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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ノイズ除去装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/02 20060101AFI20231219BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20231219BHJP
   G01P 15/00 20060101ALI20231219BHJP
   B25J 13/08 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
B25J19/02
B23K11/11 570Z
G01P15/00 Z
B25J13/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019234412
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102249
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】林 晃市郎
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 元
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-167817(JP,A)
【文献】特開2019-185415(JP,A)
【文献】特開2018-171665(JP,A)
【文献】特開2013-061834(JP,A)
【文献】特開2019-195871(JP,A)
【文献】特開2018-051635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B23K 11/00 - 11/36
B23K 9/12
B23K 26/08
G01P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットに取り付けられた溶接ガンに設置された加速度センサの加速度データからノイズを除去するノイズ除去装置であって、
前記溶接ガンが動作した動作区間の前記加速度センサの加速度データを擬似加速度データに置き換えて出力するデータ置換部と、
前記溶接ガンが動作していない区間であって、かつ、前記ロボットが前記溶接ガンの動作時と同様の姿勢をしている区間における前記加速度センサの加速度データをフーリエ解析して得られる周波数スペクトルデータを記憶する記憶部と、を備え
前記データ置換部は、前記記憶部に記憶された前記周波数スペクトルデータを用いて、正弦波を合成して前記擬似加速度データとするノイズ除去装置。
【請求項2】
ロボットに取り付けられた溶接ガンに設置された加速度センサの加速度データからノイズを除去するノイズ除去装置であって、
前記溶接ガンが動作した動作区間の前記加速度センサの加速度データを擬似加速度データに置き換えて出力するデータ置換部と、
前記溶接ガンが動作していない区間であって、かつ、前記ロボットが前記溶接ガンの動作時と同様の姿勢をしている区間における前記加速度センサの加速度データを時系列データとして記憶する記憶部と、を備え
前記データ置換部は、前記記憶部に記憶された前記時系列データを前記擬似加速度データとするノイズ除去装置。
【請求項3】
前記溶接ガンの動作は、前記溶接ガンに対する動作指令信号に基づく動作である、請求項1又は請求項2に記載のノイズ除去装置。
【請求項4】
前記データ置換部は、前記正弦波を合成するときに、前記動作区間と隣接する区間の加速度データと滑らかに繋がるように前記正弦波の位相を調整する、請求項に記載のノイズ除去装置。
【請求項5】
前記データ置換部は、前記動作区間と隣接する区間の加速度データと滑らかに繋がるように、前記動作区間と前記隣接する区間との繋ぎ目周辺の加速度データに対して平均化フィルタを適用する、請求項に記載のノイズ除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット動作時の振動を低減することで高速化や軌跡精度を向上することは生産効率や品質の向上に直結する。そこで、ロボットが動作する際に発生する振動や軌跡ずれを低減したいという要望がある。特に、溶接ガンを用いたスポット溶接の際にロボットが振動しないように動作することが望まれている。
この点、振動を除去したい箇所や高精度軌跡を実現したい箇所に加速度センサを取り付け、ロボット動作中の振動を加速度センサが計測し、学習制御を行うことで振動を低減する方法が提案されている。例えば、特許文献1、2参照。
