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特許7405631貨幣処理装置、貨幣処理システム及び貨幣処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】貨幣処理装置、貨幣処理システム及び貨幣処理方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/24 20190101AFI20231219BHJP
   G07D 11/00 20190101ALI20231219BHJP
   G07D 11/26 20190101ALI20231219BHJP
   G07D 9/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G07D11/24
G07D11/00
G07D11/26
G07D9/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020015177
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021124737
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 早央里
(72)【発明者】
【氏名】秦野 航
(72)【発明者】
【氏名】塩▲崎▼ 敬一
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-224605(JP,A)
【文献】特開2002-312833(JP,A)
【文献】特開2006-139657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/24
G07D 11/00
G07D 11/26
G07D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣入金口に接続され、運用準備金として用いる貨幣を収納する第1収納部と、
回収対象の貨幣を収納する第2収納部と、
前記第1収納部と前記第2収納部とをつなぐ搬送路と、
前記第1収納部に収納された貨幣を、前記搬送路を通して前記第2収納部に搬送する搬送部と、
前記第1収納部に収納された貨幣を前記搬送部によって前記第2収納部に搬送する第1処理と、前記第1収納部に収納された貨幣の在高および前記第2収納部に収納された貨幣の在高を含む締め情報を作成する第2処理とを実行する処理部と、
前記第1処理中において、前記搬送路における貨幣の詰まりおよび前記搬送部による前記第1収納部から前記搬送路への貨幣の繰り出し不良の少なくとも一方のエラーを検出する検出部とを含む貨幣処理装置であって、
前記検出部による前記エラーの検出に応じて、前記処理部は、前記第1処理を途中停止して前記第2処理を実行し、当該第2処理では、当該第1処理の途中停止の時点において前記第1収納部および前記第2収納部に収納されている貨幣の在高を含む前記締め情報を作成する、貨幣処理装置。
【請求項2】
外部装置と通信するための通信部をさらに含み、
前記処理部は、前記検出部による前記エラーの検出に応じて実行した前記第2処理において作成した前記締め情報を前記通信部によって外部装置へ送信する第3処理を実行する、請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記第1処理の実行後に前記第2処理を実行する、請求項1又は2に記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記第2処理の実行後に前記第1処理を実行し、当該第1処理中に前記検出部が前記エラーを検出した場合には、前記第2処理を再度実行する、請求項1又は2に記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
前記貨幣処理装置は、前記検出部による前記エラーの検出に応じてエラー解除待ち状態になり、
エラー解除待ち状態の前記貨幣処理装置がエラー解除されて、前記検出部が前記エラーを検出しなくなった場合には、前記処理部は、その後前記第2収納部の貨幣が回収されるまでの期間において、前記検出部による前記エラーの検出に応じて途中停止した前記第1処理の続きを実行しない、請求項1~4のいずれか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
貨幣入金口に接続され、運用準備金として用いる貨幣を収納する第1収納部と、回収対象の貨幣を収納する第2収納部と、前記第1収納部と前記第2収納部とをつなぐ搬送路と、前記第1収納部に収納された貨幣を、前記搬送路を通して前記第2収納部に搬送する搬送部とを含む貨幣処理装置と、
前記第1収納部に収納された貨幣を前記搬送部によって前記第2収納部に搬送する第1処理と、前記第1収納部に収納された貨幣の在高および前記第2収納部に収納された貨幣の在高を含む締め情報を作成する第2処理とを実行する処理部と、
前記第1処理中において、前記搬送路における貨幣の詰まりおよび前記搬送部による前記第1収納部から前記搬送路への貨幣の繰り出し不良の少なくとも一方のエラーを検出する検出部とを含み、
前記検出部による前記エラーの検出に応じて、前記処理部は、前記第1処理を途中停止して前記第2処理を実行し、当該第2処理では、当該第1処理の途中停止の時点において前記第1収納部および前記第2収納部に収納されている貨幣の在高を含む前記締め情報を作成する、貨幣処理システム。
【請求項7】
貨幣入金口に接続され、運用準備金として用いる貨幣を収納する第1収納部と、回収対象の貨幣を収納する第2収納部と、前記第1収納部と前記第2収納部とをつなぐ搬送路と、前記第1収納部に収納された貨幣を、前記搬送路を通して前記第2収納部に搬送する搬送部と、処理を実行する処理部と、前記搬送路における貨幣の詰まりおよび前記搬送部による前記第1収納部から前記搬送路への貨幣の繰り出し不良の少なくとも一方のエラーを検出する検出部とを含み、前記処理部が、前記第1収納部に収納された貨幣を前記搬送部によって前記第2収納部に搬送する第1処理と、前記第1収納部に収納された貨幣の在高および前記第2収納部に収納された貨幣の在高を含む締め情報を作成する第2処理とを実行し、前記検出部が前記第1処理中における前記エラーを検出する貨幣処理装置における貨幣処理方法であって、
前記検出部による前記エラーの検出に応じて、前記処理部が、前記第1処理を途中停止して前記第2処理を実行するステップと、
