IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋建設株式会社の特許一覧

特許7405694基盤層深度予測方法及び基盤層深度予測システム
<>
  • 特許-基盤層深度予測方法及び基盤層深度予測システム 図1
  • 特許-基盤層深度予測方法及び基盤層深度予測システム 図2
  • 特許-基盤層深度予測方法及び基盤層深度予測システム 図3
  • 特許-基盤層深度予測方法及び基盤層深度予測システム 図4
  • 特許-基盤層深度予測方法及び基盤層深度予測システム 図5
  • 特許-基盤層深度予測方法及び基盤層深度予測システム 図6
  • 特許-基盤層深度予測方法及び基盤層深度予測システム 図7
  • 特許-基盤層深度予測方法及び基盤層深度予測システム 図8
  • 特許-基盤層深度予測方法及び基盤層深度予測システム 図9
  • 特許-基盤層深度予測方法及び基盤層深度予測システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】基盤層深度予測方法及び基盤層深度予測システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20231219BHJP
   E02D 1/02 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D1/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020089590
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183780
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】草刈 成直
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100082(JP,A)
【文献】特開2018-096146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持体を地中に造成する地盤改良工法において、基盤層の深度を予測する方法であって、
事前測量の結果に基づいて、前記複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の推定深度を算出する推定深度算出工程と、
前記推定深度を、前記複数の支持体の造成位置の平面的な位置関係が反映された記録構造を有する記録手段へ記録する推定深度記録工程と、
施工中に着底判定基準に基づいて判明した、前記複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の実績深度を、前記記録手段の対応する記録位置へ記録する実績深度記録工程と、
前記複数の支持体の各々の造成位置について前記実績深度を記録するときに、前記実績深度を記録する実績深度記録対象の造成位置の近傍に位置する他の複数の支持体の造成位置のうち、前記実績深度が判明していない実績深度未判明の造成位置の前記推定深度を、前記実績深度記録対象の造成位置の前記実績深度に基づいて補正し、補正済み推定深度として前記記録手段へ反映する推定深度更新工程と、を含み、
前記推定深度更新工程において、前記実績深度未判明の造成位置の前記推定深度を、該推定深度と、前記実績深度記録対象の造成位置の前記実績深度と、前記記録手段に記録された前記実績深度未判明の造成位置と前記実績深度記録対象の造成位置との位置関係に基づく重み付けと、に基づいて補正し、
前記複数の支持体に、基盤層まで達する長尺の支持体と、基盤層まで達しない短尺の支持体とが含まれており、
前記推定深度更新工程において、前記推定深度を補正する前記実績深度未判明の造成位置として選定した造成位置が、前記短尺の支持体の造成位置だった場合に、該造成位置の前記推定深度を更新しないことを特徴とする基盤層深度予測方法。
【請求項2】
地盤改良工法の施工範囲に、前記複数の支持体が平面視で格子状に造成される格子状領域が含まれ、
該格子状領域を対象とした場合の前記推定深度更新工程において、前記推定深度を補正する前記実績深度未判明の造成位置を、平面視で前記実績深度記録対象の造成位置の上下左右に隣接する4つの造成位置から選定することを特徴とする請求項1記載の基盤層深度予測方法。
【請求項3】
複数の支持体を地中に造成する地盤改良工法において、基盤層の深度を予測するシステムであって、
前記複数の支持体の造成位置の平面的な位置関係が反映された記録構造を有し、前記複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の深度を、前記記録構造の対応する記録位置へ記録するための記録手段と、
事前測量の結果に基づいて、前記複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の推定深度を算出し、前記記録手段へ記録する推定深度算出手段と、
施工中に着底判定基準に基づいて判明した、前記複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の実績深度を取得し、前記記録手段へ記録する実績深度記録手段と、
該実績深度記録手段により前記複数の支持体の各々の造成位置について前記実績深度が記録されるときに、前記実績深度が記録される実績深度記録対象の造成位置の近傍に位置する他の複数の支持体の造成位置のうち、前記実績深度が判明していない実績深度未判明の造成位置の前記推定深度を、前記実績深度記録対象の造成位置の前記実績深度に基づいて補正し、補正済み推定深度として前記記録手段へ記録する推定深度更新手段と、を含み、
