(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/03 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B23K26/03
(21)【出願番号】P 2019236651
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野田 純也
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-036841(JP,A)
【文献】特開2018-140426(JP,A)
【文献】特開2005-334904(JP,A)
【文献】特開2003-194526(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0059347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を生成する励起光生成部と、
前記励起光生成部により生成された励起光に基づいてレーザ光を生成するとともに、該レーザ光を出射するレーザ光出力部と、
前記レーザ光出力部から出射されたレーザ光の焦点位置を調整する焦点調整部と、
前記焦点調整部により焦点位置が調整されたレーザ光を被加工物へ照射するとともに、該被加工物の表面上に設定された加工領域内で2次元走査するレーザ光走査部と、を備えるレーザ加工装置であって、
前記レーザ光走査部を介在させることなく前記被加工物を撮像することにより、前記加工領域の少なくとも一部を含んだ撮像画像を生成する撮像部と、
前記被加工物の位置を特定するための補正用領域、及び、前記被加工物の表面までの距離を測定するための測距位置を、それぞれ、
前記撮像部により生成された撮像画像上に設定する設定部と、
前記設定部により設定された、前記補正用領域内での画像情報を記憶する記憶部と、
前記補正用領域の設定に用いた前記被加工物とは異なる新たな被加工物について前記撮像部により新たに生成された撮像画像上で、前記記憶部に記憶された画像情報を用いて該新たな被加工物の位置ズレを検出し、
該位置ズレの検出結果に基づいて、前記設定部により設定された測距位置に対応する該新たな被加工物上での測距位置を補正する位置補正部と、
前記レーザ加工装置から前記新たな被加工物の表面までの距離を測定するための測距光を出射する測距光出射部と、
前記測距光出射部により出射される測距光が、前記位置補正部により補正された前記測距位置に照射されるように、前記レーザ光走査部を制御する走査制御部と、
前記新たな被加工物の表面上で反射されて前記レーザ光走査部を介して戻った測距光を受光する測距光受光部と、
前記測距光受光部における測距光の受光位置に基づいて、前記レーザ加工装置から前記位置補正部により補正された前記測距位置までの距離を測定する距離測定部と、を備え、
前記焦点調整部は、前記新たな被加工物へのレーザ光の照射に先だって、前記距離測定部による測定結果に基づいて焦点位置を調整する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたレーザ加工装置において、
前記走査制御部は、前記位置補正部によって検出された位置ズレを考慮した状態で2次元走査を行うように、前記レーザ光走査部を制御する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたレーザ加工装置において、
前記加工領域内に形成される加工パターンの位置を示し、かつ前記測距位置と紐付けられる加工ブロックを、前記撮像画像と重ね合せるように設定する加工ブロック設定部を備え、
前記位置補正部は、前記位置ズレの検出結果に基づいて前記加工ブロックの位置を補正する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたレーザ加工装置において、
前記設定部は、前記加工ブロック内に前記測距位置を設定する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載されたレーザ加工装置において、
前記撮像部は、
前記レーザ光出力部から前記レーザ光走査部までのレーザ光路から分岐した撮像光軸を有し、かつ前記レーザ光走査部を介して前記撮像画像を生成する第1撮像部と、
前記レーザ光路とは独立した撮像光軸を有し、かつ前記レーザ光走査部の非介在下で前記撮像画像を生成する第2撮像部と、の少なくとも一方からなり、
前記位置補正部は、前記第1及び第2撮像部の少なくとも一方によって新たに生成された撮像画像に基づいて、前記測距位置を補正する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、レーザマーキング装置等、被加工物にレーザ光を照射することによって加工を行うレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光による加工位置を補正可能なレーザ加工装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、被加工物を穴明けするためのレーザ加工装置において、その穴の中心位置のずれ量を算出するとともに、そうして算出されたずれ量に基づいてガルバノミラーの角度を補正することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2に開示されているレーザ加工装置は、所定の高さを有する被加工物(ワーク)にレーザ加工を施すために、Z軸方向に沿ってレーザ光の焦点位置を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-006674号公報
【文献】特開2008-227377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記特許文献1における補正方法は、あくまで、2次元平面上での位置補正に過ぎない。この補正方法では、前記特許文献2に開示されているように、高さを有する被加工物を加工対象とした場合に、加工精度が低下する可能性がある。
【0007】
例えば、レーザ光の焦点位置は、ガルバノミラーによって2次元走査した場合に、被加工物上に設定される加工領域の中央付近と、その加工領域の端付近と、で相違する。具体的に、加工領域の中央部から端に向かうにつれて、焦点位置が加工領域から離間することになる。そのため、2次元平面上での位置補正では、その補正後に焦点位置がずれる可能性がある。このことは、加工精度を高く保つには不都合である。
【0008】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被加工物が位置ズレした場合にあっても、被加工物の加工精度を高く保つことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的に、本開示の第1の側面は、励起光を生成する励起光生成部と、前記励起光生成部により生成された励起光に基づいてレーザ光を生成するとともに、該レーザ光を出射するレーザ光出力部と、前記レーザ光出力部から出射されたレーザ光の焦点位置を調整する焦点調整部と、前記焦点調整部により焦点位置が調整されたレーザ光を被加工物へ照射するとともに、該被加工物の表面上に設定された加工領域内で2次元走査するレーザ光走査部と、を備えるレーザ加工装置に係る。
【0010】
本開示の第1の側面によれば、前記レーザ加工装置は、前記被加工物を撮像することにより、前記加工領域の少なくとも一部を含んだ撮像画像を生成する撮像部と、前記被加工物の位置を特定するための補正用領域、及び、前記被加工物の表面までの距離を測定するための測距位置を、それぞれ、前記撮像画像上に設定する設定部と、前記設定部により設定された、前記補正用領域内での画像情報を記憶する記憶部と、前記補正用領域の設定に用いた前記被加工物とは異なる新たな被加工物について、前記撮像部により新たに生成された撮像画像上で、前記記憶部に記憶された画像情報を用いて該新たな被加工物の位置ズレを検出し、前記設定部により設定された測距位置に対応する該新たな被加工物上での測距位置を補正する位置補正部と、を備える。
【0011】
そして、前記レーザ加工装置は、前記レーザ加工装置から前記新たな被加工物の表面までの距離を測定するための測距光を出射する測距光出射部と、前記測距光出射部により出射される測距光が、前記位置補正部により補正された前記測距位置に照射されるように、前記レーザ光走査部を制御する走査制御部と、前記新たな被加工物の表面上で反射されて前記レーザ光走査部を介して戻った測距光を受光する測距光受光部と、前記測距光受光部における測距光の受光位置に基づいて、前記レーザ加工装置から前記位置補正部により補正された前記測距位置までの距離を測定する距離測定部と、を備え、前記焦点調整部は、前記新たな被加工物へのレーザ光の照射に先だって、前記距離測定部による測定結果に基づいて焦点位置を調整する。
【0012】
ここで、「画像情報」は、撮像画像そのものでもよいし、その撮像画像から抽出したエッジ情報でもよい。
【0013】
前記の構成によれば、レーザ加工装置は、位置補正部を介して被加工物の位置ズレを検出するとともに、その検出結果に基づいて測距位置を補正することができる。そして、レーザ加工装置は、被加工物へのレーザ光の照射に先だって、位置補正部により測距位置が補正された状態で、距離測定部による測定結果に基づいて焦点位置を補正する。
【0014】
このように、被加工物の位置ズレが補正された状態で焦点位置を調整するように構成することで、被加工物が位置ズレした場合にあっても、その加工精度を高く保つことができる。
【0015】
また、本開示の第2の側面によれば、前記走査制御部は、前記位置補正部によって検出された位置ズレを考慮した状態で2次元走査を行うように、前記レーザ光走査部を制御すする、としてもよい。
【0016】
この構成によれば、走査制御部は、位置ズレを考慮した状態で2次元走査を実行する。これにより、被加工物の加工精度を高く保つ上で有利になる。
【0017】
また、本開示の第3の側面によれば、前記レーザ加工装置は、前記加工領域内に形成される加工パターンの位置を示し、かつ前記測距位置と紐付けられる加工ブロックを、前記撮像画像と重ね合せるように設定する加工ブロック設定部を備え、前記位置補正部は、前記位置ズレの検出結果に基づいて前記加工ブロックの位置を補正する、としてもよい。
【0018】
この構成によれば、加工ブロックの位置を補正することで、その加工ブロックに紐付いた測距位置を補正することができる。これにより、被加工物の加工精度を高く保つ上で有利になる。
【0019】
また、本開示の第4の側面によれば、前記設定部は、前記加工ブロック内に前記測距位置を設定する、としてもよい。
【0020】
この構成によれば、測距位置をより適切に設定し、ひいては、被加工物の加工精度を高く保つ上で有利になる。
【0021】
また、本開示の第5の側面によれば、前記撮像部は、前記レーザ光出力部から前記レーザ光走査部までのレーザ光路から分岐した撮像光軸を有し、かつ前記レーザ光走査部を介して前記撮像画像を生成する第1撮像部と、前記レーザ光路とは独立した撮像光軸を有し、かつ前記レーザ光走査部の非介在下で前記撮像画像を生成する第2撮像部と、の少なくとも一方からなり、前記位置補正部は、前記第1及び第2撮像部の少なくとも一方によって新たに生成された撮像画像に基づいて、前記測距位置を補正する、としてもよい。
【0022】
この構成によれば、測距位置をより正確に補正し、ひいては、被加工物の加工精度を高く保つ上で有利になる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、前記レーザ加工装置によれば、被加工物が位置ずれした場合にあっても、加工精度を高く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、レーザ加工システムの全体構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、レーザ加工装置の概略構成を例示するブロック図である。
【
図3A】
図3Aは、マーカヘッドの概略構成を例示するブロック図である。
【
図3B】
図3Bは、マーカヘッドの概略構成を例示するブロック図である。
【
図4】
図4は、マーカヘッドの外観を例示する斜視図である。
【
図5】
図5は、レーザ光走査部の構成を例示する図である。
【
図6】
図6は、レーザ光案内部、レーザ光走査部及び測距ユニットの構成を例示する図である。
【
図7】
図7は、レーザ光案内部、レーザ光走査部及び測距ユニットを結ぶ光路を例示する断面図である。
【
図8】
図8は、レーザ光案内部、レーザ光走査部及び測距ユニットを結ぶ光路を例示する斜視図である。
【
図9】
図9は、三角測距方式について説明する図である。
【
図10】
図10は、レーザ加工システムの使用方法を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、印字設定、サーチ設定及び測距設定の作成手順を例示するフローチャートである。
【
図12】
図12は、加工領域と設定面の関係を例示する図である。
