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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】車上システム及び車上子
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/40 20060101AFI20231219BHJP
   B61L 3/12 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B60L15/40 A
B61L3/12 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020178536
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022069730
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】關 淳史
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-264810(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0015514(KR,A)
【文献】実開平06-078146(JP,U)
【文献】実開平06-031305(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1912863(KR,B1)
【文献】特開2014-004991(JP,A)
【文献】特表2016-504897(JP,A)
【文献】特開2012-214152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/40
B61L 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の送信信号を送信する送信アンテナと、所定の共振回路を有する地上子に接近した場合に所与の共振周波数の信号が誘起される受信アンテナとを有する車上子と、前記受信アンテナの受信信号に基づいて前記地上子を検出する車上装置とを具備する車上システムであって、
前記送信アンテナは、2つのループ部を車両走行方向に沿って前後となる位置に有する8の字形状のループコイルであり、
前記車上子は、前記送信アンテナと前記受信アンテナとを、平面視において重なる位置であって、前記8の字形状のループコイルの電線交差部と前記受信アンテナの中心とがずれた位置に有し、
前記車上装置は、
前記受信信号の振幅周波数特性を解析して、前記共振周波数に対応する振幅である共振周波数振幅を算出する算出手段と、
前記共振周波数振幅の時系列変化が所定の振幅変化条件を満たすかを判定することで、前記地上子を検出する地上子検出手段と、
を備える、
車上システム。
【請求項2】
所定の送信信号を送信する送信アンテナと、所定の共振回路を有する地上子に接近した場合に所与の共振周波数の信号が誘起される受信アンテナとを有する車上子と、前記受信アンテナの受信信号に基づいて前記地上子を検出する車上装置とを具備する車上システムであって、
前記送信アンテナは、2つのループ部を車両走行方向に沿って前後となる位置に有する8の字形状のループコイルであり、
前記車上子は、前記送信アンテナと前記受信アンテナとを、平面視において重なる位置であって、前記8の字形状のループコイルの電線交差部と前記受信アンテナの中心とがずれた位置に有し、
前記車上装置は、
前記受信信号の位相周波数特性を解析して、前記共振周波数に対応する位相である共振周波数位相を算出する算出手段と、
前記共振周波数位相の時系列変化が所定の位相変化条件を満たすかを判定することで、前記地上子を検出する地上子検出手段と、
を備える、
車上システム。
【請求項3】
前記算出手段は、更に、前記受信信号の位相周波数特性を解析して、前記共振周波数に対応する位相である共振周波数位相を算出し、
前記地上子検出手段は、前記共振周波数振幅の時系列変化が前記振幅変化条件を満たし、且つ、前記共振周波数位相の時系列変化が所定の位相変化条件を満たした場合に、前記地上子を検出したと判定する、
請求項1に記載の車上システム。
【請求項4】
前記振幅変化条件は、前記共振周波数振幅が所定の高振幅条件を満たした後に所定の低振幅条件を満たし、その後に再度前記高振幅条件を満たすこと、を少なくとも含む、
請求項1又は3に記載の車上システム。
【請求項5】
前記位相変化条件は、前記共振周波数位相が、所定の進み位相角条件及び所定の遅れ位相角条件のうちの一方の位相角条件を満たした後に当該一方の位相角条件を満たさなくなり、その後に他方の位相角条件を満たすこと、を少なくとも含む、
請求項2又は3に記載の車上システム。
【請求項6】
前記地上子検出手段は、
1)前記共振周波数振幅が所定の高振幅条件を満たし、且つ、前記共振周波数位相が、所定の進み位相角条件及び所定の遅れ位相角条件のうちの一方の位相角条件を満たすこと、
