(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ブリスタ包装機及びブリスタシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65B 9/04 20060101AFI20231219BHJP
B41J 29/393 20060101ALN20231219BHJP
B41J 3/407 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
B65B9/04
B41J29/393 105
B41J3/407
(21)【出願番号】P 2020086417
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】畠山 肇
(72)【発明者】
【氏名】樋口 守彦
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-148430(JP,A)
【文献】特開2020-036672(JP,A)
【文献】特開平07-040910(JP,A)
【文献】特開昭63-240976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 9/04
B41J 29/393
B41J 3/407
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器フィルムに形成されたポケット部に内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートを製造するためのブリスタ包装機であって、
帯状の前記容器フィルムに対し前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
内容物に印刷を施すとともに、前記ポケット部に対し該内容物を充填する印刷充填手段と、
前記ポケット部に内容物が充填された前記容器フィルムに対し、該ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなる帯状のブリスタフィルムからブリスタシートを切離す切離手段とを備え、
前記印刷充填手段は、
内容物を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送されて所定の印刷ポジションに到達した内容物に印刷を施すインクジェット方式の印刷手段と、
前記印刷手段によって印刷が施された内容物を検査する内容物検査手段と、
前記内容物検査手段によって不良判定された内容物を系外に排出する不良品排出手段と、
前記内容物検査手段によって良判定された内容物を貯留するバッファ手段と、
前記バッファ手段に貯留された内容物を前記ポケット部に充填する充填手段と、
前記バッファ手段における内容物のバッファ量を把握するバッファ量把握手段と、
前記印刷手段による印刷及び前記充填手段による内容物の充填を継続したまま、前記バッファ量把握手段により把握されたバッファ量に基づき、該印刷手段によって単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節する印刷数調節手段とを備えることを特徴とするブリスタ包装機。
【請求項2】
前記印刷数調節手段は、前記搬送手段による内容物の搬送速度を変更可能に構成されており、該搬送速度を変更して前記印刷ポジションに到達する単位時間当たりの内容物の数を調節することで、前記印刷手段によって単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節することを特徴とする請求項1に記載のブリスタ包装機。
【請求項3】
前記印刷数調節手段は、前記搬送手段による内容物の搬送速度を三段階以上の多段階で変更可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載のブリスタ包装機。
【請求項4】
前記印刷手段による印刷の不良率を算出する不良率算出手段を備え、
前記印刷数調節手段は、前記不良率算出手段によって算出された不良率が増大するにつれて前記搬送手段による内容物の搬送速度の平均値が増大すること、及び、前記不良率算出手段によって算出された不良率が減少するにつれて該搬送速度の平均値が減少することの少なくとも一方を満たすように、該搬送速度を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のブリスタ包装機。
【請求項5】
前記搬送手段に対し内容物を供給する供給手段を備え、
前記印刷数調節手段は、前記供給手段から前記搬送手段に供給される単位時間当たりの内容物の数を変更可能に構成されており、該内容物の数の変更に伴い前記印刷ポジションに到達する単位時間当たりの内容物の数を調節することで、前記印刷手段によって単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のブリスタ包装機。
【請求項6】
前記搬送手段は、内容物の搬送方向と直交する方向に沿って複数の内容物を並べた状態で、各列の内容物を前記印刷ポジションへと順次搬送していくように構成されており、
前記供給手段は、前記搬送方向と直交する方向に並ぶ1列分の内容物の数と同数の供給部を備えるとともに、常にはこれら供給部のそれぞれから前記搬送手段に対し内容物が1つずつ供給されるように構成されており、
前記印刷手段は、前記1列分の内容物の数と同数設けられ、常には前記1列分の内容物のそれぞれに個別に印刷を施す複数の印刷ヘッドを有しており、
前記内容物検査手段の検査結果によって、前記搬送手段への内容物の供給を停止させる前記供給部を決定する停止対象決定手段と、
前記停止対象決定手段により決定された前記供給部から前記搬送手段に対する内容物の供給を停止する供給停止手段とを具備し、
前記供給部から前記搬送手段に対する内容物の供給を停止した場合、複数の前記印刷ヘッドのうち内容物の供給を停止した前記供給部に対応するもの以外の前記印刷ヘッドによって、内容物に対する印刷を行うことを特徴とする請求
項5に記載のブリスタ包装機。
【請求項7】
容器フィルムに形成されたポケット部に内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートの製造方法であって、
帯状の前記容器フィルムに対し前記ポケット部を形成するポケット部形成工程と、
内容物に印刷を施すとともに、前記ポケット部に対し該内容物を充填する印刷充填工程と、
前記ポケット部に内容物が充填された前記容器フィルムに対し、該ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着工程と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなる帯状のブリスタフィルムからブリスタシートを切離す切離工程とを含み、
前記印刷充填工程は、
内容物を搬送する搬送工程と、
前記搬送工程により搬送されて所定の印刷ポジションに到達した内容物に印刷を施す印刷工程と、
前記印刷工程によって印刷が施された内容物を検査する内容物検査工程と、
前記内容物検査工程によって不良判定された内容物を系外に排出する不良品排出工程と、
前記内容物検査工程によって良判定された内容物を所定のバッファ手段にて貯留するバッファ工程と、
前記バッファ手段に貯留された内容物を前記ポケット部に充填する充填工程と、
前記バッファ工程における内容物のバッファ量を把握するバッファ量把握工程と、
前記印刷工程における印刷及び前記充填工程における内容物の充填を継続したまま、前記バッファ量把握工程により把握されたバッファ量に基づき、前記印刷工程において単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節する印刷数調節工程とを備えることを特徴とするブリスタシートの製造方法。
【請求項8】
前記印刷数調節工程では、前記搬送工程による内容物の搬送速度を変更して前記印刷ポジションに到達する単位時間当たりの内容物の数を調節することで、前記印刷工程において単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節することを特徴とする請求項7に記載のブリスタシートの製造方法。
【請求項9】
前記印刷数調節工程では、前記搬送工程における内容物の搬送速度を三段階以上の多段階で変更することを特徴とする請求項8に記載のブリスタシートの製造方法。
【請求項10】
前記印刷工程における印刷の不良率を算出する不良率算出工程を備え、
前記印刷数調節工程では、前記不良率算出工程によって算出された不良率が増大するにつれて前記搬送工程による内容物の搬送速度の平均値が増大すること、及び、前記不良率算出工程によって算出された不良率が減少するにつれて該搬送速度の平均値が減少することの少なくとも一方を満たすように、該搬送速度を変更することを特徴とする請求項8又は9に記載のブリスタシートの製造方法。
【請求項11】
前記搬送工程において内容物を搬送する搬送手段に対し、内容物を供給する供給工程を備え、
前記印刷数調節工程では、前記供給工程にて供給される単位時間当たりの内容物の数を変更して前記印刷ポジションに到達する単位時間当たりの内容物の数を調節することで、前記印刷工程において単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載のブリスタシートの製造方法。
【請求項12】
前記搬送工程では、所定の搬送手段によって、内容物の搬送方向と直交する方向に沿って複数の内容物を並べた状態で、各列の内容物を前記印刷ポジションへと順次搬送していき、
前記供給工程では、常には前記搬送方向と直交する方向に並ぶ1列分の内容物の数と同数の供給部のそれぞれから前記搬送手段に対し内容物が1つずつ供給され、
前記印刷工程では、前記1列分の内容物の数と同数の印刷ヘッドによって、常には前記1列分の内容物のそれぞれに個別に印刷が施され、
前記内容物検査工程の検査結果によって、前記搬送手段への内容物の供給を停止させる前記供給部を決定する停止対象決定工程と、
前記停止対象決定工程により決定された前記供給部から前記搬送手段に対する内容物の供給を停止する供給停止工程とを含み、
前記供給停止工程の実行中、前記印刷工程では、複数の前記印刷ヘッドのうち内容物の供給を停止した前記供給部に対応するもの以外の前記印刷ヘッドによって、内容物に対する印刷が行われることを特徴とする請求
項11に記載のブリスタシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷の施された内容物を収容してなるブリスタシートを製造するためのブリスタ包装機及びブリスタシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に医薬品や食料品等の分野において用いられるブリスタシートとしてPTP(プレススルーパック)シートが知られている。PTPシートは、錠剤等の内容物が収容されるポケット部を有する容器フィルムと、その容器フィルムに対しポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとを備えている。
【0003】
かかるPTPシートは、搬送される帯状の容器フィルムを予熱する工程、予熱された容器フィルムに対しポケット部を形成する工程、該ポケット部に内容物を充填する工程(充填工程)、該ポケット部の開口側を密封するように容器フィルムに対しカバーフィルムを取着する工程、容器フィルム及びカバーフィルムからなる帯状のPTPフィルムをPTPシート単位に打ち抜く工程等を経て製造される。
