(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】水栓
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
E03C1/042 B
(21)【出願番号】P 2019217908
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】矢口 翔平
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-195944(JP,A)
【文献】特開2013-199806(JP,A)
【文献】特開2001-207495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体と、前記水栓本体の上部を覆うトップカバーと、前記トップカバーに当接した状態で前記水栓本体の後部を覆うバックカバーとを有する水栓であって、
前記バックカバーは、後壁と、当該後壁の上端部から前方に延びる天壁を有し、前記天壁は、当該天壁を貫通する複数の溝を有し、
前記トップカバーに設けられた係合部
としての複数の縦壁が、前記バックカバーに設けられた被係合部
としての複数の前記溝に挿通した状態で前記トップカバーと前記バックカバーは組み合わされており、
前記係合部
には、前記水栓本体の上方において前記トップカバーと前記バックカバーとが当接した箇所における前記トップカバーの上方への移動を規制する規制部
としての横壁が設けられていることを特徴とする水栓。
【請求項2】
前記水栓本体と前記トップカバーとが重なる方向を上下方向とし、
前記水栓本体と前記バックカバーとが重なる方向を前後方向とし、
前記上下方向と前記前後方向の両方に直交する方向を左右方向とすると、
前記係合部は、前記バックカバーに対する前記トップカバーの左右方向の位置を規定する位置決め部を有している請求項1に記載の水栓。
【請求項3】
前記被係合部は、前記バックカバーの厚さ方向に延びる突出壁を有するとともに、
前記係合部は、前記トップカバーの下方に延びる縦壁と、前記縦壁の下端部から横方向に延びる横壁とを有しており、
前記規制部は、前記横壁で構成されている請求項1又は2に記載の水栓。
【請求項4】
前記水栓本体と前記バックカバーとが重なる方向を前後方向とすると、
前記縦壁は、前後方向に沿って延びている請求項3に記載の水栓。
【請求項5】
前記係合部は、前記バックカバーに対する前記トップカバーの左右方向の位置を規定する位置決め部を有しており、
前記位置決め部は、前記縦壁で構成されている請求項3又は4に記載の水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓カバーを備える水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、水栓カバーを備える水栓について記載している。
図16に示すように、水栓60は、水栓本体61と、水栓本体61の前部、上部、及び、下部を覆うトップカバー62aと、トップカバー62aに当接した状態で水栓本体61の後部を覆うバックカバー62bとを有している。トップカバー62aは、左右方向から見た断面が横向きのU字状の外形を有し、厚さ方向に沿って内周側から外周側に向かって凹んだ溝63を有している。バックカバー62bは、左右方向の両端部に、バックカバー62bの厚さ方向に沿って前方に延びる突出壁64を有しており、各突出壁64における上下方向の両端部に、外方側に向かって突出した突起64aが設けられている。
【0003】
図17に示すように、トップカバー62aに設けられた溝63が、バックカバー62bに設けられた突起64aに係合した状態で、トップカバー62aとバックカバー62bは組み合わされている。この状態で、トップカバー62aのU字状における上側の後端部65が、バックカバー62bの上端部66に当接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の水栓60において、水栓本体61の上方におけるトップカバー62aとバックカバー62bとが当接した箇所では、バックカバー62bの突起64aに対してトップカバー62aの溝63が上方側から被さった状態で両者は係合している。そのため、水栓60の洗浄時等に人の手がトップカバー62aに触れると、トップカバー62aとバックカバー62bとが当接した箇所においてトップカバー62aが上方へ変形して、両者の係合状態が解除される虞があるという課題を有している。