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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】建材および建材製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20231219BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20231219BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231219BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20231219BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231219BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
E04F13/08 F
E04F13/02 B
B05D7/00 K
B05D1/36 Z
B05D7/24 301E
B05D5/06 104C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020061941
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161655
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】乗田 広規
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105508(JP,A)
【文献】特開2010-005836(JP,A)
【文献】特開2018-162571(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0162014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
E04F 13/02
B05D 7/00
B05D 1/36
B05D 7/24
B05D 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
意匠面を有する基材と、
第1の膜形成材および第1粒体を含み且つ前記基材の前記意匠面側に位置し、前記第1の膜形成材が前記第1粒体を被覆している箇所にて前記基材とは反対側に突き出る第1凸面を有する第1塗膜と、
前記第1塗膜における前記基材とは反対側に位置し且つ前記第1凸面に沿った曲面を有するドット印刷膜と、
前記第1塗膜における前記基材とは反対側に位置し且つ透明膜形成材および第2粒体を含むクリヤー塗膜と、を備え、
前記クリヤー塗膜は、
前記第1塗膜の前記第1凸面に沿った第2凸面と、
前記透明膜形成材が前記第2粒体を被覆している箇所にて前記基材とは反対側に突き出る第3凸面と、を有し、
前記第2粒体は前記基材の広がり方向において前記第1凸面と位置が異なる建材。
【請求項2】
前記第1粒体は前記第2粒体よりも小さい、請求項1に記載の建材。
【請求項3】
前記第2粒体は白色である、請求項1または2に記載の建材。
【請求項4】
前記第1塗膜と前記クリヤー塗膜との間に位置し、且つ前記第1塗膜の前記第1凸面に沿った第4凸面を有する、第2塗膜を更に備える、請求項1から3に記載の建材。
【請求項5】
前記第2塗膜は、第2の膜形成材および第3粒体を含み、前記第2の膜形成材が前記第3粒体を被覆している箇所にて前記基材とは反対側に突き出る第5凸面を有し、
前記クリヤー塗膜は、前記第2塗膜の前記第5凸面に沿った第6凸面を有し、
前記第2粒体は、前記基材の前記広がり方向において前記第5凸面と位置が異なり、
前記第2塗膜における前記基材とは反対側に位置し、且つ前記第5凸面に沿った曲面を有する、ドット印刷膜を更に備える、請求項4に記載の建材。
【請求項6】
前記ドット印刷膜は、前記クリヤー塗膜における前記基材とは反対側に位置する、請求項1から5のいずれか一つに記載の建材。
【請求項7】
前記ドット印刷膜は、前記第1塗膜と前記クリヤー塗膜との間に位置する、請求項1から3に記載の建材。
【請求項8】
前記ドット印刷膜は、前記第2塗膜と前記クリヤー塗膜との間に位置する、請求項4または5に記載の建材。
【請求項9】
意匠面を有する基材の前記意匠面側に、第1の膜形成材および第1粒体を含む第1塗料を塗布して、前記第1の膜形成材が前記第1粒体を被覆している箇所にて前記基材とは反対側に突き出る第1凸面を有する第1塗膜を形成する第1工程と、
前記第1塗膜における前記基材とは反対側に、前記第1凸面に沿った曲面を有するドット印刷膜を形成する第2工程と、
前記第1塗膜における前記基材とは反対側に、透明膜形成材および前記基材の広がり方向において前記第1凸面と異なる位置に配する第2粒体を含む塗料を塗布して、前記第1凸面に沿った第2凸面と、前記第2粒体を前記透明膜形成材が被覆している箇所にて前記基材とは反対側に突き出る第3凸面と、を有するクリヤー塗膜を形成する第3工程と、を含む建材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠面を有する建材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁や内壁を構成するための建材の基材として、例えば、窯業系サイディングボードやセラミックボード等の無機質板、パーティクルボード等の繊維板、および樹脂板が用いられている。そして、基材の意匠面において、微細凹凸を伴う例えば砂岩調の質感を表現するために、微小なカラービーズやカラーサンドなど粒状物をクリヤー塗料に配合して得られた塗料(粒状物含有クリヤー塗料)が基材表面にスプレー塗布されることがある。このようなスプレー塗装は、例えば、塗料噴霧用のノズルを備える噴霧装置を使用して実施される。建材のスプレー塗装に関する技術については、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-188343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、粒状物含有クリヤー塗料のスプレー塗装においては、従来、噴霧装置のノズルに目詰まりが生じやすい。噴霧装置のノズルに目詰まりが生じやすいほど、目詰まりの予防および解消のために必要なノズル洗浄作業が多くなり、建材の生産性は低下する。
