(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】作業工具
(51)【国際特許分類】
B25F 3/00 20060101AFI20231219BHJP
B24B 23/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B25F3/00 Z
B24B23/04
(21)【出願番号】P 2019210855
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2019038938
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100125955
【氏名又は名称】藤田 有三子
(72)【発明者】
【氏名】生田 洋規
(72)【発明者】
【氏名】水谷 彰良
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-158879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 3/00
B24B 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端工具を揺動駆動して被加工材に対して加工作業を行う作業工具であって、
ハウジングと、
前記作業工具の上下方向を規定する駆動軸周りに回動可能に前記ハウジングに支持された筒状のスピンドルと、
前記スピンドル内で前記スピンドルと同軸状に延在するシャフト部と、前記シャフト部の下端に接続するヘッド部とを有し、前記スピンドルに対して前記上下方向に移動可能なクランプシャフトと、
前記クランプシャフトを前記スピンドルに対して上方に付勢し、前記ヘッド部と前記スピンドルの下端部の間で前記先端工具をクランプするクランプ力を付与するように構成された付勢部材と、
使用者の外部操作によって前記駆動軸周りに回動するように構成された操作部材と、
前記駆動軸周りの回転運動を前記駆動軸に沿った直線運動に変換するように構成された運動変換機構と、
前記スピンドルに対して少なくとも前記上下方向に移動可能に配置された押下げ部材とを備え、
前記運動変換機構は、前記操作部材の前記駆動軸周りの回動に連動して、前記押下げ部材を前記上下方向に移動させるように構成されており、
前記押下げ部材は、前記操作部材が第1方向に回動された場合、下方へ移動されて前記先端工具を下方に押し下げるように構成されていることを特徴とする作業工具。
【請求項2】
請求項1に記載の作業工具であって、
前記操作部材の前記第1方向への回動に連動して、前記付勢部材の付勢力に抗して前記クランプ力を解除するように構成された解除部材を更に備え、
前記押下げ部材は、前記解除部材によって前記クランプ力が解除された状態で、前記先端工具を下方へ押し下げるように構成されていることを特徴とする作業工具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業工具であって、
前記クランプシャフトは、前記スピンドルから取り外し可能であって、
前記作業工具は、前記ハウジング内に設けられ、前記クランプシャフトを前記スピンドルから取り外し不能にロックするように構成されたロック機構を更に備えたことを特徴とする作業工具。
【請求項4】
請求項3に記載の作業工具であって、
前記操作部材の前記第1方向への回動に連動して、前記付勢部材の付勢力に抗して前記クランプ力を解除するように構成された解除部材を更に備え、
前記第1方向への回動に連動して、前記解除部材による前記クランプ力の解除、前記押下げ部材による前記先端工具の押下げ、および前記ロック機構による前記クランプシャフトのロック解除が順に行われることを特徴とする作業工具。
【請求項5】
請求項4に記載の作業工具であって、
前記解除部材は、前記操作部材が基準位置から所定の角度範囲内で前記第1方向に回動されるのに連動して、前記クランプ力を解除するように構成されており、
前記運動変換機構は、前記操作部材が前記基準位置から前記角度範囲内で前記第1方向に回動されるのに連動して、前記押下げ部材を下方に移動させるように構成されており、
前記ロック機構は、前記操作部材が前記角度範囲を超えて前記第1方向に回動されるのに連動して、前記クランプシャフトのロックを解除するように構成されていることを特徴とする作業工具。
【請求項6】
請求項3~5の何れか1つに記載の作業工具であって、
前記ロック機構は、前記クランプシャフトのロックが解除された状態において、前記クランプシャフトを暫定的に保持するように構成されていることを特徴とする作業工具。
【請求項7】
請求項3~6の何れか1つに記載の作業工具であって、
前記押下げ部材は、前記スピンドルを介して前記ハウジングに支持されており、
前記ロック機構は、前記クランプシャフトを前記押下げ部材に固定することで、前記クランプシャフトをロックするように構成されていることを特徴とする作業工具。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1つに記載の作業工具であって、
前記押下げ部材は、前記スピンドルと同軸状に、前記スピンドルの径方向において前記スピンドルと前記シャフト部の間に配置された筒状部を含み、
前記作業工具は、前記筒状部と前記スピンドルの間に配置された第1シール部材を更に備えたことを特徴とする作業工具。
【請求項9】
請求項8に記載の作業工具であって、
前記第1シール部材よりも上側で前記筒状部と前記スピンドルの間に配置された第2シール部材を更に備え、
前記運動変換機構は、前記スピンドルに設けられた第1部分と、前記筒状部に設けられた第2部分とを含むカム機構であって、前記上下方向において、前記第1シール部材と前記第2シール部材の間に配置されていることを特徴とする作業工具。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1つに記載の作業工具であって、
前記運動変換機構は、前記駆動軸周りの周方向に傾斜する傾斜溝を有する第1カム部と、前記傾斜溝の一部に整合する曲面を有し、前記傾斜溝内を摺動可能に構成された係合部を有する第2カム部とを含むカム機構であることを特徴とする作業工具。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1つに記載の作業工具であって、
前記操作部材は、回動に伴って、前記押下げ部材を前記スピンドルに対して前記駆動軸周りに回動させるように構成されており、
前記運動変換機構は、前記駆動軸周りの周方向に傾斜する傾斜面または傾斜溝を利用するカム機構であって、前記押下げ部材の回動を、前記押下げ部材の前記上下方向の直線移動に変換するように構成されており、
前記傾斜面または前記傾斜溝は、前記第1方向に向かうにつれて所定の境界まで下方に傾斜し、前記境界を越えると上方に傾斜するように構成されていることを特徴とする作業工具。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1つに記載の作業工具であって、
前記押下げ部材は、前記スピンドルに挿通され、前記先端工具の揺動駆動時に前記スピンドルと共に前記駆動軸周りに往復回動するように構成されており、
前記作業工具は、前記駆動軸に対して径方向において、前記ハウジングと前記押下げ部材との間に配置された軸受部材を更に備えたことを特徴とする作業工具。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1つに記載の作業工具であって、
前記操作部材は、回動に伴って、前記押下げ部材を前記スピンドルに対して前記駆動軸周りに回動させるように構成されており、
前記付勢部材は、前記上下方向に延在し、前記スピンドルと前記押下げ部材とを、前記上下方向において互いから離れる方向に付勢しており、
前記作業工具は、前記付勢部材の上端または下端と、前記スピンドルまたは前記押下げ部材との間に配置された摩擦低減部材を更に備えたことを特徴とする作業工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端工具を揺動駆動して被加工材に対して加工作業を行う作業工具に関する。
【背景技術】
【0002】
スピンドルに装着された先端工具を所定の角度範囲内で揺動駆動することで、被加工材に加工作業を行う作業工具(いわゆる振動工具)が知られている。先端工具は、例えば、スピンドルの下端部と、スピンドルに対して同軸状に配置され、スピンドルに対して上方へ付勢されたクランプシャフトの下端部とによってクランプされる(例えば、特許文献1参照)。
(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなクランプ式の振動工具では、先端工具がスピンドルに対して強固に押し付けられた状態で揺動駆動されると、先端工具がスピンドルの下端部に固着してしまい、先端工具を取り外すことが難しい場合がある。よって、振動工具には、先端工具の取り外しに関し、改善の余地がある。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、先端工具を揺動駆動する作業工具において、先端工具の容易な取り外しに資する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様において、先端工具を揺動駆動して被加工材に対して加工作業を行う作業工具が提供される。この作業工具は、ハウジングと、スピンドルと、クランプシャフトと、付勢部材と、操作部材と、運動変換機構と、押下げ部材とを備えている。
【0007】
スピンドルは、筒状に構成され、作業工具の上下方向を規定する駆動軸周りに回動可能にハウジングに支持されている。クランプシャフトは、シャフト部とヘッド部とを有する。シャフト部は、スピンドル内でスピンドルと同軸状に延在する。ヘッド部は、シャフト部の下端に接続する。クランプシャフトは、スピンドルに対して上下方向に移動可能である。付勢部材は、クランプシャフトをスピンドルに対して上方に付勢し、ヘッド部とスピンドルの下端部の間で先端工具をクランプするクランプ力を付与するように構成されている。操作部材は、使用者の外部操作によって駆動軸周りに回動するように構成されている。運動変換機構は、駆動軸周りの回転運動を、駆動軸に沿った直線運動に変換するように構成されている。押下げ部材は、スピンドルに対して少なくとも上下方向に移動可能に配置されている。そして、運動変換機構は、操作部材の駆動軸周りの回動に連動して、押下げ部材を上下方向に移動させるように構成されている。押下げ部材は、操作部材が第1方向に回動された場合、下方へ移動されて先端工具を下方に押し下げるように構成されている。
【0008】
本態様の作業工具によれば、操作部材が使用者によって第1方向へ回動されると、運動変換機構によって押下げ部材がスピンドルに対して下方へ移動され、その過程で先端工具を下方へ押し下げる。よって、先端工具がスピンドルの下端部に固着してしまった場合でも、使用者は、操作部材を第1方向に回動させる操作をするだけで、先端工具を容易に取り外すことができる。
【0009】
なお、運動変換機構は、例えば、傾斜面または傾斜溝を利用するカム機構、ネジ溝を利用するネジ機構として構成されうる。また、運動変換機構は、操作部材の回動を、直接的に押下げ部材の上下方向の移動に変換してもよいし、別の部材を介して変換してもよい。例えば、運動変換機構は、操作部材の回動に連動する押下げ部材の回動を、押下げ部材の上下方向の移動に変換してもよいし、操作部材の回動を、押下げ部材とは異なる部材の上下方向の移動に変換して押下げ部材に伝達してもよい。
【0010】
本発明の一態様において、作業工具は、操作部材の第1方向への回動に連動して、付勢部材の付勢力に抗してクランプ力を解除するように構成された解除部材を更に備えてもよい。そして、押下げ部材は、解除部材によってクランプ力が解除された状態で、先端工具を下方へ押し下げるように構成されていてもよい。本態様によれば、操作部材が使用者によって第1方向へ回動されると、クランプ力が解除された状態で先端工具が押し下げられる。よって、先端工具に過大な押し下げ力をかける必要がない。
【0011】
本発明の一態様において、クランプシャフトは、スピンドルから取り外し可能であってもよい。そして、作業工具は、ハウジング内に設けられ、クランプシャフトをスピンドルから取り外し不能にロックするように構成されたロック機構を更に備えてもよい。本態様によれば、使用者は、クランプシャフトをスピンドルから取り外し、先端工具の交換作業を行うことができる。
【0012】
本発明の一態様において、作業工具は、操作部材の第1方向への回動に連動して、付勢部材の付勢力に抗してクランプ力を解除するように構成された解除部材を更に備えてもよい。そして、第1方向の回動に連動して、解除部材によるクランプ力の解除、押下げ部材による先端工具の押下げ、およびロック機構によるクランプシャフトのロック解除が順に行われてもよい。本態様によれば、使用者は、操作部材を第1方向に回動させるという単一の操作のみで、クランプ力の解除動作、先端工具の押下げおよびクランプシャフトのロック解除動作を、最も効率的な順番で作業工具に行わせることができる。
【0013】