前記推定深度更新手段は、前記実績深度未判明の造成位置の前記推定深度を、該推定深度と、前記実績深度記録対象の造成位置の前記実績深度と、前記記録手段に記録された前記実績深度未判明の造成位置と前記実績深度記録対象の造成位置との位置関係に基づく重み付けと、に基づいて補正し、
前記複数の支持体に、基盤層まで達する長尺の支持体と、基盤層まで達しない短尺の支持体とが含まれており、
前記推定深度更新手段は、前記推定深度を補正する前記実績深度未判明の造成位置として選定した造成位置が、前記短尺の支持体の造成位置だった場合に、該造成位置の前記推定深度を更新しないことを特徴とする基盤層深度予測システム。
【請求項4】
地盤改良工法の施工範囲に、前記複数の支持体が平面視で格子状に造成される格子状領域が含まれ、
該格子状領域を対象とした場合の前記推定深度更新手段は、前記推定深度を補正する前記実績深度未判明の造成位置を、平面視で前記実績深度記録対象の造成位置の上下左右に隣接する4つの造成位置から選定することを特徴とする請求項記載の基盤層深度予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基盤層の深度を予測する基盤層深度予測方法及び基盤層深度予測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
深層混合処理工法やサンドコンパクションパイル工法などの地盤改良工法では、基盤層まで達する支持体を造成するため、基盤層を目指して処理機の貫入などを行い、施工毎に設定される着底判定基準を用いて基盤層へ着底したことの判定を行う(例えば、特許文献1参照)。この際、ボーリングなどによる事前測量の結果に基づいて、予め施工箇所一帯の基盤層の深度を推定しておき、この推定深度を目安にして処理機の貫入などを行うことが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-96146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、基盤層深度の推定に用いられるボーリング本数などの事前測量箇所の数が少ない場合や、施工箇所一帯の基盤層の深度が一様でない場合などは、基盤層の推定深度が実際の深度と大きく異なってしまうことがある。このため、施工中に基盤層の深度を見誤ってしまう虞があり、地盤改良工事の施工精度に影響を及ぼすことが懸念される。これを回避するために、事前測量などを慎重に行う必要があり、作業効率の低下を避けることが困難であった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基盤層の推定深度の精度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)複数の支持体を地中に造成する地盤改良工法において、基盤層の深度を予測する方法であって、事前測量の結果に基づいて、前記複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の推定深度を算出する推定深度算出工程と、前記推定深度を、前記複数の支持体の造成位置の平面的な位置関係が反映された記録構造を有する記録手段へ記録する推定深度記録工程と、施工中に着底判定基準に基づいて判明した、前記複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の実績深度を、前記記録手段の対応する記録位置へ記録する実績深度記録工程と、前記複数の支持体の各々の造成位置について前記実績深度を記録するときに、前記実績深度を記録する実績深度記録対象の造成位置の近傍に位置する他の複数の支持体の造成位置のうち、前記実績深度が判明していない実績深度未判明の造成位置の前記推定深度を、前記実績深度記録対象の造成位置の前記実績深度に基づいて補正し、補正済み推定深度として前記記録手段へ反映する推定深度更新工程と、を含む基盤層深度予測方法。
【0007】
本項に記載の基盤層深度予測方法は、複数の支持体を地中に造成する地盤改良工法に適用するものであって、推定深度算出工程、推定深度記録工程、実績深度記録工程、及び推定深度更新工程を含んでいる。推定深度算出工程は、施工箇所一帯で行われたボーリングなどの事前測量の結果に基づいて、複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の推定深度を算出する工程である。すなわち、事前測量の結果から基盤層の3次元形状などを推定し、各支持体の造成位置においてその推定した基盤層が存在する深度を、複数の支持体の造成位置毎の推定深度として算出する。
【0008】
推定深度記録工程は、推定深度算出工程で算出した推定深度を、複数の支持体の造成位置の平面的な位置関係が反映された記録構造を有する記録手段へ記録する工程である。つまり、記録手段は、施工範囲を平面視したときの、複数の支持体の中で隣接する関係にある造成位置や、造成位置間の距離及び方向などを把握しつつ、支持体の全ての造成位置における基盤層の深度を個別に記録する記録構造を有している。そして、推定深度記録工程では、そのような記録構造の対応する記録位置へ、複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の推定深度を記録する。実績深度記録工程は、地盤改良の施工毎に設定される基盤層への着底判定基準に基づいて施工中に判明した、複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の実績深度を、記録手段の対応する記録位置へ記録する工程である。すなわち、施工中に支持体の各々を造成する際に、予め設定する着底判定基準に基づいて、処理機の貫入などが基盤層に着底したことの判定を行い、その基盤層へ着底したと判定した深度を、各支持体の造成位置における基盤層の実績深度として記録するものである。
