(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】容態情報生成装置、コンピュータプログラムおよび非一時的コンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20231219BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20231219BHJP
A61B 5/318 20210101ALI20231219BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20231219BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61B5/00 G
A61B5/08
A61B5/318
A61B5/022 A
A61B5/02 D
(21)【出願番号】P 2020043129
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 貴之
(72)【発明者】
【氏名】芳村 明彦
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-023790(JP,A)
【文献】特開2019-017998(JP,A)
【文献】特許第3845380(JP,B2)
【文献】特開2019-170851(JP,A)
【文献】特開2019-076489(JP,A)
【文献】特開2017-140091(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0029573(US,A1)
【文献】特開2019-106122(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0189270(US,A1)
【文献】特開2019-117599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/0538、5/06-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の生体情報を取得可能な取得部と、
前記生体情報に基づいて前記被検者の容態情報を生成可能な生成部と、
を備える容態情報生成装置であって、
前記生成部は、前記容態情報生成装置が前記容態情報を生成する時刻よりも過去の時刻であって、任意に設定された対象時刻に取得された前記生体情報に基づいて、
前記被検者の容態を判別するための判別方法に基づいて算出されるスコアである前記容態情報を生成する、容態情報生成装置。
【請求項2】
前記生体情報は、時間的に連続して測定可能な被検者の連続測定パラメータと、任意のタイミングで測定可能な被検者の非連続測定パラメータと、を含み、
前記取得部は、前記連続測定パラメータを取得する第一取得部と、前記非連続測定パラメータを取得する第二取得部と、を有し、
前記生成部は、前記連続測定パラメータおよび前記非連続測定パラメータに基づいて、前記容態情報を生成する、請求項1に記載の容態情報生成装置。
【請求項3】
前記対象時刻は、基準となる時刻である第一対象時刻と、前記非連続測定パラメータが取得された時刻のうち前記第一対象時刻から最も近い時刻である第二対象時刻と、を含み、
前記生成部は、
前記第一対象時刻において、前記第一取得部によって取得された前記連続測定パラメータと、
前記第二対象時刻において、前記第二取得部によって取得された前記非連続測定パラメータと、に基づいて、前記容態情報を生成する、請求項2に記載の容態情報生成装置。
【請求項4】
前記対象時刻は、基準となる時刻である第一対象時刻と、前記非連続測定パラメータが取得された時刻のうち前記第一対象時刻から最も近い時刻である第二対象時刻と、を含み、
前記生成部は、
前記第二対象時刻において、前記第二取得部によって取得された前記非連続測定パラメータと、
前記第二対象時刻において、前記第一取得部によって取得された前記連続測定パラメータと、に基づいて、前記容態情報を生成する、請求項2に記載の容態情報生成装置。
【請求項5】
前記対象時刻は、基準となる時刻である第一対象時刻と、前記非連続測定パラメータが取得された時刻のうち前記第一対象時刻から最も近い時刻である第二対象時刻と、を含み、
前記容態情報生成装置は、前記第二対象時刻において前記第二取得部によって取得された非連続測定パラメータに基づき、前記第一対象時刻における推定非連続測定パラメータを推定可能な推定部をさらに備え、
前記生成部は、前記第一対象時刻における連続測定パラメータと、前記第一対象時刻における前記推定非連続測定パラメータと、に基づいて、前記容態情報を生成する、請求項2に記載の容態情報生成装置。
【請求項6】
前記判別方法は、第一判別方法と、前記第一判別方法とは異なる第二判別方法と、を含み、
前記容態情報は、前記第一判別方法に基づいて生成された第一容態情報と、前記第二判別方法に基づいて生成された第二容態情報と、を含み、
前記第二容態情報は、前記第一容態情報が生成される時刻よりも時間的に後の時刻において、前記第一容態情報の生成に用いられた生体情報の取得時刻と同じ時刻に取得された生体情報に基づいて生成される、請求項
1から5のいずれか一項に記載の容態情報生成装置。
【請求項7】
前記第一判別方法はqSOFAに基づく判別方法であり、前記第二判別方法はNEWSに基づく判別方法である、請求項
6に記載の容態情報生成装置。
【請求項8】
前記生成部は、前記対象時刻において取得された第一生体情報と、前記対象時刻とは異なる時刻において取得された第二生体情報と、に基づいて、前記容態情報を生成する、請求項1から
7のいずれか一項に記載の容態情報生成装置。
【請求項9】
被検者の生体情報を取得する機能と、
前記生体情報に基づいて前記被検者の容態情報を生成する機能と、
をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータに、前記容態情報が生成される時刻よりも過去の時刻であって、任意に設定された対象時刻に取得された前記生体情報に基づいて、
前記被検者の容態を判別するための判別方法に基づいて算出されるスコアである前記容態情報を生成させる、コンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項
