(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】偏光フィルム、積層偏光フィルム、画像表示パネル、および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231219BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231219BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20231219BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231219BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231219BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20231219BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
C09J201/00
C09J11/06
G02F1/1335 510
G09F9/30 365
G09F9/30 349E
(21)【出願番号】P 2020077226
(22)【出願日】2020-04-24
(62)【分割の表示】P 2020513345の分割
【原出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2018212227
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】山下 智弘
(72)【発明者】
【氏名】澤田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】高田 勝則
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/177134(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/061687(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170036(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/164252(WO,A1)
【文献】特開2016-80829(JP,A)
【文献】特開2007-264337(JP,A)
【文献】特開2015-28607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00-43/00
C09J11/06
C09J201/00
G02F 1/1335
G09F 9/30
H05B33/00-33/28
H05B44/00
H05B45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光膜の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが貼り合わされた偏光フィルムであって、
前記偏光膜は、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素が吸着配向して形成されており、
前記接着剤層は、ニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物を含
み、かつ水系接着剤から形成される層であることを特徴とする偏光フィルム。
【請求項2】
前記ニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物が、N-オキシル化合物であることを特徴とする請求項1記載の偏光フィルム。
【請求項3】
前記接着剤層中の、前記ニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物の含有量が70重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の偏光フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の偏光フィルムが光学層に貼り合わされていることを特徴とする積層偏光フィルム。
【請求項5】
画像表示セルに、請求項1~3のいずれかに記載の偏光フィルム、または請求項4記載の積層偏光フィルムが貼り合わされていることを特徴とする画像表示パネル。
【請求項6】
請求項5記載の画像表示パネルの偏光フィルムまたは積層偏光フィルム側に、前面透明部材を備えることを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルム、積層偏光フィルム、画像表示パネル、および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置や有機EL表示装置等の各種画像表示装置に用いる偏光膜としては、高透過率と高偏光度を兼ね備えていることから、染色処理された(ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を含有する)ポリビニルアルコール系フィルムが用いられている。当該偏光膜は、ポリビニルアルコール系フィルムに、浴中にて、例えば、膨潤、染色、架橋、延伸等の各処理を施した後に、洗浄処理を施してから、乾燥することにより製造される。また前記偏光膜は、通常、その片面または両面にトリアセチルセルロース等の保護フィルムが接着剤を用いて貼合された偏光フィルム(偏光板)として用いられている。
【0003】
前記偏光フィルムは、必要に応じ、他の光学層を積層して積層偏光フィルム(光学積層体)として用いられ、前記偏光フィルムあるいは前記積層偏光フィルム(光学積層体)は、液晶セルや有機EL素子等の画像表示セルと、視認側における前面透明板(ウインドウ層)やタッチパネル等の前面透明部材との間に粘着剤層や接着剤層を介して貼合されて、上記の各種画像表示装置として用いられる。
【0004】
近年、このような各種画像表示装置は、携帯電話やタブレット端末等のモバイル機器に加えて、カーナビゲーション装置やバックモニター等の車載用の画像表示装置としても使用される等、その用途は広がっている。これに伴い、前記偏光フィルムや前記積層偏光フィルムには、従来要求されてきたよりも、より過酷な環境下(例えば、高温環境下)における高い耐久性が求められており、そのような耐久性を確保することを目的とした偏光フィルムが提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、アゾ系化合物等の二色性染料を用いる染料系偏光膜は、一般に、ヨウ素系偏光膜(ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素が吸着配向して形成される偏光膜)と比較して、高温且つ高湿条件下における耐光性が優れていることが知られており(特許文献2)、当該染料系偏光膜を有する偏光板の耐光性試験での色抜けを改善させるために、当該偏光板に使用する接着剤にヒンダードアミン系化合物を含有させることが開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2012-516468号公報
