保持シート15Aの連通路内に酵素を含有した樹脂材料16(
図7参照)が入り込んだ状態で硬化している。このため、酵素は、保持シート15Aの外側に露出すると共に当該保持シート15Aの内部にも存在するように、保持シート15Aに保持されている。
【0054】
この保持シート15Aに保持される酵素は、液体試料90に含有されていると共に検出対象である基質に対応した酵素である。具体的には、液体試料90に含有される基質がグルコースである場合には、当該グルコースに対応する酵素はグルコースオキシダーゼである。
【0055】
同様に、尿酸に対応する酵素はペルオキシダーゼであり、乳酸に対応する酵素は乳酸オキシダーゼであり、タンパクに対応する酵素はトリプシンであり、脂肪に対応する酵素はリパーゼであり、クレアチニンに対応する酵素はクレアチニナーゼであり、ビリルビンに対応する酵素はビリルビンオキシダーゼである。
【0056】
特に、尿に含有されるタンパクの主成分であるアルブミンの測定方法として、(1)pH値に基づくタンパク誤差法、(2)ラテックス凝集比濁法、及び、(3)酵素吸着法(ELISA法)が知られている。しかしながら、上記の(1)及び(2)の方法では、アルブミンに似た物質が尿中に含まれている場合には誤差が生じ、また上記の(3)の方法では、測定作業が煩雑であり高価である。これに対し、酵素としてトリプシンを用いてカロリメトリック法によりアルブミンを測定することで、尿中に含まれるアルブミンに似た物質の影響を排除してアルブミンの測定を精度良く行うことができると共に、アルブミンの測定を短時間で低コストに行うことができる。
【0057】
本実施形態では、先ず、酵素と樹脂材料を含有した水溶液をこの保持シート15Aに含浸させる。こうした樹脂材料の具体例としては、特に限定されないが、光硬化型のポリビニルアルコール(東洋合成工業株式会社製BIOSURFINE(登録商標)-AWP)を例示することができる。次いで、酵素を含有した樹脂材料が保持シート15Aの連通路を介して当該保持シート15Aの内部に入り込んだ状態で水溶液を乾燥させた後に、紫外線を照射して樹脂材料を硬化させることで、酵素を保持シート15A内に保持させる。なお、こうした樹脂材料を用いずに、保持シート15A内に酵素単体を入り込ませることで、酵素を保持シート15A内に直接保持してもよい。
【0058】
なお、
図9に示すように、流路101の拡大部104に、一対の保持シート15A,15Bに加えて、他の一対の保持シート15C,15Dを配置してもよい。一方の保持シート15Cには、保持シート15Aに固定された酵素とは異なる酵素が固定されている。これに対し、保持シート15Bと同様に、他方の保持シート15Dには酵素は固定されていない。この場合には、一対の保持シート15A,15Bに対応したセンサチップ30(後述)に加えて、一対の保持シート15C,15Dに対応した別のセンサチップをセンサ部材が備えている。
【0059】
なお、流路101内に固定される酵素の種類数は、上記の1種又は2種に限定されず、3種以上の酵素を流路101内に固定してもよい。この場合には、当該酵素の種類数に対応した組数の保持シートが流路101内に配置される。
【0060】
図5~
図8に戻り、保持シート15A,15Bは、上述の第3のフィルム13の粘着層131に貼り付けられた状態で、当該第3のフィルム13に保持されている。すなわち、本実施形態では、第3のフィルム13を第2のフィルム12に固定するための粘着層131を、第3のフィルム13上での保持シート15A,15Bの保持にも利用しており、この粘着層131により保持シート15A,15Bは第3のフィルム13に強固に固定されている。
【0061】
ここで、上述のように、第1のフィルム11はその下面全体に親水化処理層111を有しており、この親水化処理面111において溝141に対向する部分が流路101内に露出している。同様に、第2のフィルム12もその上面全体に親水化処理層121を有しており、この親水化処理面121において溝141に対向する部分が流路101内に露出している。このように、親水化処理面111,121が流路101に露出していることで、毛細管現象を利用して液体試料90を流路101内で入口102から出口103に向かって積極的に流動させることができる。
【0062】