前記第1処理の途中停止後の前記第2処理では、前記処理部が、当該第1処理の途中停止の時点において前記第1収納部および前記第2収納部に収納されている貨幣の在高を含む前記締め情報を作成するステップとを含む、貨幣処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貨幣処理装置、貨幣処理システム、及び当該貨幣処理装置における貨幣処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、レジスターを使用する小売店等に設置される現金処理装置を開示している。現金処理装置は、レジスター用の釣銭として使用する金種の現金を収納する釣銭用現金収納庫と、売上金を収納する現金回収庫とを含む。現金処理装置は、入金された売上金のうち、釣銭として再使用する金種の現金を、釣銭用現金収納庫に収納する。現金処理装置は、営業終了時等の締め処理として、現金回収庫内の現金の合計金額が売上金の合計金額と一致するように、差額分の現金を釣銭用現金収納庫から現金回収庫に移動する。締め処理後の現金回収庫は、予備の現金回収庫と交換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-204976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された貨幣処理装置は、現金回収庫内の現金の収納枚数が多いことにより、締め処理において現金を釣銭用現金収納庫から現金回収庫に移動できない場合には、移動できない現金の金額を繰越回収金として記憶して、締め処理を終了する。この場合には、締め処理の終了時に現金回収庫に収納されている現金の合計金額と、売上金についてのデータ上の合計金額とが一致しないので、このことが使用者によって気付かれないと、違算によるトラブルが発生するおそれがある。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとにおいてなされたものであり、締め処理において違算によるトラブルを防止できる貨幣処理装置、貨幣処理システム、及び当該貨幣処理装置における貨幣処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、運用準備金として用いる貨幣を収納する第1収納部と、回収対象の貨幣を収納する第2収納部と、前記第1収納部に収納された貨幣を前記第2収納部に搬送する搬送部と、前記第1収納部に収納された貨幣を前記搬送部によって前記第2収納部に搬送する第1処理と、前記第2収納部に収納された貨幣の在高を少なくとも含む締め情報を作成する第2処理とを実行する処理部と、前記第1処理中におけるエラーを検出する検出部とを含む、貨幣処理装置を提供する。前記検出部による前記エラーの検出に応じて、前記処理部が、前記第1処理を途中停止して前記第2処理を実行し、当該第2処理では、当該第1処理の途中停止の時点において前記第2収納部に収納されている貨幣の在高に基づいて前記締め情報を作成する。
【0007】
前記第2収納部が、貨幣入金口に接続されていてもよい。前記貨幣処理装置が、前記第1収納部と前記第2収納部とをつなぐ搬送路をさらに備えていてもよい。前記搬送部が、前記搬送路を通して、前記第1収納部に収納された貨幣を前記第2収納部に搬送してもよい。前記第2処理が、前記第1収納部に収納された貨幣の在高および前記第2収納部に収納された貨幣の在高を含む締め情報を作成する処理であってもよい。前記検出部によって検出される前記エラーが、前記第1処理中において、前記搬送路における貨幣の詰まりおよび前記搬送部による前記第1収納部から前記搬送路への貨幣の繰り出し不良の少なくとも一方のエラーであってもよい。前記検出部による前記エラーの検出に応じて前記第1処理を途中停止して実行される前記第2処理では、当該第1処理の途中停止の時点において前記第1収納部および前記第2収納部に収納されている貨幣の在高を含む前記締め情報を作成してもよい。
また、本発明の一実施形態では、前記貨幣処理装置が、外部装置と通信するための通信部をさらにむ。そして、前記処理部が、前記検出部による前記エラーの検出に応じて実行した前記第2処理において作成した前記締め情報を前記通信部によって外部装置へ送信する第3処理を実行する。
【0008】
また、本発明の一実施形態では、前記処理部が、前記第1処理の実行後に前記第2処理を実行する。
【0009】
また、本発明の一実施形態では、前記処理部が、前記第2処理の実行後に前記第1処理を実行し、当該第1処理中に前記検出部が前記エラーを検出した場合には、前記第2処理を再度実行する。
【0010】
また、本発明の一実施形態では、前記貨幣処理装置が、前記検出部による前記エラーの検出に応じてエラー解除待ち状態になる。そして、エラー解除待ち状態の前記貨幣処理装置がエラー解除された場合には、前記処理部が、前記検出部による前記エラーの検出に応じて途中停止した前記第1処理の続きを実行しない。前記処理部は、前記検出部が前記エラーを検出しなくなった後前記第2収納部の貨幣が回収されるまでの期間において、途中停止した前記第1処理の続きを実行しない。
【0011】
また、本発明の一実施形態では、前記貨幣処理装置が、前記検出部による前記エラーの検出後に前記第2収納部の貨幣が回収されるまでは、前記第2収納部への貨幣の追加収納を禁止する禁止部をさらにむ。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、運用準備金として用いる貨幣を収納する第1収納部と、回収対象の貨幣を収納する第2収納部と、前記第1収納部に収納された貨幣を前記第2収納部に搬送する搬送部と、前記第1収納部に収納された貨幣を前記搬送部によって前記第2収納部に搬送する第1処理と、前記第2収納部に収納された貨幣の在高を少なくとも含む締め情報を作成する第2処理とを実行する処理部と、前記第1処理中におけるエラーを検出する検出部とを含む貨幣処理装置を提供する。そして、前記検出部による前記エラーの検出に応じて、前記処理部が前記第1処理を中断して、前記貨幣処理装置がエラー解除待ち状態になる。そして、前記処理部が、エラー解除待ち状態の前記貨幣処理装置におけるエラー解除に応じて前記第1処理を再開して、当該第1処理の完了後に前記第2処理を実行する。そして、当該第2処理では、当該第1処理の完了時点において前記第2収納部に収納されている貨幣の在高に基づいて前記締め情報を作成する。
【0013】
また、本発明の一実施形態では、前記貨幣処理装置が、外部装置と通信するための通信部を含む。そして、前記処理部が、前記検出部による前記エラーの検出後の前記貨幣処理装置におけるエラー解除に応じて再開した前記第1処理の完了後の前記第2処理において作成した前記締め情報を前記通信部によって外部装置へ送信する第3処理を実行する。
【0014】