【文献】特開2001-240762号公報
【文献】特開2005-338343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、上記のように、染色系偏光膜よりも高温且つ高湿条件下における耐光性に劣ると言われるヨウ素系偏光膜を用いた偏光フィルムや積層偏光フィルムは、高温環境下に曝された場合に、偏光膜に着色が生じ、その単体透過率が低下する問題があった。とくに、上記の偏光フィルムや積層偏光フィルムを、画像表示セルと前面透明部材との間に粘着剤層または接着剤層を介して貼合することにより構成される画像表示装置は、偏光膜の着色が著しく、単体透過率の低下が顕著になる問題があった。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明は、高温環境下において、偏光膜の着色による単体透過率の低下の抑制効果に優れる偏光フィルムを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、上記の偏光膜の着色による単体透過率の低下の抑制効果に優れる偏光フィルム、積層偏光フィルム、画像表示パネル、および画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、偏光膜の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが貼り合わされた偏光フィルムであって、前記偏光膜は、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素が吸着配向して形成されており、前記接着剤層は、ニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物を含む偏光フィルムに関する。
【0011】
また、本発明は、前記偏光フィルムが光学層に貼り合わされている積層偏光フィルムに関する。
【0012】
また、本発明は、画像表示セルに、前記偏光フィルム、または前記積層偏光フィルムが貼り合わされている画像表示パネルに関する。
【0013】
また、本発明は、前記画像表示パネルの偏光フィルムまたは積層偏光フィルム側に、前面透明部材を備える画像表示装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の偏光フィルムにおける効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0015】
本発明の偏光フィルムは、偏光膜の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが貼り合わされており、前記接着剤層がニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物を含有する。また、前記偏光膜は、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素が吸着配向して形成される。上記の特許文献2および3の記載のとおり、一般的にヨウ素系偏光膜は染料系偏光膜よりも耐熱性等の耐久性に劣ると言われているが、この理由は、偏光膜中に含まれるヨウ素が、高温環境下でポリビニルアルコールの脱水反応で起きるポリエン化という劣化現象を促進させるためと推認される。
【0016】
一方、本発明の前記接着剤層に含まれるニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物は、高温環境下に曝された場合、当該ニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物の一部が接着剤層から溶出して、当該接着剤層に近接するヨウ素系偏光膜に染み入ることが推定される。とくに、前面透明部材、前記偏光フィルム、および画像表示セルが、この順に設けられて構成される画像表示装置において、前記接着剤層に含まれるニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物は、高温環境下に曝された場合、内部に存在する水分(粘着剤層や接着剤層等に存在する水分)とともに、画像表示装置内部を移動(滞留)するため、当該ニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物の一部は上記のヨウ素系偏光膜に染み入り易いことが推定される。その結果、偏光膜中のニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物が高温環境下での上記のポリエン化反応において発生するラジカルを効率よく捕捉できると推定されるため、本発明の偏光フィルムは、偏光膜の着色による単体透過率の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<ニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物>
本発明のニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物としては、室温、空気中で比較的に安定なラジカルを有する観点から、N-オキシル化合物(官能基として、C-N(-C)-O
・を有する化合物(O
・はオキシラジカルを示す))が挙げられ、公知のものが使用できる。N-オキシル化合物としては、例えば、以下の構造の有機基を有する化合物などが挙げられる。前記ニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【化1】
(一般式(1)中、R
1は、オキシラジカル表し、R
2からR
5は、独立して、水素原子、または炭素原子数が1~10のアルキル基を表し、nは0または1を表す。)なお、一般式(1)中の、点線部の左は任意の有機基を示す。
【0018】
上記の有機基を有する化合物としては、例えば、以下の一般式(2)~(5)で表わされる化合物などが挙げられる。
【化2】
(一般式(2)中、R
1からR
5、およびnは、上記と同様であり、R
6は水素原子、または炭素原子数が1~10のアルキル基、アシル基、もしくはアリール基を表し、nは0または1を表す。)
【化3】
(一般式(3)中、R
1からR
5、およびnは、上記と同様であり、R
7およびR
8は、独立して、水素原子、または炭素原子数が1~10のアルキル基、アシル基、もしくはアリール基を表す。)
