(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20231219BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H05K3/46 X
H05K3/00 K
H05K3/00 N
(21)【出願番号】P 2019224645
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】593215380
【氏名又は名称】株式会社伸光製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 翔太
【審査官】原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-046860(JP,A)
【文献】特開2015-050309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配線を形成した基板材料の表面に露出した絶縁層に、予め決められたXYZ寸法のキャビティを設ける際に、
前記キャビティに内包される
XY寸法が片側0.005~1mm小さい大きさの仮キャビティを、レーザ加工またはルーター加工により前記キャビティの位置
への形成と、
前記仮キャビティの淵底部が、前記仮キャビティの中央底部より深く加工され、且つ前記淵底部と前記中央底部を同一絶縁層に設ける先加工を行い、
その後ブラスト加工によって前記XYZ寸法に加工して前記キャビティを形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
銅層に所定の配線が形成された基板材料の準備工程と、
前記基板材料の表面に露出した絶縁層を、所定の
XYZ寸法のキャビティに内包されるXY寸法が片側0.005~1mm小さい仮キャビティとして、レーザ加工またはルーター加工により
前記キャビティの位置への形成と、
前記仮キャビティの淵底部が、前記仮キャビティの中央底部より深く加工され、且つ前記淵底部と前記中央底部を同一絶縁層に設ける先加工工程と、
前記基板材料の表面に、前記キャビティを形成する部分が開口したブラスト用レジストマスクを形成する工程と、
前記
ブラスト用レジストマスクの開口部から露出した前記絶縁層をブラスト加工により所定のXYZ寸法の前記キャビティを形成する工程と、
前記ブラスト用レジストマスクを除去する工程を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線板製造方法におけるキャビティ構造形成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャビティと称される凹部が形成され、そのキャビティの中に半導体素子を搭載するプリント配線板が増加している。
このキャビティをプリント配線板に形成する場合、レーザー加工やルーター加工またはブラスト加工による単一工法によって形成するのが一般的である。
例えば特許文献1では、1穴ずつビアを形成するレーザー加工は生産性に問題があるため、サンドブラスト加工によりビアを形成することが記載されている。
【0003】
近年、プリント配線板の微細化、低背化が要求されキャビティに半導体素子を実装する場合、キャビティ部分の面積が広い仕様やキャビティ深さが深い仕様のプリント配線板が要求される。特にキャビティ深さが深い仕様の加工についてはサンドブラスト加工であっても加工時間が長くなる問題を抱えている。また、加工時間が長いため加工精度にバラツキが生じ、仕上り寸法の不具合等の問題も発生している。
【0004】
特許文献2では、レーザー加工後にウェットブラスト処理あるいはサンドブラスト処理を行うことで、異なるテーパ角を有する内壁部で構成されたビアを形成して、ビアと上部導体層との接続信頼性を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-063726号
【文献】特開2009-200356号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ブラスト加工によりキャビティを形成するプリント配線板において、キャビティ内壁に生じる傾きを抑制し、そのキャビティを形成する加工時間を短縮するプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の発明は、所定の配線を形成した基板材料の表面に露出した絶縁層に、予め決められたXYZ寸法のキャビティを設ける際に、前記キャビティに内包されるXY寸法が片側0.005~1mm小さい大きさの仮キャビティを、レーザ加工またはルーター加工により前記キャビティの位置への形成と、前記仮キャビティの淵底部が、前記仮キャビティの中央底部より深く加工され、且つ前記淵底部と前記中央底部を同一絶縁層に設ける先加工を行い、その後ブラスト加工によって前記XYZ寸法に加工して前記キャビティを形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法である。
【0008】