本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水栓本体の上方におけるトップカバーとバックカバーの係合状態の解除を抑制し得る水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための水栓は、水栓本体と、前記水栓本体の上部を覆うトップカバーと、前記トップカバーに当接した状態で前記水栓本体の後部を覆うバックカバーとを有する水栓であって、前記トップカバーに設けられた係合部が、前記バックカバーに設けられた被係合部に係合した状態で前記トップカバーと前記バックカバーは組み合わされており、前記係合部は、前記水栓本体の上方において前記トップカバーと前記バックカバーとが当接した箇所における前記トップカバーの上方への移動を規制する規制部を有することを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、トップカバーに設けられた係合部が、水栓本体の上方においてトップカバーとバックカバーとが当接した箇所におけるトップカバーの上方への移動を規制する規制部を有することにより、当該箇所におけるトップカバーの上方への変形を抑制することができる。そのため、水栓本体の上方におけるトップカバーとバックカバーの係合状態の解除を抑制することができる。
【0008】
上記水栓について、前記水栓本体と前記トップカバーとが重なる方向を上下方向とし、前記水栓本体と前記バックカバーとが重なる方向を前後方向とし、前記上下方向と前記前後方向の両方に直交する方向を左右方向とすると、前記係合部は、前記バックカバーに対する前記トップカバーの左右方向の位置を規定する位置決め部を有していることが好ましい。この構成によれば、トップカバーとバックカバーを組み合わせる際に、バックカバーに対するトップカバーの左右方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0009】
上記水栓について、前記被係合部は、前記バックカバーの厚さ方向に延びる突出壁を有するとともに、前記係合部は、前記トップカバーの下方に延びる縦壁と、前記縦壁の下端部から横方向に延びる横壁とを有しており、前記規制部は、前記横壁で構成されていることが好ましい。この構成によれば、トップカバーの横壁をバックカバーの突出壁の下面に係合させることによってトップカバーの上方への変形を抑制することができる。そのため、水栓本体の上方におけるトップカバーとバックカバーの係合状態の解除を抑制することができる。
【0010】
上記水栓について、前記水栓本体と前記バックカバーとが重なる方向を前後方向とすると、前記縦壁は、前後方向に沿って延びていることが好ましい。この構成によれば、バックカバーの突出壁にトップカバーの縦壁を係合させた際に、突出壁に沿ってトップカバーを安定した状態で誘導することができる。そのため、トップカバーの組付け性を向上させることができる。
【0011】
上記水栓について、前記係合部は、前記バックカバーに対する前記トップカバーの左右方向の位置を規定する位置決め部を有しており、前記位置決め部は、前記縦壁で構成されていることが好ましい。この構成によれば、縦壁を用いてトップカバーの左右方向の位置決めを行うことができるため、位置決め部を別途設ける必要がない。そのため、係合部の構成を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水栓によれば、水栓本体の上方におけるトップカバーとバックカバーの係合状態の解除を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図7】組み合わせる前のトップカバーとバックカバーの斜視図。
【
図8】組み合わせた後のトップカバーとバックカバーの斜視図。
【
図14】さらに別の変更例の係合部と被係合部の断面図。
【
図15】さらに別の変更例の係合部と被係合部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
水栓の実施形態を説明する。
図1に示すように、水栓10は、浴室の壁面Wに設置されている。以下では、壁面W側に向かって水栓10を見た場合における上下方向、左右方向、及び、前後方向をそれぞれ、水栓10の上下方向、左右方向、及び、前後方向として説明する。
【0015】
図1に示すように、水栓10は、カラン用の吐水管16及びシャワーヘッド用のホース17が接続される水栓本体12を備えている。水栓本体12の前面には、二つのボタンが設けられている。二つのボタンのうち、左側のボタンを第1ボタン40、右側のボタンを第2ボタン41とする。水栓本体12は、第1ボタン40を操作することにより、カラン用の吐水管16からの吐止水を切り替えることができるように構成されている。また、第2ボタン41を操作することにより、シャワーヘッドからの吐止水を切り替えることができるように構成されている。
【0016】
図1及び
図2に示すように、水栓10は、水栓本体12を覆う水栓カバー15を備えている。水栓カバー15は、水栓本体12に前方側から取り付けられるトップカバー15a、及び、水栓本体12に後方側から取り付けられるバックカバー15bの二つの分割体を組み合わせてなる。トップカバー15aは、水栓本体12の前部、上部、及び、下部を覆う。バックカバー15bは、水栓本体12の後部を覆う。トップカバー15aには、二つの貫通孔が設けられており、この貫通孔からボタンが露出している。ここで、左側の貫通孔を第1ボタン40が露出する第1ボタン孔50、右側の貫通孔を第2ボタン41が露出する第2ボタン孔51とする。