【0009】
推定深度更新工程は、実績深度記録工程で各支持体の造成位置における基盤層の実績深度を記録するタイミングで、その実績深度記録対象の造成位置の近傍に位置する別の支持体の造成位置における、基盤層の推定深度を更新する工程である。より詳しくは、実績深度記録対象の造成位置の近傍に位置する他の複数の支持体の造成位置のうち、基盤層の実績深度がまだ判明していない未施工で実績深度未判明の造成位置について、推定深度記録工程で記録された推定深度を、実績深度記録対象の造成位置の実績深度に基づいて補正する。そして、補正前の推定深度に代えて、補正後の推定深度を補正済み推定深度として記録手段へ反映するものである。換言すれば、実績深度未判明の造成位置における基盤層の推定深度を、その造成位置の近傍の別の支持体の造成位置について判明した実績深度をフィードバックして更新するものである。これにより、各支持体の造成位置における基盤層の推定深度の精度が高められるものとなる。更には、基盤層深度の推定精度の向上によって、基盤層へ達する支持体が効率よく正確に造成されることとなり、施工効率や施工精度が向上されるものである。
【0010】
(2)上記(1)項における、前記推定深度更新工程において、前記実績深度未判明の造成位置の前記推定深度を、該推定深度と、前記実績深度記録対象の造成位置の前記実績深度と、前記記録手段に記録された前記実績深度未判明の造成位置と前記実績深度記録対象の造成位置との位置関係に基づく重み付けと、に基づいて補正する基盤層深度予測方法。
本項に記載の基盤層深度予測方法は、推定深度更新工程において実績深度未判明の推定深度を補正する際に用いる計算要素を、より具体的に規定するものである。すなわち、その補正対象の実績深度未判明の造成位置における補正前の推定深度と、その造成位置の近傍の実績深度記録対象の造成位置における実績深度と、それら実績深度未判明の造成位置と実績深度記録対象の造成位置との位置関係に基づく重み付けとに基づいて、補正対象の造成位置における推定深度を補正する。このとき、実績深度未判明の造成位置と実績深度記録対象の造成位置との位置関係は、記録手段に記録されたそれら2つの造成位置の位置関係を利用すればよい。これにより、事前測量の結果や位置関係の重み付けも加味されるため、各支持体の造成位置における基盤層の推定深度が、より高い精度で算出されるものとなる。
【0011】
(3)上記(2)項において、前記複数の支持体に、基盤層まで達する長尺の支持体と、基盤層まで達しない短尺の支持体とが含まれており、前記推定深度更新工程において、前記推定深度を補正する前記実績深度未判明の造成位置として選定した造成位置が、前記短尺の支持体の造成位置だった場合に、該造成位置の前記推定深度を更新しない基盤層深度予測方法(請求項1)。
本項に記載の基盤層深度予測方法は、地盤改良工法において地中に造成する複数の支持体に、基盤層まで達する長尺の支持体と、基盤層まで達しない短尺の支持体とが含まれたものである。そして、推定深度更新工程において、推定深度を補正する実績深度未判明の造成位置として選定した造成位置が、上記のような短尺の支持体の造成位置だった場合に、その造成位置の推定深度を更新せずに、推定深度算出工程で算出した、事前測量結果に基づいた推定深度のままとするものである。すなわち、短尺の支持体は、基盤層まで達するものではないため、実績深度記録工程において、その造成位置における基盤層の実績深度が判明せずに記録されないのは勿論のこと、推定深度更新工程での推定深度の更新も行わないものである。これにより、不要な計算が極力抑えられ、施工効率が向上するものである。
【0012】
(4)上記(3)項において、地盤改良工法の施工範囲に、前記複数の支持体が平面視で格子状に造成される格子状領域が含まれ、該格子状領域を対象とした場合の前記推定深度更新工程において、前記推定深度を補正する前記実績深度未判明の造成位置を、平面視で前記実績深度記録対象の造成位置の上下左右に隣接する4つの造成位置から選定する基盤層深度予測方法(請求項2)。
本項に記載の基盤層深度予測方法は、適用先の地盤改良工法の施工範囲に、複数の支持体が平面視で格子状に形成される格子状領域が含まれるものである。このため、記録手段は、その格子状領域に位置する複数の支持体における基盤層の深度を記録するための、格子状の位置関係が反映された記録構造を有することになる。
【0013】
そして、この格子状領域を対象としたときの推定深度更新工程、換言すれば、格子状領域に位置する支持体の造成位置における基盤層の実績深度を記録する際に、基盤層の推定深度を補正する支持体の造成位置を以下のように選定するものである。すなわち、平面視でその実績深度記録対象の造成位置の上下左右に隣接する4つの造成位置のうち、基盤層の実績深度がまだ判明していない実績深度未判明の造成位置を、推定深度を補正する造成位置として選定する。これにより、基盤層の深度がより密接に関係している造成位置のみが選定されることとなるため、造成位置毎の推定深度の更新回数が抑制されながら、基盤層の推定深度の精度がより確実に向上されるものとなる。
【0014】