【0005】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであり、微細凹凸を伴う質感が表現された建材として高い生産性で製造するのに適した建材、およびその製造方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によると建材が提供される。この建材は、意匠面を有する基材と、第1の膜形成材および第1粒体を含み且つ基材の意匠面側に位置する第1塗膜と、第1塗膜における基材とは反対側に位置するドット印刷膜と、第1塗膜における基材とは反対側に位置する第2粒体とを備える。第1塗膜は、第1の膜形成材が第1粒体を被覆している箇所にて基材とは反対側に突き出る第1凸面を有する。ドット印刷膜は、第1凸面に沿った曲面を有する。第2粒体は、基材の広がり方向において第1凸面と位置が異なる。
【0007】
このような構成を備える建材は、曲面を有するドット印刷膜のサイズおよび形状と、曲面を有するドット印刷膜の呈する色と、第2粒体のサイズおよび形状と、第2粒体の素材色との複合的な結合によって、微細凹凸を伴う砂岩調などの質感を表現するのに適する。ドット印刷膜が第1塗膜の第1凸面に沿った曲面を有し、且つ、基材広がり方向において第2粒体が第1凸面と位置が異なるという上述の構成は、所定の質感の表現にあたり、粒体素材色での表現よりも印刷色での表現に適した色を曲面付ドット印刷膜により表現しつつ、印刷色での表現よりも粒体素材色での表現に適した色を第2粒体により表現するのに適する。
【0008】
また、本建材では、上述のように、第1塗膜において第1の膜形成材が第1粒体を被覆している箇所に第1凸面(基材とは反対側に突き出る)が形成され、且つドット印刷膜が
第1塗膜における基材とは反対側に位置して第1塗膜の第1凸面に沿った曲面を有する。ドット印刷膜は、例えば、第1粒体表面を被覆する第1の膜形成材上に印刷されたものである。
【0009】
このような構成は、用いる第1粒体の小径化を図るのに適し、従って、本建材の製造過程において第1粒体含有塗料のスプレー塗装によって第1塗膜を形成する場合に、当該スプレー塗装に使用する塗料噴霧用ノズルの目詰まりを抑制するのに適する。このような目詰まりの抑制は、使用ノズルの洗浄作業を少なくして建材の生産性を高めるのに役立つ。
【0010】
以上のように、本発明の第1の側面に係る建材は、微細凹凸を伴う砂岩調などの質感を表現するのに適した建材として、高い生産性で製造するのに適する。
本建材は、好ましくは、第1塗膜における基材とは反対側に位置し、透明膜形成材および上述の第2粒体を含み、第1塗膜の第1凸面に沿った第2凸面と、透明膜形成材が第2粒体を被覆している箇所にて基材とは反対側に突き出る第3凸面とを有する、クリヤー塗膜を、更に備える。
このような構成は、ドット印刷膜がクリヤー塗膜における基材とは反対側に位置する場合には、当該ドット印刷膜の意匠面における定着を図るのに適し、ドット印刷膜が第1塗膜とクリヤー塗膜との間に位置する場合には、当該ドット印刷膜の保護を図るのに適する。
【0011】
好ましくは、第1粒体は第2粒体よりも小さい。このような構成は、用いる第1粒体の小径化を図るのに適し、従って、第1粒体含有塗料のスプレー塗装によって第1塗膜を形成する場合において、使用ノズルの目詰まりを抑制するのに適する。
【0012】
好ましくは、第2粒体は白色である。
【0013】
このような構成は、所定の質感において白色を簡易に表現するうえで好ましい。
【0014】
具体的には、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの4色が用いられることの多い例えばインクジェット印刷によってドット印刷膜を形成する場合に、白色印刷用の装置を別途用いずに、白色第2粒体によって所定の質感における白色を簡易に表現できるので好ましい。
【0015】
本建材は、第1塗膜とクリヤー塗膜との間に位置し且つ第1塗膜の第1凸面に沿った第4凸面を有する第2塗膜を、更に備えてもよい。
【0016】
このような構成は、用いる第1粒体の小径化を図るのに適し、従って、第1粒体含有塗料のスプレー塗装によって第1塗膜を形成する場合に、使用ノズルの目詰まりを抑制するのに適する。ドット印刷膜が第2塗膜とクリヤー塗膜との間に位置する場合、そのようなドット印刷膜は、第2塗膜を介して第1塗膜の第1凸面に沿い、同一の第1凸面に直接接しつつ当該第1凸面に沿う場合よりも、曲率半径が大きな曲面を有しうる。ドット印刷膜がクリヤー塗膜における基材とは反対側に位置する場合、そのようなドット印刷膜は、第2塗膜に加えてクリヤー塗膜をも介して第1塗膜の第1凸面に沿い、曲率半径が更に大きな曲面を有しうる。
【0017】
本建材が第2塗膜を備える場合、好ましくは、当該第2塗膜は、第2の膜形成材および第3粒体を含み、且つ第2の膜形成材が第3粒体を被覆している箇所にて基材とは反対側に突き出る第5凸面を有する。これとともに、クリヤー塗膜は、第2塗膜の第5凸面に沿った第6凸面を有する。これとともに、第2粒体は、基材の広がり方向において第5凸面と位置が異なる。これとともに、本建材は、第2塗膜における基材とは反対側に位置し且つ第5凸面に沿った曲面を有するドット印刷膜を、更に備える。
【0018】
このような構成は、第1凸面に沿った曲面を有するドット印刷膜のサイズおよび形状と、第1凸面に沿った曲面を有するドット印刷膜の呈する色と、第2粒体のサイズおよび形状と、第2粒体の素材色と、第5凸面に沿った曲面を有するドット印刷膜のサイズおよび形状と、第5凸面に沿った曲面を有するドット印刷膜の呈する色との複合的な結合により、微細凹凸を伴う砂岩調などの質感を表現するのに適する。
【0019】
本建材が上述のクリヤー塗膜を備える場合、本建材の好ましい一の態様では、ドット印刷膜は、クリヤー塗膜における基材とは反対側に位置する。このような構成は、ドット印刷膜の意匠面における定着を図るのに適する。
【0020】
本建材が上述のクリヤー塗膜を備える場合、本建材の好ましい他の態様では、ドット印刷膜は、第1塗膜とクリヤー塗膜との間に位置する。このような構成は、ドット印刷膜の保護を図るのに適する。
【0021】
本建材が上述のクリヤー塗膜に加えて上述の第2塗膜を備える場合、本建材の好ましい一の態様では、ドット印刷膜は、第2塗膜とクリヤー塗膜との間に位置する。このような構成は、ドット印刷膜の保護を図るのに適する。
【0022】
本発明の第2の側面によると建材製造方法が提供される。この建材製造方法は、次の第1工程、第2工程、および第3工程を含む。
【0023】