【0017】
図1に示すように、水栓本体12の右側の端部には、流量調節ハンドル14が一体に回動可能に取り付けられるとともに、水栓本体12の左側の端部には、温度調節ハンドル13が一体に回動可能に取り付けられている。流量調節ハンドル14は、回動させることによって、吐水管16及びシャワーヘッドからの吐水の流量を調節するハンドルである。温度調節ハンドル13は、回動させることによって、吐水管16及びシャワーヘッドから吐出される混合水の温度を調節するハンドルである。
【0018】
水栓カバー15について説明する。
まず、バックカバー15bについて説明する。なお、以下の説明では、便宜上、
図1に示すように、水栓カバー15が水栓本体12に取り付けられた状態における上下方向、左右方向、及び、前後方向を用いて各部材を説明する。
【0019】
図3、4に示すように、バックカバー15bは、上下方向の寸法に対して左右方向の寸法が長い横長で略矩形状の後壁20を有している。後壁20の壁面は上下方向に沿っており、左右方向の中央部が、前後方向の後方側に突出するように構成されている。
【0020】
後壁20には、水栓本体12における給湯管及び給水管の連結部12a(
図2参照)を挿通させる2つの挿通孔21が設けられている。また、後壁20には、水栓本体12におけるシャワーヘッド用のホース17との連結部12b(
図2参照)を挿通させる挿通孔22が設けられている。
【0021】
バックカバー15bは、後壁20の上端部20aにおいて、後壁20の厚さ方向に沿って前方に延びる突出壁(以下、「天壁」ともいう。)23と、後壁20の下端部20bにおいて、後壁20の厚さ方向に沿って前方に延びる突出壁(以下、「底壁」ともいう。)24を有している。天壁23、及び、底壁24の壁面は、略水平で互いに平行に構成されている。左右方向から見たバックカバー15bの断面は、コの字状の外形を有している。
【0022】
さらに、バックカバー15bは、後壁20の左右両端部から後壁20の厚さ方向に沿って前方に延びる突出壁(以下、「側壁」ともいう。)25を有している。側壁25は、天壁23と底壁24に接続されている。側壁25の先端部には、曲線状の凹部25aが形成されている。
【0023】
図2に示すように、側壁25に形成された凹部25aは、バックカバー15bとトップカバー15aとが組み合わされた際に、流量調節ハンドル14、及び、温度調節ハンドル13の回動軸が挿通する空間を形成するように構成されている。
【0024】
図3に示すように、天壁23の左右方向における中央部には、切欠23aが設けられている。この切欠23aは、天壁23の前端部から後壁20側に向かって形成されている。切欠23aを挟んで両側には、天壁23を貫通する複数の溝23bが形成されている。溝23bは、切欠23aを挟んだ両側に2つずつ、合計4つ設けられている。各溝23bは、天壁23の前端部から後壁20側に向かって前後方向に沿って延びている。各溝23bの幅は、後壁20側に向かって徐々に小さくなるように構成されている。具体的には、各溝23bは、天壁23の前端部から後壁20側に向かって先細形状となるようにテーパ状に構成されたテーパ部23b1(
図11参照)と、テーパ部23b1よりも後壁20側において溝23bの幅が平行となる平行部23b2(
図11参照)とを有している。
【0025】
溝23bの前後方向の長さは特に限定されないが、バックカバー15bの前後方向の長さの50%以上の長さであることが好ましく、80%以上の長さであることがより好ましい。溝23bの前後方向の長さが上記数値範囲であることにより、後述のように、溝23bにトップカバー15aの縦壁33aを挿通させた際に、縦壁33aをより後壁20に近い位置まで誘導することができる。
【0026】
図4に示すように、切欠23aの左右両側には、切欠23aの縁部から若干距離を置いて上下方向の両方に延びる縦壁(以下、「補強壁」ともいう。)23cが設けられている。補強壁23cは、後壁20から天壁23の前端部まで延びている。
【0027】
同様に、切欠23aの左右両側に位置する2つの溝23bにおいて、各溝23bの左右両側には、各溝23bの縁部から若干距離を置いて、上下方向の両方に延びる補強壁23cが設けられている。
【0028】
さらに、これら2つの溝23bの左右方向における外側に位置する2つの溝23bにおいて、各溝23bの左右方向の内側には、各溝23bの縁部から若干距離を置いて、上下方向の両方に延びる補強壁23cが設けられている。言い換えれば、天壁23に設けられた4つの溝23bのうち、左右方向の内側に位置する2つの溝23bには、左右方向の両側に補強壁23cが設けられており、左右方向の外側に位置する2つの溝23bには、左右方向の内側のみに補強壁23cが設けられている。天壁23に設けられた各補強壁23cの上端部は、後述のように、バックカバー15bに組み合わされたトップカバー15aの天壁33の下面に当接するように構成されている。
