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特許7405708交通流制御システム、および、交通流制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】交通流制御システム、および、交通流制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20231219BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G08G1/09 R
G08G1/09 F
G08G1/16 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020117050
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2022014625
(43)【公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】酒寄 剛
(72)【発明者】
【氏名】長谷島 範安
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-27175(JP,A)
【文献】特開2003-168199(JP,A)
【文献】特開2007-293388(JP,A)
【文献】特開2021-33582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラウンドアバウト式の交差点を走行する移動体の交通流を制御する交通流制御システムであって、
前記交差点を仮想的に分割したエリアごとに設けたエリア管理装置と、
前記交差点の進出路ごとに設けた進出路管理装置と、を備え、
前記進出路管理装置は、
担当する進出路の占有権を管理する占有権管理部と、
前記移動体または前記エリア管理装置と通信する通信部と、を有し、
前記エリア管理装置は、
前記移動体の行先となる進出路を取得する行先取得部と、
担当するエリアの進入権を管理する進入権管理部と、
前記移動体、前記進出路管理装置、または、他のエリア管理装置と通信する通信部と、
を有し、
前記エリア管理装置の進入権管理部は、前記移動体から担当するエリアの進入権を要求された場合、前記移動体の行先となる進出路を担当する前記進出路管理装置の占有権管理部が占有権を保有しており、かつ、進入権とトークンを保有していれば、前記進入権を付加した前記トークンを前記移動体に送信することを特徴とする交通流制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の交通流制御システムにおいて、
前記トークンの数は、前記交差点を仮想的に分割した前記エリアの数と同数であることを特徴とする交通流制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の交通流制御システムにおいて、
各エリア管理装置は、原則としてトークンを1つだけ保有でき、前記移動体から送信された予約権付きのトークンに限り、例外的に複数保有できることを特徴とする交通流制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の交通流制御システムにおいて、
前記エリア管理装置は、前記トークンを保有していた場合、他のトークンを受信した後、元々保有していたトークンを他のエリア管理装置に送信することを特徴とする交通流制御システム。
【請求項5】
請求項1に記載の交通流制御システムにおいて、
前記移動体が進入を許可されたエリアに進入した場合、前記進入権はそのエリアを担当するエリア管理装置に返却され、前記トークンは次のエリアを担当するエリア管理装置に送信されることを特徴とする交通流制御システム。
【請求項6】
請求項1に記載の交通流制御システムにおいて、
前記移動体の行先となる進出路を担当する進出路管理装置の占有権管理は、前記移動体から占有権を要求された場合、前記占有権を前記移動体に送信することを特徴とする交通流制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の交通流制御システムにおいて、
前記移動体が進入を許可された進出路を離脱した場合、前記占有権はその進出路を担当する進出路管理装置に返却されることを特徴とする交通流制御システム。
【請求項8】
請求項1に記載の交通流制御システムにおいて、
前記エリア管理装置の進入権管理部は、複数の移動体から担当するエリアの進入権を要求された場合、予約権付きのトークンを送信してきた移動体の要求を優先して、前記進入権を付加した前記トークンを送信することを特徴とする交通流制御システム。
【請求項9】
請求項1に記載の交通流制御システムにおいて、
前記エリア管理装置の進入権管理部は、
行先となる進出路が異なる複数の移動体から担当するエリアの進入権を要求された場合であって、先行する移動体に前記進入権を付加した前記トークンを送信できず、後続する移動体に前記進入権を付加した前記トークンを送信できる場合は、
前記後続する移動体に一時的な逆走を許可し、前記先行する移動体を回避して前記交差点に進入できるよう、前記進出路管理装置の占有権管理部に占有権の付与を指示するとともに、他のエリア管理装置の進入権管理部に進入権の付与を指示することを特徴とする交通流制御システム。