加速度センサによってロボットの振動を計測する際、センサデータにはノイズが含まれている。このノイズによりロボットの振動を正確に計測できなくなり、ロボットの振動除去のための正しい補正ができなくなることがある。そこで、センサデータのノイズ除去には、一般的にローパスフィルタやメディアンフィルタ等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-167817号公報
【文献】特開2018-118353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、溶接ガンが取り付けられたロボットの振動除去のために溶接ガンに加速度センサを設置する場合がある。加速度センサが計測中に溶接ガンを動作させる場合、加速度センサは、溶接ガンの動作の衝撃により瞬間的に大きな値の信号を検出してしまう。この信号はロボットの動作軌跡を推定する上で誤差の要因となるノイズである。
また、瞬間的に発生するノイズを除去するためにローパスフィルタを適用すると、ノイズのない部分の信号にも影響が出てしまう。また、ローパスフィルタは、ノイズを完全に除去できるわけではない。
【0005】
そこで、溶接ガンを動作させて加速度センサの計測を行う場合でも、溶接ガンの影響により発生するノイズを除去することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のノイズ除去装置の一態様は、ロボットに取り付けられた溶接ガンに設置された加速度センサの加速度データからノイズを除去するノイズ除去装置であって、前記溶接ガンが動作した動作区間の前記加速度センサの加速度データを擬似加速度データに置き換えて出力するデータ置換部を備える。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、溶接ガンを動作させて加速度センサの計測を行う場合でも、溶接ガンの影響により発生するノイズを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るロボットシステムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図2】取得された加速度データの一例を示す図である。
図3図2の加速度データから動作区間の加速度データが削除された一例を示す図である。
図4】抽出された加速度データに対するフーリエ解析の結果の一例を示す図である。
図5】動作区間が疑似加速度データに置き換えられた加速度データの一例を示す図である。
図6】ノイズ除去装置の置換処理について説明するフローチャートである。
図7】第2実施形態に係るロボットシステムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図8】動作区間の加速度データが削除された加速度データの一例を示す図である。
図9】動作区間が疑似加速度データに置き換えられた加速度データの一例を示す図である。
図10図9の加速度データに対して平均化フィルタが適用された加速度データの一例を示す図である。
図11】動作区間と隣接する区間との継ぎ目の加速度データの値が近いタイミングの加速度データを埋め込んだ一例を示す図である。
図12】ノイズ除去装置の置換処理について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、第1実施形態について図面を用いて説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るロボットシステムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。図1に示すように、ロボットシステムは、ロボット10、ロボット制御装置20、及びノイズ除去装置30を有する。
【0010】
ロボット10、ロボット制御装置20、及びノイズ除去装置30は、図示しない接続インタフェースを介して互いに直接接続されてもよい。なお、ロボット10、ロボット制御装置20、及びノイズ除去装置30は、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して相互に接続されていてもよい。この場合、ロボット10、ロボット制御装置20、及びノイズ除去装置30は、かかる接続によって相互に通信を行うための図示しない通信部を備えてもよい。
なお、ノイズ除去装置30は、後述するように、ロボット制御装置20に含まれてもよい。
【0011】
<ロボット10>