9に記載のコンピュータプログラムが記録された非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容態情報生成装置、コンピュータプログラムおよび非一時的コンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者の容態を判別する方法として、例えば、NEWS(National Early Warning Score)やqSOFA(quick SOFA)等のスコアリングの手法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、NEWS等により被検者の容態を判別する場合、スコアを算出する時刻における複数の評価項目(パラメータ)に基づいて、スコアが算出される。複数のパラメータは常時または所定の間隔で取得されるが、スコアは必要に応じて算出される。ここで医療従事者(例えば、病棟看護師)が、取得されたパラメータ等から被検者の容態が悪化した虞があると判断したと想定する。この場合、当該医療従事者は高度に被検者の容態を判別することができる他の医療従事者(例えば、認定看護師や医師)に判断を仰ぎたい場合がある。より高度な知識や技能を持つ他の医療従事者は、NEWS等のスコアにより、被検者の容態を判別する。当該他の医療従事者は、被検者の容態を判別する時刻におけるパラメータに基づいてスコアを算出し、被検者の容態を判別する。ただし、当該他の医療従事者が算出したスコアは、医療従事者が被検者の容態が悪化した虞があると判断した時刻における被検者の容態を正確に表しているとは限らない。すなわち最初に医療従事者(例えば、病棟看護師)がスコアを算出した時刻と、他の医療従事者(認定看護師や医師)がスコアを算出した時刻と、にはずれがある。この点において、改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、医療従事者が被検者の容態が悪化した虞があると判断した時刻等、被検者の容態情報が生成される時刻よりも過去の時刻における容態を表す情報を生成することができる容態情報生成装置、コンピュータプログラムおよび非一時的コンピュータ可読媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための一態様に係る容態情報生成装置は、
被検者の生体情報を取得可能な取得部と、
前記生体情報に基づいて前記被検者の容態情報を生成可能な生成部と、
を備える容態情報生成装置であって、
前記生成部は、前記容態情報生成装置が前記容態情報を生成する時刻よりも過去の時刻であって、任意に設定された対象時刻に取得された前記生体情報に基づいて、前記容態情報を生成する。
【0007】
また、上記の目的を達成するための一態様に係るコンピュータプログラムは、
被検者の生体情報を取得する機能と、
前記生体情報に基づいて前記被検者の容態情報を生成する機能と、
をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータに、前記容態情報が生成される時刻よりも過去の時刻であって、任意に設定された対象時刻に取得された前記生体情報に基づいて、前記容態情報を生成させる。
【0008】
また、上記の目的を達成するための一態様に係る非一時的コンピュータ可読媒体は、
上記本発明に係るコンピュータプログラムを含む。
【0009】
上記のような構成によれば、例えば、医療従事者が被検者の容態が悪化した虞があると判断した時刻よりも後に被検者の容態を判別する場合、生成部は、被検者の容態が悪化した虞があると医療従事者が判断した時刻等の任意に設定された対象時刻における被検者の容態を表す容態情報を生成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、医療従事者が被検者の容態が悪化した虞があると判断した時刻等、被検者の容態情報が生成される時刻よりも過去の時刻における容態を表すことができる容態情報生成装置、コンピュータプログラムおよび非一時的コンピュータ可読媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る容態情報生成装置の機能ブロック図である。
【
図2】判別方法の一つであるqSOFAの基準値を例示する図である。
【
図3】判別方法の一つであるNEWSの基準値を例示する図である。
【
図4】各判別方法における規格化テーブルを例示する図である。
【
図5】各生体情報を規格化するための規格化テーブルを例示する図である。
【
図6】容態情報および容態レベル情報の生成方法に関するフローチャート図である。
【
図8】第一判別方法で用いる生体情報を特定する方法に関するフローチャート図である。
【
図9】第一判別方法で用いる生体情報を特定する方法に関するフローチャート図である。
【
図10】第一判別方法で用いる生体情報を特定する方法に関するフローチャート図である。
【
図11】容態情報および容態レベル情報の生成方法に関するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照しながら説明する。
【0013】
(第一実施形態)
図1は、本実施形態に係る容態情報生成装置1の機能ブロック図を例示している。
図1に例示するように、容態情報生成装置1は、取得部2と、記憶部3と、制御部4と、出力インターフェース(出力部の一例)5と、を備えている。これらはバス6を介して互いに通信可能に接続されている。
【0014】
取得部2は、被検者の生体情報を取得するように構成されている。取得部2は、第一取得部21と、第二取得部22と、を有する。第一取得部21は、所定の時間範囲において、時間的に連続して測定される連続測定パラメータ(生体情報の一例)を取得する。連続測定パラメータとは、被検者に装着したセンサから連続してデータを測定するパラメータである。連続測定パラメータは、例えば、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、心拍数、呼吸数等である。なお、所定の時間範囲は、医療従事者が適宜設定しうる。医療従事者は、例えば、病棟看護師、認定看護師、医師等である。ここでは、一分間当たりの呼吸数を取得する場合を例にとって説明する。呼吸数の取得方法としては、EtCO2(End tidal CO2)による測定方法、呼吸音や呼吸圧や呼吸流量による測定方法、胸郭インピーダンスによる測定方法、心電図を用いたインピーダンス方式による測定方法等である。
【0015】
例えば、心電図を用いたインピーダンス方式により呼吸数を測定する場合、被検者には、複数の電極と不関電極が装着される。電極は、被検者の測定部位に接触し、測定部位の電位変化を導出するためのセンサとして機能する。電極は、測定部位の電位差を導出するように構成され、不関電極は、電極に同相で誘導される外来雑音を除去するように構成される。
【0016】
この例では、電極から出力される電位変化(電位)を示す電気信号と、不関電極から出力される電位変化(電位)を示す電気信号と、に基づいて、心電図信号が生成される。そして、生成された心電図信号がアナログ-デジタル変換(AD変換)されることで心電図波形データが生成される。なお、心電図波形データは、時間軸上に連続的に発生する複数の心電図波形(一拍動で生じる波形)を示すデータである。生成された心電図波形データは、第一取得部21に送信される。このようにして、第一取得部21は被検者の心電図波形データ、および当該心電図波形データに基づく心拍数や呼吸数を取得する。なお、第一取得部21は、電極から心電図信号を受信し、当該受信された心電図信号をアナログ-デジタル変換(AD変換)することで心電図波形データを取得するように構成されていてもよい。第一取得部21は、取得した心電図波形データ等を記憶部3に送信する。
【0017】
