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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231219BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020061454
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021164195
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平尾 高志
(72)【発明者】
【氏名】徳山 健
(72)【発明者】
【氏名】前川 典幸
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-107949(JP,A)
【文献】特開2017-108524(JP,A)
【文献】特開2017-028747(JP,A)
【文献】特開2013-251991(JP,A)
【文献】特開2017-221003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00~ 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング動作を行うパワーモジュールと、
前記スイッチング動作に伴う電圧リプルを平滑化する平滑コンデンサと、
前記パワーモジュールの駆動を制御する回路基板と、
前記パワーモジュールおよび前記平滑コンデンサを収納する筐体と、
前記パワーモジュールを前記筐体に固定するための第1固定部材と、
前記平滑コンデンサを前記筐体に固定するための第2固定部材と、を備え、
前記回路基板は、前記パワーモジュールと前記平滑コンデンサとの間って配され、かつ前記第1固定部材および前記第2固定部材により支持され、
前記第1固定部材および前記第2固定部材の少なくとも一方は、導電性材料で構成される電力変換装置。
【請求項2】
請求項に記載の電力変換装置において、
前記第1固定部材および前記第2固定部材は導電性材料で構成され、
前記回路基板の表面には導電層であるシールド層が備えられ、
前記回路基板は、前記第1固定部材および前記第2固定部材とは前記回路基板の厚み方向に異なる位置に配され、
前記シールド層を前記厚み方向に射影すると、前記第1固定部材と前記第2固定部材との間の隙間に重なる電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は様々な装置に組み込まれて利用され、需要の増大とともに要求される仕様も厳しくなっている。特許文献1には、スイッチング素子と、平滑コンデンサと、前記スイッチング素子を駆動する駆動回路部品が実装された回路基板とを含む電力変換回路の構成部品が筐体に収容され、高圧端子を介して、入力された電力を変換して出力する電力変換装置において、前記高圧端子と前記回路基板は、同一平面領域に配置されている電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/075976号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている発明では、電力変換装置の小型化に改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様による電力変換装置は、スイッチング動作を行うパワーモジュールと、前記スイッチング動作に伴う電圧リプルを平滑化する平滑コンデンサと、前記パワーモジュールの駆動を制御する回路基板と、前記パワーモジュールおよび前記平滑コンデンサを収納する筐体と、前記パワーモジュールを前記筐体に固定するための第1固定部材と、前記平滑コンデンサを前記筐体に固定するための第2固定部材と、を備え、前記回路基板は、前記パワーモジュールと前記平滑コンデンサとの間って配され、かつ前記第1固定部材および前記第2固定部材により支持され、前記第1固定部材および前記第2固定部材の少なくとも一方は、導電性材料で構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電力変換装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電力変換装置1の断面図
図2図1のII-II断面を示す断面図
図3】変形例1における電力変換装置1の断面図
図4図3のIV-IV断面を示す断面図
図5】変形例2における電力変換装置1の断面図
図6】変形例3における電力変換装置1の断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
―第1の実施の形態―
