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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/021 20130101AFI20231219BHJP
【FI】
B60R25/021
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020057862
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021154907
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000237307
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトコラムシステム
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】藤原 一喜
(72)【発明者】
【氏名】足立 拓也
(72)【発明者】
【氏名】作田 雅芳
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10326120(DE,A1)
【文献】特開2017-222241(JP,A)
【文献】特開2007-153093(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0135328(KR,A)
【文献】中国実用新案第206598872(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に設けられる筒形状のシャフト支持部材と、
前記シャフト支持部材の内部に回転自在に設けられるステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトの前記シャフト支持部材に対応する外周面に取り付けられ、外周部に軸方向に向けて延在する凹部及び、凹部相互間に形成される凸部が、周方向に沿ってそれぞれ複数設けられたキーロックカラーと、
前記シャフト支持部材に設けられ、先端部が前記キーロックカラーの凹部に係合することで前記ステアリングシャフトの前記シャフト支持部材に対する回転を規制するロックキーと、を有し、
前記キーロックカラーは、前記凹部及び前記凸部を備えるキーロックカラー本体と、前記キーロックカラー本体に対し軸方向に隣接して設けられる円筒部と、を備え、
前記円筒部の外径は、前記複数の凸部の先端面を含む円の外径より小さく、前記複数の凹部の外表面を含む円の外径より大きいことを特徴とするステアリングコラム装置。
【請求項2】
前記キーロックカラーは、前記円筒部の軸方向長さが前記キーロックカラー本体の軸方向長さより短いことを特徴とする請求項1に記載のステアリングコラム装置。
【請求項3】
前記キーロックカラーは、前記円筒部の肉厚が不均一であることを特徴とする請求項1または2に記載のステアリングコラム装置。
【請求項4】
前記円筒部の肉厚は、前記キーロックカラー本体と反対側が前記キーロックカラー本体側に比較して薄いことを特徴とする請求項3に記載のステアリングコラム装置。
【請求項5】
前記円筒部の肉厚は、前記キーロックカラー本体側から前記キーロックカラー本体と反対側に向けて徐々に薄くなっていることを特徴とする請求項4に記載のステアリングコラム装置。
【請求項6】
前記円筒部の内周面と外周面との少なくともいずれか一方は、当該円筒部の軸線に対して傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のステアリングコラム装置。
【請求項7】
前記円筒部の内周面と外周面との少なくともいずれか一方は、当該円筒部の軸線方向に沿って階段状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のステアリングコラム装置。
【請求項8】