第二取得部22は、任意のタイミングで測定される非連続測定パラメータ(生体情報の一例)を取得する。非連続測定パラメータとは、非観血血圧測定や回診による体温の測定等のように、被検者に装着したセンサからスポット的に測定されるパラメータである。非連続測定パラメータは、例えば、酸素補助、体温、収縮期血圧、意識レベル等である。ここでは、特定の一分間において、血圧を取得する場合を例にとって説明する。血圧の取得方法としては、カフを用いた非観血血圧測定法等である。
【0018】
例えば、カフを用いた非観血血圧測定法により収縮期血圧を測定する場合、被検者の上腕にカフが巻き付けられ、被検者の血液の流れを阻止するようにカフ内の空気圧が高められ、動脈が圧迫されることで血圧が測定される。そして、測定された血圧がアナログ-デジタル変換(AD変換)されることで血圧データが生成される。血圧データは、第二取得部22に送信される。なお、第二取得部22は、カフ等の血圧センサから血圧信号を受信し、当該受信された血圧信号をアナログ-デジタル変換(AD変換)することで血圧データを取得するように構成されていてもよい。このようにして、第二取得部22は被検者の血圧データを取得する。第二取得部22は、取得した血圧データを記憶部3に送信する。
【0019】
記憶部3は、被検者の容態を判別する容態判別方法、容態判別方法に関する医療ガイドライン等で定められた基準値や許容範囲、各判別結果を規格化するための規格化テーブル、被検者の生体情報等を記憶する。容態判別方法としては、例えば、qSOFA、NEWS、SOFA、APACHE2(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation 2)、BSAS(Bedside Shivering Assessment Scale)、NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)等である。また、記憶部3に記憶されている容態判別方法には、これらの容態判別方法の他、例えば、NEWS等を基に設定された独自の容態判別方法も含まれうる。
【0020】
制御部4は、生成部41と、推定部42と、を含む。また、制御部4は、ハードウェア構成として、メモリと、プロセッサと、を備えている。メモリは、例えば、各種プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)やプロセッサにより実行される各種プログラム等が格納される複数ワークエリアを有するRAM(Random Access Memory)等から構成される。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)であって、ROMに組み込まれた各種プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されている。例えば、制御部4は、制御部4のプロセッサがRAMとの協働でプログラムを実行することで、生成部41または推定部42の処理を実現するようこれらを制御する。
【0021】
ここでプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体としては、例えば、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM)である。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体としては、例えば、電気信号、光信号、及び電磁波である。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0022】
生成部41は、取得部2によって取得された被検者の生体情報と、記憶部3に記憶されている容態判別方法や医療ガイドライン等で定められた基準値等と、に基づいて、容態情報を生成するように構成されている。容態情報とは、被検者の容態に関する情報である。被検者の容態に関する情報とは、例えば、容態判別方法に基づき算出されたスコア等である。また、生成部41は、容態情報と規格化テーブルに基づいて、被検者の容態レベル情報を生成することもできる。容態レベル情報とは、例えば、被検者の容態の程度を表す等級等である。生成部41は、生成した容態情報または容態レベル情報を出力インターフェース5に送信する。
【0023】
推定部42は、第二取得部22によって取得された非連続測定パラメータに基づいて、非連続測定パラメータが取得されていない時刻における非連続測定パラメータの推定値である推定非連続測定パラメータ(非連続測定パラメータの一例)を推定するように構成されている。なお、推定非連続測定パラメータの推定に用いられる非連続測定パラメータは任意に選択可能であるが、非連続測定パラメータが取得された時刻のうち推定非連続測定パラメータを推定したい時刻に比較的近い時刻において取得された1つ以上の非連続測定パラメータを用いるのが好適である。
【0024】
出力インターフェース5は、容態情報または容態レベル情報に対応する出力信号OSを出力するように構成されている。出力インターフェース5は、例えば、容態情報生成装置1とは異なる装置である外部装置10に出力信号OSを送信しうる。出力インターフェース5は、外部装置10が処理可能な出力信号OSに出力データを変換する回路を、必要に応じて備えうる。
【0025】
外部装置10は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示部を備えたディスプレイ装置や移動端末等である。外部装置10は、出力インターフェース5から出力信号OSを受信すると、出力信号OSに対応する被検者の容態情報または容態レベル情報を外部装置10が備える表示部に表示させる。
【0026】
次に、
図2~5を参照しつつ、生成部41が生成する被検者の容態情報および容態レベル情報について詳細に説明する。
図2は、容態判別方法の一つであるqSOFAの基準値を例示する図である。qSOFAは、敗血症の判別に用いられる判別方法である。qSOFAは、特に感染症に罹患しているか否かを判別する際に用いられる。例えば、取得された一分間当たりの呼吸数が22回以上のとき、呼吸数に関するスコアは1である。これに該当しない場合のスコアは0である。また、取得された収取期血圧が100mmHg以下のとき、収縮期血圧に関するスコアは1である。これに該当しない場合のスコアは0である。さらに、被検者の意識がない場合、意識に関するスコアは1である。一方、被検者の意識がある場合、意識に関するスコアは0である。算出されたスコアは合算される。本明細書では、この合計スコアを総合スコアA(容態情報の一例)と呼ぶ。
【0027】
図3は、容態判別方法の一つであるNEWSの基準値を例示する図である。NEWSは、敗血症の判別に用いられる判別方法である。取得された一分間当たりの呼吸数が8回以下または25回以上のとき、呼吸数に関するスコアは3である。当該呼吸数が21回以上24回以下の場合、呼吸数に関するスコアは2である。当該呼吸数が9回以上11回以下の場合、呼吸数に関するスコアは1である。当該呼吸数が12回以上20回以下の場合、呼吸数に関するスコアは0である。また、残りのパラメータについても、医療ガイドライン等で定められた基準値等に基づいてスコアが算出される。算出されたスコアは合算される。本明細書では、この合計スコアを総合スコアB(容態情報の一例)と呼ぶ。
