(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】タイヤ空気圧監視装置、タイヤ空気圧監視方法及び監視プログラム
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B60C23/04 160A
(21)【出願番号】P 2020202900
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大園 啓太
(72)【発明者】
【氏名】安田 裕樹
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-196999(JP,A)
【文献】特開2014-76748(JP,A)
【文献】特開2009-234298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0220813(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着された複数のタイヤの空気圧データを取得する取得部と、
前記空気圧データに基づき、第一期間における各タイヤの空気圧に係る第一代表値を算出し、かつ前記第一期間よりも長い第二期間における各タイヤの空気圧に係る第二代表値を算出すると共に、前記第二代表値に対する前記第一代表値の減少度をタイヤ毎に算出する算出部と、
一のタイヤの前記減少度が第一閾値以上であり、かつ一のタイヤとは異なる他のタイヤの前記減少度が前記第一閾値未満の場合、空気圧の低下があると判定する判定部と、
を備えるタイヤ空気圧監視装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記一のタイヤの前記減少度が前記第一閾値以上であり、かつ前記他のタイヤの前記減少度が前記第一閾値未満の場合であって、さらに前記一のタイヤにおいて、前記第一期間における空気圧の最大値と最小値との差が第二閾値以下の場合に空気圧の低下があると判定する
請求項1に記載のタイヤ空気圧監視装置。
【請求項3】
前記他のタイヤは、前記一のタイヤと同じ車軸に装着されている
請求項1又は2に記載のタイヤ空気圧監視装置。
【請求項4】
前記他のタイヤの前記減少度は、同じ車軸に装着される少なくとも2つ以上のタイヤの前記減少度の代表値である
請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ空気圧監視装置。
【請求項5】
前記他のタイヤは、前記一のタイヤと前記車両の左右の装着位置が異なる
請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ空気圧監視装置。
【請求項6】
車両に装着された複数のタイヤの空気圧データを定期的に取得する取得処理と、
前記空気圧データに基づき、第一期間における各タイヤの空気圧に係る第一代表値を算出し、かつ前記第一期間よりも長い第二期間における各タイヤの空気圧に係る第二代表値を算出すると共に、前記第二代表値に対する前記第一代表値の減少度をタイヤ毎に算出する算出処理と、
一のタイヤの前記減少度が第一閾値以上であり、かつ一のタイヤとは異なる他のタイヤの前記減少度が前記第一閾値未満の場合、空気圧の低下があると判定する判定処理と、
を含む処理をコンピュータが実行するタイヤ空気圧監視方法。
【請求項7】
車両に装着された複数のタイヤの空気圧データを定期的に取得する取得処理と、
前記空気圧データに基づき、第一期間における各タイヤの空気圧に係る第一代表値を算出し、かつ前記第一期間よりも長い第二期間における各タイヤの空気圧に係る第二代表値を算出すると共に、前記第二代表値に対する前記第一代表値の減少度をタイヤ毎に算出する算出処理と、
一のタイヤの前記減少度が第一閾値以上であり、かつ一のタイヤとは異なる他のタイヤの前記減少度が前記第一閾値未満の場合、空気圧の低下があると判定する判定処理と、
を含む処理をコンピュータに実行させるための監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ空気圧監視装置、タイヤ空気圧監視方法及び監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの空気圧の低下には、パンクやバーストに代表される急激な低下と、スローリークと言われる緩やかな低下がある。特に後者のスローリークを検知すべく、特許文献1では、日単位での空気圧履歴データを演算し判定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、1つのタイヤでスローリークを検出するため、車両の運行状況の違いに起因してスローリークが生じていると誤判定を起こしてしまう場合があった。
