(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】自動車ドア用シール材
(51)【国際特許分類】
B60J 10/25 20160101AFI20231219BHJP
B60J 10/86 20160101ALI20231219BHJP
B60J 10/27 20160101ALI20231219BHJP
B60J 10/21 20160101ALI20231219BHJP
B60J 10/36 20160101ALI20231219BHJP
【FI】
B60J10/25
B60J10/86
B60J10/27
B60J10/21
B60J10/36
(21)【出願番号】P 2020051132
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩
(72)【発明者】
【氏名】橋口 総太郎
(72)【発明者】
【氏名】飯田 祥光
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-013582(JP,A)
【文献】特開2006-015923(JP,A)
【文献】特開2005-247199(JP,A)
【文献】実開平02-105016(JP,U)
【文献】実開昭60-111774(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/25
B60J 10/86
B60J 10/27
B60J 10/21
B60J 10/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体の側部に形成されたドア開口部を開閉するドアに取り付けられ、前記ドア開口部と前記ドアとの間をシールする自動車ドア用シール材において、
前記自動車ドア用シール材は、前記ドアが有するフレームの上辺部に取り付けられ、当該上辺部に沿って車両前後方向に延びる上辺シール部と、当該上辺シール部の車両前後方向一方の端部に一体成形され、前記フレームの縦辺部に沿って下方へ延びる縦辺シール部とを備え、
前記上辺シール部には、前記上辺部に取り付けられる取付基部と、車室外側に配置されて車両前後方向に延び、前記ドアの閉時に前記車体に弾接する外側シールリップと、当該外側シールリップから車室内側に離れて配置されて車両前後方向に延び、前記ドアの閉時に前記車体に弾接する内側シールリップとが設けられ、
前記外側シールリップと前記内側シールリップとの間には、前記外側シールリップと前記車体との間から浸入した水が車両前後方向に流通可能な導水溝が形成され、
前記縦辺シール部の上部は、前記導水溝における車両前後方向一方の端部に連通する水流入口を有し、
前記水流入口は、車両前後方向に長く形成され、
前記縦辺シール部の下部は、前記ドアを開閉するドア開閉装置よりも下まで延びるとともに、排水口を有し、
前記縦辺シール部の内部には、前記水流入口から前記排水口まで延びる排水路が形成され
、
前記水流入口の車室内側の縁部には、上方へ延びるとともに車両前後方向に延び、前記内側シールリップに連続する内側板部が設けられていることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車ドア用シール材において、
前記ドアはフロントドアであり、
前記排水口は、前記フロントドアの後側で、かつ、リヤドアヒンジ装置及びリヤドアドアチェッカー装置よりも前側に位置していることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項3】
請求項
1に記載の自動車ドア用シール材において、
前記内側板部における車室内面には、車室内側へ向けて突出し、前記ドアの閉時に車体に弾接する突条部が、前記内側シールリップ側から車両前後方向一方へ向けて連続して延びていることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1つに記載の自動車ドア用シール材において、
前記縦辺シール部の上部には、車両前後方向一方に延出する延出板部が設けられ、
前記延出板部の車室内面には、前記縦辺シール部を構成する材料よりも硬質な材料からなる硬質板材が重なるように設けられ、
前記硬質板材は、前記水流入口の車室外側の縁部よりも上方へ延びていることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項5】
請求項
4に記載の自動車ドア用シール材において、
前記水流入口の車室外側の縁部は、前記延出板部から分離して前記延出板部の車室内側に配置されており、
前記水流入口の車室外側の縁部と、前記延出板部との間に前記硬質板材の一部が配置され、
前記ドアの閉時に、前記水流入口の車室外側の縁部が前記硬質板材の車室内側の面に接触することを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1つに記載の自動車ドア用シール材において、
前記上辺シール部は、押出成形された押出成形部であり、車両前後方向に延びる押出成形中空部を有するように形成され、
前記縦辺シール部は、前記上辺シール部の端部に一体成形された型成形部を有し、前記水流入口及び前記排水路の上側部分は、前記型成形部に形成されており、
前記型成形部は、前記押出成形中空部に連通する型成形中空部と、前記型成形中空部を成形した中芯を抜くための上側中芯抜き穴と、前記型成形中空部と前記排水路とを区画する区画壁部とを有していることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に配設されるドアに取り付けられる自動車ドア用シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のドアには、当該ドアと車体のドア開口部との間をシールするためのシール材が取り付けられている(例えば、特許文献1~3参照)。特許文献1のシール材は、サッシュの上辺部に沿って車両前後方向に延びる部分、サッシュの後縦辺部に沿って上下方向に延びる部分等が接続されることによって構成されており、ドアの全周に亘って取り付けられている。サッシュの上辺部に沿って延びる押出成形部の断面は、サッシュに取り付けられる基底部と、基底部に一体成形された車室外側の押出成形部シールリップ及び車室内側の押出成形部シールリップとを有しており、ドアが閉じられると、これらシールリップが車体に弾接してシール性が確保されるようになっている。押出成形部の後端部には型成形部が連続しており、この型成形部もサッシュに取り付けられる基底部を備えている。型成形部には、車室内側の押出成形部シールリップに連続する型成形部シールリップが設けられている。また、型成形部シールリップの後端部近傍には、支持壁部が車室内外方向に延びるように設けられている。