これに対し、上述のように、第3のフィルム13はその上面全体に粘着層131を有しており、この粘着層131において開口122に対向する部分が流路101内に露出している。一般的に粘着層は親水化処理面と比較して疎水性を有しているので、この粘着層131も親水化処理面111,121と比較して疎水性を有している。この粘着層131の疎水性によって、保持シート15A,15Bの周囲で液体試料90の流速を遅くすることができるので、バイオセンサ1の検出精度の向上を図ることができる。このように、本実施形態では、第3のフィルム13を第2のフィルム12に固定するための粘着層131を、保持シート15A,15Bの固定に加えて、疎水面としても利用している。
【0063】
なお、粘着層131に代えて、第3のフィルム13の上面にシランカップリング処理やフッ素プラズマ処理を施すことで、疎水化処理面を第3のフィルム13に形成してもよい。
【0064】
さらに、本実施形態の流路部材10は、
図5及び
図6に示すように、円筒状の筒体18を有している。この筒体18は、流路101の入口102に対向するように第1のフィルム11上に設けられており、当該筒体18の内孔181が流路101に連通している。この筒体18が有する内孔181は、流路101の容積以上の容積を有している。このため、筒体18は、流路101に流入する前の液体試料90の全量を保持しておくことが可能となっている。
【0065】
次いで、
図10~
図14を参照しながら、センサ部材20について説明する。
【0066】
図10は本実施形態におけるセンサ部材を示す底面図、
図11は本実施形態におけるセンサチップを示す平面図、
図12は本実施形態におけるセンサチップを示す断面図であり、
図11のXII-XII線に沿った断面図、
図13は
図10のA-A線に沿った断面図であり、センサチップを保持フィルムに貼り付ける前の状態を示す図、
図14は
図10のA-A線に沿った断面図であり、接続配線を形成した後の状態を示す図である。
【0067】
センサ部材20は、
図10に示すように、センサチップ30と、配線板40と、保持フィルム50と、接続配線55と、を備えている。
【0068】
センサチップ30は、
図11及び
図12に示すように、第1及び第2の温度センサ
35,36と、第1及び第2のヒータ
37,38と、を備えたチップである。このセンサチップ30は、公知のMEMS技術を用いてSOI基板を加工することで形成されている。なお、このセンサチップ30が、絶対温度を検出する絶対温度センサを備えていてもよい。
【0069】
このセンサチップ30を構成する基板31は、第1のSi層311と、第1のSiO2層312と、第2のSi層313と、第2のSiO2層314と、を備えている。第2のSi層313の所定領域(後述する梁部33A,33Bの拡大部331、及び、第2のSiO2層314の貫通孔314bに対応する領域)には、オーミック性電極313a,313bが形成されている。このオーミック性電極313a,313bは、第2のSi層313の上記の所定領域に対してリンやホウ素等のドーパントをイオン注入によりドーピングした後に、当該所定領域上にアルミニウム膜を形成し、このアルミニウム膜を加熱して第2のSi層313と合金化することで形成されている。なお、第2のSi層313上に形成される絶縁層は、加工性に優れた絶縁層であれば、第2のSiO2層314に特に限定されない。
【0070】
基板31の中央には、当該基板31の下面31bから上面31aに貫通する開口315がエッチング等により形成されており、これにより矩形状の枠部32が形成されている。また、上記の開口315を基板31に形成する際に、第2のSi層313の一部と第2のSiO2層314の一部がエッチングされずに残存しており、これにより枠部32内に架け渡された一対の梁部33A,33Bが形成されている。こうしたエッチングの具体例としては、Deep RIEやウェットエッチングを例示することができる。
【0071】
この梁部33A,33Bは、相互に実質的に平行に延在している。この梁部33A,33Bの間のピッチPは、上述した保持シート15A,15Bの間のピッチPと実質的に同一である。この梁部33A,33Bは、当該梁部33A,33Bの略中央に円形の拡大部331をそれぞれ有している。なお、拡大部331の形状は、特に円形に限定されない。或いは、梁部33A,33Bが拡大部331を有していなくてもよい。
【0072】
また、基板31の上面31aには、導電線351,361と、発熱部371,381と、配線372,373,382,383と、電極34A~34Fとが形成されている。
【0073】
