(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】紙製ストロー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 21/18 20060101AFI20231219BHJP
D21H 19/10 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A47G21/18 ZAB
D21H19/10 B
(21)【出願番号】P 2020025239
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019031447
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】巖本 政博
(72)【発明者】
【氏名】松野 剛士
(72)【発明者】
【氏名】滝口 元博
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3218847(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0117598(US,A1)
【文献】国際公開第2002/044262(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3216663(JP,U)
【文献】国際公開第2020/059635(WO,A1)
【文献】特開2020-065834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 21/18
D21H 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回した単一の紙基材で形成されている紙製の中空筒体と、この筒体に含浸又はコーティングされた天然樹脂
成分とで形成されている紙製ストロー
であって、
前記天然樹脂成分が、天然樹脂又はその誘導体を含み、
前記天然樹脂が、ロジン、ダンマル、コーパル及びシェラックから選択される少なくとも一種を含み、前記天然樹脂の誘導体が、前記天然樹脂の樹脂酸エステルを含み、
前記紙製の中空筒体100質量部に対して、前記天然樹脂又はその誘導体を50~1000質量部の割合で含有する紙製ストロー。
【請求項2】
天然樹脂がロジンを含む請求項
1記載の紙製ストロー。
【請求項3】
棒状の成形型に巻回され、かつ天然樹脂
成分が含浸又はコーティングされた単一の紙基材で形成されている紙製の中空筒体を、前記成形型から脱型する、紙製ストローの製造方法
であって、
前記天然樹脂成分が、天然樹脂又はその誘導体を含み、
前記天然樹脂又はその誘導体が、ロジン、ダンマル、コーパル及びシェラックから選択される少なくとも一種の天然樹脂、又はこれらの天然樹脂の樹脂酸エステルを含み、
前記紙製の中空筒体100質量部に対して、前記天然樹脂又はその誘導体を50~1000質量部の割合で含浸又はコーティングさせる製造方法。
【請求項4】
棒状の成形型に巻回され、かつ天然樹脂又はその誘導体と有機溶媒とを含む混合液が含浸又はコーティングされた紙製の中空筒体を乾燥した後、前記成形型から紙製の中空筒体を脱型する、請求項
3記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然素材で形成され、飲料を吸引して摂取するのに有用な紙製ストローに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製の使い捨てストローの大量消費が、プラスチックごみによる海洋汚染につながることが問題になっている。プラスチックは海洋に廃棄されると、熱や太陽光で脆くなり、直径5mm以下のマイクロプラスチックになる。
【0003】
マイクロプラスチックは、環境中に存在する微小なプラスチック粒子であり、特に海洋環境において、海洋生物に甚大な悪影響を及ぼすなど、極めて大きな問題になっている。
【0004】
そこで、プラスチック製ストローに代替できる紙製ストローが提案されている。
【0005】
実用新案登録第3216663号公報(特許文献1)には、炭酸カルシウム成分を含むストリップ状の紙片を基材とし、この基材の側縁部を重ねて斜め方向に巻回して、両端が連通した螺旋管体を形成し、前記基材の相隣して重なる部分を相互に密接させた飲料用紙製ストローが記載されている。この文献には、ストリップ状の紙片が、炭酸カルシウムと樹脂成分とを含む混合物を成形した紙片があってもよいことも記載されている。しかし、ストリップ状の紙片を螺旋状に巻回する必要があるため、構造が複雑であるとともに、製造コストが高くなる。しかも、ロール軸にストリップ状の紙片を巻回して隣接部を接着剤又は融着剤で接着又は熱融着するため、ロール軸に接着剤又は融着剤が付着してしまい、ロール軸からストローを円滑に抜き取ることができなくなる場合がある。さらには、炭酸カルシウムにより防水性を高めることが記載されているが、炭酸カルシウムを含む紙片は吸水性を有するため、飲料中に浸漬すると、ストローが軟化したり吸水する可能性がある。そのため、防水性を高めるためには防水膜をコーティングする必要がある。しかし、防水膜を耐水性合成樹脂で形成すると、環境への悪影響が懸念される。