【0029】
図3に示すように、底壁24には、左右方向における中央部から略等間隔となる位置に底壁24を貫通する溝24bが2つ形成されている。各溝24bは、底壁24の前端部から後壁20側に向かって前後方向に沿って延びている。各溝24bの幅は、後壁20側に向かって徐々に小さくなるように構成されている。溝24bの形状及び前後方向の長さは、天壁23に設けられた溝23bの形状及び前後方向の長さと略同じになるように構成されている。
【0030】
図4に示すように、底壁24に設けられた各溝24bの左右方向の両側には、各溝24bの縁部から若干距離を置いて、下方に延びる補強壁24cが設けられている。底壁24の下方に延びる各補強壁24cの下端部は、後述のように、バックカバー15bに組み合わされたトップカバー15aの底壁34の上面に当接するように構成されている。
【0031】
また、各溝24bの左右方向の外側には、各溝24bの縁部から若干距離を置いて、上方に延びる補強壁24cが設けられている。
底壁24の左右方向における2つの溝24bの外側には、トップカバー15aと組み合わされた状態でトップカバー15aとの位置を固定するためのビス(図示省略)を挿通させるネジ孔24dが設けられている。
【0032】
上記のように、溝23b、24bや切欠23aの周囲に補強壁23c、24cが設けられていることにより、溝23b、24bや切欠23aの周囲において、天壁23及び底壁24の上下方向の変形を抑制することができる。言い換えれば、補強壁23c、24cによって、溝23b、24bや切欠23aの周囲が補強されている。
【0033】
また、バックカバー15bの天壁23に設けられた補強壁23cの上端部が、トップカバー15aの天壁33の下面に当接し、バックカバー15bの底壁24に設けられた補強壁24cの下端部が、トップカバーの底壁34の上面に当接する。これにより、バックカバー15bに組み合わされたトップカバー15aの天壁33及び底壁34を、補強壁23c、24cで好適に支持することができる。
【0034】
次に、トップカバー15aについて説明する。
図5、6に示すように、トップカバー15aは、上下方向の寸法に対して左右方向の寸法が長い横長で略矩形状の前壁30を有している。トップカバー15aは、前壁30の上端部から後方に延びる突出壁(以下、「天壁」ともいう。)33と、前壁30の下端部から後方に延びる突出壁(以下、「底壁」ともいう。)34を有している。天壁33及び底壁34の壁面は、前後方向の後方に向かうにつれて上下方向の互いに離間する方向に若干傾斜している(
図9参照)。天壁33及び底壁34における左右方向の中央部は、傾斜した方向に沿って後方側に突出するように構成されている。
【0035】
図2に示すように、前壁30は、天壁33と底壁34の間を曲線状に繋いでいる。前壁30の壁面は、上下方向の中央部が前方に凸となる曲面を有している。左右方向から見たトップカバー15aの断面は、横向きのU字状の外形を有している。前壁30には、左右方向に沿って第1ボタン孔50と第2ボタン孔51とが設けられている。
【0036】
トップカバー15aの天壁33における前後方向の長さは、バックカバー15bの天壁23における同方向の長さよりも長く構成されている。同様に、トップカバー15aの底壁34における前後方向の長さは、バックカバー15bの底壁24における同方向の長さよりも長く構成されている。
【0037】
図5に示すように、天壁33の下面には、下方に延びる複数の縦壁33aが設けられている。複数の縦壁33aは、天壁33の左右方向の中央部よりも左側に3つ並設されているとともに、天壁33の左右方向の中央部よりも右側に2つ並設されており、左右方向に沿って合計5つ並設されている。各縦壁33aは、天壁33の後端部33c側から前壁30側に向かって前後方向に沿ってレール状に延びている。
【0038】
天壁33の中央部よりも左側に設けられた3つの縦壁33aのうち、最も中央部側に位置する縦壁33aは、天壁33における後方側に突出した箇所の下面に設けられている。そのため、この縦壁33aの後端部は、他の縦壁33aの後端部に比べて後方側に位置する。
【0039】
各縦壁33aの前後方向の長さは特に限定されないが、トップカバー15aの前後方向の長さの50%以上の長さであることが好ましく、80%以上の長さであることがより好ましい。各縦壁33aの前後方向の長さが上記数値範囲であることにより、後述のように、バックカバー15bの溝23bに縦壁33aを挿通させた際に、溝23bに沿ってトップカバー15aをより安定した状態で移動させることができる。
【0040】
