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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/181 20060101AFI20231219BHJP
   B62D 1/189 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B62D1/181
B62D1/189
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020103477
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021195033
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000237307
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトコラムシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】寺田 大介
(72)【発明者】
【氏名】宮城 武史
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-018810(JP,A)
【文献】特開2004-058927(JP,A)
【文献】特開2019-038439(JP,A)
【文献】特開2017-081515(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0161109(US,A1)
【文献】米国特許第8376402(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00- 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定される固定ブラケットと、
前記固定ブラケットに揺動可能に支持されるコラムジャケットと、
前記コラムジャケット内に収容されるステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトの中心軸に直交し且つ前記中心軸よりも車両上方側に位置する第一ピボット軸を中心に回動可能に前記固定ブラケットに対して支持されると共に、前記中心軸よりも車両上方側に位置する第二ピボット軸を中心に回動可能に前記コラムジャケットに対して支持されるリンク機構と、
前記第二ピボット軸を中心に回動可能に前記リンク機構に対して支持される摺動部材と、
前記リンク機構に連結され、前記リンク機構を駆動して前記ステアリングシャフトの傾斜角度を調整する駆動機構とを備え、
前記摺動部材は
カラー部分とツバ部分とを有して構成され、前記リンク機構の前記第二ピボット軸側の部分に設けられる長孔に係合されて前記長孔に回動可能に支持されるツバ付きカラーと、
軸部と頭部とを有して構成され、前記ツバ付きカラーに回動可能に支持されると共に、前記コラムジャケットに固定される軸部材と、を有し、
前記ツバ付きカラーにおける前記カラー部分の内周面に、前記軸部材の前記軸部と係合する複数の凸状体が形成され、前記ツバ付きカラーにおける前記ツバ部分の外側面には、前記軸部材の前記頭部と係合する複数の凸部が形成されている、
ステアリングコラム装置。
【請求項2】
前記リンク機構は、前記第一ピボット軸及び前記第二ピボット軸を有する第一アーム部と、前記第一アーム部と一体的に形成されて前記駆動機構に連結される第二アーム部とを備えて構成され、前記コラムジャケットの車両左右両側に配置されるリンク部材を有する、請求項1に記載のステアリングコラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングコラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体に固定される固定ブラケットと、固定ブラケットに揺動可能に支持されるコラムジャケットと、コラムジャケット内に収容されるステアリングシャフトと、電動モータを駆動源とする電動チルト機構とを備えたステアリングコラム装置が知られている(特許文献1、2)。このようなステアリングコラム装置では、固定ブラケットとコラムジャケットとの間にリンク機構が設けられ、電動モータ(駆動機構)を用いてリンク機構を駆動することによりコラムジャケットを揺動させてステアリングシャフトの傾斜角度を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4696687号公報
【文献】特開2019-104368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のステアリングコラム装置では、リンク機構の部品点数が多く、構造が複雑化し、製造コストが高くなり得る。
【0005】
特許文献2に記載のステアリングコラム装置では、固定ブラケットにおけるリンク支点と車体固定点との距離が長くなることにより、車両への取り付けの剛性が低下し得る。
【0006】