【0028】
上述したスコアの算出および合算は生成部41によって行われる。また、本実施形態において、総合スコアAおよび総合スコアBは数値であるが、パーセント等の他の表現形式により表されてもよい。
【0029】
このように、例えば、敗血症に関する判別方法であっても、判別方法ごとに、基準値や総合スコアの値の医学的意味は異なっている。このため本実施形態では、容態情報と各判別方法における総合スコア等の容態情報を規格化するための規格化テーブルに基づいて、容態レベル情報が生成される。
【0030】
図4は、各判別方法における規格化テーブルPを例示する図である。規格化テーブルPは、判別方法ごとに、被検者の容態レベルを四つの色グループに分類して表示させるためのテーブルである。本実施形態における四つの色グループは、白色グループ、緑色グループ、オレンジ色グループ、赤色グループである。白色グループは、被検者が正常状態であることを示す容態レベルに対応している。赤色グループは、被検者が異常状態であり、危険な状態であることを示す容態レベルに対応している。オレンジ色グループは、赤色グループの被検者ほどではないものの、被検者が正常状態ではないことを示す容態レベルに対応している。緑色グループは、オレンジ色グループの被検者ほどではないものの、被検者が正常状態ではないことを示す容態レベルに対応している。つまり、白色グループ以外の被検者の容態レベルは、緑色グループ、オレンジ色グループ、赤色グループの順で悪い。なお、ここで示した色グループの分類は一例に過ぎない。色グループの分類は、この例に限られないことは勿論である。
【0031】
感染症疑いスコア(qSOFA)において、例えば、総合スコアAが0のとき、色グループは白色グループに分類される。総合スコアAが1のとき、色グループはオレンジ色グループに分類される。総合スコアAが2以上のとき、色グループは赤色グループに分類される。
【0032】
早期警戒スコア(NEWS)において、例えば、総合スコアBが0のとき、色グループは白色グループに分類される。総合スコアBが1以上4以下のとき、色グループは緑色グループに分類される。総合スコアBが5以上6以下、またはNEWSにおける評価項目の少なくとも一つがスコア3であるとき、色グループはオレンジ色グループに分類される。総合スコアBが7以上のとき、色グループは赤色グループに分類される。
【0033】
図5は、各生体情報を規格化するための規格化テーブルQを例示する図である。
図5に例示するように、例えば、一分間当たりの呼吸数が12回以上20回以下のとき、色グループは白色グループに分類される。当該呼吸数が9回以上11回以下のとき、色グループは緑色グループに分類される。当該呼吸数が21回以上24回以下のとき、色グループはオレンジ色グループに分類される。当該呼吸数が8回以下または25回以上のとき、色グループは赤色グループに分類される。
【0034】
図5に例示するように、酸素補助については、酸素補助が必要な場合、色グループはオレンジ色グループに分類され、必要がない場合には、白色グループに分類される。また、尿量については、一日あたりの尿量が500mL以上のとき、色グループは白色グループに分類される。一日あたりの尿量が200mL以上500mL未満のとき、色グループはオレンジ色グループに分類される。一日あたりの尿量が200mL未満のとき、色グループは赤色グループに分類される。なお、その他の生体情報については、四つの段階に分類され、各段階に一つずつ色グループが紐付いている。
【0035】
上述した分類は生成部41によって行われる。つまり、生成部41は、各総合スコアまたは各生体情報と、記憶部3に記憶されている規格化テーブルPまたは規格化テーブルQと、に基づいて、被検者の容態レベルを分類する。例えば、ある被検者が敗血病であるか否かを判別するためにqSOFAまたはNEWSが用いられる場合、生成部41は、総合スコアAまたは総合スコアBと、記憶部3に記憶された規格化テーブルPと、に基づき、被検者の容態レベルは四つの色グループのどの色グループに分類されるのかを判別し、その判別結果に対応する被検者の容態レベル情報を生成する。
【0036】
(第一実施例)
次に、
図6~8を参照しつつ、容態情報および容態レベル情報の生成方法について詳細に説明する。なお、本実施形態では、異なる時刻において、二つの異なる容態判別方法(qSOFAとNEWS)によって、被検者である光電太郎の容態を判別する例を用いて説明する。本実施形態においては、病棟看護師が2017年7月10日9:40にqSOFAにより光電太郎の容態を判別した後に、認定看護師または医師が2017年7月10日10:00にNEWSにより光電太郎の容態を判別している。これは、qSOFAはNEWSよりも必要なパラメータが少なく簡便であるのに対し、NEWSはqSOFAよりも精度が高いものの必要なパラメータが多いことと、認定看護師および医師は一般的に、病棟看護師と比べて高度な容態判別ができるとされていることと、による。
【0037】
本実施形態では、はじめに用いられる容態判別方法であるqSOFAを第一判別方法、qSOFAの後に用いられる容態判別方法であるNEWSを第二判別方法とする。さらに、本明細書では、第一判別方法に基づいて生成される容態情報を第一容態情報、第二判別方法に基づいて生成される容態情報を第二容態情報と呼ぶ。
【0038】
本実施形態では、容態情報生成装置1が容態情報を生成する時刻よりも過去の時刻であって、医療従事者等により任意に設定された時刻を対象時刻と呼ぶ。複数の異なる時刻において複数の容態情報が生成される場合、例えば、まず第一容態情報が生成され、その後に第二容態情報が生成される。この場合、第二容態情報が生成される時刻よりも過去の時刻であって、医療従事者等により任意に設定された時刻が対象時刻である。対象時刻とは例えば、病棟看護師が被検者の容態が悪化した虞があると判断した時刻等、被検者の容態を判断する上で基準となる時刻(以下、第一対象時刻という。)、非連続測定パラメータが取得された時刻のうち第一対象時刻から最も近い時刻(以下、第二対象時刻という。)等である。
【0039】
図6に例示するように、はじめに、容態情報生成装置1の取得部2が、被検者(光電太郎)の生体情報を取得する(STEP01)。このとき、第一取得部21は連続測定パラメータを取得し、第二取得部22は非連続測定パラメータを取得する。ここで、生体情報の取得状況が
図7の(a)に例示する状況であるとき、非連続測定パラメータは、2017年7月10日9:35(時刻A)、2017年7月10日9:40(時刻B)および2017年7月10日9:55(時刻C)においてのみ取得される。一方、連続測定パラメータは時刻A~Cのみならず、他の時刻においても継続して取得されている。また、生体情報の取得状況が