導電線351,361、発熱部371,381、配線372,373,382,383、及び、電極34A~34Fは、スパッタリング、蒸着、めっき等により第2のSiO2層314上に形成された導電性薄膜で構成されている。本実施形態では、導電線351,361、発熱部371,381、配線372,373,382,383、及び、電極34A~34Fはいずれも、チタン(Ti)層と、当該チタン層の上に形成された金(Au)層とから構成されている。なお、導電線351,361、発熱部371,381、配線372,373,382,383、及び、電極34A~34Fを構成する材料は、導電性を有していれば、上記に特に限定されない。
【0074】
第1の導電線351は、第1の梁部33Aの拡大部331から第1の電極34Aまで延在している。第1の導電線351の先端部352は、略U字形状(半円の円弧の形状)を有しており、第2のSiO2層314に形成された貫通孔314aを介して、第2のSi層313に接続されている。この際、第1の導電線351の先端部352と第2のSi層313との間には、オーミック性電極313aが介在している。また、第2のSi層313は、第2のSiO2層314に形成された貫通孔314bを介して、第2の電極34Bに接続されている。この際、第2のSi層313と第2の電極34Bとの間には、オーミック性電極313bが介在している。
【0075】
第1の温度センサ35は、第1の熱伝導体としての第1の導電線351と、第2の熱伝導体としての第2のSi層313とから構成される熱電対を備えている。第1の導電線351の先端部352と第2のSi層313とを接続するオーミック性電極313aが、第1の温度センサ35の温接点(測定点)として機能し、第2のSi層313に接続された第2の電極34Bが、第1の温度センサ35の冷接点(基準点)として機能する。
【0076】
同様に、第2の導電線361は、第2の梁部33Bの拡大部331から第3の電極34Cまで延在している。この第2の電線361の先端部362も、略U字形状(半円の円弧の形状)を有しており、第2のSiO2層314に形成された貫通孔を介して、第2のSi層313に接続されている。この際、第2の導電線361の先端部362と第2のSi層313との間には、オーミック性電極が介在している。
【0077】
第2の温度センサ36は、第1の熱伝導体としての第2の導電線361と、第2の熱伝導体としての第2のSi層313とから構成される熱電対を備えている。第2の導電線361の先端部362と第2のSi層313とを接続するオーミック性電極が、第2の温度センサ36の温接点(測定点)として機能し、第2のSi層313に接続された第2の電極34Bが、第2の温度センサ36の冷接点(基準点)として機能する。すなわち、第2の電極34Bは、第1及び第2の温度センサ35,36の共通の冷接点(基準点)として機能する。
【0078】
第1のヒータ37は、第1の発熱体371と配線372,373とから構成されている。第1の発熱体371は、第1の導電線351の先端部352に囲まれるように、第1の梁部33Aの拡大部331に設けられている。この第1の発熱体371には一対の配線372,373が接続されている。一方の配線372は、第1の発熱体371から第4の電極34Dまで延在しているのに対し、他方の配線373は、当該第1の発熱体371から第5の電極34Eまで延在している。
【0079】
同様に、第2のヒータ38は、第2の発熱体381と配線382,383とから構成されている。第2の発熱体381も、上述の第1の発熱体371と同様に、第2の導電線361の先端部362に囲まれるように、第2の梁部33Bの拡大部331に設けられている。この第2の発熱体381には一対の配線382,383が接続されている。一方の配線382は、第2の発熱体381から第6の電極34Fまで延在しているのに対し、他方の配線383は、当該第2の発熱体381から第5の電極34Eまで延在している。すなわち、第5の電極34Eは、第1及び第2のヒータ37,38の共通の電極として機能する。
【0080】
電極34A~34Fは、枠部32の外周部に配置されている。
図12に示すように、基板31において電極34Aに対向する部分がエッチング等により除去されて、当該基板31に切欠部316が形成されている。同様に、基板31において電極34B~34Fに対向する部分がエッチング等によりそれぞれ除去されて、当該基板31に切欠部316が形成されている。電極34A~34Fは、この切欠部316を介して、基板31の下面31bからそれぞれ露出している。
