(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】カテーテル及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20231219BHJP
【FI】
A61M25/10 520
(21)【出願番号】P 2020039835
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 博
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 靖夫
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表平01-502484(JP,A)
【文献】特開平04-261668(JP,A)
【文献】特開平10-328306(JP,A)
【文献】国際公開第99/042159(WO,A1)
【文献】特表昭58-501983(JP,A)
【文献】国際公開第2009/157884(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なシャフト部と、
前記シャフト部の先端側に配置され径方向に拡張可能な先端側バルーンと、
前記先端側バルーンの基端側に配置され径方向に拡張可能な基端側バルーンと、を有し、
前記シャフト部は、長さ方向に沿う第1ルーメンと第2ルーメンとを有し、
前記第1ルーメンは、前記基端側バルーンより基端側に外部と連通する第1開口部を有し、
前記第2ルーメンは、前記基端側バルーンと前記先端側バルーンとの間に外部と連通する第2開口部を有
し、
前記第1開口部と前記第2開口部のうち一方は、前記基端側バルーンが収縮した状態で生体内に流体を注入する注入口であり、前記第1開口部と前記第2開口部のうち他方は、前記基端側バルーンが収縮した状態で生体内の流体を吸引する吸引口であるカテーテル。
【請求項2】
前記シャフト部は、前記先端側バルーンに拡張用流体を供給する外側拡張ルーメンを有し、
前記外側拡張ルーメンは、前記第1ルーメンと、前記第2ルーメンと、前記基端側バルーンに拡張用流体を供給する内側拡張ルーメンと、を内部に有する請求項
1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記シャフト部は、前記基端側バルーンに拡張用流体を供給する外側拡張ルーメンを有し、
前記外側拡張ルーメンは、前記第1ルーメンと、前記先端側バルーンに拡張用流体を供給する内側拡張ルーメンと、を内部に有し、
前記内側拡張ルーメンは、前記第2ルーメンを内部に有する請求項
1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記シャフト部は、前記基端側バルーンに拡張用流体を供給する外側拡張ルーメンを有し、
前記外側拡張ルーメンは、前記第1ルーメンと、先端に前記第2開口部を有する前記第2ルーメンと、を内部に有し、
前記第2ルーメンは、前記先端側バルーンに拡張用流体を供給する内側拡張ルーメンを内部に有する請求項
1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記基端側バルーンは、外表面に薬剤を有する請求項1~
4のいずれか1項に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体管腔内に挿入されるカテーテルに関し、特に、生体管腔内で拡張可能なバルーンを有するカテーテル及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体管腔内に生じた病変部(狭窄部)改善のため、バルーンカテーテルが広く用いられている。バルーンカテーテルは、通常、長尺なカテーテル本体部と、このカテーテル本体部の先端側に設けられて径方向に拡張可能なバルーンとを備えており、収縮されているバルーンを、細い生体管腔を経由して体内の目的場所まで到達させた後に拡張させることで、病変部を押し広げることができる。
【0003】
一方、病変部をバルーンにより強制的に押し広げると、平滑筋細胞が過剰に増殖して病変部に新たな狭窄(再狭窄)を発症する場合がある。このため、バルーンの外表面に狭窄を抑制するための薬剤をコーティングした薬剤溶出性バルーンが用いられている。薬剤溶出性バルーンは、拡張することで外表面にコーティングされている薬剤を病変部へ瞬時に放出し、薬剤を生体組織へ移行させることができ、これにより、再狭窄を抑制することができる。バルーンの外表面に設けられる薬剤は、再狭窄の防止以外にも様々な用途のものが用いられ得る。
