(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】歯科用治療装置、およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
A61C 5/40 20170101AFI20231219BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20231219BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61C5/40
A61C19/04 A
A61B18/12
(21)【出願番号】P 2020195972
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 智朗
(72)【発明者】
【氏名】安達 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 恭平
(72)【発明者】
【氏名】山下 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】的場 一成
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-193907(JP,A)
【文献】実開平04-030509(JP,U)
【文献】特表2000-515398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0039226(US,A1)
【文献】特表2012-507385(JP,A)
【文献】国際公開第2015/122307(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/053532(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/40
A61C 19/04
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科治療部位に高周波電流を通電する歯科用治療装置であって、
前記歯科治療部位に配置される電極を保持する保持部と、
前記電極に高周波電流を通電する電源部と、
前記電源部から前記電極に通電される電流値を検出する検出部と、
前記検出部で検出した電流値に基づいて、前記電極に通電させる高周波電流の電流値の制御を前記電源部に対して行う制御部と、を備
え、
前記制御部は、
予備電流を前記電源部から前記電極に通電させ、
前記予備電流の電流値と前記検出部で前記予備電流を検出した電流値との差または比に応じて、前記電極に通電させる高周波電流の電流値が所定の範囲内に収まるような制御を前記電源部に対して行う、歯科用治療装置。
【請求項2】
前記制御部は、
予備電流を前記電源部から前記電極に通電させ、
前記検出部で検出した前記予備電流の電流値に基づいて、前記所定の範囲内の電流値の高周波電流を前記電極に通電させる時間の制御を前記電源部に対して行う、請求項
1に記載の歯科用治療装置。
【請求項3】
前記予備電流の電流値は、前記所定の範囲の最小電流値より小さい、請求項
1または請求項
2に記載の歯科用治療装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記予備電流を前記電源部から前記電極に通電させる第1期間と、高周波電流を前記電源部から前記電極に通電させる第2期間との間に休止期間を設ける、請求項
1~請求項
3のいずれか1項に記載の歯科用治療装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1期間を、前記第2期間より短くする、請求項
4に記載の歯科用治療装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1期間、前記休止期間および前記第2期間を含む期間を1つのセットとして繰り返し前記電極に高周波電流を通電させる制御を前記電源部に対して行う、請求項
4または請求項
5に記載の歯科用治療装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記検出部で前記所定の範囲の最大電流値より大きい電流値に対応する前記予備電流の電流値が検出された場合、前記電極への高周波電流の通電を開始させない、あるいは停止させる制御を前記電源部に対して行う、請求項
1~請求項
6のいずれか1項に記載の歯科用治療装置。
【請求項8】
使用者に情報を報知する報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部で検出される電流値が前記所定の範囲外となった場合、通電している高周波電流の電流値が前記所定の範囲外である旨の情報を、前記報知部に報知させる、請求項
1~請求項
7のいずれか1項に記載の歯科用治療装置。
【請求項9】
使用者に情報を報知する報知部をさらに備え、
前記制御部は、
前記検出部で前記所定の範囲の最大電流値より大きい電流値に対応する前記予備電流の電流値が検出され、前記電源部から前記電極への高周波電流の通電を停止させた場合には、高周波電流の通電を停止した情報を前記報知部に報知させ、
前記検出部で前記所定の範囲の最小電流値より小さい電流値が検出された場合には、高周波電流の通電を再度行うことを促す情報を前記報知部に報知させる、請求項
1~請求項
7のいずれか1項に記載の歯科用治療装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記検出部で前記所定の範囲の最小電流値より小さい電流値が検出された時間を計時し、計時した当該時間を前記報知部に報知させる、請求項
8または請求項
9に記載の歯科用治療装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記検出部で検出される電流値が前記所定の範囲内であっても所定の割合以上に変化した場合、通電している高周波電流の電流値が急激に変化した旨の情報を、前記報知部に報知させる、請求項
8~請求項
10のいずれか1項に記載の歯科用治療装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記検出部で検出した電流値に基づいて、前記所定の範囲内の電流値の高周波電流を前記電極に通電させる時間の制御を前記電源部に対して行う、請求項
1~請求項
11のいずれか1項に記載の歯科用治療装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記検出部で検出した電流値と高周波電流を通電させた時間との積が所定値以上となるように、前記電極に通電させる高周波電流の電流値、および高周波電流を前記電極に通電させる時間のうち少なくとも一方の制御を前記電源部に対して行う、請求項1~請求項
11のいずれか1項に記載の歯科用治療装置。
【請求項14】
前記電源部は、定電流駆動で前記電極に高周波電流を通電する、請求項
1に記載の歯科用治療装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記電源部の出力電圧の電圧値が所定値以上となる場合、前記電極への高周波電流の通電を開始させない、あるいは停止させる制御を前記電源部に対して行う、請求項
14に記載の歯科用治療装置。
【請求項16】
使用者に情報を報知する報知部をさらに備え、
前記制御部は、
前記電源部の出力電圧の電圧値が前記所定値以上となり、前記電源部から前記電極への高周波電流の通電を停止させた場合、高周波電流の通電を停止した情報を前記報知部に報知させる、請求項
15に記載の歯科用治療装置。
【請求項17】
歯科治療部位に高周波電流を通電する歯科用治療装置であって、
前記歯科治療部位に配置される電極を保持する保持部と、
前記電極に高周波電流を通電する電源部と、
前記電源部から前記電極に通電される高周波電流の電流値を検出する検出部と、
前記検出部で検出した高周波電流の電流値と高周波電流を通電させた時間との積が所定の範囲内に収まるように、前記電極に通電させる高周波電流の電流値、および高周波電流を前記電極に通電させる時間のうち少なくとも一方の制御を前記電源部に対して行う制御部と、を備える、歯科用治療装置。