【0081】
なお、センサチップ30の構成は、特に上記に限定されない。例えば、導電線351,361、発熱部371,381、及び、配線372,373,382,383を覆うように、第2のSiO2層314上に絶縁膜(例えば、SiO2層)をさらに形成し、当該絶縁膜上に電極34A~34Fを形成してもよい。この場合には、上記の絶縁膜に複数の貫通孔を形成しておき、これらの貫通孔を介して、電極34Aと導電線351とを接続し、電極34Bとオーミック性電極313bとを接続し、電極34Cと導電線361とを接続し、電極34Dと配線372とを接続し、電極34Eと配線373,383とを接続し、電極34Fと配線382とを接続する。
【0082】
或いは、半導体基板に代えて、梁部を有する樹脂基板上に一対の金属線を形成することで、熱電対を有するセンサチップを構成してもよい。また、上述した梁部33A,33Bは、枠部32に支持された両端支持梁であるが、特に限定されず、梁部33A,33Bが片端支持梁であってもよい。また、熱電対に代えて、サーモパイルを第1及び第2の温度センサ35,36として用いてもよい。この場合にも、サーモパイルの測定点が保持シート15A,15Bに対向するように第1及び第2の温度センサ35,36は配置される。
【0083】
配線板40は、所謂フレキシブルプリント配線板(FPC)であり、
図10に示すように、ベースフィルム41と、当該ベースフィルム41に設けられた配線42A~42Fと、を備えている。この配線板40は、センサチップ30を収容可能な大きさの開口44を有している。
図13及び
図14に示すように、配線42A~42Fは、ベースフィルム41の下面41bに形成されている。
【0084】
保持フィルム50は、ポリエステル等の樹脂材料から構成されたフィルムである。この保持フィルム50の厚さt2は、特に限定されないが、16μm程度である(t2=16μm)。この保持フィルム50は、当該保持フィルム50の下面に形成された粘着層51を有しており、配線板40のベースフィルム41の上面41aに貼り付けられて開口44を閉塞している。センサチップ30は、この保持フィルム50の粘着層51に保持された状態で、配線板40の開口44に収容されている。
【0085】
図10に示すように、配線板40の配線42A~42Fは、センサチップ30の電極34A~34Fに対応するようにそれぞれ配置されている。
図10及び
図14に示すように、配線42Aの一端は、接続配線55を介して電極34Aと接続されている。
【0086】
この接続配線55は、配線42Aから電極34Aに導電性ペーストを印刷して硬化することで形成されている。この際、切欠部316によって電極34Aは基板31の下面31bから露出しているので、接続配線55は、基板31の下面31b側から電極34Aに接続されている。また、電極34Aはこの切欠部316によって囲まれているので、導電性ペーストの広がりを抑制することができ、当該導電性ペーストの食み出しに起因した不要なリークの発生を抑制することができる。
【0087】
相互に対応する配線42B~42Fと電極34B~34Fも、同様の接続配線55を介して個別に接続されている。いずれの電極34B~34Fにも、接続配線55は基板31の下面31b側から接続されている。配線42A~42Fは、配線板40の端部までそれぞれ延在しており、当該配線42A~42Fの他端には端子43A~43Fがそれぞれ設けられている。
【0088】
なお、電極を基板の下面から露出させる他の方法として、基板内部にスルーホールを形成する方法や、基板の側壁に引出配線を形成する方法を例示することができる。しかしながら、これらの方法と比較して、切欠部316を用いた本実施形態の方法では、電極34A~34Fを基板31の下面31bに安価に露出させることができると共に、配線42A~42Fと電極34A~34Fとを容易に接続することができる。
【0089】
以上に説明した流路部材10とセンサ部材20は、
図4及び
図8に示すように、第3のフィルム13と保持フィルム50とが接するように相互に重ねられている。この際、流路部材10とセンサ部材20は、センサチップ30の梁部33A,33Bの拡大部331が、流路101の拡大部104内に配置された保持シート15A,15Bにそれぞれ対向するように、相互に重ねられている。
【0090】
