(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】結合剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20231219BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20231219BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C09J133/04
D06M15/263
D21H19/20 A
(21)【出願番号】P 2020064549
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 和明
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-025046(JP,A)
【文献】特開2011-246637(JP,A)
【文献】特開2020-334705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
D21H 17/00- 19/84
D06M 15/00- 15/715
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体を含む結合剤であって、前記重合体は下記一般式(1)に由来する構造単位を含み、前記重合体は、前記一般式(1)に由来する構造単位を、全単量体に由来する構造単位100質量%に対して40質量%以上含むことを特徴とする結合剤。
【化1】
(R
1は、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、またはアンモニウムを表す。)
【請求項2】
前記重合体の水溶液又は水分散液である請求項1に記載の結合剤。
【請求項3】
繊維用である請求項1又は2に記載の結合剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の結合剤を含む繊維処理剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の結合剤を含む繊維増強用塗工液。
【請求項6】
請求項5に記載の塗工液が繊維の表面に塗工された塗工繊維。
【請求項7】
結合剤の製造方法であって、乳化剤の存在下、式(2)で示される単量体の少なくとも1種を水系溶媒に分散させて重合反応を行う乳化重合を含むことを特徴とする結合剤の製造方法。
【化2】
(R
2は、炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結合剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維や粒子(以下、繊維等という)の表面に結合剤を付着させることによって繊維等の強度が高められることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリアクリル酸共重合体と、リン酸ナトリウムなどの無機塩とを含有する水性液をセルロース系繊維布帛に付着させて熱処理して、セルロース系繊維布帛の形態を安定にする方法が記載されている。また、特許文献2には、ポリオール、リン(III)含有促進剤、及びポリアクリル酸などの多酸を含む硬化性水性組成物をガラス繊維等の耐熱性不織布用の結合剤として用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-158773号公報
【文献】特開平6-184285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2では、ポリアクリル酸系ポリマーを無機塩と組み合わせて結合剤として用いている。しかし、このような結合剤では100℃程度の低温で加熱処理した場合、繊維の引張強度は十分に高くすることができず、引張強度を高くするためには150℃程度の高温で加熱処理する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、所定の構造単位を有する重合体を含む結合剤を用いると、前記結合剤を繊維等に付着させたときに、100℃程度の低温で加熱処理した場合であっても、150℃程度の高温で加熱処理した場合であっても繊維等が高い引張強度を示すことを見出した。
すなわち、本発明は、以下の発明を含む。
[1]重合体を含む結合剤であって、前記重合体は下記一般式(1)に由来する構造単位を含み、前記重合体は、前記一般式(1)に由来する構造単位を、全単量体に由来する構造単位100質量%に対して40質量%以上含むことを特徴とする結合剤。
【化1】
(R
1は、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、またはアンモニウムを表す。)
[2]前記重合体の水溶液又は水分散液である上記[1]に記載の結合剤。
[3]繊維用である上記[1]又は[2]に記載の結合剤。
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載の結合剤を含む繊維処理剤。
[5]上記[1]~[3]のいずれかに記載の結合剤を含む繊維増強用塗工液。
[6]上記[5]に記載の塗工液が繊維の表面に塗工された塗工繊維。
[7]結合剤の製造方法であって、乳化剤の存在下、式(2)で示される単量体の少なくとも1種を水系溶媒に分散させて重合反応を行う乳化重合を含むことを特徴とする結合剤の製造方法。
【化2】
(R
2は、炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0007】