(5)複数の支持体を地中に造成する地盤改良工法において、基盤層の深度を予測するシステムであって、前記複数の支持体の造成位置の平面的な位置関係が反映された記録構造を有し、前記複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の深度を、前記記録構造の対応する記録位置へ記録するための記録手段と、事前測量の結果に基づいて、前記複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の推定深度を算出し、前記記録手段へ記録する推定深度算出手段と、施工中に着底判定基準に基づいて判明した、前記複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の実績深度を取得し、前記記録手段へ記録する実績深度記録手段と、該実績深度記録手段により前記複数の支持体の各々の造成位置について前記実績深度が記録されるときに、前記実績深度が記録される実績深度記録対象の造成位置の近傍に位置する他の複数の支持体の造成位置のうち、前記実績深度が判明していない実績深度未判明の造成位置の前記推定深度を、前記実績深度記録対象の造成位置の前記実績深度に基づいて補正し、補正済み推定深度として前記記録手段へ記録する推定深度更新手段と、を含む基盤層深度予測システム。
【0015】
(6)上記(5)項において、前記推定深度更新手段は、前記実績深度未判明の造成位置の前記推定深度を、該推定深度と、前記実績深度記録対象の造成位置の前記実績深度と、前記記録手段に記録された前記実績深度未判明の造成位置と前記実績深度記録対象の造成位置との位置関係に基づく重み付けと、に基づいて補正する基盤層深度予測システム。
(7)上記(6)項において、前記複数の支持体に、基盤層まで達する長尺の支持体と、基盤層まで達しない短尺の支持体とが含まれており、前記推定深度更新手段は、前記推定深度を補正する前記実績深度未判明の造成位置として選定した造成位置が、前記短尺の支持体の造成位置だった場合に、該造成位置の前記推定深度を更新しない基盤層深度予測システム(請求項3)。
【0016】
(8)上記(7)項において、地盤改良工法の施工範囲に、前記複数の支持体が平面視で格子状に造成される格子状領域が含まれ、該格子状領域を対象とした場合の前記推定深度更新手段は、前記推定深度を補正する前記実績深度未判明の造成位置を、平面視で前記実績深度記録対象の造成位置の上下左右に隣接する4つの造成位置から選定する基盤層深度予測システム(請求項4)。
そして、(5)~(8)項に記載の基盤層深度予測システムは、各々、上記(1)~(4)項の基盤層深度予測方法を実行する構成であることで、上記(1)~(4)項の基盤層深度予測方法と同等の作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記のような構成であるため、基盤層の推定深度の精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測方法の手順の一例を示すフロー図である。
図3】事前測量結果に基づいて推定した基盤層の推定深度を記録した記録表である。
図4】推定深度を補正して更新するイメージを示すイメージ図である。
図5図3の記録表の一部を、施工により判明した実績深度と、実績深度を利用して補正した補正済み推定深度とに書き換えた記録表である。
図6図5に引き続いて記録表の一部を、施工により判明した実績深度と、実績深度を利用して補正した補正済み推定深度とに書き換えた記録表である。
図7図6に引き続いて記録表の一部を、施工により判明した実績深度と、実績深度を利用して補正した補正済み推定深度とに書き換えた記録表である。
図8図7に引き続いて記録表の一部を、施工により判明した実績深度と、実績深度を利用して補正した補正済み推定深度とに書き換えた記録表である。
図9図8に引き続いて記録表の一部を、施工により判明した実績深度と、実績深度を利用して補正した補正済み推定深度とに書き換えた記録表である。
図10図9に引き続いて記録表の一部を、施工により判明した実績深度と、実績深度を利用して補正した補正済み推定深度とに書き換えた記録表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分若しくは対応する部分は、同一の符号で示している。
図1は、深層混合処理工法やサンドコンパクションパイル工法といった、複数の支持体を地中に造成する地盤改良工法において、基盤層の深度を予測するための利用される、本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測システム10の構成を概略的に示している。図示のように、本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測システム10は、記録手段12、推定深度算出手段14、実績深度記録手段16、及び推定深度更新手段18を含んでいる。
【0020】
記録手段12は、地盤改良工法において地中に造成する複数の支持体の、各造成位置における基盤層の深度を記録するためのものであり、それら複数の支持体の造成位置の平面的な位置関係が反映された記録構造を有している。例えば、複数の支持体が平面視で格子状に造成されるような場合に、記録手段12は、それに対応した記録構造として、図3のような格子状の記録構造を有することになる。又、複数の支持体が平面視で千鳥格子状に造成されるような場合には、それに対応した千鳥格子状の記録構造を有することになる。いずれにしても、記録手段12は、複数の支持体の全ての造成位置における基盤層の深度を、各造成位置の位置関係と共に記録可能な記録構造を有し、複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の深度が、その記録構造の対応する記録位置へ記録される。更に、地盤改良工法の施工範囲に、複数の支持体の平面視での配置形態が異なる2つ以上の領域が含まれている場合には、記録手段12は、それらの各領域の配置形態に対応した記録構造を同時に有するものとなる。なお、ここでの記録構造とは、物理的な記録構造を示すものではなく、各造成位置での基盤層の深度が、各造成位置の位置情報や他の造成位置との位置関係などが付加された状態で記録される、仮想的な記録構造である。
