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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】加飾樹脂製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20231219BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B29C45/14
B32B27/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020097445
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021020454
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2019140096
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕一
(72)【発明者】
【氏名】中村 行宏
(72)【発明者】
【氏名】小塚 明彦
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-106953(JP,A)
【文献】特開昭49-102780(JP,A)
【文献】特開2000-141551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料、かかる紫外線硬化型塗料が浸透可能な加飾シート、透明又は半透明の合成樹脂製フィルム、ベースフィルム及び合成樹脂製基材を用いた加飾樹脂製品の製造方法にして、
前記ベースフィルムの一の面上に、i)前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物を内在する前記加飾シートからなる第一の層、ii)前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の薄膜に対する紫外線照射によって形成された該紫外線硬化型塗料の半硬化物によって構成されており、且つ、かかる紫外線照射によって前記第一の層に密着せしめられている第二の層、及び、iii )前記透明又は半透明の合成樹脂製フィルムからなる保護層が、この順に従って積層されてなる積層フィルムを製造し、
次いで、前記積層フィルムにおける前記ベースフィルムの他の一の面上に、インサート成形法に従い、前記合成樹脂製基材を一体的に成形せしめると共に、インサート成形時の熱により、前記積層フィルムにおける第一及び第二の層の各々を構成する前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物を硬化せしめることにより、前記合成樹脂製基材における一の面上に、1)前記ベースフィルムからなるベースフィルム層、2)前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の硬化物を内在する前記加飾シートからなる加飾層、3)前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の硬化物にて構成される中間層、及び4)前記保護層が、この順に従い、隣接する層が密着して積層されてなる加飾樹脂製品を製造する、
ことを特徴とする加飾樹脂製品の製造方法。
【請求項2】
前記積層フィルムが、
前記ベースフィルムの一の面上に前記加飾シートが積層されてなる積層体a1を作製する工程と、
前記積層体a1を用いて、前記ベースフィルムの一の面上に、前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料が含浸せしめられた前記加飾シートからなる層と、前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の塗膜からなる層とが、この順に従って積層されてなる積層体a2を作製する工程と、
前記積層体a2における、前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の塗膜からなる層の表面に、前記透明又は半透明の合成樹脂製フィルムを積層せしめ、かかる状態の積層体a2に対して紫外線を照射せしめる工程と、
を経て製造される請求項1に記載の加飾樹脂製品の製造方法。
【請求項3】
前記積層フィルムが、
前記ベースフィルムの一の面上に、前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料が含浸せしめられた前記加飾シートからなる層を有する積層体b1を作製する工程と、
紫外線照射によって半硬化状態とされた、前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料からなる中間層用フィルムを作製する工程と、
前記積層体b1における、前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料が含浸せしめられた前記加飾シートからなる層の上面に、前記中間層用フィルムを積層し、かかる状態の積層体b1に対して紫外線を照射せしめることにより、前記積層体b1と前記中間層用フィルムとの一体物からなる積層体b2を作製する工程と、