【0005】
本発明は、誤判定を抑制しつつ、スローリークを検知可能なタイヤ空気圧監視装置、タイヤ空気圧監視方法及び監視プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のタイヤ空気圧監視装置は、車両に装着された複数のタイヤの空気圧データを取得する取得部と、前記空気圧データに基づき、第一期間における各タイヤの空気圧に係る第一代表値を算出し、かつ前記第一期間よりも長い第二期間における各タイヤの空気圧に係る第二代表値を算出すると共に、前記第二代表値に対する前記第一代表値の減少度をタイヤ毎に算出する算出部と、一のタイヤの前記減少度が第一閾値以上であり、かつ一のタイヤとは異なる他のタイヤの前記減少度が前記第一閾値未満の場合、空気圧の低下があると判定する判定部と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載のタイヤ空気圧監視装置は、取得部が車両に装着された複数のタイヤそれぞれの空気圧データを取得すると、算出部が第一代表値及び第二代表値に基づいて、タイヤ毎の減少度を算出する。ここで、第一代表値は第一期間における各タイヤの空気圧に係る代表値であり、第二代表値は第一期間よりも長い第二期間における各タイヤの空気圧に係る代表値である。各代表値は、取得のタイミングが異なる複数の空気圧の平均値、中央値及び最頻値の何れで定義されてもよい。また、各代表値は、空気圧の絶対値、基準空気圧に対する相対値、及び基準空気圧に対する相対比の何れでもよい。また、減少度は、第二代表値に対する第一代表値の低下値でもよいし、低下率でもよい。そして、当該タイヤ空気圧監視装置では、判定部が一のタイヤの減少度が第一閾値以上であり、かつ一のタイヤとは異なる他のタイヤの減少度が第一閾値未満の場合、空気圧の低下があると判定する。
【0008】
当該タイヤ空気圧監視装置によれば、短期間の空気圧データから算出された第一代表値を、長期間の空気圧データから算出された第二代表値と比較したことで得た減少度が第一閾値以上であると判定した場合に、空気圧の低下としてスローリークを検出することができる。ただし、当該タイヤ空気圧監視装置では、一のタイヤの減少度が第一閾値以上であっても、他のタイヤの減少度が第一閾値未満である場合に限り、当該一のタイヤのスローリークを検出する。そのため、例えば、車両の運行時間が短い場合、気温が低い場合等、全てのタイヤの空気圧が低下する場合は、スローリークを検知しない。つまり、当該タイヤ空気圧監視装置によれば、車両の運行状況の違いによる空気圧の変化をスローリークの判定から排除することができ、誤判定が抑制される。
【0009】
請求項2に記載のタイヤ空気圧監視装置は、請求項1に記載のタイヤ空気圧監視装置において、前記判定部は、前記一のタイヤの前記減少度が前記第一閾値以上であり、かつ前記他のタイヤの前記減少度が前記第一閾値未満の場合であって、さらに前記一のタイヤにおいて、前記第一期間における空気圧の最大値と最小値との差が第二閾値以下の場合に空気圧の低下があると判定する。
【0010】
請求項2に記載のタイヤ空気圧監視装置では、判定部が第一期間における空気圧の最大値と最小値との差が第二閾値以下の場合に限り、空気圧の低下があると判定する。当該タイヤ空気圧監視装置によれば、空気を充填したり、タイヤを交換する等、短期間における空気圧の急激な変化を空気圧の低下の判定から除外することにより、空気圧が正常なタイヤに対して、スローリークがあると判定する誤検知を抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載のタイヤ空気圧監視装置は、請求項1又は2に記載のタイヤ空気圧監視装置において、前記他のタイヤは、前記一のタイヤと同じ車軸に装着されている。
【0012】
請求項3に記載のタイヤ空気圧監視装置では、一のタイヤの空気圧の低下の判定に際して、同じ車軸に装着された他のタイヤの空気圧を参照する。すなわち、走行環境が類似するタイヤと比較して判定を行うことで、外部環境の影響を低減してスローリークを判定することができる。
【0013】
請求項4に記載のタイヤ空気圧監視装置は、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ空気圧監視装置であって、前記他のタイヤの前記減少度は、同じ車軸に装着される少なくとも2つ以上のタイヤの前記減少度の代表値である。
【0014】