【0004】
従来、内容物には、その表面に製品名や製品番号など、文字や記号等からなる識別情報の印刷されているものがある。また、内容物を搬送する搬送手段と、インクジェット方式を用いた印刷手段とを備え、搬送手段によって搬送される内容物に対し印刷手段によって印刷を行いながら、印刷の施された内容物を容器フィルムのポケット部へと順次充填していくブリスタ包装機も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のブリスタ包装機において、印刷不良などの生じた不良品の内容物は、充填工程前に排出されることなく、そのままポケット部へと充填される。ここで、この不良品の内容物を含むPTPシートを不良品として廃棄する構成とすると、該PTPシートを構成する容器フィルムやカバーフィルムが無駄になるとともに、PTPシートが複数のポケット部を有する場合には該PTPシートに含まれるその他の良品の内容物も無駄になり、生産コストの増大を招くおそれがある。
【0007】
これに対し、内容物に対する印刷を行うポジションとポケット部に対する内容物の充填を行うポジションとの間における内容物の搬送経路に対応して内容物を貯留するためのバッファ手段を設けるとともに、該バッファ手段よりも上流に不良品の内容物を排出するための不良品排出手段を設けることで、該バッファ手段に良品の内容物のみを貯留可能とし、該内容物をポケット部へと充填するように構成することが考えられる。また、この構成においては、バッファ量が不十分となることに伴う内容物の包装能力(充填工程において単位時間当たりにポケット部に充填される内容物の数)の低下が生じないように、不良品の内容物が排出されることを見越して、印刷手段による印刷能力(単位時間当たりに印刷される内容物の数)が前記包装能力よりも十分に高いものとなるように構成することが考えられる。
【0008】
しかし、上記のように構成した場合、不良品の内容物の発生率は必ずしも一定ではなく例えば印刷手段をクリーニングした直後には低くなるため、バッファ手段に貯留される内容物のバッファ量(貯留量)が許容範囲の上限に至りやすくなるおそれがある。そこで、前記バッファ量が上限に至ったときには、内容物に対する印刷を停止させることが考えられる。
【0009】
ところが、内容物に対する印刷を停止させると、印刷手段において、インクの乾燥による目詰まり等の発生する蓋然性が高くなり、結果的に、内容物の印刷不良が生じやすくなるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内容物や容器フィルム等が無駄になることを極力抑えることができ、また、良好な包装能力をより確実に確保可能としつつ、内容物の印刷不良を効果的に抑制することができるブリスタ包装機などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.容器フィルムに形成されたポケット部に内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートを製造するためのブリスタ包装機であって、
帯状の前記容器フィルムに対し前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
内容物に印刷を施すとともに、前記ポケット部に対し該内容物を充填する印刷充填手段と、
前記ポケット部に内容物が充填された前記容器フィルムに対し、該ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなる帯状のブリスタフィルムからブリスタシートを切離す切離手段とを備え、
前記印刷充填手段は、
内容物を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送されて所定の印刷ポジションに到達した内容物に印刷を施すインクジェット方式の印刷手段と、
前記印刷手段によって印刷が施された内容物を検査する内容物検査手段と、
前記内容物検査手段によって不良判定された内容物を系外に排出する不良品排出手段と、
前記内容物検査手段によって良判定された内容物を貯留するバッファ手段と、
前記バッファ手段に貯留された内容物を前記ポケット部に充填する充填手段と、
前記バッファ手段における内容物のバッファ量を把握するバッファ量把握手段と、
前記印刷手段による印刷及び前記充填手段による内容物の充填を継続したまま、前記バッファ量把握手段により把握されたバッファ量に基づき、該印刷手段によって単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節する印刷数調節手段とを備えることを特徴とするブリスタ包装機。
【0013】
上記手段1によれば、内容物検査手段によって印刷後の内容物が検査されて、良判定された(不良判定されていない)内容物のみがバッファ手段に貯留され、充填手段によって該バッファ手段に貯留された内容物がポケット部に充填される。従って、印刷不良などの生じた不良品の内容物がそのままポケット部に充填されるといった事態を極力抑えることができ、該不良品の内容物に起因したブリスタシートの廃棄を極力防ぐことができる。これにより、ブリスタシートを構成する容器フィルムやカバーフィルム、及び、ブリスタシートに含まれる良品の内容物が無駄になることをより確実に防止でき、生産コストの増大抑制を効果的に図ることができる。
【0014】
また、上記手段1によれば、印刷手段による印刷を継続したまま、バッファ量把握手段により把握されたバッファ量に基づき、印刷手段によって単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節することができる。従って、不良品の内容物が排出されることを見越して、印刷手段による印刷能力(単位時間当たりに印刷される内容物の数)が内容物の包装能力(充填手段によって単位時間当たりにポケット部に充填される内容物の数)よりも十分に高くなるように設定可能としつつ、内容物に対する印刷を停止させることなくバッファ量を調節することができる。これにより、バッファ量が不十分となって内容物の包装(ポケット部に対する内容物の充填)に支障が生じることを抑制しつつ、印刷手段におけるインクの乾燥による目詰まり等を生じにくくすることができる。その結果、良好な包装能力をより確実に確保可能としつつ、印刷不良の発生を効果的に抑制することができる。
【0015】
手段2.前記印刷数調節手段は、前記搬送手段による内容物の搬送速度を変更可能に構成されており、該搬送速度を変更して前記印刷ポジションに到達する単位時間当たりの内容物の数を調節することで、前記印刷手段によって単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節することを特徴とする手段1に記載のブリスタ包装機。
【0016】
上記手段2によれば、特別な装置を設けたり複雑な制御を行ったりすることなく、単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節することができる。従って、装置の製造やメンテナンスなどに係るコストの増大抑制を図ることができる。
【0017】
手段3.前記印刷数調節手段は、前記搬送手段による内容物の搬送速度を三段階以上の多段階で変更可能に構成されていることを特徴とする手段2に記載のブリスタ包装機。
【0018】
上記手段3によれば、単位時間当たりに印刷される内容物の数ひいてはバッファ量をより細かく調節することができる。
【0019】
さらに、上記手段3によれば、内容物の搬送速度を急激に変化させずに済む。従って、搬送される内容物に対する印刷を精度よく行うことができ、印刷品質の向上を図ることができる。また、搬送手段における内容物の受渡しに係る安定性を向上させることも可能となる。
【0020】
手段4.前記印刷手段による印刷の不良率を算出する不良率算出手段を備え、
前記印刷数調節手段は、前記不良率算出手段によって算出された不良率が増大するにつれて前記搬送手段による内容物の搬送速度の平均値が増大すること、及び、前記不良率算出手段によって算出された不良率が減少するにつれて該搬送速度の平均値が減少することの少なくとも一方を満たすように、該搬送速度を変更可能に構成されていることを特徴とする手段2又は3に記載のブリスタ包装機。
【0021】
通常、印刷回数の増加などの要因に伴い、不良率算出手段によって算出される不良率は変化するところ、上記手段4によれば、不良率が増大又は減少するにつれて内容物の搬送速度の平均値が増大又は減少するように、内容物の搬送速度を変更することができる。従って、不良品の内容物が経時的に増えたり減ったりしたとしても、適切なバッファ量を確保することがより確実に可能となる。これにより、バッファ量が不適切となることに伴う不具合の発生を抑制することができる。例えば、バッファ量が十分に確保されることで、内容物の包装に支障が生じることを一層確実に抑制でき、ひいては良好な包装能力の確保を一層確実に図ることができる。
【0022】
また、バッファ量のみを基準として内容物の搬送速度を調節する場合と比較して、搬送速度の急激な変化を一層確実に防ぐことができる。これにより、印刷品質や搬送手段における内容物の受渡しに係る安定性の更なる向上を図ることができる。
【0023】
尚、不良率に合わせて基準となる搬送速度(バッファ量を加味しない搬送速度)を徐々に変化させる構成としてもよいし、所定の不良率に至る度に基準となる搬送速度を段階的に変化させる構成としてもよい。
【0024】
手段5.前記搬送手段に対し内容物を供給する供給手段を備え、
前記印刷数調節手段は、前記供給手段から前記搬送手段に供給される単位時間当たりの内容物の数を変更可能に構成されており、該内容物の数の変更に伴い前記印刷ポジションに到達する単位時間当たりの内容物の数を調節することで、前記印刷手段によって単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節することを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載のブリスタ包装機。
【0025】
上記手段5によれば、特別な装置を設けたり複雑な制御を行ったりすることなく、単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節することができる。従って、装置の製造やメンテナンスなどに係るコストの増大抑制を図ることができる。
【0026】
手段6.前記搬送手段は、内容物の搬送方向と直交する方向に沿って複数の内容物を並べた状態で、各列の内容物を前記印刷ポジションへと順次搬送していくように構成されており、
前記供給手段は、前記搬送方向と直交する方向に並ぶ1列分の内容物の数と同数の供給部を備えるとともに、常にはこれら供給部のそれぞれから前記搬送手段に対し内容物が1つずつ供給されるように構成されており、
前記印刷手段は、前記1列分の内容物の数と同数設けられ、常には前記1列分の内容物のそれぞれに個別に印刷を施す複数の印刷ヘッドを有しており、
前記内容物検査手段の検査結果によって、前記搬送手段への内容物の供給を停止させる前記供給部を決定する停止対象決定手段と、
前記停止対象決定手段により決定された前記供給部から前記搬送手段に対する内容物の供給を停止する供給停止手段とを具備し、