前記積層体b2における前記中間層用フィルムの表面に前記合成樹脂製フィルムを積層する工程と、
を経て製造される請求項1に記載の加飾樹脂製品の製造方法。
【請求項4】
前記加飾シートが木質材シート、無機繊維製シート、有機繊維製シート又は和紙製シートである請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の加飾樹脂製品の製造方法。
【請求項5】
前記紫外線硬化型塗料が不飽和ポリエステル樹脂系塗料である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の加飾樹脂製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾樹脂製品の製造方法に係り、特に、自動車用内装部品等として好適に用いられ得る三次元形状を有する加飾樹脂製品を、有利に製造することが出来る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂製品の物性向上や加飾等を目的として、種々のシート状体を用いた樹脂製品が提案され、使用されている。例えば、特許文献1(特開2005-169803号公報)においては、自動車の車体構成部品として好適に用いられる加飾高剛性成形品の製造方法として、1)熱可塑性樹脂から成る透明又は半透明の透過シートと、炭素繊維含有の織物シートとを、少なくとも表面側に透過シートが位置するように二層又は多層構成にして重ね合わせた状態で、熱プレスを加えて接合することにより加飾シートを形成し、2)かかる加飾シートを、成形金型内にインサートして、射出成形等によって成形することにより、高剛性成形品の表面に加飾シートを接合した構造の加飾高剛性成形品を製造する方法が、開示されている。
【0003】
また、特許文献2(特許第5519364号公報)においては、自動車の内外装等の樹脂製品の表面に木質感を付加する木質調加飾シートとして、透明樹脂シート、シリル化ウレタン系接着剤、および、木質層がこの順に積層されてなる木質調加飾シートが開示されており、また同特許文献においては、かかる木質調加飾シートがインサートとしてキャビティ内に収容され、射出成形されてなる木質調樹脂成形物も提案されている。
【0004】
ところで、自動車における各種の内装部品としては、従来より様々な樹脂製品が採用されているが、特に近年においては、加飾された樹脂製品の需要が高まってきている。例えば、自動車の車内前方に配置されるダッシュパネルにおいては、デザイン的観点よりオーナメント(加飾パネル)が広く採用されているところ、特に高級車においては、オーナメントとして、木材を用いた樹脂製品が求められている。
【0005】
ここで、オーナメントとしては、特許文献3(特開2016-28914号公報)における図1等に明示されているもの(同特許文献の図面において符号5が付されている部材)を始めとして、様々な形状を呈するものが知られているが、近年、自動車のダッシュパネルのデザインが多様化、複雑化していることに伴い、オーナメントに対しても、従来品より更に複雑な三次元形状が要求されるようになってきている。
【0006】
しかしながら、本発明者等が、特許文献1に開示の加飾シートや特許文献2に開示の木質調加飾シートを始めとする従来の加飾シートについて、詳細に検討したところ、従来より公知の加飾シートを用いて、所謂インサート成形法に従い、複雑な三次元形状を呈する樹脂製品を製造すると、加飾シートが要求される三次元形状に追従せず、インサート成形法によって形成される樹脂基材との間の密着性が充分に得られない恐れや、加飾シートのずれや割れ等の問題を発生する恐れがあることが、判明したのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-169803号公報
【文献】特許第5519364号公報
【文献】特開2016-28914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、インサート成形法に従い、複雑な三次元形状を有する加飾樹脂製品を有利に製造することが出来る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明は、そのような課題を解決すべく、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料、かかる紫外線硬化型塗料が浸透可能な加飾シート、透明又は半透明の合成樹脂製フィルム、ベースフィルム及び合成樹脂製基材を用いた加飾樹脂製品の製造方法にして、(I)前記ベースフィルムの一の面上に、i)前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物を内在する前記加飾シートからなる第一の層、ii)前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の薄膜に対する紫外線照射によって形成された該紫外線硬化型塗料の半硬化物によって構成されており、且つ、かかる紫外線照射によって前記第一の層に密着せしめられている第二の層、及び、iii )前記透明又は半透明の合成樹脂製フィルムからなる保護層が、この順に従って積層されてなる積層フィルムを製造し、(II)次いで、前記積層フィルムにおける前記ベースフィルムの他の一の面上に、インサート成形法に従い、前記合成樹脂製基材を一体的に成形せしめると共に、インサート成形時の熱により、前記積層フィルムにおける第一及び第二の層の各々を構成する前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物を硬化せしめることにより、前記合成樹脂製基材における一の面上に、1)前記ベースフィルムからなるベースフィルム層、2)前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の硬化物を内在する前記加飾シートからなる加飾層、3)前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の硬化物にて構成される中間層、及び4)前記保護層が、この順に従い、隣接する層が密着して積層されてなる加飾樹脂製品を製造する、ことを特徴とする加飾樹脂製品の製造方法を、その要旨とするものである。
【0010】
ここで、そのような本発明に従う加飾樹脂製品の製造方法の、好ましい第一の態様においては、前記積層フィルムが、1)前記ベースフィルムの一の面上に前記加飾シートが積層されてなる積層体a1を作製する工程と、2)前記積層体a1を用いて、前記ベースフィルムの一の面上に、前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料が含浸せしめられた前記加飾シートからなる層と、前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の塗膜からなる層とが、この順に従って積層されてなる積層体a2を作製する工程と、3)前記積層体a2における、前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の塗膜からなる層の表面に、前記透明又は半透明の合成樹脂製フィルムを積層せしめ、かかる状態の積層体a2に対して紫外線を照射せしめる工程と、を経て製造される。
【0011】
また、本発明に係る加飾樹脂製品の製造方法の、好ましい第二の態様においては、前記積層フィルムが、1)前記ベースフィルムの一の面上に、前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料が含浸せしめられた前記加飾シートからなる層を有する積層体b1を作製する工程と、2)紫外線照射によって半硬化状態とされた、前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料からなる中間層用フィルムを作製する工程と、3)前記積層体b1における、前記熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料が含浸せしめられた前記加飾シートからなる層の上面に、前記中間層用フィルムを積層し、かかる状態の積層体b1に対して紫外線を照射せしめることにより、前記積層体b1と前記中間層用フィルムとの一体物からなる積層体b2を作製する工程と、4)前記積層体b2における前記中間層用フィルムの表面に前記透明又は半透明の合成樹脂製フィルムを積層する工程と、を経て製造される。
【0012】
さらに、本発明に係る加飾樹脂製品の製造方法の、好ましい第三の態様においては、前記加飾シートが木質材シート、無機繊維製シート、有機繊維製シート又は和紙製シートである。
【0013】
また、本発明に係る加飾樹脂製品の製造方法の、好ましい第四の態様においては、前記紫外線硬化型塗料が不飽和ポリエステル樹脂系塗料である。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明に従う加飾樹脂製品の製造方法にあっては、インサート成形法に従って目的とする加飾樹脂製品を製造する際に、所定の構成を有する積層フィルム、具体的には、i)熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物が内在せしめられた加飾シートからなる第一の層、ii)熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の薄膜に対する紫外線照射によって形成された、該紫外線硬化型塗料の半硬化物によって構成されており、且つ、かかる紫外線照射によって前記第一の層に密着せしめられている第二の層、及び、iii )透明又は半透明の合成樹脂製フィルムからなる保護層が、この順に従い、ベースフィルムにおける一の面上に積層されてなる積層フィルムが、用いられるものである。そのような積層フィルムは、加飾シートに内在せしめられている紫外線硬化型塗料が半硬化物であり、また、かかる加飾シートからなる第一の層と保護層との間に介在せしめられている第二の層も、紫外線硬化型塗料の半硬化物にて構成されているのであり、それら半硬化物の存在によって、積層フィルムは、インサート成形の際に、目的とする加飾樹脂製品の外形形状(成形型における成形キャビティの形状)に対応して、加飾シートが破断等すること無く有利に変形可能である。それ故に、本発明に従う製造方法によれば、従来のインサート成形法では製造することが困難であった、複雑な三次元形状や曲率の大きな曲面を有する形状等を有する加飾樹脂製品であっても、有利に製造することが可能である。
【0015】