前記キーロックカラーと前記ステアリングシャフトとの間にトレランスリングが設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のステアリングコラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングシャフトの回転を規制するロック機構を備えるステアリングコラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングコラム装置には、自動車の盗難防止のためにステアリンホイールが回らないようにするロック機構が設けられている。ロック機構は、イグニッションキーをロック位置にして鍵を引き抜くと、ステアリングコラム側のロックキーが、ステアリングシャフトの外周に取り付けてあるキーロックカラーに係合してロックする。
【0003】
しかし、ステアリングシャフトがロックされている状態で、ステアリングホイールを強い力で無理に回転させると、ロックキーが破壊されてロック機構の機能が喪失し、盗難防止装置としての機能が損なわれる可能性がある。このため、大きなトルクが加えられた場合に、ステアリングシャフトがキーロックカラーに対し、摩擦力(スリップトルク)を受けながらすべって回転するようにして、ロックキーが破壊しないようにしたステアリング装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-153093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステアリングシャフトの外周面とキーロックカラーの内周面との間に発生する上記した摩擦力は、ロック状態でのロックキーを破壊するには不足するが、アンロック状態でのステアリング操作に支障がないような適正な値に設定しておく必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、ステアリングシャフトの外周面とキーロックカラーの内周面との間に発生する摩擦力を適正なものとすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車体側に設けられる筒形状のシャフト支持部材と、前記シャフト支持部材の内部に回転自在に設けられるステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトの前記シャフト支持部材に対応する外周面に取り付けられ、外周部に軸方向に向けて延在する凹部及び、凹部相互間に形成される凸部が、周方向に沿ってそれぞれ複数設けられたキーロックカラーと、前記シャフト支持部材に設けられ、先端部が前記キーロックカラーの凹部に係合することで前記ステアリングシャフトの前記シャフト支持部材に対する回転を規制するロックキーと、を有し、前記キーロックカラーは、前記凹部及び前記凸部を備えるキーロックカラー本体と、前記キーロックカラー本体に対し軸方向に隣接して設けられる円筒部と、を備え、前記円筒部の外径は、前記複数の凸部の先端面を含む円の外径より小さく、前記複数の凹部の外表面を含む円の外径より大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ステアリングシャフトの外周面とキーロックカラーの内周面との間に発生する摩擦力を適正なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態によるステアリングコラム装置の左側面図である。
図2図1のステアリングコラム装置に使用するキーロックカラーの側面図である。
図3図2の左側面図である。
図4図2の右側面図である。
図5図2のキーロックカラーが組付けられるステアリングシャフト及びトレランスリングを含む分解斜視図である。
図6図5のキーロックカラー、ステアリングシャフト及びトレランスリングの組付け図である。
図7図6のキーロックカラーに対応する部位の軸線に沿った断面図である。
図8】他の実施形態によるキーロックカラーの断面図である。
図9】さらに他の実施形態によるキーロックカラーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、図面において、車両前方は矢印FR、車両後方は矢印RRで示す。
【0011】
図1に示すように、ステアリングコラム装置1は、車体に固定するための前後二つの車体取付ブラケット2,3を備えている。車体取付ブラケット2,3には、アウターコラム5が車体上下方向に揺動自在(チルト位置調整自在)に支持されている。アウターコラム5には、インナーコラム7が車体前後方向に移動自在(テレスコピック位置調整自在)に支持されている。
【0012】