請求項4に記載のタイヤ空気圧監視装置では、空気圧の低下の判定に際して、空気圧を参照する他のタイヤを複数にすることで、複数のタイヤにおいて同時に空気圧が低下した場合であっても、外部環境の影響を低減してスローリークを判定することができる。
【0015】
請求項5に記載のタイヤ空気圧監視装置は、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ空気圧監視装置であって、前記他のタイヤは、前記一のタイヤと前記車両の左右の装着位置が異なる。
【0016】
請求項5に記載のタイヤ空気圧監視装置では、一のタイヤの空気圧の低下の判定に際して、左右の装着位置が異なる他のタイヤの空気圧を参照する。そのため、スローリークの判定に際し、同時に空気圧が低下する可能性のある隣り合うタイヤの影響を排除することができる。
【0017】
請求項6に記載のタイヤ空気圧監視方法は、車両に装着された複数のタイヤの空気圧データを定期的に取得する取得処理と、前記空気圧データに基づき、第一期間における各タイヤの空気圧に係る第一代表値を算出し、かつ前記第一期間よりも長い第二期間における各タイヤの空気圧に係る第二代表値を算出すると共に、前記第二代表値に対する前記第一代表値の減少度をタイヤ毎に算出する算出処理と、一のタイヤの前記減少度が第一閾値以上であり、かつ一のタイヤとは異なる他のタイヤの前記減少度が前記第一閾値未満の場合、空気圧の低下があると判定する判定処理と、を含む処理をコンピュータが実行する。
【0018】
請求項6に記載のタイヤ空気圧監視方法は、取得処理において車両に装着された複数のタイヤそれぞれの空気圧データが取得されると、算出処理において第一代表値及び第二代表値に基づいて、タイヤ毎の減少度が算出される。ここで、第一代表値、第二代表値及び減少度については上述のとおりである。そして、当該タイヤ空気圧監視方法では、判定処理において一のタイヤの減少度が第一閾値以上であり、かつ一のタイヤとは異なる他のタイヤの減少度が第一閾値未満の場合に、空気圧の低下があると判定される。
【0019】
当該タイヤ空気圧監視方法によれば、短期間の空気圧データから算出された第一代表値を、長期間の空気圧データから算出された第二代表値と比較したことで得た減少度が第一閾値以上であると判定した場合に、空気圧の低下としてスローリークを検出することができる。ただし、当該タイヤ空気圧監視方法では、一のタイヤの減少度が第一閾値以上であっても、他のタイヤの減少度が第一閾値未満である場合に限り、当該一のタイヤのスローリークを検出する。そのため、例えば、車両の運行時間が短い場合、気温が低い場合等、全てのタイヤの空気圧が低下する場合は、スローリークを検知しない。つまり、当該タイヤ空気圧監視方法によれば、車両の運行状況の違いによる空気圧の変化をスローリークの判定から排除することができ、誤判定が抑制される。
【0020】
請求項7に記載の監視プログラムは、車両に装着された複数のタイヤの空気圧データを定期的に取得する取得処理と、前記空気圧データに基づき、第一期間における各タイヤの空気圧に係る第一代表値を算出し、かつ前記第一期間よりも長い第二期間における各タイヤの空気圧に係る第二代表値を算出すると共に、前記第二代表値に対する前記第一代表値の減少度をタイヤ毎に算出する算出処理と、一のタイヤの前記減少度が第一閾値以上であり、かつ一のタイヤとは異なる他のタイヤの前記減少度が前記第一閾値未満の場合、空気圧の低下があると判定する判定処理と、を含む処理をコンピュータに実行させる。
【0021】
請求項7に記載の監視プログラムは、コンピュータに次の処理を実行させる。取得処理において車両に装着された複数のタイヤそれぞれの空気圧データが取得されると、算出処理において第一代表値及び第二代表値に基づいて、タイヤ毎の減少度が算出される。ここで、第一代表値、第二代表値及び減少度については上述のとおりである。そして、当該タイヤ空気圧監視方法では、判定処理において一のタイヤの減少度が第一閾値以上であり、かつ一のタイヤとは異なる他のタイヤの減少度が第一閾値未満の場合に、空気圧の低下があると判定される。
【0022】
当該監視プログラムの実行により、短期間の空気圧データから算出された第一代表値を、長期間の空気圧データから算出された第二代表値と比較したことで得た減少度が第一閾値以上であると判定した場合に、空気圧の低下としてスローリークを検出することができる。ただし、当該監視プログラムでは、一のタイヤの減少度が第一閾値以上であっても、他のタイヤの減少度が第一閾値未満である場合に限り、当該一のタイヤのスローリークを検出する。そのため、例えば、車両の運行時間が短い場合、気温が低い場合等、全てのタイヤの空気圧が低下する場合は、スローリークを検知しない。つまり、当該監視プログラムによれば、車両の運行状況の違いによる空気圧の変化をスローリークの判定から排除することができ、誤判定が抑制される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、誤判定を抑制しつつ、スローリークを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施形態に係る車両の概略構成図である。