また、本発明に係る製造方法においては、インサート成形法が実施される前の積層フィルム中に存在する紫外線硬化型塗料は半硬化物であり、かかる塗料には熱硬化剤が含まれているところから、インサート成形の際の熱によって、積層フィルム中に存在する紫外線硬化型塗料の硬化が有利に進行するのであり、以て、最終的に得られる加飾樹脂製品においては、ベースフィルムと紫外線硬化型塗料の硬化物を内在する加飾シートからなる加飾層との間の密着性や、ベースフィルム上の各層間における密着性が、優れたものとなるのである。
【0016】
さらに、本発明の製造方法に従えば、加飾シートからなる加飾層の面(同層における保護層側の面)上に設けられる、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の硬化物からなる中間層を、任意の厚さにて形成することが可能である。従って、かかる中間層の厚さを厚くすることにより、最終的に得られる加飾樹脂製品において、加飾シートによる加飾の奥行き感をより顕著なものとすることが出来る。なお、従来の製造方法の如く、本発明における中間層に相当する層として合成樹脂層が設けられた加飾シートを用いて、インサート成形法に従い、複雑な三次元形状を有する加飾樹脂製品を製造すると、かかる加飾シートが複雑な三次元形状に追従せず、その結果、インサート成形によって形成される樹脂基材と加飾シートとの間の密着性が充分に得られない恐れや、加飾シートのずれや割れ等の問題を発生する恐れがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の製造方法に従って製造された加飾樹脂製品(オーナメント)が装着されたインストルメントパネルを示す斜視図である。
図2】本発明の製造方法に従って製造された加飾樹脂製品(オーナメント)を示す斜視図である。
図3図2の加飾樹脂製品(オーナメント)における部分拡大断面図である。
図4】本発明においてインサート成形に供される積層フィルムの、作製工程の一例を示す模式説明図である。
図5】本発明においてインサート成形に供される積層フィルムの、作製工程の他の一例を示す模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を適宜、参照しつつ、本発明を詳細に説明する。なお、図3においては、本発明の理解を容易にすべく、合成樹脂製基材14上に形成されている各層は適宜、誇張乃至は矮小化して描かれていることが、理解されるべきところである。
【0019】
図1は、自動車内部の前方に組み付けられるインストルメントパネル10の斜視図であるところ、かかるインストルメントパネル10に装着されているオーナメント12が、本発明に係る製造方法に従って製造された加飾樹脂製品である。
【0020】
より詳細には、オーナメント12は、その斜視図たる図2より明らかなように、全体として薄板状体がく字形に(略直角に)屈曲した形状を呈しており、横長の薄板状体における一方の端部において、縦方向(図2における紙面上下方向)の幅が漸次狭く(小さく)なるように構成されており、また、インストルメントパネル10に装着された状態において露出する面が湾曲面にて構成されている。
【0021】
図3は、そのようなオーナメント12における、合成樹脂製基材14上に各層が積層形成されている状態を部分的に拡大して示す断面図である。かかる図3に示されているように、オーナメント12は、合成樹脂製基材14上に、ベースフィルム層16、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の硬化物を内在する加飾シートからなる加飾層18、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の硬化物からなる中間層20、及び、透明又は半透明の合成樹脂製フィルムからなる保護層22が、この順に従って積層形成されて、構成されている。このような構成に係るオーナメント12は、保護層22が外部に露出するようにインストルメントパネル10に装着されている。
【0022】
なお、本発明の製造方法に従って製造することが可能な加飾樹脂製品は、図1乃至図3に示されているオーナメント12の如き形状を呈するものに限定されるものでないことは、言うまでもないところである。特に、本発明の製造方法によれば、後述する理由により、従来の、加飾シートを含むフィルムを用いたインサート成形法では製造することが困難であった、複雑な三次元形状や曲率の大きな曲面を有する形状等を有する加飾樹脂製品であっても、有利に製造することが可能である。
【0023】
また、本発明に従って製造される加飾樹脂製品(12)において、合成樹脂製基材(14)上に形成される各層の厚さは、加飾樹脂製品(12)の用途等に応じて適宜に決定される。例えば、本実施形態の如く、自動車のインストルメントパネル10に組み込まれるオーナメント12においては、ベースフィルム層16の厚さは100~400μm程度、加飾層18の厚さは50~200μm程度、中間層20の厚さは10~2000μm程度、保護層22の厚さは30~200μm程度とされる。
【0024】
そして、図1乃至図3に示されるオーナメント12は、本発明の製造方法によれば、1)先ず、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物を内在する加飾シートからなる第一の層、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物からなる第二の層、及び、透明又は半透明の合成樹脂製フィルムからなる保護層が、この順に従い、ベースフィルムの一の面上に積層されてなる積層フィルムが製造され、次いで、2)かかる積層フィルムにおけるベースフィルムの他の一の面上に、インサート成形法に従い、合成樹脂製基材が一体的に成形されることにより、製造される。