そこで、本発明は、リンク機構の部品点数の低減を図り且つ車両への取り付けの剛性を十分に保持することができるステアリングコラム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るステアリングコラム装置は、車体に固定される固定ブラケットと、固定ブラケットに揺動可能に支持されるコラムジャケットと、コラムジャケット内に収容されるステアリングシャフトとを備える。また、ステアリングコラム装置は、ステアリングシャフトの中心軸に直交し且つ中心軸よりも車両上方側に位置する第一ピボット軸を中心に回動可能に固定ブラケットに対して支持されると共に、中心軸よりも車両上方側に位置する第二ピボット軸を中心に回動可能にコラムジャケットに対して支持されるリンク機構を備える。さらに、ステアリングコラム装置は、第二ピボット軸を中心に回動可能にリンク機構に対して支持される摺動部材と、リンク機構に連結され、リンク機構を駆動してステアリングシャフトの傾斜角度を調整する駆動機構とを備える。摺動部材は、リンク機構の第二ピボット軸側の部分に設けられる長孔に係合されて長孔に回動可能に支持されると共に、コラムジャケットに固定される軸部材を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係るステアリングコラム装置によれば、リンク機構の部品点数の低減を図り且つ車両への取り付けの剛性を十分に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るステアリングコラム装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るステアリングコラム装置の要部を示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るステアリングコラム装置を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るステアリングコラム装置を図3とは反対側から見た側面図である。
図5図3のA-A線断面の要部拡大図である。
図6】リンク機構の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0011】
なお、図面において、矢印FRは車両前方側を示し、矢印RRは車両後方側を示す。
【0012】
図1から図4に示すように、ステアリングコラム装置1は、車体に固定される固定ブラケット2と、固定ブラケット2に対して車両上下方向に揺動可能に支持されるコラムジャケット3とを備える。
【0013】
また、ステアリングコラム装置1は、コラムジャケット3に対して回転可能に支持されるステアリングシャフト4と、電動モータ5を駆動源とする電動チルト機構6とを備える。
【0014】
固定ブラケット2は、車体の天井面(図示せず)に固定される固定部2aと、コラムジャケット3の被揺動支持部3aの車両左右両側にそれぞれ配置される側壁部2bとを有する。各側壁部2bには、支持孔2cが貫通形成される。
【0015】
コラムジャケット3は、車両前後方向に延在する筒状のロアジャケット(アウタジャケット)7と、ロアジャケット7内に収容される筒状のアッパジャケット(インナジャケット)8とを有する。
【0016】
コラムジャケット3(ロアジャケット7)は、前端側部分に軸支受部3bを備えており、軸支受部3bが車体に軸支されることで、コラムジャケット3の後端側部分が車両上下方向に揺動する。
【0017】
ステアリングシャフト4は、アッパジャケット8内に収容されると共に、ロアジャケット7に対して軸方向に移動可能に支持される。ステアリングシャフト4の前端に、自在継手9(図1参照)が連結され、ステアリングシャフト4の後端には、ステアリングホイール10(図3及び図4参照)が連結される。
【0018】
次に、電動チルト機構6について説明する。
【0019】
電動チルト機構6は、固定ブラケット2とコラムジャケット3とを連結するリンク機構11と、リンク機構11に連結され、リンク機構11を駆動してステアリングシャフト4を所望の傾斜角度に調整する駆動機構12とを有する。
【0020】
リンク機構11は、固定ブラケット2に対して第一ピボット軸P1を中心に回動可能に支持される。この第一ピボット軸P1は、ステアリングシャフト4の中心軸PCに直交し、且つ、ステアリングシャフト4の中心軸PCよりも車両上方側に位置する(図3参照)。
【0021】
また、リンク機構11は、コラムジャケット3に対して第二ピボット軸P2を中心に回動可能に支持される。この第二ピボット軸P2は、ステアリングシャフト4の中心軸PCに直交すると共に、ステアリングシャフト4の中心軸PCよりも車両上方側に位置する(図3参照)。
【0022】
このようなリンク機構11は、コラムジャケット3の車両左右両側にそれぞれ配置されるリンク部材13を有する。各リンク部材13は、第一ピボット軸P1及び第二ピボット軸P2を有する第一アーム部14と、第一アーム部14と一体的に形成されて駆動機構12に連結される第二アーム部15とを備えて構成される。この第二アーム部15は、第一ピボット軸P1と第二ピボット軸P2とを結ぶ第一軸Q1に対して所定角度で傾斜している第二軸Q2上で駆動機構12に連結される(図6参照)。
【0023】
リンク部材13の第一アーム部14の車両後方側端部には、ボルト孔(第一リンク孔)16が形成されている。第一ピボット軸P1を構成する軸部材(ボルト)17の一端が、固定ブラケット2の支持孔2cに回動可能に支持され、この軸部材17の他端は、第一アーム部14のボルト孔16に固定されている。また、軸部材17と支持孔2cの内周面との間には、ブッシュ18が配置され、軸部材17と側壁部2bの外側面との間には、スペーサー19が配置されている。
【0024】
また、リンク部材13の第一アーム部14の車両前方側端部には、長孔(第二リンク孔)20が形成されている。第二ピボット軸P2を構成する軸部材(ボルト)21の一端が、長孔20に係合された摺動部材22に回動可能に支持され、この軸部材21の他端は、ロアジャケット7のボルト孔23に固定されている。リンク部材13の内側面とロアジャケット7の外側面との間には、スペーサー24が配置されている。
【0025】