第1工程では、意匠面を有する基材の意匠面側に、第1の膜形成材および第1粒体を含む第1塗料を塗布して、第1の膜形成材が第1粒体を被覆している箇所にて基材とは反対側に突き出る第1凸面を有する第1塗膜を形成する。
【0024】
第2工程では、第1塗膜における基材とは反対側に、第1凸面に沿った曲面を有するドット印刷膜を形成する。
【0025】
第3工程では、第1塗膜における基材とは反対側に、透明膜形成材および基材の広がり方向において第1凸面と異なる位置に配する第2粒体を含む塗料を塗布して、第1凸面に沿った第2凸面と、第2粒体を透明膜形成材が被覆している箇所にて基材とは反対側に突き出る第3凸面を有するクリヤー塗膜を形成する。
【0026】
本建材製造方法の好ましい一態様では、上述の第2工程より後に上述の第3工程を実施する。本建材製造方法の好ましい他の態様では、上述の第2工程より前に上述の第3工程を実施する。
【0027】
このような建材製造方法によると、本発明の第1の側面に係る上述の建材を製造することができる。したがって、本建材製造方法によると、製造される建材において、本発明の第1の側面に関して上述したのと同様の技術的効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施形態に係る建材の部分断面図である。
図2図1に示す建材の製造方法を表す。
図3】本発明の第2の実施形態に係る建材の部分断面図である。
図4】本発明の第3の実施形態に係る建材の部分断面図である。
図5図4に示す建材の製造方法を表す。
図6】本発明の第4の実施形態に係る建材の部分断面図である。
図7】本発明の第5の実施形態に係る建材の部分断面図である。
図8図7に示す建材の製造方法を表す。
図9】本発明の第6の実施形態に係る建材の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る建材X1の部分断面図である。建材X1は、基材Sと、塗膜10と、塗膜20と、塗膜30とを含む積層構造を有し、且つ当該積層構造中に複数のドット印刷膜40を含む。
【0030】
基材Sは、意匠が施される意匠面Saを有する。基材Sとしては、例えば、木繊維補強セメント板や、繊維補強セメント板、繊維補強セメント・ケイ酸カルシウム板等の窯業系サイディングボード、スラグ石膏ボード、金属系サイディングボード、パーティクルボード等の繊維板、および樹脂板が挙げられる。
【0031】
塗膜10は、基材Sの意匠面Sa上に位置する下塗り塗膜であり、例えば、意匠面Saの素地を目止めして、意匠面Saに対して積層形成される塗膜など各種要素の付着固定性を確保する機能を有する。
【0032】
塗膜10は、膜形成材11を含む。膜形成材11としては、例えば樹脂が挙げられる。当該樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、およびアクリルシリコーン樹脂が挙げられ、好ましくはアクリル樹脂が用いられる。このような塗膜10は、例えば、膜形成材11として樹脂を含有する組成物(塗料)の硬化物である。塗膜10の厚さは、例えば5~30μmであり、好ましくは10~20μmである。
【0033】
塗膜20は、塗膜10と塗膜30との間に位置する中塗り塗膜である。本実施形態における塗膜20は、本発明における第1塗膜に相当し、基材Sの意匠面Sa側に位置し且つ膜形成材21(第1の膜形成材)および粒体22(第1粒体)を含む。この塗膜20は、膜形成材21が粒体22を被覆している箇所にて基材Sとは反対側に突き出る凸面23(第1凸面)を有する。塗膜20が凸面23を有する箇所以外における当該塗膜20の厚さT1は、例えば10~50μmであり、好ましくは20~30μmである。
【0034】
膜形成材21としては、例えば樹脂が挙げられる。当該樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、およびアクリルシリコーン樹脂が挙げられ、好ましくはアクリル樹脂が用いられる。
【0035】
粒体22の構成材料としては、例えば、樹脂、ガラス、砂、および金属が挙げられる。粒体22の構成材料たる樹脂としては、例えば、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、およびポリスチレン樹脂が挙げられ、好ましくはポリアクリロニトリル樹脂が用いられる。
【0036】
粒体22の形状としては、例えば、球形状および楕円体形状が挙げられる。粒体22は、無色、有色のいずれでも良い。粒体22の粒子径は、塗膜20の上述の厚さT1より大きい限りにおいて、例えば10~100μmであり、好ましくは20~50μmである。塗膜20がこのような粒体22を含むことによって上述の凸面23が形成されている。
【0037】
また、塗膜20における粒体22の配置密度(即ち、基材Sの広がり方向における粒体22の配置密度)は、例えば10~100個/mmであり、好ましくは30~50個/mmである。
【0038】
このような塗膜20は、例えば、膜形成材21としての樹脂と粒体22とを含有する組成物(塗料)の硬化物である。塗膜20は、顔料や染料など着色材を含有して着色されていてもよい。塗膜20が着色される場合、塗膜20形成用の組成物には、着色材が配合さ
れる。
【0039】
塗膜30は、透明膜形成材31および粒体32(第2粒体)を含み、且つ、塗膜20における基材Sとは反対側に位置する(従って、塗膜30中の粒体32も、塗膜20における基材Sとは反対側に位置する)。この塗膜30は、後述のドット印刷膜40を介して塗膜20の凸面23に沿った凸面33(第2凸面)を有し、且つ、透明膜形成材31が粒体32を被覆している箇所にて基材Sとは反対側に突き出る凸面34(第3凸面)を有する。このような塗膜30は、本発明におけるクリヤー塗膜に相当する。塗膜30が凸面33,34を有する箇所以外における当該塗膜30の厚さT2は、例えば10~50μmであり、好ましくは20~30μmである。
【0040】
透明膜形成材31としては、例えば透明樹脂が挙げられる。当該透明樹脂としては、例えば、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、およびウレタン樹脂が挙げられ、好ましくはアクリルシリコーン樹脂が用いられる。
【0041】
粒体32は、基材Sの広がり方向において塗膜20の凸面23と位置が異なる。基材Sの広がり方向において要素(凸面や粒体など)どうしの位置が異なるとは、基材Sの広がり方向における位置が完全には同一でないことを意味し、基材Sの広がり方向に位置ずれしていることを含むものとする。粒体32の構成材料としては、例えば、粒体22の構成材料として上記したのと同様の材料が挙げられ、好ましくはポリアクリロニトリル樹脂が用いられる。粒体32の形状としては、例えば、球形状および楕円体形状が挙げられる。また、粒体32は有色であり、好ましくは白色である。
