IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

特許7405575ロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニット
<>
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニット 図1
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニット 図2
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニット 図3
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニット 図4
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニット 図5
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニット 図6
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニット 図7
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニット 図8
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニット 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20231219BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20231219BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B25J19/06
B25J5/00 E
B25J13/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019208772
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021079484
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】松平 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】榎本 穣
(72)【発明者】
【氏名】戸田 俊太郎
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-032858(JP,A)
【文献】実開平06-033210(JP,U)
【文献】特開昭63-123689(JP,A)
【文献】特開平05-057669(JP,A)
【文献】特開2001-287190(JP,A)
【文献】特開2001-096487(JP,A)
【文献】特開平07-160334(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0326576(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 -19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車に搭載されたロボットにかかる外力に基づいて前記ロボットを停止させる前記ロボットの制御装置であって、
前記搬送車が走行中か否かを判定する判定部と、
前記搬送車が走行中の場合は前記ロボットを停止させ、前記搬送車が走行中でない場合は前記ロボットを動作可能とする制御部と、
前記搬送車の走行経路上における段差を検出する段差検出部と、
前記搬送車の走行中における前記外力があらかじめ決められた閾値を超えた場合は、前記搬送車を停止させることを前記搬送車に要求する非常停止部と、
を備え、
前記搬送車の走行中における前記外力が前記閾値を超えた場合であって前記搬送車が前記段差を通過中である場合は、前記搬送車が走行を継続することは許容される、ロボットの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットの制御装置であって、
前記制御部は、前記搬送車が走行中の場合は前記ロボットへの電力供給を遮断し、前記搬送車が停止中の場合は前記ロボットへの電力供給を可能とする、ロボットの制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロボットの制御装置と、
前記制御装置に制御されるロボットと、
前記制御装置および前記ロボットを搭載した搬送車と、
を備える、協働作業ユニット。
【請求項4】
搬送車に搭載されたロボットの制御方法であって、
前記搬送車が走行中か否かを判定する判定ステップと、