【0025】
ここで、インサート成形に供される積層フィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、有利には、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料と、かかる紫外線硬化型塗料が浸透可能な加飾シートと、透明又は半透明の合成樹脂製フィルムと、ベースフィルムとを用いて、以下に詳述する手法(製法)に従って製造することが可能である。図4及び図5の各々には、本発明においてインサート成形に供される積層フィルム30、70の有利な製造手法の概要が、模式的に示されている。なお、図4及び図5は、断面図ではないものの、理解を容易にするために、フィルムや積層体を構成する各層等にはハッチングを付している。
【0026】
1)積層フィルムの製法I(積層フィルム30の製造方法)
先ず、ベースフィルム32における一の面上に、加飾シートからなる層(加飾シート層34)を有する積層体36(積層体a1)を作製する(図4(a))。かかる構成の積層体36は、例えば、加飾シートをベースフィルム32に対して熱プレスや接着剤等を用いて貼り付けることにより、作製することが可能である。
【0027】
ここで、ベースフィルム32を構成する材料としては、後述するインサート成形によって合成樹脂製基材(14)と融着等により一体的になり得るものであれば、特に限定されるものではない。例えば、合成樹脂製基材14がABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂)、ABS樹脂にガラス繊維を添加した複合材料や、PC(ポリカーボネート)/ABS樹脂等のABS系の合成樹脂材料にて形成されている場合には、ベースフィルム32を構成する材料も、同様のABS系合成樹脂材料が有利に選択されて、使用される。
【0028】
また、本発明において用いられる加飾シートとしては、後述する、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型液状塗料が浸透可能なシート状体であって、最終的に得られる樹脂製品を加飾可能なものであれば、特に限定されることなく、本発明において使用することが可能である。なお、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料が浸透可能とは、かかる紫外線硬化型塗料がシート内部に浸入可能であることを意味するものである。本発明においては、木質材シート、無機繊維製シート、有機繊維製シートや和紙製シート等が有利に用いられる。
【0029】
-木質材シート-
本発明において使用される木質材シートとしては、従来より公知の天然木突板や人工突板を使用することが出来る。本発明において使用可能な天然木突板としては、バーズアイメイプル、サペリマホガニー、マッパ、ローズウッド、マーブルウッド、クラロウォールナット、ブビンガ、チーク、スギ、ホワイトアッシュ、ブラックウォールナット、ゼブラウッド、パイン、ヒノキ、ホワイトオーク、カーリーメイプル、ユーカリ、コクタン、ケヤキ、レッドオーク等の天然木の突板を、例示することが出来る。また、本発明において使用可能な人工突板としては、人工的な板材の積層物からスライスしたものや、金属等に木質材を象嵌させたもの等を、例示することが出来る。
【0030】
-無機繊維製シート、有機繊維製シート、和紙製シート-
本発明においては、1)炭素繊維やガラス繊維、金属繊維等の無機繊維にて構成される無機繊維製シート、2)綿繊維、麻繊維、絹繊維、毛(羊毛、獣毛)等の植物又は動物由来の有機繊維や、人工的に合成された各種の有機繊維にて構成される有機繊維製シート、3)各種の和紙製シートも、加飾シートとして使用することが可能である。なお、無機繊維製シートを構成する無機繊維の太さ(直径)としては7μm~10μm程度を、また、有機繊維製シートを構成する有機繊維の太さ(直径)としては5μm~7μm程度を、各々、例示することが出来る。また、無機繊維製シートや有機繊維製シートにおいて、その構成は、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料が浸透可能な構成であれば良く、織物、編み物、不織布等の何れの形態においても使用可能である。
【0031】
上述した木質材シート等は、各々が単独で用いられ得ることは勿論のこと、同種又は二種以上のものを複数、重ね合わせた状態で使用することも可能である。
【0032】
さらに、本発明において使用することが出来る紫外線硬化型塗料としては、不飽和ポリエステル樹脂系塗料や、アクリル樹脂系塗料等を例示することが出来るが、本発明においては、硬化レベル(硬化状態)を調整し易く、また加飾シート(特に木質材シート)への密着性が比較的良好であるという観点より、不飽和ポリエステル樹脂系の紫外線硬化型塗料が有利に使用される。また、透明な硬化物が得られる紫外線硬化型塗料(紫外線硬化型透明塗料)や半透明な硬化物が得られる紫外線硬化型塗料が、本発明において有利に用いられる。本明細書及び特許請求の範囲において、「透明又は半透明の紫外線硬化型塗料」とは、透明又は半透明の硬化物が得られる紫外線硬化型塗料を意味するものである。