【0021】
推定深度算出手段14は、地盤改良工法の施工前に実施される、施工箇所一帯の事前測量の結果に基づいて、複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の推定深度を算出するものである。この算出方法については、後程説明するものとする。推定深度算出手段14は、記録手段12と接続され、算出した基盤層の推定深度を記録手段12へ記録する。
実績深度記録手段16は、地盤改良工法の施工中に着底判定基準に基づいて判明した、複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の実績深度を、例えば図示しない地盤改良工法の管理システムや、作業員による入力などによって取得するものである。この詳しい内容についても後述する。実績深度記録手段16は、記録手段12と接続され、取得した基盤層の実績深度を記録手段12へ記録する。
【0022】
推定深度更新手段18は、複数の支持体の各々の造成位置における実績深度が、実績深度記録手段16によって記録されるときに、その実績深度が記録される実績深度記録対象の造成位置の近傍に位置する他の複数の支持体の造成位置のうち、少なくとも一部の造成位置における基盤層の推定深度を更新するものである。その更新方法の詳しい説明は後述するが、例えば、推定深度更新手段18は、実績深度記録対象の造成位置について判明した基盤層の実績深度や、更新しようとしている更新対象の造成位置について推定深度算出手段14により算出された基盤層の更新前の推定深度などに基づいて、推定深度を補正し、その補正済みの推定深度を記録手段12へ反映して更新する。このため、推定深度更新手段18は、記録手段12へ接続されており、更に基盤層の推定深度や実績深度を直接取得するために、推定深度算出手段14や実績深度記録手段16と接続されてもよい。
【0023】
ここで、本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測システム10の構成は、図1のブロック図に限定されるものではなく、例えば、地盤改良工法の内容や状況等に応じて、図1に示した構成要素の一部が削除、変更、ないし適宜追加された構成であってもよい。又、図1に示す基盤層深度予測システム10の各構成要素は、機能的な単位で分けられたものであり、実際に使用されるコンピュータ等のハードウェア単位で分けたものではない。すなわち、複数の構成要素のうちの2つ以上が、1つのハードウェアにより構成されてもよく、1つの構成要素が複数のハードウェアにより構成されてもよい。更に、各ハードウェアには任意のソフトウェアを適用することができ、各ハードウェアの構成機器も任意である。又、ハードウェア間の接続には、各ハードウェアを構成する機器に応じた任意の接続方法を用いることができる。
【0024】
続いて、図2に示すフロー図の流れに沿って、図1に示した基盤層深度予測システム10を利用する、本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測方法について説明する。基盤層深度予測システム10の構成については、適宜、図1を参照のこと。なお、図2に示すフロー図は、本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測方法を説明するための、手順の流れの一例を示したものである。従って、基盤層深度予測方法は、これらのフロー図に限定されるものではなく、例えば、基盤層深度予測システム10の構成や状況等に応じて、図2に示したステップの一部が削除、変更、ないし適宜追加されたフローであってもよいものである。
【0025】
又、以下の説明では、基盤層深度予測方法を水底下の地盤を改良する地盤改良工法に適用し、その地盤改良工法の施工範囲に、複数の支持体が平面視で9行5列の格子状に造成される格子状領域が含まれ、そのような格子状領域について基盤層の深度を予測する場合を例にして説明する。更に、地盤改良工法において支持体の造成に用いられる処理機は、1号機~3号機の3台の処理機により同時に3つの支持体を施工可能に構成された、3軸式の複合型の処理機である。しかしながら、本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測方法が適用される地盤改良工法は、これらの構成に限定されるものではなく、例えば、陸上の地盤を改良するもの、複数の支持体が平面視で格子状以外の配置形態で配置されるもの、3軸式の処理機以外の処理機で施工されるものなどであってもよい。
【0026】
S10(設計):地盤改良工法の施工範囲における地盤の性状や構造、地盤改良工法の施工内容などに応じて、基盤層を選定する。更に、選定した基盤層や地盤改良工法の施工内容などに応じて、地盤改良工法に用いる処理機などが、選定した基盤層に着底したことを判定するための、着底判定基準を設定する。例えば、着底判定基準として、深層混合処理工法では処理機のトルク値や荷重などを設定し、サンドコンパクションパイル工法では処理機の貫入速度などを設定する。