ロボット10は、例えば、産業用ロボット等である。ロボット10は、例えば、図1に示すように、6軸の垂直多関節ロボットであり、6つの関節軸11(1)-11(6)と、関節軸11(1)-11(6)の各々により連結されるアーム部12を有する。ロボット10は、ロボット制御装置20からの駆動指令に基づいて、関節軸11(1)-11(6)の各々に配置されるサーボモータ(図示しない)の各々を駆動することにより、アーム部12等の可動部材を駆動する。また、ロボット10の可動部材の先端部、例えば、関節軸11(6)の先端部には、例えば、溶接ガン、握持ハンド、レーザ照射装置等のエンドエフェクタが取り付けられる。そして、図1のロボット10には、エンドエフェクタとして、溶接ガン13が取り付けられる。また、溶接ガン13には、加速度センサ100が設置される。
なお、ロボット10は、6軸の垂直多関節ロボットとしたが、6軸以外の垂直多関節ロボットでもよく、水平多関節ロボットやパラレルリンクロボット等でもよい。
【0012】
加速度センサ100は、ロボット10の動作に伴う可動部材の先端部における加速度を所定のサンプリング時間で周期的に検出する。加速度センサ100は、図示しないクロック部を有し、加速度を検出する度に、当該クロック部から出力される時刻情報を、検出した時刻として取得する。また、加速度センサ100は、例えば、検出された加速度及び時刻情報を含むセンサ信号を、ロボット制御装置20及びノイズ除去装置30に送信する。
なお、所定のサンプリング時間は、ロボット10の動作内容やロボット10が配置される工場の環境等に応じて適宜設定されてもよい。
また、ロボット10及び溶接ガン13の動作タイミングと、加速度センサ100のデータ取得タイミングとは、後述するロボット制御装置20内で同期されていてもよい。
【0013】
<ロボット制御装置20>
ロボット制御装置20は、プログラムに基づいて、ロボット10に対して動作指令信号を出力し、ロボット10の動作を制御する制御装置(「ロボットコントローラ」とも呼ばれる)である。
具体的には、ロボット制御装置20は、後述するノイズ除去装置30によりノイズが除去された加速度センサ100からの加速度データ(センサデータ)に基づいて、ロボット10の先端部の溶接ガン13における振動を低減するように、ロボット10に対して動作指令信号を出力し、ロボット10の動作を制御する。なお、加速度データに基づいて、ロボット10の先端部の溶接ガン13における振動を低減するように、ロボット10に対して動作指令信号を出力する方法は、特許文献1、2等の公知の手法を用いることができ、詳細な説明は省略する。
【0014】
なお、ロボット制御装置20は、溶接ガン13を用いたロボット10による溶接動作の動作シーケンスを予め有する。例えば、スポット溶接の場合、ロボット制御装置20は、ロボット10に対して、溶接ガン13を溶接する場所(ナゲット作成位置)まで移動させた後、溶接ガン13のチップが溶接対象のワークまで近づく「アプローチ」、溶接ガン13のチップが前記ワークに当接する「ガン閉じ」、溶接する「加圧」、及び溶接ガン13が前記ワークを放す「ガン開き」を含む動作シーケンス「スポット命令」を出力する。換言すれば、ロボット制御装置20が動作シーケンス「スポット命令」をロボット10に出力することで、後述するノイズ除去装置30は、溶接ガン13が動作するタイミングを検知することができる。
ここで、動作シーケンス「スポット命令」の「ガン閉じ」では、溶接ガン13のチップが前記ワークに当接する瞬間であることから、「溶接ガン13を打つ」ともいう。また、動作シーケンス「スポット命令」の「加圧」には、電極を加圧してから通電開始するまでの時間「スクイズ」、溶接電流を流す時間「ウェルド」、及びナゲット凝固のために加圧を保持する時間「ホールド」が含まれる。また、動作シーケンス「スポット命令」の「ガン開き」には、加圧解放から次の溶接に移行するまでの時間「オフ」が含まれる。
【0015】
<ノイズ除去装置30>
ノイズ除去装置30は、コンピュータ装置等であり、ロボット10に取り付けられた溶接ガン13に設置された加速度センサ100により検出された加速度及び時刻情報を含むセンサ信号を受信する。ノイズ除去装置30は、受信したセンサ信号に含まれる加速度センサ100の加速度データからノイズを除去する。そして、ノイズ除去装置30は、ノイズ除去された加速度データをロボット制御装置20に出力する。
図1に示すように、本実施形態に係るノイズ除去装置30は、制御部300、及び記憶部310を含んで構成される。さらに、制御部300は、データ置換部301を含んで構成される。
【0016】
なお、ノイズ除去装置30は、図1の機能ブロックの動作を実現するために、CPU(Central Processing Unit)等の図示しない演算処理装置を備える。また、ノイズ除去装置30は、各種の制御用プログラムを格納したROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の図示しない補助記憶装置や、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAM(Random Access Memory)といった図示しない主記憶装置を備える。
