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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/533 20210101AFI20231219BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20231219BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20231219BHJP
   H01M 50/536 20210101ALN20231219BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M10/04 W
H01G11/70
H01M50/536
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020085254
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021180125
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(73)【特許権者】
【識別番号】316014102
【氏名又は名称】株式会社ブルーエナジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】須貝 友和
(72)【発明者】
【氏名】中村 純
(72)【発明者】
【氏名】伊波 功
(72)【発明者】
【氏名】星野 元樹
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/168466(WO,A1)
【文献】特開2019-091563(JP,A)
【文献】特開2013-065552(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125271(WO,A1)
【文献】特開2016-225117(JP,A)
【文献】特開2019-061881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 10/04
H01G 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が積層され且つ扁平な電極体と、
前記電極体における該電極体の厚さ方向と直交する所定方向の端部に接続される集電体と、
前記集電体と共に前記電極体の前記端部を挟み込む板状部材と、を備え、
前記電極体の前記端部の厚さは、前記厚さ方向から見た該電極体の中央部の厚さより小さく、且つ、該端部における前記中央部側の部位では該中央部側に向かうに伴い厚さが漸増し、
前記板状部材は、前記電極体の前記端部に接合されている接合部と、該接合部から前記電極体の前記中央部側に延びる第一延伸部と、を有し、
前記第一延伸部は、前記接合部に対して傾斜した状態で前記端部における前記中央部側の部位と接触しながら該中央部側の部位の表面に沿って延び、且つ、少なくとも先端が前記中央部側の部位の表面から離間している、蓄電素子。
【請求項2】
前記電極体を収容するケースを備え、
前記第一延伸部の前記先端は、前記厚さ方向において、前記中央部の端縁より内側に位置する、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
電極が積層され且つ扁平な電極体と、
前記電極体における該電極体の厚さ方向と直交する所定方向の端部に接続される集電体と、
前記集電体と共に前記電極体の前記端部を挟み込む板状部材と、
前記電極体を収容するケースと、を備え、
前記電極体の前記端部の厚さは、前記厚さ方向から見た該電極体の中央部の厚さより小さく、
前記板状部材は、前記電極体の前記端部に接合されている接合部と、該接合部から前記電極体の前記中央部側に延びる第一延伸部と、前記接合部から前記所定方向の前記第一延伸部側と反対側に延びる第二延伸部と、を有し、
前記第一延伸部は、前記接合部に対して傾斜した状態で前記電極体の表面に沿って延び、且つ、少なくとも先端が前記電極体の表面から離間しており、
前記第一延伸部の前記先端は、前記厚さ方向において、前記中央部の端縁より内側に位置し、
前記第二延伸部は、前記接合部に対して前記厚さ方向における前記第一延伸部と同じ側に傾斜した状態で延び、
該第二延伸部の先端は、前記厚さ方向から見て前記電極体の端縁より内側で且つ前記厚さ方向において前記第一延伸部の先端より前記内側に位置する、蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極が積層された電極体と該電極体に接合されている板状部位又は板状部材とを備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、捲回電極群を備える二次電池が知られている(特許文献1参照)。具体的に、この二次電池は、缶体と蓋とからなる電池容器を備える。缶体は、捲回電極群を収容するものである。蓋板には、外部端子が設けられている。外部端子は、集電体を介して捲回電極群に電気的に接続されている。捲回電極群は、帯状の電極をセパレータを介在させて捲回軸周りに扁平形状に捲回することで積層構造とされている。この捲回電極群では、捲回軸方向の両端部が、図9に示すように、缶体101の外方に向かって押し広げられることで二つの束状電極接続部111に分離されている。
