(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】標識識別システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20231219BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231219BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20231219BHJP
【FI】
G08G1/09 D
G06T7/00 650A
G06T7/60 180Z
(21)【出願番号】P 2020030728
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲司
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-257299(JP,A)
【文献】特開2017-102665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G06T 7/00
G06T 7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方を撮影するカメラと、
前記カメラが撮影した画像に基づいて特定の道路標識を識別する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記特定の道路標識の形状に基づいて、前記画像から、前記特定の道路標識の候補を抽出する標識抽出処理と、
前記画像から、車線を区画する線を抽出する車線抽出処理と、
前記候補を通る垂線と前記線との交点を抽出する交点抽出処理と、
前記候補の面積を計算する面積抽出処理と、
前記垂線が延びる方向における前記交点の座標
と前記面積との相関を示す関数に基づいて、
前記垂線が延びる方向における前記交点の座標が、前記面積に対し、自車線側の候補が含まれ対向車線側の候補が除外される特定の範囲内にある候補を選択する選択処理と
を実行することを特徴とする、標識識別システム。
【請求項2】
車両の前方を撮影するカメラと、
前記カメラが撮影した画像に基づいて特定の道路標識を識別する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記特定の道路標識の形状に基づいて、前記画像から、前記特定の道路標識の候補を抽出する標識抽出処理と、
前記画像から、車線を区画する線として、自車線側の線と対向車線側の線とを抽出する車線抽出処理と、
前記候補を通る垂線と、前記自車線側の線または前記対向車線側の線との交点を抽出する交点抽出処理と、
前記候補を通る垂線が前記自車線側の線と交わる場合、前記候補を自車線側の候補として選択し、その後、前記自車線側の候補のうち、交点の座標が前記車両に最も近い候補を選択する選択処理と
を実行することを特徴とする、標識識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標識識別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前方を撮影するカメラが撮影した画像に基づいて一時停止標識を識別する方法が、提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
この方法では、カメラが撮影した画像から赤色領域を抽出し、抽出した赤色領域がT字形状であるか否かを判定することにより、一時停止標識を識別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に記載の方法では、夜間や逆光など、一時停止標識の露光環境により、一時停止標識の色彩を正確に撮影することが困難な場合がある。
【0006】
その場合、識別すべき一時停止標識を、識別できない場合がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、識別すべき特定の道路標識を、より確実に識別できる標識識別システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両の前方を撮影するカメラと、前記カメラが撮影した画像に基づいて特定の道路標識を識別する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記特定の道路標識の形状に基づいて、前記画像から、前記特定の道路標識の候補を抽出する標識抽出処理と、前記画像から、車線を区画する線を抽出する車線抽出処理と、前記候補を通る垂線と前記線との交点を抽出する交点抽出処理と、前記交点の座標に基づいて、自車線側に存在し、かつ、前記車両に最も近い候補を選択する選択処理とを実行する、標識識別システムを含む。
【0009】
このような構成によれば、カメラが撮影した画像から、特定の道路標識の形状に基づいて、特定の道路標識の候補を抽出する。
【0010】
そして、車線を区画する線を抽出し、候補を通る垂線と自車線側の線との交点の座標に基づいて、自車線側に存在し、かつ、車両に最も近い候補、すなわち、識別すべき候補を抽出する。
【0011】
その結果、識別すべき特定の道路標識を、より確実に識別できる。
【0012】
また、標識識別システムは、特定の道路標識の形状が認識できる程度の画像を撮影できる比較的安価なカメラを備えていればよい。
【0013】
