(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】燃焼装置用消音器
(51)【国際特許分類】
F23J 13/00 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
F23J13/00 B
(21)【出願番号】P 2020061556
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 清成
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-196413(JP,A)
【文献】特開2000-110544(JP,A)
【文献】特開2016-042007(JP,A)
【文献】特開平06-272848(JP,A)
【文献】特開平06-241572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0015302(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 13/00
F24H 9/00
F01N 1/02
F01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、が設けられた箱体を有し、
前記箱体は無機繊維を含む材料からなり、
前記ガス流路は、密度の異なる少なくとも2領域を有する壁から構成され
、
前記箱体の内部に、無機繊維を含む材料からなり、前記ガス流路を屈曲させる開口部が形成された仕切り板を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は、前記箱体の内壁面と前記仕切り板の表面により構成され、
前記仕切り板は、その厚み方向で異なる密度を有する、
燃焼装置用消音器。
【請求項2】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、が設けられた箱体を有し、
前記箱体は無機繊維を含む材料からなり、
前記ガス流路は、密度の異なる少なくとも2領域を有する壁から構成され、
前記箱体の内部に、無機繊維を含む材料からなり、前記ガス流路を屈曲させる開口部が形成された仕切り板を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は、前記箱体の内壁面と前記仕切り板の表面により構成され、
前記箱体は組立構造であり、
前記箱体は、底部材と、前記底部材に積層される枠部材と、を有し、
前記底部材と、前記仕切り板と一体成形された前記枠部材とは、互いに異なる密度を有する、
燃焼装置用消音器。
【請求項3】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、が設けられた箱体を有し、
前記箱体は無機繊維を含む材料からなり、
前記ガス流路は、密度の異なる少なくとも2領域を有する壁から構成され、
前記箱体の内部に、無機繊維を含む材料からなり、前記ガス流路を屈曲させる開口部が形成された仕切り板を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は、前記箱体の内壁面と前記仕切り板の表面により構成され、
前記箱体は組立構造であり、
前記箱体は、底部材と、前記底部材に積層される第1の枠部材と、前記第1の枠部材に積層される第2の枠部材と、を有し、
前記第1の枠部材及び第2の枠部材は、それぞれ、前記開口部が設けられた第1の仕切り板及び第2の仕切り板と一体成形され、
前記第1の仕切り板の開口部と前記第2の仕切り板の開口部が、積層方向から見た平面視で異なる位置に設けられることにより、蛇行した前記ガス流路が構成されており、
前記底部材、第1の枠部材及び第2の枠部材の少なくとも1つの部材は、他の部材と異なる密度を有する、
燃焼装置用消音器。
【請求項4】
前記底部材及び前記第2の枠部材は、前記第1の枠部材よりも高い密度を有する、
請求項
3に記載の燃焼装置用消音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭及び工場等で使用されている給湯機等には、燃焼ガスを燃焼させて熱交換する燃焼装置が使用されているものがある。従来より、燃焼ガスの燃焼時、及び燃焼排ガスの排出時に発生する騒音を低減するために、燃焼装置に取り付けられる種々の消音器が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1及び2には、燃焼ガスの導入口及び排出口を有する箱体と、その内部に配置され開口部を有する複数の仕切り板とを有し、導入口から排出口までの屈曲通路が構成された消音器が提案されている。