前記供給部から前記搬送手段に対する内容物の供給を停止した場合、複数の前記印刷ヘッドのうち内容物の供給を停止した前記供給部に対応するもの以外の前記印刷ヘッドによって、内容物に対する印刷を行うことを特徴とする手段5に記載のブリスタ包装機。
【0027】
内容物検査手段の検査によって、ある印刷ヘッドにより印刷の施された内容物に印刷不良が集中的に生じていることが判明することがある。このような場合に印刷を継続すると、印刷不良の内容物が多量に発生して、生産コストの増大を招くおそれがある。そこで、印刷を一時的に停止して印刷ヘッドのクリーニングを行うことが考えられるが、印刷が停止する分、生産性の低下を招くおそれがある。また、クリーニング回数の増加は、クリーニングに係るコストの増大を招く。
【0028】
この点、上記手段6によれば、常には、供給手段の各供給部から搬送方向と直交する方向に並ぶ1列分の内容物が搬送手段へと順次供給され、その結果、内容物は搬送方向に沿って延びる複数(印刷ヘッドや供給部の数と同数)の列をなした状態で印刷ポジションへと搬送されて印刷が施される。しかし、内容物検査手段の検査結果によっては、供給停止対象の供給部が決定されるとともに、その供給部から搬送手段に対する内容物の供給が停止される。例えば、ある印刷ヘッドにより印刷の施された内容物に印刷不良が集中的に生じていることが判明した場合には、その印刷ヘッドに対応する供給部からの内容物の供給が停止される。結果的に、内容物は、その印刷ヘッドへと供給されないように列を減じた状態で搬送されていく。これにより、内容物の印刷不良をより生じにくくすることができ、生産コストの増大抑制をより効果的に図ることができる。
【0029】
また、上記手段6によれば、内容物の供給が停止されたときには、複数の印刷ヘッドのうちの内容物の供給を停止した供給部に対応するもの以外の印刷ヘッドによって、内容物に対する印刷が行われる。従って、印刷を継続して行うことができ、生産性の低下をより確実に防ぐことができる。また、稼働する印刷ヘッドにおいては、内容物に対する印刷を高頻度で行うことになるため、インクの乾燥などによる印刷不良をより生じにくくすることができる。
【0030】
加えて、内容物の供給を停止した供給部に対応する印刷ヘッドのクリーニングは、例えばその他の印刷ヘッドにおいて印刷の不良率がある程度増大した段階などにおいて、これら印刷ヘッドのクリーニングと同時に行えば済む。これにより、クリーニング回数の増加を抑制して、クリーニングに係るコストの増大を抑えることができる。
【0031】
手段7.容器フィルムに形成されたポケット部に内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートの製造方法であって、
帯状の前記容器フィルムに対し前記ポケット部を形成するポケット部形成工程と、
内容物に印刷を施すとともに、前記ポケット部に対し該内容物を充填する印刷充填工程と、
前記ポケット部に内容物が充填された前記容器フィルムに対し、該ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着工程と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなる帯状のブリスタフィルムからブリスタシートを切離す切離工程とを含み、
前記印刷充填工程は、
内容物を搬送する搬送工程と、
前記搬送工程により搬送されて所定の印刷ポジションに到達した内容物に印刷を施す印刷工程と、
前記印刷工程によって印刷が施された内容物を検査する内容物検査工程と、
前記内容物検査工程によって不良判定された内容物を系外に排出する不良品排出工程と、
前記内容物検査工程によって良判定された内容物を所定のバッファ手段にて貯留するバッファ工程と、
前記バッファ手段に貯留された内容物を前記ポケット部に充填する充填工程と、
前記バッファ工程における内容物のバッファ量を把握するバッファ量把握工程と、
前記印刷工程における印刷及び前記充填工程における内容物の充填を継続したまま、前記バッファ量把握工程により把握されたバッファ量に基づき、前記印刷工程において単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節する印刷数調節工程とを備えることを特徴とするブリスタシートの製造方法。
【0032】
上記手段7によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0033】
手段8.前記印刷数調節工程では、前記搬送工程による内容物の搬送速度を変更して前記印刷ポジションに到達する単位時間当たりの内容物の数を調節することで、前記印刷工程において単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節することを特徴とする手段7に記載のブリスタシートの製造方法。
【0034】
上記手段8によれば、上記手段2と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0035】
手段9.前記印刷数調節工程では、前記搬送工程における内容物の搬送速度を三段階以上の多段階で変更することを特徴とする手段8に記載のブリスタシートの製造方法。
【0036】
上記手段9によれば、上記手段3と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0037】
手段10.前記印刷工程における印刷の不良率を算出する不良率算出工程を備え、
前記印刷数調節工程では、前記不良率算出工程によって算出された不良率が増大するにつれて前記搬送工程による内容物の搬送速度の平均値が増大すること、及び、前記不良率算出工程によって算出された不良率が減少するにつれて該搬送速度の平均値が減少することの少なくとも一方を満たすように、該搬送速度を変更することを特徴とする手段8又は9に記載のブリスタシートの製造方法。
【0038】
上記手段10によれば、上記手段4と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0039】
手段11.前記搬送工程において内容物を搬送する搬送手段に対し、内容物を供給する供給工程を備え、
前記印刷数調節工程では、前記供給工程にて供給される単位時間当たりの内容物の数を変更して前記印刷ポジションに到達する単位時間当たりの内容物の数を調節することで、前記印刷工程において単位時間当たりに印刷される内容物の数を調節することを特徴とする手段7乃至10のいずれかに記載のブリスタシートの製造方法。
【0040】
上記手段11によれば、上記手段5と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0041】
手段12.前記搬送工程では、所定の搬送手段によって、内容物の搬送方向と直交する方向に沿って複数の内容物を並べた状態で、各列の内容物を前記印刷ポジションへと順次搬送していき、
前記供給工程では、常には前記搬送方向と直交する方向に並ぶ1列分の内容物の数と同数の供給部のそれぞれから前記搬送手段に対し内容物が1つずつ供給され、
前記印刷工程では、前記1列分の内容物の数と同数の印刷ヘッドによって、常には前記1列分の内容物のそれぞれに個別に印刷が施され、
前記内容物検査工程の検査結果によって、前記搬送手段への内容物の供給を停止させる前記供給部を決定する停止対象決定工程と、
前記停止対象決定工程により決定された前記供給部から前記搬送手段に対する内容物の供給を停止する供給停止工程とを含み、
前記供給停止工程の実行中、前記印刷工程では、複数の前記印刷ヘッドのうち内容物の供給を停止した前記供給部に対応するもの以外の前記印刷ヘッドによって、内容物に対する印刷が行われることを特徴とする手段11に記載のブリスタシートの製造方法。
【0042】
上記手段12によれば、上記手段6と同様の作用効果が奏されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図5】PTP包装機の概略構成を示す模式図である。
【
図6】印刷充填装置の概略構成を示す正面模式図である。
【
図7】印刷充填装置の概略構成を示す斜視模式図である。
【
図8】印刷装置などを示す部分拡大斜視模式図である。
【
図9】不良品除去装置などを示す部分拡大斜視模式図である。
【
図10】ブローノズルや受取部などを示す部分拡大斜視模式図である。
【
図11】ブローノズルや受取部などを示す部分拡大正面模式図である。
【
図12】バッファ搬送装置を示す部分拡大斜視模式図である。
【
図13】充填装置などを示す部分拡大斜視模式図である。
【
図14】印刷ヘッドにおけるノズル列の配置を示す模式図である。
【
図15】錠剤の搬送速度やバッファ量などを大まかに示すグラフである。
【
図17】第2実施形態において、供給装置から搬送装置に供給される錠剤などを示す部分拡大斜視模式図である。
【
図18】第3実施形態において、供給装置から搬送装置に供給される錠剤などを示す部分拡大斜視模式図である。
【
図19】別の実施形態において、多段階で変更される搬送速度などを大まかに示すグラフである。
【
図20】別の実施形態において、不良率に応じて変更される搬送速度などを大まかに示すグラフである。
【
図21】別の実施形態における搬送装置の吸着孔などを示す斜視模式図である。
【
図22】別の実施形態における印刷充填装置の概略構成を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔第1実施形態〕
まず、「ブリスタシート」としてのPTPシートの構成について説明する。
図1,2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
【0045】
本実施形態における容器フィルム3は、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の透明の熱可塑性樹脂材料により形成されている。一方、カバーフィルム4は、例えばポリプロピレン樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。勿論、各フィルム3,4の材料は、これらに限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。
【0046】
PTPシート1は、帯状の容器フィルム3及び帯状のカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(
図4参照)が打抜かれることによって製造されるものであり、平面視略矩形状に形成されている。本実施形態では、PTPフィルム6が「ブリスタフィルム」に相当する。
【0047】
PTPシート1には、その長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、その短手方向に2列形成されている。各ポケット部2には、「内容物」としての錠剤5が1つずつ収容されている。
【0048】
図2,3に示すように、錠剤5は、平面視円形状をなす円盤状の素錠であって、側面5aと、該側面5aを挟む表面5b及び裏面5cとを有している。そして、錠剤5の表面5b及び裏面5cのうちの一方には、錠剤5に関する製品情報を示す識別情報(文字や記号、数字、図形など)が印刷されている。
【0049】
錠剤5に関する製品情報としては、例えば「製品名」、「含量」、「剤形」、「製造元」及び「ロット番号」などを挙げることができる。