【0004】
病変部に薬剤を供給する手段として、例えば特許文献1には、先端側と基端側にそれぞれバルーンを設け、先端側のバルーンと基端側のバルーンとの間に薬剤の供給口及び溶解物の回収口を設けたカテーテルが開示されている。特許文献1のカテーテルは、生体管腔中の血栓を、先端側のバルーンと基端側のバルーンとの間に設けられた注入口からの薬剤によって溶解させ、回収するためのデバイスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薬剤溶出性バルーンにおいては、バルーン自体が薬剤を有している。バルーンを拡張させて生体管腔を押し広げつつ薬剤を生体組織に移行させる際には、薬剤の一部が飛散し、生体組織に移行しないまま生体管腔内に残存する。これをそのままにしておくと塞栓リスクを生じる。このため、薬剤溶出性バルーンから飛散した薬剤を回収できるデバイスが必要とされている。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、薬剤溶出性バルーンから飛散した薬剤を回収できるカテーテル及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係るカテーテルは、長尺なシャフト部と、
前記シャフト部の先端側に配置され径方向に拡張可能な先端側バルーンと、
前記先端側バルーンの基端側に配置され径方向に拡張可能な基端側バルーンと、を有し、
前記シャフト部は、長さ方向に沿う第1ルーメンと第2ルーメンとを有し、
前記第1ルーメンは、前記基端側バルーンより基端側に外部と連通する第1開口部を有し、
前記第2ルーメンは、前記基端側バルーンと前記先端側バルーンとの間に外部と連通する第2開口部を有し、
前記第1開口部と前記第2開口部のうち一方は、前記基端側バルーンが収縮した状態で生体内に流体を注入する注入口であり、前記第1開口部と前記第2開口部のうち他方は、前記基端側バルーンが収縮した状態で生体内の流体を吸引する吸引口である。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成したカテーテルは、基端側バルーンの基端側と先端側で、流体の注入及び吸引を行うことができるので、飛散した薬剤を希釈しつつ回収することができる。また、カテーテルは、流体の注入及び吸引を、収縮した基端側バルーンを挟んで両側で行い、基端側バルーンから飛散した薬剤を確実に回収できる。
【0012】
また、前記シャフト部は、前記先端側バルーンに拡張用流体を供給する外側拡張ルーメンを有し、前記外側拡張ルーメンは、前記第1ルーメンと、前記第2ルーメンと、前記基端側バルーンに拡張用流体を供給する内側拡張ルーメンと、を内部に有するようにしてもよい。これにより、先端側バルーンと基端側バルーンとにそれぞれ拡張用流体を供給するルーメンと、流体の注入及び吸引を行うルーメンとを、それぞれ独立して設けることができる。
【0013】
また、前記シャフト部は、前記基端側バルーンに拡張用流体を供給する外側拡張ルーメンを有し、前記外側拡張ルーメンは、前記第1ルーメンと、前記先端側バルーンに拡張用流体を供給する内側拡張ルーメンと、を内部に有し、前記内側拡張ルーメンは、前記第2ルーメンを内部に有するようにしてもよい。これにより、ルーメンを多重構造としつつ各ルーメンを独立して設けることができる。
【0014】
また、前記シャフト部は、前記基端側バルーンに拡張用流体を供給する外側拡張ルーメンを有し、前記外側拡張ルーメンは、前記第1ルーメンと、先端に前記第2開口部を有する前記第2ルーメンと、を内部に有し、前記第2ルーメンは、前記先端側バルーンに拡張用流体を供給する内側拡張ルーメンを内部に有するようにしてもよい。これにより、第2開口部を第2ルーメンの先端に形成できるので、他のルーメンを貫通することなく第2ルーメンを設けることができる。
【0015】
また、前記基端側バルーンは、外表面に薬剤を有するようにしてもよい。これにより、基端側バルーンによる治療効果を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】カテーテルの全体構成を表した正面図である。
【
図2】収縮状態にあるバルーン付近の拡大断面図である。
【
図3】生体内に配置されたカテーテルの先端部付近拡大図である。
【
図4】先端側バルーンと基端側バルーンを拡張させた状態のカテーテルの先端部付近拡大図である。
【
図5】基端側バルーンを収縮させて基端側から流体を注入すると共に先端側から流体を吸引している状態のカテーテルの先端部付近拡大図である。