【0003】
また、集電体102の一対の絞り加工部(捲回電極群110との接続部)のそれぞれは、捲回電極群110の高さ方向に延在する主板104とリブ板105とにより断面L字形状を呈している接合板103を有している。
【0004】
捲回電極群110の捲回軸方向の両端部において、二つの束状電極接続部111は、缶体101の両幅広面101a側のそれぞれの面において集電体102の接合板103を構成する主板104と超音波接合に接続されている。このとき、二つのリブ板105のそれぞれは、主板104との境界部から先端まで電極の積層部分(捲回電極群110)と接している。
【0005】
以上の二次電池100では、捲回電極群110での電極の捲回数が増加した場合等に、束状電極接続部111に対するリブ板105に沿った部位(捲回電極群110の部位)表面の角度が急になるため、リブ板105の先端(主板104から離れる方向の先端)のエッジ(角部)が該部位に食い込みやすく、このエッジの食い込みによって捲回電極群110を構成する電極が損傷するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5663415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本実施形態は、電極体に接続される板状部位又は板状部材のエッジによる該電極体の損傷が抑えられる蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の蓄電素子は、
電極が積層され且つ扁平な電極体と、
前記電極体における該電極体の厚さ方向と直交する所定方向の端部に接続される集電体と、
前記集電体と共に前記電極体の前記端部を挟み込む板状部材と、を備え、
前記電極体の前記端部の厚さは、前記厚さ方向から見た該電極体の中央部の厚さより小さく、
前記板状部材は、前記電極体の前記端部に接合されている接合部と、該接合部から前記電極体の前記中央部側に延びる第一延伸部と、を有し、
前記第一延伸部は、前記接合部に対して傾斜した状態で前記電極体の表面に沿って延び、且つ、少なくとも先端が前記電極体の表面から離間している。
【0009】
かかる構成によれば、第一延伸部の先端が電極体の表面から離間しているため、蓄電素子や電極体に振動等が加わっても、第一延伸部の先端(エッジ)が電極体の表面に接触せず、これにより、前記エッジの食い込み等に起因する電極体の損傷が抑えられる。
【0010】
前記蓄電素子は、
前記電極体を収容するケースを備え、
前記第一延伸部の前記先端は、前記厚さ方向において、前記中央部の端縁より内側に位置してもよい。
【0011】
かかる構成によれば、第一延伸部の先端が厚さ方向において、電極体の中央部の端縁より内側に位置しているため、第一延伸部の先端と、ケースや該ケースと電極体との間における前記厚さ方向の前記中央部の端縁位置又はその外側に位置する他の部材と、の接触が抑えられ、これにより、前記先端(エッジ)が接触することに起因するケースや前記他の部材の損傷が抑えられる。
【0012】
また、前記蓄電素子では、
前記板状部材は、前記接合部から前記所定方向の前記第一延伸部側と反対側に延びる第二延伸部を有し、
前記第二延伸部は、前記接合部に対して前記厚さ方向における前記第一延伸部と同じ側に傾斜した状態で延び、
該第二延伸部の先端は、前記厚さ方向から見て前記電極体の端縁より内側で且つ前記厚さ方向において前記第一延伸部の先端より前記内側に位置してもよい。
【0013】
かかる構成によれば、接合部から電極体の端縁側に延びている第二延伸部の先端がケースにより接触し難く、これにより、第二延伸部の先端(エッジ)が接触することによるケースの損傷がより確実に抑えられる。
【0014】
また、本実施形態の蓄電素子は、
外部端子と、
電極が積層され且つ扁平な電極体と、
前記電極体における該電極体の厚さ方向と直交する所定方向の端部に接続される板状部位を有し且つ前記外部端子と前記電極体とを導通させる集電体と、を備え、
前記電極体の前記端部の厚さは、前記厚さ方向から見た該電極体の中央部の厚さより小さく、
前記板状部位は、前記電極体の前記端部に接合されている接合部と、該接合部から前記電極体の前記中央部側に延びる第三延伸部と、を有し、
前記第三延伸部は、前記接合部に対して傾斜した状態で前記電極体の表面に沿って延び、且つ、少なくとも先端が前記電極体の表面から離間している。
【0015】