図7の(b)に例示する状況であるとき、非連続測定パラメータは時刻Aおよび時刻Cにおいてのみ取得される。一方、連続測定パラメータは時刻Aおよび時刻Cのみならず、他の時刻においても継続して取得されている。なお、
図7では、非連続測定パラメータが取得される時刻を三角形で示している(
図12も同様)。
【0040】
STEP2において、医療従事者は、被検者の容態を確認する必要があるかどうかを判断する。例えば、病棟看護師は、光電太郎を回診した時(本実施形態においては、2017年7月10日9:40)に、光電太郎の容態が悪化した虞があり、光電太郎の容態を確認する必要があると判断すると、光電太郎に紐づくベッドサイドモニタ等の装置に対して、所定の入力操作を行う。入力操作が行われると、被検者の容態を確認する必要があることを示す容態確認情報と、病棟看護師が被検者の容態が悪化した虞があると判断して入力操作を行った時刻(第一対象時刻)に関する情報と、が生成され、これらの情報が有線または無線により容態情報生成装置1に送信される。また、容態情報生成装置1は、例えば医療従事者の入力操作を受け付けると共に、当該入力操作に対応する指示信号を生成するように構成されている操作部を備えたベッドサイドモニタ等の装置であってもよい。この場合、病棟看護師は容態情報生成装置1に備わる操作部に所定の入力操作を行う。入力操作が行われると、容態情報生成装置1は、容態確認情報と、病棟看護師が被検者の容態が悪化した虞があると判断して入力操作を行った時刻(第一対象時刻)に関する情報と、を生成する。上記入力操作が行われると(STEP02においてYES)、制御部4は、受信した容態確認情報に基づいて、第一判別方法で用いる連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータを特定する(STEP03)。一方、制御部4が光電太郎の容態を確認する必要がないと判断した場合(STEP02においてNO)、STEP01に戻る。
【0041】
ここで、STEP03について、
図8を参照しつつ詳細に説明する。
図8は、第一判別方法で用いる連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータの特定方法に関するフローチャート図である。連続測定パラメータは、時間的に連続して測定されるので、第一対象時刻においても取得されているが、非連続測定パラメータは、任意のタイミングで測定されるので、第一対象時刻において取得されているとは限らない。このため、制御部4は、STEP311において、第一対象時刻における非連続測定パラメータが取得されているかどうかを判断する。制御部4が、第一対象時刻における非連続測定パラメータが取得されていると判断した場合、STEP312に進む。一方、制御部4が、第一対象時刻における非連続測定パラメータが取得されていないと判断した場合、STEP313に進む。
【0042】
例えば、生体情報の取得状況が
図7の(a)に例示する状況であるとき、第一対象時刻である時刻Bにおいて、非連続測定パラメータは取得されている。したがって、制御部4は、第一対象時刻において非連続測定パラメータは取得されていると判断する(STEP311においてYES)。制御部4は、第一対象時刻において非連続測定パラメータは取得されていると判断すると、第一対象時刻における連続測定パラメータと非連続測定パラメータを第一判別方法で用いることを決定する(STEP312)。
【0043】
一方で、例えば、生体情報の取得状況が
図7の(b)に例示する状況であるとき、第一対象時刻である時刻Bにおいて、非連続測定パラメータは取得されていない。したがって、制御部4は、第一対象時刻において非連続測定パラメータは取得されていないと判断する(STEP311においてNO)。制御部4は、第一対象時刻において非連続測定パラメータは取得されていないと判断すると、非連続測定パラメータが取得された時刻のうち、第一対象時刻から最も近い時刻である第二対象時刻を特定する(STEP313)。時刻Aと時刻Cのうち第一対象時刻(時刻B)から最も近い時刻は、時刻Aである。したがって、制御部4は、時刻Aを第二対象時刻として特定する。
【0044】
第二対象時刻が特定されると、制御部4は第二対象時刻における非連続測定パラメータを特定する(STEP314)。制御部4は、第二対象時刻における非連続測定パラメータを特定すると、第一対象時刻における連続測定パラメータと第二対象時刻における非連続測定パラメータを第一判別方法で用いることを決定する(STEP315)。
【0045】
図6に戻り、STEP04以降の各STEPについて説明する。第一判別方法で用いる連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータが特定されると、生成部41は、特定された連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータと第一判別方法に基づいて、第一容態情報(総合スコアA)を生成する(STEP04)。
【0046】
生成部41は、第一容態情報を生成すると、第一容態情報および規格化テーブルP(
図4参照)に基づいて、光電太郎の第一容態レベル情報(容態レベル情報の一例)を生成する。生成部41は、第一容態レベル情報を生成すると、第一容態レベル情報に対応する出力信号OSを出力インターフェース5に出力する(STEP05)。出力インターフェース5は、出力信号OSを外部装置10に出力する。外部装置10は、出力信号OSに対応する光電太郎の容態レベル情報を外部装置10が備える表示部に表示させる。光電太郎の容態レベル情報が、外部装置10が備える表示部に表示されることで、光電太郎の容態レベルが病棟看護師に視覚的に報知される。例えば、光電太郎の容態が悪いことを示す色(例えば、赤色)が、外部装置10が備える表示部に表示された場合、病棟看護師は、光電太郎の容態が悪いことを認識する。なお、病棟看護師への報知方法は視覚的な方法に限られず、例えば、警告音を発する等の聴覚的な方法であってもよい。なお、表示部が容態情報生成装置1に内蔵されており、当該表示部に容態レベル情報等が表示される構成であってもかまわない。
【0047】
病棟看護師は、光電太郎の容態が悪いかどうかを判断する(STEP06)。病棟看護師が、光電太郎の容態は悪くないと判断すると(STEP06においてNO)、STEP01に戻る。一方、病棟看護師が光電太郎の容態は悪いと判断すると(STEP06においてYES)、病棟看護師は、認定看護師または医師に、光電太郎の容態のさらなる判別を依頼する。認定看護師または医師は、当該依頼に応じて被検者の容態の判別を行うが、病棟看護師と認定看護師または医師は、第一対象時刻において異なる場所にいることが一般的である。したがって、認定看護師または医師が第二判別方法により被検者の容態を判別する時刻は、病棟看護師がqSOFA(第一判別方法)により被検者の容態を判別した時刻よりも時間的に後の時刻である。つまり、認定看護師または医師がNEWS(第二判別方法)により被検者の容態を判別する時刻(2017年7月10日10:00)と、病棟看護師がqSOFA(第一判別方法)により被検者の容態を判別した時刻(2017年7月10日9:40)と、の間には時間的な隔たりがある。このため、従来は、qSOFAに用いられる生体情報が取得された時刻とNEWSに用いられる生体情報が取得された時刻は異なっていた。したがって、認定看護師等が算出した総合スコアBは、病棟看護師が被検者の容態が悪化した虞があると判断した時刻(第一対象時刻)における被検者の容態を正確に表しているとは限らなかった。そこで、本実施形態においては、第一判別方法に用いられる生体情報が取得された時刻と同時刻に取得された生体情報に基づいて、第二判別方法を実行する。この仕組みについて、STEP07以降で詳述する。