また、本発明の一実施形態は、運用準備金として用いる貨幣を収納する第1収納部と、回収対象の貨幣を収納する第2収納部と、前記第1収納部に収納された貨幣を前記第2収納部に搬送する搬送部とを含む貨幣処理装置と、前記第1収納部に収納された貨幣を前記搬送部によって前記第2収納部に搬送する第1処理と、前記第2収納部に収納された貨幣の在高を少なくとも含む締め情報を作成する第2処理とを実行する処理部と、前記第1処理中におけるエラーを検出する検出部とを含む貨幣処理システムを提供する。そして、前記検出部による前記エラーの検出に応じて、前記処理部が、前記第1処理を途中停止して前記第2処理を実行し、当該第2処理では、当該第1処理の途中停止の時点において前記第2収納部に収納されている貨幣の在高に基づいて前記締め情報を作成する。
【0015】
また、本発明の一実施形態は、運用準備金として用いる貨幣を収納する第1収納部と、回収対象の貨幣を収納する第2収納部と、前記第1収納部に収納された貨幣を前記第2収納部に搬送する搬送部とを含む貨幣処理装置と、前記第1収納部に収納された貨幣を前記搬送部によって前記第2収納部に搬送する第1処理と、前記第2収納部に収納された貨幣の在高を少なくとも含む締め情報を作成する第2処理とを実行する処理部と、前記第1処理中におけるエラーを検出する検出部とを含む貨幣処理システムを提供する。そして、前記検出部による前記エラーの検出に応じて、前記処理部が前記第1処理を中断して、前記貨幣処理装置がエラー解除待ち状態になる。そして、前記処理部が、エラー解除待ち状態の前記貨幣処理装置におけるエラー解除に応じて前記第1処理を再開して、当該第1処理の完了後に前記第2処理を実行する。そして、当該第2処理では、当該第1処理の完了時点において前記第2収納部に収納されている貨幣の在高に基づいて前記締め情報を作成する。
【0016】
また、本発明の一実施形態は、運用準備金として用いる貨幣を収納する第1収納部と、回収対象の貨幣を収納する第2収納部と、前記第1収納部に収納された貨幣を前記第2収納部に搬送する搬送部と、処理を実行する処理部と、エラーを検出する検出部とを含み、前記処理部が、前記第1収納部に収納された貨幣を前記搬送部によって前記第2収納部に搬送する第1処理と、前記第2収納部に収納された貨幣の在高を少なくとも含む締め情報を作成する第2処理とを実行し、前記検出部が前記第1処理中における前記エラーを検出する貨幣処理装置における貨幣処理方法を提供する。そして、前記貨幣処理方法が、前記検出部による前記エラーの検出に応じて、前記処理部が、前記第1処理を途中停止して前記第2処理を実行するステップと、前記第1処理の途中停止後の前記第2処理では、前記処理部が、当該第1処理の途中停止の時点において前記第2収納部に収納されている貨幣の在高に基づいて前記締め情報を作成するステップとを含む。
【0017】
また、本発明の一実施形態は、運用準備金として用いる貨幣を収納する第1収納部と、回収対象の貨幣を収納する第2収納部と、前記第1収納部に収納された貨幣を前記第2収納部に搬送する搬送部と、処理を実行する処理部と、エラーを検出する検出部とを含み、前記処理部が、前記第1収納部に収納された貨幣を前記搬送部によって前記第2収納部に搬送する第1処理と、前記第2収納部に収納された貨幣の在高を少なくとも含む締め情報を作成する第2処理とを実行し、前記検出部が前記第1処理中における前記エラーを検出する貨幣処理装置における貨幣処理方法を提供する。そして、前記貨幣処理方法が、前記検出部による前記エラーの検出に応じて、前記処理部が前記第1処理を中断して、前記貨幣処理装置がエラー解除待ち状態になるステップと、前記処理部が、エラー解除待ち状態の前記貨幣処理装置におけるエラー解除に応じて前記第1処理を再開するステップと、前記処理部が、再開した前記第1処理の完了後に前記第2処理を実行し、当該第2処理では、当該第1処理の完了時点において前記第2収納部に収納されている貨幣の在高に基づいて前記締め情報を作成するステップとを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、締め処理において違算によるトラブルを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の一実施形態に係る貨幣処理装置の斜視図である。
図2】貨幣処理装置を含む貨幣処理システムの概念を示す模式図である。
図3】貨幣処理システムの電気的構成を示すブロック図である。
図4】貨幣処理装置の記憶部に記憶されたテーブルの内容を示す図である。
図5】貨幣処理装置において実行される締め処理の第1パターンを説明するためのフローチャートである。
図6】締め処理の第2パターンを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る貨幣処理装置1の斜視図である。貨幣処理装置1は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗における事務所や、複数の店舗によって構成されたショッピンセンターおけるバックヤード等に設置され、店舗の従業員等の使用者によって使用される。貨幣処理装置1は、店舗にて用いられる釣銭用貨幣を出金したり、店舗の売上金や両替用の貨幣を受け入れたりすることができる。なお、この実施形態における貨幣は、紙幣及び硬貨の両方を指すが、紙幣及び硬貨のどちらか一方を指してもよい。
【0021】
貨幣処理装置1は、紙幣を出入金するための紙幣処理ユニット2と、硬貨を出入金するための硬貨処理ユニット3と、紙幣処理ユニット2及び硬貨処理ユニット3のそれぞれの動作を制御するターミナルユニット4とを含む。貨幣処理装置1は、例えば、縦長ボックス状の装置本体11を含む。紙幣処理ユニット2及び硬貨処理ユニット3は、装置本体11の上部において、貨幣処理装置1を前方から見て、左右に並んで配置されている。この実施形態では、紙幣処理ユニット2が、硬貨処理ユニット3よりも右側に配置されている。ターミナルユニット4は、装置本体11の上面に配置されている。
【0022】
紙幣処理ユニット2は、使用者によって紙幣が入金される紙幣入金口21と、紙幣入金口21から装置本体11内に取り込まれた紙幣のうち、偽札や識別不能な紙幣をリジェクトするための紙幣リジェクト口22と、装置本体11内の紙幣を出金するための紙幣出金口23とを含む。紙幣入金口21、紙幣リジェクト口22及び紙幣出金口23は、装置本体11の前面の右領域に形成されている。紙幣出金口23は、シャッター24によって開閉される。シャッター24が開くと紙幣出金口23が開放されるので、使用者は、紙幣出金口23に出金された紙幣を取り出すことができる。
【0023】
硬貨処理ユニット3は、使用者によって硬貨が入金される硬貨入金口31と、硬貨入金口31から装置本体11内に取り込まれた硬貨のうち、偽貨や識別不能な硬貨をリジェクトするための硬貨リジェクト口32と、装置本体11内の硬貨を出金するための硬貨出金口33とを含む。硬貨出金口33には、出金された硬貨を収納する硬貨出金カセット34が取り付けられている。使用者は、硬貨出金カセット34を引き出して硬貨出金カセット34内の硬貨を取り出すことができる。