【請求項10】
請求項1に記載の交通流制御システムにおいて、
前記エリア管理装置は、担当するエリア内の移動体を検知する移動体検知部を有しており、該移動体検知部が進入許可を受けていない移動体を担当エリア内で検知した場合は、前記進入権管理部は、進入権を保有していても該進入権を送信しないことを特徴とする交通流制御システム。
【請求項11】
請求項10に記載の交通流制御システムにおいて、
前記エリア管理装置は、前記移動体検知部が、進入許可を受けていない移動体を担当エリア内で検知した場合は、各移動体に異常発生を通知することを特徴とする交通流制御システム。
【請求項12】
請求項1から請求項11の何れか一項に記載の交通流制御システムにおいて、
前記エリア管理装置と前記進出路管理装置の全部または一部は、統括管理装置のメモリ上に構成された仮想的な装置であることを特徴とする交通流制御システム。
【請求項13】
ラウンドアバウト式の交差点を走行する移動体の交通流を制御する交通流制御方法であって、
前記移動体から前記交差点を仮想的に分割した何れかのエリアの進入権を要求された場合、
前記移動体の行先となる進出路の占有権を前記移動体に付与可能かを判定するステップと、
前記占有権を付与可能と判定された場合、前記進入権とトークンも付与可能であれば、前記進入権を付加した前記トークンを前記移動体に送信するステップと、
を備えることを特徴とする交通流制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラウンドアバウト式の交差点の交通流を制御する、交通流制御システム、および、交通流制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点の交通流制御方法としては、例えば、特許文献1の交通信号制御機、非特許文献1の自律的交差点管理法(AIM;Autonomous Intersection management)、非特許文献2の協調車両交差点制御法(CVIC;Cooperative Vehicle Intersection Control)などが知られている。
【0003】
特許文献1の交通信号制御機は、自交差点の流入路それぞれについて車両感知システムを用いて車群が存在するか感知し、車群の存在有無により交差点の信号機を適切に制御することで交差点内の交通流を制御する。
【0004】
非特許文献1の自律的交差点管理法(AIM)は、交差点を細かいセルに分割し、そのセルの占有権を時間的に管理するものであり、車両からの通過許可要求に対して、当該車両が通過する進路を他の車両が占有するか否かに応じて通過可否を判断し、その結果を返すことによって車群を制御する方法である。
【0005】
非特許文献2の協調車両交差点制御法(CVIC)は、交差点に進入してくる全ての車両の走行軌跡を予測し、衝突の可能性を排除するように各車両の速度を制御する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-170480号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】K.Dresner and P.Stone “A multiagent approach to autonomous intersection management” Journal of Artificial Intelligent Research, vol.31, no.1, pp.591-656, 2008
【文献】J.Lee and B.Park “Development and evaluation of a cooperative vehicle intersection control algorithm under the connected vehicles environment” IEEE Transactions on Intelligent Transportation Systems, vol.13, no.1, pp.81-90, 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の交通信号制御機は、交差点の流入路における到着交通流予測情報とそれら情報を複数格納したテーブルに基づいて交差点内の信号機を適切に制御するものであるため、信号機が設置されていないラウンドアバウト式の交差点においては、利用することができなかった。
【0009】
また、非特許文献1の自律的交差点管理法や非特許文献2の協調車両交差点制御法は、交通流を制御する地上側の装置は、交差点を走行する全ての車両の搭載装置から、当該車両の詳細な位置情報、速度情報、走行を計画している走行コースの情報などを高速かつ高頻度に取得し、交差点への適切な進入タイミングや、適切な走行速度を計算する必要がある。これらの方法で処理対象となるデータ量は、例えば数MB/秒ほどであるため、交通流を制御する地上側の装置には高性能な計算機性能が求められ、さらに地上側の装置と車両の搭載装置との間の通信システムには高速かつ大容量な通信性能が求められる。そのため、非特許文献1や非特許文献2による交通流制御は、技術的、費用的に難度が高かった。
【0010】
