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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】止水剤塗布用の作業設備
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/14 20060101AFI20231219BHJP
   B05C 3/20 20060101ALI20231219BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H02G1/14
B05C3/20
B05C11/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020106009
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001005
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩崎 武志
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-347167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/14
B05C 3/20
B05C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の手により把持されて電線の先端の被止水処理部を止水剤に浸漬させることにより、前記被止水処理部に止水剤を塗布する工程作業のための作業設備であって、
中に前記止水剤が収容され、上方から前記作業者の手により把持された電線の先端の前記被止水処理部が挿入される止水剤容器と、
前記止水剤容器の上方に配置され、非塗布作業時に閉位置に移動して該止水剤容器の上面を覆うと共に、塗布作業時に開位置に移動して該止水剤容器の上面を開放するシャッターと、
前記シャッターを開閉駆動するシャッター開閉駆動機構と、
前記作業者から見て前記止水剤容器の手前に配置され、電線を把持する作業者の手が前記止水剤容器に向けて動かされたとき、その手の動作に反応してオン信号を発生するスイッチ手段と、
前記スイッチ手段から出力されたオン信号に応答して前記シャッター開閉駆動機構に駆動信号を送り前記シャッターを開位置に移動させるシャッター駆動制御手段と、
を具備する、
ことを特徴とする電線に対する止水剤塗布用の作業設備。
【請求項2】
前記スイッチ手段は、前記作業者の手が載ることで押し下げられる操作部材と、該操作部材が押し下げられた際にオン信号を発生するスイッチ本体と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電線に対する止水剤塗布用の作業設備。
【請求項3】
前記操作部材は、基端側が前記スイッチ本体に連結された片持状の水平方向に延びるスイッチバーとして構成され、該スイッチバーが、可撓性を有する連結部材を介して、前記スイッチ本体に連結されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電線に対する止水剤塗布用の作業設備。
【請求項4】
前記止水剤容器またはその周辺に、該止水剤容器内の止水剤に対して前記電線の先端の被止水処理部が浸漬されたことを検出するセンサが設けられている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電線に対する止水剤塗布用の作業設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手作業で電線の先端の被止水処理部に対し止水剤を塗布するための作業設備に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の芯線接合部などに水分が接触した場合、その水分が毛細管現象により芯線間の隙間に浸透して他所に悪影響を及ぼすことがある。そのため、車載用の電線などの場合、配線箇所によっては、芯線接合部などに止水処理を施すことが広く行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