2)前記共振周波数振幅が所定の低振幅条件を満たし、且つ、前記共振周波数位相が前記当該一方の位相角条件を満たさなくなること、
3)前記共振周波数振幅が前記高振幅条件を満たし、且つ、前記共振周波数位相が、前記進み位相角条件及び前記遅れ位相角条件のうちの他方の位相角条件を満たすこと、
を順に達成した場合に、前記振幅変化条件及び前記位相変化条件を満たしたとして前記地上子を検出したと判定する、
請求項3に記載の車上システム。
【請求項7】
所定の送信信号を送信する送信アンテナと、所定の共振回路を有する地上子に接近した場合に所与の共振周波数の信号が誘起される受信アンテナとを有する車上子と、前記受信アンテナの受信信号に基づいて前記地上子を検出する車上装置とを具備する車上システムに用いられる前記車上子であって、
前記車上装置は、前記受信信号の振幅周波数特性を解析して、前記共振周波数に対応する振幅である共振周波数振幅を算出する算出手段と、前記共振周波数振幅の時系列変化が所定の振幅変化条件を満たすかを判定することで、前記地上子を検出する地上子検出手段とを有しており、
前記送信アンテナは、2つのループ部を車両走行方向に沿って前後となる位置に有する8の字形状のループコイルであり、
前記送信アンテナと前記受信アンテナとが、平面視において重なる位置であって、前記8の字形状のループコイルの電線交差部と前記受信アンテナの中心とがずれた位置にある、
車上子。
【請求項8】
所定の送信信号を送信する送信アンテナと、所定の共振回路を有する地上子に接近した場合に所与の共振周波数の信号が誘起される受信アンテナとを有する車上子と、前記受信アンテナの受信信号に基づいて前記地上子を検出する車上装置とを具備する車上システムに用いられる前記車上子であって、
前記車上装置は、前記受信信号の位相周波数特性を解析して、前記共振周波数に対応する位相である共振周波数位相を算出する算出手段と、前記共振周波数位相の時系列変化が所定の位相変化条件を満たすかを判定することで、前記地上子を検出する地上子検出手段と、を有しており、
前記送信アンテナは、2つのループ部を車両走行方向に沿って前後となる位置に有する8の字形状のループコイルであり、
前記送信アンテナと前記受信アンテナとが、平面視において重なる位置であって、前記8の字形状のループコイルの電線交差部と前記受信アンテナの中心とがずれた位置にある、
車上子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上子を検出する車上システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
自動列車停止装置(ATS:Automatic Train Stop装置)は、車上側において地上子を検出して列車制御を行う装置である。ATS装置は、おおまかに、変周式及びトランスポンダ式の2種類に分類される。変周式ATS装置は、車上子から所定の周波数の信号を送信し、車上子が地上子と電磁結合したときにこの送信周波数が地上子の共振周波数に変周される現象を利用して地上子を検出する。変周式ATS装置には、地上子がとり得る複数の共振周波数でなる合成波信号を用いることで同時に複数の共振周波数を検出可能とし、地上から取得する情報量を増やした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4723382号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ATS装置は、き電や車両機器等からの多くの電磁ノイズに曝されている環境の中で確実に地上子を検出することが求められている。変周式ATS装置の車上装置における地上子の検出は、通常、受信信号の周波数スペクトルにおけるピークを検出することで行っている。
【0005】
複数の共振周波数の合成波信号を利用するATS装置の場合、1つの共振周波数当たりの出力パワーが弱くなることから、周波数スペクトルにおけるピークが、地上子との電磁結合によるものか受信信号に混入したノイズによるものかの判別が難しく、地上子検出の信頼性が低くなるという問題があった。合成波信号の出力パワーを増加させる方策も考えられるが、装置が大型化すること、近年求められている省エネに対して逆行すること等の理由から、好ましい方策ではない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、地上子の検出の信頼性を高めることができる新たな技術を提案すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、
所定の送信信号を送信する送信アンテナと、所定の共振回路を有する地上子に接近した場合に所与の共振周波数の信号が誘起される受信アンテナとを有する車上子と、前記受信アンテナの受信信号に基づいて前記地上子を検出する車上装置とを具備する車上システムであって、
前記送信アンテナは、2つのループ部を車両走行方向に沿って前後となる位置に有する8の字形状のループコイルであり、