前記搬送車が走行中でない場合に、前記ロボットを動作可能とさせつつ、前記ロボットにかかる外力に基づいて異常があるか否かを検出するロボット動作許容ステップと、
前記搬送車が走行中の場合、または前記異常が検出された場合に、前記ロボットを停止させるロボット停止ステップと、
前記搬送車の走行経路上における段差を検出する段差検出ステップと、
前記搬送車の走行中における前記外力があらかじめ決められた閾値を超えた場合であって前記搬送車が前記段差を通過中でない場合に実行され、前記搬送車を停止させるための制御が実行される非常停止ステップと、
を含み、
前記搬送車の走行中における前記外力が前記閾値を超えた場合であって前記搬送車が前記段差を通過中である場合は、前記搬送車が走行を継続することは許容される、ロボットの制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のロボットの制御方法であって、
前記ロボット停止ステップでは、前記ロボットへの電力供給を遮断することで前記ロボットを停止させる、ロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車に搭載されたロボットの制御装置ならびに制御方法、および搬送車ならびに搬送車に搭載されたロボットを備える協働作業ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
人と協働するロボットと、該ロボットを搭載した搬送車と、を備える協働作業ユニットが知られている。それは例えば特許文献1の「ロボット100」である。この「ロボット100」は、想定しない外力が自己にかかったか否かに基づいて、人と接触したか否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-32858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットと搬送車との各々は、ロボットが障害物と接触したときに停止するように制御される場合がある。この場合、ロボットの制御装置は、搬送車が段差を通過することで生じた外力であっても、障害物が接触することで生じた外力として認識してしまうことがある。結果として、搬送車は、段差を通過しようとしたときに停止するよう制御され、結果として段差を通過することができないことがあった。
【0005】
そこで、本発明は、搬送車と、搬送車に搭載されたロボットと、を備える協働作業ユニットに係り、段差を通過する際に搬送車が停止することが抑止されるロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の一つの態様は、搬送車に搭載されたロボットにかかる外力に基づいて前記ロボットを停止させる前記ロボットの制御装置であって、前記搬送車が走行中か否かを判定する判定部と、前記搬送車が走行中の場合は前記ロボットを停止させ、前記搬送車が走行中でない場合は前記ロボットを動作可能とする制御部と、を備える。
【0007】
発明のもう一つの態様は、協働作業ユニットであって、上記態様のロボットの制御装置と、前記制御装置に制御されるロボットと、前記制御装置および前記ロボットを搭載した搬送車と、を備える。
【0008】
発明のもう一つの態様は、搬送車に搭載されたロボットの制御方法であって、前記搬送車が走行中か否かを判定する判定ステップと、前記搬送車が走行中でない場合に、前記ロボットを動作可能とさせつつ、前記ロボットにかかる外力に基づいて異常があるか否かを検出するロボット動作ステップと、前記搬送車が走行中の場合、または前記異常が検出された場合に、前記ロボットを停止させるロボット停止ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、段差を通過する際に搬送車が停止することが抑止されるロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態の協働作業ユニットの全体構成図である。
図2】第1の実施の形態のロボットの制御装置の機能的な構成図である。
図3】第1の実施の形態のロボットの制御方法の一例を示すフローチャートである。
図4】第2の実施の形態の協働作業ユニットの全体構成図である。
図5】第2の実施の形態のロボットの制御装置の機能的な構成図である。
図6】第2の実施の形態のロボットの制御方法の一例を示すフローチャートである。
図7】第3の実施の形態の協働作業ユニットの全体構成図である。
図8】第3の実施の形態のロボットの制御装置の機能的な構成図である。
図9】第3の実施の形態のロボットの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るロボットの制御装置、ロボットの制御方法、および協働作業ユニットについて、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の協働作業ユニット10の全体構成図である。
