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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】風味保持剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20231219BHJP
   A23L 7/10 20160101ALN20231219BHJP
   A23L 7/109 20160101ALN20231219BHJP
   A23L 19/00 20160101ALN20231219BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20231219BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L7/10 E
A23L7/109 Z
A23L19/00 Z
A23L35/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020005609
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021112138
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 敦嗣
(72)【発明者】
【氏名】東條 裕一
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕司
(72)【発明者】
【氏名】小林 泰行
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-111576(JP,A)
【文献】特開平09-117263(JP,A)
【文献】特開平10-036256(JP,A)
【文献】特開2017-153432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)鳥獣類の骨含有粉末、(b)酵母細胞壁及び(c)多孔質デンプンを含有することを特徴とする風味保持剤。
【請求項2】
食品に(a)鳥獣類の骨含有粉末、(b)酵母細胞壁及び(c)多孔質デンプンを添加することを特徴とする食品の風味保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品に用いる風味保持剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品において風味の低下を引き起こす要因としては、主に該食品に含まれる風味成分自体の変質又は劣化、該食品からの風味成分の散逸等が挙げられる。このうち、風味成分自体の変質又は劣化に起因する風味の低下を抑制する方法としては、酸化防止剤を添加する方法等が知られているが、このような方法では必ずしも風味成分の散逸に起因する風味の低下までは抑制することができない。
【0003】
ところで、惣菜類や冷凍食品等、加熱調理済みの状態で流通させる食品においては、雑菌類の繁殖を抑制し、安全性及び品質を維持するために、減圧(真空)冷却処理が行われる場合がある。減圧冷却処理は、冷却装置内部を減圧状態にすることで食品に含まれる水分を気化させ、その気化熱を利用して該食品を冷却する方法であり、これによれば食品を短時間で効率的に冷却することができるため、雑菌類の繁殖を抑制するのに有用である。一方で、食品を減圧冷却処理すると風味成分が散逸してしまい、該食品の風味が著しく低下しやすいという問題があった。
【0004】
風味成分の散逸に起因する風味の低下を抑制する方法としては、例えば、植物の細胞組織から分離され、140メッシュ(140mesh;USA)を通過する植物由来固形分からなることを特徴とする風味保持材(特許文献1)、(1)植物を搾汁して搾汁液を得る工程、(2)前記搾汁液から遠心分離により沈殿物を得る工程、および(3)前記沈殿物から植物組織の微粉砕物を得る工程、を含む、風味保持材の製造方法(特許文献2)、シクロデキストリンおよび増粘性多糖類を含む、香気または香味増強用組成物(特許文献3)等を添加する方法が提案されている。
【0005】