前記車上子は、前記送信アンテナと前記受信アンテナとを、平面視において重なる位置であって、前記8の字形状のループコイルの電線交差部と前記受信アンテナの中心とがずれた位置に有し、
前記車上装置は、
前記受信信号の振幅周波数特性を解析して、前記共振周波数に対応する振幅である共振周波数振幅を算出する算出手段(例えば、図1の算出部200)と、
前記共振周波数振幅の時系列変化が所定の振幅変化条件を満たすかを判定することで、前記地上子を検出する地上子検出手段(例えば、図1の地上子検出部208)と、
を備える、
車上システムである。
【0008】
他の発明として、
所定の送信信号を送信する送信アンテナと、所定の共振回路を有する地上子に接近した場合に所与の共振周波数の信号が誘起される受信アンテナとを有する車上子と、前記受信アンテナの受信信号に基づいて前記地上子を検出する車上装置とを具備する車上システムに用いられる前記車上子であって、
前記車上装置は、前記受信信号の振幅周波数特性を解析して、前記共振周波数に対応する振幅である共振周波数振幅を算出する算出手段(例えば、図1の算出部200)と、前記共振周波数振幅の時系列変化が所定の振幅変化条件を満たすかを判定することで、前記地上子を検出する地上子検出手段(例えば、図1の地上子検出部208)とを有しており、
前記送信アンテナは、2つのループ部を車両走行方向に沿って前後となる位置に有する8の字形状のループコイルであり、
前記送信アンテナと前記受信アンテナとが、平面視において重なる位置であって、前記8の字形状のループコイルの電線交差部と前記受信アンテナの中心とがずれた位置にある、
車上子を構成してもよい。
【0009】
第1の発明等によれば、車上子の送信アンテナを8の字形状のループコイルとしその2つのループ部を車両走行方向に沿って前後となる位置とすることができる。このようにすることで、列車が地上子を通過するときの共振周波数振幅の時系列変化が、地上子への接近に伴って増加し、地上子と最接近した位置の付近で一旦減少した後に再度増加し、その後地上子から離れるに伴って減少するといった特徴的な変化となる。この変化は、ノイズが混入した受信信号を受信したときの共振周波数振幅の時系列変化とは大きく異なる。第1の発明等によれば、共振周波数振幅の時系列変化が、このような特徴的な変化をしたとみなせる振幅変化条件を満たしたかを判定することで、地上子を確実に検出してその信頼性を高めることができる。
【0010】
第2の発明は、
所定の送信信号を送信する送信アンテナと、所定の共振回路を有する地上子に接近した場合に所与の共振周波数の信号が誘起される受信アンテナとを有する車上子と、前記受信アンテナの受信信号に基づいて前記地上子を検出する車上装置とを具備する車上システムであって、
前記送信アンテナは、2つのループ部を車両走行方向に沿って前後となる位置に有する8の字形状のループコイルであり、
前記車上子は、前記送信アンテナと前記受信アンテナとを、平面視において重なる位置であって、前記8の字形状のループコイルの電線交差部と前記受信アンテナの中心とがずれた位置に有し、
前記車上装置は、
前記受信信号の位相周波数特性を解析して、前記共振周波数に対応する位相である共振周波数位相を算出する算出手段(例えば、図1の算出部200)と、
前記共振周波数位相の時系列変化が所定の位相変化条件を満たすかを判定することで、前記地上子を検出する地上子検出手段(例えば、図1の地上子検出部208)と、
を備える、
車上システムである。
【0011】
他の発明として、
所定の送信信号を送信する送信アンテナと、所定の共振回路を有する地上子に接近した場合に所与の共振周波数の信号が誘起される受信アンテナとを有する車上子と、前記受信アンテナの受信信号に基づいて前記地上子を検出する車上装置とを具備する車上システムに用いられる前記車上子であって、
前記車上装置は、前記受信信号の位相周波数特性を解析して、前記共振周波数に対応する位相である共振周波数位相を算出する算出手段(例えば、図1の算出部200)と、前記共振周波数位相の時系列変化が所定の位相変化条件を満たすかを判定することで、前記地上子を検出する地上子検出手段(例えば、図1の地上子検出部208)と、を有しており、
前記送信アンテナは、2つのループ部を車両走行方向に沿って前後となる位置に有する8の字形状のループコイルであり、
前記送信アンテナと前記受信アンテナとが、平面視において重なる位置であって、前記8の字形状のループコイルの電線交差部と前記受信アンテナの中心とがずれた位置にある、
車上子を構成してもよい。
【0012】
第2の発明等によれば、車上子の送信アンテナを8の字形状のループコイルとしその2つのループ部を車両走行方向に沿って前後となる位置とすることができる。このようにすることで、列車が地上子を通過するときの共振周波数位相の時系列変化が、地上子への接近に伴って増加或いは減少し、地上子と最接近した位置の付近で減少或いは増加に転じてその正負が逆転し、その後地上子から離れるに伴って減少或いは増加するといった特徴的な変化をする。この変化は、ノイズが混入した受信信号を受信したときの共振周波数位相の時系列変化とは大きく異なる。第2の発明等によれば、共振周波数位相の時系列変化が、このような変化をしたとみなせる位相変化条件を満たしたかを判定することで、地上子を確実に検出してその信頼性を高めることができる。