【請求項18】
歯科治療部位に配置される電極を保持する保持部と、前記電極に高周波電流を通電する電源部と、前記電源部から前記電極に通電される電流値を検出する検出部と、前記電極に通電させる高周波電流の電流値の制御を前記電源部に対して行う制御部と、を備える歯科用治療装置の制御方法であって、
前記制御部は、
予備電流を前記電源部から前記電極に通電させるステップと、
前記予備電流が前記電極に流れたときに前記検出部で検出した電流値を受け付けるステップと、
前記予備電流の電流値と前記検出部で前記予備電流を検出した電流値との差または比に応じて、前記電極に通電させる高周波電流の電流値が所定の範囲内に収まるような制御を前記電源部に対して行うステップと、を含む、歯科用治療装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療部位に高周波電流を通電する歯科用治療装置、および歯科用治療装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科分野において、歯髄を除去するため、あるいは根尖の炎症を抑えるために歯の根管治療が行われる場合がある。従来の根管治療では、リ-マ、ファイルを用いて根管を切削拡大し、根管内の汚染組織や汚染物質を取り除いたうえで、根管内に薬を充填する治療が行われていた。
【0003】
しかし、根管の形状は複雑で、歯の種類によっても人よっても形状が異なる。そのため、根管治療においては、リ-マ、ファイルを用いての根管拡大が困難な部分があり、根管拡大ができない部分には起炎因子が残ったままとなり、術後に炎症が生じる場合があった。
【0004】
そこで、特許文献1では、根管の内部に高周波電子パルスを印加する歯科用の医療機器が開示されている。当該医療機器では、針形の電極(たとえば、ファイル)を根管に挿し込み、針の先端が根尖に達したときに高周波電子パルスを印加して歯髄などを焼灼する。
【0005】
また、特許文献2では、歯の根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療を行う歯科用治療装置が開示されている。当該歯科用治療装置では、根尖の位置を測定する測定器と通信する歯科器具に、根管に挿入される電極が含まれている。さらに、当該歯科器具は、電気パルスを印加するユニットと通信することができる。そのため、当該歯科用治療装置は、根管に挿入された電極を介して根管に電気パルスを印加することができ、印加した電気パルスによって根管内の起炎因子、細菌などを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4041165号公報
【文献】国際公開第2008/114244号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、根管に挿入される電極は、電流を通電することにより電極表面に絶縁膜が形成される場合がある。当該絶縁膜が電極の表面に形成されると電極の抵抗値が大きくなり、電極に流れる電流値が低下して根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値を確保できない問題があった。
【0008】
さらに、根管に挿入される電極には、血液やタンパク質などが付着して凝固する場合がある。電極に血液やタンパク質などが付着して凝固すると電極の抵抗値が大きくなり、電極に流れる電流値が低下して根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値を確保できない問題があった。また、電極を挿入した根管の状況に応じて根管自体のインピーダンスが変化するため、当該根管治療に必要な電流値よりはるかに大きい電流値が流れたり、逆に当該根管治療に必要な電流値より小さい電流値しか流せなかったりする問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、様々な状況の変化に対しても、根管に挿入される電極に根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値の高周波電流を通電することができる歯科用治療装置、およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る歯科用治療装置は、歯科治療部位に高周波電流を通電する歯科用治療装置であって、歯科治療部位に配置される電極を保持する保持部と、電極に高周波電流を通電する電源部と、電源部から電極に通電される電流値を検出する検出部と、検出部で検出した電流値に基づいて、電極に通電させる高周波電流の電流値の制御を電源部に対して行う制御部と、を備え、制御部は、予備電流を電源部から電極に通電させ、予備電流の電流値と検出部で予備電流を検出した電流値との差または比に応じて、電極に通電させる高周波電流の電流値が所定の範囲内に収まるような制御を電源部に対して行う。
【0012】
本開示のさらに他の局面に係る歯科用治療装置は、歯科治療部位に高周波電流を通電する歯科用治療装置であって、歯科治療部位に配置される電極を保持する保持部と、電極に高周波電流を通電する電源部と、電源部から電極に通電される高周波電流の電流値を検出する検出部と、検出部で検出した高周波電流の電流値と高周波電流を通電させた期間との積が所定の範囲内に収まるように、電極に通電させる高周波電流の電流値、および高周波電流を電極に通電させる期間のうち少なくとも一方の制御を電源部に対して行う制御部と、を備える。
【0013】
本開示のまたさらに他の局面に係る歯科用治療装置の制御方法は、歯科治療部位に配置される電極を保持する保持部と、電極に高周波電流を通電する電源部と、電源部から電極に通電される電流値を検出する検出部と、電極に通電させる高周波電流の電流値の制御を電源部に対して行う制御部と、を備える歯科用治療装置の制御方法であって、制御部は、予備電流を電源部から電極に通電させるステップと、予備電流が電極に流れたときに検出部で検出した電流値を受け付けるステップと、予備電流の電流値と検出部で予備電流を検出した電流値との差または比に応じて、電極に通電させる高周波電流の電流値が所定の範囲内に収まるような制御を電源部に対して行うステップと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係る歯科用治療装置、およびその制御方法では、検出部で検出した電流値に基づいて、電極に通電させる高周波電流の電流値の制御を電源部に対して行うので、様々な状況の変化に対しても、歯科治療部位に配置される電極に根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値の高周波電流を通電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1に係る歯科用治療装置の外観図を示す。
【
図2】実施の形態1に係る歯科用治療装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1に係る歯科用治療装置の電極に通電する電流の波形を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る歯科用治療装置の制御を説明するためのフローチャートである。
【
図6】実施の形態1の変形例に係る歯科用治療装置の電極に通電する電流の波形を示す図である。
【
図7】実施の形態2に係る歯科用治療装置の電極に通電する電流の波形を示す図である。
【
図8】実施の形態2に係る歯科用治療装置の制御を説明するためのフローチャートである。
【
図9】実施の形態3に係る歯科用治療装置の制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る歯科用治療装置の外観図を示す。
図2は、実施の形態1に係る歯科用治療装置の構成を示すブロック図である。
図3は、歯の根管を説明するための概略図である。歯の根管を切削拡大する根管治療は、人により根管が湾曲している程度や根管が石灰化して閉塞している状況などが異なっており、非常に難しい治療である。