かかる構成によれば、集電体における電極体との接続部位が板状の部位(板状部位)であっても、該部位のエッジ(第一延伸部の先端)が電極体の表面から離間しているため、蓄電素子や電極体に振動等が加わったときに、第一延伸部の先端(エッジ)が電極体の表面に接触せず、これにより、前記エッジの食い込み等に起因する電極体の損傷が抑えられる。
【発明の効果】
【0016】
以上より、本実施形態によれば、電極体に接続される板状部位又は板状部材のエッジによる該電極体の損傷が抑えられる蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
図2図2は、前記蓄電素子の分解斜視図である。
図3図3は、前記蓄電素子が備える電極体の構成を説明するための図である。
図4図4は、蓋板に外部端子と集電体と電極体と板状部材とが組付けられた状態の図である。
図5図5は、図4におけるV-V位置の断面図である。
図6図6は、図5においてVIで示す位置の拡大図である。
図7図7は、電極体に接続された状態の板状部材の拡大図である。
図8図8は、前記蓄電素子を備える蓄電装置の模式図である。
図9図9は、従来の二次電池における捲回電極群と集電体との接続部位の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図1図7を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0019】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0020】
蓄電素子は、図1図3に示すように、外部端子4と、電極22が積層され且つ扁平な電極体2と、電極体と外部端子とを導通させる集電体5と、集電体5と共に電極体2を挟み込む板状部材7と、を備える。また、蓄電素子1は、電極体2を収容すると共に外部端子4が配置されるケース3と、電極体2とケース3との間において該ケース3の内面に沿って広がる絶縁部材6と、を備える。尚、図2に示す板状部材7は、電極体2に接続(本実施形態の例では、超音波接合)される前の状態(形状)である。
【0021】
電極体2は、電極22が扁平に巻回されている、いわゆる巻回型の電極体である。具体的に、電極体2は、巻芯20と、巻芯20の周囲に巻回された電極22とセパレータ25とによって構成される積層体21と、を有する。本実施形態の電極22は、正極23と負極24とを含む。尚、以下では、電極体2の厚さ方向を直交座標系のX軸方向とし、電極体2の巻回軸Cの延びる方向(所定方向)を直交座標系のY軸方向とし、X軸方向とY軸方向とのそれぞれと直交する方向を直交座標系のZ軸方向とする。
【0022】
積層体21では、正極23と負極24とが互いに絶縁された状態で積層されている。電極体2においてリチウムイオンが正極23と負極24との間を移動することにより、蓄電素子1が充放電する。
【0023】
正極23は、帯状の金属箔231と、金属箔231に重ねられる正極活物質層232と、を有する。この正極活物質層232は、金属箔231における幅方向の一方の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔231に重ねられている。本実施形態の金属箔231は、例えば、アルミニウム箔である。
【0024】
負極24は、帯状の金属箔241と、金属箔241に重ねられる負極活物質層242と、を有する。この負極活物質層242は、金属箔241における幅方向の他方(正極23の金属箔231の非被覆部と反対側)の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔241に重ねられている。本実施形態の金属箔241は、例えば、銅箔である。
【0025】
本実施形態の電極体2では、正極23と負極24とがセパレータ25によって絶縁された状態で巻回されている。即ち、本実施形態の積層体21では、正極23、負極24、及びセパレータ25が積層されている。
【0026】
セパレータ25は、絶縁性を有する部材であり、正極23と負極24との間に配置される。これにより、電極体2(詳しくは、積層体21)において、正極23と負極24とが互いに絶縁される。また、セパレータ25は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、セパレータ25を挟んで交互に積層される正極23と負極24との間を、リチウムイオンが移動可能となる。
【0027】
このセパレータ25は、帯状であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。本実施形態のセパレータ25は、多孔質膜によって形成された基材と、該基材の上に設けられた無機層と、を有する。この無機層は、SiO粒子、Al粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機粒子を含む。また、基材は、例えば、ポリエチレンによって形成される。
【0028】