【0013】
第3の発明は、第1の発明において、
前記算出手段は、更に、前記受信信号の位相周波数特性を解析して、前記共振周波数に対応する位相である共振周波数位相を算出し、
前記地上子検出手段は、前記共振周波数振幅の時系列変化が前記振幅変化条件を満たし、且つ、前記共振周波数位相の時系列変化が所定の位相変化条件を満たした場合に、前記地上子を検出したと判定する、
車上システムである。
【0014】
第3の発明によれば、第2の発明と同様の作用効果を奏する車上システムを実現することができる。すなわち、第1の発明の作用効果に加えて、地上子をより確実に検出してその信頼性を更に高めることができる。
【0015】
第4の発明は、第1又は第3の発明において、
前記振幅変化条件は、前記共振周波数振幅が所定の高振幅条件を満たした後に所定の低振幅条件を満たし、その後に再度前記高振幅条件を満たすこと、を少なくとも含む、
車上システムである。
【0016】
第4の発明によれば、振幅変化条件を、地上子への接近に伴って増加することとなる共振周波数振幅が高振幅条件を満たした後、地上子との最接近位置の付近で一旦減少することとなる低振幅条件を満たし、その後の地上子との最接近位置の通過後に再度増加することとなる高振幅条件を満たすこと、とすることができる。これにより、列車が地上子を通過するときの特徴的な共振周波数振幅の時系列変化が発生したかを判定することができる。
【0017】
第5の発明は、第2又は第3の発明において、
前記位相変化条件は、前記共振周波数位相が、所定の進み位相角条件及び所定の遅れ位相角条件のうちの一方の位相角条件を満たした後に当該一方の位相角条件を満たさなくなり、その後に他方の位相角条件を満たすこと、を少なくとも含む、
車上システムである。
【0018】
第5の発明によれば、列車が地上子を通過するときの共振周波数位相の時系列変化が、地上子との最接近位置の前後で位相の正負(進み/遅れ)が逆転することを利用した地上子の検出技術を実現できる。すなわち、位相変化条件を、地上子への接近に伴って、車上子が地上子と電磁結合していない状態での共振周波数位相に対して位相が進んでいるとみなせる進み位相角条件、及び、位相が遅れているとみなせる遅れ位相角条件、のうちの一方の位相角条件を満たした後に、地上子との最接近位置付近で共振周波数位相の正負(進み/遅れ)の逆転に伴って当該一方の位相角条件を満たさなくなった後に他方の位相角条件を満たす、とすることで、列車が地上子を通過するときの特徴的な共振周波数位相の時系列変化をしたかを判定することで、地上子を検出する確度を向上させることができる。
【0019】
第6の発明は、第3の発明において、
前記地上子検出手段は、
1)前記共振周波数振幅が所定の高振幅条件を満たし、且つ、前記共振周波数位相が、所定の進み位相角条件及び所定の遅れ位相角条件のうちの一方の位相角条件を満たすこと、
2)前記共振周波数振幅が所定の低振幅条件を満たし、且つ、前記共振周波数位相が前記当該一方の位相角条件を満たさなくなること、
3)前記共振周波数振幅が前記高振幅条件を満たし、且つ、前記共振周波数位相が、前記進み位相角条件及び前記遅れ位相角条件のうちの他方の位相角条件を満たすこと、
を順に達成した場合に、前記振幅変化条件及び前記位相変化条件を満たしたとして前記地上子を検出したと判定する、
車上システムである。
【0020】
第6の発明によれば、振幅変化条件及び位相変化条件を満たしたかの具体的な判定として、地上子へ接近しているとみなす条件、地上子への最接近位置付近であるとみなす条件、地上子から離れているとみなす条件、を順に達成したかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】車上システムの構成図。
図2】車上子の構成図。
図3】受信信号の振幅周波数特性の概略を示す図。
図4】受信信号の位相周波数特性の概略を示す図。
図5】振幅周波数及び位相周波数特性の時系列変化の概略を示す図。
図6】判定条件テーブルの一例。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態の一例について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0023】
図1は、本実施形態の車上システム10の構成を示すブロック図である。この車上システム10は、列車に搭載される変周式ATS装置の車上側の装置であり、地上子50に接近したときに車上子20での受信信号に基づいて地上子50を検出する。地上子50は、所定の共振周波数で共振する共振回路を有する。この共振回路を構成するインダクタLやコンデンサCを切り替えることで、地上子50の共振周波数を切り替えることができる。これらの共振周波数それぞれには、列車制御情報(停止現示や進行現示等)が対応付けて定められている。