なお、上記特許文献1に記載された消音器は、箱体及び仕切り板が吸音材で形成されており、吸音材の表面には、鋼板又は多孔鋼板がライニングされている。
また、上記特許文献2に記載された消音器は、外壁を構成するケース及び屈曲通路を構成する筒状の排気通路部材は、部分的に複数の貫通孔を有する金属板から形成され、ケースと金属板との間に、例えば、ロックウールに熱硬化性樹脂がバインダとして加えられて板状に成形された吸音材が充填されている。
【0004】
このように構成された従来の消音器においては、屈曲通路内において、鋼板(金属板)に形成された複数の孔から燃焼ガスを吸音材に流入させることができ、吸音材により、騒音の消音効果を得ることができる。
【0005】
一方、特許文献3には、円筒形状の消音筒部と、消音筒部の一方の開口端に設けられた円板状の流入側板と、他方の開口端に設けられた円板状の流出側板と、を有し、ロックウールにより形成された消音器が提案されている。なお、流出側板の中央部には排気流出口及が形成されており、流入側板の中央部には中央開口が形成され、中央開口の周囲には複数の側部開口が形成されている。
このように構成された特許文献3に記載の消音器は、排気流入側に流入側板が設けられているため、燃焼音の音波の一部はこの流入側板で反射される。また、反射されなかった音波は、中央開口及び側部開口を通って内部に伝播され、広い周波数に渡って音波の共鳴が起こり、消音される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-159739号公報
【文献】特開2016-42007号公報
【文献】特開2004-308988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載された消音器は、吸音材と鋼板とを用いて製造されており、組立が複雑となる。
また、特許文献3に記載された消音器は、3つの部品から構成されており、極めて簡単な構造であるものの、燃焼ガスの通路長が短いため、十分な消音効果を得ることができない。
【0008】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、簡単な構造であって、消音効果を向上させることができる燃焼装置用消音器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、本発明に係る下記(1)の燃焼装置用消音器により達成される。
【0010】
(1) 燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、が設けられた箱体を有し、
前記箱体は無機繊維を含む材料からなり、
前記ガス流路は、密度の異なる少なくとも2領域を有する壁から構成される、燃焼装置用消音器。
【0011】
また、本発明の燃焼装置用消音器は、下記(2)~(9)のいずれかであることが好ましい。
【0012】
(2) 前記箱体の内部に、無機繊維を含む材料からなり、前記ガス流路を屈曲させる開口部が形成された仕切り板を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は、前記箱体の内壁面と前記仕切り板の表面により構成される、(1)に記載の燃焼装置用消音器。
【0013】
(3) 前記箱体は組立構造であり、前記箱体の一部と前記仕切り板とは一体成形されている、(2)に記載の燃焼装置用消音器。
【0014】
(4) 前記箱体は、底部材と、前記底部材に積層される枠部材と、を有し、
前記仕切り板と前記枠部材とが一体成形されている、(3)に記載の燃焼装置用消音器。
【0015】
(5) 前記箱体は、更に、無機繊維を含む材料からなる蓋部材を有し、
前記底部材、前記枠部材、前記蓋部材がこの順に積層されており、
前記底部材、前記枠部材及び前記蓋部材のいずれか1つに前記ガス流入口が設けられ、前記底部材、前記枠部材及び前記蓋部材のいずれか1つに前記ガス排出口が設けられている、(4)に記載の燃焼装置用消音器。
【0016】
(6) 前記仕切り板は、その厚み方向で異なる密度を有する、(2)~(5)のいずれか1つに記載の燃焼装置用消音器。
【0017】