所定の構造単位を有する重合体を含む結合剤を繊維等に付着させれば、100℃程度の低温で加熱処理した場合であっても、150℃程度の高温で加熱処理した場合であっても高い引張強度の繊維等を得ることができる。また前記結合剤は、従来の結合剤よりも処理する温度をより低くすることができる為、処理される繊維等への熱の影響を低減することができ、耐熱性が低い繊維等への処理も容易に行える利点も持つ。また前記結合剤は、ポリマー成分以外の無機塩の添加を必須としないため、その好ましい態様では、イオン成分の影響を抑えることも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.結合剤
本発明の結合剤は重合体を含み、前記重合体は下記一般式(1)に由来する構造単位(以下、RHMA系単位という場合がある)を含む。前記重合体(以下、RHMA系重合体という場合がある)は、前記一般式(1)に由来する構造単位(RHMA系単位)を、全単量体に由来する構造単位100質量%に対して40質量%以上含み、60質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましく、95質量%以上含むことが特に好ましく、99質量%以上含むことが最も好ましく、100質量%であってもよい。
【0009】
本発明の結合剤は、コア部とその表面に設けられたシェル部で構成されるコアシェル粒子であってもよい。コアシェル構造とすることによって、結合剤の柔軟性を容易に調整でき、繊維等への密着性を高めることができる。コアシェル粒子である場合、シェル部がRHMA系重合体を含む構成であればよい。コアシェル粒子に含まれるRHMA系重合体は、全単量体に由来する構造単位100質量%に対してRHMA系単位を40質量%以上含めばよい。また、シェル部に含まれるRHMA系重合体は、シェル部を構成する全単量体に由来する構造単位100質量%に対してRHMA系単位を40質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましく、90質量%以上含むことがよりさらに好ましく、95質量%以上含むことが特に好ましく、99質量%以上であることが最も好ましく、100質量%であってもよい。
【0010】
【化3】
(R
1は、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、またはアンモニウムを表す。)
前記式(1)においてR
1がアルカリ土類金属原子である場合、ヒドロキシメチルアクリル酸の重合残基の2つがアルカリ土類原子を介して架橋された構造をとる。
【0011】
R1で表される炭素数1~4のアルキル基は、炭素数1~2のアルキル基であることが好ましく、炭素数1のアルキル基(メチル基)であることがより好ましい。
R1で表されるアルカリ金属原子は、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、ナトリウム、カリウムがより好ましく、ナトリウムがより更に好ましい。
R1で表されるアルカリ土類金属原子としては、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。
R1で表されるアンモニウムは、NH4+に限られず、有機アンモニウムを含む意味であると定義される。有機アンモニウムとしては、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムなどの4級アンモニウム;アミンをプロトン化することによって形成されるアンモニウム(1~3級アンモニウム)などが挙げられる。R1としては、アンモニア又はアミンのプロトン化によって形成されるアンモニウムが好ましい。前記アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン(好ましくはトリC1-10アルキルアミン);ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのヒドロキシアルキルアミン(好ましくはジ又はトリ(ヒドロキシC1-10アルキル)アミンなど)などが挙げられ、ヒドロキシアルキルアミンが好ましい。
【0012】
またRHMA系重合体としては、
1)RHMA系単位が、R1が炭素数1~4のアルキル基だけを有するRHMA系単位(以下、エステル型RHMA系単位という場合がある)だけである重合体(未加水分解物)、
2)RHMA系単位として、エステル型RHMA系単位と、R1が水素原子であるRHMA系単位(以下、酸型RHMA系単位という場合がある)とを含む重合体(部分加水分解物);RHMA系単位として、エステル型RHMA系単位と、R1がアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、またはアンモニウムであるRHMA系単位(以下、塩型RHMA系単位という場合がある)とを含み、必要に応じて酸型RHMA系単位を含む重合体(部分加水分解完全又は部分中和物)、
3)RHMA系単位が、酸型RHMA系単位だけである重合体(完全加水分解物);RHMA系単位が、塩型RHMA系単位を有し、必要により酸型RHMA系単位を有する重合体(完全加水分解完全又は部分中和物)などが挙げられる。
RHMA系重合体は、部分加水分解物、部分加水分解完全または部分中和物、完全加水分解物、完全加水分解完全または部分中和物が好ましく、部分加水分解物、部分加水分解完全または部分中和物がより好ましく、部分加水分解完全または部分中和物がさらに好ましい。
【0013】
RHMA系重合体中、エステル型RHMA系単位は、全RHMA系単位100質量%中、例えば、1~99質量%、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~80質量%である。酸型RHMA系単位は、全RHMA系単位100質量%中、例えば、0~30質量%、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0~10質量%である。塩型RHMA系単位は、全RHMA系単位100質量%中、例えば、1~99質量%、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~80質量%である。