セパレータ25の幅方向の寸法は、負極活物質層242の幅より大きい。セパレータ25は、正極活物質層232と負極活物質層242とが厚さ方向(積層方向)に重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極23と負極24との間に配置される。このとき、正極23の非被覆部と、負極24の非被覆部とは重なっていない。即ち、正極23の非被覆部が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(積層方向と直交する方向)に突出し、且つ、負極24の非被覆部が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(正極23の非被覆部の突出方向と反対の方向)に突出する。このような積層状態(相対位置)となるように、正極23、負極24、及びセパレータ25が巻芯20の周囲に巻回されることによって、電極体2が形成される。また、本実施形態の電極体2では、正極23の非被覆部又は負極24の非被覆部のみが積層された部位によって、電極体2における非被覆積層部26が構成される。
【0029】
非被覆積層部26は、電極体2の各極に設けられる。即ち、正極23の非被覆部のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における正極の非被覆積層部を構成し、負極24の非被覆部のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における負極の非被覆積層部を構成する。これら二つの非被覆積層部26(詳しくは、正極の非被覆積層部26と負極の非被覆積層部26と)は、電極体2において、巻回軸C方向の両端部にそれぞれ形成されている。即ち、二つの非被覆積層部26は、電極体2の巻回軸C方向の各端部を構成している。
【0030】
この非被覆積層部26は、図4及び図5にも示すように、集電体5と板状部材7とによって挟み込まれることで集電体5と導通状態で接続されている。本実施形態の蓄電素子1では、電極体2と集電体5と板状部材7とは、超音波接合によって接続されている。この集電体5と板状部材7との挟み込みにより、非被覆積層部(電極体2の端部)26の厚さ(X軸方向の寸法)は、X軸方向から見た電極体2のY軸方向の中央部27の厚さより、小さくなっている。これにより、非被覆積層部26における中央部27側の部位では、Y軸方向における電極体2の中心側に向かうに伴い、厚さが漸増している。尚、本実施形態の電極体2では、前記中央部は、電極体2において最も厚さの大きい部位であり、各電極23、24の活物質層232、242の配置されている部位である。
【0031】
ケース3は、電極体2と共に電解液を収容する。具体的に、ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。このケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属によって形成される。
【0032】
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO、LiBF、及びLiPF等である。本実施形態の電解液は、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPFを溶解させたものである。
【0033】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部(周壁)312と、を備える。
【0034】
閉塞部311は、ケース本体31が開口を上に向けた姿勢で配置されたときにケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁となる)部位である。閉塞部311は、該閉塞部311の法線方向から見て、矩形状である。
【0035】
胴部312は、角筒形状、より詳しくは、偏平な角筒形状である。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。即ち、一対の長壁部313は、Y軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における短辺に相当する間隔)を空けて対向し、一対の短壁部314は、X軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における長辺に相当する間隔)を空けて対向する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、Y軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0036】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。
【0037】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。本実施形態の蓋板32は、Z軸方向から見て、X軸方向に長い矩形状の板材である。この蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部34に重ねられる。