(7) 前記底部材と、前記仕切り板と一体成形された枠部材とは、互いに異なる密度を有する、(4)又は(5)に記載の燃焼装置用消音器。
【0018】
(8) 前記箱体は、底部材と、前記底部材に積層される第1の枠部材と、前記第1の枠部材に積層される第2の枠部材と、を有し、
前記第1の枠部材及び第2の枠部材は、それぞれ、前記開口部が設けられた第1の仕切り板及び第2の仕切り板と一体成形され、
前記第1の仕切り板の開口部と前記第2の仕切り板の開口部が、積層方向から見た平面視で異なる位置に設けられることにより、蛇行した前記ガス流路が構成されており、
前記底部材、第1の枠部材及び第2の枠部材の少なくとも1つの部材は、他の部材と異なる密度を有する、(4)に記載の燃焼装置用消音器。
【0019】
(9) 前記底部材及び前記第2の枠部材は、前記第1の枠部材よりも高い密度を有する、(8)に記載の燃焼装置用消音器。
【発明の効果】
【0020】
本発明の燃焼装置用消音器によれば、無機繊維を含む材料からなる箱体を有し、ガス流路は密度が異なる少なくとも2領域を有する壁から構成されるため、異なる周波数領域の音を、ガス流路の全壁面で吸収することができる。従って、簡単な構造で、広い周波数領域の音を効果的に吸音することができ、優れた消音効果を得ることができる。
【0021】
更に、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、箱体の一部と仕切り板とが一体成形されており、組み立てるだけで所望のガス流路を構成することができるため、簡単な構造で、優れた消音効果を有する消音器を容易に製造することができる。
【0022】
また、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、底部材と、仕切り板と一体成形された枠部材とを積層するだけでガス流路が構成され、枠部材の数は自由に設計できるので、必要に応じて種々のガス流路長を有する消音器を容易に組み立てることができる。
【0023】
更に、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、仕切り板が厚み方向で異なる密度を有するものであると、密度が異なる少なくとも2領域を有する壁から構成されるガス流路を形成することができるため、広い周波数領域の音に対して優れた消音効果を得ることができる。
【0024】
更にまた、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、箱体が、底部材と、前記底部材に積層される第1の枠部材と、前記第1の枠部材に積層される第2の枠部材と、を有し、底部材及び前記第2の枠部材は、前記第1の枠部材よりも高い密度を有するものであると、高密度の部材が外壁面に近い位置に配置されるため、外部に音が漏れにくくなり、消音効果をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃焼装置用消音器における成形体を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す燃焼装置用消音器における成形体の構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る燃焼装置用消音器における成形体を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す燃焼装置用消音器における成形体の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、無機繊維を含む材料からなる箱体を用いて、箱体の内部に形成されたガス流路が、密度の異なる少なくとも2領域を有する壁から構成されるものにすることにより、簡単な構造であっても消音効果を向上させることができることを見出した。
【0027】
本発明の第1実施形態に係る燃焼装置用消音器について、以下に詳細に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図であり、
図2は、
図1に示す燃焼装置用消音器の成形体の構造を示す斜視図である。
燃焼装置用消音器は、例えば金属製の筐体(図示せず)に消音機能を有する成形体が格納されたものであり、例えば、燃焼装置の側面に形成された燃焼ガスの出口に連通するように取り付けられる。
【0029】