またRHMA系重合体中の塩型RHMA系単位の割合は、R1の種類に応じて異なっていてもよい。塩型RHMA系単位におけるR1がアルカリ金属原子であるとき、該塩型RHMA系単位は、例えば、全RHMA系単位100質量%中、50~90質量%、好ましくは60~80質量%である。このとき結合剤は水溶液となる。エステル型RHMA系単位は、全RHMA系単位100質量%中、例えば、1~50質量%、好ましくは10~40質量%である。酸型RHMA系単位は、全RHMA系単位100質量%中、例えば、0~30質量%、好ましくは0~20質量%である。
塩型RHMA系単位におけるR1がアルカリ金属原子であるとき、該塩型RHMA系単位は、例えば、全RHMA系単位100質量%中、1~49質量%、好ましくは10~30質量%であってもよい。このとき結合剤は水分散液となる。エステル型RHMA系単位は、全RHMA系単位100質量%中、例えば、50~90質量%、好ましくは60~80質量%である。酸型RHMA系単位は、全RHMA系単位100質量%中、例えば、0~30質量%、好ましくは0~20質量%である。
塩型RHMA系単位におけるR1がアンモニウムであるとき、該塩型RHMA系単位は、全RHMA系単位100質量%中、例えば、10~90質量%、好ましくは20~80質量%である。このとき結合剤は水溶液となる。エステル型RHMA系単位は、全RHMA系単位100質量%中、例えば、10~90質量%、好ましくは20~80質量%である。酸型RHMA系単位は、全RHMA系単位100質量%中、例えば、0~20質量%、好ましくは0~10質量%である。
【0014】
RHMA系重合体は、多官能エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位などの架橋性単位を含んでもよい。RHMA系重合体中における多官能エチレン性不飽和単量体由来の単量体単位は、全単量体単位100質量%中、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることが特に好ましく、0質量%である(多官能エチレン性不飽和単量体由来の単量体単位を含まない)ことが最も好ましい。架橋されていると重合体は加水分解しても粒子形状を保ったままになるが、架橋度が高くなると柔軟性が失われ、繊維等への接着性が悪くなり、結合剤と繊維等との接触面積が小さくなるおそれがある。
【0015】
多官能エチレン性不飽和単量体としては、1種又は2種以上を使用でき、前記多官能エチレン性不飽和単量体が非加水分解性単量体であることが好ましい。また、後述のとおり、本発明で用いられる重合体に対して、水酸化ナトリウム水溶液、ジエタノールアミン水溶液、アンモニア水溶液、シクロヘキシルアミン水溶液等の塩基性水溶液を添加することで加水分解を行うことができるため、該非加水分解性単量体は耐塩基加水分解性を有することがより好ましい。該非加水分解性単量体は、炭素原子と水素原子のみから構成される多官能性単量体(炭化水素類)であることが好ましく、必要に応じてエーテル結合を有していてもよい。このエーテル結合を有していてもよい炭化水素類としての多官能性単量体を、本明細書では、エーテル結合を有していてもよい炭化水素系架橋剤と称する。該エーテル結合を有していてもよい炭化水素系架橋剤は、エチレン性不飽和結合を2以上有することが好ましく、エチレン性不飽和結合を2つ有することがさらに好ましい。エーテル結合を有していてもよい炭化水素系架橋剤としては、具体的には、ジビニルベンゼン;1,3-ブタジエン;トリビニルベンゼン;ジビニルナフタレン;トリビニルシクロヘキサン;ジビニルエーテル;ジアリルエーテル;多価メタクリル酸エステル等が挙げられる。ジアリルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ジブチレングリコールジアリルエーテル等のジアルキレングリコールジアリルエーテル;ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリブチレングリコールジアリルエーテル等のポリアルキレングリコールジアリルエーテルが挙げられる。また、多価メタクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、メタクリル変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
上記の中でも、ジビニルベンゼン、1,3-ブタジエン、ジアリルエーテル、及び多価メタクリル酸エステルの少なくとも1種であることがより好ましく、ジビニルベンゼン及び多価メタクリル酸エステルの少なくとも1種であることがさらに好ましく、ジビニルベンゼンであることが特に好ましい。
【0016】
RHMA系重合体中には、RHMA系単量体及び多官能エチレン性不飽和単量体以外の単量体に由来する単量体単位が含まれていてもよいが、単量体単位で60質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることがよりさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、1質量%以下であることがとりわけ好ましく、0質量%である(RHMA系単量体及び多官能エチレン性不飽和単量体以外の単量体に由来する単量体単位を含まない)ことが最も好ましい。
【0017】
RHMA系単量体及び多官能エチレン性不飽和単量体以外の単量体としては、特に限定されず、例えば、単官能(メタ)アクリル系モノマー、単官能スチレン系モノマーなどが挙げられる。単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、1種又は2種以上を使用できる。単官能スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、p-t-ブチルスチレン等のアルキルスチレン類;o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等が挙げられ、1種又は2種以上を使用できる。