【0013】
協働作業ユニット10は、例えば工業製品を製造する工場において、自身も移動しながら人と協働して作業を行うものである。協働作業ユニット10は、ロボット12と、ロボット12の制御装置14と、ロボット12および制御装置14が搭載された搬送車16と、を備える。なお、以下では、「ロボット12の制御装置14」を指して単に「制御装置14」とも記載する。
【0014】
本実施の形態のロボット12は、複数の関節部を有するロボットアームである。また、本実施の形態の搬送車16は、走行することで協働作業ユニット10の移動を実現するものであって、一般には「無人搬送車」や「AGV(Automated guided vehicle)」とも称される。このようなロボット12および搬送車16の各々は、それ自体は既知であるため、以下ではその説明を適宜割愛することがある。
【0015】
ロボット12が有する複数の関節部は、モータ18の駆動により動作する。モータ18は、例えばサーボモータである。モータ18は、不図示の給電回路およびアンプ(増幅器)を介して制御装置14から供給される駆動電流により駆動する。また、ロボット12には、当該ロボット12にかかる外力Fを検出するセンサ20が設けられる。
【0016】
センサ20は、関節部のモータ18に設けられることで、制御装置14からモータ18に供給される駆動電流や、モータ18の回転軸の回転のトルクに基づいて外力Fを検出する。また、センサ20は、検出した外力Fに応じた信号を、制御装置14の監視部32(後述)に出力する。
【0017】
図2は、第1の実施の形態のロボット12の制御装置14の機能的な構成図である。
【0018】
制御装置14は、所定の制御プログラム22に基づいてロボット12を制御するものである。制御装置14は、記憶部24と演算部26とを備える。
【0019】
記憶部24は、例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)をハードウェアとして構成に含む。記憶部24には、上記した所定の制御プログラム22が記憶される。
【0020】
演算部26は、例えばCPU(Central Processing Unit)をハードウェアとして構成に含む。演算部26は、記憶部24が記憶した所定の制御プログラム22を実行することで、ロボット12の制御を実現する。これに関連し、演算部26は、判定部28と、制御部30と、監視部32と、を備える。これらの各部は、演算部26が記憶部24と協働して制御プログラム22を実行することにより実現されるものである。以下、これらについて順を追って説明する。
【0021】
判定部28は、搬送車16が走行中か否かを判定するものである。具体的にどのようにして判定を行うのかについては、特に限定されない。いくつか例を挙げるとすれば、例えば、判定部28は、搬送車16が走行中であるか否かを示す信号を搬送車16から受け取ることで判定を行い得る。あるいは、判定部28は、搬送車16に設けた速度センサから搬送車16の走行速度を示す信号を受け取ることで判定を行い得る。あるいは、判定部28は、協働作業ユニット10にGPS(Global Positioning System)を適用することで協働作業ユニット10の現在位置を逐次取得し、その取得される位置の変化に基づいて判定を行い得る。
【0022】
制御部30は、判定部28の判定の結果に基づくことで、搬送車16が走行中の場合はロボット12を停止させ、搬送車16が走行中でない場合はロボット12を動作可能とするものである。ここで、制御部30は、搬送車16が走行中の場合には、ロボット12への電力供給を遮断することが好ましい。これにより、より確実にロボット12を停止させることができる。ロボット12を動作可能とするときには、電力供給を再開可能な状態に戻せばよい。
【0023】
ロボット12への電力供給の遮断とは、すなわち、モータ18への駆動電流の供給を遮断することである。これは、モータ18に駆動電流を供給する電線にスイッチ素子を挿入しておき、このスイッチ素子をオフに切替えることで容易に成し得る。
【0024】
また、制御部30は、改めて後述もするが、監視部32からロボット12に異常がある旨を通知されることがある。制御部30は、監視部32から当該通知を受けると、ロボット12を速やかに停止させる(ロボット12の姿勢を固定する)。
【0025】
監視部32には、センサ20から外力Fを示す信号が入力される。監視部32は、その信号に基づいて、作業中のロボット12に異常な外力Fがかかっていないかどうかを監視する。外力Fが異常であるか否かは、その外力Fが予め決められた閾値Vthを超えているか否かに基づいて判断する。閾値Vthは、制御プログラムに基づいて正常に作業をしているロボットにかかる外力Fの大きさを想定して決定されるものである。また、監視部32は、作業中のロボット12に異常な外力Fがかかっていると判断すると、ロボット12の作業中に異常が発生したと判断してその旨を制御部30に通知する。