【0042】
粒体32の粒子径は、塗膜30の上述の厚さT2より大きい限りにおいて、例えば50~300μmであり、好ましくは80~200μmである。また、粒体32は、好ましくは、上述の粒体22より大きい。すなわち、粒体22は、好ましくは粒体32より小さい。
【0043】
また、塗膜30における粒体32の配置密度(即ち、基材Sの広がり方向における粒体32の配置密度)は、例えば2~50個/mmであり、好ましくは3~30個/mmである。
【0044】
このような塗膜30は、例えば、透明膜形成材31としての樹脂と粒体32とを含有する組成物(塗料)の硬化物である。
【0045】
ドット印刷膜40は、印刷方法によって形成された点状の印刷膜であり、塗膜20における基材Sとは反対側に位置し、且つ塗膜20の凸面23に沿った曲面を有する。各ドット印刷膜40は、その全体が凸面23に沿った曲面を有してもよいし、一部が凸面23に沿った曲面を有してもよい(各ドット印刷膜40の全体が凸面23に沿った曲面を有する場合を例示的に図示する)。本実施形態では、ドット印刷膜40は、第1塗膜としての塗膜20とクリヤー塗膜である塗膜30との間に位置する。このようなドット印刷膜40は、好ましくは、フルカラーインクジェット印刷により形成された印刷膜であり、それぞれが所定の色を呈する。
【0046】
ドット印刷膜40のドットサイズは、例えば1~200μmであり、好ましくは20~50μmである。また、基材Sの広がり方向におけるドット印刷膜40の配置密度(点描密度)は、例えば10~100個/mmであり、好ましくは30~50個/mmである。このようなドット印刷膜40については、一つのドットで形成してもよいし、複数のドットで形成してもよい。建材X1の後述のような製造過程において、ドット印刷膜40をサイズの小さい複数のドットで形成する場合、ドット印刷膜40形成用のカラーインク
滴が凸面23上に着弾した後、凸面23上での当該インク滴の移動が抑えられ、より曲面に沿ったドット印刷膜40を形成しやすく、好ましい。また、ドット印刷膜40をサイズの小さい複数のドットで形成する場合、各ドットが呈する色の組合せにより、様々な色調を表現しやすく、好ましい。
【0047】
建材X1は、クリヤー塗膜である塗膜30における基材Sとは反対側に、更なるクリヤー塗膜(図示せず)を備えてもよい。このような構成は、建材X1の意匠面の保護に役立つ。このような更なるクリヤー塗膜を備えてもよいことは、後記の他の実施形態に係る建材についても同様である。
【0048】
図2は、図1に示す建材X1の製造方法を表す。本製造方法は、建材製造ラインにおいて基材Sを搬送しつつ建材を製造する方法であり、以下のような下塗り工程と、中塗り工程と、印刷工程と、クリヤー塗膜形成工程とを含む。建材製造ラインには、形成すべき塗膜ごとにスプレー塗装装置が設置され、且つ、ドット印刷膜形成用の印刷装置が設置されている。各スプレー塗装装置は、塗料噴霧用の複数のノズルを備える。印刷装置は、好ましくはフルカラーインクジェット印刷装置である。
【0049】
まず、下塗り工程では、図2(a)に示すように、基材Sの意匠面Sa上に塗膜10を形成する。本工程では、例えば、膜形成材11としての樹脂と溶剤とを含有する塗料を意匠面Sa上にスプレー塗布して、所定厚さの塗膜10を形成する。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、および酢酸ブチルが挙げられる(後記の各塗料の溶剤についても同様である)。塗膜10は乾燥される。
【0050】
次に、中塗り工程では、図2(b)に示すように、基材Sの意匠面Sa側にある塗膜10上に、第1塗膜としての塗膜20を形成する。本工程では、例えば、膜形成材21(第1の膜形成材)としての樹脂と粒体22(第1粒体)と溶剤とを含有する塗料(第1塗料)を塗膜10上にスプレー塗布して、所定厚さの塗膜20を形成する。塗膜20は乾燥される。
【0051】
このような粒体22含有塗料のスプレー塗装によって形成される塗膜20は、上述のように、膜形成材21が粒体22を被覆している箇所にて基材Sとは反対側に突き出る凸面23を有する。第1塗膜としての塗膜20を形成する本工程は、本発明における第1工程に相当する。
【0052】
本工程で使用される塗料における粒体22の含有割合は、例えば5~180体積%であり、好ましくは10~80体積%である。このような構成は、粒体22の上述の配置密度を実現するのに適する。また、形成される塗膜20の上述の厚さT1は、例えば、本工程で使用される塗料の粘度調整によって調整可能である。
【0053】
次に、印刷工程では、図2(c)に示すように、塗膜20上に複数のドット印刷膜40を形成する。本工程では、具体的には、上記印刷装置を使用して、塗膜20(第1塗膜)における基材Sとは反対側の表面の各所に、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの色相のカラーインク滴を着弾させる。これにより、塗膜20の凸面23(第1凸面)に沿った曲面を有するドット印刷膜40を形成する。ドット印刷膜40は、必要に応じて乾燥される。ドット印刷膜40を形成する本工程は、本発明における第2工程に相当する。本工程では、一つのドットでドット印刷膜40を形成してもよいし、複数のドットでドット印刷膜40を形成してもよい。ドット印刷膜40をサイズの小さい複数のドットで形成する場合、上述のカラーインク滴が凸面23上に着弾した後、凸面23上での当該インク滴の移動が抑えられ、より曲面に沿ったドット印刷膜40を形成しやすく、好ましい。また、ドット印刷膜40をサイズの小さい複数のドットで形成する場合、各ドットが呈する
色の組合せにより、様々な色調を表現しやすく、好ましい。
【0054】
本工程で形成されるドット印刷膜40のドットサイズは、上述のように、例えば1~200μmであり、好ましくは20~50μmである。基材Sの広がり方向におけるドット印刷膜40の配置密度(点描密度)は、上述のように、例えば10~100個/mmであり、好ましくは30~50個/mmである。これら構成は、上述の配置密度で粒体22を含む塗膜20の凸面23に沿った曲面を有するドット印刷膜40を形成するうえで、好適である。
【0055】