【
図2】第1の実施形態のセンサユニットのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態の監視ユニットのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態の監視ユニットの機能構成を示すブロック図である。
【
図5】監視ユニットにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】監視ユニットの処理における減少値と第一閾値との対比について説明するための図である。
【
図7】監視ユニットの処理における第一平均値の上下限の差と第二閾値との対比について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。
【0026】
[第1の実施形態]
(構成)
図1に示されるように、第1の実施形態のタイヤ空気圧監視システム10は、車両Vに搭載されている。本実施形態の車両Vは、車両前方側から第一軸Ax1、第二軸Ax2、第三軸Ax3の3つの車軸Axを備えており、各車軸Axに対し、それぞれ複数のタイヤTを備えている。具体的に、第一軸Ax1では車幅方向左側のタイヤT1、及び車幅方向右側のタイヤT2を備え、第二軸Ax2では車幅方向左側のタイヤT3、及び車幅方向右側のタイヤT4を備えている。また、後輪の車軸Axである第三軸Ax3では車幅方向左側のタイヤT5及びタイヤT6、並びに、車幅方向右側のタイヤT7及びタイヤT8を備えている。
【0027】
本実施形態のタイヤ空気圧監視システム10は、各タイヤTに装着されたセンサユニット12と、車両Vの運転席に設けられたタイヤ空気圧監視装置としての監視ユニット14と、を含んでいる。
【0028】
センサユニット12は、タイヤTの空気圧データを取得し、監視ユニット14に向けて送信する機能を有する装置である。センサユニット12は、ホイール又はタイヤTに装着される等、タイヤTの内部に設けられた装置であってもよいし、タイヤバルブ等のタイヤTの外部に設けられた装置であってもよい。
【0029】
図2に示されるように、本実施形態のセンサユニット12は、制御部20と、アンテナ22と、圧力センサ24と、を含んで構成されている。
【0030】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、通信機20D及び入出力I/F20Eを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、通信機20D及び入出力I/F20Eは、内部バス20Fを介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、ROM20Bからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0032】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のROM20Bには、センサユニット12を制御するための制御プログラム100と、ID情報110が記憶されている。ID情報110には、タイヤTを特定すべく、センサユニット12に固有の端末IDが記憶されている。
【0033】
RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0034】
通信機20Dは、監視ユニット14と無線通信を行う機能を有している。通信方式は、既知の方式が適用される。センサユニット12における通信機20Dは、送信機能を有していれば足りる。アンテナ22は通信機20Dに対して接続されている。
【0035】
入出力I/F20Eは、センサユニット12を構成する他の装置と接続するためのインタフェースである。センサユニット12の入出力I/F20Eには圧力センサ24が接続されている。なお、圧力センサ24は、内部バス20Fに対して直接接続されていてもよい。圧力センサ24は、既知の方式のセンサが適用される。
【0036】
各センサユニット12では、圧力センサ24が、当該センサユニット12が装着されているタイヤTの空気圧を検知する。そして、各センサユニット12は、検知により得られた空気圧データにID情報110に記憶されている端末IDを付与して監視ユニット14に送信している。