このため、第1の温度センサ35の測定点313aが保持シート15Aに対向しており、第1の温度センサ35が保持シート15Aの温度を検出することが可能となっている。同様に、第2の温度センサ36の測定点が保持シート15Bに対向しており、第2の温度センサ36が保持シート15Bの温度を検出することが可能となっている。
【0091】
また、第1のヒータ37の発熱部371が保持シート15Aに対向しており、第1のヒータ37が保持シート15Aを加熱することが可能となっている。同様に、第2のヒータ38の発熱部381が保持シート15Bに対向しており、第2のヒータ38が保持シート15Bを加熱することが可能となっている。この第1及び第2のヒータ37,38は、例えば、バイオセンサ1の基本特性のチェック等に用いられる。
【0092】
この際、上述のように、流路部材10の第2のフィルム12に開口122が形成されており、流路101の拡大部104で、当該流路101の他の部分と比較して、下方(センサ部材20)に向かって流路101の内径が拡大している。換言すれば、流路101とセンサ部材20との間の流路壁12,13は、この拡大部104で最も薄くなっている。このため、液体試料90中の基質と酵素との接触反応により生じた微少な反応熱を、第1の温度センサ35により正確に検出することが可能となっている。
【0093】
本実施形態では、上述のように、第3のフィルム13の厚みt1が16μm程度であると共に、保持フィルム50の厚みt2も16μm程度であるので、拡大部104での流路101とセンサチップ30との間の距離Dが32μm程度となっている(D=t1+t2=32μm)。上記反応熱の高精度な検出を確保する観点から、この距離Dは40μm以下であることが好ましい(D≦40μm)。
【0094】
さらに、上述のように、本実施形態では、センサチップ30の基板31に切欠部316が形成されており、当該切欠部316を介して接続配線55を電極34A~34Fに基板31の下面31b側から接続することが可能となっている。このため、センサチップ30の上面と保持フィルム50との間に半田や導電性ペースト等の介在物が存在しておらず、センサチップ30の上面を段差なく保持フィルム50に密着させることができる。
【0095】
また、上述のように保持シート15A,15Bが流路101の幅方向に沿って間隔を空けて並んで配置されていることから、第1及び第2の温度センサ35,36も流路101の幅方向に沿って間隔を空けて並んで配置されている。より具体的には、流路101の幅方向に沿って切断した場合に、第1及び第2の温度センサ35,36の測定点352,362が、当該流路101の同一の開口に対応するように、当該流路101の幅方向に沿って所定間隔を空けて並んで配置されている。このため、第1及び第2の温度センサ35,36は、流路101内における液体試料90の流動方向において同じ位置に配置された保持シート15A,15Bの温度を検出することが可能となっている。
【0096】
流路部材10とセンサ部材20は、接着剤等で接合されておらず、相互に重ねられた状態で固定装置60により分離可能に固定されている。この固定装置60は、
図1、
図2及び
図4に示すように、一対の金属プレート61A,61Bと、ラバーヒータ62と、クランプ63とを備えている。なお、本実施形態では、固定装置60がネジ締め機構を利用して流路部材10とセンサ部材20を固定しているが、クリップ等の他の機構を利用して固定装置60がセンサ部材20を固定してもよい。
【0097】
一対の金属プレート61A,61Bは、例えば、アルミニウム等の金属材料から構成された板状の部材であり、相互に重ねられた流路部材10及びセンサ部材20を挟んでいる。ラバーヒータ62は、金属プレート71A,71Bを覆うことが可能な2つ折りのラバーシートと、当該ラバーシート内に埋設された発熱抵抗体と、を備えたヒータである。クランプ63は、流路部材10及びセンサ部材20を挟んだ金属プレート61A,61Bを覆っているラバーヒータ62を上下から挟んで固定している。なお、2つ折りのラバーヒータ72に代えて、相互に分離した一対の板状のヒータを用いてもよい。
【0098】
この固定装置60により流路部材10とセンサ部材20を固定した状態で、ラバーヒータ62をオンすることで、金属プレート61A,61Bを介して流路部材10を加熱することが可能となっている。なお、上側の金属プレート61Aとラバーヒータ62には、開口611,621がそれぞれ形成されており、流路部材10の筒体18はこの開口611,621を介してラバーヒート62の外側に露出している。また、流路部材10の両端が金属プレート61A及びラバーヒータ62から突出しており、これにより流路部材10の出口103が外部に露出している。