図3に示す歯900は、大臼歯であり、1つの歯に複数の根管901が含まれている。このような複雑な形状の根管をすべて治療するのは困難である。特に、リ-マ、ファイルなどの切削工具を用いて根管を切削拡大することが困難な部分が存在し、当該部分で根管を切削拡大できずに根管内に歯髄、起炎因子が残ったままになると、術後に炎症が生じる場合があった。
【0017】
そこで、歯科用治療装置では、根管の内部に電極を差し込み、当該電極に高周波電流を通電する治療が行われている。この治療は、人体、特に歯、その中でも根管、歯周組織、骨に高周波電流を通電することで、通電されている部位、特に電極近傍、および電流密度が高い部分が高周波電流によるジュール熱で焼灼し、起炎因子、細菌などを低減させる。なお、この治療で完全に殺菌できなくてもよく、歯髄や肉芽を熱変性させて、壊死、失活させることができればよい。また、この治療は、EMAT(Electro-Magnetic Apical Treatment)とも呼ばれ、文献(例えば、坂東直樹、富永敏彦、湯本浩通、住友孝史、平尾早希、平尾功治、松尾敬志、「電磁波照射の歯内療法への応用-EMAT (Electro-Magnetic Apical Treatment)」、2011年、歯内療法誌、第32巻、p.184-200)などに開示がある。当該開示では、治療前、治療後に患部に高周波電流を通電することで、歯科治療部位の起炎因子、細菌などを低減できて予後の経過が極めて良好であると報告されている。
【0018】
しかし、根管に挿入される電極は、電流を通電することにより電極表面に絶縁膜が形成される場合がある。特に、高周波電流の通電中に電極から火花が飛ぶなどした場合、電極表面が変性する可能性が高く、この電極表面の変性により電極の導電特性が変化するだけでなく、電極表面に絶縁膜が形成されることがある。絶縁膜が電極の表面に形成されると電極の抵抗値が大きくなり、電極に流れる電流値が低下して根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値を確保できずに本来の治療効果が得られないことがある。ここで、根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値とは、歯科治療部位に配置した電極に高周波電流を通電して本来の治療効果が得られる電流値であり、小さい電流値では十分に治療効果が得られず、逆に大きい電流値では歯周組織などを損傷させる可能性がある。
【0019】
さらに、根管に挿入される電極には、血液やタンパク質などが付着して凝固する場合がある。電極に血液やタンパク質などが付着して凝固すると電極の抵抗値が大きくなり、電極に流れる電流値が低下して当該根管治療に必要な電流値を確保できずに本来の治療効果が得られない。また、電極を挿入した根管の状況に応じて根管のインピーダンスが変化するため、当該根管治療に必要な電流値より大きい電流値が流れたり、当該根管治療に必要な電流値より小さい電流値しか流せなかったりすることがある。例えば、根尖孔が大きい、導電性の薬液で根管内が満たされる、あるいは、根管内の異物が高周波電流により焼け落ちるなどの場合、根管のインピーダンスが低くなるので、当該根管治療に必要な電流値より大きい電流値の電流が流れる。また、歯周組織は、乾燥すると一般的にインピーダンスは高くなるので、当該根管治療に必要な電流値より小さい電流値しか流せなくなる。
【0020】
そこで、実施の形態1に係る歯科用治療装置10では、様々な状況の変化に対しても、根管に挿入される電極に根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値の高周波電流を通電することができるように構成されている。具体的に、歯科用治療装置10は、
図1に示すように、切削工具であるファイル11(
図2参照)に高周波電流を通電するユニット12と、ファイル11を保持するためのファイルホルダ13と、を備えており、ファイルホルダ13の先端に取り付けられたファイル11に対して高周波電流を通電することができる。なお、本開示では、ファイルホルダ13の先端にファイル11を取り付け、当該ファイル11が歯科治療部位に配置される電極であると説明するが、ファイルホルダ13とファイル11とが一体となった構成でもよい。
【0021】
ファイルホルダ13は、略棒状の筐体によって形成され、ファイル11の金属部分を保持することができる。ファイルホルダ13は、ファイル11の金属部分を保持することでファイルとユニット12とを電気的に接続することができる。ユニット12には、表示部14、設定操作部15が設けられているとともに、フートスイッチ16および受動電極22が接続されている。
【0022】
ユニット12は、
図2に示すように、表示部14、設定操作部15の他に、高周波信号発生回路19、検出部20、制御回路21、根管長測定回路23、およびスイッチSW1~スイッチSW2が設けられている。
【0023】
設定操作部15は、歯科用治療装置10の動作を設定するために設けられた設定ボタンである。設定操作部15では、ファイル11に通電する高周波電流の電流値、周波数、通電期間、表示部14の表示設定などを設定可能である。ここで、通電期間とは、1回の操作で高周波電流の通電を1ショットで行う場合、1回の通電する時間であり、1回の操作で高周波電流の通電を複数回に分割して行う場合、複数に分割して通電する時間の和である。
【0024】
フートスイッチ16は、高周波電流の通電を操作するために設けられた操作部であり、使用者が踏み込むことで制御回路21から高周波信号発生回路19に制御信号が送信される。高周波信号発生回路19は、受信した制御信号に基づき、設定操作部15で設定した高周波電流をファイル11に通電する。
【0025】
高周波信号発生回路19は、ファイル11と受動電極22との間に、例えば周波数が300kHz~1000kHzで、電流値が20mA~200mA(根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値の範囲)の高周波電流を通電する。もちろん、高周波信号発生回路19が発生することができる高周波電流は、上記の周波数および電流値に限定されない。この高周波信号発生回路19から出力される高周波電流の電流値、周波数、通電期間などは、設定操作部15を操作することによって設定できる。設定操作部15で設定した高周波電流の電流値を高周波信号発生回路19が出力できるように、制御回路21が検出部20で検出した電流値に基づいて、高周波信号発生回路19を制御している。なお、高周波電流を通電する際は、ファイル11が根管901内に挿入され、その先端が、例えば根尖903付近の組織に当てられ、受動電極22が歯肉902や口唇904等、患者の体の一部に当てられる。電流値が大きくなる場合は、受動電極は患者が積極的に握るような棒状、あるいは、広い面積を持つ板状の形状を採用してもよい。つまり、ファイルホルダ13は、歯科治療部位に配置される電極であるファイル11を保持する保持部であり、高周波信号発生回路19は、当該電極に高周波電流を通電する電源部である。
【0026】
検出部20は、高周波信号発生回路19からファイル11に高周波電流を通電した場合に、実際にファイル11に流れた電流値を検出する電流検出器である。制御回路21は、検出部20で検出した電流値に基づいて、ファイル11に通電させる高周波電流の電流値の制御を高周波信号発生回路19に対して行う。制御回路21は、ハードウェア構成として、例えば、CPU(Central Processing Unit)、当該処理をCPUで実行させるためのプログラムやデータ等を記憶する記憶部、CPUのワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)、主に画像処理を行うGPU(Graphics Processing Unit)、周辺機器との信号の整合性を保つための入出力インターフェイス等が設けられている。記憶部には、制御回路21の内部に設けられた不揮発性メモリ等の記憶装置、ネットワークを介して接続される記憶装置などが含まれる。
【0027】