【0017】
そして、ノイズ除去装置30において、演算処理装置が補助記憶装置からOSやアプリケーションソフトウェアを読み込み、読み込んだOSやアプリケーションソフトウェアを主記憶装置に展開させながら、これらのOSやアプリケーションソフトウェアに基づいた演算処理を行なう。この演算結果に基づいて、ノイズ除去装置30が各ハードウェアを制御する。これにより、図1の機能ブロックによる処理は実現される。つまり、ノイズ除去装置30は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。
【0018】
データ置換部301は、ロボット10から受信したセンサ信号から、加速度センサ100により検出された加速度及び時刻情報を取得する。データ置換部301は、取得した加速度データのうち、溶接ガン13が動作した動作区間の加速度センサ100の加速度データを後述する擬似加速度データに置き換えて、ロボット制御装置20に出力する。
図2は、取得された加速度データの一例を示す図である。なお、図2の横軸は時刻を示し、図2の縦軸は加速度を示す。また、図2は、例えば、「スポット命令」の動作シーケンスにより溶接ガン13が動作した期間、すなわち溶接ガン13が打つタイミングである動作区間を、破線の矩形で示す。
なお、破線で示す動作区間では、上述した「アプローチ」、「ガン開き」、「加圧」、及び「ガン開き」の一連のスポット溶接の動作が行われる。例えば、ノイズ除去装置30(制御部300)は、ロボット制御装置20からロボット10に出力される動作指令信号に基づいて、前記動作区間を特定するようにしてもよい。
【0019】
データ置換部301は、例えば、溶接ガン13の動作による衝撃の影響を受けた、破線で示す動作区間の加速度データを、図3に示すように、一旦削除する。そして、データ置換部301は、溶接ガン13が動作していない区間であって、かつ、ロボット10が溶接ガン13の動作時と同様の姿勢(動作)をしている区間の加速度データを抽出する。
具体的には、スポット溶接中においてロボット10は静止することから、データ置換部301は、溶接ガン13のチップが当たった後のガン軸が停止している状態、かつ、ロボット10が同姿勢で静止している状態の区間の加速度データ、すなわち動作区間前後の加速度データを抽出する。例えば、図3に示す加速度データの場合、動作区間直後の区間であれば溶接ガン13が動作しておらず、かつ、ロボット10が溶接ガン13の動作時と同様の姿勢(動作)であることから、データ置換部301は、動作区間直後の区間の加速度データを抽出する。データ置換部301は、抽出した加速度データに対してFFT(Fast Fourier Transform)等のフーリエ解析を行う。そして、データ置換部301は、フーリエ解析して得られた周波数スペクトルデータを後述する記憶部310に記憶する。
図4は、抽出された加速度データに対するフーリエ解析の結果の一例を示す図である。
データ置換部301は、記憶部310に記憶された図4のフーリエ解析の結果に基づいて、正弦波を合成した合成波形を、疑似加速度データとして生成する。データ置換部301は、生成した疑似加速度データを、動作区間の加速度データとして置き換える。
【0020】
図5は、動作区間が疑似加速度データに置き換えられた加速度データの一例を示す図である。
そして、データ置換部301は、動作区間の加速度データとして疑似加速度データに置き換えられた加速度データを、出力データとしてロボット制御装置20に出力する。そうすることで、ノイズ除去装置30は、溶接ガン13を動作させて加速度センサ100の計測を行う場合でも、溶接ガン13の影響により発生するノイズを除去することができる。
【0021】
なお、データ置換部301は、疑似加速度データの生成にあたり、動作区間と動作区間に隣接する区間との加速度データが滑らかに繋がるように、動作区間における削除前の加速度データの両端の値と、疑似加速度データの両端の値との差が所定の閾値以下となるように、合成する正弦波の位相を調整するようにしてもよい。ここで、所定の閾値は、要求されるノイズ除去の精度に応じて適宜決定されてもよい。
【0022】
また、データ置換部301は、次の溶接ガン13の動作時におけるロボット10の動作(姿勢)が、図2の動作区間におけるロボット10の動作(姿勢)と同様の場合、記憶部310に記憶された周波数スペクトルデータを使用してもよい。そうすることで、データ置換部301は、溶接ガン13が動作する度に、加速度データを抽出しフーリエ解析を行う必要がなくなり、処理時間を短縮することができる。ただし、この場合、データ置換部301は、周波数スペクトルデータとともに、動作区間におけるロボット10の動作(姿勢)のデータも記憶するようにすることが好ましい。