【0018】
また、RHMA系重合体中に硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩やリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等の含リン系無機酸塩を加えてもよいが、加えない方が好ましい。硫酸塩及び含リン系無機酸塩の割合は合計で、全RHMA系重合体100質量%中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%である(硫酸塩及び含リン系無機酸塩を含まない)ことが特に好ましい。
【0019】
上述のとおり、本発明の結合剤は、コア部とその表面に設けられたシェル部で構成されるコアシェル粒子であってもよく、コアシェル粒子である場合、シェル部が上述のRHMA系重合体を含む構成であればよい。一方、コア部は単官能(メタ)アクリル系モノマーに由来する単量体単位が含まれていることが好ましい。単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸のC1-12アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸のC1-4アルキルエステルであることがより好ましい。単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、1種又は2種以上を使用できる。コア部は単官能(メタ)アクリル系モノマーに由来する単量体単位が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。なお、コア部にはRHMA系単量体及び多官能エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位が含まれていてもよく含まれていなくてもよい。
コア部は単官能(メタ)アクリル系モノマー以外の単量体を含んでもよく、単官能(メタ)アクリル系モノマー以外の単量体としては、例えば、単官能スチレン系単量体が挙げられる。スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、p-t-ブチルスチレン等のアルキルスチレン類;o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等のスチレン系単官能単量体等が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
2.重合方法
本発明で用いられる重合体は、下記式(2)(以下、ヒドロキシメチルアクリル酸エステルという)で示される単量体を水系溶媒中で重合し、必要に応じ、部分的に又は完全に加水分解してR2に該当する部分の一部又は全部を、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウムなどに変換することにより得られる。ヒドロキシメチルアクリル酸エステルを原料モノマーとして用いると、水系溶媒中で重合しても、生成物を粒子状にできる。上記重合により、(A)水と、その水中に分散した上記重合体と、を含む水分散体又は(B)水と、その水中に溶解した重合体と、を含む水溶液が得られるが、(A)水分散体及び(B)水溶液については後述する。
【0021】
【化4】
(R
2は、炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0022】
重合方法としては、懸濁重合、乳化重合、分散重合等が挙げられる。本発明の結合剤の製造方法としては、中でも、乳化剤の存在下、上記式(2)で示される単量体の少なくとも1種を水系溶媒に分散させて重合反応を行う乳化重合を含むことが好ましい。なお、本発明の結合剤を上記の乳化重合で製造する方法にあっては、乳化重合で形成されるように乳化重合に使用する単量体成分の分量を調整する。また、本発明の樹脂粒子がコア部とその表面に設けられたシェル部で構成されるコアシェル粒子である場合、シェル部がRHMA系単量体の少なくとも1種と多官能エチレン性不飽和単量体とが架橋した架橋構造を含むように乳化重合を行う。乳化重合は、1段階のみで行ってもよく多段階で行ってもよい。
【0023】
前記乳化剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、非反応型界面活性剤であっても、ラジカル重合可能な基を構造中に有する反応型界面活性剤であってもよい。
【0024】
非反応型界面活性剤には、アニオン性、ノニオン性の界面活性剤が包含される。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル(アリル)スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸塩等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0025】
反応型界面活性剤には、アニオン性、ノニオン性の界面活性剤が包含される。アニオン性反応型界面活性剤としては、エーテルサルフェート型反応型界面活性剤、リン酸エステル系反応型界面活性剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0026】
エーテルサルフェート型反応型界面活性剤には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩又はポリオキシアルキレンフェニルエーテル硫酸塩を基本骨格とし、重合性のアルケニル基(例えば、アリル基)、(メタ)アクリロイル基等を有する化合物が包含される。例えばラテムルPD-104、PD-105(花王株式会社製)、エレミノールRS-30、NHS-20(三洋化成工業株式会社製)、アクアロンKH-5、KH-10、KH-20(第一工業製薬株式会社製)、アデカリアソープSR-10、SR-20等(株式会社ADEKA製)がある。