次に、クリヤー塗膜形成工程では、図2(d)に示すように、基材Sの意匠面Sa側にある塗膜20上およびドット印刷膜40上に、クリヤー塗膜である塗膜30を形成する。本工程では、例えば、透明膜形成材31としての樹脂と粒体32(第2粒体)と溶剤とを含有する塗料を塗膜20上およびドット印刷膜40上にスプレー塗布して、所定厚さの塗膜30を形成する。塗膜30は乾燥される。形成される塗膜30は、上述のように、透明膜形成材31が粒体32を被覆している箇所にて基材Sとは反対側に突き出る凸面34を有する。
【0056】
本実施形態では、このような塗膜30の形成により、塗膜20における基材Sとは反対側に、基材Sの広がり方向において塗膜20の凸面23と異なる位置に粒体32が配される。このような本工程は、本発明における第3工程に相当する。
【0057】
本工程で使用される塗料における粒体32の含有割合は、例えば5~150体積%であり、好ましくは10~80体積%である。このような構成は、粒体32の上述の配置密度を実現するのに適する。また、形成される塗膜30の上述の厚さT2は、例えば、本工程で使用される塗料の粘度調整によって調整可能である。
【0058】
以上のようにして、建材X1を製造することができる。
【0059】
建材X1は、上述のように、意匠面Saを有する基材Sと、膜形成材21(第1の膜形成材)および粒体22(第1粒体)を含み且つ基材Sの意匠面Sa側に位置する塗膜20と、塗膜20における基材Sとは反対側に位置するドット印刷膜40と、塗膜20における基材Sとは反対側に位置する粒体32(第2粒体)とを備える。塗膜20は、上述のように、膜形成材21が粒体22を被覆している箇所にて基材Sとは反対側に突き出る凸面23(第1凸面)を有する。ドット印刷膜40は、上述のように、塗膜20の凸面23に沿った曲面を有する。粒体32は、上述のように、基材Sの広がり方向において塗膜20の凸面23と位置が異なる。
【0060】
このような構成を備える建材X1は、曲面を有するドット印刷膜40のサイズおよび形状と、曲面を有するドット印刷膜40の呈する色と、粒体32のサイズおよび形状と、粒体32の素材色との複合的な結合によって、微細凹凸を伴う砂岩調などの質感を表現するのに適する。ドット印刷膜40が塗膜20の凸面23に沿った曲面を有し、且つ、基材Sの広がり方向において粒体32が塗膜20の凸面23と位置が異なるという構成は、所定の質感の表現にあたり、粒体素材色での表現よりも印刷色での表現に適した色を曲面付のドット印刷膜40により表現しつつ、印刷色での表現よりも粒体素材色での表現に適した色を粒体32により表現するのに適する。
【0061】
また、建材X1では、上述のように、塗膜20において膜形成材21が粒体22を被覆している箇所に凸面23(基材Sとは反対側に突き出る)が形成され、且つ、塗膜20における基材Sとは反対側にて、ドット印刷膜40が塗膜20の凸面23に沿った曲面を有する。
【0062】
このような構成は、用いる粒体22の小径化を図るのに適し、従って、建材X1の製造過程において、図2(b)を参照して上述したように粒体22含有塗料のスプレー塗装によって塗膜20を形成する場合に、当該スプレー塗装に使用する塗料噴霧用ノズルの目詰まりを抑制するのに適する。このような目詰まりの抑制は、使用ノズルの洗浄作業を少なくして建材X1の生産性を高めるのに役立つ。
【0063】
以上のように、建材X1は、微細凹凸を伴う砂岩調などの質感を表現するのに適した建材として、高い生産性で製造するのに適する。
【0064】
粒体22は、上述のように、好ましくは粒体32よりも小さい。このような構成は、用いる粒体22の小径化を図るのに適し、従って、図2(b)を参照して上述したように粒体22含有塗料のスプレー塗装によって塗膜20を形成する場合において、使用ノズルの目詰まりを抑制するのに適する。粒体22が粒体32よりも小さいことによる このよう
な技術的効果は、後記の他の実施形態に係る建材においても享受することができる。
【0065】
粒体32は有色であり、上述のように、好ましくは白色である。このような構成は、所定の質感において白色を簡易に表現するうえで好ましい。具体的には、フルカラーインクジェット印刷によってドット印刷膜40を形成する場合に、白色印刷用の装置を別途用いずに、白色粒体32によって所定の質感における白色を簡易に表現できるので好ましい。粒体32が白色であることによる このような技術的効果は、後記の他の実施形態に係る建材におい
ても享受することができる。
【0066】
建材X1におけるドット印刷膜40は、上述のように、塗膜20とクリヤー塗膜である塗膜30との間に位置する。このような構成は、ドット印刷膜40の保護を図るのに適する。
【0067】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る建材X2の部分断面図である。建材X2は、基材Sと、塗膜10と、塗膜20と、塗膜30とを含む積層構造を有し、且つ複数のドット印刷膜40を含む。建材X2は、ドット印刷膜40が塗膜20,30間に位置する構成に
代えて、塗膜30における基材Sとは反対側にドット印刷膜40が位置する構成を備える点において、上述の建材X1と異なる。この点を除き、建材X2は建材X1と同様の構成を有する。
【0068】
このような建材X2は、図2(c)を参照して上述した印刷工程より後に、図2(d)を参照して上述したクリヤー塗膜形成工程を実施するのに代えて、前記クリヤー塗膜形成工程より後に前記印刷工程を実施すること以外は、建材X1の製造方法と同様の製造方法によって、製造することができる。クリヤー塗膜である塗膜30上へのドット印刷膜40の形成は、当該ドット印刷膜40の意匠面における定着を図るのに適する。
【0069】
建材X2は、建材X1に関して上述したのと同様の理由から、微細凹凸を伴う砂岩調などの質感を表現するのに適した建材として、高い生産性で製造するのに適する。
【0070】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る建材X3の部分断面図である。建材X3は、基材Sと、塗膜10Aと、塗膜20Aと、塗膜30とを含む積層構造を有し、且つ当該積層構造中にドット印刷膜40を含む。建材X3は、塗膜10,20に代えて塗膜10A,20Aを備える点において、上述の建材X1と異なる。この点を除き、建材X3は建材X1と同様の構成を有する。
【0071】
塗膜10Aは、上述の塗膜10と同様に下塗り塗膜であり、例えば、意匠面Saの素地
を目止めして、意匠面Saに対して積層形成される塗膜など各種要素の付着固定性を確保する機能を有する。
【0072】