【
図13】
図13は、表示部における表示内容を例示する図である。
【
図16】
図16は、レーザ加工装置の運用手順を例示するフローチャートである。
【
図19】
図19は、ワークの位置ズレと焦点位置との関係について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0026】
すなわち、本明細書では、レーザ加工装置の一例としてのレーザマーカについて説明するが、ここに開示する技術は、レーザ加工装置及びレーザマーカという名称に拘わらず、レーザ応用機器一般に適用することができる。
【0027】
また、本明細書においては、加工の代表例として印字加工について説明するが、印字加工に限定されず、画像のマーキング等、レーザ光を使ったあらゆる加工処理において利用することができる。
【0028】
<全体構成>
図1は、レーザ加工システムSの全体構成を例示する図であり、
図2は、レーザ加工システムSにおけるレーザ加工装置Lの概略構成を例示する図である。
図1に例示するレーザ加工システムSは、レーザ加工装置Lと、これに接続される操作用端末800及び外部機器900と、を備えている。
【0029】
そして、
図1及び
図2に例示するレーザ加工装置Lは、マーカヘッド1から出射されたレーザ光を、被加工物としてのワークWへ照射するとともに、そのワークWの表面上で3次元走査することによって加工を行うものである。なお、ここでいう「3次元走査」とは、レーザ光の照射位置をワークWの表面上で走査する2次元的な動作(いわゆる「2次元走査」)と、レーザ光の焦点位置を調整する1次元的な動作と、の組み合わせを総称した概念を指す。
【0030】
特に、本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、ワークWを加工するためのレーザ光として、1064nm付近の波長を有するレーザ光を出射することができる。この波長は、近赤外線(Near-InfraRed:NIR)の波長域に相当する。そのため、以下の記載では、ワークWを加工するためのレーザ光を「近赤外レーザ光」と呼称して、他のレーザ光と区別する場合がある。もちろん、他の波長を有するレーザ光を、ワークWの加工に用いてもよい。
【0031】
また、本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、マーカヘッド1に内蔵された測距ユニット5を介してワークWまでの距離(ワークWの高さ)を測定するとともに、その測定結果を利用して近赤外レーザ光の焦点位置を調整することができる。
【0032】
図1及び
図2に示すように、レーザ加工装置Lは、レーザ光を出射するためのマーカヘッド1と、マーカヘッド1を制御するためのマーカコントローラ100と、を備えている。
【0033】
マーカヘッド1及びマーカコントローラ100は、この実施形態においては別体とされており、電気配線を介して電気的に接続されているとともに、光ファイバーケーブルを介して光学的に結合されている。
【0034】
より一般には、マーカヘッド1及びマーカコントローラ100の一方を他方に組み込んで一体化することもできる。この場合、光ファイバーケーブル等を適宜省略することができる。
【0035】
操作用端末800は、例えば中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)及びメモリを有しており、マーカコントローラ100に接続されている。この操作用端末800は、印字設定など、種々の加工条件(印字条件ともいう)を設定するとともに、レーザ加工に関連した情報をユーザに示すための端末として機能する。この操作用端末800は、ユーザに情報を表示するための表示部801と、ユーザによる操作入力を受け付ける操作部802と、種々の情報を記憶するための記憶装置803と、を備えている。
【0036】
具体的に、表示部801は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELパネルにより構成されている。表示部801には、レーザ加工に関連した情報として、レーザ加工装置Lの動作状況及び加工条件等が表示される。一方、操作部802は、例えばキーボード及び/又はポインティングデバイスにより構成されている。ここで、ポインティングデバイスには、マウス及び/又はジョイスティック等が含まれる。操作部802は、ユーザによる操作入力を受け付けるように構成されており、マーカコントローラ100を介してマーカヘッド1を操作するために用いられる。
【0037】
上記のように構成される操作用端末800は、ユーザによる操作入力に基づいて、レーザ加工における加工条件を設定することができる。この加工条件には、例えば、ワークWに印字されるべき文字列、並びに、バーコード及びQRコード(登録商標)等の図形の内容(マーキングパターン)と、レーザ光に求める出力(目標出力)と、ワークW上でのレーザ光の走査速度(スキャンスピード)と、のうちの1つ以上が含まれる。
【0038】
また、本実施形態に係る加工条件には、前述の測距ユニット5に関連した条件及びパラメータ(以下、これを「測距条件」ともいう)も含まれる。そうした測距条件には、例えば、測距ユニット5による検出結果を示す信号と、ワークWの表面までの距離と、を関連付けるデータ等が含まれる。
【0039】
操作用端末800により設定される加工条件は、マーカコントローラ100に出力されて、その条件設定記憶部102に記憶される。必要に応じて、操作用端末800における記憶装置803が加工条件を記憶してもよい。
【0040】
なお、操作用端末800は、例えばマーカコントローラ100に組み込んで一体化することができる。この場合は「操作用端末」ではなく、コントロールユニット等の呼称が用いられることになるが、少なくとも本実施形態においては、操作用端末800とマーカコントローラ100は互いに別体とされている。
【0041】
外部機器900は、必要に応じてレーザ加工装置Lのマーカコントローラ100に接続される。
図1に示す例では、外部機器900として、画像認識装置901及びプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:PLC)902が設けられている。
【0042】
具体的に、画像認識装置901は、例えば製造ライン上で搬送されるワークWの種別及び位置を判定する。画像認識装置901として、例えばイメージセンサを用いることができる。PLC902は、予め定められたシーケンスに従ってレーザ加工システムSを制御するために用いられる。
【0043】
レーザ加工装置Lには、上述した機器や装置以外にも、操作及び制御を行うための装置、その他の各種処理を行うためのコンピュータ、記憶装置、周辺機器等を接続することもできる。この場合の接続は、例えば、IEEE1394、RS-232、RS-422及びUSB等のシリアル接続、又はパラレル接続としてもよい。あるいは、10BASE-T、100BASE-TX、1000BASE-T等のネットワークを介して電気的、磁気的、又は光学的な接続を採用することもできる。また、有線接続以外にも、IEEE802等の無線LAN、又は、Bluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続でもよい。さらに、データの交換や各種設定の保存等を行うための記憶装置に用いる記憶媒体としては、例えば、各種メモリカード、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ、ハードディスク等を利用することができる。
【0044】
以下、マーカコントローラ100及びマーカヘッド1それぞれのハード構成に係る説明と、マーカコントローラ100によるマーカヘッド1の制御に係る構成と、について順番に説明をする。
【0045】
<マーカコントローラ100>
図2に示すように、マーカコントローラ100は、上述した加工条件を記憶する条件設定記憶部102と、これに記憶されている加工条件に基づいてマーカヘッド1を制御する制御部101と、レーザ励起光(励起光)を生成する励起光生成部110と、を備えている。
【0046】
(条件設定記憶部102)
条件設定記憶部102は、操作用端末800を介して設定された加工条件を記憶するとともに、必要に応じて、記憶された加工条件を制御部101へと出力するように構成されている。
【0047】
具体的に、条件設定記憶部102は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等を用いて構成されており、加工条件を示す情報を一時的又は継続的に記憶することができる。なお、操作用端末800をマーカコントローラ100に組み込んだ場合には、記憶装置803が条件設定記憶部102を兼用するように構成することができる。
【0048】
(制御部101)
制御部101は、条件設定記憶部102に記憶された加工条件に基づいて、少なくとも、マーカコントローラ100における励起光生成部110、並びに、マーカヘッド1におけるレーザ光出力部2、レーザ光案内部3、レーザ光走査部4、測距ユニット5、並びに同軸カメラ6及び広域カメラ(非同軸カメラ)7を制御することにより、ワークWの印字加工等を実行する。
【0049】
具体的に、制御部101は、CPU、メモリ、入出力バスを有しており、操作用端末800を介して入力された情報を示す信号、及び、条件設定記憶部102から読み込んだ加工条件を示す信号に基づいて制御信号を生成する。制御部101は、そうして生成した制御信号をレーザ加工装置Lの各部へと出力することにより、ワークWに対する印字加工、及び、ワークWまでの距離の測定を制御する。
【0050】
例えば、制御部101は、ワークWの加工を開始するときには、条件設定記憶部102に記憶された目標出力を読み込んで、その目標出力に基づき生成した制御信号を励起光源駆動部112へと出力し、レーザ励起光の生成を制御する。
【0051】
また、制御部101は、実際にワークWを加工する際には、例えば条件設定記憶部102に記憶されている加工パターン(マーキングパターン)を読み込むとともに、その加工パターンに基づき生成した制御信号をレーザ光走査部4へと出力し、近赤外レーザ光を2次元走査する。
【0052】
このように、制御部101は、近赤外レーザ光の2次元走査を実現するようにレーザ光走査部4を制御することができる。制御部101は、本実施形態における「走査制御部」の例示である。
【0053】
(励起光生成部110)
励起光生成部110は、駆動電流に応じたレーザ光を生成する励起光源111と、その励起光源111に駆動電流を供給する励起光源駆動部112と、励起光源111に対して光学的に結合された励起光集光部113と、を備えている。励起光源111と励起光集光部113は、不図示の励起ケーシング内に固定されている。詳細は省略するが、この励起ケーシングは、熱伝導性に優れた銅等の金属で構成されており、励起光源111から効率よく放熱させることができる。
【0054】
以下、励起光生成部110の各部について順番に説明する。
【0055】
励起光源駆動部112は、制御部101から出力された制御信号に基づいて、励起光源111へ駆動電流を供給する。詳細は省略するが、励起光源駆動部112は、制御部101が決定した目標出力に基づいて駆動電流を決定し、そうして決定した駆動電流を励起光源111へ供給する。
【0056】
励起光源111は、励起光源駆動部112から駆動電流が供給されるとともに、その駆動電流に応じたレーザ光を発振する。例えば、励起光源111は、レーザダイオード(Laser Diode:LD)等で構成されており、複数のLD素子を直線状に並べたLDアレイやLDバーを用いることができる。励起光源111としてLDアレイやLDバーを用いた場合、各素子から発振されるレーザ光は、ライン状に出力されて励起光集光部113に入射する。
【0057】
励起光集光部113は、励起光源111から出力されたレーザ光を集光するとともに、レーザ励起光(励起光)として出力する。例えば、励起光集光部113は、フォーカシングレンズ等で構成されており、レーザ光が入射する入射面と、レーザ励起光を出力する出射面と、を有している。励起光集光部113は、マーカヘッド1に対し、前述の光ファイバーケーブルを介して光学的に結合されている。よって、励起光集光部113から出力されたレーザ励起光は、その光ファイバーケーブルを介してマーカヘッド1へ導かれることになる。
【0058】
なお、励起光生成部110は、励起光源駆動部112、励起光源111及び励起光集光部113を予め組み込んだLDユニットあるいはLDモジュールとすることができる。また、励起光生成部110から出射される励起光(具体的には、励起光集光部113から出力されるレーザ励起光)は、無偏光とすることができ、これにより偏光状態の変化を考慮する必要がなく、設計上有利となる。特に、励起光源111周辺の構成については、複数のLD素子を数十個配列したLDアレイから各々得られる光を光ファイバーでバンドルして出力するLDユニット自体に、出力光を無偏光とする機構を備えることが好ましい。
【0059】
(他の構成要素)