根管長測定回路23は、根管長測定用信号をファイル11と受動電極22との間に流してファイル11の先端位置を測定する。具体的に、根管長測定回路23は、ファイル11と受動電極22との間に2つの異なる周波数の電圧を印加することで、それぞれのインピーダンスの値を求め、その2つの値(実際にはインピーダンスの値に対応する電圧や電流の値)の差分や比等から、根尖903からのファイル11の先端位置を特定する。なお、根管長測定の測定方法は、このようなものに限られるものではなく、従来、提案されている測定方法を含む種々の技術を利用することが可能である。根管長測定の際においても、受動電極22は、歯肉902や口唇904等、患者の体の一部に当てられる。
【0028】
スイッチSW1は、ファイル11と、高周波信号発生回路19または根管長測定回路23との間の電気的接続を切り替えるために設けられている。また、スイッチSW2は、受動電極22と、高周波信号発生回路19または根管長測定回路23との間の電気的接続を切り替えるために設けられている。
【0029】
スイッチSW1およびスイッチSW2の切り替えは、設定操作部15からの入力情報に基づいて制御回路21により実現される。具体的に、制御回路21は、高周波電流をファイル11に通電する場合、ファイル11および受動電極22を高周波信号発生回路19に接続されるようにスイッチSW1およびスイッチSW2を制御する。また、制御回路21は、根管長測定用信号をファイル11と受動電極22との間に流す場合、ファイル11および受動電極22が根管長測定回路23に接続されるようにスイッチSW1およびスイッチSW2を制御する。実施の形態1では、設定操作部15で設定した動作モードに応じて、スイッチSW1およびスイッチSW2を制御してファイル11および受動電極22の接続先を切り替える。なお、スイッチSW1およびスイッチSW2の切り替えは、フートスイッチ16のオン・オフ操作に連動してもよい。
【0030】
実施の形態1では、スイッチSW1およびスイッチSW2によって高周波信号発生回路19と根管長測定回路23とを電気的に分離している。したがって、高周波電流がファイル11へ出力されている間、根管長測定回路23は、スイッチSW1およびスイッチSW2によりファイル11および受動電極22から電気的に切断されている。そのため、高周波電流が根管長測定回路23に通電することがなく、高周波電流によって根管長測定回路23が故障することを抑制することができる。
【0031】
また、実施の形態1では、根管長測定回路23によりファイル11の先端位置が根尖からどの位置にあるかを知ることができる。そのため、使用者は、根管長測定回路23で根管内でのファイル11の先端位置が高周波電流を通電する位置に到達したことを確認したうえで、設定操作部15を操作して根管長測定モードから高周波通電モードに切り替えることができる。そのため、歯科用治療装置10では、適切な位置でファイル11の先端位置を保持した状態で高周波電流をファイル11に通電することができる。もちろん、歯科用治療装置10は、根管長測定回路23を設けずに高周波電流をファイル11に通電する構成のみであってもよく、別の根管長測定器でファイル11の先端位置を確認して高周波電流をファイル11に通電してもよい。
【0032】
表示部14は、例えば液晶ディスプレイで構成されており、高周波信号発生回路19でファイル11に通電している電流値、根管長測定回路23で測定したファイル11の先端の位置などを表示し、歯科用治療装置10の使用者に必要な情報を報知する報知部として機能している。表示部14は、例えば、検出部20で検出される電流値が根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値の範囲外となった場合、通電している高周波電流の電流値が当該根管治療に必要な電流値の範囲外である旨の情報を報知してもよい。なお、表示部14は、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、発光ダイオード等で構成されていてもよい。また、報知部は、表示部14以外に、図示していないランプ、スピーカなどであってもよく、ランプの点灯で使用者に報知したり、スピーカからブザー音を出力して使用者に報知したりしてもよい。
【0033】
次に、高周波信号発生回路19からファイル11に通電される高周波電流の波形について説明する。
図4は、実施の形態1に係る歯科用治療装置の電極に通電する電流の波形を示す図である。使用者は、根管長測定回路23に基づいて高周波電流の通電位置を決定し、当該通電位置でフートスイッチ16を操作することで高周波信号発生回路19からファイル11に高周波電流を通電させる。
【0034】
高周波信号発生回路19からは、本格的に高周波電流をファイル11に通電する前に、予備的に高周波電流をファイル11に通電する。
図4に示す第1期間(TP1)の通電が予備的な通電であり、その後の第2期間(TP2)が本格的な通電である。なお、
図4に示す図は概念図であり、図示している波数は実際の高周波の波数とは異なる。以下、高周波の波形でも同様である。第2期間の通電では、根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値の範囲(例えば、30mA~50mA)の高周波電流を通電させるが、第1期間の通電では、当該根管治療に必要な電流値の範囲内の最小電流値(例えば、30mA)より小さい電流値を予備電流として通電すれば第1期間の通電時の痛みなどを軽減できる。
図4における休止期間(TC)は、第2期間(TP2)での出力を計算するための期間であるが、この期間でファイル11の根管内位置を計測することも可能である。計算する時間が極めて短く、根管内位置を測定しない場合は、第1期間(TP1)と第2期間(TP2)との間にある休止期間(TC)の期間は非常に短くなる。
【0035】
なお、高周波信号発生回路19は、定電圧回路を含み、定電圧制御でファイル11に高周波電流を通電する。そのため、高周波信号発生回路19は、第2期間で印加する高周波電圧に比べて低い高周波電圧を第1期間で印加することで、第2期間で通電する電流値に比べて小さい電流値を第1期間に通電することができる。もちろん、第1期間で通電する電流値と第2期間で通電する電流値との間で差を持たせなくてもよい。さらに、高周波信号発生回路19は、定電流回路で構成される場合もあり、定電流制御でファイル11に高周波電流を通電してもよい。高周波信号発生回路19が定電流回路を含み、定電流駆動でファイル11に高周波電流を通電する場合、制御回路21は、定電流回路の出力電圧の電圧値が所定値以上となる場合、ファイル11への高周波電流の通電を開始させない、あるいは停止させる制御を高周波信号発生回路19に対して行なってもよい。また、制御回路21は、定電流回路の出力電圧の電圧値が所定値以上となり、高周波信号発生回路19からファイル11への高周波電流の通電を停止させた場合、高周波電流の通電を停止した情報を表示部14に表示してもよい。
【0036】
制御回路21は、ファイル11から受動電極22に至る経路が通常時のインピーダンスであると仮定した場合に、予備電流の電流値がファイル11に通電されるように高周波信号発生回路19の電圧を制御する。そして、高周波信号発生回路19からファイル11に予備電流を通電するために予備電圧を印加し、ファイル11から受動電極22に至る経路のインピーダンスが通常時から変化した場合、検出部20で検出される電流値は、想定した予備電流の電流値に対して差が生じる。なお、ファイル11から受動電極22に至る経路のインピーダンスは、ファイル11の表面に形成される絶縁膜の有無、ファイル11の表面への血液やタンパク質などの付着の有無、根管のインピーダンスなどによって変化する。
【0037】