【0027】
リン酸エステル系反応型界面活性剤には、アルキルリン酸エステル又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸(塩)又はポリオキシアルキレンフェニルエーテルリン酸(塩)を基本骨格とし、重合性のアルケニル基(例えば、アリル基)、(メタ)アクリロイル基等を有する化合物が含まれる。例えばSIPOMER PZ-100(ソルベイ日華株式会社製)、H-3330PL、ニューフロンティアS-510(第一工業製薬株式会社製)、Maxemul6106、6112(クローダ社製)、アデカリアソープPP-70(株式会社ADEKA製)等がある。
【0028】
その他のアニオン性反応型界面活性剤としては、SIPOMER COPS1(ソルベイ日華株式会社製)、エレミノールJS-20(三洋化成工業株式会社製)、Maxemul 5010、5011(クローダ社製)等がある。
【0029】
一方、ノニオン性反応型界面活性剤には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを基本骨格とし、重合性のアルケニル基(例えば、アリル基)、(メタ)アクリロイル基等を有する化合物が包含される。例えば、アデカリアソープNE-10、NE-20、NE-30、ER-10、ER-20、ER-30(株式会社ADEKA製)、ラテムルPD-420、PD-430、PD-450(株式会社花王製)、アクアロンRN-10、RN-20、RN-30、RN-50(第一工業製薬株式会社製)等がある。
【0030】
ヒドロキシメチルアクリル酸エステルの乳化重合用の界面活性剤としては、反応型界面活性剤を含むことが好ましく、アニオン性反応型界面活性剤を含むことがより好ましく、中でもエーテルサルフェート型反応型界面活性剤を含むことがさらに好ましい。
【0031】
乳化剤は、ヒドロキシメチルアクリル酸エステルの合計100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下である。
【0032】
前記水系溶媒とは、水単独、または水と水混和性有機溶媒との混合溶媒が挙げられるが、水単独であることが好ましい。水系溶媒とは、典型的には、水の含有量が50体積%を超える溶媒を指す。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、蒸留水、純水等を用いることができる。水混和性有機溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール等)を用いることができる。結合剤中に有機溶媒が極力残存しないようにする観点から、水系溶媒の80体積%以上が水である水系溶媒が好ましく、水系溶媒の90体積%以上が水である水系溶媒がより好ましく、水系溶媒の95体積%以上が水である水系溶媒がさらに好ましく、実質的に水からなる水系溶媒(99.5体積%以上が水である水系溶媒)が特に好ましく、水単独であることが最も好ましい。
【0033】
前記水系溶媒は、単量体組成物100質量部に対して、例えば100質量部以上であり、好ましくは200質量部以上、より好ましくは400質量部以上、さらに好ましくは700質量部以上であり、2000質量部以下であることが好ましく、1500質量部以下であることがより好ましく、1000質量部以下であることがさらに好ましい。
【0034】
反応系内へのヒドロキシメチルアクリル酸エステルの添加態様については特に限定されず、重合開始剤の添加前に全量を一度に反応容器へと仕込む態様;単量体組成物の一部を重合させた後、残部を一度に、あるいは、分割して反応系内へと添加する態様;単量体組成物を一定の割合で連続的に反応系内へと添加する態様;等、様々な態様を採用することができる。粗大な重合体が生成するのを防止する観点から、単量体組成物の一部を重合させた後、残部を反応系内へと(一度または連続的に)添加する態様が好ましい。この場合、単量体組成物の一部の重合を開始した後、重合が完結する前に、重合温度に保ったまま残部を添加することが好ましい。
【0035】
ヒドロキシメチルアクリル酸エステルを重合する際には、例えば、重合開始剤、紫外線や放射線の照射、熱の印加等の手段が用いられ、重合開始剤を使用することが好ましく、ヒドロキシメチルアクリル酸エステルの分散性の観点から、酸化剤及び還元剤を組み合わせた重合開始剤(レドックス型重合開始剤)が好ましい。
【0036】
前記酸化剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、過酸化水素、t-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルヒドロパーオキサイド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-ヒドロパーオキサイドなどのヒドロパーオキサイド;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルケトンパーオキサイドなどケトンパーオキサイド類;硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;が挙げられる。
【0037】