マーカコントローラ100はまた、測距ユニット5を介してワークWまでの距離を測定する距離測定部103を有している。距離測定部103は、測距ユニット5と電気的に接続されており、測距ユニット5による測定結果に関連した信号(少なくとも、測距光受光部5Bにおける測距光の受光位置を示す信号)を受信可能とされている。
【0060】
また、後述のように、本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、同軸カメラ6と、非同軸カメラとしての広域カメラ7と、を備えている。このレーザ加工装置Lは、同軸カメラ6及び広域カメラ7の少なくとも一方を作動させることで、ワークWの表面を撮像することができる。
【0061】
マーカコントローラ100における制御部101は、同軸カメラ6及び広域カメラ7の少なくとも一方によって撮像された画像に基づく処理を行うべく、特徴量抽出部105と、位置補正部108と、を備えている。
【0062】
マーカコントローラ100はまた、マーキングパターンに係る情報を設定する設定部107を備えている。設定部107における設定内容は、走査制御部としての制御部101が読み込んで使用する。
【0063】
なお、距離測定部103、特徴量抽出部105及び位置補正部108は、制御部101によって構成してもよい。例えば、制御部101が位置補正部108を兼用してもよい。また、位置補正部108が、特徴量抽出部105等を兼用してもよい。
【0064】
距離測定部103、特徴量抽出部105、設定部107及び位置補正部108の詳細は後述する。
【0065】
<マーカヘッド1>
前述のように、励起光生成部110により生成されたレーザ励起光は、光ファイバーケーブルを介してマーカヘッド1へ導かれる。このマーカヘッド1は、レーザ励起光に基づいてレーザ光を増幅・生成して出力するレーザ光出力部2と、レーザ光出力部2から出力されたレーザ光をワークWの表面へ照射して2次元走査を行うレーザ光走査部4と、レーザ光出力部2からレーザ光走査部4へ至る光路を構成するレーザ光案内部3と、レーザ光走査部4を介して投光及び受光した測距光に基づいてワークWの表面までの距離を測定するための測距ユニット5と、ワークWの表面を撮像する同軸カメラ6及び広域カメラ7と、を備えている。
【0066】
ここで、本実施形態に係るレーザ光案内部3は、単に光路を構成するばかりでなく、レーザ光の焦点位置を調整するZスキャナ(焦点調整部)33、ガイド光を出射するガイド光源36、及び、ワークWの表面を撮像する同軸カメラ6など、複数の部材が組み合わされてなる。
【0067】
また、レーザ光案内部3はさらに、レーザ光出力部2から出力される近赤外レーザ光とガイド光源36から出射されるガイド光を合流せしめる上流側合流機構31と、レーザ光走査部4へ導かれるレーザ光と測距ユニット5から投光される測距光を合流せしめる下流側合流機構35と、を有している。
【0068】
図3A~
図3Bはマーカヘッド1の概略構成を例示するブロック図であり、
図4はマーカヘッド1の外観を例示する斜視図である。
図3A~
図3Bのうち、
図3Aは近赤外レーザ光を用いてワークWを加工する場合を例示し、
図3Bは測距ユニット5を用いてワークWの表面までの距離を測定する場合を例示している。
【0069】
図3A~
図4に例示するように、マーカヘッド1は、少なくともレーザ光出力部2、レーザ光案内部3、レーザ光走査部4及び測距ユニット5が内部に設けられた筐体10を備えている。この筐体10は、
図4に示すような略直方状の外形を有している。筐体10の下面は、板状の底板10aによって区画されている。この底板10aには、マーカヘッド1から該マーカヘッド1の外部へレーザ光を出射するための透過ウインドウ19が設けられている。透過ウインドウ19は、底板10aを板厚方向に貫く貫通孔に対し、近赤外レーザ光、ガイド光及び測距光を透過可能な板状の透明部材を嵌め込むことによって構成されている。
【0070】
なお、以下の記載では、
図4における筐体10の長手方向を単に「長手方向」又は「前後方向」と呼称したり、同図における筐体10の短手方向を単に「短手方向」又は「左右方向」と呼称したりする場合がある。同様に、
図4における筐体10の高さ方向を単に「高さ方向」又は「上下方向」と呼称する場合もある。
【0071】
図5は、レーザ光走査部4の構成を例示する斜視図である。また、
図6はレーザ光案内部3、レーザ光走査部4及び測距ユニット5の構成を例示する断面図であり、
図7はレーザ光案内部3、レーザ光走査部4及び測距ユニット5を結ぶ光路を例示する断面図であり、
図8はレーザ光案内部3、レーザ光走査部4及び測距ユニット5を結ぶ光路を例示する斜視図である。
【0072】
図5~
図6に例示するように、筐体10の内部には仕切部11が設けられている。筐体10の内部空間は、この仕切部11によって長手方向の一側と他側に仕切られている。
【0073】
具体的に、仕切部11は、筐体10の長手方向に対して垂直な方向に延びる平板状に形成されている。また、仕切部11は、筐体10の長手方向においては、同方向における筐体10の中央部に比して、長手方向一側(
図4における前側)に寄せた配置とされている。
【0074】
よって、筐体10内の長手方向一側に仕切られるスペースは、長手方向他側(
図4における後側)に仕切られるスペースよりも、長手方向の寸法が短くなっている。以下、筐体10内の長手方向他側に仕切られるスペースを第1スペースS1と呼称する一方、その長手方向一側に仕切られるスペースを第2スペースS2と呼称する。
【0075】
この実施形態では、第1スペースS1の内部には、レーザ光出力部2と、レーザ光案内部3における一部の部品と、レーザ光走査部4と、測距ユニット5が配置されている。一方、第2スペースS2の内部には、レーザ光案内部3における主要な部品が配置されている。
【0076】
詳しくは、第1スペースS1は、略平板状のベースプレート12によって、短手方向の一側(
図4の左側)の空間と、他側(
図4の右側)の空間と、に仕切られている。前者の空間には、主に、レーザ光出力部2を構成する部品が配置されている。
【0077】
さらに詳しくは、レーザ光出力部2を構成する部品のうち、光学レンズや光学結晶など、可能な限り気密状に密閉することが求められる光学部品21については、第1スペースS1における短手方向一側の空間において、ベースプレート12等によって包囲された収容空間の内部に配置されている。
【0078】
対して、レーザ光出力部2を構成する部品のうち、電気配線や、
図5に示すヒートシンク22など、必ずしも密閉することが求められない部品については、光学部品21に対し、ベースプレート12を挟んで反対側(第1スペースS1における短手方向他側)に配置されている。
【0079】
また、
図5及び
図6に例示するように、レーザ光走査部4は、レーザ光出力部2における光学部品21と同様に、ベースプレート12を挟んで短手方向の一側に配置することができる。具体的に、この実施形態に係るレーザ光走査部4は、長手方向においては前述の仕切部11に隣接するとともに、上下方向においては筐体10の内底面に沿って配置されている。
【0080】
また、
図6に示すように、測距ユニット5は、レーザ光出力部2におけるヒートシンク22と同様に、第1スペースS1における短手方向他側の空間に配置されている。
【0081】
また、レーザ光案内部3を構成する部品は、主に第2スペースS2に配置されている。この実施形態では、レーザ光案内部3を構成する大部分の部品は、仕切部11と、筐体10の前面を区画するカバー部材17と、により包囲された空間に収容されている。
【0082】
なお、レーザ光案内部3を構成する部品のうち、下流側合流機構35については、第1スペースS1における仕切部11付近の部位に配置されている(
図5を参照)。すなわち、この実施形態では、下流側合流機構35は、第1スペースS1と第2スペースS2との境界付近に位置することになる。
【0083】
またベースプレート12には、該ベースプレート12を板厚方向に貫通する貫通孔(不図示)が形成されている。この貫通孔を通じて、レーザ光案内部3及びレーザ光走査部4と、測距ユニット5とが光学的に結合されることになる。
【0084】
以下、レーザ光出力部2、レーザ光案内部3、レーザ光走査部4及び測距ユニット5の構成について順番に説明をする。
【0085】
(レーザ光出力部2)
レーザ光出力部2は、励起光生成部110により生成されたレーザ励起光に基づいて印字加工用の近赤外レーザ光を生成するとともに、その近赤外レーザ光をレーザ光案内部3へと出力するように構成されている。
【0086】
具体的に、レーザ光出力部2は、レーザ励起光に基づき所定の波長を有するレーザ光を生成するとともに、これを増幅して近赤外レーザ光を出射するレーザ発振器21aと、レーザ発振器21aから発振された近赤外レーザ光の一部を分離させるためのビームサンプラー21bと、ビームサンプラー21bによって分離せしめた近赤外レーザ光が入射するパワーモニタ21cと、を備えている。
【0087】
詳細は省略するが、本実施形態に係るレーザ発振器21aは、レーザ励起光に対応した誘導放出を行ってレーザ光を出射するレーザ媒質と、レーザ媒質から出射されるレーザ光をパルス発振するためのQスイッチと、Qスイッチによりパルス発振されたレーザ光を共振させるミラーと、を有している。
【0088】
特に本実施形態では、レーザ媒質としてロッド状のNd:YVO4(イットリウム・バナデイト)が用いられている。これにより、レーザ発振器21aは、レーザ光として、1064nm付近の波長を有するレーザ光(前述の近赤外レーザ光)を出射することができる。ただし、この例に限らず、他のレーザ媒質として、例えば希土類をドープしたYAG、YLF、GdVO4等を用いることもできる。レーザ加工装置Lの用途に応じて、様々な固体レーザ媒質を用いることができる。
【0089】
また、固体レーザ媒質に波長変換素子を組み合わせて、出力されるレーザ光の波長を任意の波長に変換することもできる。また、固体レーザ媒質としてバルクに代わってファイバーを発振器として利用した、いわゆるファイバーレーザを利用してもよい。
【0090】
さらには、Nd:YVO4等の固体レーザ媒質と、ファイバーとを組み合わせてレーザ発振器21aを構成してもよい。その場合、固体レーザ媒質を用いたときのように、パルス幅の短いレーザを出射してワークWへの熱ダメージを抑制する一方で、ファイバーを用いたときのように、高出力化を実現してより早い印字加工を実現することが可能となる。
【0091】
パワーモニタ21cは、近赤外レーザ光の出力を検出する。パワーモニタ21cは、マーカコントローラ100と電気的に接続されており、その検出信号を制御部101等へ出力することができる。
【0092】
(レーザ光案内部3)
レーザ光案内部3は、レーザ光出力部2から出射された近赤外レーザ光をレーザ光走査部4へと案内するレーザ光路Pの少なくとも一部を形成する。レーザ光案内部3は、そうしたレーザ光路Pを形成するためのベンドミラー34に加えて、Zスキャナ(焦点調整部)33及びガイド光源(ガイド光出射部)36等を備えている。これらの部品は、いずれも筐体10の内部(主に第2スペースS2)に設けられている。
【0093】
レーザ光出力部2から入射した近赤外レーザ光は、ベンドミラー34によって反射され、レーザ光案内部3を通過する。ベンドミラー34へ至る途中には、近赤外レーザ光の焦点位置を調整するためのZスキャナ33が配置されている。Zスキャナ33を通過してベンドミラー34によって反射された近赤外レーザ光が、レーザ光走査部4に入射することになる。
【0094】
レーザ光案内部3により構成されるレーザ光路Pは、焦点調整部としてのZスキャナ33を境として2分することができる。詳しくは、レーザ光案内部3により構成されるレーザ光路Pは、レーザ光出力部2からZスキャナ33へ至る上流側光路Puと、Zスキャナ33からレーザ光走査部4へ至る下流側光路Pdと、に区分することができる。
【0095】
さらに詳しくは、上流側光路Puは、筐体10の内部に設けられており、レーザ光出力部2から、前述の上流側合流機構31を経由してZスキャナ33に至る。
【0096】
一方、下流側光路Pdは、筐体10の内部に設けられており、Zスキャナ33から、ベンドミラー34と、前述の下流側合流機構35と、を順番に経由してレーザ光走査部4における第1スキャナ41に至る。
【0097】
このように、筐体10の内部においては、上流側光路Puの途中に上流側合流機構31が設けられているとともに、下流側光路Pdの途中に下流側合流機構35が設けられている。
【0098】
以下、レーザ光案内部3に関連した構成について順番に説明をする。
【0099】
-ガイド光源36-
ガイド光源36は、筐体10内部の第2スペースS2に設けられており、所定の加工パターンをワークWの表面上に投影するためのガイド光を出射する。そのガイド光の波長は、可視光域に収まるように設定されている。その一例として、本実施形態に係るガイド光源36は、ガイド光として、655nm付近の波長を有する赤色レーザ光を出射する。よって、マーカヘッド1からガイド光が出射されると、使用者は、そのガイド光を視認することができる。
【0100】