【0003】
特許文献2のシール材は、上下方向に長い形状とされており、ドアの後端部に取り付けられている。このシール材の上端部には上端開口部が形成される一方、下端部には排水口が形成されており、さらにシール材には上端開口部から排水口まで連続した中空部が設けられている。このシール材により、ドアの上端部と車体との間に浸入した水をシール材の上端開口部から中空部に導入して排水口から排水することが可能になる。
【0004】
特許文献3のシール材は、スライドドアの上端部に取り付けられるものである。シール材には、上方に開口する水受け部が設けられており、この水受け部の底部には水抜き穴が形成されている。また、シール材の車室外側には前後方向に長い見切りシール材が配設されている。上方から流れた水は、見切りシール材の上面を流れるとともに、水受け部まで流れた後、水抜き穴から排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-015923号公報
【文献】国際公開第2015/072558号公報
【文献】特開2019-189048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のシール材の場合、サッシュの上辺部に沿って延びる押出成形部シールリップと、型成形部シールリップとが前後方向に連続しているので、ドアの上端部と車体との間に浸入した水は、押出成形部シールリップ及び型成形部シールリップに沿って後側へ流れ易くなる。型成形部シールリップの後端部まで流れた水は、その下方へ流れてドア開閉装置にかかるおそれがある。水がドア開閉装置にかかると、寒冷地で凍結してドアの開閉に支障をきたす場合がある。
【0007】
そこで、特許文献2のように、上端開口部、中空部及び排水口を備えた上下方向に長いシール材をドアの後端部に設ければ、ドアの上端部と車体との間に浸入した水をドア開閉装置よりも下へ導くことができ、水がドア開閉装置にかかるのを抑制できると考えられる。
【0008】
ところが、特許文献2のシール材はドアの後端部にのみ設けられているので、このシール材よりも前側には当該特許文献2の
図14に記載されているような中空構造のシール材を設けてシール性を確保する必要がある。この中空構造のシール材は、ドアを閉めた瞬間に当該ドアに作用する反力が高くなり易く、その結果、ドアを閉じるのに要する力が増大し、ドア閉じ性が悪化する懸念があった。この点、特許文献1のシール材のようなシールリップによるシール構造とすれば、ドア閉じ性の悪化を回避できると考えられるが、特許文献1ではドア開閉装置への水対策が何らなされていないという問題がある。
【0009】
また、特許文献3では、見切りシールの上面を流れた水を水受け部で受けて水抜き穴から抜くことができるので、ドア開閉装置にかかる水は大幅に減少させることができると考えられる。しかしながら、特許文献3の水受け部を有するシール材と見切りシール材とは別部材であることから、水受け部を有するシール材と見切りシール材との間から水が漏れるおそれがあり、この漏れた水の対策が必要になる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シール材によるドア閉じ性を悪化させることなく、ドアの上端部と車体との間に浸入した水をドア開閉装置にかかり難くすることにある。
【0011】
ここで、本発明にて、ドア開閉装置とは、ドアラッチ装置、ドアヒンジ装置、ドアチェッカー装置の三種類の装置の総称として、定義するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本開示の第1の側面は、自動車の車体の側部に形成されたドア開口部を開閉するドアに取り付けられ、前記ドア開口部と前記ドアとの間をシールする自動車ドア用シール材において、前記自動車ドア用シール材は、前記ドアが有するフレームの上辺部に取り付けられ、当該上辺部に沿って車両前後方向に延びる上辺シール部と、当該上辺シール部の車両前後方向一方の端部に一体成形され、前記フレームの縦辺部に沿って下方へ延びる縦辺シール部とを備え、前記上辺シール部には、前記上辺部に取り付けられる取付基部と、車室外側に配置されて車両前後方向に延び、前記ドアの閉時に前記車体に弾接する外側シールリップと、当該外側シールリップから車室内側に離れて配置されて車両前後方向に延び、前記ドアの閉時に前記車体に弾接する内側シールリップとが設けられ、前記外側シールリップと前記内側シールリップとの間には、前記外側シールリップと前記車体との間から浸入した水が車両前後方向に流通可能な導水溝が形成され、前記縦辺シール部の上部は、前記導水溝における車両前後方向一方の端部に連通する水流入口を有し、前記水流入口は、車両前後方向に長く形成され、前記縦辺シール部の下部は、前記ドアを開閉するドア開閉装置よりも下まで延びるとともに、排水口を有し、前記縦辺シール部の内部には、前記水流入口から前記排水口まで延びる排水路が形成され、前記水流入口の車室内側の縁部には、上方へ延びるとともに車両前後方向に延び、前記内側シールリップに連続する内側板部が設けられているものである。
【0013】
この構成によれば、ドアを閉じると、上辺シール部の外側シールリップと内側シールリップとが車体に弾接する。このとき、外側シールリップと内側シールリップとは車室内外方向に互いに間隔をあけて配置されていて撓み変形し易くなっているので、中空構造のシール材を弾接させる場合に比べてドアを閉じる瞬間に当該ドアに作用する反力が小さくなる。よって、ドア閉じ性が良好になる。