還元剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、アスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム等のアスコルビン酸塩類;エリソルビン酸およびエリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム等のエリソルビン酸塩類;酒石酸および酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウムなどの酒石酸塩類;亜燐酸および亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウム等の亜燐酸塩類;亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウム等の亜燐酸水素塩類;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩類;亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸水素塩類;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム等のチオ硫酸塩類;チオ亜硫酸ナトリウム、チオ亜硫酸カリウム等のチオ亜硫酸塩類;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウムなどのピロ亜硫酸塩類;ピロ亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウム等のピロ亜硫酸水素塩類;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウムなどのピロリン酸塩類;ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウム(ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム)等が挙げられる。また、必要に応じて、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、あるいはセリウム等の重金属の硫酸塩または塩化物塩を併用することもできる。
【0038】
レドックス型重合開始剤としては、ヒドロパーオキサイド類から選択される1種以上の酸化剤と、アスコルビン酸およびアスコルビン酸塩類から選択される1種以上の還元剤とを組合せた重合開始剤であることが好ましく、過酸化水素(酸化剤)とアスコルビン酸(還元剤)とを組合せた重合開始剤であることがより好ましい。
【0039】
還元剤及び酸化剤の合計量は、ヒドロキシメチルアクリル酸エステル100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0040】
また、重合開始剤は、最初(反応開始前)に全量仕込んでおいてもよく、最初に一部を仕込んでおき、残りを連続フィード添加してもよく、断続的にパルス添加してもよく、これらを組み合わせた方法で添加してもよい。
【0041】
重合反応を行う際の反応温度は、例えば、30℃以上とするのが好ましく、より好ましくは45℃以上であり、100℃以下が好ましく、より好ましくは95℃以下である。反応温度がこの範囲にあれば、重合反応の制御が容易である。反応時間は、通常、10分~1200分が好ましく、より好ましくは30分~360分である。
【0042】
3.水分散体及び水溶液
3-1.水分散体
上述した水中に前記重合体を分散させた水分散体とすることにより、前記重合体を水に分散させた状態(水分散体)とした結合剤も本発明の範囲に包含される。前記水分散体は、前記重合体が、エステル基及びヒドロキシメチル基を有しており、親水性に優れている。また水に対する分散性が良好であり、分散体としての貯蔵安定性も良好であり、さらに容易に加水分解を行うことが可能である。加水分解及びその後、必要に応じて中和を行う場合、水分散体に含まれている重合体に対して、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液、ジエタノールアミン水溶液、シクロヘキシルアミン水溶液等の塩基性水溶液を添加することで加水分解を行うことができる。さらに、加水分解液に適宜酸を添加することで、部分中和又は完全中和を行うことができる。加水分解及び中和を行うことで、式(1)のR1に該当する基を水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、またはアンモニウムにできる。重合時、加水分解時、及び中和時に用いる酸や塩基の量を調整したり、R1が水素原子である単量体単位の割合を調整することで、前記重合体のpH及び体積平均粒子径を容易に調整することができるため、結合剤を幅広い用途で用いることができる。
【0043】
水分散体に含まれる重合体の体積平均粒子径は10nm~10μmであることが好ましく、50nm~5μmであることがより好ましく、100nm~1μmであることがさらに好ましく、150~800nmであることが特に好ましい。水分散体に含まれる重合体の体積平均粒子径は動的光散乱法により測定した。
【0044】
3-2.水溶液
上記3-1.では水中に重合体を分散させた水分散体となる場合について説明したが、以下では水中に重合体を溶解させた水溶液となる場合及び該水溶液となる理由について説明する。
【0045】
RHMA系単量体をポリマー化した状態(式(1)のR1が炭素数1~4のアルキル基である状態)では、疎水性が強く粒子状になっており、一部では分子間エステル交換反応が進み架橋構造が形成されている。そして、上記ポリマー化物に対し塩基を添加して部分中和を行うと、エステル基の加水分解が起こりカルボキシル基が生成され、その後塩基により中和される。塩基の添加量が一定量となるまではエステル基とカルボキシル塩基が共存し、カルボキシル塩基のイオン反発により分子鎖が広がり、重合体は粒子状のまま、粒子径が大きくなる。しかし、一定量を超える塩基を添加すると、分子間のエステル架橋構造が解消されるとともに、カルボキシル塩基の比率が高くなるため、本発明で用いられる重合体は水溶性を発現し、重合体は小さい粒子となり水に分散せずに水溶性ポリマーとなり水中に溶解する。
【0046】
水中に水溶性を発現した前記重合体を溶解させた水溶液とすることにより、前記重合体を水に溶解させた状態とした結合剤も本発明の範囲に包含される。なお、本発明における「水溶性ポリマー」とは、温度25℃での溶解度が1g/100g水以上であるポリマーである。