【0026】
例えば、作業中のロボット12が障害物に接触(衝突)したとする。このとき、センサ20は、ロボット12から閾値を超える異常な外力Fを検出する。監視部32は、予め決められた閾値Vthを超える外力Fを示す信号がセンサ20から入力されると、ロボット12の作業中に異常が発生したと判断してその旨を制御部30に通知する。これにより、本実施の形態の制御装置14は、ロボット12と障害物とが接触するといった異常が発生した場合に、ロボット12を速やかに停止させ得る。
【0027】
なお、搬送車16が走行中であれば、本実施の形態のロボット12は動作しない。このため、監視部32は、搬送車16が走行中であれば、異常が発生したか否かを判断する必要はない。
【0028】
図3は、第1の実施の形態のロボット12の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0029】
以下、本実施の形態の制御装置14により実行され得る「ロボット12の制御方法」(以下、単に制御方法)について説明する。この制御方法では、まず、搬送車16が走行中か否かを判定する(S1:第1判定ステップ)。本ステップは、判定部28が行い得る。
【0030】
搬送車16が走行中でない場合(NO)には、ロボット12を動作可能とする(S2:ロボット動作許容ステップ)。ロボット動作許容ステップは、次の2つのステップを含む。すなわち、ロボット動作許容ステップは、制御プログラム22に基づくロボット12の作業(S3:作業ステップ)と、ロボット12にかかる外力Fが閾値Vth内に収まっているかどうか(異常があるか否か)の監視(S4:監視ステップ)と、を含む。作業ステップは、制御部30が制御プログラム22を実行することで行い得る。また、監視ステップは、センサ20が検出する外力Fを監視部32が監視することで行い得る。
【0031】
一方、搬送車16が走行中の場合(YES)は、ロボット12を停止させる(S5:ロボット停止ステップ)。本ステップは、制御部30が行い得る。ロボット12を停止させるときは、上記した通り、ロボット12への電力供給の遮断を行うことが好ましい。
【0032】
なお、ロボット停止ステップは、監視ステップで異常が検出された場合にも実行される。これにより、ロボット12の作業中に異常が発生したとしても、その作業が速やかに中断される。
【0033】
ロボット停止ステップを開始した後は、そのロボット停止ステップを終了するか否かの判定を行う(S6:第2判定ステップ)。本ステップでは、所定の条件が満たされたか否かにより、ロボット停止ステップを終了するか否かを判定する。ここで、所定の条件とは、適宜決定され得るものであるが、それは例えば、ロボット停止ステップを開始してから所定の時間が経過すること、あるいは、オペレータが停止の解除を指示することである。
【0034】
このように、本実施の形態では、搬送車16が走行中でなければロボット12が作業することが許容されるが、搬送車16が走行中であればロボット12が作業することが許容されない。また、ロボット12が作業していないとき、すなわち搬送車16が走行中のときにロボット12に外力Fがかかったとしても、搬送車16が走行を止めることはない。
【0035】
したがって、本実施の形態によれば、ロボット12とロボット12を搭載した搬送車16とを備える協働作業ユニット10について、搬送車16が段差を通過するときに停止してしまうことが抑止される。
【0036】
[第2の実施の形態]
以下、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態で説明した要素と同様の要素については、その説明を適宜割愛することがある。
【0037】
図4は、第2の実施の形態の協働作業ユニット10’の全体構成図である。
【0038】
本実施の形態の協働作業ユニット10’は、第1の実施の形態と同様のロボット12と搬送車16とを備える。すなわち、ロボット12は、モータ18により動作する複数の関節部を有し、モータ18には外力Fを検出するセンサ20が設けられる。本実施の形態では、このセンサ20を第1センサ20とも称する。搬送車16は、走行経路に沿ってロボット12を搭載した状態で走行するAGVである。
【0039】
また、協働作業ユニット10’は、第2の実施の形態の制御装置(ロボット12の制御装置)14’と、第2センサ34と、をさらに備える。本実施の形態の制御装置14’は、ロボット12を制御するための装置であって、搬送車16に搭載される。第2センサ34は、周辺の地形を検出するためのものであって、それは例えばビジョンセンサである。
【0040】
なお、第2センサ34は、周辺の地形を検出するものであればビジョンセンサに限定されず、例えば超音波センサであってもよい。第2センサ34の数および配置は、搬送車16の進行方向の地形を少なくとも検出できるようになっていれば、図4に示された構成に限定されない。