なお、本実施形態では、ガイド光の波長は、少なくとも近赤外レーザ光の波長と相違するように設定されている。また後述のように、測距ユニット5における測距光出射部5Aは、ガイド光及び近赤外レーザ光とは異なる波長を有する測距光を出射する。よって、測距光と、ガイド光と、レーザ光と、は互いに異なる波長を有するようになっている。
【0101】
具体的に、ガイド光源36は、第2スペースS2において上流側合流機構31と略同じ高さに配置されており、筐体10の短手方向の内側に向かって可視光レーザ(ガイド光)を出射することができる。ガイド光源36はまた、該ガイド光源36から出射されるガイド光の光軸と、上流側合流機構31と、が交わるような姿勢とされている。
【0102】
なお、ここでいう「略同じ高さ」とは、筐体10の下面をなす底板10aから見て、高さ位置が実質的に等しいことを指す。他の記載においても、底板10aから見た高さを指す。
【0103】
よって、例えば近赤外レーザ光による加工パターンを使用者に視認させるべく、ガイド光源36からガイド光が出射されると、そのガイド光は、上流側合流機構31へ至る。上流側合流機構31は、光学部品としてのダイクロイックミラー(不図示)を有している。後述のように、このダイクロイックミラーは、ガイド光を透過させつつも、近赤外レーザ光を反射させる。これにより、ダイクロイックミラーを透過したガイド光と、同ミラーにより反射された近赤外レーザ光とが合流して同軸になる。
【0104】
なお、本実施形態に係るガイド光源36は、制御部101から出力された制御信号に基づいて、ガイド光を出射するように構成されている。
【0105】
-上流側合流機構31-
上流側合流機構31は、ガイド光出射部としてのガイド光源36から出射されたガイド光を、上流側光路Puに合流させる。上流側合流機構31を設けることで、ガイド光源36から出射されたガイド光と、上流側光路Puにおける近赤外レーザ光と、を同軸にすることができる。
【0106】
前述のように、ガイド光の波長は、少なくとも近赤外レーザ光の波長と相違するように設定されている。そのため、上流側合流機構31は、前述のように、例えばダイクロイックミラーを用いて構成することができる。このダイクロイックミラーによって同軸化された近赤外レーザ光及びガイド光は、下方に向かって伝搬し、Zスキャナ33を通過してベンドミラー34へ至る。
【0107】
-Zスキャナ33-
焦点調整部としてのZスキャナ33は、レーザ光案内部3が構成する光路の途中に配置されており、レーザ光出力部2から出射された近赤外レーザ光の焦点位置を調整することができる。
【0108】
具体的に、Zスキャナ33は、筐体10の内部において、レーザ光路Pのうち、ガイド光合流機構としての上流側合流機構31からレーザ光走査部4までの光路の途中に設けられている。
【0109】
詳しくは、本実施形態に係るZスキャナ33は、
図3A~
図3Bに示すように、レーザ光出力部2から出射された近赤外レーザ光を透過させる入射レンズ33aと、入射レンズ33aを通過した近赤外レーザ光を通過させるコリメートレンズ33bと、入射レンズ33a及びコリメートレンズ33bを通過した近赤外レーザ光を通過させる出射レンズ33cと、入射レンズ33aを移動させるレンズ駆動部33dと、入射レンズ33a、コリメートレンズ33b、出射レンズ33cを収容するケーシング33eと、を有している。
【0110】
入射レンズ33aは平凹レンズからなり、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cは平凸レンズからなる。入射レンズ33a、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cは、各々の光軸が互いに同軸になるように配置されている。
【0111】
また、Zスキャナ33においては、レンズ駆動部33dが光軸に沿って入射レンズ33aを移動させる。これにより、Zスキャナ33を通過する近赤外レーザ光に対し入射レンズ33a、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33c各々の光軸を同軸に保ちつつ、入射レンズ33aと出射レンズ33cとの相対距離を変更することができる。そのことで、ワークWに照射される近赤外レーザ光の焦点位置が変化する。
【0112】
以下、Zスキャナ33を構成する各部について、より詳細に説明する。
【0113】
ケーシング33eは、略円筒形状を有している。
図3A~
図3Bに示すように、ケーシング33eの両端部には、近赤外レーザ光を通過させるための開口33fが形成されている。ケーシング33eの内部では、入射レンズ33a、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cが、この順番で上下方向に並んでいる。
【0114】
そして、入射レンズ33a、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cのうち、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cは、ケーシング33eの内部に固定されている。一方、入射レンズ33aは、上下方向に移動可能に設けられている。レンズ駆動部33dは、例えばモータを有しており、入射レンズ33aを上下方向に移動させる。これにより、入射レンズ33aと出射レンズ33cとの相対距離が変更される。
【0115】
例えば、レンズ駆動部33dによって、入射レンズ33aと出射レンズ33cとの間の距離が、相対的に短く調整されたものとする。この場合、出射レンズ33cを通過する近赤外レーザ光の集光角が相対的に小さくなるため、近赤外レーザ光の焦点位置は、マーカヘッド1の透過ウインドウ19から遠ざかることになる。
【0116】
一方、レンズ駆動部33dによって、入射レンズ33aと出射レンズ33cとの間の距離が、相対的に長く調整されたものとする。この場合、出射レンズ33cを通過する近赤外レーザ光の集光角が相対的に大きくなるため、近赤外レーザ光の焦点位置は、マーカヘッド1の透過ウインドウ19に近付くことになる。
【0117】
なお、Zスキャナ33においては、入射レンズ33a、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cのうち、入射レンズ33aをケーシング33eの内部に固定して、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cを上下方向に移動可能としてもよい。あるいは、入射レンズ33a、コリメートレンズ33b及び出射レンズ33cを全て、上下方向に移動可能としてもよい。
【0118】
こうして、焦点調整部としてのZスキャナ33は、近赤外レーザ光を上下方向に走査するための手段として機能することになる。以下、Zスキャナ33による走査方向を「Z方向」と呼称する場合がある。
【0119】
なお、Zスキャナ33を通過する近赤外レーザ光は、前述のように、ガイド光源36から出射されるガイド光と同軸とされている。そのため、Zスキャナ33を作動させることにより、近赤外レーザ光ばかりでなく、ガイド光の焦点位置も併せて調整することができる。
【0120】
なお、本実施形態に係るZスキャナ33、特にZスキャナ33におけるレンズ駆動部33dは、制御部101から出力された制御信号に基づいて作動するように構成されている。
【0121】
-ベンドミラー34-
ベンドミラー34は、下流側光路Pdの途中に設けられており、該光路Pdを折り曲げて後方に指向させるように配置されている。
図6に示すように、ベンドミラー34は、下流側合流機構35における光学部材35aと略同じ高さに配置されており、Zスキャナ33を通過した近赤外レーザ光及びガイド光を反射することができる。
【0122】
ベンドミラー34によって反射された近赤外レーザ光及びガイド光は、後方に向かって伝搬し、下流側合流機構35を通過してレーザ光走査部(具体的には第1スキャナ41)4へ至る。
【0123】
-下流側合流機構35-
下流側合流機構35は、測距ユニット5における測距光出射部5Aから出射された測距光を、前述の下流側光路Pdに合流させることによりレーザ光走査部4を介してワークWへ導く。加えて、下流側合流機構35は、ワークWにより反射されてレーザ光走査部4及び下流側光路Pdの順に戻る測距光を、測距ユニット5における測距光受光部5Bへ導く。
【0124】
下流側合流機構35を設けることで、測距光出射部5Aから出射された測距光と、下流側光路Pdにおける近赤外レーザ光及びガイド光と、を同軸にすることができる。それと同時に、下流側合流機構35を設けることで、マーカヘッド1から出射されてワークWにより反射された測距光のうち、マーカヘッド1に入射した測距光を測距光受光部5Bまで導くことができる。
【0125】
前述のように、測距光の波長は、近赤外レーザ光及びガイド光の波長と相違するように設定されている。そのため、下流側合流機構35は、上流側合流機構31と同様に、例えばダイクロイックミラーを用いて構成することができる。
【0126】
具体的に、本実施形態に係る下流側合流機構35は、測距光及びガイド光の一方を透過させ、他方を反射するダイクロイックミラー35aを有している(
図6及び
図7を参照)。より詳細には、ダイクロイックミラー35aは、ベンドミラー34と略同じ高さ位置で、かつベンドミラー34の後方に配置されており、筐体10内の短手方向の左側のスペースに配置される。
【0127】
ダイクロイックミラー35aはまた、
図6等に示すように、その一方側の鏡面をベンドミラー34に向け、かつ他方側の鏡面をベースプレート12に向けた姿勢で固定されている。よって、ダイクロイックミラー35aにおける一方側の鏡面には近赤外レーザ光及びガイド光が入射する一方、他方側の鏡面には測距光が入射することになる。
【0128】
そして、本実施形態に係るダイクロイックミラー35aは、測距光を反射し、かつ近赤外レーザ光とガイド光とを透過させることができる。これにより、例えば測距ユニット5から出射された測距光がダイクロイックミラー35aに入射したときには、その測距光を下流側光路Pdに合流させ、近赤外レーザ光及びガイド光と同軸にすることができる。そうして同軸化された近赤外レーザ光、ガイド光及び測距光は、
図3A~
図3Bに示すように第1スキャナ41へ至る。
【0129】
一方、ワークWにより反射された測距光は、レーザ光走査部4へ戻ることにより下流側光路Pdに至る。下流側光路Pへ戻った測距光は、下流側合流機構35におけるダイクロイックミラー35aにより反射されて測距ユニット5に至る。
【0130】
なお、測距ユニット5からダイクロイックミラー35aに入射する測距光、及び、ダイクロイックミラー35aにより反射されて測距ユニット5に入射する測距光は、
図7に示すように、双方とも、筐体10を平面視したときの左右方向(筐体10の短手方向)に沿って伝搬するようになっている。
【0131】
(レーザ光走査部4)
図3Aに示すように、レーザ光走査部4は、レーザ光出力部2から出射されてレーザ光案内部3により案内されたレーザ光(近赤外レーザ光)をワークWへ照射するとともに、そのワークWの表面上で2次元走査するように構成されている。
【0132】
図5に示す例では、レーザ光走査部4は、いわゆる2軸式のガルバノスキャナとして構成されている。すなわち、このレーザ光走査部4は、レーザ光案内部3から入射した近赤外レーザ光を第1方向に走査するための第1スキャナ41と、第1スキャナ41により走査された近赤外レーザ光を第2方向に走査するための第2スキャナ42と、を有している。
【0133】
ここで、第2方向は、第1方向に対して略直交する方向を指す。よって、第2スキャナ42は、第1スキャナ41に対して略直交する方向に近赤外レーザ光を走査することができる。本実施形態では、第1方向は前後方向(筐体10の長手方向)に等しく、第2方向は左右方向(筐体10の短手方向)に等しい。以下、第1方向を「X方向」と呼称し、これと直交する第2方向を「Y方向」と呼称する。X方向とY方向は、双方とも前述のZ方向と直交している。
【0134】
第1スキャナ41は、その先端に第1ミラー41aを有している。第1ミラー41aは、ベンドミラー34及び光学部材35aと略同じ高さ位置で、かつ光学部材35aの後方に配置されている。よって、
図5に示すように、ベンドミラー34と、光学部材35aと、第1ミラー41aは、前後方向(筐体10の長手方向)に沿って一列に並ぶようになっている。
【0135】
第1ミラー41aはまた、第1スキャナ41に内蔵されたモータ(不図示)によって回転駆動される。このモータは、上下方向に延びる回転軸まわりに第1ミラー41aを回転させることができる。第1ミラー41aの回転姿勢を調整することで、第1ミラー41aによる近赤外レーザ光の反射角を調整することができる。
【0136】
同様に、第2スキャナ42は、その先端に第2ミラー42aを有している。第2ミラー42aは、第1スキャナ41における第1ミラー41aと略同じ高さ位置でかつ、この第1ミラー41aの右方に配置されている。よって、
図6に示すように、第1ミラー41aと、第2ミラー42aは、左右方向(筐体10の短手方向)に沿って並ぶようになっている。
【0137】