本発明の一態様において、解除部材は、操作部材が基準位置から所定の角度範囲内で第1方向に回動されるのに連動して、クランプ力を解除するように構成されていてもよい。そして、運動変換機構は、操作部材が基準位置から角度範囲内で第1方向に回動されるのに連動して、押下げ部材を下方に移動させるように構成されていてもよい。更に、ロック機構は、操作部材が角度範囲を超えて第1方向に回動されるのに連動して、クランプシャフトのロックを解除するように構成されていてもよい。本態様によれば、使用者が操作部材を基準位置から第1方向に所定の角度範囲まで回動する間に、クランプ力が解除され、且つ、押下げ部材によって先端工具が押し下げられる。その後、使用者が操作部材を所定の角度範囲を超えて更に第1方向に回動すると、クランプシャフトのロックが解除され、クランプシャフトの取り外しが可能となる。使用者は、操作部材を所定の角度範囲を超えて第1方向に回動させるという単一の操作のみで、クランプ力の解除および先端工具の押下げの後、クランプシャフトのロック解除を行うという効率的な一連の動作を作業工具に行わせることができる。
【0014】
本発明の一態様において、ロック機構は、クランプシャフトのロックが解除された状態において、クランプシャフトを暫定的に保持するように構成されていてもよい。なお、本態様でいう「暫定的に保持する」とは、外力(典型的には、使用者による引き抜き方向の力)がクランプシャフトに付与されない限り、スピンドルに対するクランプシャフトの位置を維持する意である。「暫定的に保持する」とは、「使用者による引き抜き操作に応じてスピンドルから取り外し可能に保持する」と言い換えることもできる。本態様によれば、クランプシャフトのロックが解除されたときに、クランプシャフトがスピンドルから脱落するのを防止することができる。
【0015】
本発明の一態様において、押下げ部材は、スピンドルを介してハウジングに支持されていてもよい。そして、ロック機構は、クランプシャフトを押下げ部材に固定することで、クランプシャフトをロックするように構成されていてもよい。本態様によれば、合理的な構成のロック機構が実現される。
【0016】
本発明の一態様において、押下げ部材は、スピンドルと同軸状に、スピンドルの径方向においてスピンドルとシャフト部の間に配置された筒状部を含んでもよい。そして、作業工具は、筒状部とスピンドルの間に配置された第1シール部材を更に備えてもよい。本態様によれば、筒状部とスピンドルの間からスピンドル内に粉塵等の異物が進入するのを防止することができる。
【0017】
本発明の一態様において、作業工具は、第1シール部材よりも上側で筒状部とスピンドルの間に配置された第2シール部材を更に備えてもよい。そして、運動変換機構は、スピンドルに設けられた第1部分と、筒状部に設けられた第2部分とを含むカム機構であって、上下方向において、第1シール部材と第2シール部材の間に配置されていてもよい。本態様によれば、第1シール部材と第2シール部材の間に潤滑剤を封入することで、カム機構の円滑な動作を確保することができる。
【0018】
本発明の一態様において、運動変換機構は、第1カム部と第2カム部とを含むカム機構であってもよい。第1カム部は、駆動軸周りの周方向に傾斜する傾斜溝を有してもよい。第2カム部は、傾斜溝の一部に整合する曲面を有し、傾斜溝内を摺動可能に構成された係合部を有してもよい。本態様によれば、比較的小型のカム機構を実現することができる。
【0019】
本発明の一態様において、操作部材は、回動に伴って、押下げ部材をスピンドルに対して駆動軸周りに回動させるように構成されていてもよい。運動変換機構は、駆動軸周りの周方向に傾斜する傾斜面または傾斜溝を利用するカム機構であって、押下げ部材の回動を、押下げ部材の上下方向の直線移動に変換するように構成されていてもよい。そして、傾斜面または傾斜溝は、第1方向に向かうにつれて所定の境界まで下方に傾斜し、境界を越えると上方に傾斜するように構成されていてもよい。本態様によれば、操作部材の第1方向の回動に連動して押下げ部材が相対回動すると、傾斜面または傾斜溝のうち、第1方向に向かうにつれて下方に傾斜する部分(境界までの部分)の作用によって、押下げ部材は下方に移動する。しかし、傾斜面または傾斜溝のうち、境界を越える部分は上方に傾斜しているため、押下げ部材は下方に移動した後、上方に移動する。これにより、押下げ部材の下方への移動終了を明確化することができる。
【0020】
本発明の一態様において、押下げ部材は、スピンドルに挿通され、先端工具の揺動駆動時にスピンドルと共に駆動軸周りに往復回動するように構成されていてもよい。そして、作業工具は、駆動軸に対して径方向において、ハウジングと押下げ部材との間に配置された軸受部材を更に備えてもよい。本態様によれば、押下げ部材の円滑な回動を確保しつつ、押下げ部材が駆動軸に対して傾くのを効果的に防止することができる。
【0021】
本発明の一態様において、操作部材は、回動に伴って、押下げ部材をスピンドルに対して駆動軸周りに回動させるように構成されていてもよい。付勢部材は、上下方向に延在し、スピンドルと押下げ部材とを、上下方向において互いから離れる方向に付勢していてもよい。そして、作業工具は、付勢部材の上端または下端と、スピンドルまたは押下げ部材との間に配置された摩擦低減部材を更に備えてもよい。本態様によれば、操作部材の回動時に、押下げ部材のスピンドルに対する円滑な回動を実現することができる。
【0022】
本発明の一態様において、先端工具を揺動駆動して被加工材に対して加工作業を行う作業工具が提供される。この作業工具は、ハウジングと、スピンドルと、クランプシャフトと、付勢部材と、ロック機構と、解除部材と、操作部材とを備えている。
【0023】
スピンドルは、筒状に構成され、作業工具の上下方向を規定する駆動軸周りに回動可能にハウジングに支持されている。クランプシャフトは、シャフト部とヘッド部とを有する。シャフト部は、スピンドル内でスピンドルと同軸状に延在する。ヘッド部は、シャフト部の下端に接続する。クランプシャフトは、スピンドルに対して上下方向に移動可能である。付勢部材は、クランプシャフトをスピンドルに対して上方に付勢し、ヘッド部とスピンドルの下端部の間で先端工具をクランプするクランプ力を付与するように構成されている。ロック機構は、ハウジング内に設けられ、クランプシャフトをスピンドルから取り外し不能にロックするように構成されている。解除部材は、付勢部材の付勢力に抗してクランプ力を解除するように構成されている。操作部材は、使用者の外部操作によって駆動軸周りに回動するように構成されている。そして、ロック機構は、操作部材の第1方向への回動に連動して、クランプシャフトのロックを解除するように構成されている。また、解除部材は、操作部材の第1方向への回動に連動して、クランプ力を解除するように構成されている。
【0024】
本態様によれば、使用者は、操作部材を第1方向に回動させるという単一の操作のみで、クランプシャフトのロック解除動作とクランプ力の解除動作の両方を作業工具に行わせることができる。
【0025】
本発明の一態様において、解除部材は、操作部材が基準位置から所定の角度範囲内で第1方向に回動されるのに連動して、クランプ力を解除するように構成されていてもよい。そして、ロック機構は、操作部材が角度範囲を超えて第1方向に回動されるのに連動して、クランプシャフトのロックを解除するように構成されていてもよい。本態様によれば、使用者が操作部材を基準位置から第1方向に所定の角度範囲まで回動する間に、クランプ力が解除され、その後、使用者が操作部材を所定の角度範囲を超えて更に第1方向に回動すると、クランプシャフトのロックが解除され、クランプシャフトの取り外しが可能となる。使用者は、操作部材を所定の角度範囲を超えて第1方向に回動させるという単一の操作のみで、クランプ力の解除の後、クランプシャフトのロック解除を行うという効率的な一連の動作を作業工具に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】回動レバーが初期位置にあるときの振動工具の全体斜視図である。
【
図2】回動レバーが初期位置にあるときの振動工具の断面図である。
【
図4】回動レバーが初期位置にあるときのスピンドル、クランプ機構、および回動レバーの断面図(
図3で図示されているボールの中心と駆動軸を通る断面図)である。
【
図5】スピンドル、クランプ機構、および回動レバーの分解斜視図である。
【
図6】
図2のVI-VI線における断面図である(但し、クランプシャフト、中間シャフト、ボールおよびロックスリーブのみを示す)。
【
図7】回動レバーが初期位置から解除方向に概ね90度回動されたときのスピンドル、クランプ機構、および回動レバーの断面図(
図3で図示されているボールの中心と駆動軸を通る断面図)である。
【
図8】
図6に対応する断面図であって、回動レバーが初期位置から解除方向に概ね90度回動されたときの状態を示す。
【
図9】回動レバーが初期位置にあるときの第1カム部および第2カム部を示す説明図である。
【
図10】回動レバーが初期位置から解除方向に概ね65度回動されたときの第1カム部および第2カム部を示す説明図である。
【
図11】
図6に対応する断面図であって、回動レバーが初期位置から解除方向に概ね65度回動されたときの状態を示す。
【
図12】回動レバーが初期位置から解除方向に概ね90度回動されたときの第1カム部および第2カム部を示す説明図である。
【
図13】回動レバーが初期位置から解除方向に概ね120度回動されたときの第1カム部および第2カム部を示す説明図である。
【
図14】
図6に対応する断面図であって、回動レバーが初期位置から解除方向に概ね120度回動されたときの状態を示す。
【
図15】回動レバーが初期位置にあるときの別の振動工具の前端部の断面図である。
【
図17】
図15のスピンドル、クランプ機構および回動レバーの拡大図である。
【
図18】中間シャフトおよびロック機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
【0028】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態に係る振動工具1Aについて説明する。振動工具1Aは、先端工具91を揺動駆動して、被加工材(図示せず)に対して加工作業を行う電動式の作業工具の一例である(
図1参照)。振動工具1Aには、装着可能な先端工具91として、ブレード、スクレーパ、研削パッド、研磨パッド等の複数種類が用意されている。使用者は、これらの先端工具91のうち、切断、剥離、研削、研磨等、所望の加工作業に適した1つを選択して振動工具1Aに装着し、加工作業を行うことができる。なお、以下で参照する図面では、先端工具91の一例として、ブレードが振動工具1Aに装着された例が図示されている。
【0029】
まず、振動工具1Aの概略構成について説明する。
図1および
図2に示すように、振動工具1Aは、長尺状のハウジング(工具本体ともいう)10を備えている。ハウジング10の長軸方向における一端部には、スピンドル3Aおよびモータ21が収容されている。スピンドル3Aは、ハウジング10の長軸に交差する(詳細には、概ね直交する)駆動軸A1に沿って配置されている。スピンドル3Aは、駆動軸A1の軸方向(以下、駆動軸A1方向ともいう)における一端部がハウジング10から突出し、外部へ露出している。この部分には、先端工具91を着脱可能である。また、ハウジング10の長軸方向における他端部には、モータ21への給電用のバッテリ93が着脱可能である。ハウジング10の長軸方向における中央部は、両端部に比べて小径の筒状に形成されており、使用者によって把持される把持部15を構成する。振動工具1Aは、モータ21の動力によってスピンドル3Aを駆動軸A1周りに所定の角度範囲内で往復回動することで、先端工具91を、駆動軸A1に直交する揺動面内で所定の角度範囲内で揺動させる。
【0030】
なお、以下の説明では、便宜上、振動工具1Aの方向に関し、駆動軸A1方向を上下方向と定義する。上下方向において、先端工具91が装着されるスピンドル3Aの一端部側を下側、反対側を上側と定義する。また、駆動軸A1に直交し、且つ、ハウジング10の延在方向(つまり、ハウジング10の長軸方向)に対応する方向を前後方向と定義する。前後方向において、スピンドル3Aが収容されているハウジング10の一端部側を前側、バッテリ93が装着される他端部側を後側と定義する。また、上下方向および前後方向に直交する方向を、左右方向と定義する。
【0031】
以下、振動工具1Aの詳細構成について説明する。
【0032】
まず、ハウジング10について説明する。
図2に示すように、本実施形態のハウジング10は、いわゆる防振ハウジングとして構成されており、アウタハウジング101とインナハウジング103とを含む。アウタハウジング101は、前後方向に延在する長尺状の中空体であって、振動工具1Aの外郭を形成する。インナハウジング103は、前後方向に延在する長尺状の中空体であって、アウタハウジング101内に収容されている。インナハウジング103は、モータ21、スピンドル3A等を収容する。詳細は図示しないが、アウタハウジング101は、複数の弾性部材を介してインナハウジング103に連結されており、インナハウジング103に対して前後、左右、上下方向に相対移動可能である。
【0033】
図1に示すように、ハウジング10(アウタハウジング101)の前端部11の上部には、回動レバー81が設けられている。回動レバー81は、後述のクランプ機構5A(