【0041】
図5は、第2の実施の形態のロボット12の制御装置14’の機能的な構成図である。
【0042】
制御装置14’は、演算部26’と記憶部24’とを備える。演算部26’および記憶部24’は、ハードウェアとしては第1の実施の形態の演算部26および記憶部24と同様の構成を備え得る。記憶部24’は、本実施の形態の制御を実現するための制御プログラム22’を記憶しているほか、ロボット12の制御に必要な情報を適宜記憶する。ロボット12の制御に必要な情報とは、例えば後述する地形情報である。
【0043】
演算部26’は、制御部30’と、段差検出部36と、監視部32’と、判定部28’と、非常停止部38と、を備える。これらの各部は、演算部26’が記憶部24’と協働して制御プログラム22’を実行することにより実現される。以下、これらについて順を追って説明する。
【0044】
制御部30’は、制御プログラム22’に基づいてモータ18の駆動を制御することで、ロボット12を動作させるものである。これにより、ロボット12は、人と協働して作業するように動作する。
【0045】
また、制御部30’は、以下で改めて後述するが、ロボット12の動作を停止することを非常停止部38から要求されることがある。制御部30’は、非常停止部38からロボット12の動作を停止することを要求されると、モータ18の駆動を止めることでロボット12を速やかに停止(姿勢を固定)させる。
【0046】
段差検出部36は、搬送車16の走行経路上の段差を検出するものである。本実施の形態の段差検出部36は、地形情報に基づくことで、走行する搬送車16が段差に到達する前に当該段差を検出する。地形情報とは、搬送車16の走行経路上の段差の位置を少なくとも示す情報のことである。
【0047】
地形情報は、第2センサ34が協働作業ユニット10’の周辺の地形を検出することで、搬送車16の走行に伴って逐次取得することができる。この手法は、一般にはSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)とも称される。
【0048】
また、地形情報は、工場内の床面のうちの何処に段差があるのかを協働作業ユニット10’の稼働前に予め調査することで取得されてもよい。この場合、第2センサ34を協働作業ユニット10’の構成から省略することができる。
【0049】
判定部28’は、ロボット12に外力Fがかかった場合に、その外力Fが搬送車16が段差を通過する間にかかったものであるか否かを判定するものである。この判定は、段差検出部36が検出した段差の位置と、外力Fがかかったときの協働作業ユニット10’の位置と、を照合することで行うことができる。協働作業ユニット10’の位置は、例えばGPSにより取得され得る。SLAMによるマッピングの結果から協働作業ユニット10’の位置を判定部28’が推定してもよい。
【0050】
上記の判定部28’は、例えばロボット12に外力Fがかかったときの協働作業ユニット10’の位置が段差の位置に一致していると、ロボット12にかかった外力Fが搬送車16が段差を通過する間にかかったものであると判定する。あるいは、ロボット12に外力Fがかかったときの協働作業ユニット10’の位置が段差を中心とする所定の範囲内にあると、ロボット12にかかった外力Fが搬送車16が段差を通過する間にかかったものであると判定する。
【0051】
監視部32’は、ロボット12にかかった外力Fが搬送車16が段差を通過する間にかかったものでない場合に、その外力Fに基づいて作業中のロボット12に発生する異常を検出する。監視部32’による異常の検出は、第1の実施の形態の監視部32と同様に、外力Fが予め決められた閾値Vth内に収まっているか否かに基づくことで行われる。
【0052】
異常を検出すると、監視部32’は、その旨を非常停止部38に通知する。非常停止部38は、搬送車16が段差を通過する間にロボット12にかかったものでない外力Fに基づいて異常が検出された場合に、制御部30’にロボット12の停止を要求する。また、搬送車16には、走行を停止することを要求する。
【0053】
制御部30’は、非常停止部38からロボット12の停止を要求されると、それに応じてロボット12を速やかに停止(姿勢を固定)させる。また、搬送車16は、非常停止部38から走行の停止を要求されると、その場で速やかに停止する。
【0054】
なお、搬送車16が段差を通過する間にロボット12に外力Fがかかった場合においては、そもそも監視部32’が異常を検出しない。したがって、その場合は、非常停止部38が制御部30’および搬送車16にロボット12の動作の停止および走行の停止を要求することはない。
【0055】
図6は、第2の実施の形態のロボット12の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0056】
