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7405667ポリエチレンイミン及びポリエチレンイミンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ポリエチレンイミン及びポリエチレンイミンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/04 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
C08G73/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020057716
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021155571
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】徳島 大貴
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-158271(JP,A)
【文献】特開2021-155570(JP,A)
【文献】特表2000-501757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が6000以上であり、分岐度が0%を超え25%以下である、ポリエチレンイミン。
【請求項2】
ポリエチレンイミンの製造方法であって、
超酸の存在下、25℃以下の温度でエチレンイミンを重合させる工程を備え、
前記ポリエチレンイミンの数平均分子量が4000以上であり、分岐度が0%を超え25%以下である、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンイミン及びポリエチレンイミンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖に二級アミンを有するポリマーであるポリエチレンイミンは、二級アミンが備えるキレート能等の各種有用な機能を有しており、分子量に応じて様々な用途で用いられている。例えば、低分子量域に属し粘度の低いポリエチレンイミンは、各種分散剤や洗浄剤などとして用いられ、高分子量域に属する粘度の高いポリエチレンイミンは、バインダーや接着剤などとして用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、エチレンイミンをポリメタロオキソ酸塩の存在下で重合させることでポリエチレンイミンを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-158271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
完全な直鎖ポリエチレンイミンは、結晶性が悪く冷水に不溶であることから、その用途が限定されてしまうこと、また製造工程が煩雑であることなどの問題がある。したがって、主鎖に二級アミンを有しつつ、適度に分岐度を有するポリエチレンイミンが求められている。しかしながら、本発明者の検討によれば、得られるポリエチレンイミンの分子量を所望の範囲にコントロールしつつ、適度な分岐度を維持したまま、主鎖の二級アミンの比率を向上させることは困難である。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、新たなポリエチレンイミン、及びポリエチレンイミンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、数平均分子量が4000以上であり、分岐度が0%を超え25%以下である、ポリエチレンイミンを提供する。
【0008】
また本発明は、上述した本発明に係るポリエチレンイミンの製造方法であって、超酸の存在下、25℃以下の温度でエチレンイミンを重合させる工程を備える、製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、主鎖に二級アミンを有しつつ、特定の分子量範囲を有し、適度に分岐度を有する新たなポリエチレンイミン、及びそのようなポリエチレンイミンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
本実施形態に係るポリエチレンイミンは、数平均分子量が4000以上であり、分岐度が0%を超え25%以下である。このようなポリエチレンイミンは、高分子量域に属し、適度に分岐度を有しつつ主鎖の二級アミンの比率が高いため、二級アミンが備える機能を損なうことなく、ポリマーの水溶性の維持が可能であり、また着色も抑えられる。
【0012】
本実施形態に係るポリエチレンイミンの数平均分子量は、4000以上であり、好ましくは6000以上、より好ましくは10000以上、更に好ましくは130000以上である。ポリエチレンイミンの数平均分子量の下限は、好ましくは25000以下、より好ましくは20000以下、更に好ましくは18000以下である。なお、本発明における数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にてプルランを標準物質とした公知の方法で測定できる。
【0013】
本実施形態に係るポリエチレンイミンの分岐度は、0%を超え、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上、特に好ましくは15%以上である。ポリエチレンイミンの分岐度の上限は、25%以下であり、好ましくは23%以下、より好ましくは20%以下である。
【0014】
なお、本発明における分岐度とは、ポリエチレンイミンが有する三級アミン及び二級アミンの合計量に対する三級アミンの割合を示す数値である。上記の分岐度は、ポリエチレンイミンの13C-NMRを測定して得られるチャートから、三級アミンに結合している炭素原子と二級アミンに結合している炭素原子との強度比を求めることによって、三級アミンの個数aと二級アミンの個数bとを算出し、これらa及びbから下記式から算出される。
分岐度(%)=〔a/(a+b)〕×100
したがって、直鎖状のポリエチレンイミンは、三級アミンを有していないので分岐度0%であり、全ての窒素原子が三級アミンとなっている。すなわち、最大限に分岐しているポリエチレンは、分岐度100%である。
【0015】
本実施形態に係るポリエチレンイミンの製造方法は、超酸の存在下、25℃以下の温度でエチレンイミンを重合させる工程を備える。このような製造方法によって得られるポリエチレンイミンは、高分子量域に属し、適度に分岐度を有しつつ主鎖の二級アミンの比率が高いため、二級アミンが備える機能を損なうことなく、ポリマーの水溶性の維持が可能である。また、得られるポリエチレンイミンの着色も抑えることができる。
【0016】
本実施形態に係る製造方法において用いられる超酸とは、100%硫酸よりも酸性が強い酸であり、エチレンイミンの重合反応において触媒として添加される。超酸を用いることで、低温下でも重合反応において1級アミンを比較的優先的に反応させることができ、所望の分岐度を有するポリエチレンイミンを製造することが可能となると考えられる。超酸としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、無水トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミン等が挙げられる。これらの超酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
