(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】合焦位置検出方法、合焦位置検出装置および合焦位置検出用プログラム
(51)【国際特許分類】
G02B 7/28 20210101AFI20231219BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20231219BHJP
G02B 7/36 20210101ALI20231219BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20231219BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20231219BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G03B13/36
G02B7/28 J
G02B7/36
H04N23/67
G01N21/27 A
C12M1/34 A
(21)【出願番号】P 2020065807
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】安田 拓矢
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-072155(JP,A)
【文献】特開2011-186452(JP,A)
【文献】特開2001-148762(JP,A)
【文献】特開2018-116267(JP,A)
【文献】特開平08-248302(JP,A)
【文献】特開2017-220799(JP,A)
【文献】特開2002-350350(JP,A)
【文献】特開平02-037313(JP,A)
【文献】特開2007-052072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28-7/40
G03B 13/36
H04N 23/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点位置を光軸に沿って変化させながら
蛍光発光した撮像対象物をカラー撮像部で撮像して複数の色成分を含むカラー画像を取得することで、前記色成分および前記焦点位置の組み合わせが互いに異なる複数の対象画像を取得する第1工程と、
前記カラー撮像部で撮像するときの前記色成分毎のノイズ強度を求める第2工程と、
前記対象画像毎に、前記対象画像
を構成する画素の輝度に基づいて焦点の合い具合を指標する合焦度を求める第3工程と、
前記対象画像毎に、前記対象画像の前記色成分の前記ノイズ強度に応じて前記合焦度を弱めるように補正して補正合焦度を算出する第4工程と、
前記複数の補正合焦度に基づいて合焦位置を特定する第5工程と、
を備えることを特徴とする合焦位置検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の合焦位置検出方法であって、
前記第2工程は、
前記撮像対象物を保持していない参照領域を前記カラー撮像部で撮像して前記複数の色成分を含む参照画像を取得する工程と、
前記色成分毎に、前記参照画像内の輝度ばらつきを前記ノイズ強度として算出する工程と、
を有する合焦位置検出方法。
【請求項3】
請求項1に記載の合焦位置検出方法であって、
前記第2工程は、
前記複数の対象画像に対してハイパスフィルタ処理を行う工程と、
前記色成分毎に、前記ハイパスフィルタ処理された前記複数の対象画像内の輝度ばらつきを前記ノイズ強度として算出する工程と、
を有する合焦位置検出方法。
【請求項4】
焦点位置を光軸に沿って変化させながら
蛍光発光した撮像対象物をカラー撮像部で撮像して複数の色成分を含むカラー画像を取得することで、前記色成分および前記焦点位置の組み合わせが互いに異なる複数の対象画像を取得し、前記複数の対象画像に基づいて合焦位置を検出する合焦位置検出装置であって、
前記カラー撮像部で撮像するときの前記色成分毎のノイズ強度を求めるノイズ強度導出部と、
前記対象画像毎に、前記対象画像
を構成する画素の輝度に基づいて焦点の合い具合を指標する合焦度を求める合焦度算出部と、
前記対象画像毎に、前記対象画像の前記色成分の前記ノイズ強度に応じて前記合焦度を弱めるように補正して補正合焦度を算出する合焦度補正部と、
前記複数の補正合焦度に基づいて合焦位置を特定する合焦位置特定部と、