【
図6】基端側バルーンを収縮させて先端側から流体を注入すると共に基端側から流体を吸引している状態のカテーテルの先端部付近拡大図である。
【
図7】第2の形態のカテーテルのうちバルーン付近の拡大断面図である。
【
図8】第3の形態のカテーテルのうちバルーン付近の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書では、カテーテル10の生体管腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
【0019】
まず、カテーテル10の構成について説明する。カテーテル10は、
図1に示すように、長尺で中空管状のシャフト部11と、シャフト部11の先端部に設けられる先端側バルーン12及び基端側バルーン13とを有している。シャフト部11の内部には複数のルーメンが設けられており、各ルーメンはシャフト部11の基端部に設けられる第1ポート15と第2ポート16と第3ポート17及び第4ポート18に接続される。
【0020】
第1ポート15は、生体管腔内に注入される流体の供給部(図示しない)に接続される。第2ポート16は、生体管腔から流体を吸引するための吸引部(図示しない)に接続される。第3ポート17は、先端側バルーン12に対する拡張用流体の供給部(図示しない)に接続される。第4ポート18は、基端側バルーン13に対する拡張用流体の供給部(図示しない)に接続される。第1ポート15に接続される流体の供給部及び第2ポート16に接続される流体の吸引部には、流体の注入や吸引を自動的に行うことのできるポンプ等を備えた機器を用いることができる。第3ポート17や第4ポート18に接続される拡張用流体の供給部には、インデフレーターまたはシリンジ等を用いることができる。
【0021】
カテーテル10は、長尺なシャフト部11を生体管腔内に挿通させ、その先端側に設けられた基端側バルーン13を病変部で拡張させることで、病変部を押し広げて治療を行うことができる。先端側バルーン12は、基端側バルーン13を拡張させる際に血流を遮断するために生体管腔内で拡張される。シャフト部11は、先端側寄りにガイドワイヤ90が導入されるガイドワイヤ用開口部37を有する。すなわち、このカテーテル10は、いわゆるラピッドエクスチェンジ型(Rapid exchange type)である。
【0022】
基端側バルーン13は、表面に薬剤を有している。基端側バルーン13が有する薬剤は、水溶解性でも水不溶性でもよい。薬剤としては、例えば、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリンを含むシクロスポリン類、ラパマイシン等の免疫活性剤、パクリタキセル等の抗がん剤、抗ウイルス剤または抗菌剤、抗新生組織剤、鎮痛剤及び抗炎症剤、抗生物質、抗てんかん剤、不安緩解剤、抗麻痺剤、拮抗剤、ニューロンブロック剤、抗コリン作動剤及びコリン作動剤、抗ムスカリン剤及びムスカリン剤、抗アドレナリン作用剤、抗不整脈剤、抗高血圧剤、ホルモン剤ならびに栄養剤などを使用できる。また、薬剤はそれ以外であってもよい。
【0023】
次に、シャフト部11の先端部付近の構造について説明する。
図2に示すように、シャフト部11は、内部の外側拡張ルーメン30が先端側バルーン12に連通する外管20を有している。外管20の外側拡張ルーメン30は、第1内管21と第2内管22と第3内管23及び第4内管24を有する。
【0024】
シャフト部11を形成する各管は、ある程度の可撓性を有する材料により形成されるのが好ましい。そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が挙げられる。
【0025】
先端側バルーン12及び基端側バルーン13は、薄膜状のバルーン膜によって形成されており、シャフト部11と同様に、可撓性を有する材料によって形成される。また、狭窄部を確実に押し広げる程度の強度も必要とされる。先端側バルーン12及び基端側バルーン13の材質には、シャフト部11について上で挙げたものを用いることができ、また、それ以外であってもよい。
【0026】
外管20は、前述のように内部に外側拡張ルーメン30を有する。第1内管21は、内部に第1ルーメン32を有する。第2内管22は、内部に第2ルーメン33を有する。第3内管23は、内部に内側拡張ルーメン31を有する。第4内管24は、内部にガイドワイヤルーメン34を有する。
【0027】