S20(事前測量):地盤改良工法の施工箇所一帯の事前測量を行う。この事前測量では、例えばボーリングマシンや地層探査装置などを用いて、施工箇所一帯の複数箇所における地盤構造を把握する。
【0027】
S30(基盤層の推定深度算出):推定深度算出手段14により、基盤層の推定深度を算出する。例えば、まず、上記S20での事前測量の結果に基づいて、施工箇所一帯の基盤層の3次元形状などを作成する。そして、地盤改良工法で地中に造成する複数の支持体の造成位置の各々において、上述した3次元形状で表される基盤層が存在すると推定される深度を、基盤層の推定深度として算出する。すなわち、地盤改良工法で地中に造成する全ての支持体の造成位置についての、基盤層の推定深度を算出する。
【0028】
S40(基盤層の推定深度記録):上記S30で算出した基盤層の推定深度を、推定深度算出手段14により記録手段12へ記録する。上述したように、本実施例の地盤改良工法の施工範囲には、複数の支持体が平面視で9行5列の格子状に造成される格子状領域が含まれる。このため、記録手段12は、格子状領域の複数の支持体の配置形態に対応した、図3に示す記録表のような9行5列の格子状の記録構造を有するものとなる。そして、9行5列の格子状の記録構造の各マスには、推定深度算出手段14から記録手段12への記録により、各マスが対応する支持体の造成位置における基盤層の推定深度が入力されている。なお、図3や後述する図5図10の記録表には、基盤層の深度が、最低水面を基準としたマイナス表示でメートルを単位として記載されている。
【0029】
S50(基盤層の実績深度記録):実績深度記録手段16により、地盤改良工法の施工中に判明した基盤層の実績深度を取得し、取得した実績深度を記録手段12へ記録する。具体的に、地盤改良工法における支持体の造成は、まずは、図3に示したような事前測量の結果に基づいた基盤層の推定深度を目安にして行われる。そして、このときに、上記S10で設定した着底判定基準に基づいて判明した、複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の実績深度を、地盤改良工法で用いられる管理システムなどから取得する。更に、その取得した造成位置毎の実績深度を、記録手段12の記録構造の対応する記録位置、換言すれば図3のような記録表の対応するマスへと記録する。例えば、後述する図5図10でハッチングされているマスは、現在施工中の造成位置であって、本工程で実績深度記録手段16により基盤層の実績深度が記録された直後のマスを示している。なお、地盤改良工法で地中に造成する複数の支持体に、基盤層まで達しない短尺の支持体が含まれている場合は、当然のことながら、その支持体の造成位置における基盤層の実績深度は記録せずに、上記S40で記録した推定深度のままにしておく。
【0030】
S60(基盤層の推定深度更新):推定深度更新手段18により、上記S50で支持体の各々の造成位置における基盤層の実績深度が記録される毎に、その実績深度が記録される造成位置の近傍に位置する他の造成位置の推定深度を更新する。具体的には、まず、実績深度が記録される実績深度記録対象の近傍に位置する他の支持体の造成位置から、上記S50で基盤層の実績深度が記録されていない実績深度未判明の造成位置を選定する。本実施形態では、図3を参照して、複数の造成位置の支持体の造成位置が平面視で格子状に配置されるため、実績深度記録対象の造成位置の平面視で上下左右に隣接する4つの造成位置から、実績深度未判明の造成位置を選定するものとする。
【0031】
ここで、図5図10には、図3に示したように事前測量結果に基づく基盤層の推定深度が記録された記録手段12の記録構造に、1号機~3号機の3台の処理機によって施工された結果判明した基盤層の実績深度と、本工程で算出される基盤層の補正後の推定深度とが反映されていく様子を、図5図10の順序の時系列で示している。図5図10において、ハッチングされているマスは、上述したように現在施工中の造成位置であって実績深度が記録された直後のマスであり、薄く着色されているマスは、施工済の造成位置であって実績深度が既に記録されたマスである。更に、濃く着色されているマスは、本工程で基盤層の推定深度が更新されたマスであって、残りの白抜きのマスは、上記S40で記録された推定深度のままのマスである。
【0032】
なお、1号機~3号機の3台の処理機は、9行5列の格子状に配置される複数の支持体の造成位置の、互いに異なる造成位置で施工を行うものである。本実施例では、9行5列の造成位置のうち、1行~3行目の全列が1号機の施工箇所であり、4行~6行目の全列が2号機の施工箇所であり、7行~9行目の全列が3号機の施工箇所である。又、1号機~3号機の3台の処理機では、夫々で独立した管理が行われ、各処理機の施工の結果判明した実績深度やそれを利用して行われる推定深度の更新は、他の処理機の施工には利用しないものとする。このため、1号機~3号機の3台の処理機毎に基盤層の深度を記録する記録構造を有する記録手段12を利用するか、或いは、基盤層深度予測システム10を処理機毎に用意してもよい。しかしながら、1号機~3号機の3台の処理機の各々で判明した実績深度を、他の処理機の施工に利用することとしてもよく、それを用いて他の処理機の施工箇所についての推定深度の更新を行ってもよい。
【0033】
本工程の説明に戻り、例えば、施工前の図3と比較して施工開始直後の図5(a)を確認すると、1号機によって1行1列目のマスに対応する造成位置が施工中であり、そのマスには隣接するマスが右側と下側との2マスしかなく、それらの双方が実績深度未判明の造成位置であるため、更新対象のマスとして選定されて更新されていることが分かる。又、図7(b)と比較してその直後の図8(b)を確認すると、2号機によって4行2列目のマスに対応する造成位置が施工中であり、その上下左右に隣接するマスのうち、上側に隣接するマスは実績深度が判明しているため、残りの3マスが更新対象のマスとして選定されて更新されていることが分かる。このようにして、実績深度未判明の造成位置を更新対象の造成位置として選定する。