を備えることを特徴とする合焦位置検出装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の合焦位置検出方法をコンピュータに実行させることを特徴とする合焦位置検出用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合焦位置検出技術であり、特にカラー画像による撮像対象物の観察に好適な合焦位置検出技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞の培養および解析には、細胞を含む試料を撮像した画像が用いられることがある。試料は、ウェルプレートまたはマイクロプレート等と呼ばれる複数のウェル(凹部)が設けられた平板状の容器や、単一のウェルを有するディッシュと呼ばれる平皿状の容器を用いて作成される。撮像対象物である細胞を良好に撮像するためには、合焦位置を検出して焦点位置を調整する必要がある。そこで、焦点位置を光軸に沿って変化させながら撮像対象物を撮像部により撮像して取得される複数の対象画像に基づいて合焦位置を検出する合焦位置検出技術が提案されている(特許文献1、2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-318784号公報
【文献】特開2016-223931号公報
【文献】特開2017-85966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、撮像部としてモノクロカメラが用いられているが、近年、カラーカメラにより撮像対象物を撮像して取得されたカラー画像により撮像対象物の観察を行う技術が提案されている(特許文献3参照)。例えば撮像対象物に励起光を照射して蛍光発光させた後で撮像対象物像を含む蛍光画像(対象画像)を取得することがある。ここで、対象となる蛍光の波長情報が分かっていれば、カラー画像に含まれるR色成分、G色成分およびB色成分のうち当該波長に対応した色成分の画像を用いることで合焦位置を良好に検出することができる。
【0005】
一方で、上記波長情報が不明である場合も多い。また、波長情報が誤って提供されることもある。そこで、特定の色成分の対象画像に絞り込まず、R色成分、G色成分およびB色成分の対象画像の各々から焦点の合い具合を指標する合焦度を求め、これら複数の合焦度に基づいて合焦位置を安定して検出することができる汎用性のある合焦位置検出技術が望まれている。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、焦点位置を光軸に沿って変化させながら撮像対象物をカラー撮像部により撮像して取得される複数の対象画像に基づいて合焦位置を安定して検出することができる合焦位置検出技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1態様は、合焦位置検出方法であって、焦点位置を光軸に沿って変化させながら蛍光発光した撮像対象物をカラー撮像部で撮像して複数の色成分を含むカラー画像を取得することで、色成分および焦点位置の組み合わせが互いに異なる複数の対象画像を取得する第1工程と、カラー撮像部で撮像するときの色成分毎のノイズ強度を求める第2工程と、対象画像毎に、対象画像を構成する画素の輝度に基づいて焦点の合い具合を指標する合焦度を求める第3工程と、対象画像毎に、対象画像の色成分のノイズ強度に応じて合焦度を弱めるように補正して補正合焦度を算出する第4工程と、複数の補正合焦度に基づいて合焦位置を特定する第5工程と、を備えることを特徴としている。
【0008】
また、この発明の第2態様は、焦点位置を光軸に沿って変化させながら蛍光発光した撮像対象物をカラー撮像部で撮像して複数の色成分を含むカラー画像を取得することで、色成分および焦点位置の組み合わせが互いに異なる複数の対象画像を取得し、複数の対象画像に基づいて合焦位置を検出する合焦位置検出装置であって、カラー撮像部で撮像するときの色成分毎のノイズ強度を求めるノイズ強度導出部と、対象画像毎に、対象画像を構成する画素の輝度に基づいて焦点の合い具合を指標する合焦度を求める合焦度算出部と、対象画像毎に、対象画像の色成分のノイズ強度に応じて合焦度を弱めるように補正して補正合焦度を算出する合焦度補正部と、複数の補正合焦度に基づいて合焦位置を特定する合焦位置特定部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
さらに、この発明の第3態様は、合焦位置検出用プログラムであって、上記合焦位置検出方法をコンピュータに実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記のように、本発明によれば、焦点位置を光軸に沿って変化させながら撮像対象物をカラー撮像部により撮像して取得される複数の対象画像に基づいて合焦位置を安定して検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る合焦位置検出装置の第1実施形態を装備する撮像装置の概略構成を示す図である。