【0033】
また、本発明においては、塗料全体の硬化レベル(硬化状態)を均一に調整する為に、波長が400nm~450nm程度の比較的長波長の紫外線によって硬化が進行する紫外線硬化型塗料が、有利に使用される。具体的には、400nm~450nm程度の紫外線が照射された際に重合開始剤としての機能を発現する化合物を重合開始剤として含む紫外線硬化型塗料が、有利に用いられるのである。そのような重合開始剤としては、モノアシルフォスフィンオキサイド(MAPO、製品例:Lucirin TPO )、ビスアシルフォスフィンオキサイド(BAPO、製品例:Irgacure 819)やそのブレンド(製品例:Irgacure 1700 )等のアシルフォスフィンオキサイド系の重合開始剤を、例示することが出来る。
【0034】
加えて、本発明においては、そのような紫外線硬化型塗料に、塗料中に含まれる樹脂、モノマーやオリゴマー等を熱硬化させる熱硬化剤が添加されて、使用される。かかる熱硬化剤が添加された紫外線硬化型塗料を用いることにより、インサート成形の際の加熱により、紫外線硬化型塗料の半硬化物の硬化が効果的に進行せしめられることとなる。本発明において、熱硬化剤は、使用される紫外線硬化型塗料に含まれる樹脂等に応じたものが適宜に選択されることとなるが、例えば、不飽和ポリエステル樹脂系の紫外線硬化型塗料を使用する場合には、パーオキシカーボネート等が有利に使用される。
【0035】
次いで、積層体36(積層体a1)を所定の型枠内に載置し、積層体36(積層体a1)のベースフィルム32上の加飾シート層34に、上述した熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料を含浸せしめて、加飾シート層34を、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料が含浸せしめられた加飾シートからなる層38とし、その後、かかる層38上に、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の塗膜からなる層40を形成して、積層体42(積層体a2)を作製する(図4(b))。
【0036】
ここで、上記した、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の塗膜からなる層40を形成する際には、加飾シート層34に含浸せしめられる紫外線硬化型塗料よりも高粘度の紫外線硬化型塗料を使用することが好ましい。紫外線硬化型塗料の粘度の調整は、溶媒量を増減することによって実施することが可能である。また、加飾シート層34に含浸せしめられる紫外線硬化型塗料と、加飾シート上に塗膜(層40)を形成する際に使用される紫外線硬化型塗料とは、異なっていても良いが、好ましくは、同一種の塗料(紫外線照射によって硬化する成分が同一である塗料)が使用される。
【0037】
そのようにして形成された積層体42(積層体a2)における、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の塗膜からなる層40上に、PET樹脂、PC樹脂やPMMA樹脂等の透明の合成樹脂製フィルム44が公知の手法に従って貼り付けられて、積層体46が得られる(図4(c))。なお、本発明においては、透明の合成樹脂製フィルム44に代えて、半透明の合成樹脂製フィルムを使用することも可能である。
【0038】
そして、積層体46に対して紫外線を照射せしめることにより、目的とする積層フィルム30が得られるのである(図4(d))。具体的には、i)熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物を内在する加飾シートからなる第一の層48、ii)熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物からなる第二の層50、及び、iii )透明の合成樹脂製フィルム44からなる保護層が、この順に従い、ベースフィルム32の一の面上に積層されてなる積層フィルム30が、得られるのである。
【0039】
ここで、本製法において積層フィルム30を製造する場合、型枠内に載置されている積層体46を一度、負圧環境に晒し、その後、加圧環境下において紫外線を照射することが好ましい。積層体46を負圧環境に晒すことにより、各層間に意図せず残留している空気を効果的に除去し、最終的に得られる加飾樹脂製品において、各層間の密着性をより効果的に向上させることが可能であり、また、製品表面の均一化も有利に達成され得る。
【0040】