以下、本実施の形態のロボット12の制御方法について説明する。なお、以下では、特に断らない限り、搬送車16は走行経路に沿って走行していることとして説明する。
【0057】
まず、搬送車16の走行経路上の段差を検出する(S11:段差検出ステップ)。段差検出ステップは、地形情報に基づいて、段差検出部36が行う。
【0058】
次に、ロボット12に外力Fがかかった場合に、その外力Fが搬送車16が段差を通過する間にかかったものであるか否かを判定する(S12:判定ステップ)。この判定は判定部28’が行う。
【0059】
判定は、地形情報から検出される段差の位置と、協働作業ユニット10’の現在位置と、を照合することで行い得る。協働作業ユニット10’が段差の付近を通過しているときにかかった外力Fであれば、その外力Fは搬送車16が段差を通過する間にかかったものであると判定することができる。
【0060】
ロボット12にかかった外力Fが、搬送車16が段差を通過する間にかかったものでない場合(判定結果NO)は、ロボット12の停止と、搬送車16への停止の要求と、を行う(S13:非常停止ステップ)。非常停止ステップは、非常停止部38が判定ステップで行われた判定の結果に基づいて、非常停止部38が制御部30’と搬送車16とにそれぞれ要求することで行われる。
【0061】
外力Fが搬送車16が段差を通過する間にかかったものである場合(判定結果YES)は、搬送車16への停止の要求は行われない(END)。したがって、搬送車16が段差を通過することでロボット12に外力Fがかかったとしても、搬送車16はそのまま走行し続ける。
【0062】
このように、本実施の形態のロボット12の制御装置14’および制御方法によれば、ロボット12とロボット12を搭載した搬送車16とを備える協働作業ユニット10’について、搬送車16が段差を通過するときに停止してしまうことが抑止される。また、本実施の形態では、搬送車16の走行と、ロボット12の作業と、が並行して行われ得る。
【0063】
[第3の実施の形態]
以下、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態の協働作業ユニット10’’は、搬送車16が段差に到達してから当該段差を検出するという点で、第2の実施の形態とは異なる。以下、そのような協働作業ユニット10’’の構成について説明する。なお、第1の実施の形態および第2の実施の形態で説明した要素と同様の要素については、その説明を適宜省略することがある。
【0064】
図7は、第3の実施の形態の協働作業ユニット10’’の全体構成図である。
【0065】
協働作業ユニット10’’は、モータ18を有するロボット12と、モータ18に設けられた第1センサ20と、搬送車16と、第3センサ40と、制御装置14’’と、を備える。これらのうち、ロボット12、搬送車16、モータ18および第1センサ20については他の実施の形態で既に説明しているので、ここでは説明を割愛する。
【0066】
第3センサ40は、搬送車16にかかる外力F’に基づく加速度を検出するものである。第3センサ40は、搬送車16に外力F’がかかったときに、その外力F’に基づく加速度に応じた検出信号を制御装置14’’に出力する。
【0067】
図8は、第3の実施の形態のロボット12の制御装置14’’の機能的な構成図である。
【0068】
制御装置14’’は、本実施の形態においてロボット12を制御するものである。制御装置14’’は、演算部26’’と記憶部24’’とを備える。演算部26’’および記憶部24’’は、ハードウェアとしては演算部26および記憶部24と同様の構成を備え得る。記憶部24’’には、制御プログラム22’’が記憶される。演算部26’’は、この制御プログラム22’’を実行することにより、以下で説明する制御方法を実現する。
【0069】
演算部26’’は、制御部30’’と、監視部32’’と、段差検出部36’と、判定部28’’と、非常停止部38’と、を備える。これらの各部は、演算部26’’が記憶部24’’と協働して制御プログラム22’’を実行することにより実現される。
【0070】
上記のうち、制御部30’’は、制御プログラム22’’に基づいてロボット12に作業を行わせるものである。また、監視部32’’は、制御部30’’がロボット12に作業を行わせているときに、第1センサ20により検出される外力Fを監視することで、作業中のロボット12にかかる異常な外力Fを検出する。
【0071】
段差検出部36’は、監視部32’’が検出した異常な外力Fに基づく加速度を算出する。これにより、ロボット12にかかる外力Fに基づいた加速度が求められる。また、段差検出部36’は、外力Fに基づいた加速度と、第3センサ40から入力された外力F’に基づく加速度と、の差分を算出する。この差分は、両者を三次元方向の各軸方向の成分に分解し、各成分毎に算出されることが好ましい。
【0072】