そこで本発明は、ラウンドアバウト式の交差点の交通流を、計算機性能や通信性能の低い安価なシステムでも処理可能な単純な論理を利用して円滑に制御できる、交通流制御システム、および、交通流制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、代表的な本発明の交通流制御システムの一つは、ラウンドアバウト式の交差点を走行する移動体の交通流を制御するシステムであって、前記交差点を仮想的に分割したエリアごとに設けたエリア管理装置と、前記交差点の進出路ごとに設けた進出路管理装置と、を備え、前記進出路管理装置は、担当する進出路の占有権を管理する占有権管理部と、前記移動体または前記エリア管理装置と通信する通信部と、を有し、前記エリア管理装置は、前記移動体の行先となる進出路を取得する行先取得部と、担当するエリアの進入権を管理する進入権管理部と、前記移動体、前記進出路管理装置、または、他のエリア管理装置と通信する通信部と、を有し、前記エリア管理装置の進入権管理部は、前記移動体から担当するエリアの進入権を要求された場合、前記移動体の行先となる進出路を担当する前記進出路管理装置の占有権管理部が占有権を保有しており、かつ、進入権とトークンを保有していれば、前記進入権を付加した前記トークンを前記移動体に送信する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の交通流制御システムまたは交通流制御方法によれば、ラウンドアバウト式の交差点の交通流を、計算機性能や通信性能の低い安価なシステムでも処理可能な単純な論理を利用して円滑に制御することができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の交通流制御システムを設置した交差点の平面図。
図2】実施例1の交通流制御システムの機能ブロック図。
図3A】車両Vが進入路Iから交差点へ進入する状況の一例。
図3B】進入権管理部が車両Vに進入権付トークンTを付与する状況の一例。
図3C】車両VがエリアAに進入した後、次のエリアAへ進入する状況の一例。
図3D】トークンが進入権管理部間を循環する状況の一例。
図3E】車両Vが進出路Oへ進入する状況の一例。
図4】占有権管理部が占有権を保有していない場合の、進入権管理部の動作の一例。
図5】複数の車両がエリアAの進入権を要求する場合の優先度を説明する図。
図6】実施例1の車両の走行制御装置の動作を示したフローチャート。
図7】実施例1のエリア管理装置の基本動作を示したフローチャート。
図8A】実施例2において、複数車両が進入路Iから交差点へ進入する状況の一例。
図8B】実施例2において、後続車が先行車を回避して交差点に進入する状況の一例。
図9】実施例3の交通流制御システムを設置した交差点の平面図。
図10】実施例3の交通流制御システムの機能ブロック図。
図11】実施例3の移動体検知部の利用方法の一例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の交通流制御システムは、制御対象道路(交通路)を走行する車両(移動体)の走行制御装置と通信し、制御対象道路の交通流を制御するシステムであって、少なくとも、占有権管理部、進入権管理部を備えたものである。占有権管理部は、制御対象道路の進出路ごとに設けられ、各占有権管理部は管轄する進出路の占有権を管理する。進入権管理部は、制御対象道路を仮想的に分割した仮想エリアごとに設けられ、各進入権管理部は、管轄する仮想エリアの進入権を管理する。
【0016】
また、本発明の交通流制御システムでは、仮想エリア数に応じた数(好ましくは仮想エリア数と同数)のトークンが用意されており、各仮想エリアへの進入権はトークンに付加する形で制御対象道路を走行する車両の走行制御装置に与えられる。
【0017】
つまり、本発明の交通流制御システムでは、進出路では占有権を用い、仮想エリアでは進入権を用いて、進路の競合する複数の車両が同じ進出路や仮想エリアに同時に進入する事象を防ぎつつ、トークンの数によって制御対象道路に進入可能な車両の総数を制限する。
【0018】
従って、ある車両が本発明の制御対象道路に初めて進入する場合、本発明の交通流制御システムは、仮想エリアの進入権有無のみならず、車両の行先および占有権管理部の情報に基づいて仮想エリアへの進入権を管理する。そのため、各車両の走行制御装置は、本発明の交通流制御システムの制御対象道路を通過する際には、走行を計画する仮想エリアの入口で、当該仮想エリアを管轄する進入権管理部に当該仮想エリアの進入権を要求すると同時に行先を通知する。その後、車両の走行制御装置は、進入権が与えられた後は、当該仮想エリアへ先行車両や障害物に注意して車両を進入させる。これにより、交差点内の交通流が適切に正誤される。
【0019】
なお、進入権ではなく、背景技術で説明した自律的交差点管理法で用いられている占有権の概念、言い換えると常にセルには1台以下の車両しか入らないという仕組みを使っても衝突を回避して交通流を管理することができる。しかしながら、交差点を通過する車両間には衝突回避に必要な距離(少なくともセル長と車両の制動距離とを足した距離間隔など)が必要であるため、交差点内の交通流を占有権で管理すると、単位時間当たりの交差点通過台数が低く制限される場合がある。
【0020】