以下、図1図2を参照して、本発明に係る電力変換装置の第1の実施の形態を説明する。
【0009】
図1は電力変換装置1の断面図、図2図1のII-II断面を示す断面図である。電力変換装置1は、パワーモジュール2と、回路基板3と、平滑コンデンサ4と、バスバー5と、流路形成体6と、筐体7と、第1固定部材11と、第2固定部材12とを備える。
【0010】
電力変換装置1は、パワーモジュール2に内蔵されるパワー半導体素子のスイッチング動作により、直流から交流への変換、交流から直流への変換、周波数の変換、および電圧の変換のうち少なくとも1つを実行する。パワーモジュール2は、シリコンを母材とするIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や、炭化ケイ素を母材とするMOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のパワー半導体素子を内蔵するモジュールである。パワーモジュール2は発熱が大きいので後述する冷却媒体により冷却される。
【0011】
回路基板3は、たとえばプリント回路基板である。回路基板3には、パワーモジュール2のゲートを駆動するゲートドライブ回路や、各種機能を演算するマイクロプロセッサとその周辺回路が実装された基板である。回路基板3はパワーモジュール2や平滑コンデンサ4からのノイズの影響を受ける傾向にある。特に回路基板3に搭載されるマイクロプロセッサは、ノイズの影響を受けやすい。平滑コンデンサ4は、たとえばフィルムコンデンサや電解コンデンサである。平滑コンデンサ4は、パワーモジュール2に内蔵されるパワー半導体のスイッチングに伴う電圧リプルを平滑化する。
【0012】
バスバー5は、電気配線のための板状の導体であり、材料は銅やアルミニウムである。バスバー5は、パワーモジュール2と平滑コンデンサ4とを電気的に接続する。バスバー5内の電位の異なる配線間は樹脂等により絶縁される。流路形成体6は、ロングライフクーラント等の冷却媒体を流す経路である。流路形成体6は、アルミニウムや樹脂で構成される。流路形成体6は、パワーモジュール2を挟み込むように配置され、流路形成体6の内部を流れる冷却媒体がパワーモジュール2を冷却する。筐体7は、パワーモジュール2や平滑コンデンサ4などの部材を収納する。筐体7の材料はアルミニウムである。
【0013】
第1固定部材11は、パワーモジュール2を筐体7に押し付けて固定する。第1固定部材11は平板状であり、アルミニウムや鉄等の導電性材料で構成される。第1固定部材11は、第2固定部材12とともに回路基板3を支持する。第1固定部材11は、板バネのように弾性力を有することが好ましく、弾性力を有することにより確実にパワーモジュール2を固定できる。なお第1固定部材11と回路基板3との間には第1ボス11Aが配される。
【0014】
第2固定部材12は、平滑コンデンサ4を筐体7に押し付けて固定する。第2固定部材12は平板状であり、アルミニウムや鉄等の導電性材料で構成される。第2固定部材12は、第1固定部材11とともに回路基板3を支持する。第2固定部材12は、板バネのように弾性力を有することが好ましく、弾性力を有することにより確実に平滑コンデンサ4を固定できる。なお第2固定部材12と回路基板3との間には第2ボス12Aが配される。第2固定部材12は、第1固定部材11と同一平面上に配される。すなわち第1ボス11Aの高さと、だい2ボス12Aの高さは略同一である。
【0015】
なお図1では、図示下部から、パワーモジュール2および平滑コンデンサ4、第1固定部材11および第2固定部材12、回路基板3の順番に並んでいるが、重力方向との関係は不問である。すなわち、図1のいずれの方向を重力方向として設置されてもよい。
【0016】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電力変換装置1は、スイッチング動作を行うパワーモジュール2と、スイッチング動作に伴う電圧リプルを平滑化する平滑コンデンサ4と、パワーモジュール2の駆動を制御する回路基板3と、パワーモジュール2および平滑コンデンサ4を収納する筐体7と、パワーモジュール2を筐体7に固定する第1固定部材11と、平滑コンデンサ4を筐体7に固定する第2固定部材12と、を備える。回路基板3は、パワーモジュール2と平滑コンデンサ4の間を跨りかつ第1固定部材11と第2固定部材12により固定される。このように、第1固定部材11と第2固定部材12が回路基板30だけでなく他の構成の固定を行うので、電力変換装置1の高さ方向の寸法、より厳密には電力変換装置1における回路基板3の厚み方向の寸法を小さくできる。
【0017】
(2)電力変換装置1は、第1固定部材11および第2固定部材12が同一平面上に配置される。そのため第1ボス11Aおよび第2ボス12Aの高さを最低限とし、回路基板3を安定して支持できる。