【0024】
車上子20は、送信信号を送信する送信アンテナ22と、地上子50に接近したときに所定の共振周波数の信号が誘起される受信アンテナ24とを有する。
【0025】
図2は、車上子20の構成を示す平面図である。図2中、縦方向を列車走行方向(車両走行方向)としている。図2に示すように、送信アンテナ22は、電線交差部23で通流方向が逆向きとなるように2つのループ部を交差させて接続した8の字形状のループコイルである。受信アンテナ24は、長方形形状のループコイルである。平面視において、送信アンテナ22の2つのループ部が列車走行方向に沿って前後の向きとなり、且つ、送信アンテナ22の電線交差部23と受信アンテナ24の中心25とがずれた位置となるように、送信アンテナ22と受信アンテナ24とが重ねて配置されている。送信アンテナ22の電線交差部23と受信アンテナ24の中心25とが平面視においてずれて配置されることで、送信アンテナ22及び受信アンテナ24が互いに弱く電磁結合した状態となる。なお、平面視における送信アンテナ22の電線交差部23と受信アンテナ24の中心25とのずれの方向は何れの方向でもよいが、図2に例示するように、列車走行方向に沿ってずれた位置、或いは、列車走行方向の逆向きの方向(後ろ向きの方向)となるような配置が好適である。なお、列車走行方向に交差する方向にずれた位置であってもよい。
【0026】
車上装置30は、機能部として、送信波生成部100と、算出部200と、地上子検出部208とを備えるとともに、データとして、判定条件テーブル210を記憶している。
【0027】
送信波生成部100は、複数の共振周波数それぞれに対応した周波数の信号を合成(重畳)した合成波信号を生成し、生成した合成波信号を車上子20の送信アンテナ22に出力する。レールに沿って離散的に配置される地上子50は、その配置位置に応じた列車制御情報を識別するための共振周波数となるように、地上子50が選別されて配置されている。送信波生成部100は、これら全ての地上子50の共振周波数に対して変周可能な周波数帯域となる広い周波数帯域の信号を、合成波信号として生成する。なお、合成波信号ではなく、一又は複数の共振周波数が変周可能な狭い周波数帯域の信号を、時分割で周波数帯域を切り替えながら送信する形態としてもよい。
【0028】
送信アンテナ22と受信アンテナ24とは弱く電磁結合している状態であるから、列車が地上子50に接近していないときは、受信アンテナ24には、送信アンテナ22が送信する信号の周波数成分に応じた信号が誘起され、送信信号の一部が受信信号として受信される。そして、列車が地上子50に接近して車上子20が地上子50と電磁結合すると、地上子50の共振周波数に応じた周波数の信号が受信アンテナ24に誘起されて受信信号として受信される。
【0029】
算出部200は、FFT部202と、共振周波数振幅算出部204と、共振周波数位相算出部206とを有する。FFT部202は、受信アンテナ24で受信された受信信号に対するFFT(Fast Fourier Transform)演算処理を行う。共振周波数振幅算出部204は、FFT部202によるFFT演算処理の結果に基づき、受信信号の振幅(レベル)についての周波数特性である振幅周波数特性を解析して、共振周波数に対応する受信信号成分の振幅である共振周波数振幅を算出する。共振周波数位相算出部206は、FFT部202によるFFT演算処理の結果に基づき、受信信号の位相についての周波数特性である位相周波数特性を解析して、共振周波数に対応する受信信号成分の位相である共振周波数位相を算出する。
【0030】
地上子検出部208は、共振周波数振幅算出部204により算出された共振周波数振幅及び共振周波数位相算出部206により算出された共振周波数位相に基づいて、地上子50を検出したかを判定する。すなわち、共振周波数振幅の時系列変化が所定の振幅変化条件を満たし、且つ、共振周波数位相の時系列変化が所定の位相変化条件を満たした場合に、地上子50を検出したと判定する。
【0031】
地上子検出部208による地上子50の検出について、詳細に説明する。先ず、図3は、列車が地上子50に接近して車上子20と地上子50とが電磁結合している状態における受信信号の振幅周波数特性の概略を示す図である。横軸は周波数f、縦軸は振幅Vである。図3に示すように、車上子20が地上子50と電磁結合している状態における受信信号の振幅周波数特性では、地上子50の共振周波数fにおいて振幅Vが最大(ピーク)となる。そして、この共振周波数fにおける最大振幅Vから3dB小さい振幅(=V/√2)での周波数(遮断周波数)fd1,fd2から、次式(1)で示すようにQ値が求められる。
Q=f/(fd2-fd1) ・・(1)
【0032】