図3に示す例では、「製品名」としての「ABC」の文字と、「含量」としての「20」の数字とが印刷されている。以下では、これら「ABC」の文字や「20」の数字が印刷された部位を「印刷部5e」と称する。尚、「ABC」の部分と「20」の部分とはそれぞれ異なる色とされている。
【0050】
次に、上記PTPシート1を製造するためのPTP包装機10の概略構成について説明する。本実施形態では、PTP包装機10によって「ブリスタ包装機」が構成される。
【0051】
図5に示すように、PTP包装機10の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール13に案内されている。容器フィルム3は、ガイドロール13の下流側において間欠送りロール14に掛装されている。間欠送りロール14は、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
【0052】
ガイドロール13と間欠送りロール14との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、予熱装置15及びポケット部形成装置16が配設されている。そして、予熱装置15によって容器フィルム3が予熱されて該容器フィルム3が比較的柔軟になった状態において、ポケット部形成装置16によって容器フィルム3の所定位置に複数のポケット部2が形成される。ポケット部2の形成は、間欠送りロール14による容器フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。本実施形態では、ポケット部形成装置16によって「ポケット部形成手段」が構成される。また、容器フィルム3にポケット部2を形成する工程が「ポケット部形成工程」に相当する。
【0053】
間欠送りロール14から送り出された容器フィルム3は、テンションロール18、ガイドロール19及びフィルム受けロール20の順に掛装されている。フィルム受けロール20は、容器フィルム3を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール18は、間欠送りロール14とフィルム受けロール20との搬送動作の相違による容器フィルム3の弛みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。
【0054】
ガイドロール19とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、印刷充填装置21及び検査装置22が配設されている。
【0055】
印刷充填装置21は、錠剤5に印刷を施して印刷部5eを形成する機能と、錠剤5をポケット部2に充填する機能とを有する。印刷充填装置21の詳細については後述する。本実施形態では、印刷充填装置21が「印刷充填手段」に相当する。また、錠剤5に印刷を施すとともに、ポケット部2に該錠剤5を充填する工程が「印刷充填工程」に相当する。
【0056】
検査装置22は、例えば錠剤5が各ポケット部2に確実に充填されているか否か、錠剤5自体の異常(例えば破損など)の有無、印刷部5eの良否、ポケット部2への異物混入の有無などに関する検査を行う。
【0057】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール24によって加熱ロール25の方へと案内されている。
【0058】
加熱ロール25は、前記フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、両フィルム3,4が両ロール20,25間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3にカバーフィルム4が取着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる。これにより、錠剤5が各ポケット部2に収容された帯状のPTPフィルム6が製造される。本実施形態では、フィルム受けロール20及び加熱ロール25によって「取着手段」が構成される。また、容器フィルム3にカバーフィルム4を取着する工程が「取着工程」に相当する。
【0059】
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。間欠送りロール28は、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール27は、フィルム受けロール20と間欠送りロール28との搬送動作の相違によるPTPフィルム6の弛みを防止してPTPフィルム6を常時緊張状態に保持する。
【0060】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。間欠送りロール32は、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール31は、前記間欠送りロール28,32間でのPTPフィルム6の弛みを防止する。
【0061】
間欠送りロール28とテンションロール31との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット形成装置33及び刻印装置34が配設されている。スリット形成装置33は、PTPフィルム6の所定位置に切離用スリットを形成する。刻印装置34はPTPフィルム6の所定位置(例えばタグ部)に刻印を付す。尚、
図1等では、切離用スリットや刻印の図示を省略している。
【0062】
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム6は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム6をPTPシート1単位にその外縁を打抜く、つまりPTPフィルム6からPTPシート1を切離す機能を有する。本実施形態では、シート打抜装置37が「切離手段」を構成する。また、PTPフィルム6を打抜いてPTPシート1を得る工程が「切離工程」に相当する。
【0063】
シート打抜装置37によって得られたPTPシート1は、コンベア39によって搬送され、完成品用ホッパ40に一旦貯留される。但し、前記検査装置22によって不良判定がなされた場合、この不良判定に係るPTPシート1は、完成品用ホッパ40へ送られることなく、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。排出されたPTPシート1は廃棄される。
【0064】
前記連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。そして、シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残った残材部(スクラップ部)を構成する不要フィルム部42は、テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。裁断装置41は、不要フィルム部42を所定寸法に裁断する。裁断された不要フィルム部42(スクラップ)はスクラップ用ホッパ43に貯留された後、廃棄処理される。
【0065】
次いで、印刷充填装置21の構成について詳しく説明する。
図6,7に示すように、印刷充填装置21は、供給装置51、搬送装置52、錠剤検査装置53、印刷装置54、印刷検査装置55、不良品除去装置56、列数変換装置57、充填装置58及び制御装置59を備えている。本実施形態では、供給装置51が「供給手段」を構成し、同様に、搬送装置52が「搬送手段」を、錠剤検査装置53及び印刷検査装置55がそれぞれ「内容物検査手段」を、印刷装置54が「印刷手段」を、不良品除去装置56が「不良品排出手段」を、充填装置58が「充填手段」を構成する。
【0066】
供給装置51は、多数の錠剤5が貯留された図示しない貯留部(例えばホッパ等)から搬送装置52へと錠剤5を供給する。供給装置51は、供給シュート511及び供給ドラム512を備えている。尚、前記貯留部に貯留された錠剤5は、印刷部5eが形成されていないものである。
【0067】
供給シュート511は、前記貯留部から供給された錠剤5を1つずつ供給ドラム512へと受け渡すものであり、供給ドラム512により搬送される錠剤5の列数と同数(本実施形態では、3つ)並んで設けられている。各供給シュート511は、筒状をなしており、錠剤5を鉛直方向に一列で積載できるように構成されている。また、各供給シュート511は、その下側開口部が供給ドラム512の回転軸の真上において該供給ドラム512に近接した状態で設置されている。
【0068】
各供給シュート511の下側開口部近傍には、該開口部を開閉可能なシャッタ511aが設けられている。これらシャッタ511aの開閉動作によって、錠剤5が供給シュート511から1つずつ落下して供給ドラム512へ供給される。
【0069】
供給ドラム512は、供給シュート511から供給された錠剤5を受け取った上で、該錠剤5を吸着保持しつつ、搬送装置52側へと搬送する。供給ドラム512は、円筒形状をなすとともに、連続回転可能に構成されている。尚、シャッタ511a及び供給ドラム512の動作は、制御装置59によって制御される。
【0070】
供給ドラム512の外周面には、錠剤5を吸着保持するための吸着部512aが多数形成されている。各吸着部512aは、供給ドラム512の回転軸の真上から真下付近まで移動する間、所定の吸引手段(図示せず)により負圧が供給された状態となるように構成されている。これにより、各吸着部512aは、供給ドラム512の回転軸の真上から真下付近まで移動する間、錠剤5を吸着保持する。一方、各吸着部512aは、供給ドラム512の回転軸の真下から真上付近まで移動する間、大気に開放された状態となるように構成されている。これにより、吸着部512aにより吸着保持された錠剤5は、供給ドラム512の回転軸の真下にて吸着解除されて、搬送装置52へと供給される。
【0071】
また、吸着部512aは、供給ドラム512の周方向及び軸方向に所定間隔で規則的に配列されている。本実施形態において、吸着部512aは、供給ドラム512の周方向に沿って等間隔で多数設けられている。そして、この周方向に並ぶ吸着部512aの列が、供給ドラム512の軸方向に沿って等間隔に複数設けられている。尚、吸着部512aの列数は、搬送装置52により搬送される錠剤5の列数と同一とされる。
【0072】
本実施形態では、1の供給シュート511と、該供給シュート511の下側開口部を開閉する1のシャッタ511aと、供給ドラム512のうち該供給シュート511から錠剤5を受け取って搬送装置52へと供給する部分(供給ドラム512の周方向に沿って並ぶ1列分の吸着部512aを含む)とによって、供給部513が構成されている。供給部513は、搬送装置52による錠剤5の搬送方向と直交する方向に並ぶ1列分の錠剤5の数と同数設けられている。そして、これら供給部513のそれぞれから搬送装置52に対し錠剤5が1つずつ供給されるようになっている。本実施形態では、供給装置51(各供給部513)から搬送装置52に錠剤5を供給する工程が「供給工程」に相当する。
【0073】
搬送装置52は、供給装置51から供給された錠剤5を吸着保持しつつ、列数変換装置57側へと搬送するものである。搬送装置52は、一対のプーリ521,522と、これらプーリ521,522に掛け渡された搬送ベルト523とを備えている。
【0074】
一対のプーリ521,522は、所定間隔をあけた状態で配設されており、供給ドラム512の回転軸と平行な回転軸にて回転可能とされている。一対のプーリ521,522の動作は、制御装置59によって制御されている。