【0038】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。この外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。
【0039】
具体的に、外部端子4は、バスバ等が溶接可能な面41Aを有する端子本体41と、ケース3を貫通する貫通部と、を備える。
【0040】
端子本体41は、蓋板32に沿って拡がる板状の部位である。本実施形態の端子本体41は、Z軸方向から見て矩形状である。
【0041】
貫通部は、ケース3の内部に配置される集電体5と、ケース3の外部に配置される端子本体41とを導通させる。本実施形態の貫通部は、導電性を有する金属によって構成され、端子本体41と一体に形成されている。この貫通部は、端子本体41から蓋板32を貫通してケース3内に延びている。詳しくは、貫通部は、端子本体41からケース3内に延び、端子本体41と共同して、蓋板32や集電体5等をZ軸方向に挟み込む。これにより、外部端子4及び集電体5が蓋板32に固定されると共に、外部端子4と集電体5とが導通する。
【0042】
集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2と導通可能に直接又は間接に接続される。この集電体5は、電極体2の正極の非被覆積層部26と、負極の非被覆積層部26とのそれぞれに接続されている。即ち、蓄電素子1は、二つの集電体5を備える。本実施形態の集電体5は、電極体2における該電極体2の厚さ方向(X軸方向)と直交する所定方向(本実施形態の例ではY軸方向)の端部に接続されている(図4及び図5参照)。より詳しくは、各集電体5は、板状部材7と共に電極体2の非被覆積層部26を挟み込んだ状態で該電極体2(詳しくは、非被覆積層部26)に接続されている。
【0043】
集電体5は、導電性を有する部材によって形成される。これにより、集電体5は、外部端子4の貫通部と電極体2の非被覆積層部26とを導通可能に接続する。この集電体5は、ケース3の内面に沿って配置される。
【0044】
具体的に、集電体5は、外部端子4の貫通部と通電可能に接続される第一接続部51と、第一接続部51から延び且つ電極体2と導通可能に接続される第二接続部52と、を有する。この集電体5では、第一接続部51が外部端子4の貫通部から蓋板32に沿って短壁部314へ向けて延びると共に、第二接続部52が第一接続部51の短壁部314側の端部から長壁部313に沿って閉塞部311に向けて延びている。
【0045】
第一接続部51は、矩形板状の部位である。また、第二接続部52は、帯板状の部位であり、長壁部313に沿ってZ軸方向に延びる基部521と、基部521から該基部521に対して傾斜方向に延びる傾斜部522と、傾斜部522からZ軸方向に延びる集電体接合部523と、を有する。本実施形態の集電体接合部523は、矩形の板状部位であり、非被覆積層部26のX軸方向における一方の面に面接触するように接続(本実施形態の例では、超音波接合)されている。
【0046】
以上のように構成される集電体5は、所定形状に裁断された板状の金属材料が曲げ加工されることによって形成されている。
【0047】
板状部材7は、正極の非被覆積層部26と、負極の非被覆積層部26とにそれぞれ配置されている。即ち、蓄電素子1は、二つの板状部材7を備える。電極体2への接合前の状態では、各板状部材7は、矩形の板状であり(図2参照)、本実施形態の板状部材7の厚さは、例えば、0.2mmである。この板状部材7は、図4図7に示すように、電極体2の非被覆積層部26に接合されている板状部材接合部(接合部)70と、板状部材接合部70から電極体2の中央部27側に延びる第一延伸部71と、を有する。また、板状部材7は、板状部材接合部70からY軸方向の第一延伸部71側と反対側に延びる第二延伸部72を有する。
【0048】
板状部材接合部70は、板状部材7において非被覆積層部26に接合されている部位である。本実施形態の板状部材接合部70は、超音波接合によって非被覆積層部26に接合されたZ軸方向に長尺な矩形状の部位(領域)である。この板状部材接合部70は、板状部材7においてY軸方向における中央部よりも外側(電極体2のY軸方向の端縁側)にずれた位置に形成されている。
【0049】
第一延伸部71は、板状部材接合部70に対して傾斜した状態で電極体2の表面に沿って延び、且つ、少なくとも先端71aが電極体2の表面から離間している。この第一延伸部71の先端71aは、電極体2の中央部27と接し且つX軸方向と直交する仮想面VよりX軸方向の板状部材接合部70側(図6における下側)に位置している。即ち、第一延伸部71の先端は、X軸方向において、中央部27の端縁より内側に位置している。
【0050】