第1ルーメン32の基端部は第1ポート15に、第2ルーメン33の基端部は第2ポート16に、外側拡張ルーメン30の基端部は第3ポート17に、内側拡張ルーメン31の基端部は第4ポート18に、ガイドワイヤルーメン34の基端部はガイドワイヤ用開口部37に、それぞれ連通する。
【0028】
第1ルーメン32は、第1ポート15を介して生体に注入する流体の供給部に接続される。第1ルーメン32の先端部は、外管20の周面から開口した第1開口部35を有する。第1開口部35は、基端側バルーン13の近傍であって、基端側バルーン13の基端側に形成される。第1開口部35は、生体内に流体を注入する注入口として機能する。第1ルーメン32を介して生体内に注入する流体は、生理食塩水などを用いることができる。ただし、これ以外の流体であってもよい。
【0029】
第2ルーメン33は、第2ポート16を介して生体から吸引する流体の吸引部に接続される。第2ルーメン33の先端部は、外管20の周面から開口した第2開口部36を有する。第2開口部36は、基端側バルーン13と先端側バルーン12の間に形成される。第2開口部36は、生体から流体を吸引する吸引口として機能する。
【0030】
外側拡張ルーメン30は、第3ポート17を介して拡張用流体の供給部に接続される。外側拡張ルーメン30の先端部は開口しており、先端側バルーン12の内部と連通する。このため、外側拡張ルーメン30を介して拡張用流体を注入することで、先端側バルーン12を拡張させることができる。
【0031】
内側拡張ルーメン31は、第4ポート18を介して拡張用流体の供給部に接続される。内側拡張ルーメン31の先端部は、外管20の周面から開口して基端側バルーン13の内部と連通する。このため、内側拡張ルーメン31を介して拡張用流体を注入することで、基端側バルーン13を拡張させることができる。
【0032】
先端側バルーン12や基端側バルーン13を拡張させる拡張用流体は気体でも液体でもよく、例えばヘリウムガス、CO2ガス、O2ガス等の気体や、生理食塩水、造影剤等の液体を用いることができる。
【0033】
ガイドワイヤルーメン34は、基端部がガイドワイヤ用開口部37に連通している。また、ガイドワイヤルーメン34の先端部は、先端側バルーン12より先端側まで延びて、先端面が開口している。
【0034】
次に、本実施形態に係るカテーテル10の使用方法及び作用を、血管内の狭窄部を治療する場合を例として説明する。
【0035】
まず、術者は、セルジンガー法等の公知の方法により、皮膚から血管を穿刺し、イントロデューサ(図示しない)を留置する。次に、カテーテル10の保護シース(図示しない)を外し、プライミングを行った後、ガイドワイヤルーメン34内にガイドワイヤ90を挿入する。この状態で、ガイドワイヤ90及びカテーテル10をイントロデューサの内部より血管内へ挿入する。続いて、ガイドワイヤ90を先行させつつカテーテル10を進行させ、基端側バルーン13を目的部位である狭窄部へ到達させる(
図3)。なお、カテーテル10を狭窄部まで到達させるために、ガイディングカテーテルを用いてもよい。
【0036】
基端側バルーン13を狭窄部に配置したら、術者は、第3ポート17より拡張用流体を所定量注入し、外側拡張ルーメン30を通じて先端側バルーン12の内部に拡張用流体を送り込む。これにより、折り畳まれた先端側バルーン12が拡張し、血管が先端側バルーン12によって閉塞され、血流が遮断される。また、術者は、第4ポート18より拡張用流体を所定量注入し、内側拡張ルーメン31を通じて基端側バルーン13の内部に拡張用流体を送り込む。これにより、折り畳まれた基端側バルーン13が拡張し、狭窄部が基端側バルーン13によって押し広げられる。また基端側バルーン13の表面に設けられた薬剤が生体組織に移行される。先端側バルーン12及び基端側バルーン13を拡張させることにより、
図4に示す状態となる。
【0037】
基端側バルーン13の薬剤を生体組織に移行させたら、術者は基端側バルーン13から拡張用流体を吸引して、基端側バルーン13を収縮させる。先端側バルーン12は拡張させたまま、術者は、第1ポート15から生理食塩水を注入すると共に、第2ポート16を介して流体を吸引させる。これにより、
図5に示すように、基端側バルーン13の基端側に設けられた第1開口部35から生理食塩水が注入され、基端側バルーン13の先端側であって先端側バルーン12の基端側に設けられた第2開口部36から血管内の流体が吸引される。
【0038】
収縮した基端側バルーン13付近には、生体組織に移行しきれなかった薬剤の破片が残存している。基端側バルーン13の基端側で第1開口部35から生理食塩水が注入されると共に、基端側バルーン13の先端側で第2開口部36から流体が吸引されることで、飛散した薬剤を回収することができる。これによって、術後の塞栓リスクを低減できる。