しかし、これらの方法でも食品を減圧冷却処理した場合における著しい風味成分の散逸及び風味の低下を抑制することは難しい。そこで、減圧冷却処理にも耐え得る、新たな食品の風味保持方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-153743号公報
【文献】特開2017-12173号公報
【文献】特開2019-154430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、食品を減圧冷却処理する場合等、風味成分の散逸に起因する風味の低下が起こりやすい場合においても、該食品の風味を保持することのできる風味保持剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、食品に対し、鳥獣類の骨含有粉末、酵母細胞壁及び多孔質デンプンを添加することにより、該食品を減圧冷却処理した場合であっても風味が保持されることを見出し、この知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記(1)及び(2)からなっている。
(1)(a)鳥獣類の骨含有粉末、(b)酵母細胞壁及び(c)多孔質デンプンを含有することを特徴とする風味保持剤。
(2)食品に(a)鳥獣類の骨含有粉末、(b)酵母細胞壁及び(c)多孔質デンプンを添加することを特徴とする食品の風味保持方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る風味保持剤は、食品に添加することにより、風味成分の散逸を抑制し、該食品本来の風味を保持することができる。
本発明に係る風味保持剤を添加した食品は、減圧冷却処理に供した場合であっても風味が低下しにくい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る風味保持剤(以下「本発明の風味保持剤」ともいう)は、少なくとも(a)鳥獣類の骨含有粉末、(b)酵母細胞壁及び(c)多孔質デンプン(以下それぞれ「(a)成分」、「(b)成分」、「(c)成分」ともいう)を含有する。
【0012】
本発明における(a)成分である鳥獣類の骨含有粉末は、食肉用の鳥獣類から副産物として得られる骨を含有する粉末をいう。該粉末は、鳥獣類の骨のみを粉末化してなるものであってもよく、本発明の効果を妨げない範囲で、他の任意の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、賦形剤(例えば、デキストリン、乳糖、加工デンプン等)等が挙げられる。なお、本発明の(a)成分100質量%中に占める鳥獣類の骨の含有量は、例えば、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。
【0013】
前記鳥獣類の種類に特に制限はなく、例えば、鶏、アヒル、七面鳥等の家禽類、カモ、キジ等の野鳥類、牛、豚、馬、ヒツジ、ヤギ等の家畜類、イノシシ、シカ等の獣類等のいずれであってもよいが、骨の入手が容易で、かつ、粉砕処理が容易である点から家禽類が好ましく、とりわけ鶏が好ましい。
【0014】
鳥獣類の骨の部位に特に制限はなく、例えば、頭骨、椎骨、肋骨、脛骨、大腿骨、中手骨、指骨等のいずれであってもよい。また、鳥獣類の骨としては、これら各部位の骨に肉が付着した、いわゆる「がら」を使用してもよい。
【0015】
本発明の(a)成分の製造方法に特に制限はなく、例えば、前記鳥獣類の骨を乾式粉砕、湿式粉砕等、公知の方法で粉砕処理し、必要に応じて乾燥処理して粉末化することにより製造することができる。乾燥処理を行う際には、必要に応じて賦形剤(例えば、デキストリン、乳糖、加工デンプン等)等を混合してもよい。なお、鳥獣類の骨として「がら」を使用する場合、例えば、骨に肉が付着した状態のまま粉砕処理してもよく、粉砕処理の前に該「がら」を加熱処理及び/又はプロテアーゼ等のタンパク質分解酵素を用いて酵素処理し、骨に付着した肉を軟化又は分解して、これを除去してから粉砕処理してもよく、該軟化又は分解した肉と共に粉砕処理してもよい。
【0016】
本発明の(a)成分の粒度に特に制限はないが、例えば、目開き840μmの篩を通過し、目開き150μmの篩を通過しない粒度であることが好ましく、目開き840μmの篩を通過し、目開き350μmの篩を通過しない粒度であることがより好ましい。