【0034】
そして、更新対象として選定した造成位置の推定深度を、例えば次のようにして更新する。すなわち、推定深度更新手段18により、更新対象として選定した各造成位置の更新前の推定深度と、それに隣接する実績深度記録対象の造成位置の実績深度と、更新対象として選定した各造成位置と実績深度記録対象の造成位置との位置関係に基づく重み付けとに基づいて、更新対象として選定した各造成位置の推定深度を補正する。例えば、図5(c)を確認すると、7行1列目のマスに実績深度として「-33.05」が記録され、その左右及び下側に隣接する3マスが、推定深度の更新対象として選定される。
【0035】
そのうちの下側の7行2列目のマスを例にすると、同マスの図3に示された更新前の推定深度は「-30.31」である。そして、7行2列目のマスに対応する造成位置と、7行1列目のマスに対応する造成位置との位置関係は、予め把握されて記録手段12の記録構造に反映されているため、それを使用して重み付けの係数などを算出する。このとき、2つの造成位置の位置関係には、平面的な位置関係に加えて、高さ方向の位置関係が加味されてもよい。そして、7行1列目のマスの実績深度である「-33.05」と、7行2列目のマスの補正前の推定深度である「-30.31」と、上記のように算出した重み付けの係数などとを利用して、7行2列目のマスの推定深度を更新する。図5(c)の7行2列目のマスを確認すると、そのような計算による補正の結果、同マスに対応する造成位置の基盤層の推定深度は、「-30.31」から「-33.30」へと更新されている。
【0036】
図4には、そのようにして未施工の造成位置の推定深度が更新されるイメージが示されており、実線が更新前の推定深度を示し、二点鎖線が実績深度を示し、点線が更新後の推定深度を示している。すなわち、左側2箇所の施工済の造成位置では、推定深度よりも実績深度の方が深くなっている。そのため、それに隣接する施工中の造成位置及び未施工の造成位置における基盤層の推定深度を、隣接する施工済の造成位置の実績深度や、補正前の推定深度などに基づいて補正し、点線で示されるように更新している。全ての説明は控えるが、図5図10には、1号機~3号機の3台の処理機による施工を経て、1列目及び2列目の全行の実績深度が記録され、3列目の全行の推定深度が更新された状態まで示されている。なお、本工程において、推定深度を補正する実績深度未判明の造成位置として選定した造成位置が、基盤層まで達しない短尺の支持体の造成位置だった場合は、その造成位置の推定深度を更新せずに、上記S40で記録した推定深度のままにしておく。
【0037】
S70(全支持体造成判定):本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測方法を適用した地盤改良工法で造成する、全ての支持体を造成したか否かを判定する。その結果、全ての支持体を造成したと判定した場合(YES)は、本実施形態の基盤層深度予測方法が終了となる。一方、まだ造成していない支持体が残っていると判定した場合(NO)は、上記S50へ復帰し、まだ造成していない支持体が造成されるタイミングで、その造成位置における基盤層の実績深度を記録する。すなわち、全ての支持体を造成するまで、上記S50及びS60を繰り返し実行するものである。
【0038】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測方法は、図1に示すような基盤層深度予測システム10を用いて実行するものであり、図2に示すように、推定深度算出工程S30、推定深度記録工程S40、実績深度記録工程S50、及び推定深度更新工程S60を含んでいる。推定深度算出工程S30は、推定深度算出手段14により、施工箇所一帯で行われたボーリングなどの事前測量(図2のS20参照)の結果に基づいて、複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の推定深度を算出する工程である。すなわち、事前測量の結果から基盤層の3次元形状などを推定し、各支持体の造成位置においてその推定した基盤層が存在する深度を、複数の支持体の造成位置毎の推定深度として算出する。
【0039】
推定深度記録工程S40は、推定深度算出工程S30で算出した推定深度を、推定深度算出手段14により、複数の支持体の造成位置の平面的な位置関係が反映された記録構造を有する記録手段12へ記録する工程である。つまり、記録手段12は、施工範囲を平面視したときの、複数の支持体の中で隣接する関係にある造成位置や、造成位置間の距離及び方向などを把握しつつ、支持体の全ての造成位置における基盤層の深度を個別に記録する記録構造(例えば図3参照)を有している。そして、推定深度記録工程S40では、そのような記録構造の対応する記録位置へ、複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の推定深度を記録する。実績深度記録工程S50は、地盤改良の施工毎に設定される基盤層への着底判定基準に基づいて施工中に判明した、複数の支持体の各々の造成位置における基盤層の実績深度を、実績深度記録手段16により、記録手段12の対応する記録位置へ記録する工程である。すなわち、施工中に支持体の各々を造成する際に、予め設定する着底判定基準に基づいて、処理機の貫入などが基盤層に着底したことの判定を行い、その基盤層へ着底したと判定した深度を、各支持体の造成位置における基盤層の実績深度として記録するものである。