本発明の第2の発明は、銅層に所定の配線が形成された基板材料の準備工程と、前記基板材料の表面に露出した絶縁層を、所定のXYZ寸法のキャビティに内包されるXY寸法が片側0.005~1mm小さい仮キャビティとして、レーザ加工またはルーター加工により前記キャビティの位置への形成と、前記仮キャビティの淵底部が、前記仮キャビティの中央底部より深く加工され、且つ前記淵底部と前記中央底部を同一絶縁層に設ける先加工工程と、前記基板材料の表面に、前記キャビティを形成する部分が開口したブラスト用レジストマスクを形成する工程と、前記ブラスト用レジストマスクの開口部から露出した前記絶縁層をブラスト加工により所定のXYZ寸法の前記キャビティを形成する工程と、前記ブラスト用レジストマスクを除去する工程を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によりブラスト加工による単一工法によりキャビティを形成するよりも加工時間が短縮でき、ブラスト加工により形成されたキャビティ内壁に生じる傾きが小さい加工精度に優れたプリント配線板を容易に得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る製造方法の工程フローを示す図で、(1)は基板の準備工程、(2)はレジストマスク形成工程、(3)は銅層エッチング工程、(4)先加工工程(レーザー加工又はルーター加工による仮キャビティの形成)、(5)はブラスト加工用レジストマスク形成工程、(6)はキャビティ形成工程(ブラスト加工)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先ず、本発明の製造方法の概略を述べ、次に、
図1を用いて本発明の製造方法の具体的な流れを説明する。
本発明では絶縁層と銅層を備えた3層基板等の表面銅層にレジスト層を形成し、キャビティを形成する位置に開口部を備えたレジストマスクを形成する。この開口部は、キャビティとして必要な開口の大きさを「XY寸法」とした場合に、そのXY寸法より大きく、且つ表面銅層から形成する配線に接触しない大きさで形成されている。
なお、「XY寸法」とは、
図1に示す
図1の座標系「xyz系」において、基板Aの表面を「xy面」とした場合のキャビティの開口の大きさで、一般に開口は四角形(正方形、長方形など)の形状に設けられている。
【0012】
次にレジストマスクの開口部から露出した銅層をエッチング加工により除去する。
そして、レジストマスクを除去する。ここでレジストマスクを除去しない場合は、次工程のレーザー加工あるいはルーター加工を行った後に除去してもよい。
【0013】
次にエッチング加工によって露出した絶縁層をレーザー加工あるいはルーター加工により、キャビティとして必要なXYZ寸法(キャビティの深さ方向をzとし、その大きさを「Z寸法」とする)より小さな寸法、即ち所定のキャビティに内包される大きさの「仮キャビティ」に加工する。この時のXY寸法は片側約0.005~1mm小さく加工する。Z寸法は、仮キャビティの底部全体は必要な深さの40~70%程度まで加工し、その淵底部は70~100%程度まで加工する。これで仮キャビティの淵底部が中央部の底部より深く加工された状態になる。
【0014】
次にキャビティとして必要なXY寸法の開口部を有するレジストマスクを形成する。厚いレジスト層からこのレジストマスクを形成する場合や使用する砥粒径によって、必要なXY寸法に対し片側5~40μm程度広い開口部を形成することが好ましい。
【0015】
次にブラスト加工により所定の大きさのキャビティを形成し、レジストマスクを除去する。
【0016】
このような工程を経ることで、ブラスト加工のみの単一工法によりキャビティを形成するよりも加工時間が短縮され、加工によりキャビティ内壁に生じる傾きも小さくしたプリント配線板が得られる。
【0017】
以下に、
図1の製造フロー図を用い、より詳細に説明する。
図1(1)に示す基板Aは、絶縁層10と通常、厚さの異なる絶縁層20を有し、それらの層上に表面銅層31、内層銅層32、裏面銅層33が積層される3層基板である。
【0018】
その基板Aの表面銅層31の表面に、レジスト層を形成した後にキャビティを設けるが、その開口部となるエッチング用レジストマスクを形成する。このとき開口部w
1は、キャビティとして必要なXY寸法より大きく、且つ表面銅層から形成する配線に接触しない大きさで開口部を形成する(
図1(2)参照)。
また、裏面銅層33の表面には、全面を覆うエッチング用レジストマスク101を形成する(
図1(2)参照)。
【0019】
そして、
図1(3)に示すように、エッチング加工を行ってエッチング用レジストマスク100の開口部(
図1(2)参照)から露出した表面銅層31を除去し、その後、両面のエッチング用レジストマスク100、101を除去する。
【0020】
次に、
図1(4)に示すように、ここでは、仮キャビティC
Tの形成を行なう。
レーザー加工により絶縁層10へキャビティの開口部をわずかに縮小した大きさのXY寸法で、開口部全域を所定深さ(Z寸法)まで加工して底部200を形成する。その際に、淵底部は先の全域の深さより深く加工して淵底部201を形成する(
図1(4)参照)。
【0021】
次に
図1(5)に示すように、表面銅層31の表面に、レジスト層を形成する。このレジスト層は厚さが厚いため、キャビティのXY寸法より大きいXY寸法の開口部を備えたブラスト用レジストマスク300を形成した。