そのため、本発明では、先行車両を検知して衝突を回避する従来技術や運転手の操作による衝突回避などの利用を前提に、占有権(他の移動体の同一エリアへの進入を排除する独占権)ではなく、進入権(移動体が仮想エリアに進入する権利)の概念を用いて交通流を管理することとした。
【0021】
以下、具体的な実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0022】
まず、図1から図7を用いて、本発明の実施例1に係る、交通流制御システムと交通流制御方法を説明する。
【0023】
<交差点の構成>
図1は、実施例1の交通流制御システム10を設置した交差点の平面図である。この交差点は、信号機のないラウンドアバウト式の四差路交差点であり、左車線を走行する車両は交差点内を時計回りに走行することで、任意の進入路I(I、I、I,I)から任意の進出路O(O、O、O,O)に移動することができる。
【0024】
この交差点内は、進入権を管理する単位で複数の仮想的なエリアA(A、A、A,A)に分割されている。各エリアAの入口は、時計回りで手前側のエリアAとの境界と、接続する進入路Iの2つであり、また、各エリアAの出口は、時計回りで次のエリアAとの境界と、接続する進出路Oの2つである。例えば、エリアAの入口は、エリアAとの境界と進入路Iであり、エリアAの出口は、エリアAとの境界と進出路Oである。
【0025】
この交差点の近傍には、交通流制御システム10を構成する、エリア管理装置1(1~1)と、進出路管理装置2(2~2)が設置されている。例えば、エリアA近傍には、エリアAの進入権を管理するエリア管理装置1が設置されており、進出路O近傍には、進出路Oの占有権を管理する進出路管理装置2が設置されている。
【0026】
また、交通流制御システム10は、全体で4つの電子的なトークンT(T~T)を管理する。初期状態では、各エリア管理装置1が1つのトークンTを保有している。例えば、エリア管理装置1はトークンTを保有している。
【0027】
<交通量制御システムの構成>
図2は、本実施例の交通量制御システム10の機能ブロック図である。ここに示すように、交通量制御システム10は、図1に示した、エリア管理装置1~1と、進出路管理装置2~2を、無線通信ネットワークなどで通信可能に接続したシステムである。
【0028】
このシステムの全体動作として、後述する各タイミングで、各車両の走行制御装置から車両情報や管理情報を受信したり、各車両の走行制御装置に管理情報を送信したりする。ここで、車両情報とは、車両Vが走行を計画するエリアAの進入権の要求や、車両Vの行先となる進出路Oを明示する情報などであり、管理情報とは、進入権、占有権、トークンなどである。なお、車両情報や管理情報は、何れも数バイト程度のデータであるため、本システムの実現に必要な計算機性能や通信性能は低く、非特許文献1や非特許文献2が要求する計算機性能や通信性能である数MB/秒の処理能力の1/1000程度でも良い。
【0029】
ここで、エリア管理装置1は、行先取得部11、進入権管理部12、通信部13を備えており、進出路管理装置2は、占有権管理部21、通信部22を備えている。各装置は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等を備えたコンピュータであり、交通流制御プログラムを実行することで、上記した進入権管理部12や占有権管理部21などの各機能を実現する。なお、図1図2では、エリア管理装置1~1や進出路管理装置2~2を個々独立した現実の装置として例示しているが、交差点の近傍に設置した一つの統括管理装置のメモリ上に複数の仮想的なエリア管理装置や進出路管理装置を構成し、メモリ情報を共有しても良い。この場合、交通量制御システム10を構成するハードウェアの一部または全部を、専用の装置、汎用の機械学習マシン、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、PLD(programmable logic device)などで代替してもよい。
【0030】
次に、本実施例の交通流制御システム10の具体的な動作を、図3A図7を用いて順次説明する。
【0031】
<他車両が存在しない状況での動作例>
まず、図3Aから図3Eを用いて、自車両(車両V)以外の他車両が存在しない状況を例に、交通流制御システム10の動作を説明する。
【0032】
この例では、図3Aに示すように、車両Vが、進入路I、エリアA、エリアA、進出路Oの順の走行を計画している。この場合、車両Vは、まず、(1)エリアAを管理するエリア管理装置1の行先取得部11に行先である進出路Oを明示し、また、進入権管理部12にエリアAの進入権を要求する。
【0033】
進入権を要求された進入権管理部12は、エリアAの進入権を付加したトークンTを車両Vに付与できるかを判定する。この判定のため、図3Bに示すように、まず、(2)進入権管理部12は、車両Vの行先である進出路Oを管理する進出路管理装置2の占有権管理部21が、進出路Oの占有権を保有しているか確認する。進出路Oに他車両が存在しておらず、占有権管理部21が占有権を保有していれば、(3)進入権管理部12は、エリアAの進入権をトークンTに付加して車両Vへ送信する。
【0034】
エリアAの進入権を受信すると、車両Vは、エリアA内の先行車両や障害物に注意しながら、エリアAに進入する。なお、先行車両や障害物を検知し衝突を回避する方法については、単眼カメラ、ステレオカメラ、レーザレーダ、ミリ波レーダなどの外界センサを用いた方式が多数知られており、その何れかの方式を用いればよい。