【0040】
推定深度更新工程S60は、実績深度記録工程S50で各支持体の造成位置における基盤層の実績深度を記録するタイミングで、その実績深度記録対象の造成位置の近傍に位置する、別の支持体の造成位置における基盤層の推定深度を、推定深度更新手段18によって更新する工程である。より詳しくは、実績深度記録対象の造成位置(図5図10でハッチングされているマス)の近傍に位置する他の複数の支持体の造成位置のうち、基盤層の実績深度がまだ判明していない未施工で実績深度未判明の造成位置(図5図10で濃く着色されているマス)について、推定深度記録工程S40で記録された推定深度を、実績深度記録対象の造成位置の実績深度に基づいて補正する。そして、補正前の推定深度に代えて、補正後の推定深度を補正済み推定深度として記録手段12へ反映するものである。
【0041】
換言すれば、実績深度未判明の造成位置における基盤層の推定深度を、その造成位置の近傍の別の支持体の造成位置について判明した実績深度をフィードバックして更新するものである。これにより、各支持体の造成位置における基盤層の推定深度の精度を高めることが可能となる。このため、事前測量箇所の数が少ない場合や、施工箇所一帯の基盤層の深度が一様でない場合なども、基盤層の深度をより正確に推定することができ、例えば、基盤層の手前にある硬い層を基盤層と見誤ることも防止されるものである。更には、基盤層深度の推定精度の向上によって、基盤層へ達する支持体を効率よく正確に造成することができるため、地盤改良工法の施工効率や施工精度を向上することが可能となる。
【0042】
又、本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測方法は、推定深度更新工程S60において、推定深度更新手段18により、補正対象の造成位置における推定深度を補正する際に、その補正対象の実績深度未判明の造成位置における補正前の推定深度と、その造成位置の近傍の実績深度記録対象の造成位置における実績深度と、それら実績深度未判明の造成位置と実績深度記録対象の造成位置との位置関係に基づく重み付けとに基づいて補正するものである。このとき、実績深度未判明の造成位置と実績深度記録対象の造成位置との位置関係は、記録手段12に記録されたそれら2つの造成位置の位置関係を利用すればよい。これにより、事前測量の結果や位置関係の重み付けも加味されるため、各支持体の造成位置における基盤層の推定深度を、より高い精度で算出することが可能となる。
【0043】
更に、本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測方法は、適用先の地盤改良工法の施工範囲に、複数の支持体が平面視で格子状に形成される格子状領域が含まれる場合に、記録手段12が、その格子状領域に位置する複数の支持体における基盤層の深度を記録するための、例えば図3に示すような、格子状の位置関係が反映された記録構造を有するものである。そして、この格子状領域を対象としたときの推定深度更新工程S60、換言すれば、格子状領域に位置する支持体の造成位置における基盤層の実績深度を記録する際に、基盤層の推定深度を補正する支持体の造成位置を以下のように選定するものである。すなわち、平面視でその実績深度記録対象の造成位置(図5図10でハッチングされているマス)の上下左右に隣接する4つの造成位置のうち、基盤層の実績深度がまだ判明していない実績深度未判明の造成位置を、推定深度を補正する造成位置(図5図10で濃く着色されているマス)として選定する。これにより、基盤層の深度がより密接に関係している造成位置のみを選定することができるため、造成位置毎の推定深度の更新回数を抑制しながら、基盤層の推定深度の精度をより確実に向上することが可能となる。
【0044】
又、本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測方法は、地盤改良工法において地中に造成する複数の支持体に、基盤層まで達する長尺の支持体と、基盤層まで達しない短尺の支持体とが含まれていてもよい。この場合、推定深度更新工程S60において、推定深度を補正する実績深度未判明の造成位置として選定した造成位置が、上記のような短尺の支持体の造成位置だった場合に、その造成位置の推定深度を更新せずに、推定深度算出工程S30で算出した、事前測量結果に基づいた推定深度のままとするものである。すなわち、短尺の支持体は、基盤層まで達するものではないため、実績深度記録工程S50において、その造成位置における基盤層の実績深度が判明せずに記録しないのは勿論のこと、推定深度更新工程S60での推定深度の更新も行わないものである。これにより、不要な計算を極力抑えることができ、施工効率を向上させることができる。
なお、本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測システム10は、上述した本発明の実施の形態に係る基盤層深度予測方法を実行する図1のような構成であることで、基盤層深度予測方法と同等の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0045】
10:基盤層深度予測システム、12:記録手段、14:推定深度算出手段、16:実績深度記録手段、18:推定深度更新手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10