【0023】
記憶部310は、RAM等であり、データ置換部301によりフーリエ解析して得られた周波数スペクトルデータ等を記憶する。
【0024】
<ノイズ除去装置30の置換処理>
次に、本実施形態に係るノイズ除去装置30の置換処理に係る動作について説明する。
図6は、ノイズ除去装置30の置換処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、ノイズ除去装置30がロボット制御装置20からロボット10に出力される動作指令信号に基づいて、溶接ガン13の動作を検知する度に繰り返し実行される。
【0025】
ステップS11において、データ置換部301は、ロボット10から受信したセンサ信号から、加速度センサ100により検出された加速度データを取得する。
【0026】
ステップS12において、データ置換部301は、ステップS11で取得された加速度データのうち、溶接ガン13が動作した動作区間の加速度データを削除する。
【0027】
ステップS13において、データ置換部301は、溶接ガン13が動作していない区間であって、かつ、ロボット10が溶接ガン13の動作時と同様の姿勢をしている区間の加速度データを抽出する。
【0028】
ステップS14において、データ置換部301は、ステップS13で抽出された加速度データに対してフーリエ解析を行う。
【0029】
ステップS15において、データ置換部301は、ステップS14でのフーリエ解析の結果に基づいて、正弦波を合成した合成波形を、疑似加速度データとして生成する。
【0030】
ステップS16において、データ置換部301は、ステップS15で生成された疑似加速度データを、動作区間の加速度データとして置き換える。そして、データ置換部301は、動作区間において疑似加速度データに置き換えた加速度データをロボット制御装置20に出力する。
【0031】
以上により、第1実施形態のノイズ除去装置30は、ロボット10に取り付けられた溶接ガン13に設置された加速度センサ100から取得された加速度データのうち、溶接ガン13が動作した動作区間の加速度データを削除する。ノイズ除去装置30は、溶接ガン13が動作していない区間であって、かつ、ロボット10が溶接ガン13の動作時と同様の姿勢をしている区間の加速度データを抽出し、抽出された加速度データに対してフーリエ解析を行う。ノイズ除去装置30は、フーリエ解析の結果に基づいて、正弦波を合成した合成波形を、疑似加速度データとして生成し、生成した疑似加速度データを動作区間の加速度データとして置き換える。
これにより、ノイズ除去装置30は、溶接ガン13を動作させて加速度センサ100の計測を行う場合でも、溶接ガン13の影響により発生するノイズを除去することができる。
以上、第1実施形態について説明した。
【0032】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るノイズ除去装置30Aは、溶接ガンが動作していない区間であって、かつ、ロボットが溶接ガンの動作時と同様の姿勢をしている区間における加速度センサの加速度データの時系列データを、動作区間の擬似加速度データとする点が、第1実施形態と異なる。
以下に、第2実施形態について説明する。
【0033】
図7は、第2実施形態に係るロボットシステムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。なお、図1のロボットシステムの要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
第2実施形態に係るノイズ除去装置30Aは、第1実施形態に係るノイズ除去装置30と同様に、制御部300a、及び記憶部310aを含んで構成される。また、制御部300aは、データ置換部301aを含んで構成される。
【0034】
データ置換部301aは、図8に示すように、第1実施形態に係るデータ置換部301と同様に、溶接ガン13の動作による衝撃の影響を受けた、破線で示す動作区間の加速度データを一旦削除する。そして、データ置換部301aは、第1実施形態に係るデータ置換部301と同様に、溶接ガン13が動作していない区間であって、かつ、ロボット10が溶接ガン13の動作時と同様の姿勢(動作)をしている区間、すなわち動作区間前後の区間の加速度データの時系列データを抽出する。データ置換部301aは、抽出した加速度データの時系列データを後述する記憶部310aに記憶する。そして、データ置換部301aは、例えば、図9に示すように、記憶部310aに記憶された加速度データの時系列データを、疑似加速度データとして動作区間に埋め込んで置き換える。
【0035】