図3参照)による先端工具91のクランプとその解除用の操作部材として構成されており、使用者の回動操作によって駆動軸A1周りに回動可能に配置されている。本実施形態では、回動レバー81は、駆動軸A1(
図2参照)周りに回動可能にハウジング10に支持された円板状の固定部811と、固定部811から概ね接線方向に延びるレバー813とを含む。また、固定部811の下端部からは、一対の突起815が下方に突出している(
図5参照)。突起815は、駆動軸A1を中心として対称状に配置されており、回動レバー81の回動に連動して、後述する中間シャフト53を回動させるように構成されている。
【0034】
なお、
図1に示すように、本実施形態では、回動レバー81は、レバー813が前端部11の右側面に当接する位置を初期位置として、上からみて反時計回り方向(レバー813が前端部11の右側面から離れる方向)に概ね120度回動可能とされている。なお、詳細は後述するが、上から見て反時計回り方向の回動レバー81の回動により、先端工具91のクランプが解除されることから、以下では、この方向を解除方向ともいう。反対に、回動レバー81の上から見て時計回り方向を、クランプ方向ともいう。回動レバー81とクランプ機構5Aとの連動については後述する。
【0035】
ハウジング10の前端部11と把持部15の境界領域の上部(回動レバー81の後側)には、スライダ27が設けられている。スライダ27は、使用者の操作に応じて前後方向にスライド可能に配置されており、把持部15内に収容されたスイッチ29(
図2参照)のオン、オフの切り替え用の操作部材として構成されている。後端部13の上部には、モータ21の回転数を無段階で設定するための回動式の変速ダイアル28が外部操作可能に配置されている。
【0036】
以下、ハウジング10の内部構造について説明する。
【0037】
図2に示すように、ハウジング10(詳細には、アウタハウジング101)の後端部13には、バッテリ93を着脱可能に構成されたバッテリ装着部131が設けられている。バッテリ装着部131は、充電式のバッテリ93をスライド係合可能な係合構造と、バッテリ93の係合に伴って、バッテリ93の端子に接続可能な端子とを有する。なお、バッテリ装着部131およびバッテリ93の構成自体は周知であるため、ここでの説明は省略する。また、ハウジング10(詳細には、アウタハウジング101)の後端部13内には、モータ21の駆動を制御するコントローラ20が収容されている。なお、本実施形態では、コントローラ20は、スイッチ29がオンに切り替えられると、変速ダイアル28で設定された回転数でモータ21を駆動するように構成されている。
【0038】
また、
図3に示すように、ハウジング10(詳細には、インナハウジング103)の前端部11には、スピンドル3Aと、モータ21と、伝達機構4と、クランプ機構5Aとが収容されている。以下、これらの構成について順に説明する。
【0039】
図3に示すように、スピンドル3Aは、前端部11の下部において、ハウジング10(インナハウジング103)に保持された2つのベアリング301、302によって、駆動軸A1周りに回転可能に支持されている。
図4および
図5に示すように、スピンドル3Aは、長尺の円筒状部材である。本実施形態では、スピンドル3Aは、一体状に形成された円筒部31と、フランジ部32とを含む。
【0040】
円筒部31は、均一の内径を有する円筒状の部分であって、駆動軸A1に沿って上下方向に延在する。円筒部31の内部には、後述する中間シャフト53が挿通されている。ベアリング301、302は、夫々、円筒部31の上端部と下端部を支持している。
【0041】
フランジ部32は、円筒部31の下端に接続するフランジ状の部分である。フランジ部32の下端部は、先端工具91が装着される工具装着部35として構成されている。工具装着部35は、上方に凹む凹部351を有する。凹部351を規定する面(工具装着部35の内周面)は、下方に向かうにつれて駆動軸A1から離れる方向(径方向外側)に傾斜する傾斜面353を含む。一方、振動工具1Aに装着可能な先端工具91(ブレード、スクレーパ、研削パッド、研磨パッド等)は何れも、工具装着部35の凹部351に嵌合可能な凸部911を有する。凸部911の中央部には、クランプシャフト51のシャフト部511を挿通可能な貫通孔912が設けられている。また、凸部911を規定する上面の一部は、傾斜面353に整合する傾斜面913として構成されている。本実施形態では、先端工具91は、傾斜面913が傾斜面353に当接した状態で、工具装着部35と、後述のクランプシャフト51のヘッド部515とによってクランプされ、スピンドル3Aに対して固定される。スピンドル3Aに対する先端工具91の固定については後で詳述する。
【0042】
また、
図4に示すように、フランジ部32の上端部の内部には、第1カム部33が設けられている。第1カム部33は、後述する中間シャフト53の第2カム部55と協働して、中間シャフト53の回動に伴って、中間シャフト53をスピンドル3Aに対して上下方向に移動させるように構成されている。第1カム部33の詳細構成については後述する。
【0043】
なお、フランジ部32の内部には、シール部材39が嵌めこまれている。より詳細には、シール部材39は、工具装着部35と第1カム部33の間の部分(凹部351の上側部分)に嵌め込まれている。シール部材39には、後述する中間シャフト53のフランジ部56が摺動可能に挿通されている。本実施形態では、シール部材39は、オイルシールであって、工具装着部35と中間シャフト53の間から、第1カム部33および第2カム部55の摺動面の潤滑のための潤滑剤が外部へ漏出するのを防止するとともに、外部から粉塵等の異物が進入することを防止する。
【0044】
図3に示すように、駆動源としてのモータ21は、ステータと、ロータと、ロータから延設されて、ロータと一体的に回転する出力シャフト211を備えている。モータ21は、出力シャフト211の回転軸A2が、スピンドル3Aの駆動軸A1と平行に(つまり、上下方向に)延在するように配置されている。出力シャフト211はロータから下方向に突出している。なお、本実施形態では、モータ21として、ブラシレス直流モータが採用されている。
【0045】
伝達機構4は、モータ21の回転運動をスピンドル3Aに伝達し、スピンドル3Aを駆動軸A1周りの所定の角度範囲内で往復回動させるように構成されている。
図3に示すように、伝達機構4は、偏心シャフト41と、揺動アーム43と、ベアリング45とを含む。偏心シャフト41は、モータ21の本体部(ステータおよびロータ)の下側で出力シャフト211に同軸状に連結されている。偏心シャフト41は、回転軸A2に対して偏心した偏心部を有する。偏心部の外周部には、ベアリング45が取り付けられている。揺動アーム43は、ベアリング45とスピンドル3Aとを接続する部材である。揺動アーム43の一端部は、環状に形成され(
図5参照)、ベアリング301、302の間でスピンドル3A(詳細には、円筒部31)の外周に固定されている。一方、揺動アーム43の他端部は、二股状に形成されており(
図5参照)、左右からベアリング45の外輪の外周に当接するように配置されている。
【0046】
モータ21が駆動されると、出力シャフト211と一体的に偏心シャフト41が回転する。偏心シャフト41の回転に伴い、偏心部の中心が回転軸A2周りを移動するため、ベアリング45も回転軸A2周りを移動する。これにより、揺動アーム43は、スピンドル3Aを支点として、所定の角度範囲内で揺動される。揺動アーム43の環状の一端部はスピンドル3Aに固定されているため、スピンドル3Aは、揺動アーム43の揺動運動に伴って、駆動軸A1回りに所定の角度範囲内で往復回動する。その結果、スピンドル3A(より詳細には、工具装着部35)に固定された先端工具91が揺動駆動され、加工作業が遂行可能となる。
【0047】
クランプ機構5Aは、先端工具91を工具装着部35に対して上方に押し付け、スピンドル3Aと一体的に回転可能に工具装着部35に固定するように構成された機構である。
図3に示すように、本実施形態では、クランプ機構5Aは、クランプシャフト51と、中間シャフト53と、クランプバネ59と、ロック機構6Aとを含む。以下、これらの構成について順に説明する。
【0048】
まず、クランプシャフト51について説明する。クランプシャフト51は、スピンドル3Aに挿入されて、スピンドル3Aに先端工具91を固定するための長尺部材である。なお、本実施形態では、クランプシャフト51は、スピンドル3Aから取り外し可能に構成されている。
図4および
図5に示すように、クランプシャフト51は、一体状に形成されたシャフト部511とヘッド部515とを含む。
【0049】
シャフト部511は、長尺の丸棒(円柱)状の部分であって、スピンドル3A内(より詳細には、後述の中間シャフト53内)にスピンドル3Aと同軸状に配置され、上下方向に延在する。シャフト部511の上端部には、略半円状の断面を有する環状の係合溝512が形成されている。係合溝512には、ボール61が係合可能である。また、シャフト部511の下端部に形成された環状の溝には、環状の弾性部材(Oリングともいう)513が装着されている。ヘッド部515は、シャフト部511の下端に接続する、シャフト部511よりも大径の部分である。ヘッド部515は、先端工具91に下方から当接し、先端工具91を工具装着部35に押し付ける部位である。本実施形態では、ヘッド部515は円柱状に形成されているが、ヘッド部515は他の形状を有してもよい。
【0050】
中間シャフト53について説明する。
図3に示すように、中間シャフト53は、スピンドル3Aと同軸状に配置されて上下方向に延在し、クランプシャフト51を保持するように構成されている。また、中間シャフト53は、スピンドル3Aに対して駆動軸A1周りに回動可能、且つ、上下方向に移動可能に配置されている。本実施形態では、中間シャフト53は、長尺部材として構成されており、スピンドル3Aに挿通された状態で、スピンドル3Aを介してハウジング10(詳細には、インナハウジング103)に支持されている。
【0051】
図4および
図5に示すように、中間シャフト53は、一体状に形成された円筒状の下側部分54と、丸棒状の上側部分57とを含む。
【0052】
下側部分54には、クランプシャフト51のシャフト部511が挿入される。下側部分54の内径は、シャフト部511(係合溝512以外の部分)の直径と概ね等しい。また、下側部分54の軸方向の長さはスピンドル3Aよりも長く、下側部分54の上端部(後述のロック部541)は、スピンドル3Aの上端から上方に突出している。下側部分54は、ロック部541と、摺動部545と、フランジ部56とを含む。
【0053】
ロック部541は、下側部分54の上端部であって、シャフト部511が最大限まで挿入されたときに、係合溝512を含むシャフト部511の上端部が配置される部分である。
図6に示すように、ロック部541には、3つのボール保持孔542が設けられている。各ボール保持孔542は、ボール61を径方向に移動可能に保持するように構成されている。なお、ボール保持孔542は、ボール61がその移動範囲内で最も径方向内側に配置されたとき、ロック部541の内周面(ボール保持孔542の最内端)よりも内側(駆動軸A1側)にボール61の一部が突出することは許容するが、ボール61が内側へ脱落することは禁止するように構成されている。なお、ボール61が最も径方向内側に配置されたとき、ボール61の一部は、ロック部541の外周面よりも外側に突出する。
【0054】
図4に示すように、摺動部545は、ロック部541の下端から下方に延在する部分である。摺動部545は、スピンドル3A内に摺動可能に配置される部分であって、円筒部31の内径と概ね等しい外径を有する。なお、摺動部545の外径は、ロック部541の外径よりも大きい。摺動部545の外周部に形成された環状の溝には、環状の弾性部材(Oリングともいう)546が装着されている。弾性部材546と上述のシール部材39の間には、第1カム部33および第2カム部55の円滑な摺動を確保するための潤滑剤が封入されている。
【0055】
図4および
図5に示すように、フランジ部56は、摺動部545の下端部に接続するフランジ状の部分であって、中間シャフト53の下端部を構成する。フランジ部56の下端面は、環状の平面として構成されている。フランジ部56(詳細には、フランジ部56の下端面)は、中間シャフト53がスピンドル3Aに対して下方へ移動する過程において、上方から先端工具91に当接し、先端工具91を押し下げる部分として機能する。
【0056】
また、フランジ部56の上部には、第2カム部55が設けられている。第2カム部55は、スピンドル3Aの第1カム部33と協働して、中間シャフト53の回動に伴って、中間シャフト53をスピンドル3Aに対して上下方向に移動させるように構成されている。なお、第2カム部55の詳細構成と、第1カム部33および第2カム部55の作用については後述する。
【0057】
上側部分57は、ロック部541の外径よりも小径であって、ロック部541の上端中央部から上方に延在する。上側部分57の上端部は、雄ネジ部571として構成されている。また、上側部分57の上部(雄ネジ部571の下側)には、上側部分57を直径方向に貫通する嵌合孔573が設けられている。嵌合孔573には、ピン574が嵌合されている。ピン574の両端部は、嵌合孔573から外側に突出している。