【0048】
病棟看護師は、光電太郎の容態は悪いと判断した場合(STEP06においてYES)、認定看護師または医師にさらなる容態判別を依頼する。認定看護師または医師は、2017年7月10日10:00に光電太郎の所へ赴くと、光電太郎の容態を確認する。そして、認定看護師または医師は、総合スコアBを算出する必要があると判断した場合(すなわち、NEWSにより光電太郎の容態を判別する必要があると判断した場合)、光電太郎に紐づくベッドサイドモニタ等の装置に対して、所定の入力操作を行う。入力操作が行われると、認定看護師または医師が光電太郎の容態をさらに判別することを示す追加判別情報と、入力操作が行われた時刻に関する情報と、が生成され、これらの情報が有線または無線により容態情報生成装置1に送信される。制御部4は、追加判別情報を受信すると、STEP03で特定された対象時刻において取得された生体情報を特定する(STEP07)。なお、当該特定される生体情報には、第一判別方法で用いられる生体情報のみならず、第二判別方法で用いられる他の生体情報(例えば、心拍数や体温等)も含まれる。
【0049】
例えば、生体情報の取得状況が
図7の(a)に例示する状況であるとき、制御部4は、第一対象時刻において取得された連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータを特定する。一方、生体情報の取得状況が
図7の(b)に例示する状況であるとき、制御部4は、第一対象時刻において取得された連続測定パラメータと第二対象時刻において取得された非連続測定パラメータを特定する。
【0050】
対象時刻において取得された生体情報が特定されると、生成部41は、STEP07において特定された生体情報と第二判別方法に基づいて、第二容態情報(総合スコアB)を生成する(STEP08)。
【0051】
生成部41は、第二容態情報を生成すると、第二容態情報および規格化テーブルPに基づいて、光電太郎の第二容態レベル情報(容態レベル情報の一例)を生成する。生成部41は、第一容態レベル情報および第二容態レベル情報を出力インターフェース5に送信する(STEP09)。出力インターフェース5は、各容態レベル情報に対応する出力信号OSを出力する。出力インターフェース5は、出力信号OSを外部装置10に送信する。外部装置10は、出力信号OSに対応する光電太郎の容態レベル情報を外部装置10が備える表示部に表示させる。外部装置10の表示部には、容態レベル情報が、被検者の容態レベルを示す色、被検者、時刻等に関連付けられて表示されうる。
【0052】
上記のような構成によれば、例えば、医療従事者が被検者の容態が悪化した虞があると判断した時刻等である対象時刻よりも後に被検者の容態を判別する場合、生成部41は、総合スコアAのみならず総合スコアBについても、対象時刻における被検者の生体情報に基づいて生成することができる。このため、対象時刻よりも後に実行された第二判別方法により算出された総合スコアBも、対象時刻における被検者の容態を精度よく表している。よって、対象時刻よりも後に被検者の容態を判別する医療従事者は、総合スコアBから、対象時刻における被検者の容態をより正確に把握することができる。
【0053】
また、上記のような構成によれば、連続測定パラメータと非連続測定パラメータに基づいて被検者の容態が判別される場合において、任意に設定された対象時刻が、たとえ非連続測定パラメータが測定されない時刻であったとしても、生成部41は被検者の容態を表す容態情報を生成することができる。
【0054】
また、上記のような構成によれば、任意に設定された対象時刻のうち基準となる時刻である第一対象時刻が、非連続測定パラメータが測定されない時刻であるときであっても、生成部41は、第一対象時刻における連続測定パラメータと、第一対象時刻から最も近い時刻である第二対象時刻における非連続測定パラメータと、に基づいて、被検者の容態を表す容態情報を生成する。したがって、第一対象時刻が、非連続測定パラメータが測定されない時刻であったとしても、生成部41は適切な容態情報を生成することができる。
【0055】
また、上記のような構成によれば、生成部41は、被検者の容態を判別するための判別方法に基づいて、容態情報を生成する。生成部41が、例えば、qSOFAやNEWS等の医療ガイドライン等で定められた判別方法に基づいて、容態情報を生成する場合、生成された容態情報は信頼性のある情報である。
【0056】
また、上記のような構成によれば、別々の時刻に別々の判別方法を用いて被検者の容態を判別する場合においても、生成部41は、対象時刻において取得された生体情報に基づいて、第一容態情報および第二容態情報を生成することができる。
【0057】
また、上記のような構成によれば、比較的簡便に被検者の容態を判別できるqSOFAに基づいて被検者の容態を判別した後に、qSOFAよりも精度が高いNEWSに基づいて被検者の容態を判別する場合においても、生成部41は、対象時刻において取得された生体情報に基づいて、第一容態情報および第二容態情報を生成することができる。
【0058】
(第二実施例)
次に、第二実施例について説明する。なお、第二実施例の説明において、第一実施例と重複する説明については省略する。第二実施例は、
図6のSTEP03で実行される第一判別方法で用いる連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータの特定方法のみ、第一実施例と異なる。そこで、
図9を参照しつつ、第二実施例における第一判別方法で用いる生体情報を特定する方法について説明する。
【0059】
図9のSTEP321~323は、
図8のSTEP311~313と同様である。
【0060】
第一対象時刻である時刻Bにおいて非連続測定パラメータが取得されていない状況(
図7の(b)参照)において、時刻Aが第二対象時刻として特定されると、制御部4は、時刻Aにおける連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータを特定する(STEP324)。制御部4は、時刻Aにおける連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータを特定すると、時刻Aにおける連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータを第一判別方法で用いることを決定する(STEP325)。このように、第二実施例では、第一対象時刻において非連続測定パラメータが取得されていない場合、非連続測定パラメータのみならず、連続測定パラメータについても第二対象時刻に取得されたものを第一判別方法に用いる。