また、積層体46に対する紫外線照射は、1)上述した第一の層48(熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料が含浸せしめられた加飾シートからなる層38に対する、紫外線照射によって形成される層)に含まれる紫外線硬化型塗料が、半硬化物の状態となり、且つ、2)上述した第二の層50(熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の塗膜からなる層40に対する、紫外線照射によって形成される層)が、紫外線硬化型塗料の半硬化物にて構成されるように、実施される。ここで、紫外線硬化型塗料の半硬化物とは、硬化がある程度は進行しているものの、硬化の余地が残されている状態にある塗料を意味するものである。積層フィルム30は、後述するインサート成形において加熱されるのであり、そのインサート成形における加熱が塗料中の熱硬化剤に作用して塗料の硬化が完了するように、第一の層48に含まれる紫外線硬化型塗料は半硬化状態(未だ硬化の余地が残されている状態)に止めておく必要があり、また、第二の層50を構成する紫外線硬化型塗料にあっても、半硬化状態に止めておく必要がある。従って、本工程における紫外線照射は、後のインサート成形における加熱も考慮した上で、ピーク照度や積算照度等の各種の照射条件が決定されることとなる。なお、本発明において、紫外線照射に使用される紫外線ランプとしては、長波長帯の紫外線を照射することが可能なメタルハライドランプやキセノンランプ、UV-LEDランプ等が有利に使用される。
【0041】
2)積層フィルムの製法II(積層フィルム70の製造方法)
なお、本製法IIにおいても、上述した「積層フィルムの製法I」に用いられるベースフィルム、加飾シート、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料及び透明又は半透明の合成樹脂製フィルムが使用可能であることから、説明は省略する。また、図5において、図4と同一の構成を有するものについては図4と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
先ず、ベースフィルム32における一の面上に、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料が含浸せしめられた加飾シートからなる層52を有する積層体54(積層体b1)を作製する(図5(a))。かかる構成の積層体54(積層体b1)は、例えば、加飾シートをベースフィルム32に対して熱プレスや接着剤等を用いて貼り付けたものを、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料中に浸漬せしめることにより、作製することが可能である。
【0043】
そのような構成の積層体54(積層体b1)を作製するに際しては、特に、紫外線硬化型塗料の加飾シート内への浸透を負圧下又は加圧下において実施することにより、塗料中への積層体(加飾シートがベースフィルム32に貼り付けられてなる積層体)の浸漬時間の短縮化を図ることが可能である。例えば、積層体を塗料中に浸漬せしめた状態で、-0.080MPa以下の負圧下において5分以上、真空引きを実施することにより、塗料の加飾シート内への浸透が有利に実施される。また、加飾シートとして木質材シートを使用する場合には、木質材シートを構成する木質材の種類に応じて、木質材シートに対してアセチル化処理を施した後に、塗料中へ浸漬せしめることにより、塗料の木質材シートへの浸透が有利に進行することとなる。
【0044】
そのような積層体54(積層体b1)を作製する一方で、熱硬化剤を含む紫外線硬化型塗料の半硬化物からなる中間層用フィルム56を作製する(図5(b))。ここで使用される紫外線硬化型塗料としても、透明な硬化物が得られる紫外線硬化型塗料や半透明な硬化物が得られる紫外線硬化型塗料(透明又は半透明の紫外線硬化型塗料)が有利に用いられる。また、中間層用フィルム56を作製する際に用いられる紫外線硬化型塗料は、先述した積層体54を作製する際に使用される紫外線硬化型塗料と異なっていても良いが、好ましくは、同一種の塗料(紫外線照射によって硬化する成分が同一である塗料)が使用される。
【0045】
中間層用フィルム56は、例えば、一定速度で移動するベルト上に、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料を連続して滴下乃至は塗布することにより所定幅の塗膜(紫外線硬化型塗料のフィルム状物)を形成し、かかる塗膜に対して紫外線を照射することにより、作製することが可能である。
【0046】
なお、本製法における「熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物」にあっても、硬化がある程度は進行しているものの、硬化の余地が残されている状態にある塗料を意味するものである。ここで説明している積層フィルムの製法II(積層フィルム70の製法)においては、後の工程においても中間層用フィルム56に対して紫外線が照射せしめられるのであり、合計2回の紫外線照射の実施後においても、中間層用フィルム56は、インサート成形における加熱によって硬化が完了するように半硬化状態(未だ硬化の余地が残されている状態)に止めておく必要がある。従って、本工程における紫外線照射は、後の工程における紫外線照射も考慮した上で、ピーク照度や積算照度等の各種の照射条件が決定されることとなる。
【0047】
以上のようにして作製された積層体54及び中間層用フィルム56を用いて、積層体54における、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料が含浸せしめられた加飾シートからなる層52上に、中間層用フィルム56を貼り付けて積層体58とし(図5(c))、かかる積層体58に対して紫外線を照射する。かかる紫外線の照射によって、積層体54と中間層用フィルム56とが仮密着せしめられてなる積層体60、より詳細には、ベースフィルム32の一の面上に、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物を内在する加飾シートからなる第一の層62と、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物からなる中間層(第二の層)64とを有する積層体60(積層体b2)が、得られることとなる(図5(d))。