ロック部9は、車体取付ブラケット3とアウターコラム5とインナーコラム7とを、操作レバー10を押し上げることで締め付けてロック状態とし、操作レバー10を押し下げることでアンロック状態とする。ロック部9をアンロック状態としたときに、チルト位置またはテレスコピック位置を調整し、調整後にロック状態とすることで、チルト位置またはテレスコピック位置が固定される。
【0013】
インナーコラム7とアウターコラム5の筒内には、ステアリングシャフト11が、前後一対のベアリング13F及び13Rを介して回転自在に軸支されている。ステアリングシャフト11の後端には、図示しないステアリングホイールが取り付けられる。ステアリングシャフト11は、アウターコラム5内に収容されるロアシャフト11Lと、インナーコラム7内に収容されるアッパーシャフト11Uとを備えている。
【0014】
アッパーシャフト11Uとロアシャフト11Lとをスプラインで連結することで、軸周りにはアッパーシャフト11U及びロアシャフト11Lが、アウターコラム5及びインナーコラム7に対して一体に回転する。軸方向にはアッパーシャフト11Uがロアシャフト11Lに対して移動自在となる。すなわち、前述したテレスコピック位置調整時には、インナーコラム7及びアッパーシャフト11Uが一体で、アウターコラム5及びロアシャフト11Lに対して前後に移動する。
【0015】
ロアシャフト11Lの外周面には、全体として円筒形状のキーロックカラー15が取り付けられている。キーロックカラー15は、アウターコラム5の内周面に対向する位置で、前方のベアリング13Fとアッパーシャフト11Uの前端との間のベアリング13F近傍に位置している。キーロックカラー15は、例えば機械構造用炭素鋼等の弾性を有する金属材料で構成されている。
【0016】
アウターコラム5には、キーロックカラー15に係合するロックキー17が、キーロックカラー15の軸心に向けて移動自在に取り付けられている。ロックキー17は、イグニッションキーをロック位置にして鍵を引き抜くと、先端部がキーロックカラー15に係合してロックする。ロックキー17がキーロックカラー15に係合することで、ステアリングシャフト11のアウターコラム5に対する回転が規制される。これにより、キーロックカラー15及びロックキー17を備えるロック機構が盗難防止装置として機能する。アウターコラム5は、車体側に設けられる筒形状のシャフト支持部材を構成している。なお、図1に示すロックキー17は、理解しやすくするために下部に位置しているが、図1に示す位置に限るわけではなく、周方向の最適な位置に設けられる。
【0017】
次に、キーロックカラー15について図2図7を用いて説明する。
【0018】
キーロックカラー15は、軸方向の大部分を占めるキーロックカラー本体19と、キーロックカラー本体19に対し軸方向に隣接して設けられる円筒部21とを備えている。円筒部21は、キーロックカラー本体19に対して車体後方側に位置し、キーロックカラー本体19よりも軸方向長さが短い。キーロックカラー本体19は、外周部に凹部19aと凸部19bとが、周方向に沿って交互に形成されている。すなわち、凸部19bは凹部19a相互間に形成されている。凹部19a及び凸部19bは、軸方向に沿って延在しており、それぞれ周方向に沿って等間隔に形成されている。
【0019】
図3及び図4に示すように、円筒部21の外径D1は、凸部19bの外径D2より小さく、凹部19aの外径D3より大きい(D2>D1>D3)。キーロックカラー15は、キーロックカラー本体19と円筒部21とにわたる軸方向全体の内径D4が一定である。なお、凸部19bの外径D2とは、複数の凸部19bの先端面を含む円Pの直径に相当し、凹部19aの外径D3とは、複数の凹部19aの外表面を含む円Qの直径に相当する。
【0020】
キーロックカラー15は、外周面及び内周面共に円形の円筒形状の素材に対し、金型を押し込むようにして塑性加工(冷間鍛造)することによって、外周面に凹部19a及び凸部19bを形成する。具体的には、軸方向の一端が開口した一方の金型に素材をセットした状態で、筒部の内周面に凹部19aを成形するための押し込み凸部を周方向に沿って複数備える他方の金型を、軸方向に沿って移動させる。押し込み凸部が素材の外周面を軸方向に沿って扱くように移動して、凹部19aを形成する際に、扱かれたときに発生する余肉が円筒部21の一部となる。塑性加工後は、キーロックカラー15の全体が所望の形状となるよう適宜仕上げ加工する。