【0022】
次に、ブラスト加工により、所定のXYZ寸法となるキャビティC
Aを形成し、ブラスト用レジストマスク300を除去し、キャビティC
Aを備えるプリント配線板Pが得られる(
図1(6)参照)。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1(1)に示すガラスクロスとエポキシ樹脂からなる厚さ240μmの絶縁層10と厚さ70μmの絶縁層20を有し、厚さ30μmの表面銅層31、内層銅層32、裏面銅層33からなる3層基板を試験基板Aとして10枚準備した。
【0025】
次に
図1(2)に示すように、試験基板の表面銅層31の表面に厚さ20μmのレジスト層を形成し、XY寸法が3mm×40mmのキャビティを形成する開口部となるエッチング用レジストマスク100を形成した。このとき開口部w
1は、キャビティとして必要なXY寸法より大きく、表面銅層から形成する配線に接触しない大きさで開口部を形成した。具体的には3mm×40mmのキャビティのXY寸法に対し、3.2mm×40.2mmの開口部w
1を形成した。また、裏面銅層33の表面には、全面を覆うエッチング用レジストマスク101を形成した。
【0026】
そして、
図1(3)に示すように、エッチング加工を行ってエッチング用レジストマスク100の開口部から露出した表面銅層31を除去し、その後、両面のエッチング用レジストマスク100、101を除去した。
【0027】
次に
図1(4)に示すように、レーザー加工により絶縁層10へ2.96mm×39.96mmのXY寸法で、全体を150μmの深さまで加工して底部200を形成し、更に淵部は200μmの深さまで加工して淵底部201を形成した。
【0028】
次に
図1(5)に示すように、表面銅層31の表面に厚さ100μmのレジスト層を形成した。レジスト層の厚さが厚いため片側30μm大きく設定し、XY寸法が3.06mm×40.06mmとなる開口部w
2を備えたブラスト用レジストマスク300を形成した。
【0029】
次に
図1(6)に示すように、ブラスト加工により、所定のXYZ寸法となるキャビティC
Aを形成し、ブラスト用レジストマスク300を除去した。
形成したキャビティ内壁の傾きをキャビティ上面のXY寸法とキャビティ底面のXY寸法の差の1/2の値で評価すると平均19μmの傾きがあった。
そして、このレーザー加工およびブラスト加工による複合工法では、約150分の加工時間であった。
【実施例2】
【0030】
実施例1と同様に3層基板を試験基板として10枚準備し、エッチング加工により表面銅層に3.2mm×40.2mmの開口部を形成して、ルーター加工により絶縁層10へ2.96mm×39.96mmのXY寸法で、全体を150μmの深さまで加工して底部を形成し、更に淵部は200μmの深さに加工して淵底部を形成した。
【0031】
次に、キャビティのXY寸法が3.06mm×40.06mmとなる開口部を備えたブラスト用レジストマスクを形成して、ブラスト加工により、所定のXYZ寸法となるキャビティを形成した後、ブラスト用レジストマスクを除去した。
形成したキャビティ内壁の傾きをキャビティ上面のXY寸法とキャビティ底面のXY寸法の差の1/2の値で評価すると平均18μmの傾きがあった。
この時のルーター加工およびブラスト加工による複合工法では、約210分の加工時間であった。
【0032】
(比較例1)
実施例1と同様に3層基板を試験基板として10枚準備し、エッチング加工により表面銅層に3.2mm×40.2mmの開口部を形成した。
次に、キャビティのXY寸法が3.06mm×40.06mmとなる開口部を備えたブラスト用レジストマスクを形成して、ブラスト加工により、所定のXYZ寸法となるキャビティを形成した後、ブラスト用レジストマスクを除去した。
形成したキャビティ内壁の傾きをキャビティ上面のXY寸法とキャビティ底面のXY寸法の差の1/2の値で評価すると平均39μmの傾きがあった。
この時のブラスト加工による単一工法では、約240分の加工時間であった。
【0033】
このようにブラスト加工だけの単一工法に比べて20~35%程度の加工時間短縮となった。
また、キャビティ内壁に生じる傾きは、ブラスト加工だけの単一工法では、約40μmの傾きであったが、本発明のルーター加工やレーザー加工とブラスト加工の複合工法では約20μm程度と半減した。
【0034】
今回試験基板で確認したが、実製品においても各銅層に必要な配線を形成し、ルーター加工やレーザー加工とブラスト加工による複合工法によってキャビティを形成することで、キャビティ部分の加工時間の短縮と加工精度が向上することになる。
【符号の説明】
【0035】
10 絶縁層
20 絶縁層
31 表面銅層
32 内層銅層
33 裏面銅層
100 エッチング用レジストマスク(表面)
101 エッチング用レジストマスク(裏面)
200 レーザー加工又はルーター加工による仮キャビティ加工底部(仮キャビティの底部/淵底部以外の部位)
201 レーザー加工又はルーター加工による仮キャビティ加工底部(仮キャビティの淵底部)
300 ブラスト用レジストマスク
A 基板(3層基板)
CA キャビティ
CT 仮キャビティ
P プリント配線板
w1 エッチング用レジストマスク100の開口部
w2 ブラスト用レジストマスク300の開口部