【0035】
車両VがエリアAに進入すると、図3Cに示すように、(4)車両Vは、エリアAの進入権を進入権管理部12に返却する。また、(5)車両Vは、次のエリアAを担当するエリア管理装置1の進入権管理部12に、予約権付のトークンTを送信し、同時に次のエリアAへの進入権を要求する。車両VからトークンTを受信した場合、進入権管理部12は、その時点で他車にエリアAの進入権を与えていなければ、そのトークンTにエリアAの進入権を付加して、車両Vに送信する。
【0036】
ここで、本実施例のトークン管理方法を説明する。本実施例では、トークンTが偏在しないように、進入権管理部12間でトークンTの所在を調整する。つまり、各々の進入権管理部12は、原則として、トークンTを1つだけ保有でき、予約権付きのトークンTに限り、例外的に複数保有できるようにした。
【0037】
図3Dを用いて具体的に説明する。車両VからトークンTを受信する進入権管理部12は、既にトークンTを保有していたので、トークンTの保有数を1つとすべく、車両Vから予約権付のトークンTを受信した後、予約権のないトークンTを進入権管理部12に送信する。同様に、進入権管理部12は、トークンTを受信した後、元々保有していたトークンTを進入権管理部12に送信し、進入権管理部12は、トークンTを受信した後、元々保有していたトークンTを進入権管理部12に送信する。そして、トークンTを保有していなかった進入権管理部12がトークンTを受信することにより、各進入権管理部12が1つのトークンTを保有する状態となり、トークンTの偏在が解消する。なお、トークンTを送信する順序は予め設定された一方向への循環(例えば、時計回りの循環)のみとする。
【0038】
その後、進入権管理部12からエリアAの進入権付きのトークンTを受信した車両VがエリアAに進入すると、図3Eに示すように、(6)車両VはエリアAの進入権を進入権管理部12に返却し、(7)トークンTをエリア管理装置1の進入権管理部12に送信する。これにより、全てのトークンTが交通流制御システム10側に返却されたことになる。また、(8)車両Vは、進出路Oへ進出するため、占有権管理部21に占有権を要求する。図3Eでは占有権管理部21が進出路Oの占有権を有しているので、占有権管理部21は進出路Oの占有権を車両Vに付与する。これにより、車両VはエリアAから進出路Oに進出することができる。そして、車両Vが進出路Oを離脱した後、車両Vは進出路Oの占有権を占有権管理部21に返却する。
【0039】
このようにして、車両Vは、所望のエリアの進入権や所望の進出路の占有権を適宜取得しながら、進入路I、エリアA、エリアA、進出路Oを、滞りなく走行することができる。
【0040】
なお、ある車両Vに進入権を与えた進入権管理部12は、進入権が返却されるまでは、他車両から進入権を要求されても、他車両には進入権を与えない。また、進入権管理部12は、ある車両Vから進入権が返却された後であっても、トークンTを保有していなければ、進入権を要求している他車両に進入権を与えない。つまり、進入権管理部12は、その時点においてどの車両にも進入権を与えておらず、かつ、トークンTを保有している場合に限り、要求のあった車両に進入権を与えることができる。これにより、ラウンドアバウト式の交差点内を走行する車両数を抑制することができる。
【0041】
<1台の他車両が存在する状況での動作例>
次に、図4を用いて、自車両(車両V)以外に1台の他車両(車両V)が存在する状況を例に、交通流制御システム10の動作を説明する。なお、ここでも、車両Vは、進入路I、エリアA、エリアA、進出路Oの順の走行を計画しているものとする。
【0042】
図4に示すように、渋滞、故障、歩行者の横断待ち等が理由で、進出路Oに車両Vが停車している場合、すなわち、進出路Oの占有権を車両Vが保有しており、進出路管理装置2の占有権管理部21が保有していない場合には、エリア管理装置1の進入権管理部12はエリアAの進入権を車両Vに付与せず、進入権を持たない車両VはエリアAへの進入を保留する。この結果、交差点に進入した車両Vが、進出路Oに進出できずに交差点内で滞留し、ラウンドアバウト式の交差点が機能不全(デッドロック)に至る状況を回避することができる。
【0043】
進入保留中の車両Vは、エリアAの進入権が与えられるまでは、進入路Iに留まるための制御(例えば、自動停止制御、減速から一時停止までの走行アシスト、一時停止状態の自動保持、一時停止の経路案内、一時停止の警報指示など)を実行し、エリアAの手前の所定位置で停止したまま、エリアAの進入権が付与されるのを待つ。この際、車両Vが自己の停止位置を推定するには、GPS(Global Positioning System)などの衛星からの電波を利用して求める方式や、レーザレーダと環境地図を用いる方式など、周知の何れかの方式を用いればよい。また、経路の始点の検知や、エリアAの繋がりや範囲の検知についても、予めそれらの位置情報を記憶しておいてもよいし、それらの情報を意味する標識を道路脇に立てる、または線、シンボル、文字、数字などを路面に書いておき、これらを外界センサで認識してもよい。
【0044】