第2ミラー42aはまた、第2スキャナ42に内蔵されたモータ(不図示)によって回転駆動される。このモータは、前後方向に延びる回転軸まわりに第2ミラー42aを回転させることができる。第2ミラー42aの回転姿勢を調整することで、第2ミラー42aによる近赤外レーザ光の反射角を調整することができる。
【0138】
よって、下流側合流機構35からレーザ光走査部4へ近赤外レーザ光が入射すると、その近赤外レーザ光は、第1スキャナ41における第1ミラー41aと、第2スキャナ42における第2ミラー42aとによって順番に反射され、透過ウインドウ19を介してマーカヘッド1の外部へ出射することになる。
【0139】
そのときに、第1スキャナ41のモータを作動させて第1ミラー41aの回転姿勢を調整することで、ワークWの表面上で近赤外レーザ光を第1方向に走査することが可能となる。それと同時に、第2スキャナ42のモータを作動させて第2ミラー42aの回転姿勢を調整することで、ワークWの表面上で近赤外レーザ光を第2方向に走査することが可能になる。
【0140】
また前述のように、レーザ光走査部4には、近赤外レーザ光ばかりでなく、下流側合流機構35の光学部材35aを通過したガイド光、又は、同部材35aによって反射された測距光も入射することになる。本実施形態に係るレーザ光走査部4は、第1スキャナ41及び第2スキャナ42をそれぞれ作動させることで、そうして入射したガイド光又は測距光を2次元走査することができる。
【0141】
なお、第1ミラー41a及び第2ミラー42aが取り得る回転姿勢は、基本的には、第2ミラー42aによって近赤外レーザ光が反射されたときに、その反射光が透過ウインドウ19を通過するような範囲内に設定される(
図7~
図8も参照)。
【0142】
こうして、本実施形態に係るレーザ光走査部4は、走査制御部としての制御部101によって電気的に制御されることにより、ワークWの表面上に設定される加工領域R1に近赤外レーザ光を照射して、その加工領域R1内に所定の加工パターン(マーキングパターン)を形成することができる。
【0143】
(同軸カメラ6)
同軸カメラ6は、レーザ光出力部2からレーザ光走査部4までのレーザ光路Pから分岐した撮像光軸A1を有する(
図3A及び
図3B参照)。同軸カメラ6は、レーザ光走査部4を介してワークWを撮像することにより、加工領域R1の少なくとも一部を含んだ撮像画像Pwを生成することができる。同軸カメラ6は、本実施形態における「第1撮像部」の例示である。
【0144】
同軸カメラ6は、加工用の近赤外レーザ光と同軸化された撮像手段として構成されている。同軸カメラ6は、広域カメラ7よりも視野サイズこそ狭いが、撮像画像Pwとして、加工領域R1を相対的に高倍率で拡大した同軸画像を生成したり、レーザ光走査部4を介して撮像領域を2次元走査したり、することができる。同軸カメラ6は、例えば、加工領域R1の一部を局所的に拡大して撮像するために用いられる。
【0145】
同軸カメラ6によって生成された撮像画像Pwは、その少なくとも一部を拡大縮小した状態で、表示部801上に表示することができる。
【0146】
本実施形態に係る同軸カメラ6は、筐体10に内蔵されている。具体的に、同軸カメラ6は、レーザ光案内部3において、ベンドミラー34と略同じ高さに配置されている。同軸カメラ6は、レーザ光走査部4からレーザ光案内部3へと入射した反射光を受光する。同軸カメラ6は、ワークWの印字点において反射された反射光が、ベンドミラー34を介して入射するように構成されている。同軸カメラ6は、そうして入射した反射光を結像することで、ワークWの表面を撮像することができる。なお、同軸カメラ6のレイアウトは、適宜、変更可能である。例えば、同軸カメラ6及びベンドミラー34の高さを互いに異ならせてもよい。
【0147】
同軸カメラ6が結像に用いる反射光は、前述の下流側光路Pdから分岐して伝搬する。よって、レーザ光走査部4を適宜作動させることで、
図12に例示する加工領域R1を2次元的に走査することができる。
【0148】
なお、本実施形態に係る同軸カメラ6は、ガイド光源36等と同様に、制御部101から出力された制御信号に基づいて作動するように構成されている。
【0149】
(広域カメラ7)
広域カメラ7は、レーザ光路Pから分岐した撮像光軸A2を有する(
図12参照)。広域カメラ7は、レーザ光走査部4の非介在下でワークWを撮像することにより、同軸カメラ6により生成される画像よりも視野サイズの広い撮像画像Pwを生成することができる。広域カメラ7は、本実施形態における「第2撮像部」の例示である。
【0150】
広域カメラ7は、加工用の近赤外レーザ光と非同軸化された撮像手段として構成されている。広域カメラ7は、レーザ光走査部4を介した2次元走査こそできないが、同軸カメラ6よりも視野サイズが広く、撮像画像Pwとして、加工領域R1を相対的に広視野で撮像した広域画像を生成することができる。広域カメラ7は、例えば、加工領域R1全体を一度に撮像するために用いられる。
【0151】
広域カメラ7によって生成された撮像画像Pwは、その少なくとも一部を拡大縮小した状態で、表示部801上に表示することができる。表示部801は、広域カメラ7によって生成された撮像画像Pwと、同軸カメラ6によって生成された撮像画像Pwと、を並べて表示したり、2種類の撮像画像Pwのうちの一方を択一的に表示したり、することができる。
【0152】
本実施形態に係る広域カメラ7は、透過ウインドウ19の直上方に配置されており、その撮像レンズを下方に向けた姿勢で固定されている。前述のように、広域カメラ7の撮像光軸A2は、前述した近赤外レーザ光の光軸Azと同軸化されていない(
図3A、
図3B及び
図12を参照)。
【0153】
なお、本実施形態に係る「撮像部」は、第1撮像部としての同軸カメラ6、及び、第2撮像部としての広域カメラ7の少なくとも一方からなる。すなわち、同軸カメラ6又は広域カメラ7によって生成される撮像画像Pwは、後述の制御態様において用いられるところ、その撮像画像Pwは、同軸カメラ6又は広域カメラ7のいずれか一方を用いて説明してもよいし、両者を組み合わせて用いてもよい。同軸カメラ6及び広域カメラ7を双方とも備える構成は、必須ではない。
【0154】
(測距ユニット5)
図3Bに示すように、測距ユニット5は、レーザ光走査部4を介して測距光を投光し、それをワークWの表面に照射する。測距ユニット5はまた、ワークWの表面により反射された測距光を、レーザ光走査部4を介して受光する。
【0155】
測距ユニット5は、主に、測距光を投光するためのモジュールと、測距光を受光するためのモジュールと、に大別される。具体的に、測距ユニット5は、測距光を投光するためのモジュールとして構成された測距光出射部5Aと、測距光を受光するためのモジュールとして構成された測距光受光部5Bと、を備えている。
【0156】
このうち、測距光出射部5Aは、筐体10の内部に設けられており、レーザ加工装置Lにおけるマーカヘッド1からワークWの表面までの距離を測定するための測距光を、レーザ光走査部4に向けて出射する。
【0157】
一方、測距光受光部5Bは、測距光出射部5Aと同様に筐体10の内部に設けられており、ワークWの表面上で反射されてレーザ光走査部4及び下流側合流機構35を介して戻った測距光を受光する。
【0158】
さらに、測距ユニット5は、測距光出射部5A及び測距光受光部5Bを下方から支持する支持台50を備えており、この支持台50を介して筐体10の内部に固定されている。
【0159】
前述のように、測距ユニット5は、第1スペースS1における短手方向他側の空間に設けられている。
図7に示すように、測距ユニット5は、筐体10の長手方向に沿って前方に測距光を出射するとともに、同長手方向に沿って略後方に伝搬する測距光を受光する。
【0160】
また、測距ユニット5は、前述の光学部材35aを介してレーザ光案内部3と光学的に結合される。前述のように、測距ユニット5は、筐体10の長手方向に沿って測距光を投光する。それに対し、光学部材35aは、筐体10の長手方向ではなく、その短手方向に沿って伝搬した測距光を反射するようになっている。
【0161】
そこで、測距ユニット5と光学部材35aを結ぶ光路を構成するべく、筐体10の内部にはベンドミラー59が設けられている(
図6及び
図7を参照)。
【0162】
よって、測距光出射部5Aからベンドミラー59に入射した測距光は、同ミラー59によって反射された光学部材35aに入射する。一方、レーザ光走査部4に戻って光学部材35aによって反射された測距光は、ベンドミラー59に入射するとともに、同ミラー59によって反射されて測距光受光部5Bに入射する。
【0163】
以下、測距ユニット5を成す各部の構成について、順番に説明をする。
【0164】
-測距光出射部5A-
測距光出射部5Aは、筐体10の内部に設けられており、レーザ加工装置Lにおけるマーカヘッド1から、ワークWの表面までの距離を測定するための測距光を出射するよう構成されている。
【0165】
具体的に、測距光出射部5Aは、前述の測距光源51及び投光レンズ52と、これらを収容するケーシング53と、投光レンズ52によって集光された測距光を案内する一対のガイドプレート54L、54Rと、を有している。測距光源51、投光レンズ52及びガイドプレート54L、54Rは筐体10の後側から順番に並んでおり、それらの並び方向は、筐体10の長手方向と実質的に等しい。
【0166】
ケーシング53は、筐体10及び支持台50の長手方向に沿って延びる筒状に形成されており、同方向における一側、すなわち筐体10の後側に対応する一端部には測距光源51が取り付けられている一方、筐体10の前側に対応する他端部には投光レンズ52が取り付けられている。測距光源51と投光レンズ52との間の空間は、略気密状に密閉されている。
【0167】
測距光源51は、制御部101から入力された制御信号に従って、筐体10の前側に向かって測距光を出射する。詳しくは、測距光源51は、測距光として、可視光域にあるレーザ光を出射することができる。特に、本実施形態に係る測距光源51は、測距光として、690nm付近の波長を有する赤色レーザ光を出射する。
【0168】
測距光源51はまた、測距光として出射される赤色レーザ光の光軸Aoが、ケーシング53の長手方向に沿うような姿勢で固定されている。よって、測距光の光軸Aoは、筐体10及び支持台50の長手方向に沿うこととなり、投光レンズ52の中央部を通過してケーシング53の外部に至る。
【0169】
投光レンズ52は、支持台50の長手方向においては、測距光受光部5Bにおける一対の受光素子56L、56Rと、受光レンズ57と、の間に位置している。投光レンズ52は、測距光の光軸Aoが通過するような姿勢とされている。
【0170】
投光レンズ52は、例えば平凸レンズとすることができ、球面状の凸面をケーシング53の外部に向けた姿勢で固定することができる。投光レンズ52は、測距光源51から出射された測距光を集光し、ケーシング53の外部に出射する。ケーシング53の外部に出射された測距光は、ガイドプレート54L、54Rの間に至る。
【0171】
ガイドプレート54L、54Rは、支持台50の短手方向に並んだ一対の部材として構成されており、それぞれ、支持台50の長手方向に延びる板状体とすることができる。一方のガイドプレート54Lと、他方のガイドプレート54Rとの間には、測距光を出射するためのスペースが区画される。ケーシング53の外部に出射された測距光は、そうして区画されたスペースを通過して出力される。
【0172】
よって、測距光源51から出射された測距光は、ケーシング53内部の空間、投光レンズ52の中央部、ガイドプレート54L、54Rの間のスペースを通過して、測距ユニット5の外部に出力される。そうして出力された測距光は、ベンドミラー59と、下流側合流機構35における光学部材35aと、によって反射されて、レーザ光走査部4に入射する。
【0173】
レーザ光走査部4に入射した測距光は、第1スキャナ41の第1ミラー41aと、第2スキャナ42の第2ミラー42aと、によって順番に反射され、透過ウインドウ19からマーカヘッド1の外部へ出射することになる。
【0174】
レーザ光走査部4の説明に際して記載したように、第1スキャナ41の第1ミラー41aの回転姿勢を調整することで、ワークWの表面上で測距光を第1方向に走査することができる。それと同時に、第2スキャナ42のモータを作動させて第2ミラー42aの回転姿勢を調整することで、ワークWの表面上で測距光を第2方向に走査することが可能になる。
【0175】
そうして走査された測距光は、ワークWの表面上で反射される。そうして反射された測距光の一部(以下、これを「反射光」ともいう)は、透過ウインドウ19を介してマーカヘッド1の内部に入射する。マーカヘッド1の内部に入射した反射光は、レーザ光走査部4を介してレーザ光案内部3に戻る。反射光は、測距光と同じ波長を有することから、レーザ光案内部3における下流側合流機構35の光学部材35aによって反射され、ベンドミラー59を介して測距ユニット5に入射する。
【0176】
-測距光受光部5B-
測距光受光部5Bは、筐体10の内部に設けられており、測距光出射部5Aから出射されてワークWにより反射された測距光(前述の「反射光」に等しい)を受光するよう構成されている。
【0177】