【0099】
演算装置70は、例えば電子回路で構成されており、センサ部材20の配線板40の端子43A~43Fを介してセンサチップ30に電気的に接続されている。この演算装置70は、
図1に示すように、演算部71と、記憶部72と、表示部73とを備えている。
【0100】
ここで、液体試料に含有される基質と当該基質に対応した酵素との接触反応により生じた反応熱(温度変化)ΔTは、当該基質の量に比例することが知られている。このことを利用して、演算部71は、第1及び第2の温度センサ35,36の出力電圧に基づいて基質の量を演算する。
【0101】
具体的には、予め計測された反応熱ΔTと基質の量との対応関係を示すテーブルを記憶部72に事前に記憶しておく。そして、演算部71は、第1及び第2の温度センサ35の出力電圧をそれぞれ取得し、これらの出力電圧の差分を算出した後に、前記テーブルを参照することで当該差分に対応する基質の量を演算する。そして、表示部73がこの演算部71の演算結果を表示する。
【0102】
ここで、第1の温度センサ35の出力電圧は、一方の保持シート15Aの温度を示し、第2の温度センサ36の出力電圧は、他方の保持シート15Bの温度を示す。これらの保持シート15A,15Bは流路101内においてほぼ同一に配置されているので、基質と酵素の接触反応が生じる前は保持シート15A,15Bの温度はほぼ同一となっている。このため、第1の温度センサ35の出力電圧と第2の温度センサ36の出力電圧との差分は、基質と酵素の接触反応により生じた反応熱ΔTに相当する。
【0103】
また、本実施形態では、上述のように、第2の電極34Bが第1及び第2の温度センサ35,36の冷接点として共通化されている。このため、センサチップ30の第1の電極34Aと第3の電極34Cの電位差を計測するだけで、基質と酵素の接触反応により生じた反応熱ΔTを計測することができる。
【0104】
なお、演算部71が、反応熱ΔTから算出した基質の量に基づいて、液体試料中における基質の濃度を算出してもよい。或いは、複数種の酵素が流路101内に固定されている場合(
図9参照)に、演算部71が、当該酵素にそれぞれ対応した複数種の基質の比率を算出してもよい。或いは、バイオセンサ1が保持シート15Bと第2の温度センサ36を備えず、第1の温度センサ35の出力電圧の時系列データに基づいて反応熱ΔTを計測してもよい。
【0105】
以上のように、本実施形態では、流路部材10とセンサ部材20が分離可能となっているので、バイオセンサ1を一度使用したら、流路部材10だけを廃棄し、センサ部材20、固定装置60、及び、演算装置70は再利用することができ、使い捨て型のバイオセンサ1の低コスト化を図ることができる。
【0106】
特に、本実施形態では、センサ部材20は半導体製造プロセスによって製造するのに対し、流路部材10は半導体製造プロセス以外の低コストな方法(本実施形態ではフィルムを貼り合わせる方法)によって製造するので、使い捨て型のバイオセンサ1の更なる低コスト化を図ることができる。
【0107】
以下に、本実施形態におけるバイオセンサ1の使用方法を、
図15及び
図16(a)~
図16(c)を参照しながら説明する。
【0108】
図15は本実施形態におけるバイオセンサの使用方法を示す工程図、
図16(a)は
図15のステップS20を示す断面図、
図16(b)は
図15のステップS30を示す断面図、
図16(c)は
図15のステップS40を示す断面図である。
【0109】
先ず、
図15のステップS10において、固定装置60のラバーヒータ62をオンして流路部材10を加熱する。ここで、一般的に、酵素の触媒活性作用の最適温度は35℃~40℃である。このため、特に限定されないが、本実施形態では、流路部材10の温度が38℃程度となるようにラバーヒータ62により流路部材10を加熱する。この際、一対の金属プレート61A,61Bが流路部材10とチップ部材20を挟持しているので、ラバーヒータ62は、当該金属プレート61A,61Bを介して、流路部材10の全体を均一に加熱することができる。
【0110】
次いで、
図15のステップS20において、