止水処理の例としては、低粘度液体状態の止水剤(瞬間接着剤など)の液槽に電線の被止水処理部を浸漬させ、浸漬後に止水剤を乾燥硬化させることで、止水性能を得るようにすることが一般的に行われている。実際の例では、浸漬後に、該当箇所に熱収縮チューブを被せて、ヒータで加熱することで、止水剤を乾燥硬化させると共に、熱収縮チューブの収縮により、止水部を保護するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-235715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、作業者が手作業で電線を把持して、電線の先端の被止水処理部を止水剤容器の中の液状の止水剤に浸漬させる場合、止水剤が容器の上縁部などに飛散したり付着したりすることがある。
【0006】
例えば、実際の作業現場では、止水剤容器の上面に液面保護用の蓋を被せ、蓋に設けた小さな作業孔を通して、電線の先端を止水剤に浸漬させるようにしていることが多い。この場合、蓋の上面は、止水剤によって汚れてもよい受け皿として使用しているが、その蓋の上面に付着した止水剤に手が触れ、手が汚れてしまうことが懸念される。手が汚れると、その汚れが他の作業箇所に移って、作業環境全体に汚れが広がる恐れがある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、手作業で電線の先端に止水剤を塗布する工程における汚染防止を図ることのできる止水剤塗布用の作業設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る止水剤塗布用の作業設備は、下記(1)~(4)を特徴としている。
(1) 作業者の手により把持された電線の先端の被止水処理部を止水剤に浸漬させることにより、前記被止水処理部に止水剤を塗布する工程作業のための作業設備であって、
中に前記止水剤が収容され、上方から前記作業者の手により把持された電線の先端の前記被止水処理部が挿入される止水剤容器と、
前記止水剤容器の上方に配置され、非塗布作業時に閉位置に移動して該止水剤容器の上面を覆うと共に、塗布作業時に開位置に移動して該止水剤容器の上面を開放するシャッターと、
前記シャッターを開閉駆動するシャッター開閉駆動機構と、
前記作業者から見て前記止水剤容器の手前に配置され、電線を把持する作業者の手が前記止水剤容器に向けて動かされたとき、その手の動作に反応してオン信号を発生するスイッチ手段と、
前記スイッチ手段から出力されたオン信号に応答して前記シャッター開閉駆動機構に駆動信号を送り前記シャッターを開位置に移動させるシャッター駆動制御手段と、
を具備する、
ことを特徴とする電線に対する止水剤塗布用の作業設備。
【0009】
(2) 前記スイッチ手段は、前記作業者の手が載ることで押し下げられる操作部材と、該操作部材が押し下げられた際にオン信号を発生するスイッチ本体と、を有する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の電線に対する止水剤塗布用の作業設備。
【0010】
(3) 前記操作部材は、基端側が前記スイッチ本体に連結された片持状の水平方向に延びるスイッチバーとして構成され、該スイッチバーが、可撓性を有する連結部材を介して、前記スイッチ本体に連結されている、
ことを特徴とする上記(2)に記載の電線に対する止水剤塗布用の作業設備。
【0011】
(4) 前記止水剤容器またはその周辺に、該止水剤容器内の止水剤に対して前記電線の先端の被止水処理部が浸漬されたことを検出するセンサが設けられている、
ことを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の電線に対する止水剤塗布用の作業設備。
【0012】
上記(1)の構成の作業設備によれば、作業者が、自身の手で把持した電線の先端を止水剤容器に向けて移動すると、その手の動きに反応して、止水剤容器の上面を覆っていたシャッターが開く。したがって、開放された止水剤容器の上方から、止水剤容器の中に収容された低粘度液体状態の止水剤に、電線の先端の被止水処理部を浸漬させて、被止水処理部に止水剤を塗布することができる。
また、止水剤の塗布作業が終了した状態では、シャッターが閉じて止水剤容器の上面を覆うので、止水剤容器の上縁部や容器の上部に被せた作業孔付き蓋などに付着した止水剤によって手が汚れるようなことがない。また、手が汚れた場合には、作業箇所の周辺に汚れを移してしまう恐れがあるが、手の汚れを防止できることから、そのようなことも無くなり、作業環境を常にきれいな状態に保つことができる。