【0006】
実用新案登録第3218847号公報(特許文献2)には、複数層に亘り重ね巻きした環状の紙シートで形成された紙製ストローであって、重ね巻きした紙シートの先端部が外周面に接着した紙製ストローが記載され、紙製ストローの表面に耐水性樹脂層を形成すること、紙シートと耐水性フィルムとを交互に積層することも記載されている。しかし、この紙製ストローは、紙シートを複数層に重ね巻きする必要があり、紙の量が多くなるとともに、製造コストが高くなる。また、耐水性フィルムを併用すると、環境へ悪影響を与える。さらに、耐水性防水層をポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルコポリマーで形成すると、これらのポリマーが親水性又は水溶性樹脂であるため、耐水性が十分でなく、飲料中に浸漬すると、ストローが軟化・変形したり、防水層中の樹脂が溶出する虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実用新案登録第3216663号(実用新案登録請求の範囲、[0014])
【文献】実用新案登録第3218847号(実用新案登録請求の範囲、[0016])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、天然素材で形成された紙製ストロー及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、環境へ悪影響を及ぼすことがなく、粒子化(例えば、直径5mm以下に微細化)しても、有害性のない紙製ストロー及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、耐水性及び防水性が高くても、環境へ悪影響を及ぼす虞のない紙製ストロー及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、高い接着性の樹脂成分を含んでいても、棒状成形型に対する脱型性が高く、生産性に優れる紙製ストロー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ロジンなどの天然樹脂成分を紙製筒体に含浸させると、天然素材で紙製ストローを製造でき、環境へ悪影響を及ぼすことがなく、粒子化(例えば、直径5mm以下に微細化)しても、海洋環境におけるマイクロプラスチックなどのような有害性がないこと、耐水性及び防水性が高く、長時間に亘り飲料中に浸漬しても形状を保持するとともに、飲料中に溶出することがないこと、接着性が高くても、棒状成形型に対する脱型性が高いことを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の紙製ストローは、紙製の中空筒体と、この筒体に含浸又はコーティングされた天然樹脂又はその誘導体とで形成されている。天然樹脂又はその誘導体は、常温で固体の疎水性樹脂を含んでいてもよく、天然樹脂は、例えば、ロジンなどであってもよい。さらに、天然樹脂又はその誘導体の割合は、紙製の円筒状筒体100質量部に対して、50~1000質量部程度であってもよい。
【0014】
このような紙製ストローは、例えば、棒状の成形型に巻回され、かつ天然樹脂又はその誘導体が含浸又はコーティングされた紙製の中空筒体を、前記成形型から脱型することにより製造してもよい。例えば、棒状の成形型に巻回され、かつ天然樹脂又はその誘導体と有機溶媒とを含む混合液が含浸又はコーティングされた紙製の中空筒体を乾燥した後、前記成形型から紙製の中空筒体を脱型することにより製造してもよい。
【0015】
なお、本明細書において、「紙」とは、「抄紙構造の紙」に限らず、布帛を含む意味に用いる。「紙製ストロー」とは、紙基材をベースとしたストローを意味し、ストロー全体が紙で形成されていることを意味しない。また、「天然樹脂」とは天然界に見いだされる樹脂状物質を意味し、高分子量の物質であってもよい。数値範囲「XX~YY」は、数値「XX」と数値「YY」とを含む意味、すなわち、数値「XX」以上であり、かつ数値「YY」以下であることを意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、天然素材でストローを形成できるため、環境へ悪影響を及ぼすことがない。また、ストローが、例えば、直径5mm以下(例えば、1mm以下)に微細化又は粒子化したとしても、海洋生物及び環境に対して有害性を回避できる。さらに、耐水性及び防水性が高くても、天然由来の素材を用いるため、環境へ悪影響を及ぼす虞がない。さらには、紙を螺旋状又は多重に巻回する必要がないだけでなく、高い接着性の天然樹脂成分を含んでいても、乾燥収縮により棒状成形型に対する脱型性が高く、紙製ストローを高い生産性で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の紙製ストローとその製造方法を説明するための概略図であり、