【化4】
(一般式(4)中、R
1からR
5、およびnは、上記と同様であり、R
9からR
11は、独立して、水素原子、または炭素原子数が1~10のアルキル基、アシル基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、もしくはアリール基を表す。)
【化5】
(一般式(5)中、R
1からR
5、およびnは、上記と同様であり、R
12は、水素原子、または炭素原子数が1~10のアルキル基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、もしくはアリール基を表す。)
【0019】
前記一般式(1)~(5)中、R2からR5は、入手容易性の観点から、炭素原子数が1~6のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数が1~3のアルキル基であることがより好ましい。また、前記一般式(2)中、入手容易性の観点から、R6は水素原子、または炭素原子数が1~10のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。また、前記一般式(3)中、入手容易性の観点から、R7およびR8は独立して水素原子、または炭素原子数が1~10のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。また、前記一般式(4)中、入手容易性の観点から、R9からR11は、水素原子、または炭素原子数が1~10のアルキル基であることが好ましい。また、前記一般式(5)中、入手容易性の観点から、R12は、ヒドロキシ基、アミノ基、またはアルコキシ基であることが好ましい。前記一般式(1)~(5)中、nは、入手容易性の観点から、1であることが好ましい。
【0020】
また、前記N-オキシル化合物としては、例えば、特開2003-64022号公報、特開平11-222462号公報、特開2002-284737号公報、国際公開第2016/047655号などに記載されたN-オキシル化合物が挙げられる。
【0021】
また、前記ニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物としては、例えば、以下の化合物などが挙げられる。
【化6】
(一般式(6)中、Rは、水素原子、または炭素原子数が1~10のアルキル基、アシル基、もしくはアリール基を表す。)
【化7】
【化8】
【0022】
また、前記ニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物は、ポリエン化反応において発生するラジカルを効率よく捕捉できる観点から、分子量が、1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましい。
【0023】
<偏光フィルム>
本発明の偏光フィルムは、偏光膜の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが貼り合わされており、前記偏光膜は、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素が吸着配向して形成されており、前記接着剤層は、前記ニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物を含む。
【0024】
<偏光膜>
本発明の偏光膜は、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素が吸着配向して形成される。前記ポリビニルアルコール(PVA)系フィルムは、可視光領域において透光性を有し、ヨウ素を分散吸着するものを特に制限なく使用できる。また、通常、原反として用いる、PVA系フィルムは、厚さが1~100μm程度であることが好ましく、1~50μm程度であることがより好ましい。
【0025】
前記ポリビニルアルコール系フィルムの材料としては、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が挙げられる。前記ポリビニルアルコールの誘導体としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール;エチレン、プロピレン等のオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、およびそのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したもの等が挙げられる。前記ポリビニルアルコールは、平均重合度が100~10,000程度であることが好ましく、1,000~10,000程度であることがより好ましく、1,500~4,500程度であることがさらに好ましい。また、前記ポリビニルアルコールは、ケン化度が80~100モル%程度であることが好ましく、95モル%~99.95モル程度であることがより好ましい。なお、前記平均重合度および前記ケン化度は、JIS K 6726に準じて求めることができる。
【0026】
前記偏光膜は、前記ヨウ素の含有量が1重量%以上15重量%以下であることが好ましい。前記偏光膜は、前記ヨウ素の含有量が、耐久性試験時の色抜けを抑制する観点から、1.5重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましく、そして、ポリエン化を防止する観点から、12重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
【0027】
前記偏光膜は、例えば、前記ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウム等の水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラ等の不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウム等の水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0028】
前記偏光膜は、厚みが、1~50μm程度であることが好ましく、1~25μm程度であることがより好ましい。とくに、厚みが8μm以下の偏光膜を得るためには、上述した特開2009-098653号公報、特開2012-073580号公報、特開2013-238640号公報、特許第4691205号明細書、特許第4751481号明細書等に開示された、前記ポリビニルアルコール系フィルムとして、熱可塑性樹脂等の樹脂基材上に製膜されたポリビニルアルコール系樹脂層を含む積層体を用いる薄型の偏光膜の製造方法が適用できる。
【0029】
<接着剤層>