【0024】
ターミナルユニット4は、取引の際に使用者が視認可能かつ操作可能な操作表示部41を含む。操作表示部41は、例えばタッチパネル式の液晶表示装置である。使用者は、操作表示部41を操作することによって、貨幣処理装置1に所望の処理を実行させることができる。使用者は、貨幣処理装置1での処理等に関する情報を、操作表示部41の表示内容によって確認できる。
【0025】
図2は、貨幣処理装置1を含む貨幣処理システム100の概念を示す模式図である。紙幣処理ユニット2は、装置本体11内に配置されている。紙幣処理ユニット2は、紙幣を収納する紙幣収納部25と、搬送部の一例としての紙幣出入金機構26とをさらに含む。紙幣収納部25は、運用準備金として用いる紙幣を収納するボックス状の第1収納部251と、回収対象の紙幣を収納するボックス状の第2収納部252を含む。運用準備金として、釣銭として用いる釣銭準備金や、貨幣処理装置1とは別のATM等の貨幣処理機への補充金として用いる準備金や、両替等において貨幣処理装置1自身が出金するための準備金等が挙げられる。
【0026】
回収対象の紙幣とは、前述した売上金のことである。第2収納部252に収納された紙幣は、店舗と契約している警備会社の警備員等によって回収されて銀行等に搬送される。なお、第2収納部252が装置本体11に対して着脱可能であって、第2収納部252に収納された紙幣が第2収納部252と共に回収されてもよく、その場合には、回収された第2収納部252の代わりとなる空の第2収納部252が、警備員によって装置本体11に装着される。または、第2収納部252が装置本体11に固定されていてもよく、その場合には、第2収納部252内の紙幣が、装置本体11の表面に設けられた回収口(図示せず)から、警備員によって回収のために取り出されてもよい。
【0027】
第1収納部251は、この実施形態では、1万円、5千円及び千円といった複数の金種が取り扱われることによって金種別に複数設けられるが、取り扱われる金種が1つだけであれば第1収納部251も1つだけ設けられてもよい。もちろん、複数の第1収納部251が、同一金種を収納してもよいし、1つの第1収納部251が、複数の金種の紙幣を混合状態にて収納してもよい。第2収納部252も、第1収納部251と同様に単数又は複数設けられてもよいが、この実施形態では1つだけ設けられる。なお、第1収納部251及び第2収納部252のそれぞれにおける紙幣の最大収納枚数は、一例として共に1000枚であるが、第1収納部251の最大収納枚数と第2収納部252の最大収納枚数とは同じでなくてもよい。
【0028】
紙幣出入金機構26は、紙幣入金口21及び紙幣出金口23のそれぞれと第1収納部251と第2収納部252とをつなぐ単数又は複数の紙幣搬送路(図示せず)と、紙幣搬送路に沿って紙幣を搬送するローラやベルト等の駆動部(図示せず)とを含む。図2には、当該紙幣搬送路の一部として第1収納部251と第2収納部252とつなぐ紙幣搬送路253が図示されている。紙幣出入金機構26は、紙幣搬送路における紙幣の行き先を変更する切換爪(図示せず)と、紙幣搬送路にて搬送される紙幣の金種及び真贋を識別する識別部(図示せず)とを含む。
【0029】
紙幣出入金機構26は、釣銭準備の際に、必要な金額に相当する金種及び枚数の紙幣を第1収納部251から繰り出して、紙幣搬送路を経由して紙幣出金口23に払い出す。紙幣出入金機構26は、両替や釣銭準備の際に、使用者によって紙幣入金口21に投入された紙幣を紙幣搬送路に取り込んで識別した後に、該当する金種の第1収納部251に収納する。紙幣出入金機構26は、紙幣入金口21に投入された紙幣のうち、偽札や識別不能な紙幣を、紙幣搬送路から紙幣リジェクト口22にリジェクトする。
【0030】
硬貨処理ユニット3は、装置本体11内に配置されている。硬貨処理ユニット3は、硬貨を収納する硬貨収納部35と、搬送部の一例としての硬貨出入金機構36とをさらに含む。硬貨収納部35は、運用準備金として用いる硬貨を収納するボックス状の第1収納部351と、回収対象の硬貨を収納するボックス状の第2収納部352を含む。第1収納部351は、紙幣収納部25の第1収納部251と同様に構成される。第2収納部352は、紙幣収納部25の第2収納部252と同様に構成される。なお、第1収納部351及び第2収納部352のそれぞれにおける硬貨の最大収納枚数は、一例として共に1000枚であるが、それぞれの最大収納枚数は任意に設定できる。
【0031】
硬貨出入金機構36は、硬貨入金口31及び硬貨出金口33のそれぞれと第1収納部351と第2収納部352とをつなぐ単数又は複数の硬貨搬送路(図示せず)と、硬貨搬送路に沿って硬貨を搬送するローラやベルト等の駆動部(図示せず)とを含む。図2には、当該硬貨搬送路の一部として第1収納部351と第2収納部352とつなぐ硬貨搬送路353が図示されている。硬貨出入金機構36は、硬貨搬送路における硬貨の行き先を変更する切換爪(図示せず)と、硬貨搬送路内にて搬送される硬貨の金種及び真贋を識別する識別部(図示せず)とを含む。
【0032】
硬貨出入金機構36は、釣銭準備の際に、必要な額に相当する金種及び枚数の硬貨を第1収納部351から繰り出して硬貨搬送路を経由して硬貨出金口33に払い出す。硬貨出入金機構36は、両替や釣銭準備の際に、使用者によって硬貨入金口31に投入された硬貨を硬貨搬送路に取り込んで識別した後に、該当する金種の第1収納部351に収納する。硬貨出入金機構36は、硬貨入金口31に投入された硬貨のうち、偽貨や識別不能な硬貨を、硬貨搬送路から硬貨リジェクト口32にリジェクトする。なお、硬貨処理ユニット3において取り扱われる硬貨は、バラ硬貨でもよいし、100枚等の所定枚数毎に包装された包装硬貨であってもよい。
【0033】
ターミナルユニット4は、有線又は無線の通信回線CLを介して、紙幣処理ユニット2及び硬貨処理ユニット3のそれぞれに対して通信可能に接続されている。ターミナルユニット4には、貨幣処理装置1に対する上位機器である外部装置5が通信可能に接続されている。外部装置5は、例えば、複数の店舗を統括する本部の施設に設置されたコンピュータである。この実施形態における貨幣処理装置1は、外部装置5と常時通信可能である。貨幣処理装置1及び外部装置5は、前述した貨幣処理システム100を構成している。
【0034】
図3は、貨幣処理システム100の電気的構成を示すブロック図である。貨幣処理装置1は、貨幣処理装置1全体の動作を統括的に制御する主制御部42を含む。主制御部42は、ターミナルユニット4に設けられている。主制御部42は、CPU、メモリ及びタイマー等によって構成されており、CPUが、メモリに記憶されたプログラムに従って演算処理等の所定の処理を実行する。