図6に示すように、各縦壁33aには、各縦壁33aの下端部から左右方向の外側に延びる横壁33bが設けられている。前後方向における横壁33bの長さは、同方向における縦壁33aの長さと略同じ長さで構成されている。前後方向から見て、縦壁33aと横壁33bはL字状に構成されている。
【0041】
図5に示すように、底壁34の上面には、上方に延びる複数の縦壁34aが設けられている。複数の縦壁34aは、左右方向の中央部から略等間隔となる位置に2つ形成されている。各縦壁34aは、底壁34の後端部34c側から前壁30側に向かって前後方向に沿ってレール状に延びている。
【0042】
底壁34に設けられた2つの縦壁34aは、底壁34における後方側に突出した箇所の上面に設けられている。これらの縦壁34aの後端部は、天壁33における後方側に突出した箇所の下面に設けられた縦壁33aの後端部と略同じ位置となっている。すなわち、トップカバー15aに設けられた複数の縦壁33a、34aのうち、一部の縦壁33a、34aの後端部は、他の縦壁33a、34aの後端部よりも後方側に位置している。
【0043】
各縦壁34aの前後方向の長さは、天壁33に設けられた縦壁33aの長さと略同じ長さとなるように構成されている。
図6に示すように、底壁34の上面に設けられた各縦壁34aには、各縦壁34aの上端部から左右方向の外側に延びる横壁34bが設けられている。前後方向における横壁34bの長さは、同方向における縦壁34aの長さと略同じ長さで構成されている。前後方向から見て、縦壁34aと横壁34bは逆L字状に構成されている。
【0044】
底壁34の左右方向における2つの縦壁34aの外側には、バックカバー15bと組み合わされた状態でバックカバー15bとの位置を固定するためのビス(図示省略)を挿通させるネジ孔34dが設けられている。
【0045】
バックカバー15bとトップカバー15aの組み合わせ機構について説明する。
なお、便宜上、水栓本体12を省略して説明する。
図7に示すように、バックカバー15bの前方側とトップカバー15aの後方側とが互いに対向する位置にバックカバー15bとトップカバー15aを配置する。前後方向から見て、トップカバー15aに設けられた複数の縦壁33a、34aと、バックカバー15bに設けられた複数の溝23b、24b及び切欠23aが、前後方向において互いに重なる位置となる。
【0046】
図8、9に示すように、バックカバー15bとトップカバー15aを前後方向に沿って接近させると、バックカバー15bに設けられた複数の溝23b、24b及び切欠23aに、トップカバー15aに設けられた複数の縦壁33a、34aが挿通される。
【0047】
この際、トップカバー15aの天壁33及び底壁34において、後方側に突出した箇所に設けられた縦壁33a、34aが、他の縦壁33a、34aよりも早くバックカバー15bの溝23b、24b及び切欠23aに挿通される。
【0048】
さらに、バックカバー15bの天壁23の上側にトップカバー15aの天壁33が重なるとともに、バックカバー15bの底壁24の下側にトップカバー15aの底壁34が重なった状態となる。そして、トップカバー15aの天壁33の後端部33cがバックカバー15bの後壁20の上端部20aに当接するとともに、トップカバー15aの底壁34の後端部34cがバックカバー15bの後壁20の下端部20bに当接した状態で、バックカバー15bとトップカバー15aは組み合わせられる。
【0049】
この状態で、バックカバー15bとトップカバー15aのネジ孔24d、34dが上下方向に重なり合う。これらのネジ孔24d、34dにビス(図示省略)を挿通させるとともに、ビスを水栓本体12の下面側に設けたネジ孔(図示省略)に螺合させることによって、バックカバー15bとトップカバー15aは接続された状態で水栓本体12に固定される。
【0050】
図10に示すように、バックカバー15bとトップカバー15aが組み合わされた状態において、バックカバー15bに設けられた複数の溝23b、24bに挿通された縦壁33a、34aは、溝23b、24bの両内面に当接する。具体的には、縦壁33a、34aは、溝23b、24bの後壁20側における平行部の両内面に当接する。また、切欠23aに挿通された縦壁33aは、切欠23aの左側の縁部に当接する。
【0051】
さらに、トップカバー15aの天壁33における縦壁33aに設けられた横壁33bが、バックカバー15bの天壁23の下面に当接する。同様に、トップカバー15aの底壁34における縦壁34aに設けられた横壁34bが、バックカバー15bの底壁24の上面に当接する。
【0052】