図1(a)は巻回工程を示し、
図1(b)は脱型工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、必要に応じて、添付図面を参照しつつ、本発明の紙製ストローについて詳細に説明する。
【0019】
図1は、紙製ストローとその製造方法を示す概略図であり、この例では、ロジン又はその誘導体(ロジングリセリンエステル)の有機溶媒溶液(樹脂溶液)を紙基材に含浸させ、巻回工程(
図1(a))で、この含浸紙基材2を円筒状又は棒状成形型11に一周させて巻き付け(1回巻き付け)て端部(先頭部の糊代端部)2aを巻回した含浸紙基材2の外周部と重ね合わせて含浸筒体を形成し、この状態で含浸筒体を乾燥し、脱型工程(
図1(b))で、乾燥した筒体を円筒状成形型11から脱型することにより、中空円筒状の紙製ストロー1を調製している。
【0020】
このような方法では、紙基材への樹脂溶液の含浸、成形型11への含浸紙基材2の巻回、乾燥及び円筒状成形型11からの紙製ストロー1の脱型という簡単な操作及び高い生産性で紙製ストロー1を製造できる。さらに、ロジン又はその誘導体は低分子量であり高濃度であっても低粘度の樹脂溶液を形成するため、紙基材に対する含浸性が高いとともに、高い接着性を示すため、巻き付け回数が少なくても糊代端部2aで一体化した筒体を形成できる。しかも、乾燥及びその後の冷却に伴って含浸樹脂が収縮するためか、成形型11からも円滑に脱型でき、成形型11に対応した内周面を有する紙製ストロー1が得られる。なお、ロジン又はその誘導体の高い接着性は、紙基材の固定(接着)には有効であるものの、棒状成形体にも密着しやすく脱型性が低下するように思われる。しかし、ロジン又はその誘導体を紙基材の内部に浸み込ませて、紙基材の表面での付着量を低減できるため、接着性と脱型性とを両立できる。
【0021】
また、紙製ストロー1では紙基材にロジン又はその誘導体が含浸しているので、紙基材を補強することができ、保形性が高い。さらに、防水性及び耐水性が高く、飲料中に浸漬していても軟化したり変形することがなく、長期間に亘り使用できる。さらには、環境中に廃棄されたとしても、天然素材であるため、環境に対する負荷を低減できるとともに、微細化したとしても、環境に対して悪影響を及ぼすことがない。
【0022】
[紙製の中空筒体]
紙製の中空筒体は、天然材料をベースとした紙基材(又は繊維基材)、例えば、紙、布帛(不織布、織物、編物など)で形成でき、織物、編物などのように織り組織又は編み組織を有していてもよいが、通常、紙や不織布のように繊維が絡み合った不織布構造(又は抄紙構造)を有している。このような中空筒体は、多孔質構造を有している場合が多い。そのため、天然樹脂又はその誘導体が筒体内に浸透し、筒体の強度を向上させやすいとともに、筒体表面での天然樹脂又はその誘導体の濃度を低減できる。
【0023】
中空筒体を形成する繊維は、吸水性又は親水性繊維及び/又は非吸水性繊維であってもよい。吸水性又は親水性繊維としては、例えば、セルロース系繊維[セルロース繊維(綿、麻などの植物、動物又はバクテリアなどに由来するセルロース繊維)、レーヨン、アセテートなどセルロース誘導体の繊維]、動物由来の繊維(羊毛、絹など)などが例示できる。これらの繊維は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0024】
布帛の繊維の繊度は、例えば、20~600dtex、好ましくは50~300dtex、さらに好ましくは60~200dtex(例えば、70~100dtex)程度であってもよい。また、布帛の嵩高さは、例えば、2~4.5cm3/g、好ましくは2.2~4cm3/g、さらに好ましくは2.5~3.5cm3/g程度であってもよい。布帛の目付は、例えば、50~500g/m2、好ましくは80~400g/m2、さらに好ましくは100~350g/m2程度であってもよい。布帛の厚み(平均厚み)は、0.1~2mm程度の範囲から選択でき、例えば、0.3~1.5mm、好ましくは0.5~1.2mm程度であってもよい。
【0025】
好ましい中空筒体は、パルプ繊維で形成された紙である。なお、紙は、サイジング剤でサイズ処理されていてもよく、炭酸カルシウムなどの填料、酸化チタンなどの着色剤(白色剤を含む)、添加剤などを含んでいてもよい。さらに、紙は、和紙、洋紙のいずれであってもよく、塗工紙又は非塗工紙のいずれであってもよい。
【0026】
紙の嵩高さは、例えば、0.3~1.5cm3/g、好ましくは0.4~1.4cm3/g、さらに好ましくは0.5~1.3cm3/g程度であってもよい。紙の坪量(目付)は、例えば、5~300g/m2(例えば、10~250g/m2)、好ましくは20~200g/m2(例えば、30~150g/m2)、さらに好ましくは40~125g/m2(例えば、50~100g/m2)程度であってもよい。紙の厚み(平均厚み)は、例えば、10~1000μm、好ましくは30~500μm、さらに好ましく50~250μm程度であってもよい。このような紙は、例えば、印刷用紙(薄葉紙、中質紙、アート紙、コート紙、上質紙など)、クラフト紙、エンボス紙、包装紙などの洋紙であってもよく、和紙であってもよい。また、必要であれば、厚紙などであってもよい。