制御回路21は、予備電流をファイル11に流したときに検出部20で検出した電流値に基づいて、第2期間の通電において高周波信号発生回路19からファイル11に流れる高周波電流の電流値が所定の範囲内となるように制御する。予備電流の電流値と検出部20で検出した電流値との差や比に応じて、制御回路21は、ファイル11に流れる高周波電流の電流値が所定の範囲内となる最適な電圧を変更して高周波信号発生回路19に印加する。つまり、制御回路21は、ファイル11に流れる高周波電流の電流値が所定の範囲内となるように高周波信号発生回路19に印加する電圧を最適化している。ここで、所定の範囲とは、根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値の範囲で、当該所定の範囲内に含まれるとは、症状に応じて(1)所定値以上、(2)所定値以下、(3)第1の所定値以上、かつ第2の所定値(>第1の所定値)以下の3通り場合が考えられる。一般的に、(3)第1の所定値以上、かつ第2の所定値(>第1の所定値)以下を使用する場合が多い。なお、ファイル11に流れる高周波電流の電流値は、根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値に限定されるものではない。また、制御回路21は、高周波信号発生回路19に印加する電圧を最適化する方法として、シンプルに予備電流の値から、所定の範囲になる電流値が出力可能な出力電圧を選択、あるいは、計算してもよく、例えば、比などの他の比較方法で行ってもよい。
【0038】
高周波信号発生回路19は、第1期間として例えば0.02秒(20ms)の通電を行い、その後休止期間(TC)として例えば0.03秒(30ms)を開けて、第2期間として例えば0.07秒(70ms)の通電を行う。高周波信号発生回路19は、1回の通電(例えば、フートスイッチ16の1回の操作)に対して、第2期間と休止期間との期間(合計0.1秒(100ms))をN回(例えば、10回)繰り返す。歯科用治療装置10では、使用者がフートスイッチ16を1回踏み込むことで約1秒間(休止期間を含む)、高周波信号発生回路19からファイル11に高周波電流が通電する。なお、休止期間と第2期間との制御の繰り返し回数は、設定操作部15で使用者があらかじめ設定可能であり、実施の形態1では例えば10回と設定してある。もちろん、休止期間と第2期間との制御の繰り返し回数は、10回以外の値を設定してもよい。また、設定操作部15では、休止期間と第2期間との制御の繰り返し回数として設定するのではなく、通電期間(例えば、1秒)として設定してもよい。なお、高周波電流の累積通電期間は、1秒以上であることが好ましい。もちろん、予備通電後の1回目の休止期間(TC)と2回目以降の休止期間(TC)とを一致させる必要はない。
【0039】
次に、歯科用治療装置10においてファイル11に通電する高周波電流の電流値の制御についてフローチャートを用いて説明する。
図5は、実施の形態1に係る歯科用治療装置の制御を説明するためのフローチャートである。まず、使用者が、根管長測定回路23に基づいて高周波電流の通電位置を決定し、当該通電位置でフートスイッチ16を操作すると、制御回路21は、高周波信号発生回路19からファイル11に第1期間、あらかじめ定められた予備電圧を出力して、予備電流を通電する(ステップS101)。
【0040】
次に、制御回路21は、予備電流がファイル11に流れたときに検出部20で検出した電流値に基づき、根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値の範囲(以下、所定の範囲ともいう)内となる高周波電流の電流値をファイル11に通電するための高周波信号発生回路19の電圧値を決定する(ステップS102)。具体的に、制御回路21は、検出部20で検出した電流値と、その時の高周波信号発生回路19に印加されている電圧値から根管のインピーダンスを算出し、当該根管のインピーダンスにおいてファイル11に通電する電流値が所定の範囲内の電流値となる高周波信号発生回路19の電圧値を決定する。制御回路21は、第1期間経過後、高周波信号発生回路19からファイル11への通電を休止期間、休止する(ステップS103)。なお、制御回路21は、休止期間中に高周波通電モードから根管長測定モードに切り替えて、ファイル11の先端の位置を測定してもよい。つまり、制御回路21は、休止期間に測定信号をファイル11に通電させる制御を根管長測定回路23に対して行なってもよい。
【0041】
制御回路21は、第2期間、高周波電流を通電した回数をカウントするために通電回数カウンタのカウントを1加算する(ステップS104)。制御回路21は、高周波信号発生回路19からファイル11に第2期間、ステップS102で決定した電圧値を高周波信号発生回路19に印加することで、所定の範囲内の電流値を高周波信号発生回路19からファイル11に第2期間、通電する(ステップS105)。制御回路21は、ステップS102で決定した電圧値を高周波信号発生回路19に印加したときに検出部20で検出した電流値が所定の範囲内の電流値か否かを判断する(ステップS106)。
【0042】
検出した電流値が所定の範囲内の電流値である場合(ステップS106でYES)、制御回路21は、通電回数カウンタがN回(例えば、10回)以上か否かを判断する(ステップS107)。通電回数カウンタがN回以上でない場合(ステップS107でNO)、制御回路21は、処理をステップS103に戻し、休止期間と第2期間との制御を繰り返す。一方、通電回数カウンタがN回以上である場合(ステップS107でYES)、制御回路21は、通電回数カウンタをリセットしてカウンタを0(ゼロ)にして(ステップS108)、高周波電流をファイル11に通電する処理を停止する。
【0043】
ステップS106に戻って、検出した電流値が所定の範囲内の電流値でない場合(ステップS106でNO)、制御回路21は、通電している高周波電流の電流値が所定の範囲外である旨の情報を表示部14に表示する(ステップS110)。具体的に、制御回路21は、根管内の異物が外れ、検出部20で検出した電流値が60mA、90mA、80mAと変化した場合、表示部14に「所定の範囲外」の文字を表示したり、画面の背景色を黄色にしたりするなどが考えられる。報知部としてスピーカが設けられていれば、警告音で通電している高周波電流の電流値が所定の範囲外である旨の情報を使用者に報知してもよい。
【0044】
次に、制御回路21は、ステップS102で決定した電圧値を高周波信号発生回路19に印加した場合であっても、検出部20で検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さいか否かを判断する(ステップS111)。検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さい場合(ステップS111でYES)、制御回路21は、再度、高周波電流をファイル11に通電する処理が必要な旨の情報を表示部14に表示する(ステップS112)。具体的に、制御回路21は、表示部14に「再通電」の文字を表示したり、画面の背景色を黄色にして明滅させたりするなどが考えられる。報知部としてスピーカが設けられていれば、警告音で再通電を行う必要がある旨の情報を使用者に報知してもよい。
【0045】
さらに、制御回路21は、検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さい通電期間を計時する(ステップS113)。
図5に示すフローチャートでは、検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さくなった時点で高周波電流をファイル11に通電する処理を停止するのではなく、休止期間と第2期間との制御をN回(例えば、10回)繰り返した後に停止する。そのため、制御回路21は、繰り返し回数N回のうち、検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さい第2期間が何回生じたのかで最小電流値より小さい通電期間を計時することができる。最小電流値より小さい通電期間を計時することで、制御回路21は、再度通電を行う場合にステップS113で計時した期間だけ再度通電すればよい。もちろん、検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さくなった時点で高周波電流をファイル11に通電する処理を停止する場合、制御回路21は、ステップS113後に処理をステップS108の処理に移行してもよい。ここで、検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さいと判断できる場合とは、通電中に根管内の環境が変化して、根管のインピーダンスが高くなり所定の範囲内の最小電流値より小さい電流値が流れてしまった場合である。