なお、FFT部202が行うFFT演算処理は離散フーリエ変換である。また、受信信号のサンプリング間隔等の影響もあるため、FFT演算処理の結果から得られる周波数特性は、図3では切れ目の無い滑らかなグラフとして示しているが、実際は周波数分解能fに応じた離散値となる。共振周波数振幅算出部204は、FFT部202によるFFT演算処理の結果に基づき、この離散値に係る振幅Vを求め、共振周波数fにおける振幅V(以下、「共振周波数振幅V」という)を算出する。
【0033】
図4は、車上子20と地上子50とが電磁結合している状態における受信信号の位相周波数特性の概略を示す図である。横軸は周波数f、縦軸は位相θである。図4に示すように、車上子20が地上子50と電磁結合している状態における受信信号の位相周波数特性は、地上子50の共振周波数fの前後で位相θが180度変化する曲線となる。この位相周波数特性を表す曲線は、共振周波数fにおいて接線の傾き(位相θの変化率を表す)が最大となり、共振周波数fの位相に対して遮断周波数fd1,fd2における位相が±45°となる。なお、この位相周波数特性についても、振幅周波数特性と同様に、FFT演算処理の結果から求められる位相周波数特性は離散値となる。共振周波数位相算出部206は、FFT部202によるFFT演算処理の結果に基づき、この離散値に係る位相θを求め、共振周波数fにおける位相θ(以下、適宜「共振周波数位相θ」という)を算出する。
【0034】
地上子検出部208は、このように算出された共振周波数振幅の時系列変化及び共振周波数位相の時系列変化に基づき、地上子50を検出したかを判定する。受信信号の振幅周波数特性(図3参照)及び位相周波数特性(図4参照)は、車上子20と地上子50との相対的な位置関係によって決まるが、車上子20と地上子50との相対的な位置関係は、列車の走行に伴って変化する。つまり、共振周波数振幅及び共振周波数位相は、列車の走行に伴って変化する。このことから、以下では、列車の走行に伴う車上子20の地上子50に対する相対的な位置の変化を、時間経過に伴う変化(時系列変化)とみなして説明する。
【0035】
図5は、列車が地上子50を通過するときの共振周波数振幅及び共振周波数位相の時系列変化の概略を示す図である。図5において、上側に共振周波数振幅の時系列変化を示し、下側に共振周波数位相の時系列変化を示している。何れも横軸は共通であり、車上子位置である。車上子位置は、列車の走行方向に沿った車上子20の位置であり、車上子20が地上子50と最接近したときの車上子20の位置を最接近位置としている。また、比較のため、概形が本実施形態の送信アンテナ22である8の字形状のループコイルとほぼ同じ大きさの長方形形状のループコイル(以下、「比較用アンテナ」という)を送信アンテナとして用いたときの共振周波数振幅の時系列変化及び共振周波数位相の時系列変化を、太い点線で併せて示している。
【0036】
共振周波数振幅の時系列変化についてみると、車上子20が地上子50と電磁結合していない状態での共振周波数振幅Vをゼロ(0)とすると、地上子50を通過するときの共振周波数振幅は、地上子50への接近に伴ってゼロから徐々に増加して第1のピークに達した後に減少に転じる第1のピーク波形を形成し、最接近位置付近で一旦ゼロまで減少した後、再度増加し第2のピークに達した後に地上子50から離れるに伴って徐々に減少してゼロになる第2のピーク波形を形成する、ように変化する。つまり、地上子50を通過するときの共振周波数振幅の時系列変化のグラフは、最接近位置の前後で左右に反転させたような2つのピークを有する形状となる。
【0037】
これに対し、送信アンテナとして比較用アンテナを用いた場合の受信信号の共振周波数振幅の時系列変化は、地上子50への接近に伴って単調増加し、地上子50を通過した後は地上子から離れるに伴って単調減少するといった、最接近位置付近でピークが1つ現れるような変化をする。また、車上子20が地上子50と電磁結合していない状態であって受信信号にノイズが混入した場合には、ノイズを受信している間、受信信号の振幅周波数特性においてそのノイズの周波数にピークが現れることになる。したがって、ノイズが混入した受信信号の共振周波数振幅の時系列変化は、比較用アンテナを用いた場合と略同様な変化となる。
【0038】
共振周波数位相の時系列変化についてみると、車上子20が地上子50と電磁結合していない状態での共振周波数位相をゼロ(0)とすると、地上子50を通過するときの共振周波数位相は、地上子50に接近するに伴ってゼロから徐々に乖離(図5では遅れ方向に乖離)し始めて第1の極大位相となった後に元に戻るように変化し、最接近位置でゼロとなった後、ゼロを通り超して、今度は位相の進み/遅れが逆転して乖離(図5では進み方向に乖離)し始めて第2の極大位相となり、以降は地上子50から離れるに伴って徐々にゼロに近づくように変化する。
【0039】