【
図2A】撮像装置で使用されるウェルプレートの上面図である。
【
図2B】撮像装置で使用されるウェルプレートの斜視図である。
【
図3】
図1に示す撮像装置において実行される合焦位置検出方法の第1実施形態を示すフローチャートである。
【
図4】カラー撮像部により取得される対象画像の一例を示す図である。
【
図5】第1実施形態における合焦度、ノイズ強度推定値およびノイズ補正後の合焦度の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に係る合焦位置検出装置の第1実施形態を装備する撮像装置の概略構成を示す図である。
図2Aおよび
図2Bは撮像装置で使用されるウェルプレートの一例を示す図であり、
図2Aはウェルプレートの上面図であり、
図2Bはその斜視図である。ここで、各図における方向を統一的に示すために、
図1に示すようにXYZ直交座標系を設定する。例えばXY平面を水平面、Z軸を鉛直軸と考えることができる。以下においては(-Z)方向を鉛直下向きとする。
【0013】
撮像装置1は、ウェルプレート9の上面に形成されたウェル91と称される凹部に担持された培地中で培養される細胞、細胞コロニー、細菌等(以下、「細胞等」と称し参照符号Cを付す)の生試料を撮像する装置である。ウェルプレート9は、
図2Aおよび
図2Bに示すように、複数のウェル91を有する略板状の試料容器である。ウェルプレート9の材料には、例えば、光を透過する透明な樹脂が使用される。ウェルプレート9の上面には、複数のウェル91が規則的に配列されている。ウェル91は、培地とともに撮像対象物となる複数の細胞を保持する。ただし、本実施形態では、一つのウェル91Aについては細胞等Cを保持させておらず、ノイズ強度の算出のための参照領域として機能させる。この点についてはノイズ強度の算出工程と併せて後で説明する。
【0014】
また、この撮像装置1が対象とするウェルプレートのサイズやウェルの数はこれらに限定されるものではなく任意であり、例えば6ないし384穴のものが一般的に使用されている。また、複数ウェルを有するウェルプレートに限らず、例えばディッシュと呼ばれる平型の容器で培養された細胞等の撮像にも、この撮像装置1を使用することが可能である。ただし、本実施形態では、上面視におけるウェル91の形状は、円形として説明する。ただし、ウェル91の形状は、矩形、角丸矩形等の他の形状であってもよい。
【0015】
ウェルプレート9の各ウェル91には、
図1に示すように培地Mとしての液体が所定量注入され、この液体中において所定の培養条件で培養された細胞等Cが、この撮像装置1の撮像対象物となる。培地Mは適宜の試薬が添加されたものでもよく、また液状でウェル91に投入された後ゲル化するものであってもよい。この撮像装置1では、例えばウェル91の内底面で培養された細胞等Cを撮像対象とすることができる。
【0016】
撮像装置1は、ウェルプレート9を保持するホルダ11と、ホルダ11の上方に配置される照明部12と、ホルダ11の下方に配置されるカラー撮像部13と、これら各部の動作を制御するCPU141を有する制御部14とを備えている。ホルダ11は、試料を培地Mとともに各ウェル91に担持するウェルプレート9の下面周縁部に当接してウェルプレート9を略水平姿勢に保持する。
【0017】
照明部12は、ホルダ11により保持されたウェルプレート9に向けて照明光を出射する。照明光の光源としては、例えば白色LED(Light Emitting Diode)を用いることができる。光源と適宜の照明光学系とを組み合わせたものが、照明部12として用いられる。照明部12により、ウェルプレート9に設けられたウェル91内の細胞等が上方から照明される。
【0018】
ホルダ11により保持されたウェルプレート9の下方に、カラー撮像部13が設けられる。カラー撮像部13には、ウェルプレート9の直下位置に図示を省略する撮像光学系が配置されており、撮像光学系の光軸は鉛直方向(Z方向)に向けられている。
【0019】
カラー撮像部13により、ウェル91内の細胞等が撮像される。具体的には、照明部12から出射されウェル91の上方から液体に入射した光が撮像対象物を照明し、ウェル91底面から下方へ透過した光が、カラー撮像部13の対物レンズ131を含む撮像光学系を介して撮像素子132の受光面に入射する。撮像光学系により撮像素子132の受光面に結像する撮像対象物の像がR色成分、G色成分およびB色成分毎に撮像される。撮像素子132は二次元の受光面を有するエリアイメージセンサであり、例えばCCDセンサまたはCMOSセンサを用いることができる。なお撮像素子132としてはカラー画像を撮像可能なものが用いられる。