【0047】
4.結合剤の用途等
本発明の結合剤は、繊維又は粒子に用いられることが好ましく、繊維に用いられることがより好ましい。繊維としては、ガラス繊維、ロックウール、カーボン繊維等の無機繊維;羊毛、セルロース、麻、ナイロン、ポリエステル等の有機物の繊維;等が挙げられる。粒子としては、ガラス粒子、鉱物粒子等の無機粒子(無機粉体)等が挙げられる。これらの中でも本発明の結合剤は、繊維に用いられることが特に好ましく、セルロース繊維である紙に用いられることが最も好ましい。本発明の結合剤を繊維等に付着させるときに、100℃程度の低温で加熱処理した場合であっても、150℃程度の高温で加熱処理した場合であっても結合剤が付着した繊維等は高い引張強度を有する。繊維処理剤は結合剤を含んでおり、繊維の表面に塗工することにより繊維を増強する繊維増強用塗工液の役割を有する。
【0048】
繊維処理剤を繊維の表面に塗工することにより、繊維処理剤が塗工された繊維(以下、塗工繊維という)が得られる。
【0049】
塗工繊維の用途としては、公知の種々の用途が挙げられるが、断熱材、保温材、吸音材等の用途に好適に使用できる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0051】
<結合剤の体積平均粒子径>
微粒子分散体をイオン交換水で希釈したものを光散乱粒度分布測定機(スペクトリス社製「Zetasizer Ultra」)を用いて測定して、動的光散乱法により微粒子(結合剤)の体積平均粒子径(nm)を求めた。なお、微粒子(結合剤)が水酸化ナトリウム水溶液に溶解した場合については体積平均粒子径を測定していない。
【0052】
<引張強度>
引張試験機(島津製作所社製「AUTOGRAPH AG-I/R」)を用い、試験長さが180mmとなるように試験片をつかみ具にはさみ、20mm/minの速度で引張試験を実施した。
下記式に従い、試験片が破断した時点の最大試験力から引張強度を求めた。
引張強度(N/mm2)=最大試験力(N)/(試験片横幅(mm)×試験片厚み(mm))
【0053】
<製造例1>
攪拌機、温度計および冷却機を備えたステンレス製の反応釜に、脱イオン水832.0質量部およびエーテルサルフェート型アンモニウム塩を主成分とするアニオン性反応型界面活性剤アデカリアソープSR-20(有効成分100質量%、ADEKA社製)をイオン交換水で有効成分25.0質量%に希釈したもの(以下、「SR-20(有効成分25.0質量%)」という)を8.0質量部加え、内温を50℃まで昇温し、同温度に保った。次に、上記反応釜内を窒素ガスで置換した後、2-ヒドロキシメチルアクリル酸メチル(以下「RHMA」と称する)40.0質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度1.28質量%)21.0質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度1.90質量%)21.0質量部を上記反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。続いて、RHMA160.0質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度0.22質量%)479.0質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度0.33質量%)479.0質量部を、各々異なる投入口より反応釜へ4時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、内温を50℃で2時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、微粒子(1)が分散した微粒子分散体(1a)を得た。
さらに、微粒子分散体(1a)を作製する際に添加されたRHMA中におけるメトキシカルボニル基のモル数に対して水酸化ナトリウムが25モル%となるように濃度6.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応釜に加え、25℃で30分撹拌し、微粒子(2)が分散した微粒子分散体(2a)を得た。
【0054】
<製造例2>
製造例1と同様に微粒子分散体(1a)を得た後、微粒子分散体(1a)を作製する際に添加されたRHMA中におけるメトキシカルボニル基のモル数に対して水酸化ナトリウムが75モル%となるように濃度6.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応釜に加え、25℃で30分撹拌し、微粒子分散体(1a)を水酸化ナトリウム水溶液で溶解させた。
【0055】
<製造例3>
製造例1の初期重合時のRHMA40.0質量部をRHMA20.0質量部およびn-ブチルアクリレート(以下「BA」と称する)20.0質量部の混合物に変更し、滴下時のRHMA160.0質量部をRHMA80.0質量部およびBA80.0質量部の混合物に変更し、反応温度および熟成温度を50℃から75℃に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、微粒子(3)が分散した微粒子分散体(3a)を得た。さらに、微粒子分散体(3a)を作製する際に添加されたRHMA中におけるメトキシカルボニル基のモル数に対して水酸化ナトリウムが25モル%となるように濃度6.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応釜に加え、25℃で30分撹拌し、微粒子(4)が分散した微粒子分散体(4a)を得た。
【0056】
<製造例4>