また、進入保留中の車両Vは、継続的に進入権管理部12に進入権を要求し続ける。従って、進出路Oを離脱した車両Vが占有権管理部21に占有権を返却し次第、進入権管理部12はエリアAの進入権を付加したトークンTを車両Vに送信することができる。なお、車両VがトークンTを受信した後の動作は、図3C図3Eと同等である。
【0045】
<2台の他車両が存在する状況での動作例>
次に、図5を用いて、自車両(車両V)以外に2台の他車両(車両V、V)が存在する状況を例に、交通流制御システム10の動作を説明する。なお、ここでも、車両Vは、進入路I、エリアA、エリアA、進出路Oの順の走行を計画しているものとする。
【0046】
この例では、エリアAを走行中の車両VがエリアAの進入権付のトークンTを保有している。また、エリアAを走行中の車両Vは、エリアAの進入権を進入権管理装置1に返却した後、予約権付のトークンTをエリア管理装置1の進入権管理部12に送信し、エリアAの進入権を要求している。さらに、進入路Iを走行中の車両Vは、エリアAへの進入を計画しており、エリアAの進入権を進入権管理部12に要求している。
【0047】
このように、図5では、車両Vと車両Vの双方がエリアAの進入権を要求しているが、進入権は車両Vが保有しているため、進入権管理部12は、車両Vと車両Vの要求を何れも保留する。
【0048】
その後、車両VがエリアAの進入権を進入権管理部12に返却し、トークンTを進入権管理部12に送信すると、進入権管理部12は、エリアAの進入権を自身が保有するトークンTに付けて何れかの車両に付与できるようになる。ここでは、トークンTに車両Vの予約権が付加されているので、車両Vの要求が優先され、進入権管理部12は、エリアAの進入権付のトークンTを車両Vに送信する。
【0049】
このようにして、「交差点のいずれかのエリアに進入した車両には、隣接する他エリアの進入を計画する場合に、隣接する他エリアへの進入権が自動的に予約される」という機能が実現される。その結果、交差点内の車両には、交差点外の車両に比べて優先的に進入権が与えられ、エリアA~A内の各車両は遅滞なくラウンドアバウト式に進行することができ、交差点内の車両を迅速に交差点外へ進出させることが可能となる。
【0050】
<車両の走行制御装置の動作フローと、エリア管理装置の動作フロー>
以上で説明した交通流制御システム10の動作を纏めると、車両Vの走行制御装置の動作は図6のフローチャートに示すようになり、エリア管理装置1の動作は図7のフローチャートに示すようになる。以下、順次説明する。
【0051】
図6のステップS1では、車両Vの走行制御装置は、エリア管理装置1の行先取得部11に行先となる進出路Oを通知する。また、ステップS2では、走行制御装置は、エリア管理装置1の進入権管理部12に、進入予定のエリアAの進入権を要求する。
【0052】
ステップS3では、走行制御装置は、進入権管理部12から、進入権が付加されたトークンを取得したかを判定する。トークンを取得しない場合は、ステップS2に戻り、進入権を再度要求する。一方、進入権が付加されたトークンを取得した場合は、ステップS4に進み、車両Vは進入が許可されたエリアAに進入する。その後、ステップS5では、走行制御装置は、そのエリアAの進入権を進入権管理部12に返却する。
【0053】
ステップS6では、走行制御装置は、交差点内の次のエリアAに進むかを判定する。そして、次のエリアAに進む場合は、ステップS2に戻り、次のエリアAの進入権を次のエリアを担当する進入権管理部12に要求する。一方、次のエリアに進まない場合は、走行制御装置はステップS7に進み、進出路管理装置2の占有権管理部21に進出路Oの占有権を要求する。
【0054】
ステップS8では、走行制御装置は、占有権管理部21から占有権を取得したかを判定する。占有権を取得しない場合は、ステップS7に戻り、占有権を再度要求する。一方、占有権を取得した場合は、車両Vは進入が許可された進出路Oに進入する。その後、ステップS9では、走行制御装置は、その進出路Oの占有権を占有権管理部21に返却する。
【0055】
また、図7のステップS10では、エリア管理装置1の進入権管理部12は、車両Vの走行制御装置から進入権の要求があったかを判定する。そして、要求があれば、ステップS11に進み、要求が無ければReturnに進む。
【0056】
次に、ステップS11では、進入権管理部12は、保有しているトークンTに車両Vの予約権が付加されているかを判定する。そして、予約権が無ければ、ステップS12に進み、予約権があれば、ステップS14に進む。
【0057】
ステップS12では、進入権管理部12は、行先取得部11を介して車両Vの行先となる進出路Oを取得する。ステップS13では、進入権管理部12は、車両Vの行先となる進出路Oを担当する進出路管理部2の占有権管理部21が占有権を保有しているかを判定する。そして、占有権を保有していれば、ステップS14に進み、占有権を保有していなければ、Returnに進む。
【0058】
ステップS14では、進入権管理部12は、自身がエリアAの進入権を保有しているかを判定する。そして、進入権を保有していれば、ステップS15に進み、進入権を付加したトークンTを車両Vの走行制御装置に送信する。一方、進入権を保有していなければ、Returnに進む。
【0059】
以上で説明した交通流制御システム10の動作により、交通流の障壁(いわゆるボトルネック)になりやすい交差点内において、車両の遅滞が少なくなるため、交差点に向かう車両の交通流も円滑に流れるようになる。