そして、段差検出部36’は、算出した差分が予め決められた範囲内であれば、搬送車16が通過した場所に段差があったと判断する(段差を検出する)。このように、本実施の形態の段差検出部36’は、搬送車16が段差に到達してから当該段差を検出するものである。なお、加速度の差分を複数の方向成分毎に算出した場合、段差検出部36’は、全ての方向における差分が上記範囲内であるか否かを判定する。
【0073】
判定部28’’は、段差検出部36’が段差を検出したか否かを判定することで、ロボット12に外力Fがかかった場合に、当該外力Fが搬送車16が段差を通過する間にかかったものであるか否かを判定する。すなわち、判定部28’’は、監視部32’’がロボット12にかかる異常な外力Fを検出し、且つ、その外力Fに基づいて段差検出部36’が段差を検出したか否かを判定する。判定部28’’は、異常な外力Fが検出されたにも関わらず、その外力Fに基づいて段差検出部36’が段差を検出しなかった場合は、非常停止部38’を呼び出す。
【0074】
非常停止部38’は、判定部28’’に呼び出されると、制御部30’’にロボット12の停止を要求する。また、搬送車16には、走行を停止することを要求する。
【0075】
以上が、本実施の形態の協働作業ユニット10’’の概要である。続いて、本実施の形態の制御装置14’’により実行され得るロボット12の制御方法を説明する。
【0076】
図9は、第3の実施の形態のロボット12の制御方法の一例を示すフローチャートである。なお、以下では、第2の実施の形態のときと同様に、特に断らない限り、搬送車16は走行経路に沿って走行していることとして説明する。
【0077】
本実施の形態の制御方法では、まず、監視部32’’がロボット12にかかる外力Fを監視することで、作業中のロボット12に発生する異常を検出する(S21:監視ステップ)。監視部32’’は、閾値Vthを超える外力Fがロボット12にかかったときに、異常が発生したと判断する。また、この間、ロボット12は、人と協働して作業を行い得る。作業するロボット12の動作の制御は、制御部30’’が制御プログラム22’’に基づいて行う。
【0078】
監視ステップで異常が検出されると(YES)、段差検出部36’は、ロボット12にかかった外力Fに基づいて段差を検出する(S22:段差検出ステップ)。上記したように、段差検出部36’は、ロボット12にかかった外力Fに基づく加速度と、搬送車16にかかった外力F’に基づく加速度と、の差分が予め決められた範囲内にあるか否かに基づいて、段差を検出し得る。
【0079】
次に、判定部28’’は、段差検出ステップの結果を受けて、外力Fが搬送車16が段差を通過する間にかかったものであるか否かを判定する(S23:判定ステップ)。この判定では、段差検出部36’が異常な外力Fに基づいて段差を検出した場合に、当該外力Fが搬送車16が段差を通過する間にかかったものであると判定される。
【0080】
監視ステップで検出された外力Fが搬送車16が段差を通過する間にかかったものであると判定された場合(YES)は、図9の制御方法としては一旦終了する(END)。この場合、搬送車16は、走行中であれば、停止することなく引き続き走行を継続する。
【0081】
その一方で、異常な外力Fが搬送車16が段差を通過する間にかかったものでない場合(NO)は、非常停止部38’が呼び出される(S24:非常停止ステップ)。非常停止ステップでは、ロボット12が作業中であればロボット12を停止させるとともに、搬送車16が走行中であれば搬送車16を停止させる。
【0082】
本実施の形態のロボット12の制御装置14’’および制御方法によれば、ロボット12に異常な外力Fがかかった場合であっても、その外力Fに基づいて段差が検出されるときには、非常停止部38’が呼び出されない。したがって、ロボット12とロボット12を搭載した搬送車16とを備える協働作業ユニット10’’について、搬送車16が段差を通過するときに停止してしまうことが抑止される。
【0083】
[変形例]
以上、本発明の一例として実施の形態が説明されたが、上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることはもちろんである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0084】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0085】
<第1の発明>
搬送車(16)に搭載されたロボット(12)にかかる外力(F)に基づいて前記ロボット(12)を停止させる前記ロボット(12)の制御装置(14)であって、前記搬送車(16)が走行中か否かを判定する判定部(28)と、前記搬送車(16)が走行中の場合は前記ロボット(12)を停止させ、前記搬送車(16)が走行中でない場合は前記ロボット(12)を動作可能とする制御部(30)と、を備える。
【0086】