【0027】
なお、前記嵩高さ(cm3/g)は、基材(前記布帛、紙)の厚み(cm)を単位面積当たりの質量(g/cm2)で除算することにより算出できる。
【0028】
前記紙基材(繊維基材)は、筒状に巻回することにより形成でき、シート状又は細幅の紙基材を断面中空筒状に巻回してもよく断面渦巻き状に巻回してもよい。紙基材(繊維基材)の断面中空筒状への巻き数は、例えば、1~10回(例えば、1~5回、特に1~3回)程度であってもよい。本発明では、天然樹脂又はその誘導体が含浸又はコーティングされているため、1~2回(特に、1回)程度の巻き数でも高い強度を有するストローを形成できる。なお、繊維基材(紙基材)の端部(巻回始端部及び/又は先端部)は、筒状体の内周面及び/又は外周面に接合している。また、中空筒体は、隣接部を重ね合わせて螺旋状に巻回したストリップ状の紙基材で形成してもよい。
【0029】
中空筒体の横断面形状は特に制限されず、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形など)、円形状、楕円形状などであってもよく、通常、円形状である。
【0030】
中空筒体の平均内径は、例えば、2~15mm(例えば、3~10mm)程度の範囲から選択でき、長さは、例えば、5~50cm(例えば、10~25cm)程度であってもよい。
【0031】
さらに、中空筒体は、直線状であってもよく湾曲又は屈曲していてもよく、先端部は傾斜して切断(例えば、鋭角に切断)されていてもよい。直線状中空筒体などの中空筒体は、屈曲又は湾曲可能部位、例えば、蛇腹状の屈曲又は湾曲部位を有していてもよい。
【0032】
[天然樹脂又はその誘導体]
前記紙製の中空筒体には天然樹脂又はその誘導体が含浸又はコーティングされている。天然樹脂は、植物性天然樹脂であってもよく、動物性天然樹脂であってもよい。植物性天然樹脂としては、植物由来の種々の樹脂成分、例えば、ロジン、ダンマル(又はダンマー)、マスチック、コーパル(又はコパール、例えば、マニラコーパル、ブラジルコーパル、ポンチアナコーパル、カウリコーパル、コンゴーコーパル、サンジパルコーパル、マダガスカルコーパルなど)、バルサム(カナダバルサム、ギレアドバルサム、グルュンバルサム、メッカバルサム、ペルーバルサム、トルーバルサム、コパイーババルサムなど)、スチラック、エレミ、サンダラック、乳香、カウリ、アカシア樹脂、グアヤク、ラブダヌムなどが例示できる。また、動物性天然樹脂としては、動物由来の樹脂成分、例えば、シェラック(又はセラック)、ゼラチンなどが例示できる。これらの天然樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
前記天然樹脂としては、天然樹脂の主要成分を使用してもよく、例えば、ロジンでは、ロジン酸(アビエチン酸)、デヒドロアビエチン酸、ピマル酸、イソピマル酸などを使用してもよく、サンダラックでは、ピマル酸などを用いてもよく、カウリでは、ダンマル樹脂を用いてもよい。
【0034】
天然樹脂の誘導体には、前記天然樹脂の誘導体に加えて、セルロース誘導体も含まれる。
【0035】
前記天然樹脂の誘導体としては、例えば、不飽和結合を有する天然樹脂(例えば、ロジン)を不均斉化した不均化樹脂(不均化ロジンなど)、水素添加した樹脂(水素添加ロジンなど)、カルボキシル基を有する天然樹脂又はその誘導体のエステル(ロジン酸、ピマル酸、水素添加ロジン酸などの樹脂酸のエステル、例えば、ロジンエチルエステルなどのアルコールエステル、ロジンエチレングリコールエステル、ロジングリセリンエステル、水素添加ロジン酸グリセリンエステル、ロジンペンタエリスリトールエステルなどの多価アルコールエステルなど)、樹脂酸の金属塩(例えば、ロジン酸の多価金属(マグネシウム、亜鉛、カリウムなど)又はアルカリ金属塩など)、樹脂酸の異性体(アビエチン酸の異性体など)などが例示できる。
【0036】
セルロース誘導体は、セルロースエーテル類、セルロースエステル類のいずれであってもよい。セルロースエーテル類としては、例えば、アルキルセルロース類(エチルセルロース、メチルセルロース、ブチルセルロースなどのC1-6アルキルセルロースなど)などが例示できる。セルロースエステル類としては、例えば、セルロースアシレート類(セルロースアセテート(セルロースモノアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースC2-4アシレートなど)などが挙げられる。これらのセルロース誘導体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロース誘導体のうち、セルロースエーテル類(エチルセルロースなどのアルキルセルロース類など)などを用いる場合が多い。