成形体41は、燃焼装置から排出される燃焼ガスが導入されるガス流入口51と、燃焼ガスを外部に排出するガス排出口12と、ガス流入口51とガス排出口12とを連通するガス流路50aと、が設けられた箱体40を有する。
なお、ガス流入口51とガス排出口12とは、箱体40における互いに対向する面に設けられている。
【0030】
以下、
図2を参照して、第1実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体の構造を更に詳細に説明する。
直方体形状の成形体41は、底部材2及び蓋部材9がこの順に積層されたものである。なお、これらの部材は、例えばロックウール等の無機繊維と、熱硬化性樹脂からなるバインダとを有する材料を、所望の形状に形成した金型に吸引ろ過させて乾燥させることにより、それぞれ一体成形されたものである。無機繊維としては、アルミナファイバー、RCF(Refractory Ceramic Fiber)、AES(Alkaline.Earth Silicate)ファイバー、バサルトファイバー、シリカファイバー、ジルコニアファイバー、グラスウール、ロックウールなどから選ばれる少なくとも一つが選択可能であり、また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0031】
底部材2は、矩形の底部2aと、底部2aの四辺から立ち上がる形状の壁部2bとを有する器状であり、壁部2bの一部に切り欠きが設けられてガス排出口12が形成されている。蓋部材9は底部材2と同一の形状で上下を逆に配置したものであり、上底部9aとその四辺に設けられた壁部9bとを有する器状である。また、底部材2と同様に、壁部9bの一部に切り欠きが設けられて、ガス流入口51が形成されている。なお、底部材2の壁部2bは蓋部材9の壁部9bと同一の外寸であり、底部材2に蓋部材9を積層したときに、ガス流入口51及びガス排出口12を除く領域で、両者が確実に重なるように設計されている。
【0032】
なお、本実施形態において、底部材2と蓋部材9とは、互いに異なる密度となるように作製されており、例えば、底部材2の密度は約0.25g/cm3であり、蓋部材9の密度は約0.20g/cm3である。即ち、ガス流路50aを構成する壁のうち、一部の領域は底部材2により構成され、他の一部の領域は蓋部材9により構成されているため、ガス流路50aは密度の異なる2領域を有する壁から構成されるものとなる。
【0033】
そして、上述の通り、底部材2及び蓋部材9がこの順に積層されて成形体41をなし、この成形体41が金属製の筐体(図示せず)に格納されることにより、消音器が構成される。なお、この筐体は、成形体41を格納したときに、成形体41のガス流入口51及びガス排出口12に対応する位置に開口が設けられており、その他の部分については完全に成形体41を覆う形状である。
【0034】
このように構成された消音器においては、ガス流入口51から燃焼ガス8が導入されると、蓋部材9と底部材2との間のガス流路50aを燃焼ガス8が流通し、ガス排出口12から排出される。
【0035】
本実施形態においては、底部材2及び蓋部材9がいずれも、吸音性の高い無機繊維とバインダとを有する材料からなるものであるため、燃焼ガス8がガス流路50aを通過する際に、全壁面において燃焼音が吸収される。従って、金属製の壁を有する消音器と比較して、消音効果を著しく向上させることができる。
また、本実施形態では、底部材2及び蓋部材9が互いに異なる密度となるように作製されており、密度によって吸音しやすい音の周波数が異なる。具体的には、吸音材の密度が低い方が高周波数領域の音を吸収し、密度が高い方が低周波数領域の音を吸収するため、本実施形態では、簡単な構造であっても、広い周波数領域の音を吸音することができ、消音効果を向上させることができる。
【0036】
なお、本実施形態では底部材2の密度を約0.25g/cm3とし、蓋部材9の密度を約0.20g/cm3としたが、互いに異なる密度を有するものであれば、これに限定されない。例えば、一方の部材の密度が0.15~0.35g/cm3であるとき、他方の部材の密度が0.20~0.40g/cm3であることが好ましく、両者の密度の差が0.03g/cm3以上であることが好ましい。
【0037】
また、密度が互いに異なる底部材2及び蓋部材9を作製する方法についても、特に限定されないが、例えば、無機繊維と、熱硬化性樹脂からなるバインダとを有する材料を混合し、所望の形状に形成した金型を用いて、異なる吸引力で吸引ろ過することにより、密度が互いに異なる部材を作製することができる。