【0035】
ターミナルユニット4は、操作表示部41及び主制御部42の他に、通信部の一例としての主通信部43と、記憶部44とを含む。操作表示部41、主通信部43及び記憶部44は、主制御部42に対して電気的に接続されている。主制御部42は、使用者による操作表示部41の操作を受け付けたり、操作表示部41の表示を制御したりする。
【0036】
主通信部43は、ターミナルユニット4が紙幣処理ユニット2や硬貨処理ユニット3と通信するためのインターフェースであって、通信回線CLに接続されている。また、主通信部43は、インターネット等の公衆回線ILにも接続されていて、これにより、ターミナルユニット4は、外部装置5と通信することができる。
【0037】
記憶部44は、不揮発性メモリやハードディスクドライブといった記憶デバイスによって構成されていて、貨幣処理装置1に関する様々な情報を記憶している。特に、紙幣処理ユニット2の第1収納部251及び第2収納部252のそれぞれに収納されている紙幣の在高と、硬貨処理ユニット3の第1収納部351及び第2収納部352のそれぞれに収納されている硬貨の在高とが、テーブル45にまとめられて記憶部44に記憶されている(図4参照)。在高とは、該当する金種の貨幣の収納枚数と、当該収納枚数分の貨幣の合計金額とを情報として含む。
【0038】
図4のテーブル45では、第1収納部251及び第1収納部351のそれぞれが、収納する貨幣の金種(図4における括弧書きの金種)によって特定されているが、個別に割り振られる識別情報によって特定されてもよい。また、第2収納部252及び第2収納部352のそれぞれについての在高は、図4に示す収納枚数や合計金額と共に、金種別の内訳も含んでもよい。
【0039】
図3に戻り、紙幣処理ユニット2は、紙幣処理ユニット2の処理動作を司る副制御部27と、副通信部28と、紙幣処理ユニット2におけるエラーを検出する検出部29とをさらに含む。副制御部27は、CPU及びメモリ等によって構成されている。副制御部27には、紙幣出入金機構26、副通信部28及び検出部29のそれぞれが電気的に接続されている。副通信部28は、通信回線CLを介してターミナルユニット4の主通信部43と通信可能に接続されたインターフェースである。副制御部27は、主制御部42からの制御コマンドに従って演算処理等の所定の処理を実行し、必要に応じて紙幣出入金機構26の動作を制御する。検出部29が検出するエラーの一例として、前述した紙幣搬送路253(図2参照)における紙幣の詰まりや、紙幣出入金機構26による第1収納部251等から紙幣搬送路253への紙幣の繰り出し不良が挙げられる。検出部29として、紙幣の詰まりを検出する公知のジャムセンサを用いることができる。なお、副制御部27は、前述したシャッター24(図1参照)の開閉も制御する。
【0040】
硬貨処理ユニット3は、硬貨処理ユニット3の処理動作を司る副制御部37と、副通信部38と、硬貨処理ユニット3におけるエラーを検出する検出部39とをさらに含む。副制御部37は、CPU及びメモリ等によって構成されている。副制御部37には、硬貨出入金機構36、副通信部38及び検出部39のそれぞれが電気的に接続されている。副通信部38は、通信回線CLを介してターミナルユニット4の主通信部43と通信可能に接続されたインターフェースである。副制御部37は、主制御部42からの制御コマンドに従って演算処理等の所定の処理を実行し、必要に応じて硬貨出入金機構36の動作を制御する。検出部39が検出するエラーの一例として、前述した硬貨搬送路353(図2参照)における硬貨の詰まりや、第1収納部251等から紙幣搬送路353への硬貨の繰り出し不良が挙げられる。検出部39として、検出部29と同様に、公知のジャムセンサを用いることができる。
【0041】
貨幣処理装置1は、紙幣処理ユニット2、硬貨処理ユニット3及びターミナルユニット4の他に、装置本体11に設けられる電源部8、カードリーダ9及びプリンタ10を含む。電源部8は、紙幣処理ユニット2、硬貨処理ユニット3、ターミナルユニット4、カードリーダ9及びプリンタ10のそれぞれにおける電気部品に作動電力を供給する。
【0042】
カードリーダ9及びプリンタ10は、主制御部42に対して電気的に接続されている。カードリーダ9に関連して、装置本体11の前面には、使用者の身分証等のカードが通される溝9Aが形成される(図1参照)。主制御部42には、溝9Aに通されたカードからカードリーダ9が読み取った情報(使用者の識別情報等)が与えられる。主制御部42は、プリンタ10によってレシート等を発行する。
【0043】
貨幣処理装置1の動作には、釣銭用貨幣の出金処理と、売上金の入金処理と、店舗の営業終了後等における締め処理とがあり、以下では、これらの処理について順に説明する。前述したように、主制御部42が、貨幣処理装置1全体の動作を統括的に制御し、副制御部27が、主制御部42からの制御コマンドに従って紙幣処理ユニット2の動作を制御し、副制御部37が、主制御部42からの制御コマンドに従って硬貨処理ユニット3の動作を制御する。つまり、この実施形態では、貨幣処理装置1において個々の処理を実行する処理部50が、処理の内容に応じて、主制御部42と副制御部27と副制御部37とに分かれている。もちろん、処理部50は、主制御部42と副制御部27と副制御部37とに分かれなくてもよい。以下では、便宜上、主制御部42、副制御部27及び副制御部37のまとまりを一つの処理部50とみなすこととし、処理部50を実行主体として出金処理、入金処理及び締め処理について説明を行う。
【0044】
<出金処理>
営業開始前のタイミングや、営業中において釣銭が不足してきたタイミングにおいて、使用者は、貨幣処理装置1が設置された事務所等に赴いて、貨幣処理装置1に釣銭用貨幣を出金してもらう。具体的には、使用者は、貨幣処理装置1の操作表示部41に表示された待機画面(図示せず)におけるタッチキー等を操作する。これに応じて、処理部50が出金用画面(図示せず)を操作表示部41に表示させるので、使用者は、出金用画面に表示されたタッチキー等を操作して、釣銭用貨幣の出金を受ける日と、使用者の識別情報と、出金してもらいたい釣銭用貨幣の金種及び枚数とを入力する。なお、使用者は、身分証を溝9A(図1参照)に通すことによって自身の識別情報を入力してもよい。また、使用者の識別情報として、使用者が店舗において担当するレジスターのレジ番号等を用いることができる。
【0045】
このような入力に応じて、処理部50は、紙幣出入金機構26及び硬貨出入金機構36のうち該当するものを制御することによって、使用者が要望する金種及び枚数の貨幣を紙幣出金口23や硬貨出金口33に払い出す。処理部50は、紙幣出入金機構26や硬貨出入金機構36による貨幣の識別結果によって、出金する貨幣の金種、枚数及び出金元(第1収納部251や351)を把握できるので、出金処理の最後等において、記憶部44に記憶されているテーブル45(図4参照)にて該当する在高を更新する。