【0037】
これらの天然樹脂の誘導体も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0038】
好ましい天然樹脂は、例えば、ロジン、ダンマル、コーパル、シェラックなどであり、これらの天然樹脂の誘導体(例えば、安全性の高いロジングリセリンエステルなどの樹脂酸エステルなど;エチルセルロースなどのアルキルセルロース類、セルロースアセテートなどのセルロースアシレート類など)も好ましい。
【0039】
天然樹脂又はその誘導体は、常温(25℃)で粘稠であってもよいが、通常、固体である。また、天然樹脂又はその誘導体(ロジン又はその誘導体など)は、ストローに耐水性、防水性を付与するため、通常、非水溶性であり、疎水性樹脂を含む場合が多い。このような天然樹脂又はその誘導体を用いると、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)など親水性樹脂と異なり、高い防水性及び耐水性を付与でき、長時間に亘り飲料中に浸漬しても、ストローの形状を保持できる。
【0040】
さらに、天然樹脂又はその誘導体は、高分子量であってもよいが、含浸性及びコーティング性を向上させるため、比較的低分子量であってもよい。天然樹脂又はその誘導体の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定したとき、ポリスチレン換算で、200~3000、好ましくは250~1500、さらに好ましくは275~1000程度であるのが好ましい。このような点から、ロジン、ダンマル、コーパル、シェラックなどの天然樹脂、ロジングリセリンエステルなどの樹脂酸エステルが好ましい。
【0041】
天然樹脂及びその誘導体は、30~50質量%程度の高濃度の有機溶媒溶液であっても低粘度であってもよく、50質量%のエタノール溶液の粘度(25℃)は、B型粘度計で測定したとき、例えば、5~500mPa・s(例えば、10~400mPa・s)、好ましくは15~300mPa・s(例えば、20~200mPa・s)程度であってもよい。高濃度の有機溶媒溶液の形態で低粘度であると、含浸効率及びコーティング効率を向上できる。
【0042】
天然樹脂又はその誘導体は、中空筒体の内周面及び/又は外周面をコーティングしていてもよく、好ましい態様では、中空筒体を形成する紙基材に含浸している。
【0043】
天然樹脂又はその誘導体の割合(含浸量又はコーティング量)は、固形分換算で、紙製の中空筒体(又は紙基材)100質量部に対して、1~1000質量部(例えば、2~700質量部)、好ましくは3~600質量部(例えば、5~500質量部)程度の範囲から選択でき、10~400質量部(例えば、30~300質量部)、好ましくは50~200質量部(例えば、70~130質量部)程度であってもよい。また、高成形性及び高耐水性を両立し、生産性を向上させる観点から、天然樹脂又はその誘導体の割合は、固形分換算で、紙製の中空筒体(又は紙基材)100質量部に対して、30~1300質量部(例えば、35~1250質量部)、好ましくは40~1200質量部(例えば、45~1100質量部)、さらに好ましくは50~1000質量部(例えば、75~750質量部)程度であってもよく、50~250質量部(例えば、75~150質量部)程度であってもよい。天然樹脂又はその誘導体の割合が少ないと、紙製ストローの強度や防水性が低下しやすくなり、過度に多すぎると天然樹脂又はその誘導体が欠落する場合がある。なお、ロジン又はその誘導体などの天然樹脂又はその誘導体は、少量であっても紙基材に対して高い強度及び剛性を付与できる。また、天然樹脂又はその誘導体(ロジン又はその誘導体)が紙基材の内部に浸透するため、紙基材の表面での天然樹脂又はその誘導体(ロジン又はその誘導体)の付着量を極力少なくすることができ、脱型性を向上できる。なお、紙基材に対する天然樹脂又はその誘導体(ロジン又はその誘導体)の含浸量(付着量)を適正化することにより、接着性の高い天然樹脂又はその誘導体を用いても脱型性をさらに向上できる。
【0044】
紙製ストローは、必要であれば、種々の添加剤、例えば、分散剤又は界面活性剤、粘度調整剤又はレオロジー調整剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、レベリング剤、芳香剤、甘味剤などを含んでいてもよい。
【0045】
[紙製ストローの製造方法]
紙製ストローは、前記の方法に限らず、棒状の成形型に巻回され、かつ天然樹脂又はその誘導体が含浸又はコーティングされた紙製の中空筒体を、前記成形型から脱型することにより製造でき、前記天然樹脂又はその誘導体は、溶融した状態で、紙基材の中空筒体に含浸又はコーティングしてもよいが、紙基材に均一に保持又は担持させるため、有機溶媒との混合物(又は有機溶媒溶液)の形態で使用する場合が多い。
【0046】