【0046】
ステップS111に戻って、検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さくない場合(ステップS111でNO)、制御回路21は、検出した電流値が所定の範囲内の最大電流値より大きいと判断できるので、高周波電流をファイル11に通電する処理を停止する(ステップS115)。なお、制御回路21では、ステップS115のように、本格的な通電が開始されてから検出した電流値が所定の範囲内の最大電流値より大きくなった場合、通電を停止させるが、予備的な通電中に検出した電流値が所定の範囲内の最大電流値より大きくなった場合、そもそも本格的な通電を開始させない。制御回路21は、高周波電流をファイル11に通電する処理を停止した旨の情報を表示部14に表示する(ステップS116)。具体的に、制御回路21は、表示部14に「停止」の文字を表示したり、画面の背景色を赤色にして明滅させたりするなどが考えられる。報知部としてスピーカが設けられていれば、警告音で通電を停止した旨の情報を使用者に報知してもよい。ここで、検出した電流値が所定の範囲内の最大電流値より大きいと判断できる場合とは、通電中に根管内の環境が変化して、根管のインピーダンスが低くなり所定の範囲内の最大電流値より大きい電流値が流れてしまった場合である。
【0047】
図4および
図5で示した例では、最初1回の第1期間で検出した予備電流の電流値から、その後N回の第2期間で通電する高周波電流の電流値が所定の範囲内の電流値となる高周波信号発生回路19の電圧値を決定する構成を説明した。しかし、歯科用治療装置10は、高周波電流をファイル11に通電する場合、
図4および
図5で示した制御に限定されない。例えば、歯科用治療装置10は、第2期間で通電する前に毎回予備電流の電流値を検出する第1期間を設ける制御でもよい。つまり、制御回路21は、第2期間で通電する電流値を、予備電流の検出結果でフィードバック制御を行ってもよい。制御回路21は、通電期間、高周波電流の電流値をフィードバック制御している場合に、検出部20で検出した電流値が変化して所定の範囲を外れた場合、表示部14に電流値が所定の範囲を外れた旨の表示を行ってもよい。例えば、根管内の異物が外れ、検出部20で検出した電流値が、60mA、90mA、80mAと変化した場合、表示部14は、電流値が所定の範囲を外れた警告表示を表示する。なお、検出部20で検出される電流値が所定の範囲内であっても所定の割合(例えば±30%程度)以上に変化した場合、通電している高周波電流の電流値が急激に変化した旨の情報を、表示部14に表示してもよい。
【0048】
図6は、実施の形態1の変形例に係る歯科用治療装置の電極に通電する電流の波形を示す図である。
図6では、予備的な通電期間である第1期間と、本格的な通電期間である第2期間とが繰り返し設けられている。つまり、歯科用治療装置10は、第2期間で通電する前に必ず第1期間を設ける制御を行っている。
【0049】
歯科用治療装置10は、
図6に示すように第1期間で検出した予備電流の電流値に基づいて、第2期間でファイル11に通電する高周波電流の電流値が所定の範囲内の電流値となる高周波信号発生回路19の電圧値を毎回決定する。そのため、歯科用治療装置10では、ファイル11から受動電極22に至る経路の状況変化により適応した電流値の制御が行える。もちろん、この場合、第1期間(TP1)の前後の休止期間(TC)は同一期間にする必要はないうえ、そのどちらか、あるいは両方が0(ゼロ)になってもよい。もちろん、第2期間(TP2)の出力される瞬間の電流値を検出してその値に応じて電流値を増減してもよい。
【0050】
このように、実施の形態1に係る歯科用治療装置10は、歯科治療部位(例えば、根管など)に高周波電流を通電する歯科用治療装置である。歯科用治療装置10は、歯科治療部位に配置されるファイル11を保持するファイルホルダ13と、ファイル11に高周波電流を通電する高周波信号発生回路19と、高周波信号発生回路19からファイル11に通電される電流値を検出する検出部20と、検出部20で検出した電流値に基づいて、ファイル11に通電させる高周波電流の電流値の制御を高周波信号発生回路19に対して行う制御回路21と、を備える。制御回路21は、検出部20で検出される電流値に基づいて、ファイル11に通電させる高周波電流の電流値が所定の範囲内に収まるような制御を高周波信号発生回路19に対して行う。
【0051】
歯科用治療装置10の制御方法であって、検出部20で高周波信号発生回路19からファイル11に通電される電流値を検出するステップと、検出部20で検出した電流値が所定の範囲内に収まるように、制御回路21でファイル11に通電させる高周波電流の電流値の制御を高周波信号発生回路19の電圧値の制御で行うステップと、を含む。
【0052】
このように構成することで、実施の形態1に係る歯科用治療装置10、およびその制御方法では、検出部20で検出した電流値に基づいて、ファイル11に通電させる高周波電流の電流値の制御を高周波信号発生回路19に対して行うので、様々な状況の変化に対しても、歯科治療部位に配置されるファイル11に所定の範囲の電流値の高周波電流を通電することができる。
【0053】
また、制御回路21は、予備電流を高周波信号発生回路19からファイル11に通電させ、検出部20で検出した予備電流の電流値に基づいて、ファイル11に通電させる高周波電流の電流値の制御を高周波信号発生回路19に対して行ってもよい。これにより、歯科用治療装置10は、予備電流の通電による組織損傷を低減しつつ、本格的に高周波電流をファイル11に通電する前に、歯科治療部位に通電する高周波電流を最適な電流値に設定することができる。もちろん第2期間の電流値を検出してその値に応じて出力電圧を増減してもよい。なお、予備電流の電流値は、所定の範囲の最小電流値より小さくてもよい。
【0054】
さらに、制御回路21は、予備電流を高周波信号発生回路19からファイル11に通電させる第1期間と、高周波電流を高周波信号発生回路19からファイル11に通電させる第2期間との間に休止期間を設けてもよい。これにより、歯科用治療装置10は、休止期間にファイル11の先端の位置を測定することができる。なお、制御回路21は、第1期間を、第2期間より短くしてもよい。これにより、歯科用治療装置10は、予備電流を通電する期間が短くなるので、歯科治療部位に通電する高周波電流を最適な電流値に設定するまでの期間を短縮することができる。
【0055】
また、制御回路21は、第1期間、休止期間および第2期間を含む期間を1つのセットとして繰り返しファイル11に高周波電流を通電させる制御を高周波信号発生回路19に対して行ってもよい。これにより、歯科用治療装置10は、高周波電流をファイル11に通電する第2期間ごとに、最適な電流値に設定することができる。
【0056】
さらに、制御回路21は、検出部20で所定の範囲の最大電流値より大きい電流値に対応する予備電流の電流値が検出された場合、ファイル11への高周波電流の通電を開始させない、あるいは停止させる制御を高周波信号発生回路19に対して行ってもよい。これにより、歯科用治療装置10は、患者に負担や不快な感じを与えることなく治療を行うことができる。
【0057】
また、使用者に情報を報知する表示部14をさらに備え、制御回路21は、検出部20で検出される電流値が所定の範囲外となった場合、通電している高周波電流の電流値が所定の範囲外である旨の情報を、表示部14に報知させてもよい。これにより、歯科用治療装置10は、使用者に通電している高周波電流の状況を適切に報知することができる。
【0058】
さらに、制御回路21は、検出部20で所定の範囲の最大電流値より大きい電流値に対応する予備電流の電流値が検出され、高周波信号発生回路19からファイル11への高周波電流の通電を停止させた場合には、高周波電流の通電を停止した情報を表示部14に報知させてもよい。これにより、歯科用治療装置10は、高周波電流の通電が停止した原因を使用者に認識しやすくなる。
【0059】