【0046】
<入金処理>
使用者は、自分が担当する売上金を、営業時間中においてレジ担当交代等のタイミングにレジスターから取り出して事務所等に赴き、貨幣処理装置1に入金する。具体的には、使用者は、操作表示部41に表示された待機画面におけるタッチキー等を操作する。これに応じて、処理部50が入金用画面(図示せず)を操作表示部41に表示させるので、使用者は、入金用画面に表示されたタッチキー等を操作して、入金を行う日と、使用者の識別情報とを入力する。そして、使用者は、売上金を構成する貨幣を、紙幣入金口21及び硬貨入金口31において対応する入金口に投入する。処理部50は、このように入金された売上金を、紙幣出入金機構26や硬貨出入金機構36によって金種毎に分けて、該当する第1収納部251や351に収納する。
【0047】
売上金は、第1収納部251や351に収納されることによって、釣銭用貨幣としてリサイクルされる。処理部50は、紙幣出入金機構26や硬貨出入金機構36による貨幣の識別結果によって、入金する貨幣の金種、枚数及び入金先(第1収納部251や351)を把握できるので、入金処理の最後等のタイミングにおいて、記憶部44に記憶されているテーブル45(図4参照)にて該当する在高を更新する。なお、処理部50は、出金処理と入金処理とを組み合わせて実行することによって、前述した両替を実行することができる。
【0048】
<締め処理>
以下では、説明の便宜上、売上金が紙幣だけによって構成される場合を想定して、主に紙幣だけに着目して締め処理について説明するが、紙幣だけによる締め処理に限らず、硬貨だけによる締め処理や、紙幣及び硬貨の両方を用いた締め処理もあり得る。処理部50が実行する締め処理は、第1収納部251に収納された紙幣を紙幣出入金機構26によって第2収納部252に搬送する第1処理と、第2収納部252に収納された紙幣の在高を少なくとも含む締め情報を作成する第2処理と、第2処理において作成した締め情報を主通信部43によって外部装置5へ送信する第3処理とを含む。
【0049】
エラーが発生することなく第1処理が正常に完了した時点において第2収納部252に収納されている紙幣の合計金額は、当日の売上金の合計金額に相当する。つまり、第1処理は、当日分の売上金が第2収納部252に収納されるように紙幣を第1収納部251から第2収納部252に移し替える売上金作成処理である。なお、第2収納部252は、第1処理の開始時において空であるとは限らず、既に紙幣が収納されていてもよい。また、締め処理に関する貨幣処理方法には、以下の第1パターン及び第2パターンが挙げられる。
【0050】
(第1パターン)
第1パターンの場合には、図5のフローチャートを参照して、処理部50は、例えば営業終了後から翌営業日の営業開始までの時間帯に設定された締めタイミングになったことに応じて(ステップS1にてYES)、第1処理を開始する(ステップS2)。この時間帯では、無人であってもよい。第1処理により、第2収納部252における在高分の紙幣の合計金額が当日の売上金の合計金額に一致するように、第1収納部251の紙幣が第2収納部252に移し替えられていく。なお、第2収納部252が複数存在する場合には、これらの第2収納部252における在高分の紙幣の合計金額が当日の売上金の合計金額に一致するように、第1収納部251の紙幣が各第2収納部252に分配されていく。また、このように第1処理が自動スタートする構成に代えて、使用者が操作表示部41に表示されたタッチキー(図示せず)にタッチすることによって、処理部50が第1処理を開始してもよい。使用者がタッチキーにタッチすることによって第1処理が開始される締め処理を、以下では「手動締め」という。
【0051】
処理部50は、第1処理中においてエラー(紙幣搬送路253での紙幣の詰まり等)が発生したか否か、つまり検出部29が第1処理中におけるエラーを検出したか否かを常に監視している(ステップS3)。また、処理部50は、第1処理中に搬送される紙幣の金種及び枚数を、紙幣出入金機構26の識別結果によって把握できる。エラーが発生することなく(ステップS3にてNO)、必要枚数の紙幣が全て第2収納部252に搬送されると(ステップS4にてYES)、処理部50は、第1処理を無事終了つまり完了する(ステップS5)。
【0052】
処理部50は、第1処理の実行後に第2処理を実行する(ステップS6)。なお、処理部50は、第1処理の終了に応じて直ちに第2処理を実行してもよいし、第1処理の完了から所定時間の経過後に第2処理を実行してもよい。処理部50は、第2処理において、第1処理での紙幣出入金機構26の識別結果、つまり第1収納部251から第2収納部252に移し替えた紙幣の金種及び枚数に応じて、記憶部44に記憶されているテーブル45(図4参照)にて該当する在高を更新する。そして、処理部50は、更新後のテーブル45から、前述した締め情報を作成して記憶部44に一時記憶する。
【0053】
締め情報は、具体的には、以下の情報を含む。
(1)今回の締め処理が実行された日時。この日時として、締め処理の開始日時を用いてもよい。
(2)今回の締め処理を実行する貨幣処理装置1の識別情報。この識別情報として、貨幣処理装置1が設置される店舗の名称と貨幣処理装置1の号機番号との組み合わせを用いてもよい。
(3)締め処理時(例えば、第1処理終了後のタイミング)の貨幣処理装置1における貨幣の総数及び合計金額、並びに金種別の内訳(金種別の貨幣の枚数及び合計金額)。
(4)第1処理終了後のタイミングにおいて第1収納部251及び第1収納部351のそれぞれに収納されている貨幣の総数及び合計金額、並びに金種別の内訳(金種別の貨幣の枚数及び合計金額)。つまり、第1収納部251及び第1収納部351のそれぞれの在高。
(5)第1処理終了後のタイミングにおいて第2収納部252及び第2収納部352のそれぞれに収納されている貨幣の総数及び合計金額、並びに金種別の内訳(金種別の貨幣の枚数及び合計金額)。つまり、第2収納部252及び第2収納部352のそれぞれの在高。ここでの合計金額が、前述した売上金に相当する。この売上金が前記(1)の日時と紐付くことによって、いつの営業日における売上金であるかを特定できる。
(6)第1収納部251、第1収納部351、第2収納部252及び第2収納部352のそれぞれについての精査フラグ。精査フラグは、対応する収納部において在高が確定しているか否かを表わすフラグである。
(7)今回の締め処理を担当する使用者の識別情報。特に、手動締めの場合には、使用者の識別情報は、必ず締め情報に含まれる。なお、手動締め以外の締め処理、つまり今回のようにタイマーによって自動的に開始される締め処理の場合には、その旨が締め情報に含まれる。
【0054】