【0021】
キーロックカラー15の内径D4は、ロアシャフト11Lの外径よりやや大きく形成してあり、これらキーロックカラー15とロアシャフト11Lとの間には、ほぼ円筒形状のトレランスリング23が設けられている。トレランスリング23は、弾性変形可能な帯状の金属板をほぼC字形状に折り曲げたもので、内外周面に凹凸部からなるばね状部23aが形成されている。
【0022】
トレランスリング23は、キーロックカラー15とロアシャフト11Lとの間に組付けた状態で径方向外側に弾性変形しており、ばね状部23aがキーロックカラー15とロアシャフト11Lとの間で圧縮されることで、キーロックカラー15とロアシャフト11Lとの間に摩擦力(スリップトルク)Fを発生させる。トレランスリング23は、図7に示すように、軸方向長さがキーロックカラー15よりもやや短くしてあるが、同等としてもよい。
【0023】
ロックキー17がキーロックカラー15の凹部19aに入り込むことで、ステアリングシャフト11がロックされて回転が規制され、ロック状態となる。ロック状態のステアリングシャフト11を強い力で無理に回転させたときに、ロックキー17の破壊を防ぐために、ステアリングシャフト11がキーロックカラー15に対し摩擦力Fを受けながらすべり回転する。
【0024】
このときの摩擦力Fは適正に設定しておく必要がある。すなわち、摩擦力Fが、適正値より大きいと、ロック状態でのロックキー17の破壊を招き、適正値より小さいと、ステアリングシャフト11はロックされているにも拘らず容易に回転してしまうことになる。換言すれば、摩擦力Fは、ロックキー17を破壊するのには不足するが、自動車の運転に必要なステアリング操作が可能なほどの大きさが必要となる。
【0025】
図5に示すトレランスリング23は、ロアシャフト11Lに組付けた状態で、図6に示すようにキーロックカラー15の内部に挿入する。挿入後のトレランスリング23は、ばね状部23aが、図7に示すようにキーロックカラー本体19と円筒部21との双方に対応する位置となる場合がある。この場合、円筒部21の外径D1が凸部19bの外径D2と同等であるとすると、円筒部21は、軸方向長さもキーロックカラー本体19と同等とした場合、剛性がキーロックカラー本体19より高くなる。キーロックカラー本体19は、凹部19aが形成されているため、円筒部21よりも剛性が低くなる傾向にある。
【0026】
この状態で、トレランスリング23がロアシャフト11Lとキーロックカラー15との間に組付けられると、トレランスリング23は、剛性の高い円筒部21に対応する部位(以下、円筒対応部位とする。)と、剛性の低いキーロックカラー本体19に対応する部位(以下、本体対応部位とする。)とで、弾性変形量が異なってしまう。弾性変形量が異なると、前述した摩擦力Fが、円筒部21とキーロックカラー本体19とで変化することになり、安定した摩擦力Fが得られなくなる。
【0027】
そこで、本実施形態では、円筒部21の外径を変化させることで円筒部21の剛性を調整し、摩擦力Fを、円筒部21とキーロックカラー本体19とでほぼ均一化させている。具体的には、円筒部21の外径D1は、前述したように、凸部19bの外径D2より小さく、凹部19aの外径D3より大きくしている。円筒部21及びキーロックカラー本体19のそれぞれの内径は、同一のD4である。したがって、肉厚に関して円筒部21は、凸部19bに対応する部位より薄く、凹部19aに対応する部位より厚い。
【0028】
このように、円筒部21の外径を調整することで、円筒部21の剛性をキーロックカラー本体19の剛性に近づけることができ、円筒部21の剛性とキーロックカラー本体19の剛性とをほぼ均一化することができる。これにより、トレランスリング23は、円筒対応部位と本体対応部位との間で、組付け時の弾性変形量がほぼ同等となる。その結果、摩擦力Fは、円筒部21とキーロックカラー本体19とでほぼ均一化し、安定した摩擦力Fが得られることになる。
【0029】
なお、円筒部21とキーロックカラー本体19との間の剛性差は、これら各部位の軸方向長さも影響する。本実施形態では、軸方向長さに関し、円筒部21を、キーロックカラー本体19より短くしている。したがって、この長さ設定の範囲で円筒部21の軸方向長さを調整することで、円筒部21は軸方向長さを考慮した剛性とすることができる。