【0058】
ピン574の上側には、回動伝達部材576が配置されている。回動伝達部材576は、回動レバー81の回動を中間シャフト53に伝達するように構成された部材であって、中間シャフト53に固定されている。本実施形態では、回動伝達部材576は、中央部に貫通孔を有する略六角柱状の部材であって、ピン574の上側で中間シャフト53(上側部分57)に嵌合されている。詳細な図示は省略するが、回動伝達部材576の下端部には、直線状の溝が形成されており、嵌合孔573から突出するピン574の両端部がこの溝に係合している。回動伝達部材576は、雄ネジ部571に螺合されたナット572によってピン574に締着されることで、中間シャフト53と一体化されている。
【0059】
回動伝達部材576は、上部に一対の凹部577を有する。凹部577は、駆動軸A1を挟んで対称状に配置されている。回動レバー81の突起815は、常時、凹部577内に突出している。回動レバー81が回動されると、突起815が凹部577の側面に当接して、回動伝達部材576を介して中間シャフト53を回動させる。つまり、中間シャフト53は、回動レバー81の回動に連動して、スピンドル3Aに対して駆動軸A1周りに回動する。なお、凹部577の周方向の長さは、突起815の直径よりも大きく設定されている。これにより、突起815が凹部577の側面から離間している状態では、回動レバー81と中間シャフト53の連動が防止される。なお、回動レバー81が初期位置(
図1参照)に配置されているときには、突起815は、凹部577の側面から離間した位置に配置される。
【0060】
クランプバネ59は、クランプシャフト51を上方に付勢し、先端工具91をクランプするためのクランプ力をクランプシャフト51に付与する部材である。なお、本実施形態では、クランプバネ59は、中間シャフト53を介してクランプシャフト51を上方に付勢するように構成されており、常時、中間シャフト53をスピンドル3Aに対して上方に付勢している。より詳細には、クランプバネ59は、圧縮コイルバネであって、スピンドル3Aの上側で中間シャフト53に嵌合された環状のバネ受け部37と、ピン574の下側で中間シャフト53に嵌合されたバネ受け部579との間に、圧縮された状態で配置されている。なお、下側のバネ受け部37は、スピンドル3Aに対して回転不能に係合されており、スピンドル3Aと一体的に回転する。
【0061】
以下、ロック機構6Aについて説明する。ロック機構6Aは、クランプシャフト51をスピンドル3Aから取り外し不能にロックするように構成されている。本実施形態では、ロック機構6Aは、中間シャフト53にクランプシャフト51を固定することで、クランプシャフト51をロックするように構成されている。
【0062】
図4および
図5に示すように、ロック機構6Aは、3つのボール61と、ロックスリーブ63と、ボール付勢バネ67とを含む。
【0063】
3つのボール61は、夫々、上述したように、中間シャフト53の3つのボール保持孔542内に、径方向に移動可能に配置されている。
【0064】
ロックスリーブ63は、ボール61をボール保持孔542から径方向外側へ脱落しないように保持する部材である。本実施形態では、ロックスリーブ63は、全体としては円筒状の部材であって、スピンドル3Aの上側で、中間シャフト53のロック部541の径方向外側に配置されている。ロックスリーブ63は、一体状に形成された摺動部631と、ボール保持部633と、係止突起638とを含む。
【0065】
摺動部631は、中間シャフト53のロック部541の外径と概ね等しい内径を有する円筒状の部分であって、ロック部541に対して摺動可能に嵌合されている。
【0066】
ボール保持部633は、摺動部631の下端に接続する円筒状部分である。
図4および
図6に示すように、ボール保持部633の内径は、摺動部631の内径よりも若干大きく、摺動部631とボール保持部633との接続部分には、ショルダ部(段差部)634が形成されている。ショルダ部634は、下方へ向かうにつれて僅かに径方向外側に傾斜しつつ湾曲する内周面を有する。ショルダ部634の内周面は、ボール61の外周面に概ね整合するように構成されている。ボール保持部633の内径は、ボール61がその移動範囲内で最も径方向内側に配置され、クランプシャフト51の係合溝512に係合したときに、ボール保持部633の内周面とクランプシャフト51の係合溝512の底面によってボール61が挟持される長さに設定されている。
【0067】
また、
図6および
図7に示すように、ボール保持部633の内部には、3つのボール受け部635が設けられている。3つのボール受け部635は、ボール保持部633の周方向に等間隔で設けられている。各ボール受け部635は、ボール保持部633の内周面から径方向外側に凹む凹部であって、クランプシャフト51のアンロック時に、ボール61を退避させる空間を形成するものである。ボール受け部635の径方向における深さは、
図6に点線で示すように、ボール61がボール保持孔542から径方向内側へ突出しない位置まで退避できるように設定されている。また、ボール受け部635の周方向の長さは、ボール61の径よりも長く、駆動軸A1を中心とする所定の角度範囲(本実施形態では、概ね30度)に対応するように設定されている。
【0068】
図5および
図7に示すように、係止突起638は、ボール保持部633の下端から下方に突出する矩形状の突起である。係止突起638は、下側のバネ受け部37に設けられた凹部371に嵌合されている。凹部371は、バネ受け部37の上端から下方に凹む凹部であって、係止突起638と概ね整合する矩形状に形成されている。係止突起638と凹部371の係合により、ロックスリーブ63は、バネ受け部37、ひいてはスピンドル3Aに対して回転不能とされている。一方、係止突起638は、凹部371内を上下方向に摺動可能であり、スピンドル3Aに対するロックスリーブ63の上下方向の移動は許容されている。
【0069】
ボール付勢バネ67は、ロックスリーブ63を常時下方に付勢することで、ロックスリーブ63を、ショルダ部634の内周面がボール61に当接する位置に保持するための部材である。本実施形態では、ボール付勢バネ67は、クランプバネ59よりも小径の圧縮コイルバネである。なお、ボール付勢バネ67は、クランプバネ59に比べて大幅にバネ定数の小さい(弱い)バネである。ボール付勢バネ67は、ロックスリーブ63の上側で中間シャフト53の上側部分57に外装されたワッシャ69と、上側のバネ受け部579との間に、圧縮された状態で配置されている。
【0070】
以上のように構成されたロック機構6Aは、中間シャフト53の回動に伴って、駆動軸A1周りの周方向において、ボール61とロックスリーブ63との相対位置が変化することで、ロック状態と、アンロック状態との間で切り替えられる。
【0071】
ロック状態とは、ロック機構6Aが、クランプシャフト51をロック可能な状態である。ロック状態とは、
図4および
図6に示すように、ロックスリーブ63が、移動範囲内で最も径方向内側でボール61を保持する状態ということもできる。ロック機構6Aは、クランプシャフト51が中間シャフト53に挿入され、ボール61がクランプシャフト51の係合溝512に係合した状態でロック状態に置かれると、クランプシャフト51を中間シャフト53に対して固定状に保持し、スピンドル3Aから取り外し不能とする。なお、以下では、移動範囲内で最も径方向内側のボール61の位置を、係合位置ともいう。
【0072】
アンロック状態とは、ロック機構6Aがクランプシャフト51のスピンドル3Aに対する着脱を許容する状態(つまり、ロックが解除された状態)である。アンロック状態とは、
図7および
図8に示すように、ロックスリーブ63が、ボール保持孔542の最内端よりも径方向外側へ退避可能にボール61を保持する状態ということもできる。以下では、ボール保持孔542の最内端よりも径方向外側のボール61の位置(
図6に点線で示す位置)を、退避位置ともいう。
【0073】
また、本実施形態のロック機構6Aは、アンロック状態では、クランプシャフト51を暫定的に保持することが可能に構成されている。ここでいう「暫定的に保持する」とは、外力(典型的には、使用者による引き抜き方向の力)がクランプシャフト51に付与されない限り、スピンドル3Aに対するクランプシャフト51の位置を維持する意である。上述のように、ロックスリーブ63は、ボール付勢バネ67によって常時下方に付勢されており、ショルダ部634の内周面が、ボール61の外周面のうち、ボール保持孔542から径方向外側に突出した部分に当接している。これにより、ボール61は径方向内側に付勢され、アンロック状態でも、係合位置に保持される。よって、ボール付勢バネ67の付勢力に抗して、ボール61を係合位置から径方向外側へ移動させる外力が作用しない限り、クランプシャフト51はボール61を介して中間シャフト53に保持され、スピンドル3Aから外れることはない。以下、クランプシャフト51の暫定的な保持状態を、暫定ロック状態ともいう。
【0074】
暫定ロック状態にあるクランプシャフト51が下方へ引っ張られると、ボール61は、シャフト部511の上端部(係合溝512よりも上側の部分)に押され、ボール付勢バネ67の付勢力に抗してショルダ部634を押し上げつつ退避位置へ移動する。反対に、ロック機構6Aがアンロック状態のときに、クランプシャフト51が中間シャフト53に挿入されると、シャフト部511の上端部によって、ボール61が一旦退避位置へ移動され、上端部がボール61を乗り越えると、ボール付勢バネ67の付勢力によってボール61が係合位置へ復帰する。これにより、クランプシャフト51はボール61を介して中間シャフト53に暫定的に保持される。
【0075】
ここで、中間シャフト53の第2カム部55と、スピンドル3Aの第1カム部33の詳細構成をあわせて説明する。
【0076】
図5および
図9に示すように、本実施形態の第2カム部55は、一対の凸部551で構成されている。一対の凸部551は、フランジ部56の外周部に沿って円弧状に設けられ、上方に突出している。また、一対の凸部551は、駆動軸A1を中心として対称状に配置されている。各凸部551の上面は、直交面552と、カム面553とを含む。直交面552は、駆動軸A1に直交する平面であって、凸部551の突出端面(上端面)を構成する。カム面553は、周方向に傾斜する傾斜面であって、解除方向側で直交面552に接続している。より詳細には、カム面553は、直交面552から解除方向(
図5の矢印Rの方向)に向かって下方に傾斜する傾斜面である。
【0077】
図9に示すように、本実施形態の第1カム部33は、一対の凸部331で構成されている。一対の凸部331は、フランジ部32の上端部の内周部に沿って円弧状に設けられ、下方に突出している。一対の凸部331も、駆動軸A1を中心として対称状に配置されている。なお、
図9では、説明の便宜上、凸部331の外周側部分が排除された状態でフランジ部32が図示されており、以下で参照する他の同様の図でもこの点は同じである。また、各凸部331は、凸部551に概ね整合する形状を有する。各凸部331の下面は、直交面332と、カム面333とを含む。直交面332は、駆動軸A1に直交する平面であって、凸部331の突出端面(下端面)を構成する。カム面333は、周方向に傾斜する傾斜面であって、クランプ方向側で直交面332に接続している。カム面333は、第2カム部55のカム面553に整合する傾斜面である。カム面333は、直交面332からクランプ方向に向かって上方に傾斜する傾斜面である。
【0078】
上述のように、中間シャフト53は、クランプバネ59によって、スピンドル3Aに対して常時上方に付勢されている(
図4参照)。このため、通常、第1カム部33および第2カム部55は、凸部331の下面と凸部551の上面とが少なくとも部分的に当接した状態にある。第1カム部33および第2カム部55は、カム面333、553が互いに当接した状態で相対的に回動する場合には、中間シャフト53をスピンドル3Aに対して上下方向に移動させることができる。つまり、第1カム部33および第2カム部55は、スピンドル3Aに対する中間シャフト53の駆動軸A1周りの回動を、スピンドル3Aに対する中間シャフト53の上下方向の直線移動に変換するように構成された運動変換機構であるということもできる。また、第1カム部33および第2カム部55は、直交面332、552が互いに当接した状態で相対的に回動する場合には、スピンドル3Aに対する中間シャフト53の回動のみを許容し、中間シャフト53をスピンドル3Aに対して上下方向に移動させることはない。
【0079】
本実施形態では、このような運動変換機構としての第1カム部33および第2カム部55を利用することで、回動レバー81が初期位置から所定の角度範囲内で回動された場合には、中間シャフト53をスピンドル3Aに対して回動させつつ下方に移動させ、クランプ力を解除するとともに、先端工具91を下方へ押し出すことができる。また、回動レバー81を、所定の角度範囲を超えて更に回動した場合には、中間シャフト53をスピンドル3Aに対して回動させ、ロック機構6Aによるクランプシャフト51のロックを解除し、スピンドル3Aからの取り外しを可能とすることができる。この点について、以下に詳述する。
【0080】