【0018】
(3)電力変換装置1は、パワーモジュール2と平滑コンデンサ4とを電気的に接続するバスバー5を備える。バスバー5は、第1固定部材11および第2固定部材12と同一平面上に配置される。そのため、電力変換装置1の高さ方向の寸法を小さくすることができる。
【0019】
(4)電力変換装置1は、パワーモジュール2を冷却する冷却媒体の流路を形成する流路形成体6を備える。流路形成体6は、パワーモジュール2とともに第1固定部材11により筐体7に固定される。そのため、冷却媒体の流路を設けるために固定部材を追加する必要がないので、電力変換装置1の高さ方向の寸法を小さく保つことができる。
【0020】
(5)第1固定部材11および第2固定部材12は、導電性材料で構成される。そのため、第1固定部材11および第2固定部材12はその導電性により電磁シールドおよび接地となり、パワーモジュール2および平滑コンデンサ4が発するノイズを回路基板3から遮断できる。
【0021】
(6)第1固定部材11および第2固定部材12は、弾性力を有する。そのため、パワーモジュール2および平滑コンデンサ4を強固に筐体7に固定できる。
【0022】
(変形例1)
図3は、変形例1における電力変換装置1の断面図である。図3は第1の実施の形態における図1に相当する。本変形例では、回路基板3はシールド層31を有する。シールド層31は、回路基板3の内部に導電層であり、電位はグラウンドまたはフローティングである。
【0023】
図4は、図3におけるIV-IV断面を示す断面図であり、第1の実施の形態における図2に相当する。ただし図4ではシールド層31の位置を破線で示している。シールド層31は、図3および図4に示すように第1固定部材11と第2固定部材12との間に配される。そのため、第1固定部材11と第2固定部材12との間を通り抜けたノイズを遮断できる。
【0024】
この変形例1によれば、第1の実施の形態における作用効果に加えて次の作用効果が得られる。
(7)回路基板3には導電層であるシールド層31が備えられる。シールド層31は、第1固定部材11と第2固定部材12との間に配される。そのため、第1固定部材11および第2固定部材12の間から漏れるノイズをシールド層31により遮断できる。なお、シールド層31を設ける代わりに、ノイズの影響を受けやすい部材を第1固定部材11や第2固定部材12の直上に配置してもよい。
【0025】
(変形例2)
図5は、変形例2における電力変換装置1の断面図である。図5に示すように、電力変換装置1はバスバー5を備えなくてもよい。この場合には、パワーモジュール2および平滑コンデンサ4は、たとえば図7に示すように直接に接続されてもよい。
【0026】
(変形例3)
図6は、変形例3における電力変換装置1の断面図である。パワーモジュール2および流路形成体6の高さの合計と、平滑コンデンサ4の高さとが一致しない場合には、図6に示すように筐体7の底部に段差を設けて、第1固定部材11と第2固定部材12とを同一平面状に配することが望ましい。たとえば筐体7の底部は特段の工夫をせずに平らにして、第1ボス11Aと第2ボス12Aの長さを異ならせることにより対処することも考えられる。しかしその場合にはボスが長くなり回路基板3の安定した保持に問題が生じるため好ましくない。
【0027】
(その他の変形例)
上述した実施の形態では、第1固定部材11および第2固定部材12は弾性力を有した。しかし第1固定部材11および第2固定部材12が弾性力を有することは必須の構成ではなく、第1固定部材11および第2固定部材12の少なくとも一方が弾性力を有しなくてもよい。
【0028】
上述した実施の形態では、第1固定部材11および第2固定部材12は導電性を有した。しかし第1固定部材11および第2固定部材12が導電性を有することは必須の構成ではなく、第1固定部材11および第2固定部材12の少なくとも一方が導電性を有しなくてもよい。
【0029】
上述した実施の形態では、電力変換装置1は流路形成体6を備えた。しかし流路形成体6は電力変換装置1に必須の構成ではなく、電力変換装置1は流路形成体6を備えなくてもよい。その場合は電力変換装置1は、パワーモジュール2を筐体7の底部に密着させてもよいし、パワーモジュール2と筐体7との間に熱伝導率の高い金属を介在させてもよい。
【0030】
上述した実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1 …電力変換装置
2 …パワーモジュール
3 …回路基板
31 …シールド層
4 …平滑コンデンサ
5 …バスバー
6 …流路形成体
7 …筐体
11 …第1固定部材
12 …第2固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6