これに対し、送信アンテナとして比較用アンテナを用いた場合の受信信号の共振周波数位相の時系列変化は、地上子50への接近に伴って単調増加し、地上子50を通過した後は地上子から離れるに伴って単調減少するといった変化をする。また、車上子20が地上子50と電磁結合していない状態であって受信信号にノイズが混入した場合には、ノイズを受信している間、受信信号の振幅周波数特性においてそのノイズの周波数にピークが現れることになる。したがって、ノイズが混入した受信信号の共振周波数位相の時系列変化は、比較用アンテナを用いた場合と略同様な変化となる。
【0040】
共振周波数振幅V及び共振周波数位相θがこのような時系列変化をするのは、車上システム10が変周式ATS装置であるとともに、送信アンテナ22である8の字形状のループコイルの2つのループ部が列車の走行方向に沿って前後に配置されていることに起因する。つまり、8の字形状のループコイルでは、前方のループ部と方向のループ部とでは電流が逆向きに流れているため、例えば、上面側では列車の走行方向に沿って後方のループ部から前方のループ部に向かう方向に磁束が貫き、下面側では前方のループ部から後方のループに向かう方向に磁束が貫くといったように、2つのループ部それぞれを貫く磁束の向きが互いに逆向きとなっている。
【0041】
列車が走行に伴って地上子50に接近すると、初めに、前方のループ部に生じている磁束が地上子50を貫き、主に前方のループ部と地上子50とが電磁結合する。その結果、列車の地上子50への接近に伴って、受信アンテナ24での受信信号の周波数特性における共振点(共振周波数f)での振幅(共振周波数振幅)Vは徐々に増加し、共振点(共振周波数f)での位相(共振周波数位相)θも徐々に変化する。このときの共振周波数位相の変化は、前方のループ部を貫く磁束の向きに応じて決まり、図5の例では、減少する方向に変化する。そして、前方のループ部と地上子50との電磁結合が最大となったときに、共振周波数振幅V及び共振周波数位相θの変化量が最大となる。
【0042】
列車が更に走行すると、後方のループ部を貫く磁束も地上子50を貫くようになり、後方のループ部も地上子50と電磁結合するが、前方のループ部と後方のループ部とのそれぞれを貫く磁束の向きが互いに逆方向であることから、列車の走行に伴う(地上子50への更なる接近に伴う)共振周波数振幅V及び共振周波数位相θの変化量が徐々に小さくなる。そして、8の字形状のループコイルの電線交差部23が地上子50と最接近すると、地上子を貫く磁束としては、前方のループ部及び後方のループ部それぞれを貫く磁束がほぼ同じとなり互いに打ち消し合うことから、地上子50との電磁結合が弱くなり、共振周波数振幅V及び共振周波数位相θの変化量はほぼゼロとなる。
【0043】
その後は、列車が地上子50から離れるに伴って、地上子50を貫く磁束としては、前方のループ部を貫く磁束の割合が徐々に減るとともに後方のループ部を貫く磁束の割合が徐々に増えることから、共振周波数振幅Vは増加し、共振周波数位相θも変化する。このときの共振周波数位相θの変化は、後方のループ部を貫く磁束の向きに応じて決まり、接近時とは逆の方向に変化し、図5の例では、減少する方向に変化する。そして、地上子50を貫く磁束が後方のループ部を貫く磁束のみとなる(地上子50との電磁結合が後方のループ部のみとなる)と、再度、共振周波数振幅V及び共振周波数位相θの変化量が最大となる。以降は、列車の走行に伴って、地上子50を貫く磁束が徐々に減ることから、共振周波数振幅V及び共振周波数位相θの変化量が徐々に小さくなり、最終的にはゼロとなる。
【0044】
なお、送信アンテナ22の巻線方向を逆にすると、送信アンテナ22である8の字形状のループコイルの2つのループ部それぞれを貫く磁界の向きが逆になるので、共振周波数位相の時系列変化のグラフは、図5の下側に示す共振周波数位相の時系列変化のグラフを、最接近位置で左右反転させた形状となる。つまり、共振周波数位相は、地上子50への接近に伴ってゼロから徐々に進み方向に乖離し始めて第1の極大位相となった後に元に戻るように変化し、最接近位置でゼロとなった後、ゼロを通り超して、今度は位相が遅れ方向に乖離し始めて第2の極大位相となり、以降は地上子50から離れるに伴って徐々にゼロに近づくように変化する。
【0045】
このように、本実施形態の送信アンテナ22が8の字形状のループコイルであるとともにその2つのループ部が列車走行方に沿って前後に配置されていることから、受信信号の共振周波数振幅及び共振周波数位相の時系列変化は、受信信号にノイズが混入した場合とは異なる特徴的な変化をする。このことから、地上子検出部208は、共振周波数振幅の時系列変化が所定の振幅変化条件を満たし、且つ、共振周波数位相の時系列変化が所定の位相変化条件を満たすかを判定することで、ノイズとは区別して地上子50を検出することができる。
【0046】
具体的には、振幅変化条件及び位相変化条件として、図6に一例を示す判定条件テーブル210で定められた3つの条件(第1~第3条件)を、定められた順序で連続して満たしたかを判定する。第1条件は地上子50に接近しているが最接近位置に到達してない区間に対応する条件であり、第2条件は、第1条件を満たした後の、最接近位置を含む区間に対応する条件であり、第3条件は、第2条件を満たした後の、最接近位置を通過して地上子50から離れる区間に対応する条件である。