【0048】
上述した、積層体58に対する紫外線照射は、有利には、真空加圧下において紫外線の照射が可能な装置(UV硬化真空加圧装置)を用いて、実施される。そのような装置を用いることにより、加飾シートへの紫外線硬化型塗料の浸透を促進させつつ、紫外線硬化型塗料の硬化を進行させることが可能ならしめられて、積層体60(積層体b2)が有利に得られることとなる。
【0049】
さらに、積層体60における、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物からなる中間層64上に、透明の合成樹脂製のフィルム44を公知の手法に従って貼り付けることにより、目的とする積層フィルム70が得られるのである(図5(e))。なお、上述した製法Iと同様に、透明の合成樹脂製フィルム44に代えて、半透明の合成樹脂製フィルムを使用することも可能である。
【0050】
そして、以上の如くして得られた積層フィルム30、70における、ベースフィルム32の裏面(複数の各層が形成されていない側の面)上に、公知のインサート成形法に従い、合成樹脂製基材14を成形すると、かかる成形の際の熱(溶融した樹脂や加熱された成形型に由来する熱)が紫外線硬化型塗料の半硬化物中に含まれる熱硬化剤に作用し、かかる半硬化物の硬化が進行せしめられることとなる。即ち、インサート成形の際の加熱によって、1)積層フィルム30における第一の層48及び積層フィルム70における第一の層62(熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物を内在する加飾シートからなる層)は、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の硬化物を内在する加飾シートからなる加飾層18へと、また、2)積層フィルム30における第二の層50及び積層フィルム70における中間層(第二の層)64(熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の半硬化物からなる層)は、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の硬化物からなる中間層20へと、各々、変化(変性)する。そして、合成樹脂製基材14上に、ベースフィルム層16、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の硬化物を内在する加飾シートからなる加飾層18、熱硬化剤を含む透明又は半透明の紫外線硬化型塗料の硬化物からなる中間層20、及び、透明の合成樹脂製フィルム44からなる保護層22が、この順に従って積層形成されてなるオーナメント12が得られるのである。
【0051】
以上、詳述してきたように、本発明に従う加飾樹脂製品の製造方法においては、使用される積層フィルムが紫外線硬化型塗料の半硬化物を含むものであるところから、かかる半硬化物の存在によって、積層フィルムは、インサート成形の際に、目的とする加飾樹脂製品の外形形状(成形型における成形キャビティの形状)に対応して、加飾シートが破断したり、所望の位置からずれる等の問題が発生すること無く、有利に変形せしめられ得る。従って、従来の、加飾シートを有するフィルムを用いたインサート成形法では製造することが困難であった形状(例えば、複雑な三次元形状や曲率の大きな曲面を有する形状等)を有する加飾樹脂製品であっても、本発明によれば、有利に製造することが可能ならしめられるのである。
【0052】
また、積層フィルムの紫外線硬化型塗料の半硬化物中には熱硬化剤が含有せしめられているところから、インサート成形の際の熱により、かかる半硬化物の硬化が有利に進行せしめられ、最終的に得られる加飾樹脂製品においては、ベースフィルムと紫外線硬化型塗料の硬化物を内在する加飾シートからなる層との間の密着性や、ベースフィルム上の各層間における密着性が、優れたものとなる。
【0053】
さらに、本発明の製造方法に従えば、紫外線硬化型塗料の硬化物を内在する加飾シートからなる層の上面(同層における保護層側の面)に設けられる、紫外線硬化型塗料の硬化物からなる中間層を、任意の厚さにて形成することが可能であるところから、かかる中間層の厚さを厚くすることにより、加飾シートによる加飾の奥行き感を、より顕著なものとすることが出来るという利点をも、享受することが可能である。
【0054】
以上、本発明について詳述してきたが、本発明は、上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づき、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【符号の説明】
【0055】
10 インストルメントパネル
12 加飾樹脂製品(オーナメント)
14 合成樹脂製基材
16 ベースフィルム層
18 加飾層
20 中間層
22 保護層
図1
図2
図3
図4
図5