そのため、標識識別システムのコスト低減を図ることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の標識識別システムによれば、識別すべき特定の道路標識を、より確実に識別できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態としての標識識別システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、標識識別システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2の標識識別ルーチンを説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図4は、カメラが撮影した画像の一例である。
【
図5】
図5は、第2の変形例を説明するための説明図である。
【
図6】
図6は、第3の変形例を説明するための説明図である。
【
図7】
図7は、第3の変形例における面積とy座標との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.標識識別システムの構成
標識識別システム1は、車両に搭載される。なお、標識識別システム1は、車両に取り付けられるドライブレコーダーであってもよい。標識識別システム1は、特定の道路標識を識別する。特定の道路標識としては、例えば、一時停止標識などの規制標識が挙げられる。
【0017】
図1に示すように、標識識別システム1は、カメラ2と、制御装置3と、必要により、ストレージ4と、報知器5とを備える。
【0018】
(1)カメラ
カメラ2は、車両の前方を撮影する。
【0019】
(2)制御装置
制御装置3は、標識識別システム1の動作を制御する。制御装置3は、有線または無線により、カメラ2、ストレージ4および報知器5と通信可能である。制御装置3は、カメラ2が撮影した画像に基づいて特定の道路標識を識別する。詳しくは、制御装置3は、メインメモリ6と、プロセッサ7とを有する。
【0020】
メインメモリ6は、カメラ2が撮影した画像を記憶する。メインメモリ6としては、例えば、RAM(Random Access Memory)が挙げられる。
【0021】
プロセッサ7は、メインメモリ6に記憶されている画像に基づいて、特定の道路標識を識別する。プロセッサ7としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)などが挙げられる。プロセッサ7は、特定の道路標識の形状が記憶されたROM(Read Only Memory)を有してもよい。なお、制御装置3は、特定の道路標識の形状が記憶されたROMを、プロセッサ7とは独立に有してもよい。
【0022】
なお、制御装置3は、車両の動作を制御するECUであってもよい。また、制御装置3は、ECUから独立していてもよい。制御装置3がECUから独立している場合、制御装置3は、有線または無線により、ECUと通信可能であってもよい。
【0023】
(3)ストレージ
ストレージ4は、必要により、メインメモリ6に記憶されている画像を記憶する。ストレージ4としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などが挙げられる。
【0024】
(4)報知器
報知器5は、特定の道路標識の接近を、ユーザーに報知する。報知器5は、例えば、スピーカーである。なお、報知器5は、カーナビゲーションシステムであってもよい。報知器5がカーナビゲーションシステムである場合、報知器5は、特定の道路標識の接近を画面に表示してもよい。
【0025】
2.標識識別システムの制御
次に、標識識別システム1の制御について説明する。
【0026】
図2に示すように、標識識別システム1が起動すると、制御装置3は、標識識別ルーチン(S1)を実行する。制御装置3は、標識識別ルーチン(S1)により、カメラ2が撮影した画像に基づいて特定の道路標識を識別する。
【0027】
(1)標識識別ルーチン
図3に示すように、標識識別ルーチン(S1)において、制御装置3は、標識抽出処理(S11)と、車線抽出処理(S12)と、交点抽出処理(S14)と、選択処理(S16)とを実行する。
【0028】
なお、以下の説明では、
図4に示すように、交差点で一時停止標識(特定の道路標識の一例)を識別する場合を例に挙げて、説明する。車両が交差点に差し掛かる前にカメラ2が撮影した画像I
(n)には、自車線側の一時停止標識M1、M2と、対向車線側の一時停止標識M3とが移っている。自車線側の一時停止標識M2は、車両の進行方向において、自車線側の一時停止標識M1よりも車両から遠くに配置されている。
【0029】
(1-1)標識抽出処理
標識抽出処理(S11、
図3参照)において、制御装置3は、ROMに記憶されている一時停止標識の形状(逆三角形状)に基づいて、画像I
(n)から、一時停止標識の候補を抽出する。
【0030】
詳しくは、制御装置3は、画像I(n)の中から、テンプレートマッチングなどの画像処理によって、一時停止標識の形状と類似する形状を、一時停止標識の候補として抽出する。この実施形態では、制御装置3は、自車線側の一時停止標識M1、M2と、対向車線側の一時停止標識M3とを、一時停止標識の候補として抽出する。
【0031】
(1-2)車線抽出処理
また、車線抽出処理(S12、
図3参照)において、制御装置3は、画像I
(n)から、車線を区画する線を抽出する。
【0032】
具体的には、制御装置3は、画像I(n)の中から、テンプレートマッチングなどの画像処理によって、車線を区画する線L1、L2を抽出する。なお、以下の説明において、線L1を自車線側の線L1と記載し、線L2を対向車線側の線L2と記載する。
【0033】
(1-3)交点抽出処理
図3に示すように、標識抽出処理(S11)において、一時停止標識の候補が抽出された場合(S13、YES)、制御装置3は、交点抽出処理(S14)を実行する。
【0034】
なお、標識抽出処理(S11)において、一時停止標識の候補が1つも抽出されなかった場合(S13、NO)、制御装置3は、再度、標識抽出処理(S11)を実行する。
【0035】