具体的には、紙製ストローは、棒状の形成型に巻回され、かつ天然樹脂又はその誘導体と有機溶媒とを含む混合液が含浸又はコーティングされた紙製の中空筒体を乾燥し、前記成形型から紙製の中空筒体を脱型することにより製造できる。なお、棒状の形成型に対する紙基材の巻回方法は特に制限されず、例えば、前記のように、ストリップ状の紙基材を棒状の形成型に螺旋状に巻回してもよく、方形状(例えば、シート状又は細幅状)の紙基材を棒状の形成型に断面筒状又は渦巻き状に巻回(例えば、紙基材の側縁又は巻回開始側縁を、棒状の形成型の軸方向に沿わせて巻回)してもよい。後者の巻回方法では、巻回開始部及び/又は先端部(又は先頭部)が、巻回体(筒状体)の内周面及び/又は外周面に接触又は重ね合わせて巻回され、この接触部又は重ね合わせ部で、前記天然樹脂又はその誘導体により接合している。より具体的には、棒状の成形型に紙基材を巻回し、天然樹脂又はその誘導体を含む混合液(又は樹脂溶液)を前記紙基材に含浸又はコーティングし、乾燥してもよく、混合液(又は樹脂溶液)を予め含浸又はコーティングした前記紙基材を、棒状の成形型に巻回し、乾燥してもよい。
【0047】
なお、混合液(又は樹脂溶液)のコーティングにおいて、混合液(又は樹脂溶液)は、前記紙基材の内面(棒状形成型と接触する面)にコーティングしてもよいが、通常、外面にコーティングする場合が多い。特に、ストローを効率よく製造するためには、混合液(又は樹脂溶液)を予め含浸した紙基材を、棒状の成形型に巻回し、乾燥する方法が好ましい。
【0048】
[有機溶剤]
前記混合液(又は樹脂溶液)は、天然樹脂又はその誘導体を有機溶媒に溶解又は分散することにより調製できる。
【0049】
有機溶媒は、前記天然樹脂又はその誘導体が可溶であり、かつ乾燥により除去可能であればよく、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)、エステル類(酢酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、ジオキサンなど)、炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサンなど)、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなど)、N-メチルピロリドン、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、グリコールエーテル類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類;メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのカルビトール類;プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、グライム又はジグライム類(エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなど)、グリコールエーテルエステル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0050】
好ましい溶媒は、安全性の高いアルコール類(エタノール、イソプロピルアルコールなど)、N-メチルピロリドンなどであり、エタノールが特に好ましい。なお、必要であれば、水を併用してもよい。
【0051】
前記混合液(又は樹脂溶液)において、天然樹脂又はその誘導体の濃度は、紙基材に対する含有量に応じて、例えば、1~65質量%、好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~55質量%程度であってもよい。
【0052】
なお、前記天然樹脂又はその誘導体を含む混合液又は樹脂溶液は、前記添加剤を含んでいてもよい。
【0053】
含浸及びコーティングは慣用の方法で行うことができ、含浸は、例えば、浸漬(ディッピング法)、スプレー噴霧などの方法で行ってもよく、コーティングは、フローコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、キャスト法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法などを利用できる。
【0054】
棒状成形型は、金属、セラミックス(ガラスを含む)、プラスチックなどで形成してもよい。棒状成形型は、必要であれば、離型剤で離型処理してもよい。離型剤としては、例えば、シリコーンオイル、界面活性剤などを使用してもよいが、天然由来の離型成分(蜜蝋、木蝋、米糠蝋、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、トリグリセライドなどの高級脂肪酸又はその金属塩若しくはそのエステルなど)であってもよい。
【0055】
天然樹脂又はその誘導体が前記混合液(又は樹脂溶液)の形態で含浸された紙基材は、前記棒状成形型に所定回数巻回して重ね合わせ部(巻回において先行する先端部又は接合部若しくは糊代部)を重ねることにより、棒状成形型の周囲に含浸筒体を形成できる。