また、制御回路21は、検出部20で所定の範囲の最小電流値より小さい電流値が検出された場合には、高周波電流の通電を再度行うことを促す情報を表示部14に報知させてもよい。これにより、歯科用治療装置10は、歯科治療部位の起炎因子、細菌などを十分に低減されていない等の情報を使用者に報知することができる。
【0060】
また、制御回路21は、検出部20で所定の範囲の最小電流値より小さい電流値が検出された期間を計時し、計時した当該期間を表示部14に報知させてもよい。これにより、歯科用治療装置10は、残りどの程度、高周波電流をファイル11に通電すれば、歯科治療部位の起炎因子、細菌などを十分に低減できるのか使用者に報知することができる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、第1期間で検出した予備電流の電流値に基づいて、第2期間でファイル11に通電する高周波電流の電流値が所定の範囲内の電流値となる高周波信号発生回路19の電圧値を制御する歯科用治療装置10について説明した。実施の形態2に係る歯科用治療装置では、第1期間で検出した予備電流の電流値に基づいて、第2期間でファイルに通電する高周波電流の通電期間を制御する構成について説明する。なお、実施の形態2において、実施の形態1で説明した歯科用治療装置10の構成と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。また、実施の形態1で説明した内容を実施の形態2と矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0061】
図7は、実施の形態2に係る歯科用治療装置の電極に通電する電流の波形を示す図である。
図7では、予備的な通電期間である第1期間と、本格的な通電期間である第2期間とが繰り返し設けられている。つまり、歯科用治療装置10は、第2期間で通電する前に必ず第1期間を設ける制御を行っている。
【0062】
歯科用治療装置10は、
図7に示すように第1期間で検出した予備電流の電流値に基づいて、第2期間でファイル11に通電する高周波電流の通電期間を毎回決定するので、1回目の第2期間、2回目の第2期間、3回目の第2期間のそれぞれで高周波電流の通電期間が異なっている。つまり、歯科用治療装置10では、
図7に示すような波形で高周波電流をファイル11に通電するので、ファイル11から受動電極22に至る経路の状況変化により適応した通電期間(通電させる時間)の制御が行える。
【0063】
次に、歯科用治療装置10においてファイル11に通電する高周波電流の通電期間の制御についてフローチャートを用いて説明する。
図8は、実施の形態2に係る歯科用治療装置の制御を説明するためのフローチャートである。まず、使用者が、根管長測定回路23に基づいて高周波電流の通電位置を決定し、当該通電位置でフートスイッチ16を操作すると、制御回路21は、高周波信号発生回路19からファイル11に第1期間、予備電流を通電する(ステップS101)。
【0064】
次に、制御回路21は、予備電流をファイル11に流したときに検出部20で検出した電流値に基づき、ファイル11に通電する高周波電流の通電期間を決定する(ステップS102A)。具体的に、制御回路21は、例えば、ファイル11に流した電流値に対して検出部20で検出した電流値が20%低下していた場合、高周波電流の通電期間を1.2倍に決定する。制御回路21は、第1期間経過後、高周波信号発生回路19からファイル11への通電を休止期間、休止する(ステップS103)。
【0065】
制御回路21は、第2期間、高周波電流を通電した回数をカウントするために通電回数カウンタのカウントを1加算する(ステップS104)。制御回路21は、高周波信号発生回路19からファイル11にステップS102Aで決定した第2期間、高周波電流を通電するように高周波信号発生回路19を制御する(ステップS105)。制御回路21は、高周波電流をファイル11に流し検出部20で検出した電流値が所定の範囲内の電流値か否かを判断する(ステップS106)。
【0066】
検出した電流値が所定の範囲内の電流値である場合(ステップS106でYES)、制御回路21は、通電回数カウンタがN回(例えば、10回)以上か否かを判断する(ステップS107A)。通電回数カウンタがN回以上でない場合(ステップS107AでNO)、制御回路21は、処理をステップS101に戻し、第1期間と休止期間と第2期間との制御を繰り返す。制御回路21は、処理をステップS101に戻す際に、図示していないが休止期間を設けている。なお、実施の形態1で説明したように、通電回数カウンタがN回以上でない場合(ステップS107AでNO)、制御回路21は、処理をステップS103に戻し、休止期間と第2期間との制御を繰り返すようにしてもよい。一方、通電回数カウンタがN回以上である場合(ステップS107AでYES)、制御回路21は、通電回数カウンタをリセットしてカウンタを0(ゼロ)にして(ステップS108)、高周波電流をファイル11に通電する処理を停止する。
【0067】
ステップS106に戻って、検出した電流値が所定の範囲内の電流値でない場合(ステップS106でNO)、制御回路21は、通電している高周波電流の電流値が所定の範囲外である旨の情報を表示部14に表示する(ステップS110)。
【0068】
次に、制御回路21は、ファイル11に高周波電流を流して検出部20で検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さいか否かを判断する(ステップS111)。検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さい場合(ステップS111でYES)、制御回路21は、再度、高周波電流をファイル11に通電する処理が必要な旨の情報を表示部14に表示する(ステップS112)。
【0069】
さらに、制御回路21は、検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さい通電期間を計時する(ステップS113)。
【0070】
ステップS111に戻って、検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さくない場合(ステップS111でNO)、制御回路21は、検出した電流値が所定の範囲内の最大電流値より大きいと判断できるので、高周波電流をファイル11に通電する処理を停止する(ステップS115)。制御回路21は、高周波電流をファイル11に通電する処理を停止した旨の情報を表示部14に表示する(ステップS116)。
【0071】
このように、実施の形態2に係る歯科用治療装置10では、制御回路21が、検出部20で検出した電流値に基づいて、所定の範囲内の電流値の高周波電流をファイル11に通電させる期間(時間)の制御を高周波信号発生回路19に対して行う。このように構成することで、実施の形態2に係る歯科用治療装置10は、検出部20で検出した電流値に基づいて、ファイル11に通電させる高周波電流の通電期間を制御するので、様々な状況の変化に対して適切な通電期間、高周波電流をファイル11に通電することができる。
【0072】
また、制御回路21は、予備電流を高周波信号発生回路19からファイル11に通電させ、検出部20で検出した予備電流の電流値に基づいて、所定の範囲内の電流値の高周波電流をファイル11に通電させる期間の制御を高周波信号発生回路19に対して行ってもよい。これにより、歯科用治療装置10は、第2期間の高周波電流をファイル11に通電する前に、歯科治療部位に通電する高周波電流の最適な通電期間を設定することができる。もちろん第2期間の電流値を検出してその値に応じて通電時間を増減してもよい。なお、予備電流の電流値は、所定の範囲の最小電流値より小さくてもよい。
(実施の形態3)
実施の形態1では、第1期間で検出した予備電流の電流値に基づいて、第2期間でファイル11に通電する高周波電流の電流値が所定の範囲内の電流値となる高周波信号発生回路19の電圧値を制御する歯科用治療装置10について説明した。実施の形態3に係る歯科用治療装置では、第1期間で検出した予備電流の電流値と第1期間との積が所定の範囲内に収まるように、第2期間でファイルに通電する高周波電流の電流値および通電期間のうち少なくとも一方を制御する構成について説明する。なお、実施の形態3において、実施の形態1で説明した歯科用治療装置10の構成と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。また、実施の形態1で説明した内容を実施の形態3と矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0073】