【0014】
ドアを閉じると、上辺シール部の外側シールリップと内側シールリップとが車体に弾接しているが、ドアの上端部と車体との間から水が浸入することがある。浸入した水は、外側シールリップと内側シールリップとの間の導水溝を車両前後方向に流れる。導水溝における車両前後方向一方の端部へ流れた水は、縦辺シール部の上部に形成されている水流入口から当該縦辺シール部の内部に形成されている排水路に流入する。排水路に流入した水は、ドア開閉装置よりも下に位置する排水口から排水されるので、ドア開閉装置にかからなくなる。上辺シール部と縦辺シール部とが一体成形されているので、導水溝から排水路へ流れる水が途中で漏れることはなく、このことによっても水がドア開閉装置にかかるのを抑制することができる。
【0015】
また、水流入口を車両前後方向に長くすることで開口面積が広がり、水が水流入口に流入し易くなる。この場合に、水流入口の車室内側の縁部に設けた内側板部を内側シールリップに連続させたので、外側シールリップと内側シールリップとの間の導水溝を流れた水が車室内側へ向けて漏れにくくなる。
【0016】
本開示の第2の側面は、前記ドアはフロントドアであり、前記排水口は、前記フロントドアの後側で、かつ、リヤドアヒンジ装置及びリヤドアドアチェッカー装置よりも前側に位置しているものである。
【0017】
この構成によれば、排水口から排水される水は、リヤドアヒンジ装置及びリヤドアチェッカー装置よりも前側に排水されるため、水がリヤドアヒンジ装置及びリヤドアチェッカー装置にかかるのを抑制することができる。
【0018】
本開示の第3の側面は、前記内側板部における車室内面には、車室内側へ向けて突出し、前記ドアの閉時に車体に弾接する突条部が、前記内側シールリップ側から車両前後方向一方へ向けて連続して延びているものである。
【0019】
すなわち、ドアを閉じているときに水が内側板部の上端部と車体との間から内側板部の車室内側へ流れることが考えられる。この内側板部の車室内側へ流れた水は、突条部によって車両前後方向一方の端部へ向けて案内して排水することができる。
【0020】
本開示の第4の側面は、前記縦辺シール部の上部には、車両前後方向一方に延出する延出板部が設けられ、前記延出板部の車室内面には、前記縦辺シール部を構成する材料よりも硬質な材料からなる硬質板材が重なるように設けられ、前記硬質板材は、前記水流入口の車室外側の縁部よりも上方へ延びているものである。
【0021】
この構成によれば、硬質板材によって縦辺シール部の延出板部の変形を抑制することができる。また、ドアを閉じているときに水が硬質板材の上端部から当該硬質板材を伝って流れる場合が想定されるが、この場合に、硬質板材が水流入口の車室外側の縁部よりも上方に延びているので、硬質板材を伝う水が重力によって水流入口へ自然に流入し、排水路によって排水される。
【0022】
本開示の第5の側面は、前記水流入口の車室外側の縁部は、前記延出板部から分離して前記延出板部の車室内側に配置されており、前記水流入口の車室外側の縁部と、前記延出板部との間に前記硬質板材の一部が配置され、前記ドアの閉時に、前記水流入口の車室外側の縁部が前記硬質板材の車室内側の面に接触するものである。
【0023】
この構成によれば、硬質板材の一部を、水流入口の車室外側の縁部と、延出板部との間に配置することで、硬質板材と縦辺シール部とを一体化することができる。そして、ドアの閉時には、水流入口の車室外側の縁部が硬質板材の車室内側の面に接触するので、硬質板材を伝って上方から流れた水が水流入口へ入り易くなる。
【0024】
本開示の第6の側面は、前記上辺シール部は、押出成形された押出成形部であり、車両前後方向に延びる押出成形中空部を有するように形成され、前記縦辺シール部は、前記上辺シール部の端部に一体成形された型成形部を有し、前記水流入口及び前記排水路の上側部分は、前記型成形部に形成されており、前記型成形部は、前記押出成形中空部に連通する型成形中空部と、前記型成形中空部を成形した中芯を抜くための上側中芯抜き穴と、前記型成形中空部と前記排水路とを区画する区画壁部とを有しているものである。
【0025】
この構成によれば、押出成形された上辺シール部の端部に上辺シール部の型成形部を一体成形することで、上辺シール部と縦辺シール部とを一体化することができる。型成形部の成形時には、中芯によって型成形中空部を成形することができ、型成形中空部の成形後は、型成形中空部から中芯を抜くことができる。中芯を抜いた後、上側中芯抜き穴が開口することになるが、型成形中空部と排水路とは区画壁部によって区画されているので、排水路の水が型成形中空部へ漏れることはない。
【発明の効果】
【0026】
上述したように、上辺シール部の外側シールリップと内側シールリップとを車体に弾接させるようにしたのでドア閉じ性を良好にすることができる。そして、ドアを閉じた状態でドアの上端部と車体との間から浸入した水を外側シールリップと内側シールリップとの間の導水溝によって車両前後方向に流して縦辺シール部の排水路に流入させ、ドア開閉装置よりも下へ流すことができるので、水がドア開閉装置にかかり難くすることができる。
【0027】
また、排水口をリヤドアラッチ装置及びリヤドアチェッカー装置よりも前側に配置することで、水がリヤドアラッチ装置及びリヤドアチェッカー装置にかかり難くすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動車の車体の一部を示す右側面図である。
【
図2】上記車体に取り付けられる右フロントドアを車室内側から見た側面図である。
【
図3】上記右フロントドアに取り付けられる自動車ドア用シール材を車室内側から見た側面図である。
【
図4】自動車ドア用シール材の上部かつ後側を車室内側から見た側面図である。
【
図5】自動車ドア用シール材が取り付けられた右フロントドアの上部かつ後側を車室内側から見た側面図である。