【0047】
つまり、共振周波数振幅の閾値Vthを設定し、共振周波数振幅がこの閾値Vth超である(上回っている)ことを高振幅条件とし、閾値Vth未満である(下回っている)ことを低振幅条件とする。共振周波数振幅の閾値Vthは、車上子20が地上子50と電磁結合した状態でとり得る共振周波数振幅の値をもとに定められる。そして、振幅変化条件を、共振周波数振幅が、高振幅条件を満たした後に低振幅条件を満たし、その後に再度高振幅条件を満たすこと、とする。
【0048】
また、共振周波数位相の閾値として、負値の閾値θth+、正値の閾値θth-、を設定し、共振周波数位相が、この正値の閾値θth+を上回ったことを進み位相角条件とし、負値の閾値θth-を下回ったことを遅れ位相角条件とする。共振周波数位相の閾値θth+,θth-は、車上子20が地上子50と電磁結合した状態でとり得る共振周波数位相の値をもとに定められる。そして、位相変化条件を、共振周波数位相が、進み位相角条件及び遅れ位相角条件のうちの一方の位相角条件を満たした後に当該一方の位相角条件を満たさなくなり、その後に他方の位相角条件を満たすこと、とする。つまり、位相角条件を、a)共振周波数位相が、進み位相角条件を満たした後に当該進み位相角条件を満たさなくなり、その後に遅れ位相角条件を満たすこと、又は、b)共振周波数位相が、遅れ位相角条件を満たした後に当該遅れ位相角条件を満たさなくなり、その後に進み位相角条件を満たすこと、とする。
【0049】
そして、共振周波数振幅及び共振周波数位相が満たすべき条件として、1)共振周波数振幅が高振幅条件を満たし、且つ、共振周波数位相が、進み位相角条件及び遅れ位相角条件のうちの一方の位相角条件を満たすこと、を第1条件とし、2)共振周波数振幅が低振幅条件を満たし、且つ、共振周波数位相が前記当該一方の位相角条件を満たさなくなること、を第2条件とし、3)共振周波数振幅が高振幅条件を満たし、且つ、共振周波数位相が、進み位相角条件及び遅れ位相角条件のうちの他方の位相角条件を満たすこと、を第3条件とする。
【0050】
走行中の列車において、車上装置30は、FFT部202による受信信号に対するFFT演算処理、共振周波数振幅算出部204による共振周波数振幅の算出、共振周波数位相算出部206による共振周波数位相の算出、地上子検出部208による地上子50を検出したかの判定、を所定時間間隔で繰り返し行っている。地上子検出部208は、共振周波数振幅算出部204により算出された共振周波数振幅、及び、共振周波数位相算出部206により算出された共振周波数位相が、先ず、第1条件を満たすかを判定する。満たすと判定したならば、次に、それから所定の判定時間以内に第2条件を満たしたかを判定する。この第2条件も満たしたと判定したならば、続いて、それから所定の判定時間内に第3条件を満たしたかを判定する。このように判定して、第1~第3条件を順に達成した場合に、振幅変化条件及び位相変化条件を満たしたとして地上子50を検出したと判定する。
【0051】
[作用効果]
本実施形態によれば、変周式ATS装置の車上側である車上システム10において、地上子50の検出の信頼性を高めることができる。車上子20の送信アンテナ22を8の字形状のループコイルとしその2つのループ部を列車走行方向(車両走行方向)に沿って前後となる位置とすることで、列車が地上子50を通過するときの共振周波数振幅の時系列変化、及び、共振周波数位相の時系列変化が、ノイズが混入した受信信号を受信したとき等の時系列変化とは大きく異なる特徴的な変化となる。共振周波数振幅及び共振周波数位相の時系列変化が、このような特徴的な変化をしたとみなせる振幅変化条件及び位相変化条件を満たしたかを判定することで、地上子50を確実に検出してその信頼性を高めることができる。
【0052】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0053】
例えば、高振幅条件の閾値と低振幅条件の閾値とを、同じ閾値Vthを用いることとして説明したが、異なる閾値を定めることとしてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、振幅変化条件と位相変化条件との両方を判定して地上子50を検出することとしたが、振幅変化条件及び位相変化条件の一方の条件のみを用いて、当該条件を満たした場合に地上子50を検出することとしてもよい。この場合も、その一方の条件について、第1~第3条件を順に満たすかを判定することは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
10…車上システム
20…車上子
22…送信アンテナ
24…受信アンテナ
30…車上装置
100…送信波生成部
200算出部
202…FFT部
204…共振周波数振幅算出部
206…共振周波数位相算出部
208…地上子検出部
210…判定条件テーブル
50…地上子
図1
図2
図3
図4
図5
図6