第二延伸部72は、板状部材接合部70に対してX軸方向における第一延伸部71と同じ側に傾斜した状態で延びている。第二延伸部72の先端72aは、X軸方向から見て電極体2のY軸方向の端縁より内側に位置し、且つX軸方向において第一延伸部71の先端71aより板状部材接合部70側(内側)に位置している(図6参照)。
【0051】
以上のような板状部材7及び集電体5が接合された状態の電極体2のY軸方向の端部では、各構成26、5、7同士は、以下の関係を満たしている。
【0052】
本実施形態の蓄電素子1は、電極体のY軸方向の中央部27の厚さ(X軸方向の寸法)をAとし、非被覆積層部26における集電体5と板状部材7とによって挟み込まれた部位の厚さをBとし、板状部材7の厚さをCとしたときに、本実施形態の蓄電素子1では、B>C、且つ、0.05≦((B+C)/A)≦0.09の関係を満たしている。
【0053】
また、本実施形態の蓄電素子1は、X-Y面(X軸方向とY軸方向とを含む面:図6参照)での断面において、板状部材接合部70に対する第一延伸部71の角度θは、電極体のY軸方向の端縁から板状部材接合部70の第一延伸部71側の端縁までのY軸方向の寸法をDとし、非被覆積層部26のY軸方向の寸法をEとしたときに、tanθ=(A/2)/(E-D)、且つ、1.2<tanθ<2.65の関係を満たしている。
【0054】
また、本実施形態の蓄電素子1は、Y軸方向における第一延伸部71の先端71aと板状部材接合部70の第一延伸部71側の端縁との距離をXとすると、X/C>5の関係を満たしている。
【0055】
図2に戻り、絶縁部材6は、ケース3(詳しくはケース本体31)と電極体2との間に配置される。この絶縁部材6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって袋状に形成されている。この袋状の絶縁部材6は、電極体2に接合された集電体5及び板状部材7と共に、電極体2の表面を覆った状態で、電極体2とケース3との間に配置される。
【0056】
以上のように構成される蓄電素子1は、以下のように製造される。
【0057】
外部端子4と共に蓋板32に組付けられた集電体5に電極体2が接続される。本実施形態の蓄電素子1の製造方法では、集電体5と電極体2とは、超音波接合によって接続される。具体的には、以下の通りである。
【0058】
集電体5の集電体接合部523と平板状の板状部材7とが、電極体2の非被覆積層部26の厚さ方向(X軸方向)の両側に配置される。この状態で、重ね合わされた集電体接合部523と非被覆積層部26と板状部材7とが、超音波接合器のホーンとアンビルとによって挟み込まれ、超音波接合が行われる。
【0059】
このとき、板状部材7におけるホーンとの当接部位は、Y軸方向における中央部より非被覆積層部26の外側(電極体2の端縁側)にずれた位置である。そして、ホーンが、重ね合わされた板状部材7と非被覆積層部26と集電体接合部523とをアンビルに向けて押圧した状態で超音波振動する。これにより、板状部材接合部70(板状部材7におけるホーンの当接部位)が非被覆積層部26の厚さ方向(電極22の積層方向)内側に沈み込むと共に、第一延伸部71及び第二延伸部72が板状部材接合部70に対して傾斜するように板状部材7が変形し、集電体5と電極体2と板状部材7とが超音波接合される。この第一延伸部71が板状部材接合部70に対して傾斜することによって、第一延伸部71の少なくとも先端71aが電極体2の表面から離間した状態となる(図6参照)。
【0060】
次に、蓋板32に組付けられた電極体2が袋状の絶縁部材6に収容され、これにより、電極体2に接合された集電体5(詳しくは、第二接続部52)及び板状部材7と共に、電極体2の表面が絶縁部材6によって覆われる。
【0061】
続いて、この蓋板32に組付けられ且つ絶縁部材6によって表面が覆われた状態の電極体2が、ケース本体31に挿入される。蓋板32がケース本体31の開口周縁部34に重なる(当接する)位置まで、電極体2がケース本体31に挿入されると、この状態で、蓋板32の周縁部とケース本体31の開口周縁部34とが溶接され、蓋板32とケース本体31との境界部が密閉される。本実施形態の蓋板32とケース本体31との溶接は、レーザー溶接によって行われる。
【0062】
このケース本体31と蓋板32とが溶接された後、ケース3内に電解液が注入されることで、蓄電素子1が完成する。
【0063】
以上の蓄電素子によれば、第一延伸部71の先端71aが電極体2の表面から離間しているため(図6参照)、蓄電素子1や電極体2に振動等が加わっても、第一延伸部71の先端71a(特に、エッジ)が電極体2の表面に接触せず、これにより、前記エッジの食い込み等に起因する電極体2の損傷が抑えられる。
【0064】