【
図6】サッシュに取り付けられた自動車ドア用シール材の上部を車両後側から見た図である。
【
図7】自動車ドア用シール材が取り付けられた右フロントドアの上部かつ後側を斜め上から見た斜視図である。
【
図8】
図5におけるVIII-VIII線断面図である。
【
図11】自動車ドア用シール材の上部かつ後側を斜め下から見た斜視図である。
【
図12】アウトサート材を車室内側から見た側面図である。
【
図13】
図1におけるXIII-XIII線断面図である。
【
図14】
図1におけるXIIII-XIIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車100の車体101の一部を示す右側面図である。自動車100は乗用自動車であり、車室内には運転席、助手席及び後部座席を備えている。この実施形態の説明では、車両前側を単に前といい、車両後側を単に後というものとする。
【0031】
(車体101の構成)
車体101の右側下部には、前後方向に延びる右サイドシル105が設けられている。車体101の右側部には、右フロントピラー110、右センターピラー111及び右リヤピラー112が右サイドシル105から上方へ延びるように設けられている。車体101の上部には、右フロントピラー110の上端部から右センターピラー111の上端部を経て、右リヤピラー112の上端部まで延びるルーフ部120が設けられている。これら構成により、車体101の右側部の前側には、右サイドシル105、右フロントピラー110、右センターピラー111及びルーフ部120によって区画されたフロントドア開口部102が形成されることになる。また、車体101の右側部の後側には、右サイドシル105、右センターピラー111、右リヤピラー112及びルーフ部120によって区画されたリヤドア開口部103が形成されることになる。フロントドア開口部102は、
図2に示すフロントドア200によって開閉され、また、リヤドア開口部103は、
図1に示すリヤドア300によって開閉される。
【0032】
右センターピラー111の前面には、上下方向中間部にストライカー111aが前方へ突出するように設けられている。ストライカー111aは、詳細は後述するが、フロントドア200を閉状態で保持しておくための部材である。
【0033】
尚、車体101の左側は右側と同様に構成されており、本発明は車体101の右側と左側のどちらにも適用することができる。以下、本発明を車体101の右側に適用した場合について説明する。また、本発明は、リヤドア300にも適用することができる。
【0034】
(フロントドア200の構成)
図2に示すように、フロントドア200は、当該フロントドア200の略下半部を構成するドア本体部210と、当該フロントドア200の略上半部を構成するフレーム220と、フレーム220によって保持されるウインドガラス(図示せず)とを備えている。
【0035】
フロントドア本体部210の前端部には、フロントドアヒンジ211が取り付けられている。フロントドアヒンジ211は、フロントドア200を車体101の右フロントピラー110に対して上下方向に延びる回動軸まわりに回動可能に支持する部材である。また、フロントドア本体部210の前端部における前述した上下2つのフロントドアヒンジ211の間には、フロントドアチェッカー215が取付けられている。フロントドアチェッカー215は、フロントドア本体部210の回動量を規制する部材であり、フロントピラー110とフロントドア本体210との間に配置され、両者に回動可能に連結されている。また、フロントドアヒンジ211、及びフロントドアチェッカー215の構造は、従来から周知のものである。尚、
図2では、ドアトリム等を省略して示している。
【0036】
一方、ドア本体部210の後端部には、フロントドア200が閉状態になったときに車体101のストライカー111aが入るストライカー穴212が形成されている。ドア本体部210の内部には、ドアラッチ装置213が設けられている。ドアラッチ装置213は、フロントドア200が閉状態になったときにストライカー穴212に入ったストライカー111aに係合してフロントドア200を閉状態で保持する装置であり、このドアラッチ装置213の構造は従来から周知のものである。尚、ドアハンドル(図示せず)を操作することで、ドアラッチ装置213の係合状態を解除してフロントドア200を開くことができる。
【0037】
フレーム220は、ドア本体部210の前部から上方へ向かって斜め後へ延びる前辺部221と、上辺部222と、縦辺部223とを有している。上辺部222は前後方向に延びており、上辺部222の前端部が前辺部221の上端部と連続している。また、縦辺部223は、ドア本体部210の後部から上方へ延びており、この縦辺部223の上端部が上辺部222の後端部と連続している。
【0038】
図8~
図10に示すように、フレーム220は、車室外側に位置するアウタパネル224と、車室内側に位置するインナパネル225とで構成されている。
図8に示すように、インナパネル225の上部には、アウタパネル224側へ延びる上辺シール材取付板部225aが設けられ、さらに、アウタパネル224側に近接する部位から上方に屈曲するインナパネル上板部225bが設けられ、インナパネル上板部225bがアウタパネル224の車室内側面に重ね合わせている。また、アウタパネル224の上縁部には、車室内側へ向けて屈曲した屈曲部224aが設けられ、インナパネル上板部225bの車室内側面に重ね合わされている。この上辺シール材取付板部225aは、車室外側へ行くほど上に位置するように傾斜している。
【0039】
図9に示すように、フレーム220の縦辺部223を構成しているインナパネル225には、車室内外方向に延びる縦辺部インナパネルシール材取付板225cが設けられている。また、縦辺部インナパネルシール材取付板225cの車室外側端部から屈曲して後方に延びる縦辺部インナパネルシール材背面弾接板225dを設け、縦辺部インナパネルシール材背面弾接板225dの後端部から屈曲して車室外側に延びる縦辺部インナパネル接続板225eを設け、さらに、縦辺部インナパネル接続板225e車室外側端部から屈曲して後方に延びる縦辺部インナパネル外板225fを設けている。縦辺部インナパネル外板225fはアウタパネル224の車室内側面に重ね合わされており、アウタパネル224の後端部には、前側に屈曲した屈曲部224aが設けられ、屈曲部224aは、縦辺部インナパネル外板225fの車室内側面に重ね合わされている。