本発明の接着剤層は、接着剤により形成される。前記接着剤としては、偏光フィルムに用いられている各種の接着剤を適用でき、例えば、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等が挙げられる。これら接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤(水系接着剤)として用いられ、0.5~60重量%の固形分を含有してなる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系接着剤が好ましく、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系接着剤がより好ましい。
【0030】
前記水系接着剤は、架橋剤を含んでいてもよい。前記架橋剤としては、通常、接着剤を構成するポリマー等の成分と反応性を有する官能基を1分子中に少なくとも2つ有する化合物が用いられ、例えば、アルキレンジアミン類;イソシアネート類;エポキシ類;アルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン等のアミノ-ホルムアルデヒド等が挙げられる。接着剤中の架橋剤の配合量は、接着剤を構成するポリマー等の成分100重量部に対して、通常、10~60重量部程度である。
【0031】
前記接着剤としては、上記の他、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等の活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。前記活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、(メタ)アクリレート系接着剤が挙げられる。前記(メタ)アクリレート系接着剤における硬化性成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、炭素数が1~20の鎖状アルキル(メタ)アクリレート、脂環式アルキル(メタ)アクリレート、多環式アルキル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリレート系接着剤は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N‐メチロール(メタ)アクリルアミド、N‐メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N‐エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素含有モノマーを含んでいてもよい。(メタ)アクリレート系接着剤は、架橋成分として、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート等の多官能モノマーを含んでいてもよい。また、カチオン重合硬化型接着剤としてエポキシ基やオキセタニル基を有する化合物も使用することができる。エポキシ基を有する化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。
【0032】
前記接着剤は、必要に応じて適宜の添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤、エチレンオキシド等の接着促進剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、染料、加工助剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤、可塑剤、レベリング剤、発泡抑制剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤等が挙げられる。
【0033】
前記接着剤の塗布は、後述する透明保護フィルム側(または後述する機能層側)、前記偏光膜側のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。貼り合わせ後には、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着剤層を形成する。前記乾燥工程の後には、必要に応じ、紫外線や電子線を照射することができる。前記接着剤層の厚さは、特に制限されず、水系接着剤等を用いる場合には、30~5000nm程度であることが好ましく、100~1000nm程度であることがより好ましく、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等を用いる場合には、0.1~100μm程度であることが好ましく、0.5~10μm程度であることがより好ましい。
【0034】
前記接着剤層は、接着剤層中、前記ニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物の含有量が70重量%以下であることが好ましい。前記接着剤層は、高温環境下における偏光膜の着色による単体透過率の低下を抑制する観点から、接着剤層中、1重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることがさらに好ましく、そして、60重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましい。
【0035】
<透明保護フィルム>
本発明の透明保護フィルムは、特に制限されず、偏光フィルムに用いられている各種の透明保護フィルムを用いることができる。前記透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロール等のセルロールエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、およびこれらの混合物があげられる。また、前記透明保護フィルムは、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂から形成される硬化層を用いることができる。これらの中でも、セルロールエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好適である。
【0036】
前記透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性等の観点から、1~500μm程度であることが好ましく、1~300μm程度あることがより好ましく、5~100μm程度であることがさらに好ましい。
【0037】
前記透明保護フィルムを、前記偏光膜の両面に貼り合わせる場合、その両面の透明保護フィルムは、同じものであってもよく、異なっていてもよい。
【0038】