まず、クランプシャフト51をスピンドル3A(中間シャフト53)から取り外すときの動作について説明する。
【0081】
図4、
図6および
図9に示すように、回動レバー81が初期位置に配置され、クランプシャフト51がロック機構6Aによってロックされている場合には、中間シャフト53は、クランプバネ59の付勢力で、クランプシャフト51と共に、カム面333とカム面553が部分的に当接する位置まで押し上げられる。先端工具91は、その下面に当接したヘッド部515によって、傾斜面913が傾斜面353に当接した状態で工具装着部35に押し付けられ、スピンドル3Aに対して固定される。つまり、クランプバネ59によって付与されたクランプ力(スピンドル3Aに対して先端工具91を上方に押し付ける力)によって、ヘッド部515が工具装着部35と共に先端工具91をクランプする。このときのスピンドル3Aに対する中間シャフト53およびクランプシャフト51の位置を、クランプ位置という。なお、中間シャフト53がクランプ位置にあるとき、第2カム部55の下端面(つまり、中間シャフト53の下端面)は、先端工具91の上面から僅かに上方に離間している。
【0082】
上述のように、回動レバー81が初期位置に配置されているときには、回動レバー81の突起815は、回動伝達部材576の凹部577の側面から離間した位置に配置されている。よって、使用者が回動レバー81を初期位置から解除方向に回動させると、突起815が凹部577の側面に当接するまでは、回動レバー81のみが回動する。本実施形態では、回動レバー81が初期位置から解除方向に概ね45度回動されると、突起815が凹部577の側面に当接する。
【0083】
使用者が更に回動レバー81を回動させると、中間シャフト53がスピンドル3Aに対して駆動軸A1周りに回動する。このとき、カム面333、553の作用で、中間シャフト53は、解除方向に回動しつつ、クランプバネ59の付勢力に抗して下方に移動する。これにより、クランプバネ59によりヘッド部515に付与されるクランプ力(スピンドル3Aに対して先端工具91を上方に押し付ける力)が解除される。更に、中間シャフト53の下降過程で、フランジ部56の下端面が先端工具91に上方から当接する。中間シャフト53は、その状態で更に下方へ移動することで、先端工具91を下方に押し下げる。つまり、中間シャフト53(フランジ部56)は、駆動軸A1を取り巻く環状の領域において先端工具91の上面と面接触し、先端工具91を押し下げる。なお、先端工具91は、傾斜面913と傾斜面353とが当接し、ヘッド部515によって下方から工具装着部35に押し付けられた状態で揺動駆動されると、工具装着部35に固着してしまう場合がある。このような場合でも、中間シャフト53は、下方への移動に伴って、先端工具91の固着状態を解消することができる。
【0084】
また、本実施形態では、ロック機構6Aは、カム面333、553が当接した状態で中間シャフト53がスピンドル3Aに対して回動しつつ下方へ移動する間は、ロック状態を維持するように構成されている。つまり、ロック機構6Aは、回動レバー81が初期位置から所定の角度範囲内で解除方向に回動される間は、ロック状態を維持する。本実施形態では、この所定の角度範囲は、概ね65度とされている。回動レバー81が初期位置から概ね65度回動される間に、中間シャフト53は、
図10に示すように、カム面553の上端がカム面333の下端と接する位置まで、スピンドル3Aに対して回動し、且つ、下方へ移動する。上述のように、ロックスリーブ63は、スピンドル3Aに対する回転が禁止された状態で保持されているため、中間シャフト53は、ボール61と共にロックスリーブ63に対しても回動することになる。回動レバー81が初期位置から概ね65度回動されても、
図11に示すように、中間シャフト53に保持されたボール61は、ボール受け部635の位置には達しない。よって、中間シャフト53の回動にもかかわらず、ボール61は、係合位置においてクランプシャフト51とロックスリーブ63に挟持された状態で保持され、ロック機構6Aはロック状態を維持する。
【0085】
回動レバー81が初期位置から概ね65度の位置を超えて解除方向に回動されると、中間シャフト53は、スピンドル3Aに対して回動する一方、上下方向には移動しない。より詳細には、
図12に示すように、中間シャフト53は、クランプバネ59の付勢力によって、第2カム部55の直交面552がスピンドル3Aの第1カム部33の直交面332に当接する上下方向位置で保持される。
【0086】
また、本実施形態では、ロック機構6Aは、直交面332、552が当接した状態で中間シャフト53がスピンドル3Aに対して回動する過程で、アンロック状態に切り替えられるように構成されている。つまり、ロック機構6Aは、回動レバー81が初期位置から所定の角度範囲を超えて解除方向に回動されると、クランプシャフト51のロックを解除するように構成されている。本実施形態では、回動レバー81が初期位置から概ね65度の位置を超えて回動され、概ね90度の位置に達すると、ロック機構6Aはアンロック状態に切り替えられる。回動レバー81が初期位置から概ね90度回動されると、
図8に示すように、中間シャフト53に保持されたボール61は、ボール受け部635に対向し、点線で示す退避位置へ移動可能となる。つまり、ロック機構6Aがアンロック状態に切り替えられ、クランプシャフト51は、暫定ロック状態に置かれる。
【0087】
回動レバー81が更に解除方向に回動され、初期位置から概ね120度の位置に達するまでの間も、
図13に示すように、クランプバネ59の付勢力によって、第2カム部55の直交面552がスピンドル3Aの第1カム部33の直交面332に当接する状態が維持され、中間シャフト53は上下方向には移動しない。また、上述したように、アンロック状態において、中間シャフト53に保持されたボール61は、ボール付勢バネ67の付勢力により、ショルダ部634に当接した状態で係合位置に保持されている。また、ボール受け部635の周方向の長さは、駆動軸A1を中心とする概ね30度の角度範囲に対応するように設定されている。よって、回動レバー81が初期位置から概ね90度から120度までの範囲内で解除方向に回動されると、
図14に示すように、ボール61は、係合位置に配置されてクランプシャフト51に係合した状態で中間シャフト53と共に回動し、ボール受け部635内を周方向に移動する。なお、シャフト部511の下端部に装着された弾性部材513の摩擦力により、クランプシャフト51の暫定ロック状態がより安定的に維持される。
【0088】
このように、本実施形態では、ロック機構6Aは、回動レバー81が初期位置から概ね90度から120度までの範囲内の何れの位置にある場合でも、アンロック状態に置かれる。よって、使用者は、回動レバー81をこの範囲内の任意の位置まで回動させ、暫定ロック状態にあるクランプシャフト51を下方に引っ張ることで、先端工具91およびクランプシャフト51を、スピンドル3Aおよび中間シャフト53から取り外すことができる。また、中間シャフト53は、直交面552が直交面332に当接する上下方向位置で保持されるため、使用者が回動レバー81の操作を中止しても、中間シャフト53が上下方向に移動することはない。このため、使用者は、クランプシャフト51および先端工具91の取り外し作業を容易に行うことができる。
【0089】
クランプシャフト51をスピンドル3A(中間シャフト53)に取り付け、先端工具91をクランプするときの動作は、基本的には、取り外し時の動作の逆である。
【0090】
具体的には、使用者は、回動レバー81を、初期位置から概ね90度から120度までの範囲内の任意の位置まで回動させ、ロック機構6Aをアンロック状態とする。そして、先端工具91に挿通された状態のクランプシャフト51を、中間シャフト53に挿入する。シャフト部511の上端部が、下方からボール61に当接し、ボール61を一旦退避位置へ移動させる。上端部がボール61を乗り越えると、ボール付勢バネ67の付勢力によってボール61が係合位置へ復帰する。これにより、クランプシャフト51は暫定ロック状態となる。
【0091】
この状態から、使用者が回動レバー81を初期位置に向けてクランプ方向に回動させると、ロック機構6Aがロック状態に切り替えられる。更に回動レバー81がクランプ方向に回動されると、第1カム部33および第2カム部55の当接状態が、直交面332、552が当接する状態から、カム面333、553が当接する状態に切り替えられる。なお、回動レバー81がクランプ方向に回動される場合、突起815は、凹部577の側面のうち、周方向において、解除方向に回動されるときとは反対側の側面に当接する。よって、ロック機構6Aの状態や、第1カム部33および第2カム部55の当接状態が変化するのは、解除方向に回動されるときよりも、回動レバー81が初期位置に近い位置まで回動されたときとなる。
【0092】
使用者が回動レバー81をクランプ方向に更に回動させると、中間シャフト53は、回動しつつ上方に移動する。なお、中間シャフト53およびクランプシャフト51は、クランプバネ59の付勢力とカム面333、553の作用により、回動レバー81が初期位置まで戻された後、突起815が凹部577の側面から離間した状態で、回動しつつ上方に移動し、クランプ位置に復帰する。
【0093】
以上に説明したように、本実施形態の振動工具1Aでは、回動レバー81が使用者によって解除方向へ回動されると、第1カム部33および第2カム部55によって、中間シャフト53がスピンドル3Aに対して下方へ移動され、その過程で、フランジ部56が先端工具91を下方へ押し下げる。よって、先端工具91がスピンドル3Aの下端部(工具装着部35)に固着してしまった場合でも、使用者は、回動レバー81を解除方向に回動させる操作をするだけで、先端工具91を容易に取り外すことができる。なお、クランプシャフト51はスピンドル3Aから取り外し可能であるため、使用者は、クランプシャフト51をスピンドルから取り外して、先端工具91の交換作業を行うことができる。
【0094】
また、クランプバネ59の上端を受けるバネ受け部579は、回動レバー81の解除方向への回動に連動して、クランプバネ59の上方への付勢力に抗して、中間シャフト53と一体的に下方へ移動し、クランプ力を解除するように構成されている。そして、中間シャフト53(フランジ部56)は、クランプ力が解除された状態で、先端工具91を下方へ押し下げる。よって、先端工具91に過大な押し下げる力をかける必要がない。
【0095】
また、ロック機構6Aは、回動レバー81の解除方向の回動に連動して、クランプシャフト51のロックを解除するように構成されている。よって、使用者は、回動レバー81を解除方向に回動させるという単一の操作のみで、クランプ力の解除動作とクランプシャフト51のロック解除動作の両方を振動工具1Aに行わせることができる。特に、本実施形態では、回動レバー81が初期位置から所定の角度範囲内で解除方向に回動されるのに連動して、第1カム部33および第2カム部55によって、中間シャフト53がスピンドル3Aに対して下方へ移動され、クランプ力を解除するとともに、先端工具91を押し下げる。更に、回動レバー81が所定の角度範囲を超えて解除方向に回動されるのに連動して、中間シャフト53がスピンドル3Aに対して回動し、ロック機構6Aが、クランプシャフト51のロックを解除する。よって、使用者は、回動レバー81を所定の角度範囲を超えて解除方向に回動させるという単一の操作のみで、クランプ力の解除および先端工具91の押下げの後、クランプシャフト51のロック解除を行うという効率的な一連の動作を振動工具1Aに行わせることができる。
【0096】
更に、本実施形態では、ロック機構6Aは、クランプシャフトのロックが解除されたアンロック状態において、クランプシャフト51を暫定的に保持するように構成されている。よって、クランプシャフト51のロックが解除されたときに、クランプシャフト51がスピンドル3Aから脱落することを防止することができる。また、クランプシャフト51の取付け時には、使用者は、クランプシャフト51を暫定ロック状態とした上で、回動レバー81をクランプ方向に回動させ、ロック機構6Aによってロックさせることができる。よって、使用者は、クランプシャフト51がロックされるまでスピンドル3Aから脱落しないように保持する必要がなく、操作性が向上する。
【0097】
[第2実施形態]
以下、
図15~
図20を参照して、第2実施形態に係る振動工具1Bについて説明する。本実施形態の振動工具1Bは、主に、スピンドル3Bおよびクランプ機構5Bの一部の構成において、第1実施形態の振動工具1A(
図1~3参照)とは異なる。一方、振動工具1Bのその他の構成については、振動工具1Aと実質的に同じである(形状が若干異なる場合を含む)。よって、以下では、振動工具1Aと実質的に同一の構成については同一の符号を付して図示および説明を省略または簡略化し、主として異なる構成について説明する。
【0098】
図15に示すように、本実施形態のスピンドル3Bは、フランジ部320(詳細には、第1カム部330)以外については、第1実施形態のスピンドル3A(
図3および4参照)と実質的に同一の構成を有する。なお、第1カム部330の詳細構成については、第2カム部550とあわせて後述する。
【0099】