【0040】
さらに、
図10に示すように、縦辺部223を構成しているアウタパネル224の車室外側には、上下方向に延びるガーニッシュ226が取り付けられている。より具体的には、ガーニッシュ226の車室内側面には、略L字形状の取付板226aが設けられ、取付板226aには、取付穴226bが設けられている。アウタパネル224にはガーニッシュ取付穴224bが設けられ、ガーニッシュ226の取付板226aが挿入されている。
【0041】
一方、縦辺部223を構成しているインナパネル225にはコーナー部アウタパネルガーニッシュ取付穴225hが形成されている。コーナー部アウタパネルガーニッシュ取付穴225hに対して、ガーニッシュ226の取付板226aの取付穴224bの位置を合わせて、車室内側からビスBで固定することで、ガーニッシュ226をアウタパネル224の車外側面に取付けている。
【0042】
また、縦辺部223を構成しているインナパネル225にはコーナー部インナパネルシール材取付穴225gも形成されている。自動車ドア用シール材1の後側型成形部7の延出板部74を、硬質板材50を介してインナパネル225に取付ける構造の詳細については、後述する。
【0043】
(リヤドア300の構成)
図1に示すように、リヤドア300は、当該リヤドア300の略下半部を構成するドア本体部310と、当該リヤドア300の略上半部を構成するフレーム320と、フレーム320によって保持されるウインドガラス(図示せず)とを備えている。また、リヤドア本体部310の前端部には、リヤドアヒンジ311が取り付けられている。リヤドアヒンジ311は、リヤドア300を車体101のセンターピラー111に対して上下方向に延びる回動軸まわりに回動可能に支持する部材である。
【0044】
また、
図13(
図1におけるXIII-XIII線断面図)に示すように、より具体的にはリヤドアヒンジ311の本体形状は略L字形状で、L字形状の前側の辺をセンターピラー車外側面111bにボルトV等で固定し、L字形状の後側の辺をリヤドア本体310の車外側前端面310aにボルトV等で固定し、L字形状の後側の辺に設けた回動部311aで回動可能となっている。
【0045】
また、
図1に示すように、リヤドア本体部310の前端部の、前述した上下2つのリヤドアヒンジ311の間には、リヤドアチェッカー装置315が取付けられている。リヤドアチェッカー装置315は、リヤドア本体部310の回動量を規制する部材で、センターピラー110とリヤドア本体310との間に配置されセンターピラー110に連結されている。
【0046】
また、
図14(
図1におけるXIIII-XIIII線断面図)に示すように、より具体的にリヤドアチェッカーv315の本体315aの形状は略平板形状で設定している。また、センターピラー111の後側面111cにはリヤドアチェッカー固定具315bが取付けられ、リヤドアチェッカー固定具315bには、リヤドアチェッカー装置315の本体315aの前側部分が回動可能に取付けられている。
【0047】
また、リヤドア本体310の前端部の車内側面310bには、穴316があけられている。さらに、リヤドアチェッカー装置315後方に形成された掛止部315cは、穴316より幅広に形成されており、リヤドアヒンジ311によりリヤドア本体310が開いていくと、穴316に掛止部315cが当接し、リヤドア本体部310の回動が規制されるような構造になっている。又、リヤドアヒンジ311、及びリヤドアチェッカー装置315の構造は、従来から周知のものである。
【0048】
(自動車ドア用シール材1の構成)
図5に一部を示すように、フロントドア200には、当該フロントドア200とフロントドア開口部102との間をシールする自動車ドア用シール材1が取り付けられている。
図3に示すように、自動車ドア用シール材1は、フレーム220の前辺部221に沿って延びる前辺シール部2と、フレーム220の上辺部222に沿って前後方向に延びる上辺シール部3と、フレーム220の縦辺部223に沿って下方へ延びる縦辺シール部4と、前側型成形部5と、下側シール部6とを備えている。前辺シール部2及び上辺シール部3は、材料を口金(図示せず)から押し出すことによって一体成形された押出成形部であり、前端部から後端部まで同一断面を有している。下側シール部6は、ドア本体部210の前端部に沿って下方へ延び、ドア本体部210の下端部に沿って前後方向中間部まで延びており、この下側シール部6も押出成形部である。前側型成形部5は、前辺シール部2の前端部と下側シール部6の上端部とを接続する部分であり、開閉動作する金型(図示せず)によって成形された部分である。
【0049】
ここで、それぞれ、下側シール部6と前側型成形部5との境界線を符号L5で示し、前側型成形部5と前辺シール部2との境界線を符号L4で示す。前辺シール部2、上辺シール部3、縦辺シール部4、前側型成形部5及び下側シール部6として適用可能な材料としては、ゴム様弾性体であれば、特に限定されないが、ゴムの場合はEPDMスポンジゴムが、熱可塑性樹脂の場合は発泡TPOまたは軟質TPOが好ましい。
【0050】
尚、前辺シール部2、前側型成形部5及び下側シール部6は、本発明に必須なものではなく、省略してもよい。
【0051】