なお、シャッターを閉じるタイミングは、例えば、スイッチ手段がオン信号を発してシャッターが開いてから、浸漬作業が確実に終了すると見做せる時間が経った時点に設定することができる。あるいは、スイッチ手段がオン信号からオフ信号に切り替わった時点に設定することもできる。
【0013】
上記(2)の構成の作業設備によれば、作業者が、電線を把持した手を操作部材の上に載せることによって、シャッターが開く。したがって、塗布作業の流れの中で自動的にシャッターが開くことになり、作業者は、シャッターが設けられていることを意識せずに作業を進めることができる。
【0014】
上記(3)の構成の作業設備によれば、手でスイッチバーを軽く押し下げることでシャッターを開き、そのままバネ部材を撓ませながら、スイッチバーを更に無理なく下方や、手の動きに従って軽く前方に倒すことができる。したがって、手をスイッチバーに載せて、可撓性を有する連結部材を撓ませながら、その手を更に止水剤容器に近づけることができて、電線の先端を止水剤容器内の止水剤に無理なく浸漬させることができる。
【0015】
上記(4)の構成の作業設備によれば、センサによって、電線の先端の被止水処理部が止水剤に浸漬されたことを検出するので、浸漬の有無や浸漬時間を知ることができる。したがって、例えば、所定時間シャッターが開状態になっているにも拘わらず、センサが浸漬を検知しない場合に警告を発したり、浸漬時間が所定時間を経過したら作業者に教えたりすることができる。なお、センサの例として、止水剤容器の底に圧力センサを設けておき、電線の先端を容器の底に押し当てると、圧力センサがそれを検知するように設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、止水剤の非塗布作業時にシャッターが閉じて止水剤容器の上面を覆うので、止水剤容器の上縁部や容器の上部に被せた作業孔付き蓋などに付着した止水剤によって手が汚れるようなことがない。また、手が汚れた場合には、作業箇所の周辺に汚れを移してしまう恐れがあるが、手の汚れを防止できることから、そのようなことも無くなり、作業環境を常にきれいな状態に保つことができる。したがって、手作業で電線の先端に止水剤を塗布する工程における汚染防止を図ることができる。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態に係る止水剤塗布用の作業設備の構成を示す斜視図で、図1(a)はシャッターが閉じているときの状態を示す図、図1(b)はスイッチバーが押し下げられてシャッターが開いたときの状態を示す図である。
図2図2は、止水剤塗布のために、作業者が手で把持した電線を止水剤容器に近づけているときの状態を示す斜視図である。
図3図3は、作業者の手がスイッチバーに載り、スイッチバーを押し下げることで、シャッターが開いたときの状態を示す斜視図である。
図4図4は、図3の状態から更に作業者の手を止水剤容器に近づけて、電線の先端を止水剤容器の中の止水剤に浸漬させているときの状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0020】
図1は、実施形態に係る止水剤塗布用の作業設備の構成を示す斜視図で、図1(a)はシャッター20が閉じているときの状態を示す図、図1(b)はスイッチバー30Aが押し下げられてシャッター20が開いたときの状態を示す図である。
【0021】
また、図2は、止水剤塗布のために、作業者が手Tで把持した電線W1、W2を止水剤容器10に近づけているときの状態を示す斜視図、図3は、作業者の手Tがスイッチバー30Aに載り、スイッチバー30Aを押し下げることで、シャッター20が開いたときの状態を示す斜視図、図4は、図3の状態から更に作業者の手Tを止水剤容器10に近づけて、電線W1、W2の先端を止水剤容器10の中の止水剤Sに浸漬させているときの状態を示す斜視図である。
【0022】
図1図4に示すように、この作業設備は、作業者(作業者のおおよその位置をHで示す)が、自身の手Tで把持した電線W1、W2の先端の被止水処理部Rを、低粘度液体状態の止水剤Sに浸漬させることにより、被止水処理部Rに止水剤Sを塗布する工程作業のための作業設備である。なお、ここでは2本の電線W1、W2の先端の芯線接合部を止水剤Sに浸漬する場合を例に説明しているが、電線の本数は、作業者が把持可能であれば特に限定されない。
【0023】
本実施形態に係る止水剤塗布用の作業設備は、止水剤容器10と、シャッター20と、シャッター開閉駆動機構21と、スイッチ手段30と、シャッター駆動制御手段(図示略)と、を備えている。
【0024】