以下、本実施形態のクランプ機構5Bの構成について説明する。本実施形態では、クランプ機構5Bは、クランプシャフト510と、中間シャフト530と、クランプバネ59と、ロック機構6Bとを含む。以下、これらの構成について順に説明する。
【0100】
まず、クランプシャフト510について説明する。
図16に示すように、本実施形態のクランプシャフト510の上端部には、係合溝512に加え、複数の凹部517が設けられている。複数の凹部517は、係合溝512の上端部に、周方向に離間して設けられている。凹部517は、ボール61が係合溝512内に配置されたときに、ボール61の一部に係合し、ボール61が周方向に移動することを規制するように構成されている。
【0101】
次に、中間シャフト530について説明する。
図15、
図17および
図18に示すように、中間シャフト530は、第1実施形態の中間シャフト53と同様、スピンドル3Bと同軸状に配置されて上下方向に延在し、クランプシャフト510を保持するように構成されている。本実施形態では、中間シャフト530は、長尺の円筒部材として形成されており、下側部分540と、上側部分570とを含む。
【0102】
下側部分540は、クランプシャフト510のシャフト部511が挿入される部分であって、ロック部541と、摺動部545と、第2カム部550と、フランジ部560とを含む。
【0103】
本実施形態では、第2カム部550は、フランジ部560の一部ではなく、フランジ部560の上側(つまり、上下方向において摺動部545とフランジ部560との間)に設けられている。なお、第2カム部550の詳細構成については後述する。
【0104】
本実施形態では、フランジ部560には、第1実施形態のフランジ部56のようなカム面553(
図5参照)が設けられない。このため、フランジ部560の外径は、第1実施形態のフランジ部56の外径よりもよりも小さく設定されている。また、フランジ部560の上下方向の高さも、フランジ部56よりも小さい。しかしながら、フランジ部560の機能は、フランジ部56と同じである。つまり、フランジ部560(詳細には、フランジ部560の環状の下端面)は、中間シャフト530がスピンドル3Bに対して下方へ移動する過程において、上方から先端工具91に当接し、先端工具91を押し下げる部分として機能する。
【0105】
上側部分570は、ロック部541の上端に接続して上方に延在する円筒状の部分である。上側部分570の上端部は、雌ネジ部として構成されている。雌ネジ部には、回動伝達部材58の固定用のボルト581が締結される。
【0106】
本実施形態では、回動伝達部材58は、上側部分570の雌ネジ部に締結されたボルト581によって、中間シャフト530に固定されている。なお、中間シャフト530の上端部の外周には、一対の凹部が形成されている(
図18参照)。詳細な図示は省略するが、これら一対の凹部に、回動伝達部材58の内周側に設けられた一対の凸部が嵌合され、ボルト581が締結されることで、回動伝達部材58は、中間シャフト530と一体化されている。
【0107】
回動伝達部材58は、第1実施形態の回動伝達部材576(
図4参照)と同様、回動レバー81の回動を中間シャフト530に伝達するように構成されている。より詳細には、回動伝達部材58は、回動レバー81の回動に伴い、突起815に係合して、中間シャフト530と共に回動される。
【0108】
なお、
図15に示すように、本実施形態では、中間シャフト530は、回動伝達部材58に固定されたベアリング(詳細には、ボールベアリング)583を介して、インナハウジング103に回動可能に支持されている。より詳細には、インナハウジング103の前端部104は、円筒状に形成されている。前端部104の上端部には、円筒状の保持スリーブ105が固定されている。ベアリング583は、内輪が回動伝達部材58(詳細には、回動伝達部材58のうち、中間シャフト530に嵌合された円筒部)の外周に固定され、外輪が保持スリーブ105の内周面に沿って上下方向に摺動可能な状態で、中間シャフト530とインナハウジング103の間に配置されている。よって、中間シャフト530、回動伝達部材58およびベアリング583は、ベアリング583が保持スリーブ105に沿って摺動しつつ、インナハウジング103およびスピンドル3Bに対し、一体的に上下方向に移動可能である。
【0109】
更に、
図15および
図17に示すように、本実施形態では、スピンドル3B(詳細には、スピンドル3Bに内輪が固定されたベアリング301)と回動伝達部材58との間には、バネ受け部37と、クランプバネ59と、バネ受け部579と、スラストベアリング585とが介在している。本実施形態でも、クランプバネ59は、バネ受け部37とバネ受け部579の間に圧縮された状態で配置されており、バネ受け部579およびスラストベアリング585を介して、回動伝達部材58および中間シャフト530を、常時、スピンドル3Bに対して上方へ付勢している。なお、本実施形態では、スラストベアリング585には、スラストニードルベアリングが採用されている。
【0110】
本実施形態のロック機構6Bは、ボール付勢バネ67の配置が第1実施形態のロック機構6A(
図4および
図6参照)と異なるが、これ以外の構成については、ロック機構6Aと実質的に同じである。
図17に示すように、本実施形態では、ボール付勢バネ67は、バネ受け部579よりも下側で中間シャフト530に固定された止め輪673と、ロックスリーブ63のショルダ部634との間に、圧縮された状態で配置され、ロックスリーブ63を、常時、中間シャフト530に対して下方に付勢している。
【0111】
以下、第1カム部330および第2カム部550の構成について説明する。上述のように、第1実施形態の第1カム部33および第2カム部55(
図9参照)は、傾斜面(カム面333、553)を利用するカム機構として構成されている。一方、本実施形態では、第1カム部330および第2カム部550は、傾斜溝を利用するカム機構として構成されている。
【0112】
より詳細には、
図17、
図19および
図20に示すように、第1カム部330は、スピンドル3Bのフランジ部320の上端部の内部に設けられている。第1カム部330は、フランジ部320の内周部に形成された一対のカム溝335で構成されている。一対のカム溝335は、駆動軸A1を中心として対称状に配置されている。カム溝335は、駆動軸A1周りの周方向に傾斜する傾斜溝であって、解除方向(図中の矢印R方向)に向かうにつれて所定の境界まで下方に傾斜し、境界を越えると上方に傾斜するように構成されている。より詳細には、
図19および
図20に示すように、カム溝335は、クランプ方向(図中の矢印C方向)側の端から、解除方向(図中の矢印R方向)に向かうにつれて下方に傾斜し、解除方向側の端部のみが上方に傾斜するように構成されている。以下では、カム溝335のうち、クランプ方向側の端から下方に傾斜する部分を、第1傾斜部336、解除方向側の端部(上方に傾斜する部分)を第2傾斜部337ともいう。なお、第2傾斜部337の長さは、後述するボール555の径に概ね対応する。つまり、第2傾斜部337は、ボール555がちょうど収まる大きさに設定されている。
【0113】
なお、詳細な図示は省略するが、本実施形態では、回動レバー81は、初期位置から、上から見て時計回り方向に回動可能に配置されている。つまり、先端工具91のクランプが解除されるときには、回動レバー81は、第1実施形態とは逆方向に回動される。よって、本実施形態では、回動レバー81の上から見て時計回り方向が解除方向、反時計回り方向がクランプ方向である。
【0114】
図17および
図18に示すように、第2カム部550は、中間シャフト530のフランジ部560の上側に設けられている。本実施形態では、第2カム部550は、一対のボール555を含む。一対のボール555は、駆動軸A1を中心として対称状に配置されている。ボール555は、中間シャフト530の外周部に形成された断面半円状の凹部に部分的に嵌合されており、ボール555の概ね半分が、凹部から中間シャフト530の径方向外側に突出している。ボール555のうち、凹部から突出する部分は、第1カム部330のカム溝335の内面に整合する外表面(曲面(球面))を有する。ボール555は、カム溝335内に配置されており、カム溝335内を摺動可能である。
【0115】
このような構成の第1カム部330および第2カム部550を採用することで、スピンドル3Bのうち、第1カム部330が設けられるフランジ部320の径を、第1実施形態に比べて小さくすることができる。これは、上下方向に摺接するカム面333、553(
図9参照)を利用する場合に、カム面333、553に対して径方向内側および外側に設けられるスペースが不要となるためである。このため、第1実施形態では、
図3に示すように、フランジ部32はベアリング302の下側に配置されているのに対し、本実施形態では、
図15に示すように、フランジ部320の上端部がベアリング302によって支持されている。第1カム部330は、径方向において、ベアリング302の内側に配置されている。このような配置により、スピンドル3Bは、第1実施形態に比べて上下方向にも短尺化されている。
【0116】
第1カム部330および第2カム部550は、カム溝335内をボール555が摺動する状態で相対的に回動する場合には、中間シャフト530をスピンドル3Bに対して上下方向に移動させることができる。つまり、第1カム部330および第2カム部550は、スピンドル3Bに対する中間シャフト530の駆動軸A1周りの回動を、スピンドル3Bに対する中間シャフト530の上下方向の直線移動に変換するように構成された運動変換機構である。なお、上述のように、カム溝335は、傾斜方向の異なる第1傾斜部336と第2傾斜部337とを含む。よって、ボール555が第1傾斜部336と第2傾斜部337との境界を越えると、スピンドル3Bに対する中間シャフト530の移動方向は、逆向に切り替わる。
【0117】
本実施形態では、このような運動変換機構としての第1カム部330および第2カム部550を利用することで、第1実施形態と同様、回動レバー81が初期位置から所定の角度範囲内で回動された場合には、中間シャフト530をスピンドル3Bに対して回動させつつ下方に移動させ、クランプ力を解除するとともに、先端工具91を下方へ押し出すことができる。また、回動レバー81を、所定の角度範囲を超えて更に回動した場合には、中間シャフト530をスピンドル3Bに対して回動させ、ロック機構6Bによるクランプシャフト510のロックを解除し、スピンドル3Bからの取り外しを可能とすることができる。
【0118】
以下、振動工具1Bの動作について説明する。
【0119】
図15に示すように、回動レバー81が初期位置に配置され、クランプシャフト510がロック機構6Bによってロックされている場合には、中間シャフト530は、クランプバネ59の付勢力により、クランプシャフト510と共にクランプ位置で保持される。このとき、ボール555は第1傾斜部336(
図19、
図20参照)内に配置されている。クランプバネ59によって付与されたクランプ力(スピンドル3Aに対して先端工具91を上方に押し付ける力)によって、ヘッド部515が工具装着部35と共に先端工具91をクランプする。この状態で、モータ21が駆動されると、スピンドル3Bが往復回動され、スピンドル3Bに固定された先端工具91が揺動駆動される。
【0120】
上述のように、ロック状態では、ロック機構6Bのボール61は、係合溝512内に配置されて、クランプシャフト510に設けられた凹部517(
図16参照)に部分的に係合し、周方向に移動することが規制されている。これにより、スピンドル3Bの往復回動時にボール61が係合溝512内で滑ることを抑制することができる。その結果、摩擦による発熱を低減することができる。
【0121】
また、上述のように、本実施形態では、回動伝達部材58は、ベアリング583を介してインナハウジング103(前端部104)に回動可能に支持されている。一般的に、クランプバネ59の上端部および下端部は、夫々、バネ受け部579の下面およびバネ受け部37の上面との当接状態を安定させるために、平らに研削されることが多い。しかしながら、研削誤差に起因して、クランプバネ59や、バネ受け部579、ひいては中間シャフト530が傾く可能性がある。これに対し、本実施形態のように、径方向において、中間シャフト530とインナハウジング103との間にベアリング583を介在させることで、クランプバネ59の研削誤差等にかかわらず、中間シャフト530の円滑な回転を確保しつつ、クランプバネ59や、バネ受け部579、ひいては中間シャフト530が駆動軸A1に対して傾くのを効果的に防止することができる。よって、先端工具91の揺動動作が安定する。また、ベアリング583がインナハウジング103と回動伝達部材58の間の隙間を塞ぐため、インナハウジング103内へ粉塵等の異物が進入するのを防止することができる。
【0122】
使用者は、クランプシャフト510をスピンドル3B(中間シャフト530)から取り外すときには、回動レバー81を初期位置から解除方向に回動させる。回動レバー81は、回動に伴って、回動伝達部材58を介して中間シャフト530を駆動軸A1周りに回動させる。このとき、解除方向に向かって下方に傾斜する第1傾斜部336内をボール555が摺動するため、中間シャフト530は、解除方向に回動しつつ、クランプバネ59の付勢力に抗して下方に移動する。これにより、クランプ力が解除される。更に、中間シャフト530の下降過程で、フランジ部560の下端面が先端工具91に上方から当接し、先端工具91を下方に押し下げる。