【0061】
上記のような構成によれば、任意に設定された対象時刻のうち基準となる時刻である第一対象時刻が、非連続測定パラメータが測定されない時刻であるときであっても、生成部は、第一対象時刻から最も近い時刻である第二対象時刻における連続測定パラメータと非連続測定パラメータに基づいて、被検者の容態を表す容態情報を生成する。したがって、生成部41は同時刻に取得された連続測定パラメータと非連続測定パラメータに基づいて、その時点における精度のよい容態情報を生成することができる。
【0062】
(第三実施例)
次に、第三実施例について説明する。なお、第三実施例の説明において、第一実施例と重複する説明については省略する。第三実施例は、
図6のSTEP03で実行される第一判別方法で用いる連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータの特定方法のみ、第一実施例と異なる。そこで、
図10を参照しつつ、第三実施例における第一判別方法で用いる生体情報を特定する方法について説明する。
【0063】
図10のSTEP331~333は、
図8のSTEP311~313と同様である。
【0064】
第一対象時刻である時刻Bにおいて非連続測定パラメータが取得されていない状況(
図7の(b)参照)において、時刻Aが第二対象時刻として特定されると、制御部4は、時刻Aにおける非連続測定パラメータを特定する(STEP334)。時刻Aにおける非連続測定パラメータが特定されると、推定部42は当該特定された非連続測定パラメータに基づいて、非連続測定パラメータが取得されていない時刻である第一対象時刻(時刻B)における推定非連続測定パラメータを推定する(STEP335)。推定部42は、例えば、第二取得部22によって取得された非連続測定パラメータに基づく傾向(トレンド)情報と、第二対象時刻において取得された非連続測定パラメータと、に基づいて、推定非連続測定パラメータを推定することができる。
【0065】
推定非連続測定パラメータが推定されると、制御部4は、第一対象時刻における連続測定パラメータと推定非連続測定パラメータを第一判別方法に用いることを決定する(STEP336)。このように、第三実施例では、第一対象時刻において非連続測定パラメータが取得されていない場合、第二対象時刻において取得された非連続測定パラメータから第一対象時刻における推定非連続測定パラメータを推定し、第一対象時刻における連続測定パラメータおよび推定非連続測定パラメータを第一判別方法に用いる。
【0066】
上記のような構成によれば、第一対象時刻において、非連続測定パラメータが取得されていない場合であっても、推定部42によって、第一対象時刻における推定値としての推定非連続測定パラメータが推定される。したがって、第一対象時刻に非連続測定パラメータが取得されていなくても、生成部41は容態情報を生成することができる。
【0067】
(第二実施形態)
次に、
図11および
図12を参照しつつ、第二実施形態について説明する。
図11は、容態情報および容態レベル情報の生成方法に関するフローチャート図である。
図12は、生体情報の取得状況を例示する図である。第二実施形態は、第一判別方法および第二判別方法において、複数の生体情報を用いる点で第一実施形態と異なる。例えば、対象時刻において瞬間的に被検者の容態が良いことを示す生体情報が取得されたために被検者の容態が良いことを示すスコアが算出されたとしても、対象時刻を含むある期間における被検者の容態は悪いという場合がありうる。また反対に、例えば、対象時刻において瞬間的に被検者の容態が悪いことを示す生体情報が取得されたために被検者の容態が悪いことを示すスコアが算出されたとしても、対象時刻を含むある期間における被検者の容態は良いという場合もありうる。このため、第二実施形態では、対象時刻において取得された生体情報のみならず、対象時刻とは異なる時刻D(2017年7月10日9:20)において取得された生体情報も用いて容態情報および容態レベル情報が生成される。このように、第二実施形態では、ある期間における被検者の容態の傾向も考慮された容態情報および容態レベル情報が生成される。なお、第一実施形態と重複する説明については省略する。
【0068】
図11のSTEP11~12は、
図6のSTEP01~02と同様である。
【0069】
ここで、例えば、生体情報の取得状況が
図12の(a)に例示する状況であるとき、非連続測定パラメータは時刻Bおよび時刻Dにおいて取得される。一方、連続測定パラメータは時刻Bおよび時刻Dのみならず、他の時刻においても継続して取得されている。また、生体情報の取得状況が
図12の(b)に例示する状況であるとき、非連続測定パラメータは時刻Aおよび時刻Dにおいて取得される。一方、連続測定パラメータは時刻Aおよび時刻Dのみならず、他の時刻においても継続して取得されている。なお、本実施形態では、
図12の(a)に例示する状況における時刻Bにおいて取得された連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータを含む生体情報、または
図12の(b)に例示する状況における時刻Bにおいて取得された連続測定パラメータおよび時刻Aにおいて取得された非連続測定パラメータを含む生体情報を、第一生体情報と呼ぶ。
【0070】
図11に例示するように、病棟看護師が被検者(光電太郎)の容態を確認する必要があると判断した場合(STEP12においてYES)、制御部4は、第一判別方法で用いる連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータを特定する(STEP13)。第一判別方法で用いる連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータの特定は、第一実施例~第三実施例で示したいずれかの方法により行われる。STEP13で特定される生体情報は第一生体情報の一例である。
【0071】
制御部4は、第一生体情報が特定されると、対象時刻(すなわち、第一対象時刻である時刻Bおよび第二対象時刻である時刻A)以外の時刻に取得された生体情報であって、第一判別方法で用いる第一生体情報とは異なる生体情報(第二生体情報の一例)を特定する(STEP14)。
図12に例示するように、本実施形態では、第一対象時刻および第二対象時刻とは異なる時刻Dにおいて、連続測定パラメータと非連続測定パラメータが取得されている。このため、STEP14で特定される第二生体情報は、時刻Dにおいて取得された連続測定パラメータと非連続測定パラメータを含む。
【0072】
第二生体情報が特定されると、生成部41は、第一生体情報および第二生体情報と、第一判別方法と、に基づいて、第一容態情報(総合スコアA)を生成する(STEP15)。なお、STEP15において生成される総合スコアAおよび後述するSTEP19において生成される総合スコアBは、例えば、第一生体情報に基づく総合スコアと第二生体情報に基づく総合スコアの平均スコア、第一生体情報に基づく総合スコアと第二生体情報に基づく総合スコアのうち高い方または低い方のスコア等である。