処理部50は、第2処理の実行後に第3処理を実行する(ステップS7)。具体的には、処理部50は、第2処理によって作成した締め情報を主通信部43によって外部装置5に送信する。ステップS7において、処理部50は、外部装置5が締め情報を受信した旨の返答を受信すると、記憶部44に一時記憶していた当該締め情報をクリアする。なお、クリアされた締め情報は、履歴として記憶部44における別の記憶領域等に記憶されてもよい。
【0055】
このように第1~第3処理を完了した処理部50は、最後に貨幣処理装置1を再起動させる(ステップS8)。再起動後の貨幣処理装置1は、待機状態または休止状態になる。休止状態の貨幣処理装置1において、例えば使用者が操作表示部41にタッチすると、処理部50は、貨幣処理装置1を休止状態から待機状態に切り替える。
【0056】
第1処理中に検出部39がエラーを検出すると(ステップS3にてYES)、処理部50は、第1処理を途中停止して、貨幣処理装置1をエラー解除待ち状態にする(ステップS9)。これにより、紙幣出入金機構26による第1収納部251から第2収納部252への紙幣の搬送が途中停止される。また、エラー解除待ち状態の貨幣処理装置1では、休止状態や待機状態とは異なり、処理部50が、エラーの発生、エラーの内容、及びエラー解除を促す旨を表わすエラー画面(図示せず)を操作表示部41に表示する。なお、第1処理の途中停止とは、本来搬送すべき必要枚数の紙幣を搬送しきれずに第1処理が一旦停止又は終了していることを指す。
【0057】
このように第1処理を途中停止した処理部50は、第2処理を実行する(ステップS10)。第1処理の途中停止後の第2処理では、処理部50は、ステップS6と同様に、テーブル45(図4参照)にて該当する在高を更新する。ただし、当該第2処理では、処理部50は、更新後のテーブル45における第2収納部252の在高、つまり当該第1処理の途中停止の時点において第2収納部252に収納されている紙幣の在高に基づいて締め情報を作成して、当該締め情報を記憶部44に一時記憶する。そのため、第1パターンの締め処理では、当該締め情報における第2収納部252についてのデータ上の在高(特に合計金額)と、第2収納部252に収納されている紙幣の実際の在高(特に合計金額)とが一致するので、違算によるトラブルを防止できる。なお、例えば紙幣処理ユニット2とターミナルユニット4との間における通信異常等によって第2処理が正常終了しなかった場合には、処理部50は、第2処理を途中停止して、貨幣処理装置1をエラー解除待ち状態にしてもよい。前述したステップS6においても同様である。
【0058】
次に、処理部50は、ステップS7と同様に第3処理を実行することにより(ステップS11)、検出部29によるエラーの検出に応じてステップS10の第2処理において作成した締め情報を主通信部43によって外部装置5に送信し、外部装置5からの返答の受信に応じて当該締め情報を記憶部44から削除する。前述したように、当該締め情報における第2収納部252についてのデータ上の在高と、第2収納部252に収納されている紙幣の実際の在高とが一致しているので、当該締め情報を受信した外部装置5では、違算によるトラブルを防止できる。このような第1パターンは、エラーが発生しても当日の締め情報を外部装置5にリアルタイム送信することを優先する運用に最適である。なお、例えばターミナルユニット4と外部装置5との間における通信異常等によって第3処理が正常終了しなかった場合には、処理部50は、第3処理を途中停止して、貨幣処理装置1をエラー解除待ち状態にしてもよい。前述したステップS7においても同様である。
【0059】
エラー発生に応じて第1処理を途中停止したものの第2処理及び第3処理を実行した処理部50は、貨幣処理装置1を引き続きエラー解除待ち状態にして、使用者によるエラー解除を待つ(ステップS12)。操作表示部41のエラー画面を見た使用者が、エラー解除待ち状態の貨幣処理装置1をエラー解除することによって、検出部39がエラーを検出しなくなると(ステップS12にてYES)、処理部50は、貨幣処理装置1を、再起動することなく、待機状態または休止状態にする。この場合、第1処理の途中停止時に第1収納部251から第2収納部252に移し替えることができなかった紙幣は、翌営業日の売上金として繰り越される。
【0060】
エラー解除後の貨幣処理装置1において、処理部50は、検出部39によるエラーの検出に応じて先ほど途中停止した第1処理の続きを実行しない。さらに、処理部50は、禁止部の一例として機能することにより、当該エラーの検出後に第2収納部252の紙幣が警備員等によって回収されるまでは、エラー解除後であっても第2収納部252への紙幣の追加収納を禁止する。ここでの追加収納は、第1処理のように第1収納部251から第2収納部252への紙幣の搬送に限らず、紙幣入金口21に入金された紙幣が第1収納部251を経由せずに第2収納部252に直接搬送されることも含む。
【0061】
このように、貨幣処理装置1のエラー解除後において、第2収納部252の紙幣が回収されるまでの期間では、第2収納部252への紙幣の追加収納が禁止されるので、第2収納部252に収納されている紙幣の在高が変化しない。よって、当該期間では、締め情報における第2収納部252についてのデータ上の在高と、第2収納部252に収納されている紙幣の実際の在高とが一致した状態が維持されるので、違算によるトラブルを防止できる。
【0062】
ただし、翌営業日等において所定量を超える大量の紙幣が紙幣入金口21に入金される場合には、処理部50は、第2収納部252への紙幣の追加収納を許可してもよい。その場合には、処理部50は、テーブル45において、第2収納部252に追加収納された紙幣の情報と、今回の追加収納の前から第2収納部252に収納されている紙幣の情報とを区別して管理することが好ましい。
【0063】
前述した説明では、処理部50は、締め処理の最初に第1処理を開始し(ステップS2)、当該第1処理中にエラーが発生した場合に(ステップS3にてYES)、当該第1処理を途中停止して(ステップS9)、第2処理を実行する(ステップS10)。つまり、処理部50は、当該第1処理の実行後に当該第2処理を実行する。これに代え、処理部50は、締め処理の最初のタイミングに第2処理を実行し、当該第2処理において、テーブル45の内容や当日の取引履歴等に基づいて締め情報を予測してもよい。その場合には、処理部50は、当該第2処理の実行後に第1処理を実行する(ステップS2)。当該第1処理中に検出部29がエラーを検出した場合には(ステップS3にてYES)、予想が外れた、つまり予測に応じて作成済みの締め情報が誤りになるので、処理部50は、第2処理を再度実行して締め情報を作成し直す(ステップS10)。
【0064】
(第2パターン)