【0075】
搬送ベルト523は、プーリ521,522の回転に伴い回転移動する。また、搬送ベルト523は、錠剤5を吸着保持するための吸着孔523aを備えている。
【0076】
吸着孔523aは、搬送ベルト523の移動方向つまり錠剤5の搬送方向に沿って、等間隔で多数並んで設けられている。そして、所定の第一数値(但し、自然数)をmとしたとき、搬送ベルト523の移動方向(錠剤5の搬送方向)に沿って並ぶ吸着孔523aの列がm列形成されている。本実施形態において、第一数値(つまりm)は「3」である。
【0077】
搬送ベルト523で囲まれてなる、搬送ベルト523の内部空間には、図示しない吸引手段によって負圧が供給されており、該内部空間は真空状態となっている。これにより、吸着孔523aに負圧が供給された状態となり、搬送装置52は、吸着孔523aによって錠剤5を吸着保持しつつ、プーリ521,522の回転に伴い、m列に並んだ状態で錠剤5を搬送する。これにより、搬送装置52は、錠剤5の搬送方向と直交する方向に沿って複数(m個)の錠剤5を並べた状態で、該直交する方向に並ぶ各列の錠剤5を印刷装置54(後述する第一印刷ポジションP1及び第二印刷ポジションP2)へと順次搬送していくことになる。本実施形態では、搬送装置52によって錠剤5を搬送する工程が「搬送工程」に相当する。尚、
図6等では、不良品除去装置56や後述するブローノズル571aを示すべく、搬送ベルト523の内部空間が外部に開放された状態を示しているが、実際には、該内部空間は密閉された状態となっている。
【0078】
また、搬送装置52には図示しないエンコーダが設けられており、該エンコーダから制御装置59へとプーリ521,522の回転量(移動量)に関する信号が所定時間毎に送信されるようになっている。これにより、制御装置59は、搬送装置52によって搬送される錠剤5の位置を把握可能となっている。
【0079】
錠剤検査装置53は、
図8に示すように、搬送装置52による錠剤5の搬送経路に沿って設けられており、搬送される錠剤5の検査を行う。錠剤検査装置53は、搬送される錠剤5を撮像するためのカメラ、及び、該カメラにより得られた撮像画像に基づき錠剤5の良否を判定する錠剤判定装置(それぞれ不図示)を備えている。錠剤5の撮像画像や前記錠剤判定装置による判定結果は、制御装置59へと送信される。
【0080】
印刷装置54は、所定のインクジェット方式(例えばピエゾ方式やサーマル方式)を用いた印刷装置であって、錠剤検査装置53の下流において、搬送される錠剤5に対し非接触で印刷を行う。印刷装置54は、第一印刷機構541及び第二印刷機構542を備えている。第一印刷機構541は、所定の第一印刷ポジションP1に錠剤5が搬送される度に該錠剤5に印刷を施し、第二印刷機構542は、所定の第二印刷ポジションP2に錠剤5が搬送される度に該錠剤5に印刷を施す。本実施形態では、両印刷ポジションP1,P2がそれぞれ「印刷ポジション」に相当する。
【0081】
第一印刷機構541は、印刷部5eのうちのある色の部分(例えば「ABC」の部分)を錠剤5に形成し、第二印刷機構542は、印刷部5eにおける前記色とは異なる色の部分(例えば「20」の部分)を錠剤5に形成する。本実施形態では、印刷部5eが2色で構成されているため、1の色を担当する第一印刷機構541と、その他の色を担当する第二印刷機構542とが設けられている。
【0082】
各印刷機構541,542は、印刷ポジションP1,P2に到達した錠剤5のそれぞれに個別に印刷を施すための複数の印刷ヘッド54aを備えている(
図14参照)。各印刷ヘッド54aは、搬送方向と直交する方向に並ぶ1列分の錠剤5の数(m)と同数設けられており、該搬送方向と直交する方向に並んでいる。各印刷ヘッド54aは、印刷ポジションP1,P2を通過する各錠剤5に向けてインクを吐出することで、各錠剤5に印刷を施して印刷部5eを形成する。
【0083】
また、各印刷ヘッド54aは、インクの液滴を吐出可能な複数のノズルを一定間隔で配列した2列のノズル列La,Lbを備えている。ノズル列Laは、x個のノズルNa(Na1,Na2,Na3,Na4,Na5,・・・,Nax)をヘッド幅方向に一定間隔で備え、ノズル列Lbは、x個のノズルNb(Nb1,Nb2,Nb3,Nb4,Nb5,・・・,Nbx)をヘッド幅方向に一定間隔で備えている。各ノズルNa,Nbに対し、図示しないインクタンクから所定の可食性インクが供給されるようになっている。
【0084】
また、印刷装置54には、ノズルNa,Nbの内部に詰まった塵埃や増粘又は固形化したインク等を外部に排出する加圧パージを行うクリーニング機構や、パージ後の印刷ヘッド54aを拭くワイピング機構などを備えたクリーニング装置(不図示)が設けられている。クリーニング装置による各印刷ヘッド54aのクリーニングは、一定時間毎に行われるように設定されている。
【0085】
加えて、印刷装置54は、制御装置59によって印刷位置が制御されるようになっている。その結果、搬送されている各錠剤5の状態(本実施形態では位置)がそれぞれ異なるものであっても、各錠剤5の適切な位置に印刷部5eが形成されるようになっている。本実施形態では、印刷装置54により錠剤5に印刷を施す工程が「印刷工程」に相当する。
【0086】
印刷検査装置55は、印刷装置54によって印刷が施された錠剤5を検査するための装置であり、特に錠剤5における印刷部5eの検査を行う。印刷検査装置55は、搬送される錠剤5を撮像するためのカメラ、及び、該カメラにより得られた撮像画像に基づき印刷部5eひいては錠剤5の良否を判定する印刷判定装置(それぞれ不図示)を備えている。前記印刷判定装置による判定結果は、制御装置59へと送信される。本実施形態では、錠剤検査装置53や印刷検査装置55によって錠剤5を検査する工程が「内容物検査工程」に相当する。
【0087】
不良品除去装置56は、錠剤検査装置53や印刷検査装置55によって不良と判定された錠剤5を系外(つまり搬送装置52による搬送経路の外)へと排出するための装置である。不良品除去装置56は、印刷検査装置55よりも下流において、搬送ベルト523の内部空間に配置されている(
図6,7参照)。
【0088】
不良品除去装置56は、
図9に示すように、吸着孔523aに対しブローを行うことで錠剤5の吸着保持を解除して、該錠剤5を系外へと排出可能な不良品用ブローノズル561を複数備えている。各不良品用ブローノズル561は、錠剤5の搬送方向と直交する方向に沿ってm個並んで設けられており、該搬送方向に沿って並ぶ1列の錠剤5の排出をそれぞれ担当する。これにより、錠剤検査装置53や印刷検査装置55によって不良と判定された錠剤5のみを選択的に系外へと排出可能である。尚、不良品用ブローノズル561のブロー動作によって排出された錠剤5は、所定の不良品収容部61へと投入される。本実施形態では、不良と判定された錠剤5を系外に排出する工程が「不良品排出工程」に相当する。
【0089】
列数変換装置57は、搬送装置52及び充填装置58間に設けられており、錠剤5を貯留する機能(バッファ機能)と、充填装置58による充填時における錠剤5の列数を、搬送装置52による搬送時における錠剤5の列数よりも増大させる機能(列数変換機能)とを備えた装置である。前記第一数値よりも多数である第二数値をnとしたとき(但し、nは自然数)、列数変換装置57により、搬送装置52及び充填装置58間において、錠剤5の列数はmからnに変換される。尚、本実施形態において、第二数値(つまりn)は「5」である。
【0090】
列数変換装置57は、
図10~12に示すように、排出装置571及びバッファ搬送装置572を備えている。
【0091】
排出装置571は、搬送装置52によって搬送される錠剤5を選択的にバッファ搬送装置572側へと排出する。排出装置571は、搬送ベルト523の内部に配置された複数のブローノズル571aを備えている。
【0092】
各ブローノズル571aは、吸着孔523aに対しブローを行うことで錠剤5の吸着保持を解除して、該錠剤5を排出する。各ブローノズル571aは、搬送装置52による錠剤5の搬送方向に沿ってn個並んでおり、また、このブローノズル571aの列は、前記搬送方向に沿って並ぶ吸着孔523aの列数に対応するようにしてm列設けられている。従って、m×n本(本実施形態では15本)のブローノズル571aが設けられている。
【0093】
また、前記搬送方向に沿った各ブローノズル571aの間隔は、前記搬送方向に沿った各吸着孔523aの間隔と同一とされており、前記搬送方向と直交する方向に沿った各ブローノズル571aの間隔は、前記搬送方向と直交する方向に沿った各吸着孔523aの間隔と同一とされている。これにより、各ブローノズル571aにおけるブロー口〔気体(例えばエア)の吹き出し口〕の全てが、一定タイミング毎に、吸着孔523aと重なるようになっている。
【0094】
バッファ搬送装置572は、排出装置571によって排出されて落下した錠剤5を貯留(バッファ)しつつ、該錠剤5を充填装置58側へと搬送する機能と、錠剤5のバッファ量を把握する機能とを備えた装置である。バッファ搬送装置572は、受取部572a、自重落下搬送部572b、直進フィーダ572c及びバッファ量把握装置572dを備えている。本実施形態では、直進フィーダ572cが「バッファ手段」を構成し、バッファ量把握装置572dが「バッファ量把握手段」を構成する。
【0095】
受取部572aは、排出装置571によって排出されて落下した錠剤5を受け取るためのものである。受取部572aは、n個設けられており、各受取部572aは、少なくとも上面が斜めになった底壁と、該底壁に立設されて錠剤5の搬送経路を形成する隔壁とによって構成されている。
【0096】
各受取部572aは、搬送装置52による錠剤5の搬送方向と直交する方向に延びるとともに、該搬送方向に沿って並んだ状態で設けられている。各受取部572aは、前記搬送方向と直交する方向に並ぶブローノズル571aの列の鉛直下方に配置されている。従って、1列に並んだm個のブローノズル571aのいずれかによって排出された錠剤5は、このブローノズル571aの列に対応する1の受取部572aへと落下する。受取部572aへと落下した錠剤5は、傾斜面である前記底壁の上面を伝わって自重落下搬送部572bへと搬送されていく。
【0097】
自重落下搬送部572bは、少なくとも上面が斜めになった底壁と、該底壁に立設された隔壁とによって構成されており、各受取部572aと接続されたn本の搬送路を有している。自重落下搬送部572bは、平面視したときにほぼ直角に湾曲する形状とされている。受取部572aから自重落下搬送部572bに至った錠剤5は、自重によって、搬送方向を約90度変えつつ直進フィーダ572cへと搬送されていく。
【0098】
直進フィーダ572cは、n本の錠剤5の搬送路を備えており、これら搬送路が自重落下搬送部572bの搬送路と接続されている。直進フィーダ572cは、錠剤検査装置53や印刷検査装置55によって良判定された(不良判定されていない)錠剤5を貯留しつつ、所定の振動が加えられることで、貯留された錠剤5を充填装置58側へと徐々に搬送していく。直進フィーダ572cの最下流に搬送された錠剤5は、充填装置58の後述する充填用シュート581へと供給される。本実施形態では、錠剤検査装置53や印刷検査装置55によって良判定された錠剤5を直進フィーダ572cに貯留する工程が「バッファ工程」に相当する。
【0099】