前記透明保護フィルムは、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常、40~200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80~300nmの範囲に制御される。前記透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0039】
前記位相差板としては、例えば、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したもの等が挙げられる。位相差板の厚さは特に制限されないが、20~150μm程度が一般的である。なお、位相差を有しない透明保護フィルムに前記位相板を貼り合わせて使用してもよい。
【0040】
前記透明保護フィルムには、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、着色剤等の任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。とくに、前記透明保護フィルムに紫外線吸収剤を含む場合、偏光フィルムの耐光性を向上できる。
【0041】
前記透明保護フィルムの偏光膜を貼り合わせない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層等の機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等の機能層は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0042】
本発明の偏光フィルムは、前記偏光膜の少なくとも一方の面が、前記接着剤層を介して前記透明保護フィルムに貼り合わされていればよく、前記偏光膜の他面(他方の面)と前記透明保護フィルム、あるいは前記偏光膜の他面(他方の面)と前記機能層は、通常、粘着剤層または前記接着剤層を介して貼り合わされる。また、前記偏光膜の他面(他方の面)には、前記接着剤層を介して、後述する画像表示セルや前面透明部材を直接貼り合わせることもできる。
【0043】
前記粘着剤層を形成する粘着剤としては、偏光フィルムに用いられている各種の粘着剤を適用でき、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルポロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、アクリル系粘着剤が好適である。前記アクリル系粘着剤は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含有するものであり、例えば、特開2017-75998号公報等に記載のアクリル系粘着剤が例示できる。
【0044】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤を剥離処理したセパレータ等に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後に、偏光膜等に転写する方法、または前記粘着剤を偏光膜等に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する方法等が例示できる。前記粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1~100μm程度であり、2~50μm程度であることが好ましい。
【0045】
前記透明保護フィルムと前記偏光膜、あるいは前記偏光膜と前記機能層は、表面改質処理層、易接着剤層、ブロック層、屈折率調整層等の介在層を介して積層されていてもよい。
【0046】
前記表面改質層を形成する表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、ケン化処理等が挙げられる。
【0047】
前記易接着層を形成する易接着剤としては、例えば、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリウレタン骨格、シリコーン系、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリビニルアルコール骨格等を有する各種樹脂を含む形成材が挙げられる。前記易接着層は、通常、保護フィルムに予め設けておき、当該保護フィルムの易接着層側と偏光膜とを、前記粘着剤層または前記接着剤層により積層する。
【0048】
前記ブロック層は、透明保護フィルム等から溶出されるオリゴマーやイオン等の不純物が偏光膜中に移行(侵入)することを防止するため機能を有する層である。前記ブロック層は、透明性を有し、かつ透明保護フィルム等から溶出される不純物が防止できる層であればよく、ブロック層を形成する材としては、例えば、ウレタンプレポリマー系形成材、シアノアクリレート系形成材、エポキシ系形成材等が挙げられる。
【0049】
前記屈折率調整層は、前記透明保護フィルムと偏光膜等屈折率の異なる層間での反射に伴う透過率の低下を抑制するために設けられる層である。前記屈折率調整層を形成する屈折率調整材としては、例えば、シリカ系、アクリル系、アクリル-スチレン系、メラミン系等を有する各種樹脂及び添加剤を含む形成剤が挙げられる。
【0050】
<積層偏光フィルム>
本発明の積層偏光フィルム(光学積層体)は、前記偏光フィルムが光学層に貼り合わされているものである。前記光学層は特に限定はないが、例えば、反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルム等の液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。前記積層偏光フィルムとしては、特に、前記偏光フィルムに更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光フィルムまたは半透過型偏光フィルム、前記偏光フィルムに更に位相差板が積層されてなる楕円偏光フィルムまたは円偏光フィルム、前記偏光フィルムに更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光フィルム、あるいは前記偏光フィルムに更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光フィルムが挙げられる。
【0051】
前記偏光フィルム、あるいは前記積層偏光フィルムの一方の面あるいは両方の面には、液晶セルや有機EL素子等の画像表示セルと、視認側における前面透明板やタッチパネル等の前面透明部材等の他の部材を貼り合わせるための接着剤層が付設されてもよい。当該接着剤層としては、粘着剤層が好適である。前記粘着剤層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系重合体を含む粘着剤のように、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性を示し、耐候性や耐熱性等に優れるものが好ましく用いられる。