【0020】
カラー撮像部13は、制御部14に設けられたメカ制御部146により水平方向(XY方向)および鉛直方向(Z方向)に移動可能となっている。具体的には、メカ制御部146がCPU141からの制御指令に基づき駆動機構15を作動させ、カラー撮像部13を水平方向に移動させることにより、カラー撮像部13がウェル91に対し水平方向に移動する。また鉛直方向への移動によりフォーカス調整がなされる。このフォーカス調整は後で詳述する合焦位置検出方法により検出される合焦位置に基づいて実行される。撮像視野内に1つのウェル91の全体が収められた状態で撮像されるときには、メカ制御部146は、光軸が当該ウェル91の中心と一致するように、カラー撮像部13を水平方向に位置決めする。
【0021】
また、駆動機構15は、カラー撮像部13を水平方向に移動させる際、図において点線水平矢印で示すように照明部12をカラー撮像部13と一体的に移動させる。すなわち、照明部12は、その光中心がカラー撮像部13の光軸と略一致するように配置されており、カラー撮像部13が水平方向に移動するとき、これと連動して移動する。これにより、どのウェル91が撮像される場合でも、当該ウェル91の中心および照明部12の光中心が常にカラー撮像部13の光軸上に位置することとなり、各ウェル91に対する照明条件を一定にして、撮像条件を良好に維持することができる。
【0022】
カラー撮像部13の撮像素子132から出力される画像信号は、制御部14に送られる。すなわち、画像信号は制御部14に設けられたADコンバータ(A/D)143に入力されてデジタル画像データに変換される。CPU141は、受信した画像データに基づき適宜画像処理を実行する画像処理部として機能する。制御部14はさらに、画像データを記憶保存するための画像メモリ144と、CPU141が実行すべきプログラムやCPU141により生成されるデータを記憶保存するためのメモリ145とを有しているが、これらは一体のものであってもよい。CPU141は、メモリ145に記憶された制御プログラムを実行することにより、後述するノイズ強度導出処理、合焦度算出処理、合焦度補正処理、および合焦位置特定処理などを行って合焦位置を検出する。つまり、CPU141は本発明の「ノイズ強度導出部」、「合焦度算出部」、「合焦度補正部」および「合焦位置特定部」として機能し、制御プログラムの一部が本発明の「合焦位置検出用プログラム」の一例に相当している。
【0023】
その他に、制御部14には、インターフェース(IF)部142が設けられている。インターフェース部142は、ユーザからの操作入力の受け付けや、ユーザへの処理結果等の情報提示を行うユーザインターフェース機能のほか、通信回線を介して接続された外部装置との間でのデータ交換を行う機能を有する。ユーザインターフェース機能を実現するために、インターフェース部142には、ユーザからの操作入力を受け付ける入力受付部147と、ユーザへのメッセージや処理結果などを表示出力する表示部148とが接続されている。
【0024】
なお、制御部14は、上記したハードウェアを備えた専用装置であってもよく、またパーソナルコンピュータやワークステーション等の汎用処理装置に、後述する処理機能を実現するための制御プログラムを組み込んだものであってもよい。すなわち、この撮像装置1の制御部14として、汎用のコンピュータを利用することが可能である。汎用処理装置を用いる場合、撮像装置1には、カラー撮像部13等の各部を動作させるために必要最小限の制御機能が備わっていれば足りる。
【0025】
図3は
図1に示す撮像装置において実行される合焦位置検出方法の第1実施形態を示すフローチャートである。また、
図4はカラー撮像部により取得される対象画像の一例を示す図である。合焦位置検出方法は、制御部14に設けられたCPU141が、予め実装された制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0026】
本実施形態における技術的特徴は以下の2点である。まず第1点目は、カラー撮像部13によりウェル91を撮像することで取得されるR色成分、G色成分およびB色成分の対象画像に含まれるノイズの強度が色成分毎に異なることに鑑み、合焦位置を特定する前に色成分毎のノイズ強度推定値を取得している点である。そして、第2点目は、上記複数のノイズ強度推定値に用いてノイズの影響を除外して合焦位置を特定している点である。本実施形態では、ステップS1においてR色成分、G色成分およびB色成分のノイズ強度推定値が既に取得されてメモリ145に記憶されているか否かが判定される。このステップS1での判定結果が「NO」である場合には、CPU141はステップS2およびステップS3を実行した後でステップS4に進む。一方、判定結果が「YES」である場合には、CPU141は直ちにステップS4に進む。