止水剤容器10は、作業者Hの前に位置するように配置され、止水剤容器10の中には、例えば低粘度液体状態の止水剤(瞬間接着剤など)Sが収容されている。止水剤容器10の上面には、受け皿の機能を果たす小さな作業孔12の付いた蓋11が被さっている。作業者Hは、この止水剤容器10の上方から、自身の手Tで把持した電線W1、W2の先端の被止水処理部Rを、蓋11に開けた作業孔12を通して挿入し、止水剤Sに浸漬させる。
【0025】
シャッター20は、止水剤容器10の上方に僅かな間隔をおいて配置され、水平方向にスライド開閉するように設けられている。このシャッター20は、図1(a)及び図2に示すように、非塗布作業時に、閉位置に移動(矢印B方向の移動)して止水剤容器10の上面全体を覆い、図1(b)及び図3図4に示すように、塗布作業時に、開位置に移動(矢印A方向に移動)して止水剤容器10の上面を開放するように設けられている。
【0026】
シャッター開閉駆動機構21は、上記のように矢印A方向および矢印B方向にシャッター20をスライド駆動するものである。
【0027】
スイッチ手段30は、作業者の手Tが載ることで押し下げられるスイッチバー(操作部材)30Aと、スイッチバー30Aが押し下げられた際にオン信号を発生するスイッチ本体32と、を有している。つまり、このスイッチ手段30は、電線W1、W2を把持する作業者の手Tが、止水剤容器10に向けて動かされたとき、その手の動作に反応してオン信号を発生するものである。
【0028】
スイッチバー30Aは、基端側が、可撓性を有するバネ部材31を介して、スイッチ本体32に連結されており、片持状に支持され、作業者から見て左右方向にほぼ水平に延びている。なお、バネ部材31の代わりに、可撓性を有する樹脂製の部材や金属製の部材を連結部材として用いてもよい。スイッチバー30Aは、作業者の前後方向に並べて2段に設けられており、作業者から見て止水剤容器10の手前に位置している。
【0029】
図示しないシャッター駆動制御手段は、スイッチ手段30から出力されたオン信号に応答してシャッター開閉駆動機構21に駆動信号を送り、シャッター20を開位置に移動させる(矢印Aの動作)。また、シャッター駆動制御手段は、塗布作業が終わったと見做せるタイミングで、シャッター開閉駆動機構21に駆動信号を送り、シャッター20を閉位置に移動させる(矢印Bの動作)。
【0030】
上記の作業設備を用いて、電線W1、W2の先端の被止水処理部Rに止水剤を塗布する場合は、図2に示すように、作業者が、自身の手Tで電線W1、W2を把持して電線W1、W2の先端(被止水処理部R)を止水剤容器10に向けて移動する。
【0031】
そうすると、その手の動きに反応して、止水剤容器10の上面を覆っていたシャッター20が開く。具体的には、図3に示すように、電線W1、W2を把持した手Tを止水剤容器10に近づけると、その動きに伴って手Tがスイッチバー30Aの上に載ることにより、スイッチバー30Aが手Tからの圧力Fによって押し下げられて、シャッター20が矢印Aの方向に開く。
【0032】
したがって、図4に示すように、開放された止水剤容器10の上方から、蓋11の作業孔12を通して、止水剤容器10の中に収容された低粘度液体状態の止水剤Sに、電線の先端(被止水処理部R)を浸漬させて、被止水処理部Rに止水剤Sを塗布することができる。この場合、塗布作業の流れの中で自動的にシャッター20が開くことになるため、シャッター20が設けられていることを意識せずに作業を進めることができる。
【0033】
また、図4に示すように、手Tでスイッチバー30Aを軽く押し下げることでシャッター20を開き、そのままバネ部材31を撓ませながら、スイッチバー30Aを更に無理なく下方や、手の動きに従って軽く前方に倒すことができる。したがって、手Tをスイッチバー30Aに載せて、バネ部材31を撓ませながら、その手Tを更に止水剤容器10に近づけることができて、電線W1、W2の先端(被止水処理部R)を止水剤容器10内の止水剤Sに無理なく浸漬させることができる。
【0034】
浸漬後は、電線W1、W2の先端を持ち上げ、止水処理部に熱収縮チューブ(図示略)を被せて加熱工程へ回す。
【0035】
以上のように、本発明の実施形態に係る止水剤塗布用の作業設備は、止水剤Sの塗布作業が終了した状態では、シャッター20が閉位置に移動して止水剤容器10の上面を覆う。したがって、止水剤容器10の上部や容器10の上部に被せた作業孔12付き蓋11などに付着した止水剤によって手が汚れるようなことがなくなる。また、手が汚れた場合には、作業箇所の周辺に汚れを移してしまう恐れがあるが、手の汚れを防止できることから、そのようなことも無くなり、作業環境を常にきれいな状態に保つことができる。