【0052】
前記偏光フィルムや前記積層偏光フィルムの片面または両面への粘着剤層の付設は、適宜な方式で行いうる。粘着剤層の付設としては、例えば、粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗布方式等の適宜な展開方式で前記偏光フィルムや前記積層偏光フィルム上に直接付設する方式、あるいは、セパレータ上に粘着剤層を形成して、それを前記偏光フィルムや前記積層偏光フィルム上に移着する方式等が挙げられる。前記粘着剤層の厚さは、使用目的や接着力等に応じて適宜に決定でき、一般には1~500μmであり、5~200μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましい。このように、前記偏光フィルムや前記積層偏光フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層が設けられたものを、粘着剤層付き偏光フィルム、または粘着剤層付き積層偏光フィルムという。
【0053】
前記粘着剤層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で粘着剤層の汚染等が防止できる。前記セパレータとしては、例えば、プラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したもの等が用いられる。
【0054】
<画像表示パネルおよび画像表示装置>
本発明の画像表示パネルは、画像表示セルに、前記偏光フィルム、または前記積層偏光フィルムが貼り合わされているものである。また、本発明の画像表示装置は、前記画像表示パネルの偏光フィルムまたは積層偏光フィルム側(視認側)に、前面透明部材を備えるものである。
【0055】
前記画像表示セルとしては、例えば、液晶セルや有機ELセル等が挙げられる。前記液晶セルとしては、例えば、外光を利用する反射型液晶セル、バックライト等の光源からの光を利用する透過型液晶セル、外部からの光と光源からの光の両者を利用する半透過半反射型液晶セルのいずれを用いてもよい。前記液晶セルが光源からの光を利用するものである場合、画像表示装置(液晶表示装置)は、画像表示セル(液晶セル)の視認側と反対側にも偏光フィルムが配置され、さらに光源が配置される。当該光源側の偏光フィルムと液晶セルとは、適宜の接着剤層を介して貼り合せられていることが好ましい。前記液晶セルの駆動方式としては、例えば、VAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)等の任意なタイプのものを用いうる。
【0056】
前記有機ELセルとしては、例えば、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成したもの等が好適に用いられる。前記有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、これらの発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体、あるいは正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々層構成が採用され得る。
【0057】
前記画像表示セルの視認側に配置される前面透明部材としては、例えば、前面透明板(ウインドウ層)やタッチパネル等が挙げられる。前記前面透明板としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、例えば、アクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂のような透明樹脂板、あるいはガラス板等が用いられる。前記タッチパネルとしては、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波方式等の各種タッチパネルや、タッチセンサー機能を備えるガラス板や透明樹脂板等が用いられる。前記前面透明部材として静電容量方式のタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルよりもさらに視認側に、ガラスや透明樹脂板からなる前面透明板が設けられることが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
<偏光膜の作製>
平均重合度が2,400、ケン化度が99.9モル%、厚みが45μmであるポリビニルアルコールフィルムを用意した。ポリビニルアルコールフィルムを、周速比の異なるロール間で、20℃の膨潤浴(水浴)中に30秒間浸漬して膨潤しながら搬送方向に2.2倍に延伸し(膨潤工程)、続いて、30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)中で最終的に得られる偏光膜のヨウ素濃度が3.60重量%となるように濃度を調整しながら30秒間浸漬して染色しながら元のポリビニルアルコールフィルム(搬送方向に全く延伸していないポリビニルアルコールフィルム)を基準にして搬送方向に3.3倍に延伸した(染色工程)。次いで、染色したポリビニルアルコールフィルムを、40℃の架橋浴(ホウ酸濃度が3.0重量%、ヨウ化カリウム濃度が3.0重量%である水溶液)中で28秒間浸漬して元のポリビニルアルコールフィルムを基準にして搬送方向に3.6倍まで延伸した(架橋工程)。さらに、得られたポリビニルアルコールフィルムを、61℃の延伸浴(ホウ酸濃度が4.0重量%、ヨウ化カリウム濃度が5.0重量%である水溶液)中で60秒間浸漬して元のポリビニルアルコールフィルムを基準にして搬送方向に6.0倍まで延伸した(延伸工程)後、35℃の洗浄浴(ヨウ化カリウム濃度が2.0重量%である水溶液)中で10秒間浸漬した(洗浄工程)。洗浄したポリビニルアルコールフィルムを、40℃で30秒間乾燥して偏光膜を作製した。偏光膜の厚みは18μmであった。
【0060】
[偏光膜中のヨウ素含有量(重量%)の測定方法]
偏光膜について、蛍光X線分析装置(リガク社製、商品名「ZSX-PRIMUS IV」、測定径:ψ20mm)を用いて、下記式を用いてヨウ素濃度(重量%)を求めた。
ヨウ素濃度(wt%)=14.474×(蛍光X線強度)/(フィルム厚み)(kcps/μm)なお、濃度を算出する際の係数は測定装置によって異なるが、当該係数は適切な検量線を用いて求めることができる。
【0061】
<偏光フィルムの作製>