図6のフローチャートを参照して、第2パターンについて説明する。なお、図6では、図5の処理ステップと同じ処理ステップには、図5と同じステップ番号を付し、その処理ステップについての詳細な説明を省略する。
【0065】
第2パターンでも、現在時刻が締めタイミングになったことに応じて(ステップS1にてYES)、処理部50は、第1処理を開始する(ステップS2)。そして、途中においてエラーが発生することなく(ステップS3にてNO)、第1収納部251から第2収納部252への紙幣の搬送が完了すると(ステップS4にてYES)、処理部50は、第1処理を完了し(ステップS6)、引き続き第2処理(ステップS6)及び第3処理(ステップS7)を実行して、最後に貨幣処理装置1を再起動して(ステップS8)、貨幣処理装置1を待機状態又は休止状態にする。
【0066】
ただし、第2パターンでは、第1処理中に検出部39がエラーを検出すると(ステップS3にてYES)、処理部50は、第1処理を中断して、貨幣処理装置1をエラー解除待ち状態にする(ステップS20)。このように貨幣処理装置1がエラー解除待ちになった状態において、処理部50は、第2処理を実行することなく、前述したエラー画面を操作表示部41に表示することによって、使用者によるエラー解除を待つ(ステップS21)。そのため、この状態では、第1処理が途中停止も完了もしていないので、締め情報は作成されていない。
【0067】
そして、例えば翌営業日の早朝において、エラー解除待ち状態の貨幣処理装置1が使用者によってエラー解除されると(ステップS21にてYES)、処理部50は、中断していた第1処理を再開して(ステップS22)、ステップS3以降の処理を実行する。なお、エラー解除の際に第2収納部252において紙幣を出し入れする必要がある場合には、処理部50は、第2収納部252内の紙幣を第1収納部251に戻して、第1処理を最初からやり直してもよい。
【0068】
再開された第1処理が完了すると(ステップS5)、処理部50は、当該第1処理後に第2処理を実行する(ステップS6)。当該第2処理では、処理部50は、前述したように、テーブル45(図4参照)にて該当する在高を更新する。そして、当該第2処理では、処理部50は、更新後のテーブル45における第2収納部252の在高、つまり当該第1処理の完了時点において第2収納部252に収納されている紙幣の在高に基づいて締め情報を作成して、当該締め情報を記憶部44に一時記憶する。このように、第2パターンの締め処理では、第1処理中にエラーが発生しても、締め情報は、エラー解除されるまで作成されず、エラー解除後に再開された第1処理の完了後の第2処理において作成される。この場合の締め処理では、当該締め情報における第2収納部252についてのデータ上の在高と、第2収納部252に収納されている紙幣の実際の在高とが一致するので、違算によるトラブルを防止できる。
【0069】
そして、処理部50は、第3処理を実行することにより(ステップS7)、直前の第2処理(ステップS6)によって作成した締め情報を主通信部43によって外部装置5に送信する。つまり、処理部50は、第3処理では、検出部29によるエラーの検出後の貨幣処理装置1におけるエラー解除に応じて再開した第1処理の完了後の第2処理において作成した締め情報を主通信部43によって外部装置5に送信する。この場合、当該締め情報における第2収納部252についてのデータ上の在高と、第2収納部252に収納されている紙幣の実際の在高とが一致しているので、当該締め情報を受信した外部装置5では、違算によるトラブルを防止できる。このような第2パターンは、エラーが発生しても、第2収納部252に収納されている紙幣の在高と当日の売上金とが一致していることを優先する運用に最適である。
【0070】
また、処理部50は、第3処理では、外部装置5からの返答の受信に応じて当該締め情報を記憶部44から削除する。その後、処理部50は、貨幣処理装置1を再起動させてから(ステップS8)、待機状態または休止状態にする。
【0071】
以上のように、本実施形態による締め処理では、第1パターン及び第2パターンのいずれであっても、第1処理中におけるエラーの発生有無に関わらず、第1処理の実行後から第2収納部252内の紙幣が回収されるまでの間では、第2収納部252内に収納されている紙幣の在高と、締め情報におけるデータ上の在高とが必ず一致する。一方、エラー発生後に使用者による手動締めを必要とする場合には、ヒューマンエラーによって手動締めが忘れられたまま翌営業日の取引が開始されてしまうことにより、違算によるトラブルが生じ得る。しかし、本実施形態による締め処理では、このようなトラブルを防止できる。
【0072】
締め処理についての以上の説明では紙幣に着目したので、第1処理では、紙幣処理ユニット2の第1収納部251から第2収納部252への紙幣の搬送が行われ、第2処理及び第3処理では、紙幣処理ユニット2及びターミナルユニット4の協働によって、紙幣についての締め情報の作成や通信等が行われる。一方、硬貨による締め処理の場合には、第1処理では、硬貨処理ユニット3の第1収納部351から第2収納部352への硬貨の搬送が行われ、第2処理及び第3処理では、硬貨処理ユニット3及びターミナルユニット4の協働によって、硬貨についての締め情報の作成や通信等が行われる。紙幣及び硬貨の両方を用いた締め処理の場合には、第1処理では、紙幣処理ユニット2及び硬貨処理ユニット3のそれぞれにおいて貨幣の搬送が行われ、第2処理及び第3処理では、紙幣処理ユニット2、硬貨処理ユニット3及びターミナルユニット4の協働によって、紙幣及び硬貨を組み合わせた締め情報の作成や通信等が行われる。
【0073】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、貨幣処理システム100は、第1~第3処理部を実行する処理部50と、第1処理中におけるエラーを検出する検出部29及び39とを、貨幣処理装置1とは別の装置として含んでもよい。当該別の装置として、外部装置5が挙げられる。この場合の処理部50は、貨幣処理装置1に指令を送ることによって第1~第3処理部を実行する。この場合の締め情報は、外部の処理部50から指令に応じて締め処理が実行された旨を含む。
【0075】
以上にて説明した様々な特徴は、適宜組み合わせることができる。例えば、締め処理の第1パターンと第2パターンとが、使用者による操作表示部41の操作等によって選択できてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 貨幣処理装置
5 外部装置
26 紙幣出入金機構
29 検出部
36 硬貨出入金機構
39 検出部
43 主通信部
50 処理部
100 貨幣処理システム
251 第1収納部
252 第2収納部
351 第1収納部
352 第2収納部
図1
図2
図3
図4
図5
図6