バッファ量把握装置572dは、直進フィーダ572cにおける錠剤5のバッファ量(貯留量)を把握するための装置である。バッファ量把握装置572dは、直進フィーダ572cに貯留された錠剤5を撮像するためのカメラ、及び、該カメラにより得られた撮像画像に基づき錠剤5のバッファ量を算出するバッファ量算出装置(それぞれ不図示)を備えている。
【0100】
本実施形態において、前記バッファ量算出装置は、カメラにより得られた撮像画像を二値化処理して錠剤5に対応する部分を抽出するとともに、抽出した部分の面積に基づいて錠剤5のバッファ量を算出する。尚、前記撮像画像における錠剤5に相当する部分とそれ以外の部分との面積比に基づいてバッファ量を算出してもよい。また、前記撮像画像における錠剤5の数を計測し、計測した数に基づきバッファ量を算出してもよい。バッファ量把握装置572dによって把握されたバッファ量に関する情報は、制御装置59へと出力される。本実施形態では、直進フィーダ572cに貯留された錠剤5のバッファ量を把握する工程が「バッファ量把握工程」に相当する。
【0101】
充填装置58は、直進フィーダ572cに貯留された錠剤5を、帯状の容器フィルム3に形成されたポケット部2へと充填する。充填装置58は、
図13に示すように、充填用シュート581及び充填ドラム582を備えている。
【0102】
充填用シュート581は、直進フィーダ572cに貯留された錠剤5を1つずつ充填ドラム582へと受け渡すものであり、容器フィルム3の幅方向に沿ったポケット部2の数と同数(本実施形態ではn個)設けられている。各充填用シュート581は、基本的には、前記供給シュート511と同様の機能を有しており、所定のシャッタ(不図示)を開閉させることで、錠剤5を1つずつ落下させて充填ドラム582へと供給する。
【0103】
充填ドラム582は、充填用シュート581から供給された錠剤5を吸着保持しつつ、搬送される容器フィルム3のポケット部2へと該錠剤5を充填する。充填ドラム582は、円筒形状をなすとともに、連続回転可能に構成されている。
【0104】
また、充填ドラム582の外周面には、錠剤5を吸着保持するための吸着部582aが多数形成されている。各吸着部582aは、基本的には、前記供給ドラム512と同様の機能を備えており、充填ドラム582の回転軸の真上から真下付近まで移動する間、錠剤5を吸着保持する一方、充填ドラム582の回転軸の真下にて錠剤5の吸着を解除して、該錠剤5をポケット部2へと投入する。
【0105】
また、吸着部582aは、充填ドラム582の周方向及び軸方向に所定間隔で規則的に配列されている。本実施形態において、吸着部582aは、充填ドラム582の周方向に沿って等間隔で多数設けられている。そして、この周方向に並ぶ吸着部582aの列が、容器フィルム3の幅方向に沿ったポケット部2の数に対応するようにして、充填ドラム582の軸方向に沿って等間隔にn列設けられている。これにより、充填装置58は、吸着部582aに吸着保持されてn列に並んだ錠剤5を、容器フィルム3の幅方向にn個並んだポケット部2へと順次充填していく。本実施形態では、充填装置58によって錠剤5をポケット部2に充填する工程が「充填工程」に相当する。
【0106】
加えて、本実施形態では、錠剤5の包装能力ひいてはPTPシート1の生産性が十分に高いものとなるように、充填ドラム582の回転速度や容器フィルム3の搬送速度が設定されている。“錠剤5の包装能力”とは、充填装置58によって単位時間当たりにポケット部2に充填される錠剤5の数に相当する。錠剤5の包装能力は、基本的には一定で維持される。
【0107】
制御装置59は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、各種データを一時的に記憶するRAM、情報を記憶するための記憶媒体(例えばハードディスク等)などを備えている。制御装置59は、CPUが所定のプログラムを実行することによって、印刷充填装置21の各装置に対する制御処理を実行する。
【0108】
また、制御装置59は、印刷部5eに関する印刷データを予め記憶している。そして、錠剤5に印刷部5eを形成する際に、制御装置59は次のようにして動作する。すなわち、制御装置59は、錠剤検査装置53の前記カメラにより得られた撮像画像に基づき、錠剤5の状態(本実施形態では、位置)を把握する。そして、制御装置59は、把握した錠剤5の状態に基づきインクの吐出対象として適切なノズルNa,Nbを選択し、この選択したノズルNa,Nbからインクを吐出するように印刷装置54を制御する。また、このとき、制御装置59は、搬送装置52の前記エンコーダからの信号に基づき、印刷ポジションP1,P2に錠剤5が到達したタイミングで印刷(インクの吐出)を行うように印刷装置54を制御する。これにより、印刷ポジションP1,P2に到達した錠剤5のそれぞれに対し印刷部5eが適切に形成される。
【0109】
また、制御装置59は、錠剤検査装置53及び印刷検査装置55による判定結果に基づき不良品の錠剤5を特定可能とされている。そして、制御装置59は、搬送装置52の前記エンコーダからの信号に基づき、不良品の錠剤5が不良品除去装置56に到達するタイミングを算出するとともに、この算出したタイミングで、該錠剤5の吸着を解除するためのブローを行うように不良品用ブローノズル561を制御する。その結果、不良品の錠剤5は、系外へと排出されて不良品収容部61に投入される。
【0110】
加えて、制御装置59は、排出装置571の各ブローノズル571aを選択的にブロー動作させることで、排出装置571による錠剤5の排出ポジションを制御する。排出ポジションを変化させることで、錠剤5の受け渡し対象となる受取部572aが変化する。
【0111】
また、制御装置59は、受取部572aのそれぞれに対し錠剤5が均等に振り分けられるように、各ブローノズル571aの動作を制御する。本実施形態において、制御装置59は、基本的には、搬送方向と直交する方向に並んだm個の吸着孔523a(錠剤5)が最上流に位置するブローノズル571aの配設位置へと到達したタイミング(排出タイミング)となる度に、m個の受取部572aに錠剤5を1つずつ排出して、最終的に、各受取部572aに同数の錠剤5が受け渡されるように各ブローノズル571aの動作を制御する。
【0112】
例えば、複数の受取部572aを、錠剤5の搬送方向に沿って上流側から順に、(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)と番号付けした場合、制御装置59は、ある排出タイミングでは(1)、(2)、(3)の受取部572aに、次の排出タイミングでは(1)、(4)、(5)の受取部572aに、次の排出タイミングでは(2)、(3)、(4)の受取部572aに、次の排出タイミングでは(1)、(2)、(5)の受取部572aに、次の排出タイミングでは(3)、(4)、(5)の受取部572aに、錠剤5を1つずつ受け渡すように各ブローノズル571aの動作を制御する。
【0113】
但し、不良品除去装置56により不良品の錠剤5が排出された場合、制御装置59は、錠剤検査装置53及び印刷検査装置55により良品と判定された錠剤5のみを排出するように、各ブローノズル571aの動作を制御する。このとき、制御装置59は、不良品の錠剤5による影響を極力小さなものとして、各受取部572aに受け渡される錠剤5が均等となるように、動作対象となるブローノズル571aを選択する。ここで、制御装置59は、各受取部572aに受け渡された錠剤5の個数を記憶するように構成されており、動作対象となるブローノズル571aを、この記憶した個数を利用して選択する。尚、上記の「均等」とは、厳密に均等である場合、つまり各受取部572aに振り分けられる錠剤5の個数が厳密に同一である場合のみならず、各受取部572aに振り分けられる錠剤5の個数差がほとんどない(例えば個数差が数個以内に抑えられる)場合も含む。
【0114】
さらに、制御装置59は、印刷装置54による印刷を継続したまま、バッファ量把握装置572dによって把握されたバッファ量に基づき、印刷装置54によって単位時間当たりに印刷される錠剤5の数(つまり“印刷能力”)を調節する。本実施形態における制御装置59は、印刷能力を調節するために、搬送装置52(プーリ521,522)の動作を制御して、搬送装置52による錠剤5の搬送速度を変更する。搬送速度の変更に伴い印刷ポジションP1,P2に到達する単位時間当たりの錠剤5の数が調節されることで印刷能力が調節される。
【0115】
より詳述すると、制御装置59は、
図15に示すように、バッファ量把握装置572dによって把握されたバッファ量が予め設定された下限値に到達したときには錠剤5の搬送速度が所定の第一速度V1となる一方、把握されたバッファ量が予め設定された上限値に到達したときには錠剤5の搬送速度が第一速度V1よりも低い第二速度V2となるように、搬送装置52を制御する。
図15では、錠剤5の搬送速度を実線で、バッファ量を点線でそれぞれ大まかに示している。また、本実施形態において錠剤5の包装能力は一定で維持されるところ、
図15では、包装能力を一点鎖線で大まかに示している。本実施形態では、制御装置59によって「印刷数調節手段」が構成される。また、単位時間当たりに印刷される錠剤5の数を調節する工程が「印刷数調節工程」に相当する。
【0116】
尚、
図16に示すように、印刷装置54による印刷不良の発生率(不良率)は、基本的には経時的に増大していく可能性がある(又は、傾向がある)。不良率の増大に伴い、直進フィーダ572cに供給可能な錠剤5の最大量は徐々に減少していため、錠剤5の搬送速度を第一速度V1で維持する時間は徐々に長くなっていく(
図15参照)。本実施形態における第一速度V1は、不良率が比較的大きな値となる段階(例えば、前記クリーニング装置による印刷ヘッド54aのクリーニングを行う直前の段階など)であっても、錠剤5のバッファ量が徐々に増加することとなる速度に設定されている。一方、本実施形態における第二速度V2は、不良率が非常に小さな値となる段階(前記クリーニング装置によるクリーニングを行った直後の段階など)であっても、錠剤5のバッファ量が徐々に減少することになる速度に設定されている。
【0117】
尚、不良率とは、基本的には、錠剤5の印刷数に対する印刷検査装置55により不良と判定された錠剤5の数の割合をいう。但し、不良率の算出式は、印刷不良の錠剤5の数の増減に対応して不良率が増減するものである限り、適宜変更可能である。また、本実施形態において、不良率は、前記クリーニング装置による印刷ヘッド54aのクリーニング実行時に初期値(0)にリセットされるようになっている。
【0118】
また、制御装置59は、印刷能力を調節する際には、錠剤5の搬送速度に合うように、シャッタ511aや供給ドラム512の動作を制御するようになっている。
【0119】
以上詳述したように、本実施形態によれば、錠剤検査装置53及び印刷検査装置55によって良判定された錠剤5のみが直進フィーダ572cに貯留され、充填装置58によって該直進フィーダ572cに貯留された錠剤5がポケット部2に充填される。従って、印刷不良などの生じた不良品の錠剤5がそのままポケット部2に充填されるといった事態を極力抑えることができる。これにより、不良品の錠剤5に起因して、前記不良シート排出機構によってPTPシート1が排出されるとともに、該PTPシート1が廃棄されることを極力防止できる。その結果、PTPシート1を構成するフィルム3,4、及び、PTPシート1に含まれる良品の錠剤5が無駄になることをより確実に防止でき、生産コストの増大抑制を効果的に図ることができる。
【0120】