【0038】
更に、本実施形態では、底部材2と同一の形状で蓋部材9を作製することができるため、複数の形状の金型を準備する必要がなく、極めて簡単な構造で、優れた消音機能を有する消音器を容易に製造することができる。
また、上記第1実施形態では、底部2aが水平となるように底部材2を配置し、その上に蓋部材9を配置した構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば
図1に示す成形体41を、時計回り又は反時計回りに90°回転させた状態で使用することができる。即ち、不図示の燃焼装置から排出される燃焼ガスの出口が、燃焼装置の側面に形成されている場合だけでなく、上記燃焼ガスの出口が燃焼装置の上方又は下方に形成されている場合であっても、本発明に係る燃焼装置用消音器を取り付けることができる。
【0039】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図であり、
図4は、
図3に示す燃焼装置用消音器の成形体の構造を示す斜視図である。燃焼装置用消音器は、例えば金属製の筐体(図示せず)に消音機能を有する成形体が格納されたものであり、例えば、燃焼装置の側面に形成された燃焼ガスの出口に連通するように取り付けられる。
【0040】
成形体1は、燃焼装置から排出される燃焼ガスが導入されるガス流入口11と、燃焼ガスを外部に排出するガス排出口12と、ガス流入口11とガス排出口12とを連通するガス流路20a、20b、20c、20d及び20eと、が設けられた組立構造の箱体10を有する。
また、箱体10の内部には、開口部13が形成された仕切り板6と、開口部14が形成された仕切り板7とが、所望の間隔を開けて略平行に配置されている。なお、仕切り板6の開口部13は、箱体10におけるガス流入口11側の壁に接近して形成されており、仕切り板7の開口部14は、箱体10におけるガス排出口12側の壁に接近して形成されている。
【0041】
以下、
図4を参照して、第2実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体の構造を更に詳細に説明する。
直方体形状の成形体1は、底部材2、第1の枠部材3、第2の枠部材4及び蓋部材5がこの順に積層されたものである。なお、これらの全ての部材は、例えば上述の無機繊維と、熱硬化性樹脂からなるバインダとを有する材料を、所望の形状に形成した金型に吸引ろ過させて乾燥させることにより、それぞれ一体成形されたものである。
【0042】
底部材2は、矩形の底部2aと底部2aの四辺から立ち上がる形状の壁部2bとを有する器状であり、壁部2bの一部に切り欠きが設けられてガス排出口12が形成されている。第1の枠部材3は、底面となる矩形の仕切り板6と、仕切り板6の四辺から立ち上がる形状の壁部3bとを有する器状である。但し、仕切り板6は、ガス排出口12が形成されている面と対向する面に近接する位置に開口部13が形成されている。なお、第1の枠部材3の底面は、底部材2の壁部2bにおける周縁端面2cと同一の外寸であり、底部材2に第1の枠部材3を積層したときに、両者が確実に重なるように設計されている。
【0043】
第2の枠部材4は、底面となる矩形の仕切り板7と、仕切り板7の四辺から立ち上がる形状の壁部4bとを有する器状である。但し、壁部4bには、ガス排出口12が形成されている面に対向する面の一部が切り欠かれてガス流入口11が形成されている。また、仕切り板7には、ガス流入口11が形成されている面と対向する面に近接する位置に開口部14が形成されている。なお、第2の枠部材4の底面は、第1の枠部材3の壁部3bにおける周縁端面3cと同一の外寸であり、第1の枠部材3に第2の枠部材4を積層したときに、両者が確実に重なるように設計されている。
【0044】
蓋部材5は矩形の板状である。また、蓋部材5は、第2の枠部材4の壁部4bにおける周縁端面4cと同一の外寸であり、第2の枠部材4に蓋部材5を積層したときに、両者が確実に重なるように設計されている。
【0045】
なお、本実施形態において、底部材2、第2の枠部材4及び蓋部材5と、第1の枠部材3とは、互いに異なる密度となるように作製されており、例えば、底部材2、第2の枠部材4及び蓋部材5の密度は約0.25g/cm3であり、第1の枠部材3の密度は約0.20g/cm3である。即ち、ガス流路20a、20b、20c、20d及び20eを構成する壁のうち、ガス流路20a及び20bは蓋部材5及び第2の枠部材4で構成されているため、壁の密度は均一である。また、ガス流路20dは第1の枠部材3のみで構成されているため、壁の密度は均一となっている。