【0027】
ステップS2では、駆動機構15がカラー撮像部13を駆動して、細胞等Cを保持していないウェル91Aが視野に収めるようにカラー撮像部13の水平位置を設定する。つまり、ウェル91Aの直下位置にカラー撮像部13が位置決めされる。そして、次のステップS3において、対物レンズ131の焦点位置がノイズ強度推定用の位置、例えば鉛直方向Zにおいて撮像部高さH1に位置決めされ、ウェル91の撮像が行われる。これによって、色成分毎のノイズ強度推定用の参照画像の画像データが画像メモリ144に記憶される。そして、こうして取得されたカラーの参照画像には細胞等Cの像が含まれておらず、ノイズの影響を反映した像が得られる。そこで、本実施形態では、参照画像に基づいて色成分毎に参照画像に現れるノイズの強度がノイズ強度推定値として導出され、メモリ145に記憶される(ステップS3)。より具体的には、色成分毎に、参照画像内の輝度ばらつき(例えば3σ)をノイズ強度として算出している。
【0028】
次のステップS4では、駆動機構15がカラー撮像部13を駆動して、細胞等Cを保持しているウェル91、例えば中心部に位置するウェル91が視野に収めるようにカラー撮像部13の水平位置を設定する。また、対物レンズ131の焦点位置が所定の初期位置となるようにカラー撮像部13を鉛直方向Zにおいて撮像部高さH1に位置決めする(ステップS5)。この状態でウェル91の撮像が行われ、色成分毎の対象画像、例えば
図4中の「撮像部高さH1」の欄に示すようなR色成分の対象画像G1R、G色成分の対象画像G1GおよびB色成分の対象画像G1Bが取得され、それらの画像データが画像メモリ144に記憶される。なお、同図では、R色成分についてのみ細胞等Cの像GCが含まれているケースが例示されている。
【0029】
次に、焦点の合い具合を指標する合焦度が色成分毎に求められ、メモリ145に記憶される(ステップS6)。例えば上記のように対象画像G1R、G1G、G1Bが取得された直後においては、対象画像G1Rに基づいてR色成分の合焦度が算出され、対象画像G1Gに基づいてG色成分の合焦度が算出され、対象画像G1Bに基づいてB色成分の合焦度が算出される。合焦度としては、従来から周知のもの、例えば(1)対象画像を構成する画素の輝度に応じた指標値(輝度平均値、コントラスト、エッジ強度など)、(2)上記指標値に対して対象画像の面積や値に応じて係数を掛け合わせた指標値、(3)対処画像を構成する画素の輝度ヒストグラムから解析的に算出した指標値などを用いることができる。なお、本実施形態では、各対象画像を構成する画素の輝度を0から255の階調で表し、例えば
図5の(S6)に示すように、対象画像毎の輝度平均値を合焦度としている。
【0030】
次のステップS7では、カラー撮像部13が最も低い撮像部高さH4に到達しているか否かが判定される。未到達であると判定している間、ステップS8とステップS6とが繰り返される。すなわち、ステップS8では、鉛直方向Zにおけるカラー撮像部13の下降により撮像部高さが1段階下げられた後で、変更後の撮像部高さH2(H3またはH4)に位置決めされたカラー撮像部13がウェル91を撮像して対象画像群G2R、G2G、G2B(対象画像群G3R、G3G、G3Bまたは対象画像群G4R、G4G、G4B)を取得する。
【0031】
そして、取得された対象画像群G2R、G2G、G2B(対象画像群G3R、G3G、G3Bまたは対象画像群G4R、G4G、G4B)に基づいて色成分毎に合焦度が算出される(ステップS6)。こうして、カラー撮像部13を撮像部高さH2~H4に位置決めしたときの合焦度がそれぞれ求められる。なお、本実施形態では、1段階当たりの撮像部高さの変更ピッチは一定としている。
【0032】
一方、ステップS7で「YES」と判定される、つまり撮像部高さH1~H4毎および色成分毎に合焦度が求まると、メモリ145からノイズ強度推定値が読み出される。そして、色成分毎に、読み出されたノイズ強度推定値によりステップS6で算出された合焦度が補正される(ステップS9)。本実施形態では、
図5の(S9)に示すように、色成分毎に、ステップS6で算出された合焦度からメモリ145から読み出されたノイズ強度推定値を減じて前記合焦度を弱めるように補正する。本明細書では、当該補正を「ノイズ補正後の合焦度」と称し、これが本発明の「補正合焦度」の一例に相当している。
【0033】
最後に、これら複数のノイズ補正後の合焦度に基づいて合焦位置が特定される(ステップS10)。例えば
図5では、最も高い値を示すときの撮像部高さH2が合焦位置であると特定される。
【0034】