【0039】
流体の注入と吸引を一定時間行ったら、流体の注入及び吸引を停止し、先端側バルーン12を収縮させた上で、イントロデューサを介して血管よりガイドワイヤ90及びカテーテル10を抜去し、手技が終了する。
【0040】
これまで説明したカテーテル10は、基端側バルーン13の基端側に設けられる第1開口部35を注入口、基端側バルーン13の先端側に設けられる第2開口部36を吸引口としているが、逆であってもよい。この場合、第1ルーメン32の基端部を流体の吸引部に、第2ルーメン33の基端部を流体の供給部に、それぞれ接続する。これによって、
図6に示すように、第2開口部36から流体を注入し、第1開口部35から流体を吸引できる。
【0041】
次に、第2の形態のカテーテルについて説明する。
図7に示すように、シャフト部11は、内部の外側拡張ルーメン50が基端側バルーン13と連通する外管40を有している。外管40の外側拡張ルーメン50は、第1内管41及び第2内管42を有する。
【0042】
外管40は、内部に外側拡張ルーメン50を有する。第1内管41は、内部に第1ルーメン52を有する。第2内管42は、内部に内側拡張ルーメン51を有する。内側拡張ルーメン51には、第3内管43及び第4内管44が設けられる。第3内管43は、内部に第2ルーメン53を有する。第4内管44は、内部にガイドワイヤルーメン54を有する。
【0043】
第1ルーメン52の基端部は第1ポート15に、第2ルーメン53の基端部は第2ポート16に、外側拡張ルーメン50の基端部は第3ポート17に、内側拡張ルーメン51の基端部は第4ポート18に、ガイドワイヤルーメン54の基端部はガイドワイヤ用開口部57に、それぞれ連通する。
【0044】
第1ルーメン52は、第1ポート15を介して生体に注入する流体の供給部に接続される。第1ルーメン52の先端部は、外管20の周面から開口した第1開口部55を有する。第2ルーメン53は、第2ポート16を介して生体から吸引する流体の吸引部に接続される。第2ルーメン53の先端部は、外管20の周面から開口した第2開口部56を有する。第1開口部55は流体の注入口として、第2開口部56は流体の吸入口として、それぞれ機能する。ただし、第1の形態のカテーテル10と同様、第1開口部55が流体の吸引口として、第2開口部56が流体の注入口として、それぞれ機能してもよい。
【0045】
外側拡張ルーメン50は、第3ポート17を介して拡張用流体の供給部に接続される。第3ポート17を介して拡張用流体を注入することで、基端側バルーン13を拡張させることができる。内側拡張ルーメン51は、第4ポート18を介して拡張用流体の供給部に接続される。第4ポート18を介して拡張用流体を注入することで、先端側バルーン12を拡張させることができる。このように、シャフト部11は、より多重化した構造としてもよい。
【0046】
次に、第3の形態のカテーテルについて説明する。
図8に示すように、シャフト部11は、内部の外側拡張ルーメン70が基端側バルーン13と連通する外管60を有している。外管60の外側拡張ルーメン70は、第1内管61及び第2内管62を有する。
【0047】
外管60は、内部に外側拡張ルーメン70を有する。第1内管61は、内部に第1ルーメン72を有する。第2内管62は、内部に第2ルーメン73を有する。第2ルーメン73には、第3内管63が設けられる。第3内管63は、内部に内側拡張ルーメン71を有する。内側拡張ルーメン71には、第4内管64が設けられる。第4内管64は、内部にガイドワイヤルーメン74を有する。
【0048】
第1ルーメン72の基端部は第1ポート15に、第2ルーメン73の基端部は第2ポート16に、外側拡張ルーメン70の基端部は第3ポート17に、内側拡張ルーメン71の基端部は第4ポート18に、ガイドワイヤルーメン74の基端部はガイドワイヤ用開口部77に、それぞれ連通する。
【0049】
第1ルーメン72は、第1ポート15を介して生体に注入する流体の供給部に接続される。第1ルーメン72の先端部は、外管20の周面に開口する第1開口部75を有する。第2ルーメン73は、第2ポート16を介して生体から吸引する流体の吸引部に接続される。第2ルーメン73の先端部は開口して外部と連通しており、第2開口部76を形成する。第1開口部75は流体の注入口として、第2開口部76は流体の吸入口として、それぞれ機能する。ただし、第1の形態のカテーテル10と同様、第1開口部75が流体の吸引口として、第2開口部76が流体の注入口として、それぞれ機能してもよい。