超酸の添加量は、より効率的に所望の分岐度を有するポリエチレンイミンを得る観点から、反応系中において、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上である。超酸の添加量の上限は、より効率的に所望の分岐度を有するポリエチレンイミンを得る観点から、反応系中において、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、更に好ましくは1モル%以下である。
【0018】
本実施形態に係る製造方法においては、重合の起点となるベースアミンとして、アミン添加剤を用いてもよい。エチレンイミンの重合の際には、末端に反応性のアジリジン骨格が残り、このアジリジン骨格が濃縮時等に架橋することで高分子量化することがある。重合の起点となるアミン添加剤を添加することで、このアジリジン骨格が残存することが抑制され、得られるポリエチレンイミンの急激な高分子量化を抑制し、分子量を所望の範囲にコントロールすることができると考えられる。
【0019】
アミン添加剤としては、例えば、1級アミン、2級アミン等を用いることができる。アミン添加剤の分子量は、特に制限されないが、例えば31~1000の範囲のものを用いることができる。用いるアミン添加剤として、具体的には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン、アルキルアミン等が好適に用いられる。これらアミン添加剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0020】
アミン添加剤を添加する場合、その添加量は、特に制限されないが、反応系中において、例えば0モル%以上、0.01モル%以上、又は0.1モル%以上であってよい。アミン添加剤の添加量の上限は、分子量が低下してしまうことを抑制する観点から、3モル%以下であることが好ましい。
【0021】
本実施形態に係る製造方法においては、溶媒を用いてもよい。好適に用いられる溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;などが挙げられるが、特に限定されるものではない。これら溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記例示の溶媒のうち、水、メチルアルコール、及びこれらの混合物を用いることがより好ましい。
【0022】
本実施形態に係る製造方法において、反応温度は25℃以下である。反応温度を25℃以下とすることによって、エチレンイミンにおける1級及び2級のランダムな反応を抑制することができ、所望の分岐度を有するポリエチレンイミンを得ることができる。このような観点から、反応温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは5℃以下である。反応温度の下限は、溶媒の凝固温度にも依存するが、重合反応をより十分に進行させる観点から、例えば-10℃以上であってよく、0℃以上であってよい。
【0023】
本実施形態に係る製造方法において、反応時間は特に制限されるものではないが、例えば8時間以上であってよく、12時間以上であってよく、また、4時間以下であってよく、2時間以下であってもよい。
【0024】
本実施形態に係る製造方法においては、超酸の存在下、25℃以下の温度でエチレンイミンを重合させる工程に続き、所望により得られる重合反応液における溶媒を除去すること等を目的として、重合反応液を濃縮する工程を備えていてもよい。濃縮は、例えば減圧濃縮等であってよい。また、濃縮条件も特に制限されることはなく、任意の減圧条件でよく、また例えば60~120℃の温度で濃縮を行なってよい。
【0025】
本発明に係るポリエチレンイミンやその化学修飾体は、各種分散材、洗浄剤、バインダー、接着剤、アンカーコート剤、CO吸着材、CO分離膜、水浄化分野、抗菌ポリマーの材料として好適に用いられる。これらは二級アミンが備える好反応性やキレート能等の各種有用な機能を有効に活用することができ、高分岐のポリエチレンイミン以上の性能を発現させることが可能である。
【実施例
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]
10ml耐圧反応器に溶媒である水2mlと、触媒であるジトリフルオロメタンスルホン酸無水物0.05mol%とを仕込み、0~5℃にした後、エチレンイミン1.2mlをゆっくり滴下した。低温条件を維持したまま6時間撹拌し、開環重合させた。その後、80℃、減圧条件下で残存エチレンイミンと溶媒を除去し、目的のポリエチレンイミンを得た。得られたエチレンイミンに対し、以下の条件でNMR分析を行い、分岐度を算出したところ、分岐度は19%であった。また、得られたポリエチレンイミンに対し、以下の条件でGPC分析を行ったところ、数平均分子量(Mn)は15000であった。また、ポリエチレンイミンの着色は見られなかった。
【0028】
<NMR分析>
30質量%の重酢酸を含む重水に、10質量%のポリエチレンイミンを溶解し、NMR(400MHz)分析を行った。
【0029】
<GPC分析>
以下の条件でポリエチレンイミンの数平均分子量を測定した。
・測定装置:島津製作所製
・使用カラム:昭和電工製Shodex Asahipac GF-710HQ+GF-510HQ+GF-310HQ
・溶離液:0.2モル%-モノエタノールアミン水溶液に酢酸を添加してpH5.1に調整したもの
・標準物質:プルランP-82(和光純薬製)
・検出器:示唆屈折計(島津製作所製)
【0030】
[実施例2]
触媒をビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミンに代えた以外は実施例1と同様の操作によって、ポリエチレンイミンを得た。得られたポリエチレンイミンに対し、実施例1と同様の条件で分岐度を算出したところ、分岐度は20%であった。また、得られたポリエチレンイミンに対し、実施例1と同様の条件でGPC分析を行ったところ、数平均分子量(Mn)は14000であった。また、ポリエチレンイミンの着色は見られなかった。
【0031】
[比較例1]
触媒を塩酸に代えた以外は実施例1と同様の操作を行ったが、反応が十分に進行せず、目的とするポリエチレンイミンは得られなかった。
【0032】
[比較例2]
触媒を硫酸に代えた以外は実施例1と同様の操作を行ったが、反応が十分に進行せず、目的とするポリエチレンイミンは得られなかった。
【0033】
[比較例3]
反応温度を80℃に代えた以外は比較例1と同様の操作によって、ポリエチレンイミンを得た。得られたポリエチレンイミンに対し、実施例1と同様の条件で分岐度を算出したところ、分岐度は46%であった。また、得られたポリエチレンイミンに対し、実施例1と同様の条件でGPC分析を行ったところ、数平均分子量(Mn)は6000であった。