【0017】
本発明の風味保持剤中の前記(a)成分の含有量に特に制限はないが、例えば、該剤100質量%中、1~98質量%、好ましくは2~90質量%、より好ましくは5~80質量%、さらに好ましくは10~70質量%である。
【0018】
本発明における(b)成分である酵母細胞壁は、酵母菌体の外郭を成す細胞壁部分であり、通常、酵母を熱水抽出法、酸又はアルカリ分解法、自己消化法、機械的破砕法、酵素分解法、凍結融解法等のいずれか一つ以上の公知の方法で処理することにより、酵母エキスその他の菌体内成分を抽出した後の残渣として得ることができる。
【0019】
酵母細胞壁の原料となる酵母の種類としては、食用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、ビール酵母、パン酵母、清酒酵母、ワイン酵母、トルラ酵母等が挙げられる。
【0020】
酵母細胞壁の性状に特に制限はないが、本発明の効果を十分に発揮する観点から、粉末状を呈するものが好ましい。
【0021】
酵母細胞壁としては、例えば、モイステックスSTD(商品名;富士食品工業社製)、KR酵母(商品名;三菱商事ライフサイエンス社製)、Y501(商品名;Biospringer社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0022】
本発明の風味保持剤中の前記(b)成分の含有量に特に制限はないが、例えば、該剤100質量%中、1~98質量%、好ましくは2~90質量%、より好ましくは5~80質量%、さらに好ましくは10~70質量%である。
【0023】
本発明における(c)成分である多孔質デンプンは、デンプンの粒子の表面に無数の微細孔を形成させたものをいい、通常、デンプンの粒子に酵素を作用させることにより製造することができる。
【0024】
多孔質デンプンの原料となるデンプンの種類としては、食用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、とうもろこしデンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、甘藷デンプン等が挙げられるほか、これらデンプンを分解したデキストリン、粉末水飴等のデンプン分解物であってもよい。
【0025】
多孔質デンプンとしては、例えば、パインフロー(商品名;松谷化学工業社製)、パインフローS(商品名;松谷化学工業社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0026】
本発明の風味保持剤中の前記(c)成分の含有量に特に制限はないが、例えば、該剤100質量%中、1~98質量%、好ましくは2~90質量%、より好ましくは5~80質量%、さらに好ましくは10~70質量%である。
【0027】
本発明の風味保持剤の性状に特に制限はないが、本発明の効果を十分に発揮する観点から、また安定性や使用の簡便さの面から常温(25℃)で粉末状であることが好ましい。
【0028】
本発明の風味保持剤の製造方法に特に制限はなく、前記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を均一に混合すればよい。混合には公知の混合機(例えば、リボンミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー、V型混合機等)等を用いることができる。なお、本発明の風味保持剤を予め一剤化せず、食品に対して前記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を別々に加える方法も本発明の一つの形態である。
【0029】