接着剤として、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール樹脂(平均重合度が1,200、ケン化度が98.5モル%、アセトアセチル化度が5モル%)とメチロールメラミンと一般式(9)で示されるニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物とを重量比3:1:4で含有する水溶液を用いた。この接着剤を用いて、上記で得られた偏光膜の両面に、透明保護フィルムとして、ハードコート層を有する厚み47μmのトリアセチルセルロースフィルム(透湿度が342g/(m
2・24h)、コニカミノルタ製、商品名「KC4UYW」)をロール貼合機で貼り合わせた後、引き続きオーブン内で加熱乾燥(温度が60℃、時間が4分間)させて、偏光膜の両面に透明保護フィルムが貼り合わせられた偏光フィルムを作製した。偏光フィルムの単体透過率は39.7%であった。
【化9】
【0062】
<アクリル系粘着剤の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99部、4-ヒドロキシブチルアクリレート1部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)180万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。その後、得られたアクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、イソシアネート架橋剤(東ソー社製、商品名「タケネートD110N」、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物)0.02部、シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「X-41-1056」)0.2部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。次いで、上記で得られたアクリル系粘着剤組成物の溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製、商品名「MRF38」、セパレータフィルム)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布し、90℃で1分間乾燥を行い、セパレータフィルムの表面に粘着剤層を形成した。次いで、上記で作製した偏光フィルムの一方の面に、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写して、粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
【0063】
<疑似画像表示装置(積層体)の作製>
上記で得られた粘着剤層付き偏光フィルムを、偏光膜の吸収軸が長辺となるように45×40mmのサイズに切断し、粘着剤層を介してガラス板(疑似画像表示セル)を貼り合わせ、偏光フィルムの他方の面に厚み200μmのアクリル酸モノマーフリー粘着剤(日東電工(株)製、商品名「LUCIACS CS9868」)を介して別のガラス板(疑似前面透明部材)を貼り合わせて、疑似画像表示装置(積層体)を作製した。
【0064】
[高温環境下における単体透過率の評価]
上記で得られた疑似画像表示装置(積層体)を、温度105℃の熱風オーブン内に48時間静置し、投入(加熱)前後の単体透過率(ΔTs)を測定した。単体透過率は、分光光度計(村上色彩技術研究所(株)製、製品名「DOT-3」)を用いて測定し、以下の基準で評価した。当該単体透過率は、JlS Z 8701-1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。なお、測定波長は、380~700nm(10nm毎)である。結果を表1に示す。
ΔTs(%)=Ts48-Ts0
ここで、Ts0は加熱前の疑似画像表示装置(積層体)の単体透過率であり、Ts48は48時間加熱後の疑似画像表示装置(積層体)の単体透過率である。
○:5≧ΔTs(%)≧0
×:ΔTs(%)>5、あるいはΔTs(%)<0
【0065】
前記ΔTs(%)は、5≧ΔTs(%)≧0であることが好ましく、4≧ΔTs(%)≧0であることがより好ましい。
【0066】
<実施例2>
<偏光膜、偏光フィルム、疑似画像表示装置(積層体)の作製>
偏光フィルムの作製において、使用する両方の接着剤に一般式(10)で示されるニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物をポリビニルアルコール樹脂との重量比で4:3となるように添加し、接着剤の硬化反応に影響を与えないように、ニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物に対してモル比で1:1となるように水酸化カリウムを添加して、pHを調整したこと(中和したこと)以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光膜、両面保護偏光フィルム、および疑似画像表示装置(積層体)を作製した。偏光フィルムの単体透過率は40.0%であった。
【化10】
【0067】
<実施例3>
<偏光膜、偏光フィルム、疑似画像表示装置(積層体)の作製>
偏光フィルムの作製において、使用する両方の接着剤に一般式(9)の代わりに、一般式(8)で示されるニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光膜、両面保護偏光フィルム、および疑似画像表示装置(積層体)を作製した。偏光フィルムの単体透過率は39.6%であった。
【0068】
<実施例4>
<偏光膜、偏光フィルム、疑似画像表示装置(積層体)の作製>
偏光フィルムの作製において、接着剤として、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール樹脂とメチロールメラミンと一般式(6)で示されるニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物とを重量比7:2:1で含有する水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光膜、両面保護偏光フィルム、および疑似画像表示装置(積層体)を作製した。偏光フィルムの単体透過率は39.7%であった。
【0069】
<比較例1>
<偏光膜、偏光フィルム、疑似画像表示装置(積層体)の作製>
偏光フィルムの作製において、一般式(9)で示されるニトロキシラジカル、またはニトロキシド基を有する化合物を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光膜、偏光フィルム、および疑似画像表示装置(積層体)を作製した。偏光フィルムの単体透過率は39.6%であった。
【0070】
上記で得られた実施例および比較例の疑似画像表示装置(積層体)を用い、上記の[高温環境下における単体透過率の評価]を行った。結果を表1に示す。
【0071】