【0037】
監視ユニット14は、各センサユニット12から受信した空気圧データに基づいて、各タイヤTの空気圧を監視する機能を有する装置である。
【0038】
図3に示されるように、本実施形態の監視ユニット14は、制御部20と、アンテナ22と、モニタ26と、スピーカ28と、を含んで構成されている。
【0039】
監視ユニット14における制御部20の構成は、センサユニット12の制御部20と同様である。ただし、監視ユニット14のROM20Bには、監視ユニット14を制御するための監視プログラム150と、各タイヤTの空気圧に係るデータを格納した空気圧DB(データベース)160が記憶されている。
【0040】
監視ユニット14の入出力I/F20Eには、モニタ26及びスピーカ28が接続されている。
【0041】
モニタ26は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示器であって、車両Vの運転者が視認可能に構成されている。
【0042】
スピーカ28は、モニタ26に併設して設けられ、車両Vの運転者に向けて音声、警報音等を出力する。
【0043】
図4に示されるように、監視ユニット14では、CPU20Aが、ROM20Bに記憶された監視プログラム150を実行することで、制御部20が取得部200、算出部210及び判定部220として機能する。
【0044】
取得部200は、車両Vに装着された複数のタイヤTの空気圧データを取得する機能を有している。取得部200は、予め設定された時間おきに空気圧データを取得する。また、監視ユニット14は、各タイヤTと端末IDとの相関データを有しており、各センサユニット12から空気圧データを受信すると、取得部200は端末IDに基づいて、タイヤT毎の空気圧データを取得する。
【0045】
算出部210は、取得部200において取得された空気圧データを基に各タイヤTの空気圧の平均値を算出する機能を有している。算出部210は、第一期間における各タイヤTの空気圧の平均値である第一平均値を算出する。また、算出部210は、第二期間における各タイヤTの空気圧の平均値である第二平均値を算出する。さらに、算出部210は、第二平均値に対する第一平均値の減少値、つまり、第一平均値から第二平均値を減算した値をタイヤT毎に算出する。
【0046】
ここで、第一期間は、車両Vの運行を管理する際の最小単位であって、例えば、1日に設定されている。また、第二期間は、第一期間よりも長い期間であって、例えば、N日(N>2)に設定されている。なお、第一期間及び第二期間は、必ずしも日数単位である必要はなく、時間単位で設定されてもよい。第一平均値は第一代表値の一例であり、第二平均値は第二代表値の一例であり、減少値は減少度の一例である。
【0047】
なお、算出部210は、取得部200において空気圧データを取得する都度、新たな空気圧データに基づいて、当該日における第一平均値を更新する。また、算出部210は、日付が変わる都度、N日分の第一平均値の平均を第二平均値として算出する。なお、空気圧DB160にN日分の第一平均値が記憶されていない場合、記憶されている日数分の第一平均値の平均を第二平均値として算出する。
【0048】
判定部220は、タイヤTの空気圧の低下を判定する機能を有している。空気圧の低下には、パンクのような急激な低下、スローリークと称する緩やかな低下がある。判定部220は、現に取得した空気圧データからタイヤTの空気圧が予め設定された限界値を下回った場合に、パンクが発生したと判定する。
【0049】
また、判定部220は、算出部210において算出された減少値が第一閾値以上の場合であって、さらに所定の条件を満たしたタイヤTについて、スローリークが生じていると判定する。ここで、第一閾値とは、過去にスローリークが発生した際の実績を基に設定された閾値である。
【0050】
所定の条件とは(1)減少値が第一閾値以上のタイヤTと同じ車軸Axにある他のタイヤTの減少値が第一閾値未満の場合、(2)減少値が第一閾値以上のタイヤTにおいて、第一期間における空気圧の最大値と最小値との差が第二閾値以下の場合、の双方を満たす場合である。第二閾値とは、タイヤTに空気を充填した場合の空気圧の上昇、及びタイヤTを交換した場合(すなわち、ホイールに対して組み替えた場合)の空気圧の減少を加味した閾値であって、第一閾値よりも大きい値が設定されている。
【0051】
(制御の流れ)
本実施形態の監視ユニット14において、スローリークを判定する処理について、
図5のフローチャート、並びに
図6及び
図7のグラフを用いて説明する。
【0052】