【0050】
外側拡張ルーメン70は、第3ポート17を介して拡張用流体の供給部に接続される。第3ポート17を介して拡張用流体を注入することで、基端側バルーン13を拡張させることができる。内側拡張ルーメン71は、第4ポート18を介して拡張用流体の供給部に接続される。第4ポート18を介して拡張用流体を注入することで、先端側バルーン12を拡張させることができる。このように、第2内管62の先端面が基端側バルーン13の先端部に開口するようにして、第2開口部76を形成してもよい。
【0051】
図8においてガイドワイヤルーメン74は、外管60の周面に開口するガイドワイヤ用開口部77を有しているが、ガイドワイヤルーメン74を内側拡張ルーメン71の基端部まで延ばすことにより、オーバーザワイヤ型(Over-the-wire type)のカテーテル10とすることもできる。
【0052】
以上のように、本実施形態に係るカテーテル10は、長尺なシャフト部11と、シャフト部11の先端側に配置され径方向に拡張可能な先端側バルーン12と、先端側バルーン12の基端側に配置され径方向に拡張可能な基端側バルーン13と、を有し、シャフト部11は、長さ方向に沿う第1ルーメン32と第2ルーメン33とを有し、第1ルーメン32は、基端側バルーン13より基端側に外部と連通する第1開口部35を有し、第2ルーメン22は、基端側バルーン13と先端側バルーン12との間に外部と連通する第2開口部36を有する。このように構成したカテーテル10は、基端側バルーン13の基端側と先端側で、流体の注入及び吸引を行うことができるので、飛散した薬剤を希釈しつつ回収することができる。
【0053】
また、第1開口部35と第2開口部36のうち一方は、生体内に流体を注入する注入口であり、第1開口部35と第2開口部36のうち他方は、生体内の流体を吸引する吸引口であるようにしてもよい。これにより、本発明のカテーテル10は、流体の注入及び吸引を、基端側バルーン13を挟んで両側で行い、基端側バルーン13から飛散した薬剤を確実に回収できる。
【0054】
また、シャフト部11は、先端側バルーン12に拡張用流体を供給する外側拡張ルーメン30を有し、外側拡張ルーメン30は、第1ルーメン32と、第2ルーメン33と、基端側バルーン13に拡張用流体を供給する内側拡張ルーメン31と、を内部に有するようにしてもよい。これにより、先端側バルーン12と基端側バルーン13とにそれぞれ拡張用流体を供給するルーメンと、流体の注入及び吸引を行うルーメンとを、それぞれ独立して設けることができる。
【0055】
また、シャフト部11は、基端側バルーン13に拡張用流体を供給する外側拡張ルーメン50を有し、外側拡張ルーメン50は、第1ルーメン52と、先端側バルーン12に拡張用流体を供給する内側拡張ルーメン51と、を内部に有し、内側拡張ルーメン51は、第2ルーメン53を内部に有するようにしてもよい。これにより、ルーメンを多重構造としつつ各ルーメンを独立して設けることができる。
【0056】
また、シャフト部11は、基端側バルーン13に拡張用流体を供給する外側拡張ルーメン70を有し、外側拡張ルーメン70は、第1ルーメン72と、先端に第2開口部76を有する第2ルーメン73と、を内部に有し、第2ルーメン73は、先端側バルーン12に拡張用流体を供給する内側拡張ルーメン71を内部に有するようにしてもよい。これにより、第2開口部76を第2ルーメン73の先端に形成できるので、他のルーメンを貫通することなく第2ルーメン73を設けることができる。
【0057】
また、基端側バルーン13は、外表面に薬剤を有するようにしてもよい。これにより、基端側バルーン13による治療効果を高くすることができる。
【0058】
また、本実施形態に係るカテーテル10の使用方法は、生体に薬剤を放出した後に、先端側バルーン12を拡張したまま流体を注入及び吸引するので、基端側バルーン13から飛散した薬剤を希釈、回収して、塞栓リスクを低減できる。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 カテーテル
11 シャフト部
12 先端側バルーン
13 基端側バルーン
15 第1ポート
16 第2ポート
17 第3ポート
18 第4ポート
20 外管
21 第1内管
22 第2内管
23 第3内管
24 第4内管
30 外側拡張ルーメン
31 内側拡張ルーメン
32 第1ルーメン
33 第2ルーメン
34 ガイドワイヤルーメン
35 第1開口部
36 第2開口部
37 ガイドワイヤ用開口部
90 ガイドワイヤ