具体的に、測距光受光部5Bは、一対の受光素子56L、56Rと、受光レンズ57と、を有している。一対の受光素子56L、56Rは、それぞれ支持台50の後端部に配置されている一方、受光レンズ57は、それぞれ支持台50の前端部に配置されている。したがって、一対の受光素子56L、56Rと、受光レンズ57と、は実質的に筐体10及び支持台50の長手方向に沿って並ぶようになっている。
【0178】
一対の受光素子56L、56Rは、筐体10の内部において、測距光出射部5Aにおける測距光の光軸Aoを挟むように各々の光軸が配置されている。一対の受光素子56L、56Rは、レーザ光走査部4へ戻った反射光をそれぞれ受光する。
【0179】
詳しくは、一対の受光素子56L、56Rは、測距光出射部5Aの光軸Aoに直交する方向に並んでいる。この実施形態では、一対の受光素子56L、56Rの並び方向は、筐体10及び支持台50の短手方向、すなわち左右方向に等しい。同方向において、一方の受光素子56Lが測距光源51の左側に配置され、他方の受光素子56Rが測距光源51の右側に配置されている。
【0180】
そして、一対の受光素子56L、56Rは、それぞれ、斜め前方に指向せしめた受光面を有しており、各受光面における反射光の受光位置を検出し、その検出結果を示す信号(検出信号)を出力する。各受光素子56L、56Rから出力される検出信号は、マーカコントローラ100に入力されて距離測定部103に至る。
【0181】
各受光素子56L、56Rとして使用可能な素子としては、例えば、相補型MOS(Complementary MOS:CMOS)から成るCMOSイメージセンサ、電荷結合素子(Charge-Coupled Device:CCD)から成るCCDイメージセンサ、光位置センサ(Position Sensitive Detector:PSD)等が挙げられる。
【0182】
本実施形態では、各受光素子56L、56Rは、CMOSイメージセンサを用いて構成されている。この場合、各受光素子56L、56Rは、反射光の受光位置ばかりでなく、その受光量分布(受光波形)を検出することができる。すなわち、CMOSイメージセンサを用いて各受光素子56L、56Rを構成した場合、各々の受光面には、少なくとも左右方向に画素が並ぶことになる。この場合、各受光素子56L、56Rは、画素毎に信号を読み出して増幅し、外部に出力することができる。各画素における信号の強度は、反射光が受光面上でスポットを形成したときに、そのスポットにおける反射光の強度に基づき決定される。
【0183】
なお、CMOSイメージセンサのように、受光量分布(受光波形)を検出可能な素子を用いて各受光素子56L、56Rを構成した場合、各受光素子56L、56Rにおける受光量の大きさは、測距光の強度、すなわち測距光出射部5Aから出射される測距光の強度(以下、これを「投射光量」ともいう)と、画素毎に信号を増幅する際のゲイン(以下、これを「受光ゲイン」ともいう)と、を用いて調整することができる。また、ゲインの他にも、各受光素子56L、56Rにおける露光時間を用いて調整することができる。
【0184】
本実施形態に係る一対の受光素子56L、56Rは、少なくとも、反射光の受光位置を示すピーク位置と、その反射光の受光量を検出することができる。受光量を示す指標としては、例えば、反射光の受光量分布における、ピークの高さを用いることができる。これに代えて、受光量分布の合算値、平均値、積分値を用いてもよい。
【0185】
また、反射光の受光位置を示す指標としては、本実施形態では受光量分布のピーク位置(スポットのピーク位置)を用いているが、これに代えて、受光量分布の重心位置を用いてもよい。
【0186】
受光レンズ57は、筐体10の内部において一対の受光素子56L、56Rそれぞれの光軸が通過するように配置されている。受光レンズ57はまた、下流側合流機構35と一対の受光素子56L、56Rとを結ぶ光路の途中に設けられており、下流側合流機構35を通過した反射光を、一対の受光素子56L、56Rそれぞれの受光面に集光させることができる。
【0187】
受光レンズ57は、レーザ光走査部4へ戻った反射光を集光し、各受光素子56L、56Rの受光面上に反射光のスポットを形成させる。各受光素子56L、56Rは、そうして形成されたスポットのピーク位置と、受光量を示す信号を距離測定部103に出力する。
【0188】
レーザ加工装置Lは、基本的には、受光素子56L、56R各々の受光面における反射光の受光位置(本実施形態ではスポットのピークの位置)に基づいて、ワークWの表面までの距離を測定することができる。距離の測定手法としては、いわゆる三角測距方式が用いられる。
【0189】
-距離の測定手法について-
図9は、三角測距方式について説明する図である。
図9においては、測距ユニット5のみが図示されているが、以下の説明は、前述のようにレーザ光走査部4を介して測距光が出射される場合にも共通である。
【0190】
図9に例示するように、測距光出射部5Aにおける測距光源51から測距光が出射されると、その測距光は、ワークWの表面に照射される。ワークWによって測距光が反射されると、その反射光(特に拡散反射光)は、仮に正反射の影響を除いたならば、略等方的に伝搬することになる。
【0191】
そうして伝搬する反射光には、受光レンズ57を介して受光素子56Lに入射する成分が含まれるものの、マーカヘッド1とワークWとの距離に応じて、その入射光の受光素子56Lへの入射角が増減することになる。受光素子56Lへの入射角が増減すると、その受光面56aにおける受光位置が変位することになる。
【0192】
このように、マーカヘッド1とワークWとの距離と、受光面56aにおける受光位置と、は所定の関係を以て関連付いている。したがって、その関係を予め把握しておくとともに、例えばマーカコントローラ100に記憶させておくことで、受光面56aにおける受光位置から、マーカヘッド1とワークWとの距離を算出することができる。このような算出方法は、いわゆる三角測距方式を用いた手法に他ならない。
【0193】
すなわち、前述の距離測定部103が、測距光受光部5Bにおける測距光の受光位置に基づいて、三角測距方式によりレーザ加工装置LからワークWの表面までの距離を測定する。
【0194】
具体的に、前述の条件設定記憶部102には、受光面56aにおける受光位置と、マーカヘッド1からワークWの表面までの距離との関係が予め記憶されている。一方、距離測定部103には、測距光受光部5Bにおける測距光の受光位置、詳しくは測距光の反射光が、受光面56a上に形成するスポットのピークの位置を示す信号が入力される。
【0195】
距離測定部103は、そうして入力された信号と、条件設定記憶部102が記憶している関係と、に基づいて、ワークWの表面までの距離を測定する。そうして得られた測定値は、例えば制御部101に入力されて、制御部101によるZスキャナ33等の制御に用いられる。
【0196】
例えば、レーザ加工装置Lは、ワークWの表面のうち、マーカヘッド1による加工対象となる部位(印字点)を自動又は手動で決定する。続いて、レーザ加工装置Lは、印字加工を実行するに先だって、各印字点(より正確には、印字点周辺に設定した測距点)までの距離を測定するとともに、測定された距離に見合う焦点位置となるようにZスキャナ33の制御パラメータを決定する。レーザ加工装置Lは、そうして決定された制御パラメータに基づいてZスキャナ33を作動させた後に、近赤外レーザ光によってワークWに印字加工を施す。
【0197】
以下、レーザ加工システムSの具体的な使用方法について説明をする。
【0198】
<レーザ加工システムSの使用方法について>
図10は、レーザ加工システムSの使用方法を示すフローチャートである。また、
図11は、印字設定、サーチ設定及び測距設定の作成手順を例示するフローチャートであり、
図12は、加工領域R1と設定面R4の関係を例示する図であり、
図13は、表示部801における表示内容を例示する図である。
【0199】
さらに、
図14A~
図14Dは、サーチ条件の具体的な設定手順を例示する図であり、
図15A~
図15Dは、測距条件の具体的な設定手順を例示する図であり、また、
図16は、レーザ加工装置Lの運用手順を例示するフローチャートであり、
図17A~
図17Dは、パターンサーチの具体的な手順を例示する図であり、
図18は、台形補正について説明する図であり、
図19は、ワークの位置ズレと焦点位置との関係について説明する図である。
【0200】
レーザマーカとして構成されたレーザ加工装置Lを備えたレーザ加工システムSは、例えば、工場の製造ライン上に設置して運用することができる。その運用に際しては、まず、製造ラインの稼働に先だって、そのラインを流れることになるワークWの設置位置、並びに、そのワークWに照射する近赤外レーザ光及び測距光の出力等の条件設定を作成する(ステップS1)。
【0201】
このステップS1において作成された設定内容は、マーカコントローラ100、及び/又は、操作用端末800等に転送されて記憶されたり、作成直後にマーカコントローラ100が読み込んだりする(ステップS2)。
【0202】
そして、製造ラインの稼働に際して、マーカコントローラ100は、予め記憶されていたり、作成直後に読み込まれたりした設定内容を参照する。レーザ加工装置Lは、参照された設定内容に基づいて運用され、ライン上を流れる各ワークWに対して印字加工を実行する(ステップS3)。
【0203】
(各設定の具体的な作成手順)
図11は、
図10のステップS1における具体的な処理を例示している。
図11に例示するように、本実施形態では、印字設定に関連した制御プロセスと、サーチ設定に関連した制御プロセスと、測距設定に関連した制御プロセスと、が順番に実行されるようになっている。各制御プロセスは、互いに重なり合うことなく、独立したプロセスとして構成されている。
【0204】
まず、ステップS11において、レーザ加工装置Lに内蔵されている同軸カメラ6又は広域カメラ7は、加工領域R1の少なくとも一部を含んだ撮像画像Pwを生成する。同軸カメラ6又は広域カメラ7によって生成された撮像画像Pwは、操作用端末800に出力される。
【0205】
操作用端末800における表示部801は、加工領域R1に対応付けられた設定面R4を表示するとともに、その設定面R4に撮像画像Pwを重ねて表示する(
図13参照)。これにより、表示部801における設定面R4上に規定される座標系(印字座標系)と、撮像画像Pw上に規定される座標系(カメラ座標系)と、を対応付けることができる。例えば、ユーザが撮像画像Pwを見ながら印字点を指定することによって、設定面R4を介して加工領域R1上に印字することができるようになる。
【0206】
-印字設定の作成-
続くステップS12において、設定部107が加工条件を設定する。設定部107は、条件設定記憶部102等における記憶内容を読み出したり、操作用端末800を介した操作入力等を読み込んだりすることで、加工条件を設定する。
【0207】
加工条件には、印字内容等を示す印字パターン(マーキングパターン)Pm、及び、この印字パターンPmの位置を示す印字ブロックBが含まれる。印字ブロックB、印字パターンPmのレイアウト、サイズ、回転姿勢等の調整に用いることができる。また、印字ブロックBは、後述の測距位置Iと紐付けられて用いられる。
【0208】
表示部801は、印字パターンPm及び印字ブロックBを撮像画像Pwと重ね合わせて表示することができる。例えば
図13では、ワークWの表面上に、「123」という数字からなる印字パターンPmと、これを取り囲む矩形状の印字ブロックBと、が設定面R4上に配置されており、表示部801は、そうして配置された印字パターンPm及び印字ブロックBを、撮像画像Pwと重ね合わせて表示する。
【0209】
なお、印字パターンPmは「加工パターン」の例示であり、印字ブロックBは「加工ブロック」の例示である。「印字パターン」及び「印字ブロック」という名称は、便宜的なものに過ぎず、その用途を限定することを意図したものではない。
【0210】
また、図示は省略したが、設定面R4上に複数のワークWを表示してもよいし、
図13に例示するように、1つのワークWのみを表示してもよい。また、1つのワークW上に、複数の印字ブロックBを配置してもよい。印字パターンPmについても、例えばQRコード(登録商標)等、文字列以外のパターンを用いることができる。
【0211】
図11のステップS12に戻ると、同ステップでは、例えばユーザが手動で印字ブロックBを作成し、その印字ブロックBを設定面R4上に配置する。前述のように設定面R4と撮像画像Pwとが関連付いているため、ユーザは、撮像画像Pwを視認しながら印字ブロックBを配置することができる。
【0212】
そうして、1つ又は複数の印字ブロックBが配置されると、ユーザは、印字ブロックB毎に印字パターンPmを決定する。印字パターンPmの決定は、例えば、ユーザが操作部802を操作するとともに、その際の操作入力に基づいて、操作部802がマーカコントローラ100に印字パターンPmを入力することによって実行される。
【0213】
設定部107は、そうして配置された印字ブロックB、及び、印字ブロックB毎に決定された印字パターンPmを読み込んで、それを加工条件として設定する。本実施形態に係る設定部107は、設定面R4上での印字ブロックBの座標(印字座標系での座標)等を、条件設定記憶部102等に一時的に又は継続的に記憶させる。