【0056】
乾燥は、例えば、室温(20~25℃)以上の温度、例えば、30~150℃(例えば、50~120℃)程度で行ってもよい。
【0057】
棒状の成形型から乾燥した筒体を脱型する(抜き取る)ことにより、紙製ストローを製造できる。なお、天然樹脂又はその誘導体(ロジン又はその誘導体など)は接着性が高い場合が多いものの、非浸透性基材と異なり紙製筒体では天然樹脂又はその誘導体が内部に浸透し、成形型と接触する筒体内周面での天然樹脂又はその誘導体の濃度を低減できる。しかも、乾燥及び冷却に伴って天然樹脂又はその誘導体が収縮するためか、棒状成形型との接触面積を低減でき、成形型からの紙製の中空筒体の脱型性を向上できる。
【0058】
なお、室温で固体の天然樹脂又はその誘導体、例えば、ロジン又はその誘導体は、比較的高温(例えば、100℃)でも溶融することがない。そのため、温度の高い季節及び使用条件でも流動・溶融することがなく、保形性を維持できる。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0060】
[使用材料]
ロジン:植物性天然樹脂(富士フイルム和光純薬(株)製、酸価155~175、けん化価170~185)
ポリビニルアルコール(PVA):水溶性樹脂(富士フイルム和光純薬(株)製、平均重合度約1500~1800、けん化度98mol%以上)
エタノール:富士フイルム和光純薬(株)製、和光一級
【0061】
[ストローの成形性の評価]
ストローの製造における成形性の評価として、脱型性及び接着性をそれぞれ評価した結果から総合的に判定した。
【0062】
(1)脱型性
芯棒(成形型)から中空円筒体を容易に抜き取れるか判定した。
〇:芯棒から抜き取れる
×:芯棒から抜き取れない。
【0063】
(2)接着性
芯棒(成形型)から抜き取った中空円筒状ストロー(紙製ストロー)を、円筒の対面が接触するように指で押し潰した後、糊代部が接着しているか判定した。また、中空円筒状ストロー(紙製ストロー)を指で押した後に、表面にクラックが入っていないかを目視で確認した。
○:糊代部が接着している
×:糊代部が接着していない、又は指で押した後にクラックが入る。
【0064】
脱型性及び接着性の評価結果から、ストローの成形性の判定を以下のように行った。
A:脱型性、接着性がいずれも○である(合格)
B:脱型性は○であるが、接着性が×である(不合格)
C:脱型性が×である(不合格)。
【0065】
[ストローの耐水性の評価]
成形性評価でA判定のストローについて、防水性、保形性及び耐剥がれ性をそれぞれ評価した結果から総合的に判定した。
【0066】
(1)防水性
中空円筒状ストロー内部に蒸留水を充填し、両端を密閉クリップで密閉した。室温(25℃)で12時間放置した後、水がストロー表面から滲出していないか判定した。
○:ストロー表面から蒸留水が滲出していない
×:ストロー表面から蒸留水が滲出している。
【0067】
(2)保形性
中空円筒状ストローを室温(25℃)でガラスコップ内の水に12時間浸漬した。60℃のオーブンで10分間乾燥した後、ストローが変形していないか判定した。
○:浸漬した部分が変形していない
×:浸漬した部分が変形している。
【0068】
(3)耐剥がれ性
中空円筒状ストローを室温(25℃)でガラスコップ内の水に12時間浸漬した。60℃のオーブンで10分間乾燥した後、糊代部が剥がれていないか判定した。
○:浸漬した部分の糊代部が全く剥がれていない
×:浸漬した部分の糊代部の一部又は全て剥がれている
【0069】
防水性、保形性及び耐剥がれ性の評価結果から、ストローの耐水性の判定を以下のように行った。
A:防水性、保形性、耐剥がれ性の判定が全て○である(合格)
B:防水性、保形性、耐剥がれ性の判定に×がある(不合格)
C:防水性、保形性、耐剥がれ性の判定が全て×である(不合格)。
【0070】
[総合判定]
実施例1~6、参考例1~3及び比較例1で作製した中空円筒状ストローについて、成形性及び耐水性の評価結果から、総合判定を行い、A、B判定を合格とした。
A:成形性、耐久性がいずれもA判定の場合
B:成形性はA判定であるが、耐水性はB又はC判定の場合
C:成形性がB又はC判定の場合
【0071】
[実施例1]
ロジンをエタノールに溶解し、50質量%のロジン溶液を調製した。このロジン溶液を不織紙(コピー用紙:坪量68g/m2、紙厚0.09mm、アスクル(株)製「マルチペーパースーパーエコノミー+」)に浸透させて液垂れが生じない程度に含浸させた。ロジンの含浸量は、不織紙100質量部に対して100質量部であった。なお、ロジンの含浸量は、予め測定した不織紙の質量と、ロジンを含浸させた後の不織紙の質量との差として算出した。
【0072】