【0073】
STEP16~17は、
図6のSTEP05~06と同様である。
【0074】
病棟看護師は、光電太郎の容態は悪いと判断した場合(STEP17においてYES)、認定看護師または医師にさらなる容態判別を依頼する。認定看護師または医師は、既述した入力操作を行う。入力操作が行われると、追加判別情報が制御部4に送信される。制御部4は、追加判別情報を受信すると、第二判別方法で用いる第一生体情報と第二生体情報を特定する(STEP18)。つまり、制御部4は、追加判別情報を受信すると、STEP13で特定された対象時刻における生体情報(第一生体情報の一例)と、STEP14で特定された第二生体情報の取得時刻(時刻D)における生体情報(第二生体情報の一例)と、を特定する。なお、当該特定される生体情報には、第一判別方法で用いられる生体情報のみならず、第二判別方法で用いられる他の生体情報(例えば、心拍数や体温等)も含まれる。
【0075】
例えば、生体情報の取得状況が
図12の(a)に例示する状況であるとき、制御部4は、時刻Bおよび時刻Dにおける連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータを特定する。また、生体情報の取得状況が
図12の(b)に例示する状況であるとき、制御部4は、時刻Bおよび時刻Dにおける連続測定パラメータと、時刻Aおよび時刻Dにおける非連続測定パラメータと、を特定する。
【0076】
第二判別方法で用いる第一生体情報と第二生体情報が特定されると、生成部41は、当該特定された第一生体情報および第二生体情報と第二判別方法に基づいて、第二容態情報(総合スコアB)を生成する(STEP19)。
【0077】
【0078】
上記のような構成によれば、生成部41は時刻Aや時刻Bといった対象時刻と対象時刻とは異なる時刻である時刻Dを含む複数の時刻における生体情報に基づいて容態情報を生成する。したがって、容態情報生成装置1は、ある期間(本実施形態では2017年7月10日9:20から9:40)における被検者の容態を表すような容態情報も生成することができる。例えば、
図12の(a)に示す状況において、時刻Bに取得された第一生体情報に基づいて算出される総合スコアは被検者の容態が良いことを示すものであるものの、時刻Dに取得された第二生体情報に基づいて算出される総合スコアは被検者の容態が悪いことを示すものである場合、容態情報生成装置1は、被検者の容態が悪いことを示す容態情報を生成しうる。より具体的には、例えば、生成部41が、第一生体情報に基づく総合スコアと第二生体情報に基づく総合スコアの平均スコアを容態情報として生成する場合であって、第一生体情報に基づく総合スコアAが0、第二生体情報に基づく総合スコアAが2、第一生体情報に基づく総合スコアBが0、第二生体情報に基づく総合スコアBが6であるとき、生成部41は、被検者の容態は悪いことを示す第一容態情報と第二容態情報をそれぞれ生成する。このように、例えば、ある期間における被検者の容態は悪いにも関わらず、対象時刻において瞬間的に被検者の容態が良いことを示す生体情報が取得された結果、被検者の容態が良いことを示す総合スコアが算出されてしまうような場合であっても、容態情報生成装置1は、ある期間における被検者の容態の傾向も考慮された容態情報を生成することができる。
【0079】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されうる。
【0080】
本実施形態では、第一判別方法で用いる連続測定パラメータおよび非連続測定パラメータの特定方法として第一実施例~第三実施例を例示したが、第一実施例~第三実施例のいずれを用いるかは、医療従事者が適宜設定してもよいし、容態情報生成装置1に備わる制御部4が、医療従事者が予め設定した条件に基づき自動で設定してもよい。
【0081】
本実施形態では、生成部41は、容態レベル情報に対応する出力信号OSを出力インターフェース5に出力しているが、容態情報に対応する出力信号OSまたは容態情報および容態レベル情報に対応する出力信号OSを出力インターフェース5に出力してもよい。容態情報に対応する出力信号OSが出力インターフェース5に出力される場合、外部装置10の表示部には、外部装置10の表示部には被検者の容態レベルを示す色ではなく、容態情報に基づく数値(総合スコアAや総合スコアB)が表示される。また、容態情報および容態レベル情報に対応する出力信号OSが出力インターフェース5に出力される場合、外部装置10の表示部には、容態情報に基づく数値と被検者の容態レベルを示す色が表示される。
【0082】
本実施形態において、生成部41は、容態判別方法を用いて容態情報を生成しているが、容態判別方法を用いずに容態情報を生成してもよい。
【0083】
本実施形態では、
図6におけるSTEP06または
図11のSTEP17において、病棟看護師が、外部装置10の表示部に表示された被検者の容態レベル情報に基づいて、被検者の容態が悪いかどうかを判断し、容態が悪い場合には、認定看護師または医師にさらなる容態判別を依頼しているが、これに限られない。例えば、制御部4が、容態情報または容態レベル情報に基づいて被検者の容態が悪いかどうかを判断し、被検者の容態が悪い場合には、容態情報生成装置1が認定看護師または医師にその旨を報知してもよい。認定看護師または医師への報知方法としては、例えば、認定看護師または医師が所持する通信端末へメッセージを送信する方法等である。また容態情報生成装置1が表示部を内蔵し、当該表示部に様態レベル情報を表示しても良い。
【0084】
本実施形態において、第一容態レベル情報および第二容態レベル情報は、規格化テーブルPに基づいて生成されているが、規格化テーブルQに基づいて生成されてもよい。
【0085】
第二実施形態において、時刻Bにおける非連続測定パラメータは、時刻Bに取得された非連続測定パラメータではなく、例えば、時刻Aにおける非連続測定パラメータから推定された時刻Bにおける推定非連続測定パラメータであってもよい。
【0086】
第二実施形態において、生成部41は第一生体情報と第二生体情報に基づいて第一容態情報を生成しているがこれに限られない。例えば、生成部41は、第一生体情報と、第二生体情報と、対象時刻および第二生体情報の取得時刻以外の時刻に取得された他の生体情報と、に基づいて第一容態情報を生成してもよい。
【0087】
第二実施形態において、生成部41は第一生体情報と第二生体情報に基づいて第二容態情報を生成しているがこれに限られない。例えば、生成部41は、第一生体情報と、第二生体情報と、対象時刻および第二生体情報の取得時刻以外の時刻に取得された他の生体情報と、に基づいて第二容態情報を生成してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1:容態情報生成装置1、2:取得部、3:記憶部、4:制御部、5:出力インターフェース、6:バス、10:外部装置、21:第一取得部、22:第二取得部、41:生成部、42:推定部