【0030】
本実施形態では、摩擦力Fの調整を円筒部21の形状を変えることにより行っている。このため、摩擦力Fを調整する際に、他部品の構造により、キーロックカラー15の内径D4、凹部19aに対応する部位の外径D3等を変更できない場合であっても、容易に対応できる。
【0031】
本実施形態は、キーロックカラー15とステアリングシャフト11との間にトレランスリング23が設けられている。このため、トレランスリング23を用いて摩擦力Fを発生させる場合であっても、円筒部21及びキーロックカラー本体19の剛性がほぼ同等となるように、円筒部21の外径や軸方向長さ等を調整することで、摩擦力Fを軸方向に沿ってほぼ均一化することができる。
【0032】
本実施形態のキーロックカラー15は、円筒部21の軸方向長さをキーロックカラー本体19の軸方向長さより短くしている。円筒部21とキーロックカラー本体19の軸方向長さが同等である場合、キーロックカラー本体19は、凹部19aが形成されているため、円筒部21より剛性が低くなる。
【0033】
このため、軸方向長さに関し、剛性が低い傾向にあるキーロックカラー本体19よりも剛性が高い傾向にある円筒部21を短くすることで、円筒部21とキーロックカラー本体19との間で剛性をほぼ同等とすることができる。これにより、トレランスリング23は、円筒対応部位と本体対応部位との間で、組付け時の弾性変形量がほぼ同等となり、摩擦力Fが、円筒部21とキーロックカラー本体19とでほぼ均一化して安定した摩擦力Fが得られる。
【0034】
なお、円筒部21とキーロックカラー本体19との間の剛性差は、これら各部位の肉厚も影響する。本実施形態では、肉厚に関して円筒部21を、凸部19bに対応する部位より薄く、凹部19aに対応する部位より厚くしている。したがって、この肉厚設定の範囲で円筒部21の肉厚を調整することで、肉厚を考慮した剛性とすることができる。
【0035】
次に、他の実施形態を図8図9を用いて説明する。
【0036】
図8図9に示す実施形態は、キーロックカラー15A、15Bのそれぞれの円筒部21の肉厚を不均一にしている。これにより、円筒部21の剛性を調整し、円筒部21とキーロックカラー本体19のそれぞれの剛性がほぼ同等となるようにしている。その結果、トレランスリング23は、円筒対応部位と本体対応部位との間で、組付け時の弾性変形量がほぼ同等となり、摩擦力Fが、円筒部21とキーロックカラー本体19とでほぼ均一化して安定した摩擦力Fが得られる。
【0037】
図8図9に示す実施形態は、キーロックカラー15A、15Bのそれぞれの円筒部21の肉厚は、キーロックカラー本体19と反対側をキーロックカラー本体19側に比較して薄くしている。これにより、円筒部21の剛性を調整し、円筒部21とキーロックカラー本体19のそれぞれの剛性がほぼ同等となるようにしている。その結果、トレランスリング23は、円筒対応部位と本体対応部位との間で、組付け時の弾性変形量がほぼ同等となり、摩擦力Fが、円筒部21とキーロックカラー本体19とでほぼ均一化して安定した摩擦力Fが得られる。
【0038】
図8図9に示す実施形態は、キーロックカラー15A、15Bのそれぞれの円筒部21の肉厚は、キーロックカラー本体19側からキーロックカラー本体19と反対側に向けて徐々に薄くなっている。これにより、円筒部21の剛性を調整し、円筒部21とキーロックカラー本体19のそれぞれの剛性がほぼ同等となるようにしている。その結果、トレランスリング23は、円筒対応部位と本体対応部位との間で、組付け時の弾性変形量がほぼ同等となり、摩擦力Fが、円筒部21とキーロックカラー本体19とでほぼ均一化して安定した摩擦力Fが得られる。
【0039】
図8に示す実施形態のキーロックカラー15Aは、円筒部21のキーロックカラー本体19と反対側の端部21aの外周面を傾斜面21bとしている。傾斜面21bは、キーロックカラー本体19側よりも端部21a側ほど外径が小さくなるように傾斜している。傾斜面21bの傾斜角度または軸方向の傾斜範囲等を調整することで、円筒部21の剛性を調整し、円筒部21とキーロックカラー本体19のそれぞれの剛性がほぼ同等となるようにしている。その結果、トレランスリング23は、円筒対応部位と本体対応部位との間で、組付け時の弾性変形量がほぼ同等となり、摩擦力Fが、円筒部21とキーロックカラー本体19とでほぼ均一化して安定した摩擦力Fが得られる。