また、印刷装置54による印刷を継続したまま、錠剤5のバッファ量に基づき、印刷装置54によって単位時間当たりに印刷される錠剤5の数を調節することができる。従って、不良品除去装置56によって不良品の錠剤5が排出されることを見越して、印刷装置54による印刷能力が錠剤5の包装能力よりも十分に高くなるように設定可能(本実施形態では、錠剤5の搬送速度を第一速度V1に設定可能)としつつ、錠剤5に対する印刷を停止させることなくバッファ量を調節することができる。これにより、バッファ量が不十分となって錠剤5の包装(ポケット部2に対する錠剤5の充填)に支障が生じることを抑制しつつ、印刷装置54におけるインクの乾燥による目詰まり等を生じにくくすることができる。その結果、良好な包装能力をより確実に確保可能としつつ、印刷不良の発生を効果的に抑制することができる。
【0121】
さらに、錠剤5の包装能力を一定に保つことができることから、容器フィルム3の搬送態様についても一定に保つことができる。これにより、予熱装置15による容器フィルム3の予熱時間にばらつきが生じることを防止でき、ポケット部形成装置16によって適切な形状のポケット部2をより確実に形成することができる。その結果、ポケット部2の形成不良による生産コストの増大を抑制することができる。
【0122】
加えて、錠剤5の搬送速度を変更することによって単位時間当たりに印刷される錠剤5の数(印刷能力)が調節される。従って、特別な装置を設けたり複雑な制御を行ったりすることなく、印刷能力を調節することができる。これにより、装置の製造やメンテナンスなどに係るコストの増大抑制を図ることができる。
〔第2実施形態〕
次いで、第2実施形態について上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態において、制御装置59は、搬送装置52による錠剤5の搬送速度を変更して、印刷ポジションP1,P2に到達する単位時間当たりの錠剤5の数を調節することで、印刷能力を調節するように構成されている。これに対し、本第2実施形態において、制御装置59は、供給装置51から搬送装置52に供給される単位時間当たりの錠剤5の数を変更して印刷ポジションP1,P2に到達する単位時間当たりの錠剤5の数を調節することで、印刷能力を調節するように構成されている。
【0123】
より詳しくは、制御装置59は、基本的には、供給ドラム512の各吸着部512aの全てに錠剤5を受け渡すように、シャッタ511aを制御する。一方、制御装置59は、把握されたバッファ量が予め設定された上限値に到達したときには、該バッファ量が所定の下限値に到達するまでの間、供給ドラム512の回転方向に沿って1列おきに吸着部512aに錠剤5を受け渡すように、シャッタ511aを制御する(
図17参照)。これにより、印刷ポジションP1,P2に到達する単位時間当たりの錠剤5の数ひいては印刷能力が調節される。
【0124】
また、各吸着部512aの全てに錠剤5を受け渡すパターンでは、不良率が比較的大きな値となる段階であってもバッファ量が徐々に増加する一方、特定の吸着部512aのみに錠剤5を受け渡すパターンでは、不良率が非常に小さな値となる段階であってもバッファ量が徐々に減少するように、錠剤5の搬送速度が設定されている。
【0125】
尚、上記では、二種類の供給パターンによって供給装置51から搬送装置52に対する錠剤5の供給が行われるようになっているが、供給パターンが三種類以上であってもよい。例えば、錠剤5のバッファ量に応じて錠剤5の供給対象となる吸着部512aを三種類以上の複数のパターンの中から選択可能とすることで、三種類以上の供給パターンによって供給装置51から搬送装置52へと錠剤5を供給可能に構成してもよい。
【0126】
加えて、本第2実施形態では、上記第1実施形態と同様、制御装置59は、受取部572aのそれぞれに対し錠剤5が均等に振り分けられるように、各ブローノズル571aの動作を制御する。例えば、制御装置59は、基本的には、前記排出タイミングとなる度に、1個又は2個の受取部572aに錠剤5を1つずつ排出して、最終的に、各受取部572aに同数の錠剤5が受け渡されるように各ブローノズル571aの動作を制御する。
【0127】
以上、本第2実施形態によれば、供給装置51から搬送装置52に供給される単位時間当たりの錠剤5の数を変更することで、印刷能力を調節する。従って、特別な装置を設けたり複雑な制御を行ったりすることなく、印刷能力を調節することができる。これにより、PTP包装機10の製造やメンテナンスなどに係るコストの増大抑制を図ることができる。
【0128】
尚、上記第1実施形態に係る技術思想と、上記第2実施形態に係る技術思想とを併用してもよい。すなわち、搬送装置52による錠剤5の搬送速度を変更すること、及び、供給装置51から搬送装置52に対する錠剤5の供給量を変更することの双方を利用して、印刷能力を調節するように構成してもよい。
〔第3実施形態〕
次いで、第3実施形態について上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態では、m個の供給部513の全てから搬送装置52に対し錠剤5が供給されるように構成されている。これに対し、本第3実施形態では、印刷検査装置55による検査結果に応じて、搬送装置52に対する錠剤5の供給を停止させる供給部513が決定され、決定された供給部513から搬送装置52に対する錠剤5の供給が停止されるように構成されている。
【0129】
詳述すると、常には各供給部513のそれぞれから搬送装置52に対し錠剤5が1つずつ供給されるところ、制御装置59は、印刷検査装置55から送られた印刷部5eの良否に係る判定結果に基づき、搬送装置52への錠剤5の供給を停止させる供給部513を決定する。例えば、制御装置59は、前記判定結果に基づき、搬送方向に沿って並ぶ錠剤5の列毎に、印刷部5eの不良が生じる割合を算出する。その上で、制御装置59は、ある列における該割合が予め設定された許容範囲から外れた場合、すなわち、ある印刷ヘッド54aにより印刷の施された錠剤5に印刷不良が集中的に生じており、該印刷ヘッド54aに印刷に係る異常が生じていると推定される場合には、その列に対応する供給部513を停止対象として決定する。
【0130】
そして、制御装置59は、決定された供給部513におけるシャッタ511aを常に閉じた状態で維持するように該シャッタ511aを制御する。これにより、決定された供給部513から搬送装置52に対する錠剤5の供給が停止される。その結果、
図18に示すように、錠剤5は、列を減じた状態で搬送されていく。本第3実施形態では、制御装置59が「停止対象決定手段」を構成し、シャッタ511aが「供給停止手段」を構成する。また、印刷検査装置55の検査結果によって、搬送装置52への錠剤5の供給を停止させる供給部513を決定する工程が「停止対象決定工程」に相当し、決定された供給部513から搬送装置52に対する錠剤5の供給を停止する工程が「供給停止工程」に相当する。
【0131】
さらに、印刷装置54による印刷工程では、各印刷ヘッド54aによって常には1列分(m個)の錠剤5のそれぞれに個別に印刷が施されるところ、制御装置59は、錠剤5の供給を停止した場合、複数の印刷ヘッド54aのうち錠剤5の供給を停止した供給部513に対応するもの以外の印刷ヘッド54aによって錠剤5に対する印刷を行うように、印刷装置54を制御する。つまり、制御装置59は、ある供給部513から搬送装置52に対する錠剤5の供給が停止された場合であっても、錠剤5の印刷を停止させることなく継続させるように印刷装置54を制御する。
【0132】
尚、錠剤5の供給停止を行う場合、錠剤5の印刷数が減少することとなる。そこで、制御装置59は、印刷数の減少を補うべく、錠剤5の供給停止を行う場合には、錠剤5の搬送速度を増大させるように搬送装置52を制御する。これにより、稼働する印刷ヘッド54aによって単位時間当たりに印刷される錠剤5の数が増加する。その結果、錠剤5のバッファ量を十分に確保することができ、ポケット部2に対する錠剤5の充填(錠剤5の包装)に支障が生じることをより確実に防止可能となっている。
【0133】
以上、本第3実施形態によれば、錠剤5は、異常があると推定される印刷ヘッド54aへと供給されないように列を減じた状態で搬送されていく。これにより、錠剤5の印刷不良をより生じにくくすることができ、生産コストの増大抑制をより効果的に図ることができる。
【0134】
また、一部の印刷ヘッド54aにおいて印刷に係る異常があると推定される場合であっても、印刷を継続して行うことができ、生産性の低下をより確実に防ぐことができる。加えて、稼働する印刷ヘッド54aは、錠剤5に対する印刷を高頻度で行うことになるため、インクの乾燥などによる印刷不良をより生じにくくすることができる。
【0135】
さらに、錠剤5の供給を停止した供給部513に対応する印刷ヘッド54aのクリーニングは、その他の印刷ヘッド54aにおいて印刷の不良率がある程度増大した段階などにおいて、これら印刷ヘッド54aのクリーニングと同時に行えば済む。つまり、本実施形態では、一定時間毎に行われるクリーニングを行えば済み、イレギュラーなクリーニングを行う必要がない。これにより、クリーニング回数の増加を抑制して、クリーニングに係るコストの増大を抑えることができる。
【0136】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0137】
(a)上記実施形態において、「バッファ量把握手段」としてのバッファ量把握装置572dは、直進フィーダ572cに貯留された錠剤5を撮像するためのカメラを備えている。これに対し、例えば、制御装置59を、搬送装置52から受取部572aに受け渡された(排出された)錠剤5の数と、ポケット部2に充填された錠剤5の数とを取得可能にするとともに、取得した情報に基づき直進フィーダ572cにおける錠剤5のバッファ量を把握可能に構成することで、制御装置59によって「バッファ量把握手段」を構成してもよい。このように構成することで、錠剤5のバッファ量を把握するためのカメラが不要となり、製造コスト等を一層抑制することができる。
【0138】
(b)上記第1実施形態において、制御装置59は、錠剤5の搬送速度を第一速度V1及び第二速度V2の二段階で変更可能とされている。これに対し、制御装置59は、錠剤5の搬送速度を三段階以上の多段階で変更可能なものであってもよい。
【0139】
例えば、
図19(
図19では、錠剤5の搬送速度を実線で、バッファ量を点線で、包装能力を一点鎖線でそれぞれ大まかに表示している)に示すように、錠剤5のバッファ量が上限値に至ったときに錠剤5の搬送速度を第三速度V3に設定し、第三速度V3に設定されている場合に錠剤5のバッファ量が下限値超上限値未満の所定値に至ったときに錠剤5の搬送速度を第三速度V3よりも高い第四速度V4に設定するように構成してもよい。また、錠剤5のバッファ量が下限値に至ったときに錠剤5の搬送速度を第五速度V5に設定し、第五速度V5に設定されている場合に錠剤5のバッファ量が下限値超上限値未満の所定値に至ったときに錠剤5の搬送速度を第5速度V5よりも低い第六速度V6に設定するように構成してもよい。尚、第三速度V3及び第四速度V4は、不良率が非常に小さな値となる段階であっても錠剤5のバッファ量が徐々に減少するような速度とされる。一方、第五速度V5及び第六速度V6は、不良率が比較的大きな値となる段階であっても錠剤5のバッファ量が徐々に増大するような速度とされる。
【0140】