縦辺シール部4は、開閉動作する金型(図示せず)によって成形された後側型成形部7と、材料を口金(図示せず)から押し出すことによって成形された後側押出成形部8と、開閉動作する金型(図示せず)によって成形された下側型成形部9とを備えている。後側型成形部7は、フレーム220の上辺部222と縦辺部223との境界部分に対応するように形成されており、後側型成形部7の前側部分は、上辺シール部3の後端部に接続されている。また、後側押出成形部8は、フレーム220の縦辺部223に沿って上下方向に延びており、後側押出成形部8の上側部分は、後側型成形部7の下側部分に接続されている。上辺シール部3及び後側押出成形部8をそれぞれ成形した後、後側型成形部7を成形するための金型に上辺シール部3及び後側押出成形部8を保持してから、後側型成形部7の材料を金型内に射出して成形することで、上辺シール部3及び後側押出成形部8と、後側型成形部7とを一体成形することができる。
【0052】
また、その後、下側型成形部9を成形するための金型に後側押出成形部8を保持してから、下後側型成形部9の材料を金型内に射出して成形することで、後側押出成形部8と、後側型成形部9とを一体成形することができる。
【0053】
ここで、それぞれ、上辺シール部3と後側型成形部7との境界線を符号L1で示し、後側型成形部7と後側押出成形部8との境界線を符号L2で示し、後側押出成形部8と下後側型成形部9との境界線を符号L3で示す。
【0054】
図8は、上辺シール部3の断面及び取付構造を示す図である。上辺シール部3は、フレーム220の上辺部222に取り付けられる取付基部30を有している。取付基部30は、上辺シール材取付板部225aに沿って前後方向に延びる板状をなしており、この上辺シール材取付板部225aに対して図示しないクリップ等で固定されている。取付基部30の車室外側には上方へ延びるとともに前後方向にも延びる外側壁部31が形成され、また、取付基部30の車室内側には上方かつ車室外側へ延びるとともに前後方向にも延びる内側壁部32が形成されている。外側壁部31の上端部と内側壁部32の上端部とが連続している。さらに、上辺シール部3には、外側壁部31の下端部近傍から内側壁部32の上下方向中間部まで傾斜して延びるとともに前後方向にも延びる傾斜壁部33が設けられている。取付基部30、外側壁部31、内側壁部32及び傾斜壁部33によって前後方向に延びる2つの押出成形中空部R1、R2が形成されている。
【0055】
外側壁部31の上端部には、背面シールリップ34が車室外側へ向けて斜め上へ突出するように設けられている。背面シールリップ34は、上辺シール部3を上辺シール材取付板部225aに取り付けた状態でアウタパネル224の屈曲部224aに対して内方から弾接する。
【0056】
上辺シール部3には、車室外側に配置される押出部外側シールリップ35と、押出部外側シールリップ35から車室内側に離れて配置される押出部内側シールリップ36とが設けられている。押出部外側シールリップ35は、外側壁部31と内側壁部32の上端部近傍から上方へ突出するとともに前後方向に延びており、フロントドア200の閉時に車体101の一部であるルーフ部120に弾接する。フロントドア200が開いているときには、仮想線で示すように上方へ延びる形状になる一方、フロントドア200の閉時にルーフ部120に弾接すると、当該ルーフ部120における車室内外方向に延びる外側接触面120aによって下方へ押されて弾性変形し、下方へ撓んだ形状になる。
【0057】
押出部内側シールリップ36は、内側壁部32の上下方向中間部から上方へ突出するとともに前後方向に延びており、フロントドア200の閉時に車体101の一部であるルーフ部120に弾接する。フロントドア200が開いているときには、仮想線で示すように車室内側へ向けて延びる形状になる一方、フロントドア200の閉時にルーフ部120に弾接すると、当該ルーフ部120における上下方向に延びる内側接触面120bによって車室外方へ押されて弾性変形した形状になる。
【0058】
押出部外側シールリップ35と押出部内側シールリップ36との間には、導水溝Sが形成されている。押出部外側シールリップ35及び押出部内側シールリップ36が前後方向に延びていることから、導水溝Sも前後方向に長い溝で構成される。フロントドア200の閉時には押出部外側シールリップ35がルーフ部120に弾接しているが、外部の水が押出部外側シールリップ35とルーフ部120の外側接触面120aとの間から浸入するおそれがある。つまり、フロントドア200の上端部とルーフ部120との間から水が浸入すると、導水溝Sに流れ込むことになり、この導水溝Sに流れ込んだ水は、前後方向に流通可能になる。
【0059】
図9は、後側押出成形部8の断面及び取付構造を示す図である。後側押出成形部8は、フレーム220の縦辺部223に取り付けられる取付板部80を有している。取付板部80は、縦辺シール材取付板部225cに沿って上下方向に延びるとともに車室内外方向に延びる板状をなしており、この縦辺シール材取付板部225cに対して図示しないクリップ等で固定されている。後側押出成形部8は、取付板部80の車室外側の縁部から車室内側の縁部まで延びかつ後側へ膨出するように形成された周壁部81を有している。周壁部81は、フロントドア200の閉時に車体101の一部であるセンターピラー111に弾接し、これにより少しだけ凹んだ形状になる。
【0060】
後側押出成形部8の内部には、取付板部80と周壁部81とで区画された中空部R3(詳細は後述する)が設けられている。自動車ドア用シール材1をフロントドア200に取り付けた状態にすると、
図3に示すように後側押出成形部8の下部がドアラッチ装置213よりも下まで延びるように当該後側押出成形部8の長さが設定されている。後側押出成形部8の下部には、中空部R3の下端部に連通する排水口82が形成されており、この排水口82は下方へ向けて開口している。
【0061】
図7に示すように、後側型成形部7の車室外側には、型成形部外側シールリップ70が上方へ突出するともに前後方向に延びるように形成されている。型成形部外側シールリップ70の前端部は、上辺シール部3の押出部外側シールリップ35の後端部と連続している。型成形部外側シールリップ70は、フロントドア200の閉時に車体101の一部であるルーフ部120に弾接する。
【0062】