バックカバー15bとトップカバー15aを組み合わせる際、溝23b、24bの前後方向の長さが、バックカバー15bの前後方向の長さの50%以上の長さであるため、トップカバー15aの縦壁33a、34aをより離れた位置から誘導し始めることができる。さらに、トップカバー15aの縦壁33a、34aをより後壁20に近い位置まで誘導することができる。また、各縦壁33a、34aの前後方向の長さが、トップカバー15aの前後方向の長さの50%以上の長さであるため、各縦壁33a、34aがレール状に延びた状態となっている。そのため、バックカバー15bの溝23b、24bに縦壁33a、34aを挿通させて移動させる際に、縦壁33a、34aの移動を安定させることができる。トップカバー15aを安定した状態で移動させることができるため、トップカバー15aの組付け性を向上させることができる。
【0053】
以上のように、バックカバー15bとトップカバー15aは組み合わされる。バックカバー15bとトップカバー15aが組み合わされることによって、トップカバー15aの前壁30、天壁33、底壁34が、水栓本体12の前部、上部、下部を覆うとともに、バックカバー15bの後壁20が、水栓本体12の後部を覆う位置に配置された状態となる。
【0054】
水栓本体12に、トップカバー15a、バックカバー15b、流量調節ハンドル14、及び、温度調節ハンドル13を取り付ける順序は特に限定されず、適宜順序を変更することが可能である。
【0055】
例えば、水栓本体12に流量調節ハンドル14、及び、温度調節ハンドル13を取り付けた後、水栓本体12の後方側からバックカバー15bを取り付け、さらに、水栓本体12の前方側からトップカバー15aを取り付けてもよい。
【0056】
本実施形態の作用について説明する。
図10、11に示すように、バックカバー15bとトップカバー15aが組み合わされた状態において、バックカバー15bの溝23b、24bに挿通されたトップカバー15aの縦壁33a、34aは、溝23b、24bの平行部の両内面に当接した状態で溝23b、24bに係合している。また、バックカバー15bの切欠23aに挿通されたトップカバー15aの縦壁33aは、切欠23aの左側の縁部に当接した状態で切欠23aに係合している。そのため、トップカバー15aの縦壁33a、34aは係合部として機能するとともに、バックカバー15bの溝23b、24b及び切欠23aは被係合部として機能する。
【0057】
また、溝23b、24bの平行部の両内面に、トップカバー15aの縦壁33a、34aが当接することによって、トップカバー15aの縦壁33a、34aが左右方向に移動することが抑制される。そのため、トップカバー15aの縦壁33a、34aは、バックカバー15bに対するトップカバー15aの左右方向の位置を規定する位置決め部としても機能する。
【0058】
図11に示すように、さらに、トップカバー15aの天壁33において、縦壁33aに設けられた横壁33bの上面がバックカバー15bの天壁23の下面に当接することにより、トップカバー15aの天壁33がバックカバー15bの後壁20に当接した箇所から上方へ変形することが抑制されている。そのため、トップカバー15aの天壁33の縦壁33aに設けられた横壁33bは、トップカバー15aの天壁33が上方へ移動することを規制する規制部として機能する。
【0059】
同様に、トップカバー15aの底壁34において、縦壁34aに設けられた横壁34bの下面がバックカバー15bの底壁24の上面に当接していることにより、トップカバー15aの底壁34がバックカバー15bの後壁20に当接した箇所から下方へ変形することが抑制されている。そのため、トップカバー15aの底壁34の縦壁34aに設けられた横壁34bは、トップカバー15aの底壁34が下方へ移動することを規制する規制部として機能する。
【0060】
本実施形態の効果について説明する。
(1)トップカバー15aの天壁33において、縦壁33aに設けられた横壁33bの上面がバックカバー15bの天壁23の下面に当接することにより、トップカバー15aの天壁33がバックカバー15bの後壁20に当接した箇所から上方へ変形することが抑制されている。したがって、水栓10の洗浄時等に人の手がトップカバー15aに触れても、水栓本体12の上方におけるトップカバー15aとバックカバー15bの係合状態の解除を抑制することができる。
【0061】
(2)トップカバー15aの底壁34において、縦壁34aに設けられた横壁34bの下面がバックカバー15bの底壁24の上面に当接することにより、トップカバー15aの底壁34がバックカバー15bの後壁20に当接した箇所から下方へ変形することが抑制されている。したがって、水栓10の洗浄時等に人の手がトップカバー15aに触れても、水栓本体12の下方におけるトップカバー15aとバックカバー15bの係合状態の解除を抑制することができる。
【0062】
(3)バックカバー15bの天壁23及び底壁24に設けられた溝23b、24bの平行部の両内面に、トップカバー15aの天壁33及び底壁34に設けられた縦壁33a、34aが当接することによって、バックカバー15bに対するトップカバー15aの左右方向の位置が規定されている。したがって、バックカバー15bとトップカバー15aを組み合わせる際に、バックカバー15bに対するトップカバー15aの左右方向の位置決めを容易に行うことができる。また、バックカバー15bに組み合わされた状態におけるトップカバー15aのがたつきを抑制することができる。さらに、トップカバー15aの左右方向の位置決めを行うために別途部材を設ける必要がないため、トップカバー15aの構成を簡略化することができる。