上記のように錠剤5の搬送速度を三段階以上の多段階で変更可能とすることで、単位時間当たりに印刷される錠剤5の数ひいてはバッファ量をより細かく調節することができる。さらに、錠剤5の搬送速度を急激に変化させずに済む。従って、搬送される錠剤5に対する印刷を精度よく行うことができ、印刷品質の向上を図ることができる。また、搬送装置52における錠剤5の受渡しに係る安定性を向上させることも可能となる。
【0141】
尚、上記では、搬送速度を四段階で変更可能な例を挙げているが、勿論、三段階又は五段階以上で搬送速度を変更可能に構成してもよい。また、搬送速度を徐々に(滑らかに)変更する構成は、搬送速度を三段階以上の多段階で変更することに含まれる。
【0142】
(c)印刷検査装置55による検査結果に基づき、印刷装置54による印刷の不良率(印刷不良の発生率)を算出する「不良率算出手段」を備え、PTPシート1の製造時に、印刷工程による印刷の不良率を算出する「不良率算出工程」を実行するように、PTP包装機10を構成してもよい。「不良率算出手段」は、例えば制御装置59により構成されるが、勿論その他の装置(印刷検査装置55など)により構成されていてもよい。
【0143】
さらに、「印刷数調節手段」としての制御装置59は、算出された不良率が増大するにつれて錠剤5の搬送速度の平均値が増大するように、該搬送速度を変更する機能を備えたものであってもよい。このような機能は、例えば次のようにして実現することができる。
【0144】
すなわち、例えば制御装置59に対し、不良率と、基準となる錠剤5の搬送速度(バッファ量を加味しない搬送速度)との関係を示すテーブルを予め記憶しておく。このテーブルにおいては、不良率が増大するにつれて、基準となる錠剤5の搬送速度(基準搬送速度)が増大するように設定される。但し、該テーブルにおいて、基準搬送速度は、不良率の増大に伴い徐々に(滑らかに)増大するものであってもよいし、段階的に増大するものであってもよい。そして、制御装置59を、前記テーブルと実際に算出された不良率とに基づいて基準搬送速度を決定するとともに、この基準搬送速度を錠剤5のバッファ量に応じて適宜調節し、この調節された速度となるように錠剤5の搬送速度を変更するように構成する。このように構成することで上記機能を実現することができる。この機能を具備することで、錠剤5の搬送速度やバッファ量などは、例えば、
図20(
図20では、錠剤5の搬送速度を実線で、バッファ量を点線で、包装能力を一点鎖線でそれぞれ大まかに表示している)のように推移することになる。
【0145】
上記機能によれば、不良品の錠剤5が経時的に増えていったとしても、バッファ量を十分に確保することがより確実に可能となる。従って、バッファ量が不十分となることに伴い錠剤5の包装(ポケット部2に対する錠剤5の充填)に支障が生じることを一層確実に抑制でき、ひいては良好な包装能力の確保を一層確実に図ることができる。
【0146】
また、バッファ量のみを基準として錠剤5の搬送速度を調節する場合と比較して、搬送速度の急激な変化を一層確実に防ぐことができる。これにより、印刷品質や搬送装置52における錠剤5の受渡しに係る安定性の更なる向上を図ることができる。
【0147】
尚、
図20では、前記テーブルにおいて基準搬送速度が不良率の増大に伴い徐々に(滑らかに)増大するように設定されている場合において、バッファ量が上限値に到達したときに錠剤5の搬送速度を基準搬送速度とし、バッファ量が下限値に到達したときに錠剤5の搬送速度を基準搬送速度に所定速度を加えた速度とする例を示している。このように基準搬送速度を経時的に変化させつつ、錠剤5のバッファ量に応じて基準搬送速度を調節し、この調節された速度となるように錠剤5の搬送速度を変更する構成は、搬送装置52による錠剤5の搬送速度を三段階以上の多段階で変更することに含まれる。
【0148】
さらに、算出された不良率が増大するにつれて錠剤5の搬送速度の平均値が増大するように、該搬送速度を変更する機能に加えて又は代えて、算出された不良率が減少するにつれて錠剤5の搬送速度の平均値が減少するように、該搬送速度を変更する機能を設けてもよい。この場合においても、適切なバッファ量を確保することがより確実に可能となり、バッファ量が不適切となることに伴う不具合の発生を抑制することができる。
【0149】
(d)上記実施形態における直進フィーダ572cの構成はあくまで一例である。従って、直進フィーダ572cは、例えば錠剤5の搬送路が途中で分岐し、最下流部においてn本の搬送路を有するものであってもよい。
【0150】
また、「バッファ手段」を直進フィーダ572c以外の装置によって構成してもよい。例えば、錠剤5を単に貯留する機能のみを備えたホッパや、管状の搬送用設備(例えば、チューブやコイルスプリング等)などによって「バッファ手段」を構成してもよい。
【0151】
(e)上記実施形態において、シャッタ511aは、供給シュート511の下側開口部に対応して設けられているが、供給シュート511の上側開口部(つまり錠剤5の投入口)に対応して設けられていてもよい。但し、供給装置51から搬送装置52に供給される単位時間当たりの錠剤5の数を変更することで印刷能力を調節する構成においては、錠剤5の搬送経路に沿ったシャッタ511a及び印刷装置54間の距離が極力小さなものとなる位置(つまり、前記搬送経路に沿った下流側の位置)に、シャッタ511aを設けることが好ましい。このような位置にシャッタ511aを配置することで、シャッタ511aを閉じた後に印刷の施される錠剤5をより少なくすることができ、錠剤5のバッファ量の制御がより容易となる。
【0152】
(f)上記実施形態において、搬送装置52における吸着孔523aは、搬送ベルト523の移動方向に沿って間隔をあけて設けられる構成とされているが、
図21(
図21,22ではシャッタ511a等を不図示)に示すように、前記移動方向に沿って吸着孔523bが連続する構成としてもよい。すなわち、搬送装置52は、スリット状の吸着孔523bを有するものであってもよい。この場合、搬送方向に沿った錠剤5同士の間隔が一定にならないことがあるが、前記エンコーダからの信号などに基づき錠剤5の位置を把握することで、錠剤5に対する印刷処理や検査処理、受取部572a側への錠剤5の排出処理などを適切に行うことができる。
【0153】
また、搬送ベルト523を備えない搬送装置を利用してもよい。例えば、搬送装置として吸着ドラムなどを用いてもよい。
【0154】
(g)上記実施形態では、列数変換装置57によって、錠剤5の列数が「3」から「5」に変更される例を挙げているが、変換前及び変換後の錠剤5の列数を適宜変更してもよい。例えば、
図22に示すように、列数変換装置57によって、錠剤5の列数を「2」から「5」に変更するようにしてもよい。
【0155】
(h)上記実施形態では、内容物として錠剤5を挙げているが、内容物は錠剤に限定されるものではない。
【0156】
また、上記実施形態では、錠剤5として、平面視円形状をなす円盤状の素錠(円盤形状の平錠)が例示されているが、錠剤の種別や形状等については、上記実施形態に限定されるものではない。例えば錠剤には、医薬のみならず、飲食用に用いられる錠剤なども含まれる。また、錠剤には、素錠のみならず、糖衣錠やフィルムコーティング錠、口腔内崩壊錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠などが含まれるのは勿論のこと、硬カプセルや軟カプセルなどの各種カプセル錠なども含まれる。
【0157】
さらに、内容物の形状に関しては、平面視円形状のみならず、例えば平面視多角形状、平面視楕円形状、平面視長円形状等であってもよい。
【0158】
(i)上記実施形態において、印刷部5eは、錠剤5の表面5b及び裏面5cのうちの一方に設けられているが、印刷部5eを表面5b及び裏面5cの双方に設けてもよい。
【0159】
(j)製造されるPTPシートの構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、PTPシート1におけるポケット部2の配列や個数は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0160】
また、上記実施形態において、PTPフィルム6は、その幅方向に沿って1シート分に対応する数のポケット部2が配列された構成となっているが、これに限定されるものではなく、例えば、その幅方向に沿って複数シート分に対応する数のポケット部2が配列された構成であってもよい。尚、この場合、第二数値(n)は、このポケット部2の数と同数とされる〔例えば、上記例において、2シート分であれば第二数値(n)は「10」とされる〕。
【0161】
さらに、上記実施形態では、ブリスタシートとしてPTPシート1を挙げているが、PTPシート1以外のブリスタシートに対し本発明の技術思想を適用してもよい。
【0162】
(k)印刷装置54の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態において、印刷装置54は、1の色を担当する第一印刷機構541と、その他の色を担当する第二印刷機構542とを備えているが、印刷部5eの態様に応じて、印刷機構の数を適宜変更してもよい。また、上記実施形態において、両印刷機構541,542は、搬送ベルト523の幅方向に並ぶ複数の印刷ヘッドを備えているが、印刷ヘッドを1つのみ備える構成とし、この1つの印刷ヘッドによって前記幅方向に並ぶ複数の錠剤5の印刷を一度に行うものとしてもよい。
【0163】
加えて、印刷ヘッドの構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、1列又は3列以上のノズル列を備えた構成としてもよい。
【0164】
さらに、印刷ヘッドのクリーニング装置は、塵埃やインク等を加圧パージにより取り除く構成となっているが、これに限らず、塵埃等を吸引パージにより取り除く構成としてもよい。
【0165】
(l)上記実施形態において、錠剤検査装置53及び印刷検査装置55は、カメラにより得られた撮像画像に基づき良否判定を行う判定装置を有しているが、該判定装置を備えないものであってもよい。この場合、制御装置59が、前記判定装置としての機能を有するように構成してもよい。
【0166】
また、上記実施形態では、制御装置59によって「印刷数調節手段」及び「停止対象決定手段」が構成されているが、制御装置59以外の装置によってこれら手段を構成してもよい。
【符号の説明】
【0167】
1…PTPシート(ブリスタシート)、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤(内容物)、6…PTPフィルム(ブリスタフィルム)、10…PTP包装機(ブリスタ包装機)、16…ポケット部形成装置(ポケット部形成手段)、20…フィルム受けロール(取着手段)、21…印刷充填装置(印刷充填手段)、25…加熱ロール(取着手段)、37…シート打抜装置(切離手段)、51…供給装置(供給手段)、52…搬送装置(搬送手段)、53…錠剤検査装置(内容物検査手段)、54…印刷装置(印刷手段)、54a…印刷ヘッド、55…印刷検査装置(内容物検査手段)、56…不良品除去装置(不良品排出手段)、59…制御装置(印刷数調節手段、停止対象決定手段、不良率算出手段)、511a…シャッタ(供給停止手段)、513…供給部、572c…直進フィーダ(バッファ手段)、572d…バッファ量把握装置(バッファ量把握手段)、P1…第一印刷ポジション(印刷ポジション)、P2…第二印刷ポジション(印刷ポジション)。