図16(a)に示すように、粘着テープ80を流路部材10の開口113(流路101の出口103)に貼り付けて当該開口113を閉塞する。なお、粘着テープ80に代えて、閉塞用の部材を流路部材10の開口113に自動的に押し当ててもよい。
【0111】
なお、ステップS10,S20の前後関係は、特に上記に限定されない。ステップS20を実行した後にステップS10を実行してもよいし、ステップS10,S20を同時に実行してもよい。
【0112】
次いで、
図15のステップS30において、
図16(b)に示すように、流路部材10の筒体18の内孔181内に液体試料90を注入する。この際、例えばシリンジを用いて、流路101内の総容積と同等の量の液体試料90を筒体18の内孔18内に注入する。上述のステップS20で出口103が閉塞されているため、このステップS30では、液体試料90は、流路101内に流入することはなく、筒体18の内孔181内に溜まる。
【0113】
ステップS30で筒体18内に液体試料90を充填してから所定時間が経過したら、
図15のステップS40において、
図16(c)に示すように、粘着テープ80を流路部材10から取り外して、出口103を開放する。これにより、ポンプ等を用いることなく、筒体18の内孔181内に溜まっていた液体試料90が流路101内に自動的に流入する。因みに、本実施形態では、このステップS40で流入する前には、流路101内に他の液体は存在しておらず、気体のみが存在している。
【0114】
このように、本実施形態では、ポンプ等を用いることなく、毛細管現象を利用して筒体18に充填された液体使用90を流路101内に自動的に流入させるので、バイオセンサ1の低コスト化と小型化を図ることができる。
【0115】
上記の所定時間PTは、特に限定されないが、液体試料90の温度が流路部材10の温度に一致するのに十分な時間であり、例えば、1秒~300秒であり(1sec≦PT≦300sec)、好ましくは1秒~150秒である(1sec≦PT≦150sec)であり、より好ましくは1秒~60秒である(1sec≦PT≦60sec)。なお、所定時間PTの経過に代えて、筒体18内の液体試料90の温度が所定温度以上となった場合に、ステップS40を実行するようにしてもよい。
【0116】
液体試料90が流路101内に流入して、当該液体試料90が拡大部104に到達して、保持シート15A,15Bが液体試料90に浸かると、当該液体試料90中の基質が保持シート15Aに保持されている酵素と接触し、基質と酵素の接触反応(接触触媒反応)により反応熱(上昇熱)ΔTが生じる。この際、第1及び第2の温度センサ35,36が保持シート15A,15Bの温度を計測しているので、演算装置70が、第1及び第2の温度センサ35,36の出力信号の差分を取得することで反応熱ΔTを計測し、当該反応熱ΔTに基づいて基質の量を算出する。
【0117】
本実施形態では、保持シート15A内に酵素が保持されているので、液体試料90中の基質と酵素との接触反応により生じた反応熱が当該保持シート15Aに蓄熱されてからゆっくりと拡散される。このため、第1の温度センサ35により反応熱ΔTを検出可能な状態を長く確保することができ、反応熱を精度良く検出することができる。従って、流路部材10とセンサ部材20を分離して流路101とセンサチップ30との間に第3のフィルム13と保持フィルム50を介在させた場合であっても、第1の温度センサ35により反応熱ΔTを検出することができる。
【0118】
また、本実施形態では、保持シート15Aが、不織布で構成されているので、上面151から下面152に貫通する多数の連通路を有しており、この保持シート15A内に酵素が保持されている。このため、液体試料90と酵素との接触面積が増加するので、当該液体試料90中の基質と酵素との接触反応による反応熱ΔTを増加させることができ、第1の温度センサ35により反応熱ΔTを検出可能な状態をより多く確保することができる。
【0119】
また、保持シート15Aが上面151から下面152に貫通する多数の連通路を有していることで、当該保持シート15Aが、第1の温度センサ35への反応熱ΔTの伝熱を妨げることもない。
【0120】
また、本実施形態では、流路101とセンサチップ30との間は、第3のフィルム13と保持フィルム50の平面同士の接触であるため、これらの間の熱抵抗は小さくなっている。このため、保持シート15Aで生じた微少な反応熱を第1の温度センサ35が精度良く検出することが可能となっている。
【0121】