【0060】
本実施例では、交差点内エリアの管理方法を、占有権(他の移動体の同一エリアへの進入を排除する独占権)による他車両の排他管理ではなく、ある車両に与えた進入権(エリアに進入できる権利)が返却されるまでは他車両に進入権を与えない管理によって、交通流を制御する。すなわち、本実施例では、異なるタイミングで進入権が与えられた複数車両が同じエリアAに存在する状況を許容している。このため、進入権を与えられた各車両は、運転手や走行制御装置(運転アシスト機構や安全ブレーキ機構や自動運転機構など)が道路状況を自主的に判断する。そのため、車両に進入権を付与する前後の時点において、衝突回避に必要な通行速度および車間距離が車両側の責任で保証される。
【0061】
車両側の責任を前提とする場合、交通流制御システム10では、交差点内の全車両の走行制御装置から、各車両の詳細な位置情報、速度情報、走行を計画している走行コースの情報などを高速かつ高頻度に取得する必要が特になくなり、交差点における適切な車両間隔や、適切な走行速度を計算して車両ごとに指令を与える必要も特にない。さらには、従来そのために必要であった、装置側の高性能な計算機性能や、各車両に対する高速かつ大容量な通信性能が不要となる。そのため、交通流を制御することの技術的、費用的な難度が低くなる。
【0062】
また、本実施例では、交通流を制御する地上側の装置は、交差点を走行する各車両の走行制御装置との間で、わずかな情報量のデータを電子的にやりとりするだけで、交差点の交通流を円滑に制御することが可能になる。
【0063】
なお、右側通行の交差点の場合には、仮想エリアを左回りに設定し、同様の方法で制御する。また、制御対象の交差点はいくつの仮想エリアに分割してもよいが、仮想エリア数と同数のトークンTが用意されるため、交差点には最大で仮想エリア数と同数の車両が進入することになる。仮想エリア数が多ければ単位時間当たりの車両通過数は増えるが、車両が動けなくなるデッドロックのリスクも増える。したがって、仮想エリア数を同数の車両が交差点に進入する状況を踏まえて、そのよう場合でもデッドロックに陥らないような適切な数に分割することが望ましい。
【0064】
例えば、三差路からなる交差路を交差中心に対して周方向に3つの仮想エリアに分割して制御してもよい。なお、仮想エリアの分割数は、デッドロックに陥る可能性が低く、車両間隔が必要以上に開きすぎなければ、5つ以上でも3つ以下でもよい。
【0065】
また、本実施例では車両が走行する一般的な道路を例に説明したが、本発明は、倉庫内の荷物運搬エリアなどの運行設計領域にも適用可能である。
【0066】
以上で説明したように、本実施例の交通流制御システムまたは交通流制御方法によれば、ラウンドアバウト式の交差点の交通流を、計算機性能や通信性能の低い安価なシステムでも処理可能な単純な論理を利用して円滑に制御することができる。
【実施例2】
【0067】
次に、図8A図8Bを用いて、本発明の実施例2の交通流制御システムについて説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。
【0068】
実施例2では、図8Aに示すように、進入路Iから2台の車両が交差点に進入しようとしており、先行する車両Vは進出路Oからの進出を計画し、後続する車両Vは進出路Oからの進出を計画している。
【0069】
この場合、車両Vの走行制御装置は、エリア管理装置1の進入権管理部12にエリアAの進入権を要求するとともに、行先取得部11に進出路Oを行先として通知する。すると、進入権管理部12は、進出路Oの占有権を占有権管理部21が有しているか確認する。図8Aでは、進出路Oの占有権は車両Vが有しているので、進入権管理部12は車両Vの要求を保留する。従って、車両Vは進入権管理部12から進入権付のトークンTを付与されるまでは、エリアAに進入できないため、エリアAの手前で停止する。
【0070】
一方、車両Vの走行制御装置は、エリア管理装置1にエリアAの進入権を要求し、進出路Oを行先として通知する。すると、進入権管理部12は、進出路Oの占有権を占有権管理部21が有しているか確認する。図8Aでは、進出路Oに車両がいないので、占有権は占有権管理部21が保有している。この結果、進入権管理部12は、エリアAの進入権付のトークンTを車両Vに送信することを試みる。しかしながら、先行する車両VがエリアAの手前で停止しているため、エリアAへの進入が許可されても、車両Vは車両Vが障害となりエリアAに進入することができない。
【0071】
そこで、本実施例では、車両Vが、図8Bの一点鎖線で示す経路の一部を逆走し、車両Vを回避しつつ、進出路Oに移動できるようにした。これを実現するため、本実施例の進入権管理部12は、進出路Oの占有権の有無、および、エリアAの進入権の有無も併せて確認することとした。図8Bでは、進出路Oを管理する進出路管理装置2の占有権管理部21が占有権を保有しており、エリアAを管理するエリア管理装置1の進入権管理部12が進入権とトークンTを保有しているため、エリアAの進入権管理部12は、占有権管理部21に進出路Oの占有権を車両Vに付与するよう指示し、また、進入権管理部12にエリアAの進入権付のトークンTを車両Vに付与するよう指示する。
【0072】