塗膜10Aは、本発明における第1塗膜に相当し、基材Sの意匠面Sa側に位置し且つ膜形成材11(第1の膜形成材)および粒体12(第1粒体)を含む。この塗膜10Aは、膜形成材11が粒体12を被覆している箇所にて基材Sとは反対側に突き出る凸面13(第1凸面)を有する。塗膜10Aが凸面13を有する箇所以外における当該塗膜10Aの厚さT3は、例えば5~30μmであり、好ましくは10~20μmである。
【0073】
塗膜10Aは、構成成分に関し、膜形成材11に加えて粒体12を含む点において、上述の塗膜10と異なる。このような塗膜10Aは、例えば、膜形成材11としての樹脂と粒体12とを含有する組成物(塗料)の硬化物である。
【0074】
粒体12の構成材料としては、例えば、樹脂、ガラス、および金属が挙げられる。粒体12の構成材料たる樹脂としては、例えば、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、およびポリスチレン樹脂が挙げられ、好ましくはポリアクリロニトリル樹脂が用いられる。
【0075】
粒体12の形状としては、例えば、球形状および楕円体形状が挙げられる。粒体12は、無色、有色のいずれでも良い。粒体12の粒子径は、塗膜10Aの上述の厚さT3より大きい限りにおいて、例えば5~50μmであり、好ましくは5~40μmである。塗膜10Aがこのような粒体12を含むことによって上述の凸面13が形成されている。
【0076】
また、塗膜10Aにおける粒体12の配置密度(即ち、基材Sの広がり方向における粒体12の配置密度)は、例えば10~100個/mmであり、好ましくは30~50個/mmである。
【0077】
塗膜20Aは、上述の塗膜20と同様に中塗り塗膜である。本実施形態における塗膜20Aは、本発明における第2塗膜に相当し、塗膜10A(第1塗膜)と塗膜30(クリヤー塗膜)との間に位置し、塗膜10Aの凸面13(第1凸面)に沿った凸面24(第4凸面)を有する。
【0078】
塗膜20Aは、構成成分に関し、膜形成材21を含む一方で粒体22を含まない点において、上述の塗膜20と異なる。このような塗膜20Aは、例えば、膜形成材21としての樹脂を含有する組成物(塗料)の硬化物である。塗膜20Aの厚さは、例えば10~50μmであり、好ましくは20~30μmである。
【0079】
本実施形態において、ドット印刷膜40は、塗膜20Aと塗膜30との間に位置し、各ドット印刷膜40の曲面は、塗膜20Aを介して塗膜10A(第1塗膜)の凸面13(第1凸面)に沿う。
【0080】
本実施形態において、塗膜30は、塗膜20Aにおける基材Sとは反対側に位置し、塗膜30の各凸面33は、塗膜20Aおよびドット印刷膜40を介して、塗膜10A(第1塗膜)の凸面13(第1凸面)に沿う。
【0081】
図5は、図4に示す建材X3の製造方法を表す。本製造方法は、建材製造ラインにおいて基材Sを搬送しつつ建材を製造する方法であり、以下のような下塗り工程と、中塗り工程と、印刷工程と、クリヤー塗膜形成工程とを含む。建材製造ラインには、形成すべき塗膜ごとにスプレー塗装装置が設置され、且つ、ドット印刷膜形成用の印刷装置が設置されている。各スプレー塗装装置は、塗料噴霧用の複数のノズルを備える。印刷装置は、好ま
しくはフルカラーインクジェット印刷装置である。
【0082】
まず、下塗り工程では、図5(a)に示すように、基材Sの意匠面Sa上に塗膜10Aを形成する。本工程では、例えば、膜形成材11(第1の膜形成材)としての樹脂と粒体12(第1粒体)と溶剤とを含有する塗料(第1塗料)を意匠面Sa上にスプレー塗布して、所定厚さの塗膜10Aを形成する。塗膜10Aは乾燥される。
【0083】
このような粒体12含有塗料のスプレー塗装によって形成される塗膜10Aは、上述のように、膜形成材11が粒体12を被覆している箇所にて基材Sとは反対側に突き出る凸面13を有する。第1塗膜としての塗膜10Aを形成する本工程は、本発明における第1工程に相当する。
【0084】
本工程で使用される塗料における粒体12の含有割合は、例えば0.02~160体積
%であり、好ましくは0.2~100体積%である。このような構成は、粒体12の上述
の配置密度を実現するのに適する。また、形成される塗膜10Aの上述の厚さT3は、例えば、本工程で使用される塗料の粘度調整によって調整可能である。
【0085】
次に、中塗り工程では、図5(b)に示すように、塗膜10A上に塗膜20Aを形成する。本工程では、例えば、膜形成材21として樹脂と溶剤とを含有する塗料を塗膜10A上にスプレー塗布し、所定厚さの塗膜20Aを形成する。塗膜20Aは乾燥される。このようなスプレー塗装によって塗膜10A上に形成される塗膜20Aは、上述のように、基材Sとは反対側に突き出る凸面24を、塗膜10Aの凸面13上に有する。
【0086】
次に、印刷工程では、図5(c)に示すように、塗膜20A上に複数のドット印刷膜40を形成する。本工程では、具体的には、上記印刷装置を使用して、塗膜20Aにおける基材Sとは反対側の表面の各所に、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの色相のカラーインク滴を着弾させる。これにより、塗膜20Aの凸面24を介して塗膜10Aの凸面13に沿った曲面を有するドット印刷膜40を形成する。ドット印刷膜40は、必要に応じて乾燥される。形成されるドット印刷膜40のドットサイズと配置密度(点描密度)は、図2(c)に示す印刷工程に関して上述したのと同様である。ドット印刷膜40を形成する本工程は、本発明における第2工程に相当する。
【0087】
次に、クリヤー塗膜形成工程では、図5(d)に示すように、基材Sの意匠面Sa側にある塗膜20A上およびドット印刷膜40上に、クリヤー塗膜としての塗膜30を形成する。本工程は、具体的には、図2(d)を参照して上述したクリヤー塗膜形成工程と同様にして実施することができる。このような本工程は、本発明における第3工程に相当する。
【0088】
以上のようにして、建材X3を製造することができる。
【0089】
建材X3は、建材X1に関して上述したのと同様の理由から、微細凹凸を伴う砂岩調などの質感を表現するのに適した建材として、高い生産性で製造するのに適する。
【0090】
また、建材X3は、塗膜10A(第1塗膜)と塗膜30(クリヤー塗膜)との間に位置して塗膜10Aの凸面13に沿った凸面24を有する塗膜20A(第2塗膜)を、備える。このような構成は、用いる粒体12(第1粒体)の小径化を図るのに適する。ドット印刷膜40が、塗膜20A(第2塗膜)を介して塗膜10A(第1塗膜)の凸面13(第1凸面)に沿い、同一の凸面13に直接接しつつ当該凸面13に沿う場合よりも、曲率半径が大きな曲面を有しうるからである。