後側型成形部7の車室内側には上下方向に延びる筒部70aが設けられている。筒部70aの下端部は、後側押出成形部8の取付板部80及び周壁部81の上端部と連続している。これにより、筒部70aの内部空間R4と、後側押出成形部8の中空部R3とが連通して、縦辺シール部4の内部に、上下方向に延びる1つの排水路R5が構成されている。排水路R5の下端部は排水口82に連通し、排水路R5の上端部は
図7に示す水流入口71に連通している。したがって、排水路R5は、水流入口71から排水口82まで連続して延びることになる。
【0063】
すなわち、後側型成形部7の上部には、水流入口71が形成されており、この水流入口71は導水溝Sの前後方向一方の端部である後端部に連通している。水流入口71は上方へ開口するとともに、前後方向に長く形成されている。水流入口71は、型成形部外側シールリップ70の下端部近傍において当該型成形部外側シールリップ70よりも車室内側に位置している。水流入口71の前方に導水溝Sが位置しているので、導水溝S内の水が後側へ流れると、水流入口71の前部から当該水流入口71に流入することになる。
【0064】
水流入口71の車室内側の縁部71a及び車室外側の縁部71bは共に前後方向に延びている。水流入口71の車室内側の縁部71aには、上方へ延びるとともに前後方向に延びる内側板部72が形成されている。また、内側板部72の前端部は、上辺シール部3の押出部内側シールリップ36の後端部と連続している。したがって、導水溝S内の水が水流入口71の車室内側の縁部71aを超えることなく、内側板部72によって水流入口71内へ導くことができる。
【0065】
内側板部27における車室内面には突条部72aが設けられている。突条部72aは、内側板部27の車室内面から車室内側へ向けて突出し、押出部内側シールリップ36側から後方へ連続して延びている。突条部72aの前端部は、押出部内側シールリップ36の上端部と連続している。突条部72aは、後側へ行くほど下に位置するように下降傾斜しながら筒部70aの後端部に達している。
図10に示すように、フロントドア200の閉時には、内側板部72及び突条部72aが車体101の一部であるセンターピラー111に弾接する。
【0066】
図4に示すように、後側型成形部7には、後方に延出する延出板部74が設けられている。
図10に示すように、延出板部74の車室外側の面は、フレーム220の縦辺部223の車室内側の面に接触している。また、
図7に示すように、水流入口71の車室外側の縁部71bは、延出板部74から分離して当該延出板部74の車室内側に配置されている。
図10に示すように、延出板部74の上下方向中間部には、貫通穴74aが形成されている。この貫通穴74aは、インナパネル225のコーナー部アウタパネルシール材取付穴225gと一致するようになっている。
【0067】
延出板部74の車室内側の面には、縦辺シール部4を構成する材料よりも硬質な材料からなるアウトサート材(硬質板材)50が重なるように設けられている。アウトサート材50の材料としては、例えばポリアセタール樹脂等のように後側型成形部7を構成する材料よりも変形しにくい材料を挙げることができる。
図12に示すように、アウトサート材50は、上下方向に長い本体板部51と、本体板部51の上部から前方へ突出する前側突出板部52と、本体板部51の後側へ突出する後側突出板部53とを有している。
【0068】
本体板部51の車室外側の面には、ピン部51aが形成されている。
図10に示すように、ピン部51aは、延出板部74の貫通穴74aに挿通されるとともに、インナパネル225のコーナー部アウタパネルシール材取付穴225gに挿通される。これにより、延出板部74をアウトサート材50とフレーム220の縦辺部223とで挟むことができる。
【0069】
図6に示すように、後側突出板部53は、延出板部74の上部をその後端部から車室外側へまわり込むように形成されている。後側突出板部53によって延出板部74の上部を保持することができる。
【0070】
図7等に示すように、前側突出板部52は、水流入口71の車室外側の縁部71bと、延出板部74との間に配置される。この状態で、前側突出板部52は、水流入口71の車室外側の縁部71bよりも上方へ延びている。そして、
図10に示すように、フロントドア200の閉時には、内側板部72が右センターピラー111に弾接して車室外側へ押されるので、水流入口71の車室外側の縁部71bが本体板部51の車室内側の面に確実に接触する。このフロントドア200の閉時には、水流入口71の車室内側の縁部71aと車室外側の縁部71bとは車室内外方向に離れており、水流入口71が潰れてしまうことはない。
【0071】
図11に示すように、後側型成形部7の上部は、型成形中空部R7と上側中芯抜き穴77とを有している。型成形中空部R7については
図4にも示している。型成形中空部R7は、上辺シール部3の押出成形中空部R1、R2の後端部に連通している。上側中芯抜き穴77は、型成形中空部R7を成形した中芯(図示せず)を抜くための穴であり、後側型成形部7の下方へ向けて開口している。型成形中空部R7を形成することで、後側型成形部7の上部の剛性と上辺シール部3の剛性との差を小さくすることができる。後側型成形部7に型成形中空部R7を成形する際には上記中芯が必要になる。型成形中空部R7を成形した後、中芯を抜くことで上側中芯抜き穴77が下方に向けて開口することになる。ところが、後側型成形部7は排水路R5を有しているので、上側中芯抜き穴77が開口したままであると、排水路R5内の水が上側中芯抜き穴77から漏れ出すおそれがある。
【0072】
そこで、後側型成形部7は、型成形中空部R7と排水路R5とを区画する区画壁部78を有している。この区画壁部78は
図4にも示している。型成形中空部R7は、排水路R5の上部の前方に位置しており、したがって、区画壁部78は、排水路R5の上部に沿って上下方向かつ車室内外方向に延びている。これにより、排水路R5の水が型成形中空部R7を介して上側中芯抜き穴77から外部に漏れ出すことはない。
【0073】