【0040】
図9に示す実施形態のキーロックカラー15Bは、円筒部21のキーロックカラー本体19と反対側の端部21aの内周面を、円筒部21の中心軸線方向に沿って階段状に形成した階段部21cとしている。階段部21cは、キーロックカラー本体19側よりも端部21a側ほど外径が小さくなるように段差をつけている。図9の階段部21cは、二段としているが、一段でもよく、三段以上であってもよい。
【0041】
階段部21cの段差の数または軸方向の段差範囲等を調整することで、円筒部21の剛性を調整し、円筒部21とキーロックカラー本体19のそれぞれの剛性がほぼ同等となるようにしている。その結果、トレランスリング23は、円筒対応部位と本体対応部位との間で、組付け時の弾性変形量がほぼ同等となり、摩擦力Fが、円筒部21とキーロックカラー本体19とでほぼ均一化して安定した摩擦力Fが得られる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含む。
【0043】
例えば、上記した実施形態では、キーロックカラー15をロアシャフト11Lの外周面に取り付けているが、アッパーシャフト11Uの外周面に取り付けてもよい。この場合、キーロックカラー15は、例えば図1において、アッパーシャフト11Uとロアシャフト11Lとをスプラインで連結していない部分のインナーコラム7(図1中で車体取付ブラケット3の右側)の内周面に対向する位置に取り付ける。したがって、キーロックカラー15に係合するロックキー17はインナーコラム7に取り付ける。キーロックカラー15をアッパーシャフト11Uに取り付けた場合でも、ロアシャフト11Lに取り付けた場合と同様の作用効果が得られる。
【0044】
上記した実施形態のトレランスリング23は、周方向の一部が切り欠かれたC字形状に限ることはなく、円環状であってもよい。
【0045】
上記した実施形態のトレランスリング23は使用しなくてもよい。この場合、組付け前でのキーロックカラー15の内径D4を、ロアシャフト11Lの外径より若干小さくしておく。ロアシャフト11Lをキーロックカラー15に圧入することで、キーロックカラー15が弾性変形し、ロアシャフト11Lとキーロックカラー15との間に摩擦力Fが発生する。なお、キーロックカラー15のロアシャフト11Lが圧入される側の端部の内側角部を面取りすることで、圧入作業が容易となる。
【0046】
このとき、前述したように、円筒部21の外径D1または軸方向長さ等を調整することで、円筒部21の剛性をキーロックカラー本体19の剛性とほぼ同等となるようにする。これにより、キーロックカラー15は、円筒部21とキーロックカラー本体19との間で、組付け時の弾性変形量がほぼ同等となり、摩擦力Fが、円筒部21に対応する部位とキーロックカラー本体19に対応する部位とでほぼ均一化して安定した摩擦力Fが得られる。
【0047】
図8に示す実施形態では、円筒部21の外周面に傾斜面21bを形成しているが、円筒部21の内周面に傾斜面を形成してもよく、円筒部21の外周面及び内周面の両方に傾斜面を形成してもよい。図9に示す実施形態では、円筒部21の内周面に階段部21cを形成しているが、円筒部21の外周面に階段部を形成してもよく、円筒部21の外周面及び内周面の両方に階段部を形成してもよい。円筒部21の外周面に傾斜面を設け、円筒部21の内周面に階段部を設けるなど、傾斜面と階段部とを組み合わせてもよい。
【0048】
円筒部21の肉厚を不均一とする構成として、円筒部21の内周面と外周面との少なくともいずれか一方に凹部を形成することで部分的に薄肉部を設けてもよい。あるいは、円筒部21のキーロックカラー本体19と反対側の端部の内周側角部と外周側角部との少なくともいずれか一方に面取りを施してもよい。
【符号の説明】
【0049】
5 アウターコラム(シャフト支持部材)
11 ステアリングシャフト
15 キーロックカラー
17 ロックキー
19 キーロックカラー本体
19a キーロックカラー本体の凹部
19b キーロックカラー本体の凸部
21 キーロックカラーの円筒部
21b 円筒部の傾斜面
23 トレランスリング
D1 円筒部の外径
D2 凸部の外径
D3 凹部の外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9