ここで、図9に示すように、疑似加速度データに置き換える際に、任意のタイミングで波形に置き換えると、動作区間の境界付近で加速度データの波形に連続性がなくなり、高周波のデータになってしまう。この加速度データの波形の不連続性を避けるため、データ置換部301aは、加速度データの継ぎ目周辺、すなわち動作区間の境界周辺で平均化フィルタ(平滑化フィルタ)等を適用してもよい。そうすることで、図10に示すように、動作区間と隣接する区間との加速度データが滑らかに繋がるようにすることができる。
また、平均化フィルタを適用する区間を動作区間の境界周辺にすることで、ノイズのない部分の加速度データに対する平均化フィルタの影響を最小限に抑えることができる。
なお、図10では、動作区間の左端の境界周辺の加速度データに対して平均化フィルタを適用したが、動作区間の右端の境界周辺の加速度データに対しても平均化フィルタを適用してもよい。
【0036】
そして、データ置換部301aは、動作区間において疑似加速度データに置き換えた加速度データをロボット制御装置20に出力する。
なお、データ置換部301aは、次の溶接ガン13の動作時におけるロボット10の姿勢(動作)が、図8の動作区間におけるロボット10の姿勢(動作)と同様の場合、記憶部310aに記憶された加速度データの時系列データを使用してもよい。そうすることで、データ置換部301aは、溶接ガン13が動作する度に、加速度データの時系列データを抽出する必要がなくなり、処理時間を短縮することができる。ただし、この場合、データ置換部301aは、加速度データの時系列データとともに、動作区間におけるロボット10の姿勢(動作)のデータも記憶するようにすることが好ましい。
【0037】
なお、データ置換部301aは、抽出した加速度データの時系列データを疑似加速度データとして動作区間に埋め込んで、加速度データの継ぎ目付近で平均化フィルタを適用したが、これに限定されない。例えば、データ置換部301aは、図11に示すように、動作区間と動作区間に隣接する区間との継ぎ目の加速度データの値が近いタイミングでデータを埋め込んでもよい。
【0038】
記憶部310aは、溶接ガン13が動作していない区間であって、かつ、ロボットが溶接ガン13の動作時と同様の姿勢をしている区間における、データ置換部301aにより抽出された加速度データの時系列データを記憶する。
【0039】
<ノイズ除去装置30Aの置換処理>
次に、第2実施形態に係るノイズ除去装置30Aの置換処理に係る動作について説明する。
図12は、ノイズ除去装置30Aの置換処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、ノイズ除去装置30Aがロボット制御装置20からロボット10に出力される動作指令に基づいて、溶接ガン13の動作を検知する度に繰り返し実行される。
なお、図12に示す置換処理において、ステップS21及びステップS22の処理は、図7の第1実施形態のステップS11及びステップS12の処理と同様であり、説明は省略する。
【0040】
ステップS23において、データ置換部301aは、溶接ガン13が動作していない区間であって、かつ、ロボット10が溶接ガン13の動作時と同様の姿勢をしている区間の加速度データを、疑似加速度データとして抽出する。
【0041】
ステップS24において、データ置換部301aは、ステップS23で抽出された疑似加速度データを動作区間の加速度データとして置き換える。
【0042】
ステップS25において、データ置換部301aは、ステップS24で置き換えられた加速度データの継ぎ目周辺で平均化フィルタを適用し平滑化する。そして、データ置換部301aは、動作区間において疑似加速度データに置き換えた加速度データをロボット制御装置20に出力する。
【0043】
以上により、第2実施形態のノイズ除去装置30Aは、ロボット10に取り付けられた溶接ガン13に設置された加速度センサ100から取得された加速度データのうち、溶接ガン13が動作した動作区間の加速度データを削除する。ノイズ除去装置30Aは、溶接ガン13が動作していない区間であって、かつ、ロボット10が溶接ガン13の動作時と同様の姿勢をしている区間の加速度データの時系列データを、疑似加速度データとして抽出する。ノイズ除去装置30Aは、抽出した疑似加速度データを動作区間の加速度データとして置き換える。
これにより、ノイズ除去装置30Aは、溶接ガン13を動作させて加速度センサ100の計測を行う場合でも、溶接ガン13の影響により発生するノイズを除去することができる。
以上、第2実施形態について説明した。
【0044】
以上、第1実施形態、及び第2実施形態について説明したが、ノイズ除去装置30、30Aは、上述の実施形態に限定されるものではなく、目的を達成できる範囲での変形、改良等を含む。
【0045】
<変形例>