【0123】
なお、上述の過程で、回動伝達部材58および中間シャフト530は、クランプバネ59、バネ受け部579およびスピンドル3Bに対して回動する。これに対し、本実施形態では、回動伝達部材58(詳細には、ベアリング583の内輪)とバネ受け部579の間に配置されたスラストベアリング585が、回動伝達部材58とバネ受け部579との間の摩擦を低減し、スピンドル3Bに対する中間シャフト530の円滑な相対回動を実現することができる。
【0124】
また、ロック機構6Bは、ボール555がカム溝335のうち第1傾斜部336内に配置された状態で中間シャフト530がスピンドル3Bに対して回動しつつ下方へ移動する間は、ロック状態を維持するように構成されている。つまり、ロック機構6Bは、回動レバー81が初期位置から所定の角度範囲内で解除方向に回動される間は、ロック状態を維持する。この所定の角度範囲は、概ね90度である。回動レバー81が初期位置から概ね90度回動される間に、中間シャフト530は、ボール555がカム溝335の第1傾斜部336と第2傾斜部337の境界に達する位置まで、スピンドル3Aに対して回動し、且つ、下方へ移動する。この間、中間シャフト530は、ボール61と共にロックスリーブ63に対しても回動するが、ボール61は、係合位置においてクランプシャフト510とロックスリーブ63に挟持された状態で保持され(
図6、
図11参照)、ロック機構6Bはロック状態を維持する。
【0125】
回動レバー81が初期位置から概ね90度の位置を超えて解除方向に回動されると、中間シャフト530はスピンドル3Bに対して更に回動し、ボール555がカム溝335の第1傾斜部336と第2傾斜部337の境界(
図19、
図20参照)を乗り越える。中間シャフト530はクランプバネ59によって常時上方に付勢されているため、解除方向に向かって上方に傾斜する第2傾斜部337にボール555が進入すると、中間シャフト530は、回動しつつ若干上方へ移動する。ボール555がカム溝335の解除方向側の端に当接すると、中間シャフト530のそれ以上の回動が規制される。
【0126】
また、中間シャフト530に保持されたボール61は、ボール受け部635に対向し、退避位置へ移動可能となる(
図8参照)。つまり、ロック機構6Bがアンロック状態に切り替えられ、クランプシャフト510は、暫定ロック状態に置かれる。使用者は、暫定ロック状態にあるクランプシャフト510を下方に引っ張ることで、先端工具91およびクランプシャフト510を、スピンドル3Bおよび中間シャフト530から取り外すことができる。
【0127】
このように、本実施形態では、ボール555が第1傾斜部336と第2傾斜部337の境界を越えるのとあわせて、ロック機構6Bがアンロック状態に切り替えられる。使用者は、回動レバー81を介して中間シャフト530の上方への移動を感知することができるため、ロック機構6Bのアンロック状態への切替を容易に認識することができる。なお、本実施形態では、第2傾斜部337は、ボール555がちょうど収まる程度の長さに構成されているため、ボール555が境界を乗り越えると、すぐに中間シャフト530の回動が規制されることになる。よって、使用者は、回動レバー81を介して中間シャフト530の回動停止を感知することによっても、ロック機構6Bのアンロック状態への切替を認識することができる。また、第1傾斜部336と第2傾斜部337とが周方向において逆方向に傾斜しているため、ボール555は、クランプバネ59の付勢力に抗して境界を乗り越えない限り、第2傾斜部337から第1傾斜部336に移動することができない。これにより、ロック機構6Bのアンロック状態を安定して維持することが可能となる。
【0128】
クランプシャフト510をスピンドル3B(中間シャフト530)に取り付け、先端工具91をクランプするときの動作は、基本的には、取り外し時の動作の逆である。具体的には、使用者は、クランプシャフト510を中間シャフト530に挿入し、クランプシャフト510を暫定ロック状態とした後、回動レバー81を初期位置に向けてクランプ方向に回動させる。ボール555が境界を乗り越え、第1傾斜部336へ進入するのとあわせて、ロック機構6Bがロック状態に切り替えられる。使用者が回動レバー81をクランプ方向に更に回動させると、ボール555が第1傾斜部336内を摺動する状態で、中間シャフト530は、回動しつつ上方に移動する。中間シャフト530およびクランプシャフト510は、クランプバネ59の付勢力と第1傾斜部336の作用により、回動レバー81が初期位置まで戻された後、回動しつつ上方に移動し、クランプ位置に復帰する。この過程でも、スラストベアリング585が、中間シャフト530の円滑な相対回動を実現する。
【0129】
上記実施形態の各構成要素と請求項の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本発明の各構成要素を限定するものではない。振動工具1A、1Bの各々は、「作業工具」の一例である。ハウジング10は、「ハウジング」の一例である。スピンドル3A、3Bの各々は、「スピンドル」の一例である。駆動軸A1は、「駆動軸」の一例である。クランプシャフト51、510の各々は、「クランプシャフト」の一例である。シャフト部511、ヘッド部515は、夫々、「シャフト部」、「ヘッド部」の一例である。クランプバネ59は、「付勢部材」の一例である。回動レバー81は、「操作部材」の一例である。第1カム部33および第2カム部55は、「運動変換機構」の一例である。中間シャフト53、530の各々(フランジ部56、560)は、「押下げ部材」の一例である。バネ受け部579は、「解除部材」の一例である。ロック機構6A、6Bの各々は、「ロック機構」の一例である。中間シャフト53、530の下側部分54は、「筒状部」の一例である。シール部材39は、「第1シール部材」の一例である。弾性部材546は、「第2シール部材」の一例である。第1カム部330および第2カム部550は、「運動変換機構」の別の一例であって、夫々が、「第1カム部」および「第2カム部」の一例である。カム溝335は、「傾斜溝」の一例である。ボール555は、「係合部」の一例である。ベアリング583は、「軸受部材」の一例である。スラストベアリング585は、「摩擦低減部材」の一例である。
【0130】
上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る作業工具は、例示された振動工具1A、1Bの構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示す振動工具1A、1B、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
【0131】
回動レバー81は、駆動軸A1周りに回動可能に配置されていればよく、例えば、その形状、配置、支持構造、中間シャフト53との係合構造は、適宜変更されうる。
【0132】
クランプ機構5A、5Bの構成(例えば、クランプシャフト51、510、クランプバネ59、中間シャフト53、530の形状、配置、支持構造、ロック機構6A、6Bの構成部材、形状、配置、支持構造等)は、適宜変更されうる。以下に、採用可能な変形例を例示する。
【0133】
例えば、クランプシャフト51、510は、中間シャフト53、530を介してではなく、クランプバネ59または別の付勢部材によって、直接的にスピンドル3A、3Bに対して上方に付勢されていてもよい。また、クランプシャフト51、510は、常時上方に付勢され、スピンドル3A、3Bに対して上下方向に移動可能に支持されていれば、スピンドル3A、3Bから取り外し不能であってもよい。この場合、ロック機構6A、6Bは省略されうる。クランプバネ59に代えて、例えば、引張りコイルバネ、捩りバネ、皿バネ、またはラバーバネが採用されてもよい。
【0134】
上記実施形態では、中間シャフト53、530は、複数の機能(回動レバー81の解除方向への回動に連動して先端工具91を押し下げる機能、スピンドル3A、3Bの第1カム部33、330と協働して、中間シャフト53、530の駆動軸A1周りの回動を、上下方向の直線移動に変換する機能、ボール61を介してクランプシャフト51、510を保持する機能、ロック機構6A、6Bをロック状態とアンロック状態の間で切り替える機能、クランプバネ59の付勢力を受ける機能等)を発揮するように構成されている。しかしながら、中間シャフト53、530は、これらの機能の全てを発揮する必要はない。また、これらの機能は、複数の部材によって実現されてもよい。
【0135】
例えば、中間シャフト53、530(詳細には、フランジ部56、560)は、回動レバー81の解除方向への回動に連動して先端工具91を押し下げる機能のみを有してもよい。なお、フランジ部56、560の形状は、適宜変更されうるが、先端工具91の固着をより確実に解消するために、フランジ部56、560と先端工具91とは、クランプシャフト51の周囲の複数箇所で接触することが好ましく、クランプシャフト51を周方向に取り巻くように接触することがより好ましく、面接触することが更に好ましい。また、例えば、回動レバー81の解除方向への回動に連動して、中間シャフト53、530とは独立してバネ受け部579が下方に押し下げられ、クランプシャフト51、510(中間シャフト53、530)に対する上方への付勢が解除されてもよい。
【0136】
第2実施形態において、中間シャフト530(回動伝達部材58)とインナハウジング103の間に配置されたベアリング583は、ボールベアリング以外のベアリング(例えば、別の種類の転がりベアリング、滑りベアリング)に変更されてもよいし、省略されてもよい。
【0137】
第2実施形態において、回動伝達部材58とバネ受け部579の間に配置されたスラストベアリング585は、ニードルベアリング以外のスラストベアリング(例えば、別の種類のスラスト転がりベアリング)に変更されてもよいし、このスラストベアリング585は省略されてもよい。また、スラストベアリング585に代えて、回動伝達部材58とバネ受け部579の間の摩擦を低減し、これらの円滑な相対回動を実現可能な部材(例えば、スラストワッシャ)が配置されてもよい。また、クランプバネ59が回動伝達部材58と共に回動する場合には、スラストベアリング585(あるいは別のベアリングまたは摩擦低減部材)は、回動伝達部材58とバネ受け部579ではなく、バネ受け部37とスピンドル3B(ベアリング301の内輪)との間に配置されてもよい。
【0138】
上記実施形態では、回動レバー81の駆動軸A1周りの回動に連動して、中間シャフト53、530を上下方向に移動させる運動変換機構として、傾斜面を利用するカム機構としての第1カム部33および第2カム部55と、傾斜溝を利用するカム機構としての第1カム部330および第2カム部550とが例示されている。しかしながら、このような運動変換機構は、適宜変更されうる。
【0139】
例えば、第1カム部33および第2カム部55は、傾斜面であるカム面333、553を夫々に有するが、何れか一方のみが傾斜面を有してもよい。また、第1カム部33および第2カム部55において、直交面332、552に代えて、夫々、カム面333、553と逆方向に傾斜する傾斜面が設けられてもよい。第2実施形態とは逆に、第1カム部330に傾斜溝が設けられ、第2カム部550に傾斜溝の一部に整合する曲面を有し、傾斜溝に係合する係合部(例えば、ボールまたは凸部)が設けられてもよい。カム溝335において、第2傾斜部337の長さは、ボール555の径よりも大きくてもよい。また、第2傾斜部337の解除方向側に、更に、駆動軸A1に直交する平面上で周方向に延在する溝が接続していてもよい。あるいは、カム溝335(傾斜溝)は、解除方向に向かって下方に傾斜する第1傾斜部336のみを有してもよい。また、螺旋状の溝を利用するカム機構や、ネジ溝を利用するネジ機構が採用されてもよい。また、運動変換機構は、上記実施形態のように、必ずしもスピンドル3A、3Bおよび中間シャフト53、530に設けられる必要はない。例えば、ハウジング10(インナハウジング103)に第1カム部33、330が設けられ、中間シャフト53、530の上端部に第2カム部55、550が設けられてもよい。
【0140】
運動変換機構は、回動レバー81の回動を、直接的に中間シャフト53、530の上下方向の移動に変換してもよいし、別の部材を介して変換してもよい。例えば、回動伝達部材576の上端部に螺旋状の傾斜溝が形成され、回動レバー81の回動に伴って突起815が傾斜溝内を摺動することで、中間シャフト53、530を上下方向に移動させてもよい。また、回動レバー81と中間シャフト53、530の間に、回動レバー81に係合して回動され、上下方向に移動するように構成された介在部材が配置されていてもよい。そして、介在部材によって、中間シャフト53、530が上下方向に移動されてもよい。
【0141】