本発明の風味保持剤は、前記(a)成分、(b)成分及び(c)成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の任意の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、賦形剤(例えば、デキストリン、乳糖、加工デンプン等)、基礎調味料(例えば、食塩、砂糖等)、旨味調味料(例えば、L-グルタミン酸ナトリウム等)、タンパク加水分解物、食用エキス(例えば、畜肉エキス、野菜エキス、酵母エキス等)、香辛料、節類、野菜類(例えば、粉末野菜等)、果実類(例えば、粉末果実等)、動植物油脂(例えば、サラダ油、ラード等)、乳化剤(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等)、リン酸塩(例えば、リン酸カルシウム等)、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム等)、グルコン酸塩(例えば、グルコン酸ナトリウム等)、色素等が挙げられる。
【0030】
本発明の風味保持剤は、食品に添加して使用することにより、該食品に含まれる風味成分の散逸を抑制し、その風味を保持することができる。
【0031】
本発明の風味保持剤の添加対象となる食品に特に制限はなく、例えば、野菜炒め、肉炒め、焼きそば、焼きうどん、焼きビーフン、炒飯、ピラフ等の炒め物類、煮魚、筑前煮等の煮物類、焼き鳥、焼き肉、焼き魚、グラタン、ドリア等の焼き物類、コロッケ、メンチカツ、唐揚げ等の揚げ物類等が挙げられる。
【0032】
本発明の風味保持剤を食品に添加する方法に特に制限はなく、例えば、食品の製造工程において原材料に本発明の風味保持剤を混合する方法、食品の製造後に粉末状の本発明の風味保持剤を振りかける方法等により添加することができる。ただし、本発明の風味保持剤は食品に含まれる風味成分の散逸を抑制することにより該食品の風味を保持するものであるため、本発明の風味保持剤を食品に添加するタイミングとしては、該食品に風味成分の散逸を引き起こしやすい処理を行う前であることが好ましい。そのような処理としては、例えば、減圧冷却処理が挙げられる。即ち、本発明の風味保持剤は、その製造工程中に減圧冷却処理工程を含む食品に対し、減圧冷却処理の前に添加して、減圧冷却処理に伴う風味の低下を抑制する目的で使用することが好ましい。従って、食品に対して本発明の風味保持剤を添加する工程の後に、該食品を減圧冷却処理する工程を含む食品の製造方法も本発明の一つの形態となり得る。
【0033】
本発明の風味保持剤の食品に対する添加量は、該食品が呈する風味の強さ及び質、該食品の製造方法、目的とする風味保持効果の程度等により異なるため一様ではないが、例えば、加工食品の原材料に混合して添加する場合、該加工食品の原材料の合計100質量部に対して0.01~10質量部、好ましくは0.05~5.0質量部、より好ましくは0.1~2.0質量部、さらに好ましくは0.2~1.0質量部である。
【0034】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0035】
[鶏骨含有粉末の製造1]
鶏がら360gと水450gを耐熱瓶に入れ、70℃まで加熱した。その後、55℃まで冷却し、ここにプロテアーゼ(商品名:オリエンターゼ90N;エイチビィアイ社製)0.015gを水1.5gに溶いたものを加え、50~55℃に保温しながら、スリーワンモータ(商品名;型式FBL600;新東科学社製)を使用して300rpmで30分間攪拌し、酵素処理した。その後、90℃まで加熱して酵素を失活させ、オートクレーブ(型式:LSX-700;トミー精工社製)を使用して120℃で3時間加圧加熱した後、ミキサー(商品名:VITA-PREP3;Vitamix社製)を使用して目盛り7の強さで1分間粉砕した。これに180gの賦形剤(商品名:スタビローズK;酸化デンプン;松谷化学工業社製)を混合し、これをバットに薄くのばし、80℃の恒温槽で50分間乾燥した後、乳鉢で粉砕した。該粉砕物を目開き500μmの篩にかけて通過分を回収し、鶏骨含有粉末Aを約300g得た。
【0036】
[鶏骨含有粉末の製造2]
寸胴鍋に、鶏がら240gと水300gを入れ、70℃まで加熱した。その後、55℃まで冷却し、ここにプロテアーゼ(商品名:オリエンターゼ90N;エイチビィアイ社製)0.01gを水1gに溶いたものを加え、50~55℃に保温しながら、スリーワンモータ(商品名;型式:FBL600;新東科学社製)を使用して300rpmで30分間攪拌し、酵素処理した。その後、90℃まで加熱して酵素を失活させた後、常温まで冷却し、目開き840μmの篩にかけ、蒸留水で十分に洗い流して残った固形分を回収した。該固形分を80℃の恒温槽で50分間乾燥した後、乳鉢で粉砕した。該粉砕物を目開き500μmの篩にかけて通過分を回収し、鶏骨含有粉末Bを約50g得た。