図5のステップS100において、監視ユニット14のCPU20Aは、各タイヤTの第一平均値、第二平均値及び減少値を算出する。
【0053】
ステップS101において、CPU20Aは第一閾値以上の減少値のタイヤTがあるか否かを判定する。CPU20Aは第一閾値以上の減少値のタイヤTがあると判定した場合(ステップS101でYesの場合)、ステップS102に進む。一方、CPU20Aは第一閾値以上の減少値のタイヤTがないと判定した場合(ステップS101でNoの場合)、ステップS100に戻る。例えば、
図6に示されるように、N-1日目において減少値が第一閾値未満の場合は、ステップS100を繰り返すが、N日目において減少値が第一閾値以上になった場合、次のステップS102に進む。
【0054】
図5のステップS102において、CPU20Aは同じ車軸Axに第一閾値未満の減少値のタイヤTがあるか否かを判定する。CPU20Aは同じ車軸Axに第一閾値未満の減少値のタイヤTがあると判定した場合(ステップS102でYesの場合)、ステップS103に進む。一方、CPU20Aは同じ車軸Axに第一閾値未満の減少値のタイヤTがないと判定した場合(ステップS102でNoの場合)、ステップS100に戻る。
【0055】
ステップS103において、CPU20Aは第一閾値を超えたタイヤTにおいて、第一期間内の空気圧の上下限の差は第二閾値以下であるか否かを判定する。CPU20Aは第一閾値を超えたタイヤTにおいて、第一期間内の空気圧の上下限の差が第二閾値以下であると判定した場合(ステップS103でYesの場合)、ステップS104に進む。一方、CPU20Aは第一閾値を超えたタイヤTにおいて、第一期間内の空気圧の上下限の差が第二閾値以下ではないと判定した場合(ステップS103でNoの場合)、ステップS105に進む。
【0056】
例えば、
図7に示されるように、タイヤTに空気を充填した場合(事象X)に第一期間内の空気圧の上下限の差が第二閾値を超えるとステップS105に進む。また、タイヤTを交換した場合(事象Y)に第一期間内の空気圧の上下限の差が第二閾値を超えるとステップS105に進む。
【0057】
図5のステップS104において、CPU20Aはスローリークが発生していると判定する。これに伴い、監視ユニット14は、モニタ26を通じて車両Vの運転者にスローリークの発生を通知したり、図示しないネットワークを経由して車両Vの管理者に対してスローリークの発生を通知したりすることができる。そして、ステップS100に戻る。
【0058】
ステップS105において、CPU20Aは第二平均値をリセットする。そして、ステップS100に戻る。
【0059】
(実施形態のまとめ)
以上、本実施形態の監視ユニット14では、算出部210において算出された減少値が第一閾値以上の場合であって、さらに所定の条件を満たしたタイヤTについて、判定部220はスローリークが生じていると判定する。上述のとおり、所定の条件とは(1)減少値が第一閾値以上のタイヤTと同じ車軸Axにある他のタイヤTの減少値が第一閾値未満の場合、(2)減少値が第一閾値以上のタイヤTにおいて、第一期間における空気圧の最大値と最小値との差が第二閾値以下の場合、の双方を満たす場合である。
【0060】
本実施形態によれば、短期間の空気圧データから算出された第一平均値を、長期間の空気圧から算出された第二平均値と比較したことで得た減少値が第一閾値以上であると判定した場合に、スローリークを検出することができる(
図6参照)。ただし、所定の条件として上記(1)を設定することにより、一のタイヤTの減少値が第一閾値以上であっても、他のタイヤTの減少値が第一閾値未満である場合に限り、当該一のタイヤTのスローリークを検出する。そのため、例えば、車両Vの運行時間が短い場合、気温が低い場合等、同じ車軸Axにある全てのタイヤTの空気圧が低下する場合は、スローリークを検知しない。つまり、本実施形態によれば、車両Vの運行状況の違いによる空気圧の変化をスローリークの判定から排除することができ、誤判定が抑制される。
【0061】
また、本実施形態では所定の条件として上記(2)を設定することにより、空気を充填したり、タイヤTを交換する等、短期間における空気圧の急激な変化(
図7参照)をスローリークの判定から除外することにより、空気圧が正常なタイヤTに対して、スローリークが発生していると判定する誤検知を抑制することができる。
【0062】
さらに、本実施形態では一のタイヤTのスローリークの判定に際して、同じ車軸Axに装着された他のタイヤTの空気圧を参照する。例えば、駆動輪の複数のタイヤTは、それぞれ類似の走行環境におかれていると言えるが、本実施形態によれば、走行環境が類似するタイヤTと比較して判定を行うことで、外部環境の影響を低減してスローリークの判定を行うことができる。