上記実施形態では、ロック機構6A、6Bは、ロックスリーブ63に保持された3つのボール61を用いてクランプシャフト51、510をロックするが、ボール61の数は、3以外であってもよい。また、上記実施形態では、ロックスリーブ63がスピンドル3A、3Bに対して回転不能であり、中間シャフト53、530の回動によって、ボール61とロックスリーブ63が周方向に相対移動し、ロック状態とアンロック状態が切り替えられる。しかしながら、中間シャフト53がスピンドル3A、3Bに対して上下方向にのみ移動するように構成され、ロックスリーブ63が、回動レバー81の回動に連動して、スピンドル3A、3Bに対して回動可能に構成されていてもよい。ボール61とロックスリーブ63の相対移動方向は、周方向ではなく、上下方向であってもよい。また、ボール61に代えて、夫々に複数の歯を有する複数のクランプ部材が採用されてもよい。この場合、クランプシャフト51、510には、クランプ部材の歯に係合可能な複数の溝が設けられる。クランプ部材は、例えば環状のカラーによって、径方向に移動可能に保持される。また、ロック機構6A、6Bは、スピンドル3A、3Bの上側ではなく、例えばスピンドル3A、3Bの内部に配置されていてもよい。
【0142】
ロック機構6A、6Bがアンロック状態においてクランプシャフト51を暫定的に保持する構成も、適宜変更されうる。例えば、アンロック状態において、ボール付勢バネ67によってロックスリーブ63を下方に付勢することで間接的にボール61を径方向に付勢するのではなく、ボール61(またはクランプ部材)を径方向内側に直接的に付勢する弾性部材(バネ、Oリング等)が採用されてもよい。
【0143】
スピンドル3A、3Bの構成(例えば、形状、支持構造等)は、上記実施形態の例に限られるものではなく、適宜、変更されてよい。例えば、上述の実施形態では、工具装着部35は、凸部911を有する先端工具91に対応する凹部351を有する。そして、先端工具91は、その傾斜面913が工具装着部35の傾斜面353に当接した状態で、工具装着部35に固定される。しかしながら、工具装着部35は、平面状の下面を有し、平面状の上面を有する先端工具を固定可能な構成とされてもよい。なお、この場合、先端工具を工具装着部35に位置決めするために、工具装着部35と先端工具91に、夫々、突起と嵌合孔とが設けられていてもよい。この場合、突起および嵌合孔に、上記実施形態の傾斜面353および傾斜面913と同様、駆動軸A1に対して傾斜し、互いに整合する傾斜面が設けられうる。
【0144】
ハウジング10、モータ21、および伝達機構4の構成(例えば、形状、収容する内部構造、配置等)についても、適宜、変更が可能である。例えば、ハウジング10は、弾性連結されたアウタハウジング101とインナハウジング103とを含む防振ハウジングである必要はなく、1層構造のハウジングであってもよい。また、例えば、モータ21は、交流モータであってもよい。モータ21は、出力シャフト211の回転軸A2が駆動軸A1と直交するように、把持部15内に収容されていてもよい。
【0145】
更に、本発明および上記実施形態とその変形例の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様は、独立して、あるいは、実施形態に示す振動工具1A、上記変形例、または各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
【0146】
[態様1]
前記操作部材は、回動に伴って、前記押下げ部材を前記スピンドルに対して前記駆動軸周りに回動させるように構成されており、
前記運動変換機構は、前記押下げ部材の回動を、前記押下げ部材の前記上下方向の直線移動に変換するように構成されている。
【0147】
[態様2]
前記押下げ部材は、前記スピンドルに挿通されて前記上下方向に延在する長尺部材であって、下端部で前記先端工具を押し下げるように構成され、
前記操作部材は、前記押下げ部材の上端部に係合して、前記押下げ部材を回動させるように構成されている。
【0148】
[態様3]
前記ロック機構は、前記押下げ部材の回動に連動して、前記クランプシャフトを前記スピンドルから取り外し可能にロックする第1状態と、ロックが解除された第2状態との間で切り替えられるように構成されている。
[態様4]
前記カム機構は、前記傾斜面または前記傾斜溝を有する第1カム部と、前記傾斜面または前記傾斜部に沿って摺動可能に構成された第2カム部とを含み、
前記押下げ部材は、前記操作部材の前記第1方向の回動に伴って、前記第2カム部が、前記傾斜面または前記傾斜溝のうち、前記第1方向に向かうにつれて下方に傾斜する部分を摺動する間、回動しつつ下方に移動し、前記第2カム部が前記境界を越えると、回動しつつ上方に移動するように構成されている。
上記実施形態の第1カム部330および第2カム部550は、夫々、本態様における「第1カム部」、「第2カム部」の一例である。
[態様5]
前記第1カム部は、前記傾斜溝であって、
前記第2カム部は、前記傾斜溝の内面に整合する曲面を有するボールまたは凸部であって、
前記傾斜面または前記傾斜溝のうち、前記第1方向に向かうにつれて上方に傾斜する部分は、前記ボールまたは前記凸部と概ね対応する大きさを有する。
上記実施形態のボール555は、本態様における「ボール」の一例である。
[態様6]
前記ロック機構は、前記操作部材の前記第1方向の回動に伴って、前記第2カム部が、前記傾斜面または前記傾斜溝のうち、前記第1方向に向かうにつれて下方に傾斜する部分を摺動する間、前記第1状態に維持され、前記第2カム部が前記境界を越えると、前記第2状態に切り替えられるように構成されている。
【0149】
[態様7]
前記付勢部材は、前記押下げ部材を前記スピンドルに対して上方に付勢しており、前記ロック機構によって前記押下げ部材に固定された前記クランプシャフトを、前記押下げ部材を介して上方へ付勢するように構成されている。
【0150】
[態様8]
前記押下げ部材の少なくとも一部は、前記駆動軸に対する径方向において、前記クランプシャフトと前記スピンドルの間に配置され、
前記運動変換機構は、前記スピンドルの内周部に設けられた第1部分と、前記押下げ部材の外周部に設けられた第2部分とを含む。
上記実施形態の第1カム部33、330の各々は、本態様における「第1部分」の一例である。第2カム部55、550の各々は、本態様における「第2部分」の一例である。
【0151】
[態様9]
前記運動変換機構は、
傾斜面または傾斜溝を利用するカム機構、あるいは、ネジ溝を利用するネジ機構であって、
前記ハウジングまたは前記スピンドルに設けられた第1部分と、前記押下げ部材に設けられた第2部分とを含む。
第1実施形態の第1カム部33および第2カム部55は、本態様における「カム機構」の一例であって、夫々が本態様における「第1部分」、「第2部分」の一例である。第2実施形態の第1カム部330および第2カム部550は、本態様における「カム機構」の別の一例であって、夫々が本態様における「第1部分」、「第2部分」の一例である。
【0152】
[態様10]
前記運動変換機構は、前記ハウジングまたは前記スピンドルに設けられ、第1当接面を有する第1カム部と、前記押下げ部材に設けられ、第2当接面を有する第2カム部とを含み、
前記第1当接面および前記第2当接面の少なくとも一方は、前記駆動軸周りの周方向に傾斜する傾斜面を含み、
前記第1カム部および前記第2カム部は、前記駆動軸周りに相対的に回動可能に配置され、前記第1当接面と前記第2当接面の摺動により、前記スピンドルに対する前記押下げ部材の回動を、前記押下げ部材の前記上下方向の直線移動に変換するように構成されている。
上記実施形態の第1カム部33および第2カム部55は、夫々、本態様における「第1カム部」および「第2カム部」の一例である。第1カム部33の下面および第2カム部55の上面は、夫々、本態様における「第1当接面」および「第2当接面」の一例である。
【0153】
[態様11]
前記運動変換機構は、前記ハウジングまたは前記スピンドルに設けられ、第1当接面を有する第1カム部と、前記押下げ部材に設けられ、第2当接面を有する第2カム部とを含み、
前記第1当接面は、前記駆動軸周りの周方向に傾斜する第1傾斜面と、前記駆動軸に直交する第1直交面とを含み、
前記第2当接面は、前記周方向に傾斜し、前記第1傾斜面に整合する第2傾斜面と、前記駆動軸に直交する第2直交面とを含み、
前記第1カム部および前記第2カム部は、
前記駆動軸周りに相対的に回動可能に配置され、
前記操作部材が基準位置から所定の角度範囲内で前記第1方向に回動されるのに伴って、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面の摺動によって、前記押下げ部材の回動を前記直線移動に変換し、且つ、
前記操作部材が前記角度範囲を超えて前記第1方向に回動された場合には、前記第1直交面と前記第2直交面の摺動によって、前記押下げ部材の回動を前記直線移動に変換することなく、前記押下げ部材の回動を許容するように構成されている。
上記実施形態の第1カム部33および第2カム部55は、夫々、本態様における「第1カム部」および「第2カム部」の一例である。第1カム部33の下面および第2カム部55の上面は、夫々、本態様における「第1当接面」および「第2当接面」の一例である。
カム面333および直交面332は、夫々、本態様における「第1傾斜面」および「第1直交面」の一例である。カム面553および直交面552は、夫々、本態様における「第2傾斜面」および「第2直交面」の一例である。
【0154】
[態様12]
前記ロック機構は、
前記クランプシャフトに係合可能に構成され、前記クランプシャフトに係合する第1位置と、前記クランプシャフトに係合不能な第2位置との間で径方向に移動可能な係合部材と、
前記スピンドルと一体的に回転可能に構成され、前記係合部材を前記第1位置で移動不能に保持する第3位置と、前記係合部材を前記第1位置から前記第2位置に移動可能に保持する第4位置との間で、前記係合部材に対して相対的に移動可能な保持部材と、を備える。
上記実施形態のボール61およびロックスリーブ63は、夫々、本態様における「係合部材」および「保持部材」の一例である。
【0155】
[態様13]
前記保持部材は、前記操作部材が前記第1方向に回動された場合に、前記第3位置から前記第4位置に相対的に移動されるように構成されている。
[態様14]
前記係合部材と前記保持部材は、前記駆動軸周りの周方向に相対移動するように構成されている。
【0156】
[態様15]
前記係合部材と前記保持部材は、前記押下げ部材の回動に伴って、前記駆動軸周りの周方向に相対移動するように構成されている。
【0157】
[態様16]
前記ロック機構は、前記係合部材または前記保持部材を付勢する第2付勢部材を備え、
前記保持部材が前記第4位置に配置されている場合、前記係合部材は、前記第2付勢部材の付勢力によって前記第1位置へ向けて付勢され、前記クランプシャフトに係合する一方、前記クランプシャフトが前記スピンドルから取り外される方向に移動された場合、前記クランプシャフトによって前記付勢力に抗して前記第2位置へ移動され、係合を解除するように構成されている。
上記実施形態のボール付勢バネ67は、本態様における「第2付勢部材」の一例である。
【0158】
[態様17]
前記解除部材は、前記付勢力に抗して下方に移動することで、前記クランプ力を解除するように構成されている。
[態様18]
前記解除部材は、前記押下げ部材と一体的に上下方向に移動するように構成されている。
【0159】
[態様19]
前記スピンドルは、前記駆動軸に交差する方向に傾斜した第1傾斜面を下端部に有し、
前記クランプシャフトは、前記付勢部材によって付与されたクランプ力によって、前記先端工具に設けられた第2傾斜面を下側から前記第1傾斜面に押し付けた状態で、前記ヘッド部と前記スピンドルの下端部の間で前記先端工具をクランプするように構成されている。
【符号の説明】
【0160】
1A、1B:振動工具、10:ハウジング、101:アウタハウジング、103:インナハウジング、11:前端部、13:後端部、131:バッテリ装着部、15:把持部、20:コントローラ、21:モータ、211:出力シャフト、27:スライダ、28:変速ダイアル、29:スイッチ、3A、3B:スピンドル、301:ベアリング、302:ベアリング、31:円筒部、32:フランジ部、33、330:第1カム部、331:凸部、332:直交面、333:カム面、335:カム溝、35:工具装着部、351:凹部、353:傾斜面、37:バネ受け部、371:凹部、39:シール部材、4:伝達機構、41:偏心シャフト、43:揺動アーム、45:ベアリング、5A、5B:クランプ機構、51、510:クランプシャフト、511:シャフト部、512:係合溝、513:弾性部材、515:ヘッド部、53、530:中間シャフト、54、540:下側部分、541:ロック部、542:ボール保持孔、545:摺動部、546:弾性部材、55、550:第2カム部、551:凸部、552:直交面、553:カム面、555:ボール、56:フランジ部、57:上側部分、571:雄ネジ部、572:ナット、573:嵌合孔、574:ピン、576、58:回動伝達部材、577:凹部、579:バネ受け部、59:クランプバネ、6A、6B:ロック機構、61:ボール、63:ロックスリーブ、631:摺動部、633:ボール保持部、634:ショルダ部、635:ボール受け部、638:係止突起、67:ボール付勢バネ、69:ワッシャ、81:回動レバー、811:固定部、813:レバー、815:突起、91:先端工具、911:凸部、912:貫通孔、913:傾斜面、93:バッテリ、A1:駆動軸、A2:回転軸