長孔20は、車両前後方向(第一ピボット軸P1と第二ピボット軸P2とを結ぶ第一軸Q1の延在方向)に沿って長い孔であり、摺動部材22は、長孔20に対して車両前後方向(第一軸Q1の延在方向)に摺動可能に支持されている。この摺動部材22は、例えば、カラー部分とツバ部分とを有するツバ付きカラーから構成される。
【0026】
摺動部材22におけるカラー部分の内周面に、スプライン加工による複数の凸状体25が形成され、摺動部材22におけるツバ部分の外側面には、複数の凸部26が形成されている(図5参照)。これらの凸状体25及び凸部26の形成により、軸部材(ボルト)21と摺動部材22とのガタつきが抑制される。
【0027】
そして、コラムジャケット3と共に摺動部材22が長孔20の延設方向に沿って移動することにより、コラムジャケット3のチルト時のチルト回転中心(軸支受部3b)とリンク回転中心(第一ピボット軸P1)との軌跡差を吸収することができる(図6参照)。
【0028】
さらに、リンク部材13の第二アーム部15の車両下方側端部には、丸孔(第三リンク孔)27が形成されている。この丸孔27には、スクリュー軸28が係合されるスクリューナット29が第三ピボット軸P3(図3参照)を中心に回動可能に支持されている。丸孔27の内周面とスクリューナット29との間には、スペーサー30が配置されている。
【0029】
また、リンク機構11は、コラムジャケット3の車両左右両側に配置されるリンク部材13同士を連接する連接部31を有する。この連接部31は、例えばボルトから構成される。ボルトから構成される連接部31の一端が、一方のリンク部材13のボルト挿通孔32に挿通され、連接部31の他端は、他方のリンク部材13のボルト孔33に固定されている。
【0030】
その一方、駆動機構12の電動モータ5には、減速ギヤ機構34及びスクリュー軸28が装着され、スクリュー軸28が、リンク部材13の第二アーム部15に回動可能に支持されたスクリューナット29に係合されている。また、電動モータ5は、ロアジャケット7の下部に形成されたモータ支持部35に、モータ支持部材(ボルト)36を用いて回動可能に支持されている。
【0031】
本実施形態のステアリングコラム装置1では、電動モータ5によりリンク部材13の第二アーム部15を押し引きすることにより、第一ピボット軸P1(軸部材17)を回転支点として第一アーム部14を車両上下方向に揺動させるようになっている。この揺動操作により、車両前方側に配置された軸支受部3bを回転支点としてコラムジャケット3を車両上下方向に揺動させて、ステアリングシャフト4の傾斜角度の調整を行うことができる(図6参照)。
【0032】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0033】
(1)ステアリングコラム装置1は、車体に固定される固定ブラケット2と、固定ブラケット2に揺動可能に支持されるコラムジャケット3と、コラムジャケット3内に収容されるステアリングシャフト4とを備える。また、ステアリングコラム装置1は、ステアリングシャフト4の中心軸PCに直交し且つ中心軸PCよりも車両上方側に位置する第一ピボット軸P1を中心に回動可能に固定ブラケット2に対して支持されると共に、中心軸PCよりも車両上方側に位置する第二ピボット軸P2を中心に回動可能にコラムジャケット3に対して支持されるリンク機構11を備える。さらに、ステアリングコラム装置1は、第二ピボット軸P2を中心に回動可能にリンク機構11に対して支持される摺動部材22と、リンク機構11に連結され、リンク機構11を駆動してステアリングシャフト4の傾斜角度を調整する駆動機構12とを備える。摺動部材22は、リンク機構11の第二ピボット軸P2側の部分に設けられる長孔20に係合されて長孔20に回動可能に支持されると共に、コラムジャケット3に固定される軸部材21を有する。
【0034】
リンク機構11とコラムジャケット3とを長孔20を介して連結することにより、コラムジャケット3のチルト方向(車両上下方向)の動きとリンク機構11のチルト方向の動きとのコラムジャケット3の軸方向に対する差を吸収させることができる。このようなリンク機構11によれば、部品点数の低減を図ることが可能である。
【0035】
また、固定ブラケット2におけるリンク支点(第一ピボット軸P1)と車体固定点(固定部2a)との距離が短くなることにより、車両への取り付けの剛性の向上を図ることが可能である。
【0036】
(2)リンク機構11は、第一ピボット軸P1及び第二ピボット軸P2を有する第一アーム部14と、第一アーム部14と一体的に形成されて駆動機構12に連結される第二アーム部15とを備えて構成され、コラムジャケット3の車両左右両側に配置されるリンク部材13を有する。
【0037】
このようにリンク部材13を構成することにより、リンク機構11の部品点数の低減を図ることが可能である。
【0038】
本実施形態では、第二ピボット軸P2を第一ピボット軸P1よりも車両前方側としたが、第一ピボット軸P1よりも車両後方側としてもよい。
【0039】
ところで、本発明のステアリングコラム装置は前述の実施形態に例をとって説明したが、この実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ステアリングコラム装置
2 固定ブラケット
3 コラムジャケット
4 ステアリングシャフト
7 ロアジャケット(アウタジャケット)
8 アッパジャケット(インナジャケット)
11 リンク機構
12 駆動機構
13 リンク部材
14 第一アーム部
15 第二アーム部
20 長孔(第二リンク孔)
21 軸部材(ボルト)
22 摺動部材
P1 第一ピボット軸
P2 第二ピボット軸
P3 第三ピボット軸
PC 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6