【0063】
なお、スローリークを判定するために使用する各パラメータである第一期間、第二期間、第一閾値、及び第二閾値は、車両Vの車種、重量及び積載量、並びにタイヤTの種類、サイズ及び装着位置に応じて設定を変えることができる。各パラメータの設定を変更することにより、スローリークの検知精度を低下させることなく、スローリークを早期に検知することができる。
【0064】
[第2の実施形態]
上記の実施形態では、一のタイヤTのスローリークの判定に際して、同じ車軸Axに装着された他のタイヤTの空気圧を参照した。これに対して、第2の実施形態では、同じ車軸Axに装着された少なくとも2つ以上のタイヤの空気圧を参照している。具体的に、本実施形態の車両Vでは、第三軸Ax3に4つのタイヤTが装着されており、例えば、タイヤT5のスローリークを判定する際に、タイヤT6、タイヤT7及びタイヤT8の空気圧を参照することができる。
【0065】
このように、スローリークの判定に際して、空気圧を参照する他のタイヤTを複数にすることで、複数のタイヤTにおいて同時に空気圧が低下した場合であっても、外部環境の影響を低減してスローリークを判定することができる。
【0066】
[第3の実施形態]
また、第3の実施形態では、一のタイヤTのスローリークの判定に際して、他のタイヤTは、前記一のタイヤTと車両Vの左右の装着位置が異なるように構成されている。例えば、第三軸Ax3において、タイヤT5のスローリークを判定する際に、タイヤT8の空気圧を参照する。
【0067】
このように、一のタイヤTのスローリークの判定に際して、左右の装着位置が異なる他のタイヤTの空気圧を参照する。本実施形態によれば、スローリークの判定に際し、同時に空気圧が低下する可能性のある隣り合うタイヤT(例えば、上記の例ではタイヤT6)の影響を排除することができる。
【0068】
[備考]
上記各実施形態では、第一平均値を第一代表値として、第二平均値を第二代表値として、それぞれ例示したがこの限りではない。例えば、第一期間における各タイヤTの空気圧の中央値又は最頻値を第一代表値としてもよい。また、例えば、第二期間における各タイヤTの空気圧の中央値又は最頻値を第二代表値としてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態では、同じ車軸Axに設けられたタイヤTの空気圧を参照してスローリークを検知しているが、異なる車軸Axに設けられたタイヤTの空気圧を参照してスローリークを検知してもよい。例えば、第三軸Ax3のタイヤTのスローリークを判定する際に、第一軸Ax1のタイヤT、及び第二軸Ax2のタイヤの空気圧を参照することができる。
【0070】
さらに、上記各実施形態における第一平均値及び第二平均値は、空気圧の絶対値としたがこの限りではなく、基準空気圧に対する相対値、及び基準空気圧に対する相対比の何れであってもよい。第一平均値及び第二平均値を相対比とすることにより、異なるサイズのタイヤTの空気圧を参照してスローリークを検知することが可能となる。また、減少値は、第一平均値から第二平均値を減算した値としたが、第二平均値に対する第一平均値の低下率としてもよい。
【0071】
上記実施形態では、第一期間を1日とし、第二期間をN日に設定した。この場合において、N日間において車両Vの運休日が存在した場合、N日分の空気圧データを確保すべく、運休日分だけ起算日を前倒してもよい。例えば、第二期間が5日であって、11月10日の空気圧を監視する場合、通常、第二平均値は、11月6日、7日、8日、9日、10日の平均値として算出する。しかし、11月7日が車両Vの運休日である場合、5日間を確保すべく、11月5日、6日、8日、9日、10日の平均値を第二平均値として算出することができる。
【0072】
なお、上記実施形態でCPU20Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0073】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、センサユニット12の制御プログラム100はROM20Bに予め記憶され、監視ユニット14の監視プログラム150はROM20Bに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0074】
上記実施形態で説明した処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
14 監視ユニット(タイヤ空気圧監視装置)
150 監視プログラム
200 取得部
210 算出部
220 判定部
Ax 車軸
V 車両
T タイヤ