【0091】
用いる粒体12の小径化は、建材X3の製造過程において、図5(a)を参照して上述したように粒体12含有塗料のスプレー塗装によって塗膜10Aを形成する場合に、当該スプレー塗装に使用する塗料噴霧用ノズルの目詰まりを抑制するのに適する。このような目詰まりの抑制は、使用ノズルの洗浄作業を少なくして建材X3の生産性を高めるのに役立つ。
【0092】
図6は、本発明の第4の実施形態に係る建材X4の部分断面図である。建材X4は、基材Sと、塗膜10Aと、塗膜20Aと、塗膜30とを含む積層構造を有し、且つ複数のドット印刷膜40を含む。建材X4は、ドット印刷膜40が塗膜20A,30間に位置する
構成に代えて、塗膜30における基材Sとは反対側にドット印刷膜40が位置する構成を備える点において、上述の建材X3と異なる。この点を除き、建材X4は建材X3と同様の構成を有する。
【0093】
このような建材X4は、図5(c)を参照して上述した印刷工程より後に、図5(d)を参照して上述したクリヤー塗膜形成工程を実施するのに代えて、前記クリヤー塗膜形成工程より後に前記印刷工程を実施すること以外は、建材X3の製造方法と同様の製造方法によって、製造することができる。クリヤー塗膜である塗膜30上へのドット印刷膜40の形成は、当該ドット印刷膜40の意匠面における定着を図るのに適する。
【0094】
建材X4は、建材X1に関して上述したのと同様の理由から、微細凹凸を伴う砂岩調などの質感を表現するのに適した建材として、高い生産性で製造するのに適する。
【0095】
また、建材X4は、塗膜10A(第1塗膜)と塗膜30(クリヤー塗膜)との間に位置して塗膜10Aの凸面13に沿った凸面24を有する塗膜20A(第2塗膜)を、備える。このような構成は、用いる粒体12(第1粒体)の小径化を図るのに適する。ドット印刷膜40が、塗膜20A(第2塗膜)と塗膜30(クリヤー塗膜)を介して塗膜10A(第1塗膜)の凸面13(第1凸面)に沿い、同一の凸面13に直接接しつつ当該凸面13に沿う場合よりも、曲率半径が大きな曲面を有しうるからである。
【0096】
用いる粒体12の小径化は、建材X4の製造過程において、粒体12含有塗料のスプレー塗装によって塗膜10Aを形成する場合に、当該スプレー塗装に使用する塗料噴霧用ノズルの目詰まりを抑制するのに適する。このような目詰まりの抑制は、使用ノズルの洗浄作業を少なくして建材X4の生産性を高めるのに役立つ。
【0097】
図7は、本発明の第5の実施形態に係る建材X5の部分断面図である。建材X5は、基材Sと、塗膜10Bと、塗膜20Bと、塗膜30とを含む積層構造を有し、且つ当該積層構造中に複数のドット印刷膜40を含む。建材X5は、塗膜10,20に代えて塗膜10
B,20Bを備える点において、上述の建材X1と異なる。この点を除き、建材X5は建
材X1と同様の構成を有する。
【0098】
塗膜10Bは、上述の塗膜10と同様に下塗り塗膜であり、例えば、意匠面Saの素地を目止めして、意匠面Saに対して積層形成される塗膜など各種要素の付着固定性を確保する機能を有する。
【0099】
塗膜10Bは、本発明における第1塗膜に相当し、基材Sの意匠面Sa側に位置し且つ膜形成材11(第1の膜形成材)および粒体12(第1粒体)を含む。この塗膜10Bは、膜形成材11が粒体12を被覆している箇所にて基材Sとは反対側に突き出る凸面13(第1凸面)を有する。塗膜10Bの構成材料および厚さ(厚さT3)は、建材X3における塗膜10Aに関して上述した構成材料および厚さT3と同様である。
【0100】
塗膜10Bは、粒体12の配置密度(即ち、基材Sの広がり方向における粒体12の配置密度)に関し、塗膜10Aと異なる。塗膜10Bにおける粒体12の配置密度は、塗膜10Aにおける粒体12の配置密度より小さく、例えば1~25個/mmであり、好ましくは2~15個/mmである。
【0101】
塗膜20Bは、上述の塗膜20と同様に中塗り塗膜である。本実施形態における塗膜20Bは、本発明における第2塗膜に相当し、塗膜10B(第1塗膜)と塗膜30(クリヤー塗膜)との間に位置し、且つ膜形成材21(第2の膜形成材)および粒体22(第3粒体)を含む。この塗膜20Bは、塗膜10Bの凸面13(第1凸面)に沿った凸面24(第4凸面)を有し、且つ、膜形成材21が粒体22を被覆している箇所にて基材Sとは反対側に突き出る凸面23(第5凸面)を有する。塗膜20Bの構成材料および厚さ(厚さT1)は、建材X1における塗膜20に関して上述した構成材料および厚さT1と同様である。
【0102】
塗膜20Bは、粒体22の配置密度(即ち、基材Sの広がり方向における粒体22の配置密度)に関し、塗膜20と異なる。塗膜20Bにおける粒体22の配置密度は、塗膜20における粒体22の配置密度より小さく、例えば1~25個/mmであり、好ましくは2~15個/mmである。
【0103】
本実施形態において、複数のドット印刷膜40は、塗膜20Bと塗膜30との間に位置する。複数のドット印刷膜40のうち一部のドット印刷膜40は、塗膜20Bを介して塗膜10B(第1塗膜)の凸面13(第1凸面)に沿う曲面を有する。複数のドット印刷膜40の他の一部のドット印刷膜40は、塗膜20B(第2塗膜)の凸面23(第5凸面)に沿う曲面を有する。
【0104】
本実施形態において、塗膜30は、塗膜20Bにおける基材Sとは反対側に位置する。この塗膜30は、上述の凸面33(第2凸面)および凸面34(第3凸面)に加え、ドット印刷膜40を介して塗膜20Bの凸面23(第5凸面)に沿った凸面35(第6凸面)を有する。
【0105】
図8は、図7に示す建材X5の製造方法を表す。本製造方法は、建材製造ラインにおいて基材Sを搬送しつつ建材を製造する方法であり、以下のような下塗り工程と、中塗り工程と、印刷工程と、クリヤー塗膜形成工程とを含む。建材製造ラインには、形成すべき塗膜ごとにスプレー塗装装置が設置され、且つ、ドット印刷膜形成用の印刷装置が設置されている。各スプレー塗装装置は、塗料噴霧用の複数のノズルを備える。印刷装置は、好ましくはフルカラーインクジェット印刷装置である。
【0106】
まず、下塗り工程では、図8(a)に示すように、基材Sの意匠面Sa上に塗膜10Bを形成する。本工程では、例えば、膜形成材11(第1の膜形成材)としての樹脂と粒体12(第1粒体)と溶剤とを含有する塗料(第1塗料)を意匠面Sa上にスプレー塗布して、所定厚さの塗膜10Bを形成する。塗膜10Bは乾燥される。
【0107】
このような粒体12含有塗料のスプレー塗装によって形成される塗膜10Bは、上述のように、膜形成材11が粒体12を被覆している箇所にて基材Sとは反対側に突き出る凸面13を有する。第1塗膜としての塗膜10Bを形成する本工程は、本発明における第1工程に相当する。