この含浸不織紙を、ガラス製の円柱状の芯棒(成形型)に巻きつけ、含浸不織紙の先端部の糊代部を外周面に固定した。そして、オーブンを用い温度80℃で15分間乾燥させ、エタノールを除去した後、室温に冷却し、芯棒(成形型)から中空円筒体を抜き取り、中空円筒状ストロー又は紙製ストロー(内径10mm×長さ200mm)を得た。なお、ストローの抜き取りは円滑に行うことができた。
【0073】
[実施例2]
不織紙(コピー用紙)に代えて、不織紙(ペーパータオル:日本製紙クレシア(株)製「クレシアEFハンドタオル」)を用いる以外、実施例1と同様にして中空円筒状ストロー(紙製ストロー)を得た。なお、ロジンの含浸量は、不織紙100質量部に対して100質量部であった。
【0074】
[実施例3]
不織紙(コピー用紙)に代えて、不織紙(セルロース不織布:旭化成(株)製「ベンコットM-3II」)を用いる以外、実施例1と同様にして中空円筒状ストロー(紙製ストロー)を得た。なお、ロジンの含浸量は、不織紙100質量部に対して100質量部であった。
【0075】
[実施例4]
50質量%のロジン溶液に代えて、25質量%のロジン溶液を用い、ロジンの含浸量を、不織紙100質量部に対して50質量部とする以外、実施例1と同様にして中空円筒状ストロー(紙製ストロー)を得た。
【0076】
[実施例5]
ロジンの含浸量を、不織紙100質量部に対して500質量部とする以外、実施例1と同様にして中空円筒状ストロー(紙製ストロー)を得た。なお、ロジンの含浸量の増量は以下のように行った。実施例1の含浸不織紙を、60℃のオーブン内で10分間乾燥してロジンを付着させた後、ロジンの含浸量を算出した。このロジン溶液の含浸及び乾燥の操作を、ロジンの含浸量が所定の量となるまで繰り返し行った。
【0077】
[実施例6]
ロジンの含浸量を、不織紙100質量部に対して1000質量部とする以外、実施例1と同様にして中空円筒状ストロー(紙製ストロー)を得た。なお、ロジンの含浸量の増量は、実施例5と同様に行った。
【0078】
[参考例1]
50質量%のロジン溶液に代えて、5質量%のロジン溶液を用い、ロジンの含浸量を、不織紙100質量部に対して1質量部とする以外、実施例1と同様にして中空円筒状ストロー(紙製ストロー)を得た。
【0079】
[参考例2]
50質量%のロジン溶液に代えて、25質量%のロジン溶液を用い、ロジンの含浸量を、不織紙100質量部に対して25質量部とする以外、実施例1と同様にして中空円筒状ストロー(紙製ストロー)を得た。
【0080】
[参考例3]
ロジンの含浸量を、不織紙100質量部に対して1500質量部とする以外、実施例1と同様にして中空円筒状ストロー(紙製ストロー)を得た。
【0081】
[比較例1]
ロジン溶液に代えて、PVAを60℃の温水に溶解して調製した25質量%のPVA溶液を用いる以外、実施例1と同様にして中空円筒状ストロー(紙製ストロー)を得た。
【0082】
実施例1~6、参考例1~3及び比較例1で作製した中空円筒状ストローについて、成形性及び耐水性について評価し、総合判定を行った。結果を表1に示す。
【0083】
【0084】
表1の結果から明らかなように、実施例1~6で得られたストローを、室温(25℃)でガラスコップ内の水に浸漬したところ、12時間後にも変形がなく、保形性が維持された。
【0085】
また、実施例1~6で得られたストローは、成形性、耐水性、総合判定のいずれにおいてもA判定を示し、長時間に亘り飲料中に浸漬しても良好な防水性、耐剥がれ性を有し、高耐水性を示した。さらに、実施例1~6で得られたストローは、高い接着性を有するにもかかわらず、成形型からの脱型性も高く、成形性にも優れていた。なお、実施例2、3から明らかなように、不織紙(コピー用紙)の代わりに、ペーパータオル、セルロース不織布を用いても、実施例1と同様の結果が得られた。
【0086】
ロジンの含浸量が、不織紙100質量部に対して1500質量部である参考例3では、脱型性がC判定、総合判定においてもC判定であった。ロジンの含浸量が不織紙100質量部に対して1000質量部を超えると脱型性が低下した。また、参考例2では、成形性はA判定であったが、耐水性がC判定となり、総合判定がB判定となった。参考例1では、ロジンの含浸量が少量のため、高い接着性が得られず、成形性がB判定となり、総合判定でC判定となった。ロジンの含浸量が、不織紙100質量部に対して50質量部を下回ると、耐水性が低下した。
【0087】
ロジン溶液に代えて、PVA溶液を用いた比較例1では、高い成形性を示したが、PVAが水溶性であるため、耐水性に劣っていた。
【0088】
このように、実施例1~6で得られたストローでは、耐水性に優れるとともに、高い接着性とその背反する性質である脱型性とを両立しており、生産性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の紙製ストローは、飲料(牛乳、果汁、コーヒーなど)などの種々の流動体の摂取に利用でき、飲料は、炭酸などを含んでいてもよく、加温又は加熱された飲料であってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…紙製ストロー
2…含浸紙基材
11…棒状成形型