攪拌機、温度計及び冷却機を備えたステンレス製の第1の反応釜に、脱イオン水1378.0質量部、及びエーテルサルフェート型アンモニウム塩を主成分とするアニオン性反応型界面活性剤アデカリアソープSR-20(有効成分100質量%、ADEKA社製)をイオン交換水で有効成分10質量%に希釈したもの(以下「SR-20(有効成分10質量%)」という)0.96質量部を加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。他方、第1の反応釜とは異なる第2の反応釜で、メタクリル酸メチル(以下「MMA」と称する)50質量部と、BA50質量部とを混合して、単量体組成物A100質量部を調製した。さらに、第1の反応釜、第2の反応釜とは異なる第3の反応釜で、RHMA90質量部と、ジビニルベンゼン(新日鉄住金化学社製、ジビニルベンゼン純度81%、以下「DVB810」と称する)10質量部とを混合して、単量体組成物B100質量部を調製した。
次に、第1の反応釜内を窒素ガスで置換した後、前記単量体組成物A100質量部、過酸化水素水(濃度3.35質量%)20質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(濃度5.0質量%)20質量部を第1の反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。続いて、前記単量体組成物B100質量部、過酸化水素水(濃度0.83質量%)100質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(濃度1.25質量%)100質量部、SR-20(有効成分10質量%)7.04質量部とアンモニア水溶液(濃度28質量%)0.36質量部とイオン交換水92.6質量%との混合組成物100質量部を、各々異なる投入口より、第1の反応釜へ3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、第1の反応釜の内温を75℃に保持し、同温度で2時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、微粒子(5)が分散した微粒子分散体(5a)を得た。
さらに、微粒子分散体(5a)を作製する際に添加されたRHMA中におけるメトキシカルボニル基のモル数に対して水酸化ナトリウムが75モル%となるように濃度6.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液を反応釜に加え、25℃で30分撹拌し、微粒子(6)が分散した微粒子分散体(6a)を得た。
【0057】
<製造例5>
富士フィルム和光純薬社製ポリアクリル酸(平均分子量約5,000)をイオン交換水で濃度が2質量%となるように溶解した。ポリアクリル酸を溶解した溶液を用いて、ポリアクリル酸のカルボキシ基に対して水酸化ナトリウムが25モル%となるように濃度6.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液とポリアクリル酸とを反応釜に加え、25℃で30分撹拌し、ポリアクリル酸を部分中和した。
【0058】
<参考例1>
定性濾紙(ADVANTEC社製 5C 膜厚200μm)を送風定温恒温器(ヤマト科学社製「DNF400」)にて100℃で30分間乾燥した後に、横幅15mm、長さ250mmに切り出し、試験片0Aを作製した。試験片0Aに対して上述の引張強度を測定した。測定結果を表1に示した。
また、乾燥条件を100℃で30分間から150℃で15分間に変更した以外は試験片0Aと同様に試験片0Bを作製し、試験片0Bに対して上述の引張強度を測定した。測定結果を表1に示した。
【0059】
<実施例1>
微粒子の濃度が1質量%となるように製造例1で得られた微粒子分散体(2a)をイオン交換水で希釈した。希釈した液をバットに展開し、そこへ目開き500μmのステンレスメッシュガイドに挟みこんだ定性濾紙(ADVANTEC社製 5C 膜厚200μm)を静かに浸した。1分間浸漬した後、ステンレスメッシュガイドごと濾紙を引き上げ、希釈した液が滴り落ちなくなるまで液を切った。ステンレスメッシュガイドごと送風定温恒温器(ヤマト科学社製「DNF400」)にて100℃で30分間乾燥した。その後、ステンレスメッシュガイドを外し、濾紙を横幅15mm、長さ250mmに切り出し、試験片1Aを作製した。
また、乾燥条件を100℃で30分間から150℃で15分間に変更した以外は試験片1Aと同様に試験片1Bを作製した。
試験片1Aと試験片1Bに対して上述の引張試験を行った。測定結果を表1に示した。また、結合剤を上記定性濾紙に付着したことによる上記定性濾紙の強度向上効果を以下の式に基づき算出した。算出結果を表1に示した。
強度向上効果(%)=100×{(試験片1Aの引張強度)/(試験片0Aの引張強度)-1}
強度向上効果(%)=100×{(試験片1Bの引張強度)/(試験片0Bの引張強度)-1}
【0060】
<実施例2~4、比較例1>
製造例1で得られた微粒子分散体(2a)に代えて、製造例2・5の水溶性ポリマー水溶液、製造例3・4の微粒子分散体を用いた以外は実施例1と同様に引張強度を測定した。測定結果を表1に示した。また、強度向上効果も実施例1と同様に算出し、算出結果を表1に示した。
【0061】
【0062】
<参考例2>
上記定性濾紙を半紙(マルアイ社製 雪の子半紙 膜厚50μm)に代えた以外は参考例1と同様に引張強度を測定した。測定結果を表2に示した。
【0063】
<実施例5>
上記定性濾紙を上記半紙に代えた以外は実施例4と同様に引張強度を測定した。測定結果を表2に示した。また、以下の式に基づき、結合剤を上記半紙に付着したことによる半紙の強度向上効果を乾燥条件が100℃の場合と150℃の場合についてそれぞれ算出した。算出結果を表1に示した。
強度向上効果(%)=100×{(実施例5の引張強度)/(参考例2の引張強度)-1}
【0064】
<比較例2>
上記定性濾紙を上記半紙に代えた以外は比較例1と同様に引張強度を測定した。測定結果を表2に示した。また、強度向上効果も実施例5と同様に算出し、算出結果を表2に示した。
【0065】