【0037】
[風味保持剤の調製]
(1)原材料
1)鶏骨含有粉末
1-1)鶏骨含有粉末A
1-2)鶏骨含有粉末B
2)酵母細胞壁
2-1)酵母細胞壁A(商品名:モイステックスSTD;富士食品工業社製)
2-2)酵母細胞壁B(商品名:KR酵母;三菱商事ライフサイエンス社製)
3)多孔質デンプン
3-1)多孔質デンプンA(商品名:パインフロー;松谷化学工業社製)
3-2)多孔質デンプンB(商品名:パインフローS;松谷化学工業社製)
【0038】
(2)原材料の配合
前記原材料を用いて調製した風味保持剤1~11の配合組成を表1に示した。このうち、風味保持剤1~5は本発明の実施例であり、風味保持剤6~11はそれらに対する比較例である。
【0039】
【表1】
【0040】
(3)風味保持剤の調製方法
表1に示した配合割合に従って原材料をフードプロセッサー(型式:MK-K48P;パナソニック社製)に量り取り、2900rpmで1分間攪拌及び混合し、風味保持剤1~8各200gを得た。なお、風味保持剤9~11は原材料が1種類のみであるため、前記操作は行わず、該原材料そのものを風味保持剤として必要量量り取って使用した。
【0041】
[野菜炒めにおける評価]
(1)原材料
1)もやし
2)キャベツ(1辺30mm程度の正方形にカットしたもの)
3)タマネギ(5mm幅に薄切りしたもの)
4)ニンジン(幅30mm、長さ10mm、厚さ5mm程度の短冊状にカットしたもの)
5)エビ(冷凍小エビを解凍したもの)
6)豚バラ肉(20mm幅にカットしたもの)
7)ラード
8)食塩
9)風味保持剤(前記風味保持剤1~11)
【0042】
(2)野菜炒めの作製方法
<野菜炒め1~11>
1)ステンレス製のフライパンにラード10gを加え、家庭用コンロを用いて強火で90秒間加熱した。
2)前記フライパンにエビ50g及び豚バラ肉50gを加え、60秒間炒めた。
3)もやし100g、キャベツ40g、タマネギ40g及びニンジン40gを加え、60秒間炒めた。
4)表2に示す添加量に従って風味保持剤を添加し、さらに30秒間炒めた。
5)コンロの火を止め、食塩3gを加えてよくかき混ぜた後、これをバットに取り出して、野菜炒め1~11を得た。
【0043】
<野菜炒め12及び13>
もやし、キャベツ、タマネギ及びニンジンを加えた後、風味保持剤を添加せずに90秒間炒めた以外は、前記野菜炒め1~11と同様に処理して、野菜炒め12及び13を得た。
【0044】
【表2】
【0045】
(3)野菜炒めの冷却処理
得られた野菜炒め1~12について、減圧冷却装置(型式:CMJ-20;三浦工業社製)を用いて品温が10℃になるまで冷却した。
一方、野菜炒め13は前記減圧冷却処理は行わず、室温(25℃)で静置して放冷した。
【0046】
(4)官能評価
前記減圧冷却処理した野菜炒め1~12を室温(25℃)で60分間静置して野菜炒め13と同等の品温とした後、各野菜炒めの風味について官能評価を行った。評価は、風味保持剤を添加せずに減圧冷却処理を行った野菜炒め12及び減圧冷却処理を行わなかった野菜炒め13をそれぞれ対照とし、表3に示す評価基準に従って10名のパネラーで行い、評点の平均値を求め、下記の基準に従って記号化した。結果を表4に示す。
〔記号化基準〕
〇: 平均値4.0以上
△: 平均値2.0以上、4.0未満
×: 平均値2.0未満
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
表4の結果から明らかなように、本発明の実施例である風味保持剤1~5を添加した野菜炒め1~5は、減圧冷却処理を行ったにもかかわらず風味の評価結果がいずれも「〇」であり、減圧冷却処理を行わずに室温で放冷した野菜炒め13と遜色ない十分な風味が保持されていた。一方、比較例の風味保持剤6~11を添加した野菜炒め6~11は、いずれも結果が「△」又は「×」であり、野菜炒め13に比べて明らかに風味が劣っていた。
【0050】
[炒飯における評価]
(1)原材料
1)炊飯米
2)溶き卵
3)チャーシュー(商品名:本格工房焼豚;丸大食品社製;5mm角にカットしたもの)
4)ネギ(みじん切りにしたもの)
5)ラード
6)中華調味料(商品名:創味シャンタン;創味食品社製)