上述の第1実施形態、及び第2実施形態では、ノイズ除去装置30、30Aは、ロボット制御装置20と異なる装置として例示したが、ノイズ除去装置30、30Aの一部又は全部の機能を、ロボット制御装置20が備えるようにしてもよい。
【0046】
なお、第1実施形態、及び第2実施形態に係るノイズ除去装置30、30Aに含まれる各機能は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
また、ノイズ除去装置30、30Aに含まれる各構成部は、電子回路等を含むハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。
【0047】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(Non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(Tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAMを含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(Transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は、無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0048】
なお、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0049】
以上を換言すると、本開示のノイズ除去装置は、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
【0050】
(1)本開示のノイズ除去装置30は、ロボット10に取り付けられた溶接ガン13に設置された加速度センサ100の加速度データからノイズを除去するノイズ除去装置であって、溶接ガン13が動作した動作区間の加速度センサ100の加速度データを擬似加速度データに置き換えて出力するデータ置換部301を備える。
このノイズ除去装置30によれば、溶接ガン13を動作させて加速度センサ100の計測を行う場合でも、溶接ガン13の影響により発生するノイズを除去することができる。
【0051】
(2) (1)に記載のノイズ除去装置30において、溶接ガン13が動作していない区間であって、かつ、ロボット10が溶接ガン13の動作時と同様の姿勢をしている区間における加速度センサ100の加速度データをフーリエ解析して得られる周波数スペクトルデータを記憶する記憶部310をさらに備え、データ置換部301は、記憶部310に記憶された周波数スペクトルデータを用いて、正弦波を合成して擬似加速度データとしてもよい。
そうすることで、動作区間におけるノイズを精度良く除去することができる。
【0052】
(3) (1)に記載のノイズ除去装置30Aにおいて、溶接ガン13が動作していない区間であって、かつ、ロボット10が前記溶接ガンの動作時と同様の姿勢をしている区間における加速度センサ100の加速度データを時系列データとして記憶する記憶部310aをさらに備え、データ置換部301aは、記憶部310aに記憶された時系列データを擬似加速度データとしてもよい。
そうすることで、動作区間におけるノイズを精度良く除去することができる。
【0053】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載のノイズ除去装置30、30Aにおいて、溶接ガン13の動作は、溶接ガン13に対する動作指令信号に基づく動作であってもよい。
そうすることで、溶接ガン13が動作する動作区間を精度良く検知することができる。
【0054】
(5) (2)に記載のノイズ除去装置30において、データ置換部301は、正弦波を合成するときに、動作区間と隣接する区間の加速度データと滑らかに繋がるように正弦波の位相を調整してもよい。
そうすることで、動作区間と隣接する区間との加速度データを滑らかに繋げることができる。
【0055】
(6) (3)に記載のノイズ除去装置30Aにおいて、データ置換部301aは、動作区間と隣接する区間の加速度データと滑らかに繋がるように、動作区間と隣接する区間との繋ぎ目周辺の加速度データに対して平均化フィルタを適用してもよい。
そうすることで、動作区間と隣接する区間との加速度データを滑らかに繋げることができる。
【符号の説明】
【0056】
10 ロボット
20 ロボット制御装置
30、30A ノイズ除去装置
100 加速度センサ
300、300a 制御部
301、301a データ置換部
310、310a 記憶部
図1
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