【0214】
前述のように、設定面R4は、撮像画像Pwと重ね合わせて表示されることから、本実施形態に係る設定部107は、撮像画像Pwと重ね合わせるようにして印字ブロックBを設定することになる。設定部107は、本実施形態における「加工ブロック設定部」の例示である。
【0215】
なお、加工条件には、近赤外レーザ光に係る条件(以下、「レーザ条件」という)も含まれる。このレーザ条件には、近赤外レーザ光の出射位置、近赤外レーザ光の目標出力(レーザパワー)、レーザ光走査部4による近赤外レーザ光の走査速度(スキャンスピード)、近赤外レーザ光の繰り返し周波数(パルス周波数)、近赤外レーザ光のレーザスポットを可変にするか否か(スポット可変)、及び、近赤外レーザ光が印字パターンPmをなぞる回数(印字回数)のうちの少なくとも1つが含まれる。
図13の右下に表示されるメニューD1に例示するように、こうした加工条件は、印字ブロックB毎に設定することができる。
【0216】
-サーチ設定の作成-
また、一般に、製造ラインを稼働させた際に順次加工されることになる各ワークWには、それぞれX方向及びY方向(XY方向)に位置ズレが生じることになる。本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、種々の手法を用いることで、そうした位置ズレを補正することができる。
【0217】
そこで、ステップS12から続くステップS13では、設定部107は、XY方向の位置ズレを補正するための条件設定(サーチ設定)を作成する。本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、XY方向における位置ズレを補正するための手法として、パターンサーチを用いるように構成されている。
【0218】
パターンサーチを用いるべく、設定部107は、パターンサーチに係る条件(サーチ条件)として、ワークWの位置を特定するためのパターン領域Rpと、パターン領域Rpの移動範囲として定義されるサーチ領域Rsと、を撮像画像Pw上に設定する。なお、パターン領域Rpは、本実施形態における「補正用領域」の例示である。
【0219】
また、マーカコントローラ100は、パターンサーチを実際に行うべく、パターン領域Rp内での撮像画像Pwの画像情報(特徴量)を抽出する特徴量抽出部105を備えている(
図2参照)。本実施形態に係る特徴量抽出部105は、撮像画像Pwの画像情報として、パターン領域Rp内での撮像画像Pw自身を切り出す。設定部107は、特徴量抽出部105によって切り出された画像を、パターン画像Ppに設定する。条件設定記憶部102は、設定部107により設定されたパターン画像Ppを記憶する(
図14D参照)。条件設定記憶部102は、本実施形態における「記憶部」の例示である。
【0220】
【0221】
まず、ステップS13における1番目のサブステップ(ステップS131)では、パターンサーチによるサーチ対象とする印字ブロックBを決定する。具体的に、
図14Aに示す例では、ダイアログD2上でプルダウン操作を実行することで、全ての印字ブロックBをサーチ対象とするか、あるいは、特定の印字ブロックBをサーチ対象とするか、を選択することができる。
【0222】
続いて、ステップS13における2番目のサブステップ(ステップS132)では、設定部107が、撮像画像Pw上にパターン領域Rpを設定する。具体的に、
図14Bに示す例では、撮像画像Pw上でドラッグ操作等を実行することで、各印字ブロックBに対応したパターン領域Rpが設定される。
【0223】
なお、
図14Bに示す例では、印字パターンPmを取り囲むようにパターン領域Rpが設定されているが、そうした設定には限定されない。印字パターンPmを囲わないようにパターン領域Rpを設定することもできる。
【0224】
また、特徴量抽出部105は、パターン領域Rp内における撮像画像Ppを切り出して、それを画像情報(パターン画像Pp)に設定する(
図14Dを参照)。そうして設定されたパターン画像Ppは、設定部107等へ入力される。
【0225】
続いて、ステップS13における3番目のサブステップ(ステップS133)では、設定部107が、撮像画像上にサーチ領域Rsを設定する。具体的に、
図14Cには、ダイアログD3上に設けられる入力欄M1に数値を入力することで、その入力欄M1に入力された数値の分だけパターン領域Rpを横方向及び縦方向に拡張し、そうして拡張された領域をサーチ領域Rsに設定するものが例示されている。設定されたサーチ領域Rsは、条件設定記憶部102等に記憶される。例えば、
図14Cに示されるサーチ領域Rsは、パターン領域Rpを縦横に5mmほど拡張したものとなっている。
【0226】
また、
図14Dに例示するように、表示部801上にダイアログD4を表示することで、画像情報としてのパターン画像Ppを確認するとともに、サーチ設定をさらに詳細に設定することができる。
【0227】
例えば、ユーザは、ダイアログD4上でサーチ設定M2なるプルダウンメニューを操作することで、パターン領域Rp及びパターン画像Ppを縮小し、より高速にパターンサーチを実行するモード(速度優先モード)を選択したり、パターン領域Rp及びパターン画像Ppを縮小せずに、より高精度にパターンサーチを実行するモード(精度優先モード)を選択したり、図例のように、速度優先モードよりも若干精度を優先しつつも、精度優先モードよりも若干速度を優先する中間的なモード(バランスモード)を選択したり、することができる。
【0228】
このようにして設定されたサーチ条件は、サーチ設定として条件設定記憶部102等に記憶される。サーチ設定の作成が完了すると、設定部107は、ステップS13からステップS14へ進む。
【0229】
-測距設定の測定-
また一般に、製造ラインを稼動させた際に順次加工されることになる各ワークWには、それぞれ、Z方向に位置ズレが生じることになる。そうした位置ズレは、近赤外レーザ光の焦点位置のズレを招くため望ましくない。本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、測距ユニット5を備えているため、ワークWの表面までの距離に基づいて、Z方向の位置ズレを検知することができる。これにより、Z方向の位置ズレ、ひいては焦点位置のズレを補正することができる。そのために、ステップS13から続くステップS14では、Z方向の位置ズレを補正するための条件設定(測距設定)を作成する。
【0230】
具体的に、このステップS14では、測距ユニット5に係る条件(測距条件)が決定される。本実施形態に係る設定部107は、測距条件として、少なくとも、マーカヘッド1からワークWの表面までの距離を測定するための測距位置Iを、撮像画像Pw上に設定する。この測距位置Iは、基本的にはワークWの表面と重なり合うように設定されるものであり、測距光が照射されるべき座標を示している。
【0231】
なお、設定部107は、複数の印字ブロックBが設定されている場合には、印字ブロックB毎に測距条件を設定することができる。この場合、設定部107は、各印字ブロックB内に測距位置Iを設定することができる(
図13の星印を参照)。これに代えて、設定部107は、各印字ブロックBの外部に測距位置Iを設定してもよい。
【0232】
【0233】
まず、ステップS14における1番目のサブステップ(ステップS141)では、距離の測定対象(測距対象)とする印字ブロックBを決定する。具体的に、
図15Aに示す例では、ダイアログD5上でプルダウン操作を実行することで、全ての印字ブロックBを測距対象とするか、特定の印字ブロックBを測距対象とするか、あるいは、測距対象を設定しないか(対象なし)を選択することができる。「対象なし」を選択した場合、測距こそ実施されるものの、その測定結果は、Z方向の位置補正には使用されないようになっている。
【0234】
また、
図15Aに示す例では、プルダウン操作を実行することで、距離(高さ)の測定に代えて、ワークWの傾きを検出することができる。ワークWの傾きを検出する場合、測距位置Iは、少なくとも3箇所にわたり設定される。3箇所にわたって距離を測定することで、ワークWの表面の傾きを検出することができる。レーザ加工装置Lは、Z方向におけるワークWの位置ズレに加えて、XY平面に対するワークWの傾きを補正することもできる。
【0235】
続いて、ステップS14における2番目のサブステップ(ステップS142)では、印字ブロックB毎に、設定部107が測距条件を設定する。具体的に、
図15Bに例示するように、ダイアログD6上で、印字ブロックBの識別番号(ブロック番号)を指定するパターンと、印字ブロックBとは無関係な任意座標を指定するパターンと、の2つのパターンから選択することができる。前者のパターンが選択された場合、設定部107は、指定された印字ブロックBの中央部を測距位置Iに設定する。一方、後者のパターンが選択された場合、設定部107は、ユーザが指定した座表を測距位置Iに指定する。
【0236】
続いて、ステップS14における3番目のサブステップ(ステップS143)では、設定部107が測距条件を自動的に調整する(
図15Cを参照)。具体的に、設定部107は、測距条件として、測距光出射部5Aにおける出射光量、測距光出射部5Aにおける投光時間、測距光受光部5Bにおける受光ゲイン、及び測距光受光部5Bにおける露光時間のうちの少なくとも1つを、印字ブロックB毎に自動的に調整する。
【0237】
また、
図15Dに例示するように、表示部801上にダイアログD7を表示することで、作成された測距条件を手動で変更したり、測距条件をさらに詳細に設定したり、することができる。
【0238】
例えば、ユーザは、ダイアログD7上で“高さ座標”M3なる項目に数字を入力することで、Z方向における基準の高さ(すなわち、Z方向における原点の座標)を変更することができる。
【0239】
このようにして設定された測距条件は、測距設定として条件設定記憶部102等に記憶される。測距設定の作成が完了すると、設定部107は、ステップS14からステップS15に進む。設定部107は、全ての設定が作成されたものとしてステップS15からリターンする。
【0240】
(印字加工の実行)
図16は、
図10のステップS3における具体的な処理を例示している。すなわち、
図16に示す処理は、製造ラインを稼働させたときに流れてくる各ワークWに対して順番に実行されるようになっている。
【0241】
まず、
図16に示す各ステップに先だって、
図10のステップS1と、
図11のステップS11~ステップS15と、を用いて説明したように、マーカコントローラ100は、所定のワークWについて、印字パターンPm及び印字ブロックB等の設定(印字設定)と、パターン画像Pp等の設定(サーチ設定)と、測距位置I等の設定(測距設定)と、を予め作成する(
図17Aも参照)。
【0242】
各設定の作成が完了することで、マーカコントローラ100は、
図16に例示した制御プロセスを実行可能な状態となる。この制御プロセスは、主なプロセスとして、XYトラッキング(XY方向におけるパターンサーチ)を実行するための制御プロセス(ステップS303~ステップS307)と、Zトラッキング(Z方向における高さ測定)を実行するための制御プロセス(ステップS308~ステップS312)と、を含んだ構成とされている。
【0243】
まず、
図16のステップS301において、マーカコントローラ100は、レーザ光走査部4を作動させる。マーカコントローラ100は、製造ラインを稼働させたときにワークWが運ばれてくると想定される場所に向けて、同軸カメラ6の撮像光軸A1を指向させる。なお、同軸カメラ6の代わりに広域カメラ7を用いる場合、ステップS301は不要となる。
【0244】
続くステップS302において、PLC902等からマーカコントローラ100にトリガ入力されると、パターン領域Rpをはじめとする種々の設定に用いたワークWとは異なる新たなワークW’が搬送される。
【0245】
ところで、印字パターンPmに対応した印字ブロックBは、設定面R4上で規定される座標系によって設定されている。また、最初のワークWに対して、後者のワークW’がXY方向に位置ズレする可能性がある。
図17Bに例示するように、XY方向に位置ズレが生じた場合、ワークW’上の所望の位置に、印字パターンPmを形成できなくなってしまう可能性がある。
【0246】
そこで、マーカコントローラ100は、前述した新たなワークW’に対し、パターンサーチと、そのサーチ結果に基づいたXY方向の位置補正と、を行うべく、位置補正部108を備えた構成とされている。
【0247】
この位置補正部108は、少なくともパターン領域Rpの設定に用いたワークWとは異なる新たなワークW’について、同軸カメラ6又は広域カメラ7を介して撮像画像Pw’を新たに生成する(
図17B参照)。
【0248】
位置補正部108は、新たに生成された撮像画像Pw’上で、特徴量抽出部105が抽出して条件設定記憶部102に記憶された画像情報(特徴量)を用いることにより、XY方向における新たなワークW’の位置ズレを検出する。
【0249】