また、本実施形態の蓄電素子1では、第一延伸部71の先端71aは、電極体2の中央部(電極体2において最も厚さの大きい部位)と接し且つX軸方向と直交する仮想面VよりX軸方向の板状部材接合部70側に位置している。即ち、第一延伸部71の先端71aは、X軸方向において、中央部27の端縁より内側に位置している(図6参照)。このように、第一延伸部71の先端71aが電極体2の中央部27(仮想面V)よりX軸方向の板状部材接合部70側に位置していることで、該先端71aと、ケース3や該ケース3と電極体2との間におけるX軸方向の中央部27の端縁位置又はその外側に位置する他の部材(本実施形態の例では、絶縁部材6)と、の接触が抑えられ、これにより、先端71a(エッジ)が接触することに起因するケース3や他の部材(絶縁部材6)の損傷が抑えられる。
【0065】
また、本実施形態の蓄電素子1では、第二延伸部72の先端72aが、Y軸方向において電極体2の端縁より内側で且つX軸方向において第一延伸部71の先端71aより板状部材接合部70側(内側)に位置している。このため、板状部材接合部70から電極体2の端縁側に延びている第二延伸部72の先端72aがケース3により接触し難く、これにより、第二延伸部72の先端72a(エッジ)が接触することによるケース3の損傷がより確実に抑えられる。
【0066】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0067】
上記実施形態の蓄電素子1では、板状部材7は、第一延伸部71と第二延伸部72とを有しているが、この構成に限定されない。板状部材7は、第一延伸部71と第二延伸部72とのうちの少なくとも第一延伸部71を有していればよい。
【0068】
また、上記実施形態の蓄電素子1では、第一延伸部71の先端71aが、電極体2の中央部(電極体2において最も厚さの大きい部位)27と接し且つX軸方向と直交する仮想面VよりX軸方向の板状部材接合部70側に位置しているが、この構成に限定されない。第一延伸部71の少なくとも先端71aが電極体2の表面から離間していれば、該先端71aが仮想面VよりX軸方向の板状部材接合部70側に位置していない構成でもよい。
【0069】
また、上記実施形態の蓄電素子1では、第二延伸部72の先端72aが、Y軸方向において電極体2の端縁より内側で且つX軸方向において第一延伸部71の先端71aより板状部材接合部70側に位置しているが、この構成に限定されない。第二延伸部72の先端72aが、Y軸方向において電極体2の端縁より外側に位置してもよく、X軸方向において第一延伸部71の先端71aより板状部材接合部70から離れる側に位置する構成であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態の蓄電素子1では、板状部材7が第一延伸部71や第二延伸部72を有し、集電体5の集電体接合部(非被覆積層部26と接合する板状部位)523は、平板状であるが、この構成に限定されない。集電体5の集電体接合部(非被覆積層部26との接合部位)523が、板状部材7の板状部材接合部70に相当する部位と、第一延伸部71に相当する部位と、を有していていもよい。また、集電体接合部523が、板状部材7の板状部材接合部70に相当する部位と、第一延伸部71に相当する部位と、に加え、第二延伸部72に相当する部位も有していてもよい。
【0071】
かかる構成によっても、第一延伸部71の先端71aに相当する部位が電極体2の表面から離間していることで、蓄電素子1や電極体2に振動等が加わったときに、第一延伸部71の先端71aに相当する部位が電極体2の表面に接触せず、これにより、該電極体2を構成する電極22の損傷が抑えられる。
【0072】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0073】
蓄電素子(例えば電池)1は、図8に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。蓄電装置11は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材12と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。
【符号の説明】
【0074】
1…蓄電素子、2…電極体、20…巻芯、21…積層体、22…電極、23…正極(電極)、231…金属箔、232…正極活物質層(活物質層)、24…負極(電極)、241…金属箔、242…負極活物質層(活物質層)、25…セパレータ、26…非被覆積層部、27…中央部、3…ケース、31…ケース本体、311…閉塞部、312…胴部、313…長壁部、314…短壁部、32…蓋板、34…開口周縁部、4…外部端子、41…端子本体、41A…面、5…集電体、51…第一接続部、52…第二接続部、521…基部、522…傾斜部、523…集電体接合部、6…絶縁部材、7…板状部材、70…板状部材接合部(接合部)、71…第一延伸部、71a…先端、72…第二延伸部、72a…先端、11…蓄電装置、12…バスバ部材、100…二次電池、101…缶体、101a…両幅広面、102…集電体、103…接合板、104…主板、105…リブ板、110…捲回電極群、111…束状電極接続部、C…巻回軸、V…仮想面
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9