【0036】
なお、シャッター20を閉じるタイミングは、例えば、スイッチ手段30がオン信号を発してシャッター20が開いてから、浸漬作業が確実に終了すると見做せる時間が経った時点に設定することができる。あるいは、スイッチ手段30がオン信号からオフ信号に切り替わった時点に設定することもできる。ただしこの場合は、塗布作業中に継続してスイッチ手段30がオン信号を発していることが前提となる。
【0037】
また、止水剤容器10またはその周辺に、止水剤容器10内の止水剤Sに対して電線W1、W2の先端の被止水処理部Rが浸漬されたことを検出するセンサを設けてもよい。センサの例としては、止水剤容器の底に圧力センサを設けておき、電線の先端を容器の底に押し当てると、圧力センサがそれを検知するように設定することができる。
【0038】
そうすれば、センサによって、電線W1、W2の先端の被止水処理部Rが止水剤Sに浸漬されたことを検出するので、浸漬の有無や浸漬時間を知ることができる。したがって、例えば、所定時間シャッター20が開状態になっているにも拘わらず、センサが浸漬を検知しない場合に警告を発したり、浸漬時間が所定時間を経過したら作業者に教えたりすることができる。
【0039】
なお、スイッチ手段としては、手の動きに応じて作動するものであれば、機械式に限らず、光電式などの他のタイプのスイッチを用いることもできる。
【0040】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る止水剤塗布用の作業設備の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 作業者(H)の手(T)により把持された電線(W1、W2)の先端の被止水処理部(R)を止水剤(S)に浸漬させることにより、前記被止水処理部(R)に止水剤(S)を塗布する工程作業のための作業設備であって、
中に前記低粘度液体状態の止水剤(S)が収容され、上方から前記作業者の手(T)により把持された電線(W1、W2)の先端の前記被止水処理部(R)が挿入される止水剤容器(10)と、
前記止水剤容器(10)の上方に配置され、非塗布作業時に閉位置に移動して該止水剤容器(10)の上面を覆うと共に、塗布作業時に開位置に移動して該止水剤容器(10)の上面を開放するシャッター(20)と、
前記シャッター(20)を開閉駆動するシャッター開閉駆動機構(21)と、
前記作業者(H)から見て前記止水剤容器(10)の手前に配置され、電線(W1、W2)を把持する作業者の手(T)が前記止水剤容器(10)に向けて動かされたとき、その手の動作に反応してオン信号を発生するスイッチ手段(30)と、
前記スイッチ手段(30)から出力されたオン信号に応答して前記シャッター開閉駆動機構(21)に駆動信号を送り前記シャッター(20)を開位置に移動させるシャッター駆動制御手段と、
を具備する、
ことを特徴とする電線に対する止水剤塗布用の作業設備。
【0041】
[2] 前記スイッチ手段(30)は、前記作業者の手(T)が載ることで押し下げられる操作部材(30A)と、該操作部材(30A)が押し下げられた際にオン信号を発生するスイッチ本体(32)と、を有する、
ことを特徴とする上記[1]に記載の電線に対する止水剤塗布用の作業設備。
【0042】
[3] 前記操作部材(30A)は、基端側が前記スイッチ本体(32)に連結された片持状の水平方向に延びるスイッチバー(30A)として構成され、該スイッチバー(30A)が、可撓性を有する連結部材(31)を介して、前記スイッチ本体(32)に連結されている、
ことを特徴とする上記[2]に記載の電線に対する止水剤塗布用の作業設備。
【0043】
[4] 前記止水剤容器(10)またはその周辺に、該止水剤容器(10)内の止水剤(S)に対して前記電線(W1、W2)の先端の被止水処理部(R)が浸漬されたことを検出するセンサが設けられている、
ことを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の電線に対する止水剤塗布用の作業設備。
【符号の説明】
【0044】
10 止水剤容器
20 シャッター
21 シャッター開閉駆動機構
30 スイッチ手段
30A スイッチバー(操作部材)
31 バネ部材(連結部材)
32 スイッチ本体
H 作業者
T 手
W1,W2 電線
R 被止水処理部
S 止水剤
図1
図2
図3
図4