図4に示すように、交点抽出処理(S14)では、制御装置3は、候補M1を通る垂線L3と自車線側の線L1との交点P1、候補M2を通る垂線L4と自車線側の線L1との交点P2、および、候補M3を通る垂線L5と対向車線側の線L2との交点P3を抽出する。
【0036】
なお、「候補を通る垂線」とは、カメラ2が撮影した画像I(n)において、左右方向をx方向とし、上下方向をy方向とした場合に、候補の中心を通り、y方向に延びる線である。
【0037】
(1-4)選択処理
図3に示すように、交点抽出処理(S14)において、1以上の交点が抽出された場合(S15、YES)、制御装置3は、選択処理(S16)を実行する。
【0038】
なお、交点抽出処理(S14)において、交点が抽出されなかった場合(S15、NO)、制御装置3は、再度、標識抽出処理(S11)を実行する。
【0039】
選択処理(S16)では、制御装置3は、交点抽出処理(S14)によって抽出された交点P1、P2、P3の座標に基づいて、自車線側に存在し、かつ、車両に最も近い候補を選択する。
【0040】
具体的には、
図4に示す画像I
(n)において、左上方の角を座標(0,0)とし、右方へ向かうにつれてx座標の数値が大きくなり、下方へ向かうにつれてy座標の数値が大きくなる場合、制御装置3は、交点P1、交点P2、交点P3のうち、y座標が最も大きい交点P1に対応する候補M1を、選択する。
【0041】
その後、制御装置3は、標識識別ルーチン(S1)を終了する。
【0042】
(2)運転者への報知
図2に示すように、標識識別ルーチン(S1)が終了した後、車両と候補M1との距離が所定の距離以下となった場合、すなわち、車両が一時停止標識に接近した場合(S2:YES)、制御装置3は、報知器5により、一時停止標識の接近を、運転者に報知する(S3)。
【0043】
制御装置3は、車両が停止したこと、すなわち、車両の速度が0km/時になったことを条件として(S4:YES)、報知を停止する(S5)。
【0044】
3.作用効果
標識識別システム1によれば、
図4に示すように、カメラ2が撮影した画像I
(n)から、一時停止標識の形状に基づいて、一時停止標識の候補M1、M2、M3を抽出する(標識抽出処理(S11)、
図3参照)。
【0045】
そして、車線を区画する線L1、L2を抽出し(車線抽出処理(S12)、
図3参照)、候補M1を通る垂線L3と自車線側の線L1との交点P1、候補M2を通る垂線L4と自車線側の線L1との交点P2、および、候補M3を通る垂線L5と対向車線側の線L2との交点P3を、画像I
(n)から抽出する(交点抽出処理(S14)、
図3参照)。
【0046】
そして、交点P1、P2、P3の座標に基づいて、自車線側に存在し、かつ、車両に最も近い候補、すなわち、識別すべき候補を選択する(選択処理(S16)、
図3参照)。
【0047】
具体的には、画像I(n)の左上方の角を座標(0,0)とし、右方へ向かうにつれてx座標の数値が大きくなり、下方へ向かうにつれてy座標の数値が大きくなる場合、交点P1、交点P2、交点P3のうち、y座標が最も大きい交点P1に対応する候補M1を、選択する。
【0048】
その結果、識別すべき一時停止標識を、より確実に識別できる。
【0049】
また、標識識別システム1は、一時停止標識の形状が認識できる程度の画像を撮影できる比較的安価なカメラ2を備えていればよい。
【0050】
そのため、標識識別システム1のコスト低減を図ることもできる。
【0051】
4.変形例
次に、変形例について説明する。なお、変形例において、上記した実施形態と同様の部材、同様の処理には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0052】
(1)選択処理(S16)において、制御装置3は、候補M1、M2、M3から、候補を通る垂線が自車線側の線L1と交わる候補M1、M2を選択し、その後、交点のy座標が最も大きい候補M1を選択してもよい。
【0053】
(2)
図5に示すように、画像I
(n)(
図4参照)の後に撮影された画像I
(n+1)において、画像I
(n)に写っていた一時停止標識M1がフレームアウトし、対向車線側の一時停止標識M3だけが写っている場合が想定される。この場合、選択処理(S16)において、y座標が最も大きい交点に対応する候補を選択すると、一時停止標識M3を自車線の標識として誤って識別してしまう。
【0054】
そこで、制御装置3は、対向車線側の線L2の端点Eよりもy座標が小さい交点P3に対応する一時停止標識M3を、画像I(n+1)中の候補から除外してもよい。
【0055】
これにより、自車線の標識を、より正確に識別できる。
【0056】
(3)また、
図6に示すように、画像I
(m)中に、別の車道の一時停止標識M4が写り込んでいる場合が想定される。この場合、候補M4を通る垂線L6と対向車線側の線L2との交点P4のy座標は、候補M1を通る垂線L3と自車線側の線L1との交点P1のy座標よりも大きくなる。この場合も、選択処理(S16)において、y座標が最も大きい交点に対応する候補を選択すると、一時停止標識M4を自車線の標識として誤って識別してしまう。
【0057】
そこで、制御装置3は、候補M1、M4の面積(画素数)を計算し、面積とy座標との相関を示す関数F(
図7参照)に基づいて、面積に対してy座標が大きすぎる場合(
図7のエリアA1に該当する場合)、画像I
(m)中の候補から除外してもよい。
【0058】
これにより、制御装置3は、選択処理(S16)において、関数Fに基づいて、面積に対してy座標が妥当な範囲(
図7のエリアA1に該当する場合)にある候補M1を、選択でき、自車線の標識を、より正確に識別できる。
【符号の説明】
【0059】
1 標識識別システム
2 カメラ
3 制御装置
I(n) 画像
L1、L2 線
L3~L5 垂線
M1~M3 候補
P1~P3 交点
S11 標識抽出処理
S12 車線抽出処理
S14 交点抽出処理
S16 選択処理