7)風味保持剤(前記風味保持剤1)
【0051】
(2)炒飯の作製方法
<炒飯1>
1)ステンレス製のフライパンにラード10gを加え、家庭用コンロを用いて強火で90秒間加熱した。
2)前記フライパンに溶き卵50gを加え、30秒間炒めた。
3)炊飯米200gを加え、60秒間炒めた。
4)ネギ20g、チャーシュー20g、中華調味料8g及び風味保持剤1.5gを加え、90秒間炒めた後、バットに取り出して、炒飯1を得た。
【0052】
<炒飯2及び3>
風味保持剤を添加しなかった以外は、前記炒飯1と同様に処理して、炒飯2及び3を得た。
【0053】
(3)炒飯の冷却処理
得られた炒飯1及び2について、減圧冷却装置(型式:CMJ-20;三浦工業社製)を用いて品温が10℃になるまで冷却した。
一方、炒飯3は前記減圧冷却処理は行わず、室温(25℃)で放冷した。
【0054】
(4)官能評価
前記減圧冷却処理した炒飯1及び2を室温(25℃)で60分間静置して炒飯3と同等の品温とした後、炒飯1の風味について官能評価を行った。評価は、風味保持剤を添加せずに減圧冷却処理を行った炒飯2及び減圧冷却処理を行わなかった炒飯3をそれぞれ対照とし、表5に示す評価基準に従って10名のパネラーで行い、評点の平均値を求め、下記の基準に従って記号化した。結果を表7に示す。
〔記号化基準〕
〇: 平均値4.0以上
△: 平均値2.0以上、4.0未満
×: 平均値2.0未満
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
表6の結果から明らかなように、本発明の実施例である風味保持剤1を添加した炒飯1は、減圧冷却処理を行ったにもかかわらず風味の評価結果が「〇」であり、減圧冷却処理を行わずに室温で放冷した炒飯3と遜色ない十分な風味が保持されていた。
【0058】
[ソース焼きそばにおける評価]
(1)原材料
1)焼きそば用蒸し麺(商品名:マルちゃん焼そば3人前;東洋水産社製)
2)粉末ソース(前記焼きそば用蒸し麺の付属品)
3)キャベツ(1辺30mm程度の正方形にカットしたもの)
4)豚バラ肉(20mm幅にカットしたもの)
5)ナタネサラダ油
6)水
7)風味保持剤(前記風味保持剤1)
【0059】
(2)ソース焼きそばの作製方法
<ソース焼きそば1>
1)ステンレス製のフライパンにナタネサラダ油10gを加え、家庭用コンロを用いて強火で30秒間加熱した。
2)前記フライパンに豚バラ肉30gを加え、30秒間炒めた。
3)キャベツ20gを加え、60秒間炒めた。
3)焼きそば用蒸し麺1食分(150g)及び水60gを加え、120秒間炒めた。
4)コンロの火を止めた後、粉末ソース1袋(10g)及び風味保持剤1gを加えてよくかき混ぜ、バットに取り出して、ソース焼きそば1を得た。
【0060】
<ソース焼きそば2及び3>
風味保持剤を添加しなかった以外は、前記ソース焼きそば1と同様に処理して、ソース焼きそば2及び3を得た。
【0061】
(3)ソース焼きそばの冷却処理
得られたソース焼きそば1及び2について、減圧冷却装置(型式:CMJ-20;三浦工業社製)を用いて品温が10℃になるまで冷却した。
一方、ソース焼きそば3は前記減圧冷却処理は行わず、室温(25℃)で放冷した。
【0062】
(4)官能評価
前記減圧冷却処理したソース焼きそば1及び2を室温(25℃)で60分間静置してソース焼きそば3と同等の品温とした後、ソース焼きそば1の風味について官能評価を行った。評価は、風味保持剤を添加せずに減圧冷却処理を行ったソース焼きそば2及び減圧冷却処理を行わなかったソース焼きそば3をそれぞれ対照とし、表7に示す評価基準に従って10名のパネラーで行い、評点の平均値を求め、下記の基準に従って記号化した。結果を表8に示す。
〔記号化基準〕
〇: 平均値4.0以上
△: 平均値2.0以上、4.0未満
×: 平均値2.0未満
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
表8の結果から明らかなように、本発明の実施例である風味保持剤1を添加したソース焼きそば1は、減圧冷却処理を行ったにもかかわらず風味の評価結果が「〇」であり、減圧冷却処理を行わずに室温で放冷したソース焼きそば3と遜色ない十分な風味が保持されていた。