この結果、車両Vには、進出路Oの占有権と、エリアAの進入権が付与されるので、車両Vは、車両Vを回避しつつ、進出路O、エリアAの順に走行することで交差点内に進入することができる。そして、車両VがエリアAに進入した際に、進出路Oの占有権を占有権管理部21に返却し、エリアAの進入権を進入権管理部12に返却する。また、車両Vは、エリアAの進入権付きのトークンTを進入権管理部12に返却するとともに、予約権付のトークンTを進入権管理部12に送信することで、エリアAの進入権を再度要求する。車両Vから予約権付のトークンTを受信した進入権管理部12は、先に受信したトークンTを進入権管理部12に送信する。また、進入権管理部12は、エリアAの進入権を付加したトークンTを車両Vに送信する。これにより、車両Vは滞りなく交差点内を走行し、進出路Oに向かうことができる。
【0073】
なお、交差点への進入を保留していた車両Vは、進出路Oの占有権が占有権管理部21に返却され、エリアAの進入権を進入権管理部12が保有している状態となった場合に、進入権管理部12から進入権が付与され、交差点内に進入することができる。
【0074】
本実施例によれば、以上の動作を継続的に繰り返すことにより、交差点の手前で停止している先行車が交差点への進入の障害となる場合でも、後続車を交差点内に進入させることができる。
【実施例3】
【0075】
次に、図9から図11を用いて、本発明の実施例3の交通流制御システムについて説明する。なお、上記の実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0076】
本実施例では、図9に示すように、各進出路O内や各エリアA内の移動体を検知する移動体検知部14、23を設けている。例えば、エリアA内の移動体を検知するために、移動体検知部14を設けており、進出路O内の移動体を検知するために、移動体検知部23を設けている。なお、各々の移動体検知部は、外界センサを用いて対象領域内の移動体を検知するものであれば良く、例えば、単眼カメラ、ステレオカメラ、レーザレーダ、ミリ波レーダなどの外界センサの出力を処理し移動体を検知できるものであれば、その方式を問わない。
【0077】
図10は、本実施例の交通流制御システム10の機能ブロック図である。ここに示すように、本実施例では、移動体検知部14をエリア管理装置1の一要素として扱い、移動体検知部23を進出路管理装置2の一要素として扱っている。これらの移動体検知部が、各進出路Oや各エリアA内の移動体を検知することで、占有権と進入権のみで交通流を管理していた実施例1、2と比較し、安全性がより向上する。
【0078】
例えば、車両自身の自己位置推定では誤差が生じることが多々あり、それが原因で進入権を付与されていないエリアAに車両が進入したり、車両が進出路Oにいるにも関わらず、その進出路Oを離脱したと誤解して、占有権を返却したりしてしまう事象が起きる可能性がある。このような状況下では、同一領域内に意図せず複数台の車両が進入してしまい、衝突してしまう可能性が生じるが、各領域を検知する移動体検知部を設けた本実施例の構成により、車両同士の衝突リスクを軽減することが可能である。
【0079】
例えば、図11では、車両VがエリアAの進入権を進入権管理部12に要求しているが、車両Vの行先である進出路Oの占有権が車両Vに送信されているため、進入権管理部12は車両VのエリアAへの進入を許可していない。従って、本来であれば、車両VはエリアAに進入していないはずであるが、図11では、車両Vの自己位置推定の精度不足や停止制御異常により、車両VがエリアAに少し侵入している。
【0080】
ここで、エリアAを走行中の車両Vは、エリアAへの進入を計画し、エリアAの進入権を進入権管理部12に返却し、予約権付のトークンTを進入権管理部12に送信するとともに、エリアAの進入権を要求している。この場合、進入権管理部12はエリアAの進入権とトークンTを有しているので、本来であれば、車両Vに進入権付のトークンTを送信することができる。しかしながら、エリアA内の移動体を検知する移動体検知部14は、車両Vが誤ってエリアA内に侵入していることを検知しており、進入権管理部12はこの情報を共有しているので、進入権管理部12は、車両Vと車両Vの衝突を回避すべく、進入権とトークンTの双方有しているにも関わらず、車両Vへの進入権付のトークンTの送信を保留する。これにより、交差点内の交通流の一時的な悪化を招くことになるが、車両Vと車両Vの衝突は回避されるので、長期的な視点での交通流悪化を回避することができる。
【0081】
なお、本実施例においては、各エリア管理装置1、各進出路管理装置2は、移動体検知部が図11に例示するような異常を検知した場合、各車両に危険や異常を通知してもよい。
【0082】
以上、図面を用いて本発明に係る実施例を詳述してきたが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
10 交通流制御システム、
1 エリア管理装置、
11 行先取得部、
12 進入権管理部、
13 通信部、
14 移動体検知部、
2 進出路管理装置、
21 占有権管理部、
22 通信部、
23 移動体検知部、
A エリア、
I 進入路、
O 進出路、
T トークン、
V 車両
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11