【0108】
本工程で使用される塗料における粒体12の含有割合は、例えば0.01~80体積%
であり、好ましくは0.1~50体積%である。このような構成は、塗膜10Bにおける
粒体12の上述の配置密度を実現するのに適する。
【0109】
次に、中塗り工程では、図8(b)に示すように、塗膜20B上に塗膜20Bを形成する。本工程では、例えば、膜形成材21(第2の膜形成材)として樹脂と粒体22(第3粒体)と溶剤とを含有する塗料を塗膜10B上にスプレー塗布し、所定厚さの塗膜20Bを形成する。塗膜20Bは乾燥される。
【0110】
次に、印刷工程では、図8(c)に示すように、塗膜20B上に複数のドット印刷膜40を形成する。本工程では、具体的には、上記印刷装置を使用して、塗膜20Bにおける基材Sとは反対側の表面の各所に、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの色相のカラーインク滴を着弾させる。これにより、塗膜20Bを介して塗膜10Bの凸面13に沿った曲面を有するドット印刷膜40と、塗膜20Bの凸面23に沿った曲面を有するドット印刷膜40とを形成する。ドット印刷膜40は、必要に応じて乾燥される。形成されるドット印刷膜40のドットサイズと配置密度(点描密度)は、図2(c)に示す印刷工程に関して上述したのと同様である。ドット印刷膜40を形成する本工程は、本発明における第2工程に相当する。
【0111】
次に、クリヤー塗膜形成工程では、図8(d)に示すように、基材Sの意匠面Sa側にある塗膜20B上およびドット印刷膜40上に、クリヤー塗膜としての塗膜30を形成する。本工程は、具体的には、図2(d)を参照して上述したクリヤー塗膜形成工程と同様にして実施することができる。このような本工程は、本発明における第3工程に相当する。
【0112】
以上のようにして、建材X5を製造することができる。
【0113】
このような建材X5は、建材X1に関して上述したのと同様の理由から、微細凹凸を伴う砂岩調などの質感を表現するのに適した建材として、高い生産性で製造するのに適する。建材X5では、塗膜10Bの凸面13に沿った曲面を有するドット印刷膜40のサイズおよび形状と、塗膜10Bの凸面13に沿った曲面を有するドット印刷膜40の呈する色と、塗膜20Bの凸面23に沿った曲面を有するドット印刷膜40のサイズおよび形状と、塗膜20Bの凸面23に沿った曲面を有するドット印刷膜40の呈する色と、粒体32のサイズおよび形状と、粒体32の素材色との複合的な結合によって、微細凹凸を伴う砂岩調などの質感を表現することが可能である。
【0114】
また、建材X5は、塗膜10B(第1塗膜)と塗膜30(クリヤー塗膜)との間に位置して塗膜10Bの凸面13に沿った凸面24を有する塗膜20B(第2塗膜)を、備える。このような構成は、用いる粒体12(第1粒体)の小径化を図るのに適する。ドット印刷膜40が、塗膜20B(第2塗膜)を介して塗膜10B(第1塗膜)の凸面13(第1凸面)に沿い、同一の凸面13に直接接しつつ当該凸面13に沿う場合よりも、曲率半径が大きな曲面を有しうるからである。
【0115】
用いる粒体12の小径化は、建材X5の製造過程において、図8(a)を参照して上述したように粒体12含有塗料のスプレー塗装によって塗膜10Bを形成する場合に、当該スプレー塗装に使用する塗料噴霧用ノズルの目詰まりを抑制するのに適する。このような目詰まりの抑制は、使用ノズルの洗浄作業を少なくして建材X5の生産性を高めるのに役立つ。
【0116】
また、建材X5において、塗膜10B(第1塗膜)が粒体12(第1粒体)を含み且つ塗膜20B(第2塗膜)が粒体22(第3粒体)を含むという構成は、図8(a)および図8(b)を参照して上述したスプレー塗装に使用する各塗料の粒体含有量を減ずるのに適する。スプレー塗装用塗料の粒体含有量の減少は、当該スプレー塗装に使用する塗料噴
霧用ノズルの目詰まりを抑制するうえで好ましく、使用ノズルの洗浄作業を少なくして建材X5の生産性を高めるのに役立つ。
【0117】
図9は、本発明の第6の実施形態に係る建材X6の部分断面図である。建材X6は、基材Sと、塗膜10Bと、塗膜20Bと、塗膜30とを含む積層構造を有し、且つ複数のドット印刷膜40を含む。建材X6は、ドット印刷膜40が塗膜20B,30間に位置する
構成に代えて、塗膜30における基材Sとは反対側にドット印刷膜40が位置する構成を備える点において、上述の建材X5と異なる。この点を除き、建材X6は建材X5と同様の構成を有する。
【0118】
このような建材X6は、図8(c)を参照して上述した印刷工程より後に、図8(d)を参照して上述したクリヤー塗膜形成工程を実施するのに代えて、前記クリヤー塗膜形成工程より後に前記印刷工程を実施すること以外は、建材X5の製造方法と同様の製造方法によって、製造することができる。クリヤー塗膜である塗膜30上へのドット印刷膜40の形成は、当該ドット印刷膜40の意匠面における定着を図るのに適する。
【0119】
建材X6は、建材X1,X5に関して上述したのと同様の理由から、微細凹凸を伴う砂
岩調などの質感を表現するのに適した建材として、高い生産性で製造するのに適する。
【0120】
また、建材X6は、建材X5と同様に、塗膜10B(第1塗膜)と塗膜30(クリヤー塗膜)との間に位置して塗膜10Bの凸面13に沿った凸面24を有する塗膜20B(第2塗膜)を、備える。このような構成は、建材X5に関して上述したのと同様に、用いる粒体12(第1粒体)の小径化を図るのに適し、ひいては、使用ノズルの洗浄作業を少なくして建材X6の生産性を高めるのに役立つ。
【0121】
また、建材X6は、建材X5と同様に、塗膜10B(第1塗膜)が粒体12(第1粒体)を含み且つ塗膜20B(第2塗膜)が粒体22(第3粒体)を含むという構成を具備する。このような構成は、建材X5に関して上述したのと同様に、スプレー塗装に使用する各塗料の粒体含有量を減ずるのに適し、ひいては、使用ノズルの洗浄作業を少なくして建材X6の生産性を高めるのに役立つ。
【符号の説明】
【0122】
X1,X2,X3,X4,X5,X6 建材
S 基材
Sa 意匠面
10,20,30 塗膜
10A,10B,20A,20B 塗膜
11,21 膜形成材
12,22,32 粒体
13,23,24,33,34,35 凸面
31 透明膜形成材
40 ドット印刷膜
図1
図2
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図9