【0063】
(4)バックカバー15bに設けられた溝23b、24bの前後方向の長さは、バックカバー15bの前後方向の長さの50%以上の長さである。トップカバー15aの縦壁33a、34aをより離れた位置から誘導し始めることができる。さらに、トップカバー15aの縦壁33a、34aをより後壁20に近い位置まで誘導することができるため、トップカバー15aの組付け性を向上させることができる。
【0064】
(5)トップカバー15aに設けられた縦壁33a、34aの前後方向の長さは、トップカバー15aの前後方向の長さの50%以上の長さである。縦壁33a、34aがレール状に延びた状態となるため、バックカバー15bの溝23b、24bに縦壁33a、34aを挿通させて移動させる際に、縦壁33a、34aの移動をより安定させることができる。トップカバー15aをより安定した状態で移動させることができるため、トップカバー15aの組付け性を向上させることができる。
【0065】
(6)バックカバー15bに設けられた溝23b、24bの幅は、後壁20側に向かって徐々に小さくなるように構成されている。バックカバー15bの天壁23及び底壁24の前端部において溝23b、24bの幅がより大きく構成されるため、トップカバー15aの縦壁33a、34aを溝23b、24bに挿通することが容易になる。また、溝23b、24bに沿って縦壁33a、34aを移動させると、縦壁33a、34aが溝23b、24bの両内面に当接した位置で左右方向の位置決めをすることができるため、トップカバー15aの左右方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0066】
(7)トップカバー15aの天壁33及び底壁34において、後方側に突出した箇所に設けられた縦壁33a、34aが、他の縦壁33a、34aよりも早くバックカバー15bの溝23b、24b及び切欠23aに挿通される。
【0067】
トップカバー15aに設けられた全ての縦壁33a、34aが、バックカバー15bの溝23b、24b及び切欠23aに同時に挿通される態様に比べて、一部の縦壁33a、34aを先行して溝23b、24b及び切欠23aに挿通させることができる。一部の縦壁33a、34aを用いてバックカバー15bに対するトップカバー15aの位置を仮決めしたうえで、トップカバー15aとバックカバー15bを組み合わせることができるため、トップカバー15aの組付け性を向上させることができる。
【0068】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・本実施形態では、トップカバー15aの天壁33と底壁34の両方に、縦壁33a、34aと横壁33b、34bが設けられていたが、この態様に限定されない。トップカバー15aの天壁33のみに縦壁33aと横壁33bが設けられていてもよい。
【0069】
・本実施形態において、トップカバー15aの縦壁33a、34aは、天壁33に5つ、底壁34に2つ設けられていたが、この態様に限定されない。縦壁33a、34aの数及び位置は、バックカバー15bの溝23b、24bと切欠23aの数及び位置に合わせて適宜設定することができる。バックカバー15bの溝23b、24bと切欠23aの数及び位置も同様に、トップカバー15aの縦壁33a、34aの数及び位置に合わせて適宜設定することができる。
【0070】
・本実施形態において、トップカバー15aの縦壁33aと横壁33bはL字状に構成されていたが、この態様に限定されない。縦壁33aと横壁33bの形状は適宜選択することができる。例えば、縦壁33aと横壁33bはT字状に構成されていてもよいし、十字状に構成されていてもよい。
【0071】
・トップカバー15aの天壁33と底壁34の両方において、縦壁33a、34aと横壁33b、34bが省略されていてもよい。同様に、バックカバー15bの天壁23と底壁24の両方において、溝23b、24bや切欠23aは省略されていてもよい。
【0072】
図12に示すように、例えば、トップカバー15aの天壁33内において、下面側から上方へ延びるとともに、左右方向に延びるT字溝33dが設けられていてもよい。T字溝33dは、トップカバー15aの前後方向に沿って同一形状となるように構成されている。また、バックカバー15bの天壁23に、上方に延びるとともに左右方向に延びるT字壁23dが設けられており、T字壁23dは、バックカバー15bの前後方向に沿って同一形状となるように構成されている。バックカバー15bのT字壁23dをトップカバー15aのT字溝33dに係合させることによって、トップカバー15aの天壁33がバックカバー15bの後壁20に当接した箇所から上方へ変形することを抑制することができる。また、トップカバー15aの左右方向の位置決めを行うことができる。そのため、トップカバー15aのT字溝33dが、規制部及び位置決め部として機能する。トップカバー15aの底壁34とバックカバー15bの底壁24も同様に構成されていてもよい。