後側型成形部7の下部には、下側中芯抜き穴79が形成されている。上述したように、後側型成形部7の筒部70aを型成形する場合には、上記型成形中空部R7の成形の場合と同様に中芯(図示せず)が必要になる。筒部70aの内面を成形した中芯を抜くことで下側中芯抜き穴79が筒部70aの外面に前方へ向けて開口することになる。この実施形態では、下側中芯抜き穴79は上下方向に長いスリット状に形成されているが、これに限られるものではない。また、この下側中芯抜き穴79は、筒部70aの車室内側から車室外側に離れて配置されている。
【0074】
すなわち、
図6に示すように、フレーム220の縦辺部223に取り付けられた縦辺シール部4を後側から見ると、縦辺シール部4は、上側へ行くほど車室内側に位置するように傾斜するとともに緩やかに湾曲している。これは、フレーム220の縦辺部223が上側へ行くほど車室内側に位置するように形成されていることに起因している。したがって、縦辺シール部4内の排水路R5も同方向に傾斜ないし湾曲することになる。また、排水路R5に流入する水の量は、押出部外側シールリップ35でシールされた状態で流入する量であることから、それほど多くはない。このため、排水路R5内の水は、当該排水路R5の車室内外方向の中心部よりも車室内側を流れるようになる。下側中芯抜き穴79が筒部70aの車室内側から車室外側に離れて配置されているので、当該下側中芯抜き穴79は、排水路R5における水が殆ど流通しない箇所に開口することになる。よって、下側中芯抜き穴79を完全に塞がなくても、排水路R5を流通する水が下側中芯抜き穴79から漏れることは殆ど無い。
【0075】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、
図8に示すように、フロントドア200を閉じると、上辺シール部3の押出部外側シールリップ35と押出部内側シールリップ36とがルーフ部120に弾接する。このとき、押出部外側シールリップ35と押出部内側シールリップ36とは車室内外方向に互いに間隔をあけて配置されていて撓み変形し易くなっているので、中空構造のシール材を弾接させる場合に比べてフロントドア200を閉じる瞬間に当該フロントドア200に作用する反力が小さくなる。よって、ドア閉じ性が良好になる。
【0076】
また、フロントドア200を閉じると、上辺シール部3の押出部外側シールリップ35と押出部内側シールリップ36とがルーフ部120に弾接しているが、
図7に矢印W1で示すように、押出部外側シールリップ35とルーフ部120との間から水が浸入することがある。浸入した水は、押出部外側シールリップ35と押出部内側シールリップ36との間の導水溝Sに流入する。導水溝Sに流入した水は、矢印W2で示すように当該導水溝Sを後方へ流れる。導水溝Sを後方へ流れた水は、矢印W3で示すように縦辺シール部4の上部に形成されている水流入口71から当該縦辺シール部4の内部に形成されている排水路R5に流入する。排水路R5に流入した水は、
図3と
図13及び
図14に矢印W4で示すように、ドアラッチ装置213よりも下に位置する排水口82から排水されるので、ドアラッチ装置213にかからなくなる。
【0077】
また、上辺シール部3と縦辺シール部4とが一体成形されているので、導水溝Sから排水路R5へ流れる水が途中で漏れることはなく、このことによっても水がドアラッチ装置213にかかるのを抑制することができる。
【0078】
また、
図8・
図7にて図示して説明したように、浸入した水が矢印W1→W2→W3→W4のように排水されるため、
図3に示すような、後側型成形部7から落下する水W0を少なくする事ができ、リヤドアヒンジ装置311及びリヤドアチェッカー装置315が直接被水することを防止できる。
【0079】
また、
図13及び
図14に示すように、排水口82を、リヤドアヒンジ装置311及びリヤドアチェッカー装置315よりも前側に配置したので、リヤドアヒンジ装置311及びリヤドアチェッカー装置315がより一層被水し難くすることができる。
【0080】
また、
図7に示すように、上記水流入口71が前後方向に長いので開口面積が広くなり、水が水流入口71に流入し易くなる。この場合に、水流入口71の車室内側の縁部71aに設けた内側板部72を押出部内側シールリップ36に連続させたので、押出部外側シールリップ35と押出部内側シールリップ36との間の導水溝Sを流れた水が車室内側へ向けて漏れにくくなる。
【0081】
また、フロントドア200を閉じているときに、矢印W5で示すように、水が内側板部72の上端部と右センターピラー111との間から内側板部72の車室内側へ流れることが考えられる。この内側板部72の車室内側へ流れた水は、矢印W6で示すように突条部72aによって後側へ向けて排水することができる。
【0082】
また、フロントドア200を閉じているときに、矢印W7で示すように、水がアウトサート材50の上端部から当該アウトサート材50の前側突出板部52の車室内側の面を伝って流れる場合が想定される。この場合に、アウトサート材50の前側突出板部52が水流入口71の車室外側の縁部71bよりも上方へ延びているので、前側突出板部52を伝う水が重力によって水流入口71へ自然に流入し、排水路R5によって排水される。
【0083】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明に係る自動車ドア用シール材は、フロントドアやリヤドアに用いることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 自動車ドア用シール材
3 上辺シール部(押出成形部)
4 縦辺シール部
7 後側型成形部
30 取付基部
35 押出部外側シールリップ
36 押出部内側シールリップ
50 アウトサート材(硬質板材)
71 水流入口
71a 水流入口の車室内側の縁部
71b 水流入口の車室外側の縁部
72 内側板部
72a 突条部
74 延出板部
77 上側中芯抜き穴
78 区画壁部
82 排水口
101 車体
102 フロントドア開口部
200 フロントドア
213 ドアラッチ装置
220 フレーム
222 上辺部
223 縦辺部
R1、R2 押出成形中空部
R5 排水路
R7 型成形中空部
S 導水溝