因みに、第3のフィルム13の厚さt1は、流路部材10を構成する他の部材11,12,14よりも極めて薄くなっているので、流路101内への液体試料90の流入に伴って膨張する。この膨張により、第3のフィルム13と保持フィルム50とが密着するので、流路101とセンサチップ30との間の熱抵抗が一層低減している。
【0122】
また、本実施形態では、センサチップ30の基板31に切欠部316が形成されており、この切欠部316を介して接続配線55がセンサチップ30の電極34A~34Fに基板31の面31b側から接続されている。このため、センサチップ30の上面と保持フィルム50との間に半田や導電性ペースト等の介在物が存在しておらず、センサチップ30の上面を段差なく保持フィルム50に密着させることができる。
【0123】
また、上述のように、保持シート15A,15Bは、流路101の幅方向に沿って所定間隔を空けて並んで配置されており、第1及び第2の温度センサ35,36は当該保持シート15A,15Bにそれぞれ対応するように配置されている。このため、第1及び第2の温度センサ35,36は、ほぼ同一の条件下で保持シート15A,15Bの温度を検出することができるので、これらの差分に相当する反応熱ΔTを精度良く測定することができる。
【0124】
なお、例えば、液体試料90が流路101内に流入する前の状態において保持シート15Bを設けなくても第1及び第2の温度センサ35,36が同一の温度を検出するような場合には、保持シート15Bを省略してもよい。
【0125】
以上の液体試料90の検査が終了したら、
図15のステップS50において、バイオセンサ10を分解して当該バイオセンサ1から流路部材10を取り出す。具体的には、固定装置70のクランプ73を緩めてプレート61A,61Bの間から流路部材10を取り出す。この際、本実施形態では、流路部材10とセンサ部材20は、相互に重ねられているだけであり、接着剤等で接合されていないので、流路部材10とセンサ部材20を容易に分離することができる。
【0126】
そして、バイオセンサ1から取り外された流路部材10は廃棄される。このため、本実施形態のバイオセンサ1では、流路101の洗浄等の作業が不要になると共に、衛生的にも優れている。一方、流路部材10以外の部材(センサ部材20、固定装置60、及び、演算装置70)は再利用されるので、使い捨て型のバイオセンサ1の低コスト化を図ることができる。
【0127】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0128】
例えば、同一の保持シートに複数種の酵素が固定されていてもよい。この場合の具体例として、基質がグルコースであり、酵素がグルコースオキシダーゼである場合に、このグルコースオキシダーゼに加えて、カタラーゼを保持シートに保持させてもよい。グルコースとグルコースオキシダーゼとの接触反応により過酸化水素が発生するが、この過酸化水素とカタラーゼとがさらに接触反応することで、反応熱ΔTを増加させることができる。
【0129】
また、液体試料が酵素を含有し、当該酵素に対応した基質を保持シートに固定してもよい。この場合の具体例としては、酵素が酸性フォスファターゼであり、基質が1-ナフチル・リン酸である。
【0130】
また、液体試料が、体液以外の液体であってもよく、例えば、野菜、果実、又は、海藻等から取得した液体であってもよい。
【0131】
また、上述の実施形態では、流路部材10とセンサ部材20とが分離可能であるバイオセンサ1について説明したが、バイオセンサの構成は特にこれに限定されない。流路部材とセンサ部材とが一体化されたバイオセンサに保持シート15を適用してもよく、この場合にも反応熱を精度良く検出することができる。
【符号の説明】
【0132】
1…バイオセンサ
10…流路部材
101…流路
11…第1のフィルム
111…親水化処理面
12…第2のフィルム
121…親水化処理面
13…第3のフィルム
131…粘着層
14…スペーサ
15A~15D…保持シート
16…樹脂材料
18…筒体
20…センサ部材
30…センサチップ
31…基板
313…第2のSi層
316…切欠部
33A,33B…梁部
34A~34F…電極
35…第1の温度センサ
352…測定点
36…第2の温度センサ
40…配線板
44…開口
50…保持フィルム
51…粘着層
55…接続配線
60…固定装置
61A,61B…金属プレート
62…ラバーヒータ
70…演算装置
80…粘着テープ
90…液体試料