一方、ガス流路20cは、第1の枠部材3の仕切り板6と第2の枠部材4の仕切り板7とに挟まれており、ガス流路20eは底部材2と第1の枠部材3の仕切り板6とに挟まれているため、ガス流路20c及びガス流路20eは密度の異なる2領域を有する壁から構成されるものとなる。
【0046】
そして、上述の通り、底部材2、第1の枠部材3、第2の枠部材4及び蓋部材5が、この順に積層されて成形体1をなし、この成形体1が金属製の筐体(図示せず)に格納されることにより、消音器が構成される。なお、この筐体は、成形体1を格納したときに、成形体1のガス流入口11及びガス排出口12に対応する位置に開口が設けられており、その他の部分については完全に成形体1を覆う形状である。
【0047】
このように構成された消音器においては、ガス流入口11から燃焼ガス8が導入されると、蓋部材5と仕切り板7との間のガス流路20aを燃焼ガス8が流通し、ガス流路20bとなる開口部14を通過することにより、燃焼ガス8は屈曲して進行方向を転換し、仕切り板7と仕切り板6との間のガス流路20cを流通する。その後、燃焼ガス8はガス流路20dとなる開口部13を通過することにより屈曲して、更に進行方向を転換し、仕切り板6と底部材2の底部2aとの間のガス流路20eを流通し、ガス排出口12から排出される。
【0048】
本実施形態においては、仕切り板6の開口部13と、仕切り板7の開口部14とが、積層方向から見た平面視で異なる位置に設けられており、また、ガス流入口11から離れた位置に開口部14が配置され、ガス排出口12から離れた位置に開口部13が配置されているため、第1実施形態と比較して、蛇行した長いガス流路が構成される。また、全ての部材が無機繊維を含む材料からなるため、燃焼ガス8がガス流路20a~20eを通過する際に、全壁面において燃焼音が吸収され、十分な消音効果を得ることができる。
また、成形体1は、底部材2、第1の枠部材3、第2の枠部材4及び蓋部材5の4つの部材からなり、いずれも簡単な構造であって、重ね合わせて(積層して)筐体に格納するだけで、組み立てることができる。従って、組立の工程数が減少し、製造工程を著しく簡素化することができる。
【0049】
更に、本実施例においては、第1の枠部材3が他の部材(底部材2、第2の枠部材4及び蓋部材5)と異なる密度となるように作製されているため、ガス流路20c及びガス流路20eにおいて、広い周波数領域の音を吸音することができ、消音効果を向上させることができる。
【0050】
本実施形態では第1の枠部材3のみを他の部材と異なる密度としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1の枠部材3及び蓋部材5の密度を、底部材2及び第2の枠部材4の密度よりも低くすることにより、ガス流路20a、20c及び20eが異なる密度を有する壁から構成されるものとなり、消音効果をより一層向上させることができる。また、全ての部材の密度を互いに異ならせると、さらに一層広い周波数領域の音を効果的に吸音することができる。
なお、吸音材の密度が低い方が吸音効果は高いが、密度が低い吸音材は音を通過させやすいため、底部材2及び第2の枠部材4の密度を、第1の枠部材3の密度よりも高く設計することにより、外部に音が漏れにくくなり、消音効果を向上させることができる。
【0051】
また、第1実施形態と同様に、密度が低い方の部材を、例えば、0.15~0.35g/cm3とすることが好ましく、このとき、密度が高い方の部材を、例えば、0.20~0.40g/cm3とすることが好ましく、両者の密度の差が0.03g/cm3以上であることが好ましい。
【0052】
上記成形体1を構成する各部材は、第1実施形態と同様にして、例えば、上述の無機繊維と、熱硬化性樹脂からなるバインダとを有する材料を混合し、所望の形状に形成した金型を用いて、異なる吸引力で吸引ろ過することにより、密度が互いに異なる部材を作製することができる。
また、1つの部材を作製する際に、例えば、前半は強い吸引力で吸引し、後半は弱い吸引力で吸引することにより、厚み方向で密度が異なる部材を作製することもできる。この方法を利用すると、例えば、底部材2におけるガス流路20e側、仕切り板6におけるガス流路20c側、及び仕切り板7におけるガス流路20a側を低密度とし、底部材2における外壁面側、仕切り板6におけるガス流路20e側、及び仕切り板7におけるガス流路20c側を高密度に設計することができる。従って、ガス流路20c及びガス流路20eは異なる密度を有する壁から構成されたものとなり、広い周波数領域の音を効果的に吸音することができる。