これにより、段差を通過する際に搬送車(16)が停止することが抑止されるロボット(12)の制御装置(14)が提供される。
【0087】
前記制御部(30)は、前記搬送車(16)が走行中の場合は前記ロボット(12)への電力供給を遮断し、前記搬送車(16)が停止中の場合は前記ロボット(12)への電力供給を可能としてもよい。これにより、より確実にロボット(12)を停止させることができる。
【0088】
<第2の発明>
協働作業ユニット(10)であって、上記第1の発明のロボット(12)の制御装置(14)と、前記制御装置(14)に制御されるロボット(12)と、前記制御装置(14)および前記ロボット(12)を搭載した搬送車(16)と、を備える。
【0089】
これにより、段差を通過する際に搬送車(16)が停止することが抑止される協働作業ユニット(10)が提供される。
【0090】
<第3の発明>
搬送車(16)に搭載されたロボット(12)の制御方法であって、前記搬送車(16)が走行中か否かを判定する判定ステップと、前記搬送車(16)が走行中でない場合に、前記ロボット(12)を動作可能とさせつつ、前記ロボット(12)にかかる外力(F)に基づいて異常があるか否かを検出するロボット動作許容ステップと、前記搬送車(16)が走行中の場合、または前記異常が検出された場合に、前記ロボット(12)を停止させるロボット停止ステップと、を含む。
【0091】
これにより、段差を通過する際に搬送車(16)が停止することが抑止されるロボット(12)の制御方法が提供される。
【0092】
前記ロボット停止ステップでは、前記ロボット(12)への電力供給を遮断することで前記ロボット(12)を停止させてもよい。これにより、より確実にロボット(12)を停止させることができる。
【0093】
<第4の発明>
搬送車(16)に搭載されたロボット(12)にかかる外力(F)に基づいて前記搬送車(16)に停止することを要求する前記ロボット(12)の制御装置(14’、14’’)であって、前記搬送車(16)の走行経路上の段差を検出する段差検出部(36、36’)と、前記ロボット(12)に外力(F)がかかった場合に、前記外力(F)が前記搬送車(16)が前記段差を通過する間にかかったものであるか否かを判定する判定部(28’、28’’)と、前記外力(F)が前記搬送車(16)が前記段差を通過する間にかかったものである場合は、前記搬送車(16)に停止することを要求しない非常停止部(38、38’)と、を備える。
【0094】
これにより、段差を通過する際に搬送車(16)が停止することが抑止されるロボット(12)の制御装置(14’、14’’)が提供される。
【0095】
前記走行経路上の前記段差の位置を示す地形情報を記憶する記憶部(24’、24’’)をさらに備え、前記段差検出部(36、36’)は、前記地形情報に基づいて前記段差を検出してもよい。これにより、地形情報に基づいて段差が検出される。
【0096】
前記段差検出部(36’)は、前記ロボット(12)にかかった前記外力(F)と前記搬送車(16)にかかった外力(F’)との差分が予め決められた範囲内であるか否かに基づいて前記段差を検出してもよい。これにより、ロボット(12)に外力(F)がかかったときに、その外力(F)に基づいて段差が検出される。
【0097】
<第5の発明>
搬送車(16)に搭載されたロボット(12)の制御方法であって、前記搬送車(16)の走行経路上の段差を検出する段差検出ステップと、前記ロボット(12)に外力(F)がかかった場合に、前記外力(F)が前記搬送車(16)が前記段差を通過する間にかかったものであるか否かを判定する判定ステップと、前記外力(F)が前記搬送車(16)が前記段差を通過する間にかかったものでない場合は前記搬送車(16)に非常停止することを要求し、前記外力(F)が前記搬送車(16)が前記段差を通過する間にかかったものである場合は前記搬送車(16)に非常停止することを要求しない非常停止ステップと、を含む。
【0098】
これにより、段差を通過する際に搬送車(16)が停止することが抑止されるロボット(12)の制御方法が提供される。
【0099】
前記段差検出ステップでは、前記走行経路上の前記段差の位置を示す地形情報に基づいて判定してもよい。これにより、地形情報に基づいて段差が検出される。
【0100】
前記段差検出ステップでは、前記ロボット(12)にかかった前記外力(F)と前記搬送車(16)にかかった外力(F’)との差分が予め決められた範囲内であるか否かに基づいて前記段差を検出してもよい。これにより、ロボット(12)に外力(F)がかかったときに、その外力(F)に基づいて段差が検出される。
【符号の説明】
【0101】
10…協働作業ユニット 12…ロボット
14…制御装置 16…搬送車
20…センサ(第1センサ) 28…判定部
30…制御部 F…ロボットにかかる外力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9