【0073】
・トップカバー15aの天壁33と底壁34の両方において、横壁33b、34bが省略されていてもよい。
図13に示すように、例えば、トップカバー15aの天壁33に設けられた縦壁33aが、上下方向の中央部に凹溝33eを有しており、この凹溝33eは、トップカバーの前後方向に沿って同一形状となるように構成されている。この凹溝33eに、バックカバー15bの天壁23が係合するように構成されている。この態様においても、トップカバー15aの天壁33がバックカバー15bの後壁20に当接した箇所から上方へ変形することを抑制することができる。また、トップカバー15aの左右方向の位置決めを行うことができる。この態様では、縦壁33aの凹溝33eが規制部及び位置決め部として機能する。トップカバー15aの底壁34とバックカバー15bの底壁24も同様に構成されていてもよい。
【0074】
・本実施形態において、バックカバー15bに設けられた溝23b、24bはテーパ部と平行部とを有していたが、この態様に限定されない。テーパ部のみで構成され、溝23b、24bの幅が後壁20側に向かうにつれて小さくなるように構成されていてもよいし、平行部のみで構成され、溝23b、24bの幅が後壁20側に向かって一定に構成されていてもよい。
【0075】
・本実施形態において、トップカバー15aに設けられた縦壁33a、34aは、バックカバー15bに設けられた溝23b、24bの平行部の両内面に当接していたが、この態様に限定されない。
【0076】
図14に示すように、例えば、縦壁33a、34aは、溝23b、24bの平行部の両内面のうちいずれか一方のみ(
図14では、溝23bの平行部23b2の右側のみ)に当接するように構成されていてもよい。また、複数の縦壁33a、34aにおいて、溝23b、24bの平行部の右側のみに当接するものと、溝23b、24bの平行部の左側のみに当接するものとを設けることによって、バックカバー15bに対するトップカバー15aの左右方向の位置決めを行うことができる。
【0077】
・本実施形態において、トップカバー15aの縦壁33a、34aは、バックカバー15bの溝23b、24bの内面に当接することなく構成されていてもよい。
図15に示すように、例えば、縦壁33a、34aに設けられた横壁33b、34bが、バックカバー15bの溝23b、24bの縁部に設けられた補強壁23c、24cに当接することによって、バックカバー15bに対するトップカバー15aの左右方向の位置決めを行ってもよい。
【0078】
・本実施形態では、トップカバー15aの天壁33及び底壁34において、後方側に突出した箇所に設けられた縦壁33a、34aが、他の縦壁33a、34aよりも早くバックカバー15bの溝23b、24b及び切欠23aに挿通されるように構成されていたが、この態様に限定されない。
【0079】
トップカバー15aに設けられた全ての縦壁33a、34aが、バックカバー15bの溝23b、24b及び切欠23aに同時に挿通されるように構成されていてもよい。
・本実施形態において、バックカバー15bの溝23b、24b及び切欠23aの周囲に設けられた補強壁23c、24cは、省略されていてもよい。
【0080】
・本実施形態において、トップカバー15aは、前壁30、天壁33、底壁34を有するように構成されていたが、この態様に限定されない。例えば、トップカバー15aは、天壁33のみで構成されていてもよいし、前壁30と天壁33とが一体となって構成されていてもよい。すなわち、トップカバー15aを構成する天壁33に、別途、前壁30や底壁34を接続することによって、水栓本体12を覆うように構成されていてもよい。
【0081】
・本実施形態の水栓10は、水栓本体12の前側にボタン40、41が取り付けられ、水栓本体12の前側からボタン40、41を操作するように構成されていたが、この態様に限定されない。
【0082】
例えば、水栓本体12の上側にボタン40、41が取り付けられ、水栓本体12の上側からボタン40、41を操作するように構成されていてもよい。この態様では、水栓本体12の上側からトップカバー15aを取り付けるとともに、水栓本体12の下側からバックカバー15bを取り付ける態様となる。すなわち、この態様では、壁面W側に向かって水栓10を見た場合における上下方向、左右方向、及び、前後方向がそれぞれ、水栓10の前後方向、左右方向、及び、上下方向に相当する。言い換えれば、本実施形態における上下方向と前後方向とが、入れ替わった態様を含むものとする。
【符号の説明】
【0083】
10…水栓、12…水栓本体、15a…トップカバー、15b…バックカバー。