【0053】
なお、第1実施形態では、枠部材及び仕切り板がない消音器を示し、第2実施形態では、2つの枠部材(枠部材3及び枠部材4)を使用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、枠部材は1つであっても3以上であっても、本発明の消音器を構成することができる。
例えば、1つの枠部材で構成する場合には、
図3に示す底部材2、第2の枠部材4及び蓋部材5を使用し、底部材2に第2の枠部材4を積層する際に、ガス流入口11がガス排出口12と同一の方向となるように配置する。これにより、ガス流入口11から導入された燃焼ガスは、蓋部材5と仕切り板7との間のガス流路を流通し、開口部14を通過することにより屈曲して進行方向を転換した後、仕切り板7と底部材2の底部2aとの間のガス流路を流通して、ガス排出口12から排出される。
この場合には、底部材2及び蓋部材5と、1つの枠部材とで、異なる密度を有するものとなるように設計するか、又は、枠部材における少なくとも仕切り板の部分が厚み方向で異なる密度を有するものとなるように設計すればよい。
【0054】
また、3つの枠部材で構成する場合には、
図2に示す底部材2、第1の枠部材3、第1の枠部材3と同一の形状の枠部材(図示せず)、第2の枠部材4及び蓋部材5を使用し、ガス流入口11と、隣り合う枠部材の開口部と、ガス排出口12とが、積層方向から見た平面視で互い違いになるように配置する。これにより、より長い蛇行したガス流路が構成され、消音効果をより一層向上させることができる。
更に同様にして、第1の枠部材3と同一の形状の枠部材を増加させることにより、ガス流路を簡単に延長することができる。
このように、複数の部材が積層された成形体であれば、高密度の部材と低密度の部材とが交互に積層されるように設計されていると、密度の異なる少なくとも2領域を有する壁から構成されるガス流路を形成することができ、消音効果を向上させることができる。また、仕切り板を有するものである場合は、少なくとも仕切り板が厚み方向で異なる密度となるように設計されていると、同様に本発明の効果を得ることができる。
【0055】
なお、3つ以上の枠部材で構成する場合に、上述の通り、第1の枠部材3と同一の形状の複数の枠部材を使用することにより、ガス流路を延長することができるため、他の形状の枠部材を製造するための金型を準備する必要がない。従って、必要に応じて大きさが異なる筐体を準備するだけで、性能が異なる種々の大きさの消音器を容易に製造することができる。
【0056】
また、第2実施形態では、底部材2、第1の枠部材3、第2の枠部材4及び蓋部材5の4種類の形状の金型を用いて、それぞれの部材を作製したが、例えば、ガス流入口11、開口部及びガス排出口12が形成されていない器状部材を作製し、ガス流入口、開口部及びガス排出口等を必要に応じた箇所で切除することにより、底部材及び枠部材を製造することができる。これにより、極めて少ない金型で消音器を製造することができる。
【0057】
更に、上記第2実施形態では、最上段に板状の蓋部材5を積層したが、本発明は必ずしもこの蓋部材5を積層する必要はない。例えば、成形体1は金属製の筐体に格納されるが、上部が解放した金属製の容器に底部材及び枠部材を格納し、蓋部材5を積層せずに金属製の蓋で閉塞することにより、上記第2実施形態と同様の機能を得ることができる。
【0058】
また、第2実施形態においても、底部が水平となるように底部材を配置し、その上に、仕切り板が水平となるように枠部材を積層した構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、
図3に示す成形体1を、時計回り又は反時計回りに90°回転させた状態で使用することができ、燃焼ガスの出口が燃焼装置の上方又は下方に形成されている場合であっても、本発明に係る燃焼装置用消音器を取り付けることができる。
【符号の説明】
【0059】
1,41 成形体
2 底部材
3,4 枠部材
5,9 蓋部材
6,7 仕切り板
8 燃焼ガス
10,40 箱体
11,51 ガス流入口
12 ガス排出口
13,14 開口部
20a,20b,20c,20d,20e,50a ガス流路