具体的に、位置補正部108は、設定面R4上に設定されたサーチ領域Rsの範囲内で、新たに生成された撮像画像Pw’と重ね合わせるようにパターン領域Rpを移動させる(
図17Cを参照)。位置補正部108によるパターン領域Rpの移動と略同じタイミングで、特徴量抽出部105は、移動後のパターン領域Rp内における撮像画像Pw’の画像情報を新たに抽出する。特に、本実施形態に係る特徴量抽出部105は、移動後のパターン領域Rp内の画像を撮像画像Pw’から切り出して、それを新たに抽出された画像情報(特徴量)とする。
【0250】
位置補正部108は、最初のワークW上で予め抽出された画像情報(パターン画像Pp)と、新たなワークW’上で新たに抽出された画像情報と、を比較することで、2つの画像情報が他の領域に比して高く一致する領域を、新たに生成された撮像画像Pw上で見つけ出す。
【0251】
位置補正部108は、移動前のパターン領域Rpの座標(設定面R4上での座標)と、前述のように、2つの画像情報が他の領域に比して高く一致する領域の座標(設定面R4上での座標)と、の差分を、XY方向におけるワークW,W’の位置ズレとみなす。そうして検出された位置ズレに基づいて、設定面R4上で印字ブロックBを移動させることで、新たに搬送されたワークW’上の所望の位置に、印字パターンPmを形成することができるようになる。
【0252】
具体的に、ステップS302から続くステップS303において、マーカコントローラ100は、同軸カメラ6を介して撮像画像(カメラ画像)Pw’を生成し、生成された撮像画像Pw’を設定面R4と重ね合わせて表示する。
【0253】
そして、ステップS303から続くステップS304において、マーカコントローラ100は、サーチ対象とした印字ブロックBの各々について、サーチ設定(サーチ条件)を読み込む。
【0254】
それに続くステップS305において、マーカコントローラ100は、前述のように構成されたパターンサーチを実行する。パターンサーチを実行することで、印字設定、サーチ設定及び測距設定の作成に用いたワークWと、運用時に新たに搬送されてきたワークW’と、の間のXY方向における位置ズレが検出される。
【0255】
しかし、この時点では、ワークW,W’間のZ方向における位置ズレは解消されていない。Z方向において位置ズレが発生している場合(ワークWの高さが変化した場合)、同軸カメラ6における画角の広がり等に起因して、XY方向における位置ズレがさらに発生することになる。
【0256】
ゆえに、ステップS305で得られた検出結果に基づいて印字ブロックBを移動させるだけでは、ワークWの高さに起因したXY方向の位置ズレが残存することになる。
【0257】
そこで、ステップS305から続くステップS306では、位置補正部108は、ステップS305の検出結果に基づいて、XY方向における位置ズレを仮補正する。
【0258】
具体的に、位置補正部108は、該位置補正部108によって検出された位置ズレを減殺する方向に、設定面R4上に規定された印字座標系をシフトさせる。これにより、当初設定されたXY座標から、位置ズレが少なくとも部分的に減殺された仮のXY座標(仮座標)へと変換することができる。
【0259】
そして、XY座標を仮座標へと変換することで、変換前のXY座標を用いて設定されていた印字ブロックBの位置が、仮座標への変換に伴い移動することになる(
図17D参照)。
【0260】
ところで、前述のように、各印字ブロックBには測距位置Iが紐付いて設定されている。よって、ステップS306においてXY座標を仮座標へと変換すると、印字ブロックBの移動に伴って、測距位置Iも移動することになる。すなわち、位置補正部108は、設定部107により設定された測距位置Iに対応する新たなワークW’上での測距位置Iを補正する。
【0261】
このように、本実施形態に係る位置補正部108は、XY方向における位置ズレの検出結果に基づいて、ワークWと新たなワークW’について、印字ブロックBの位置と、測距位置Iと、を補正するように構成されている。以下、補正後の測距位置Iに符号I’を付す(
図17D参照)。
【0262】
そして、ステップS306から続くステップS307において、マーカコントローラ100は、サーチ対象とした全ての印字ブロックBについてパターンサーチが完了したか否かを判定し、その判定がYESの場合はステップS308へ進む一方、NOの場合はステップS303へ戻る。
【0263】
続くステップS308において、マーカコントローラ100は、測距対象とした印字ブロックBの各々について、測距設定(測距条件)を読み込む。
【0264】
それに続くステップS309において、走査制御部としての制御部101は、測距光が、補正後の測距位置I’に照射されるようにレーザ光走査部4を制御する。これにより、マーカヘッド1から仮座標系への変換を反映した測距位置I’までの距離を測定することができるようになる。
【0265】
それに続くステップS310において、距離測定部103は、測距ユニット5を作動させる。その際、測距光出射部5Aは、レーザ加工装置Lから新たなワークW’の表面までの距離を測定する。そして、測距光受光部5Bは、新たなワークW’の表面上で反射されてレーザ光走査部4を介して戻った測距光を受光する。これにより、マーカヘッド1から、位置補正部108により補正された測距位置I’までの距離、ひいては、その測距位置I’におけるワークW’の高さを測定する。
【0266】
それに続くステップS311において、マーカコントローラ100は、距離測定部103による測定結果に基づいて、測距位置I’におけるワークW’のZ座標を取得するとともに、Z方向におけるワークW’の位置ズレを検出する。この位置ズレは、取得されたZ座標と、Z方向における基準の高さ(原点の座標)と、の差分に基づいて検出することができる。
【0267】
マーカコントローラ100は、Z方向におけるワークW’の位置ズレに基づいて、Zスキャナ33の制御パラメータを取得する。ここで取得される制御パラメータは、Zスキャナ33が焦点位置を補正する際に用いられるパラメータ(Z座標、焦点位置の補正値)に相当する。
【0268】
そうして取得されたパラメータは、ワークW’への印字加工を実行する前に、制御部101によるZスキャナ33の制御に用いられる。すなわち、本実施形態に係るZスキャナ33は、ワークW’への近赤外レーザ光の照射に先だって、位置補正部108によって測距位置Iが補正された状態で、距離測定部103による測定結果に基づいて焦点位置を調整することができる。
【0269】
ステップS311から続くステップS312において、マーカコントローラ100は、ステップS311において検出されたZ方向における位置ズレに基づいて、XY座標を再び変換する。ここでの再変換には、パターンサーチによって検出されたXY方向の位置ズレと、ワークWの高さに起因したXY方向の位置ズレと、が両方とも考慮される。これにより、XY方向におけるワークW’の位置ズレを精度よく補正することができ、ワークW’上の所望の位置に、印字パターンPmを形成することができるようになる。
【0270】
そして、ステップS312から続くステップS313において、マーカコントローラ100は、全ての測距位置Iについて高さ測定が完了したか否かを判定し、その判定がYESの場合はステップS314へ進む一方、NOの場合はステップS308へ戻る。
【0271】
ステップS314において、位置補正部108は、近赤外レーザ光の出射位置をXYZ方向について補正する。このステップS314では、ワークWの高さの影響を加味したXY方向の位置補正と、ワークWの高さに基づいたZ方向の位置補正(すなわち、焦点位置の補正)と、が両方とも考慮される。
【0272】
そして、ステップS314から続くステップS315において、マーカコントローラ100は、マーカヘッド1を介してワークW’に対する印字加工を実行してリターンする。XYZ方向の位置ズレは既に補正されているため、制御部101は、位置補正部108によって検出された位置ズレを考慮した状態で2次元走査を行うことができる。
【0273】
なお、
図15Aを用いて説明したように、ワークWの傾きを検出するように設定した場合、少なくとも3つの測距位置Iについて高さ測定が実行される。この場合、前述したステップS314において、XYZ方向の位置補正に加えて、傾きを減殺するための補正(傾き補正)が実行される。この傾き補正は、例えば、撮像画像Pw’の台形補正を用いて実行することができる。
【0274】
例えば、
図18に示すように、測距位置I1,I2,I3,I4について高さ測定し、その測定結果に基づいて、各測距位置I1~I4を四隅とするように台形補正すればよい。この場合、測距位置I1,I2,I3,I4が、それぞれ、補正位置I1’,I2’,I3’,I4’に変換される。
【0275】
<位置補正と焦点距離との関係について>
ところで、XY方向における位置補正のように、2次元平面上での位置補正は、高さを有するワークWを加工対象とした場合に加工精度が低下する可能性がある。
【0276】
例えば、近赤外レーザ光の焦点位置は、レーザ光走査部4によって2次元走査した場合に、ワークW上に設定される加工領域R1の中央付近と、その加工領域R1の端付近と、で相違する。具体的に、加工領域R1の中央部から端に向かうにつれて、焦点位置が加工領域R1から離間することになる。そのため、2次元平面上での位置補正では、その補正後に焦点位置がずれる可能性がある。このことは、加工精度を高く保つには不都合である。
【0277】
例えば、
図19に例示するように、焦点位置Dfが最適化された第1ワークW1と、その第1ワークW1に対してXY方向に位置ズレした第2ワークW2と、に近赤外レーザ光を照射する場合を考える。
【0278】
ここで、第2ワークW2におけるXY方向の位置ズレを補正した結果、近赤外レーザ光の照射位置がS1からS2へと移動したものとすると、第1ワークW1について最適化されていた焦点位置Dfが、第2ワークW2の表面からΔDだけずれてしまうことになる。焦点位置がずれてしまっては、加工精度を高く保つには不都合である。
【0279】
それに対し、本実施形態によれば、レーザ加工装置Lは、
図16のステップS306に例示するように、位置補正部108を介してワークW’のXY方向における位置ズレを検出するとともに、その検出結果に基づいて測距位置Iを補正することができる。そして、レーザ加工装置Lは、
図16のステップS311に例示するように、ワークW’へのレーザ光の照射に先だって、位置補正部108により測距位置Iが補正された状態で、距離測定部103による測定結果に基づいて焦点位置を補正する。
【0280】
このように、ワークW’の位置ズレが補正された状態で焦点位置を調整するように構成することで、ワークW’が位置ズレした場合にあっても、その加工精度を高く保つことができる。
【0281】
また、
図16のステップS105に例示するように、制御部101は、位置ズレを考慮した状態で2次元走査を実行する。これにより、ワークW’の加工精度を高く保つ上で有利になる。
【0282】
また、
図17Dに例示するように、パターンンサーチのサーチ結果を用いて印字ブロックBの位置を補正することで、その印字ブロックBに紐付いた測距位置Iを補正することができる。これにより、ワークW’の加工精度を高く保つ上で有利になる。
【0283】
また、
図17A等に例示するように、印字ブロックB内に測距位置Iを設定することで、測距位置Iをより適切に設定し、ひいては、ワークW’の加工精度を高く保つ上で有利になる。
【0284】
《その他の実施形態》
前記実施形態では、特徴量抽出部105は、撮像画像Pwの画像情報として、パターン領域Rp内での撮像画像Pwそのものを用いるように構成されていたが、本開示は、この構成には限定されない。特徴量抽出部105は、撮像画像Pwの画像情報として、パターン領域Rp内での撮像画像Pwのエッジ情報を用いることもできる。
【0285】
また、前記実施形態では、印字ブロックB毎に測距位置Iが設定されていたが、測距位置Iの設定方法は、適宜変更することができる。例えば、印字ブロックBに対する相対座標として測距位置Iを設定してもよいし、パターン領域Rp又はサーチ領域Rsに対する相対座標として測距位置Iを設定してもよい。あるいは、印字ブロックB、パターン領域Rp及びサーチ領域Rsのいずれとも無関係な絶対座標として測距位置Iを設定することもできる。
【符号の説明】
【0286】
1 マーカヘッド
2 レーザ光出力部
3 レーザ光案内部
33 Zスキャナ(焦点調整部)
4 レーザ光走査部
5 測距ユニット
5A 測距光出射部
5B 測距光受光部
6 同軸カメラ(第1撮像部)
7 広域カメラ(第2撮像部)
100 マーカコントローラ
101 制御部(走査制御部)
102 条件設定記憶部(記憶部)
103 距離測定部
105 特徴量抽出部
107 設定部(加工ブロック設定部)
108 位置補正部
110 励起光生成部
A1 同軸カメラの撮像光軸
A2 広域カメラの撮像光軸
Pm 印字パターン(加工パターン)
B 印字ブロック(加工ブロック)
Pw 撮像画像
Pw’ 新たに生成された撮像画像
R1 加工領域
I 測距位置
I’ 補正された測距位置
Rp パターン領域(補正用領域)
L レーザ加工装置
S レーザ加工システム
W,W’ ワーク(被加工物)