歯科用治療装置10においてファイル11に通電する高周波電流の電流値と通電期間との積に基づく制御についてフローチャートを用いて説明する。
図9は、実施の形態3に係る歯科用治療装置の制御を説明するためのフローチャートである。まず、使用者が、根管長測定回路23に基づいて高周波電流の通電位置を決定し、当該通電位置でフートスイッチ16を操作すると、制御回路21は、高周波信号発生回路19からファイル11に第1期間、予備電流を通電する(ステップS101)。
【0074】
次に、制御回路21は、予備電流をファイル11に流したときに検出部20で検出した電流値とその通電期間(第1期間)との積に基づいて、所定の範囲内となる高周波電流の電流値をファイル11に通電するための高周波信号発生回路19の電圧値および通電期間を決定する(ステップS102B)。具体的に、根管内の起炎因子、細菌などを低減するためには、所定の範囲の電流値の高周波電流を所定の期間、通電する必要がある。例えば、30mAの高周波電流を1秒間、ファイル11に通電することで根管内の起炎因子、細菌などを低減することができる。そこで、制御回路21は、ファイル11に予備電流を第1期間流して、実際にファイル11に流れた電流値とその通電期間との積から、根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な高周波電流の電流値を確保するための高周波信号発生回路19の電圧値および通電期間を決定する。もちろん、制御回路21は、予備電流をファイル11に流し検出部20で検出した電流値とその通電期間との積に基づいて、ファイル11に通電する高周波電流の電流値を確保するための高周波信号発生回路19の電圧値または通電期間のいずれか一方を決定してもよい。例えば、通電期間はあらかじめ規定期間が定められており、制御回路21は、検出した電流値とその通電期間との積に基づいて、ファイル11に通電する高周波電流の電流値を確保するための高周波信号発生回路19の電圧値のみを決定する。なお、制御回路21は、検出部20で検出した電流値と、その時の高周波信号発生回路19に印加されている電圧値から根管のインピーダンスを算出し、当該根管のインピーダンスにおいてファイル11に通電する電流値を確保するための高周波信号発生回路19の電圧値を決定する。
【0075】
制御回路21は、第1期間経過後、高周波信号発生回路19からファイル11への通電を休止期間、休止する(ステップS103)。制御回路21は、第2期間、高周波電流を通電した回数をカウントするために通電回数カウンタのカウントを1加算する(ステップS104)。制御回路21は、高周波信号発生回路19からファイル11にステップS102Bで決定した高周波信号発生回路19の電圧値および第2期間、高周波電流を通電するように高周波信号発生回路19を制御する(ステップS105)。制御回路21は、高周波電流をファイル11に流し検出部20で検出した電流値が所定の範囲内の電流値か否かを判断する(ステップS106)。
【0076】
検出した電流値が所定の範囲内の電流値である場合(ステップS106でYES)、制御回路21は、通電回数カウンタがN回(例えば、10回)以上か否かを判断する(ステップS107)。通電回数カウンタがN回以上でない場合(ステップS107でNO)、制御回路21は、処理をステップS103に戻し、休止期間と第2期間との制御を繰り返す。なお、実施の形態2で説明したように、通電回数カウンタがN回以上でない場合(ステップS107でNO)、制御回路21は、処理をステップS101に戻し、第1期間と休止期間と第2期間との制御を繰り返すようにしてもよい。一方、通電回数カウンタがN回以上である場合(ステップS107でYES)、制御回路21は、通電回数カウンタをリセットしてカウンタを0(ゼロ)にして(ステップS108)、高周波電流をファイル11に通電する処理を停止する。
【0077】
ステップS106に戻って、検出した電流値が所定の範囲内の電流値でない場合(ステップS106でNO)、制御回路21は、通電している高周波電流の電流値が所定の範囲外である旨の情報を表示部14に表示する(ステップS110)。
【0078】
次に、制御回路21は、ファイル11に高周波電流を流して検出部20で検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さいか否かを判断する(ステップS111)。検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さい場合(ステップS111でYES)、制御回路21は、再度、高周波電流をファイル11に通電する処理が必要な旨の情報を表示部14に表示する(ステップS112)。
【0079】
さらに、制御回路21は、検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さい通電期間を計時する(ステップS113)。
【0080】
ステップS111に戻って、検出した電流値が所定の範囲内の最小電流値より小さくない場合(ステップS111でNO)、制御回路21は、検出した電流値が所定の範囲内の最大電流値より大きいと判断できるので、高周波電流をファイル11に通電する処理を停止する(ステップS115)。制御回路21は、高周波電流をファイル11に通電する処理を停止した旨の情報を表示部14に表示する(ステップS116)。
【0081】
このように、実施の形態3に係る歯科用治療装置10では、制御回路21が、検出部20で検出した電流値と高周波電流を通電させた期間との積が所定値以上となるように、ファイル11に通電させる高周波電流の電流値、および高周波電流をファイル11に通電させる期間のうち少なくとも一方の制御を高周波信号発生回路19に対して行う。
【0082】
このように構成することで、実施の形態3に係る歯科用治療装置10は、検出部20で検出した電流値と通電させた期間との積に基づいて、ファイル11に通電させる高周波電流の電流値を確保するための高周波信号発生回路19の電圧値および通電期間のうち少なくとも一方の制御を高周波信号発生回路19に対して行うので、様々な状況の変化に対しても、歯科治療部位に配置されるファイル11に所定の範囲の電流値の高周波電流を通電することができる。
(変形例)
歯科治療部位に高周波電流を通電する歯科用治療装置10は、歯科治療部位に配置されるファイル11を保持するファイルホルダ13と、定電流駆動でファイル11に高周波電流を通電する高周波信号発生回路19と、高周波信号発生回路19の出力電圧の電圧値が所定値以上となる場合、ファイル11への高周波電流の通電を開始させない、あるいは停止させる制御を高周波信号発生回路19に対して行う制御回路21と、を備えていてもよい。これにより、歯科用治療装置10は、定電流駆動でファイル11に通電する高周波電流を制御することができる。また、制御回路21は、高周波信号発生回路19の出力電圧の電圧値が所定値以上となり、高周波信号発生回路19からファイル11への高周波電流の通電を停止させた場合、高周波電流の通電を停止した情報を報知部(例えば、表示部14)に報知させてもよい。
【0083】
歯科用治療装置は、前述の実施の形態で説明したような、ファイル11を取り付けるファイルホルダ13を有し、根管長測定と、高周波電流を通電することができる構成に限定されず、治療工具をモータ駆動する構成、治療工具を超音波で駆動する構成などと組み合わせてもよい。
【0084】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
10 歯科用治療装置、11 ファイル、12 ユニット、13 ファイルホルダ、14 表示部、15 設定操作部、16 フートスイッチ、19 高周波信号発生回路、20 検出部、21 制御回路、22 受動電極、23 根管長測定回路。