以上のように、本実施形態では、色成分毎にノイズの影響度を示すノイズ強度推定値を求めるとともに当該ノイズ強度推定値に基づいて合焦度を補正し、最終的に補正後の合焦度に基づいて合焦位置を特定している。したがって、対象画像に含まれるノイズの影響を抑制または取り除くことができ、合焦位置を安定して検出することができる。
【0035】
上記したように第1実施形態では、ステップS4、S5、S7、S8を実行することで色成分および撮像部高さ(焦点位置)の組み合わせが互いに異なる複数の対象画像を取得しており、これらが本発明の「第1工程」の一例に相当している。また、ステップS9においてメモリ145からノイズ強度推定値を読み出す工程やステップS3が本発明の「第2工程」の一例に相当している。また、ステップS6、S9、S10がそれぞれ本発明の「第3工程」、「第4工程」および「第5工程」の一例に相当している。
【0036】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、カラー撮像部13を撮像部高さH1~H4に位置決めする毎に色成分毎の合焦度を算出しているが、対象画像の取得完了後に合焦度の算出および合焦度の補正を一括して算出してもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、細胞等Cを保持していないウェル91Aを撮像して得られる画像に基づいてノイズ強度推定値を導出しているが、その他の方法によりノイズ強度推定値を算出してもよい。例えばウェルプレート9の非ウェル領域やウェルプレート9以外を本発明の「参照領域」として当該カラー撮像部13により撮像して取得されるカラー画像に基づいてノイズ強度推定値を導出してもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、参照領域の撮像によりノイズ強度推定用の画像を準備しているが、参照領域を用いることなくノイズ強度推定用の参照画像を取得してもよい。例えば
図4に示すように対象画像の一部には細胞等Cの像GCが映り込んでいるが、対象画像に対してハイパスフィルタ処理を施した画像を上記参照画像として用いてもよい。この場合、ウェル91Aなどの撮像が不要となり、合焦位置の検出に要する時間を短縮することができる。
【0039】
また、上記実施形態では、ウェル91内の細胞等Cを連続的に撮像する前に、特定のウェル91を使用して上記合焦位置検出動作を実行しているが、ウェル91の細胞撮像毎に上記合焦位置検出動作を実行してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、カラー撮像部13から撮像対象物(細胞等C)までの距離を4段階で変更しているが、撮像部高さの段数はこれに限定されるものではなく、多段階である限り任意である。
【0041】
また、上記実施形態では、合焦位置検出用プログラムを含む制御プログラムはメモリ145に予め記憶されているが、インターフェース部142をディスクドライブ(図示省略)と電気的に接続してインストールプログラムを読取るように構成してもよい。つまり、当該ディスクドライブに挿入されるCD-ROM(=Compact Disc - Read Only Memory)やDVD-ROM(=Digital
Versatile Disk - Read Only Memory)などの外部記録媒体に記録されている上記合焦位置検出用プログラムを読み取り可能に構成し、ディスクドライブを読取部として機能させてもよい。つまり、上記した合焦位置検出方法を実行不能な撮像装置1であっても、上記合焦位置検出用プログラムをインストールすることで合焦位置検出用プログラムを組み込んで上記した合焦位置検出方法を実行可能にバージョンアップさせてもよい。なお、記録媒体としてCD-ROMやDVD-ROM以外の記録媒体を用いて合焦位置検出用プログラムの読み取りを行うようにしてもよい。また、通信手段を利用して合焦位置検出用プログラムを読取るように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、焦点位置を光軸に沿って変化させながら撮像対象物をカラー撮像部により撮像して取得される複数の対象画像に基づいて合焦位置を検出する合焦位置検出技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…撮像装置
13…カラー撮像部
91A…ウェル(撮像対象物を保持していない参照領域)
141…CPU(ノイズ強度導出部、合焦度算出部、合焦度補正部、合焦位置特定部)
144…画像メモリ
145…メモリ
C…細胞等(撮像対象物)
G1R~G4R、G1G~G4G、G1B~G4B…対象画像
H1~H4…撮像部高さ
Z…鉛直方向