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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】非水性架橋性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20231219BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20231219BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20231219BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08G18/08 090
C08G18/22
C08G18/40
C09D175/04
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020520540
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2018070977
(87)【国際公開番号】W WO2019072433
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】15/728,805
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17207191.2
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518326445
【氏名又は名称】オルネクス ネザーランズ ビー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルダンカー、ゴータム
(72)【発明者】
【氏名】デ ウォルフ、エルウィン アロイシウス コーネリアス アドリアヌス
(72)【発明者】
【氏名】メスタク、ディルク エミエル ポーラ
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-504864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性組成物であって、
a)遊離-OH基を有する少なくとも1種のポリオール、
b)遊離-NCO基を有する少なくとも1種のポリイソシアナート架橋剤、
c)前記ポリオールa)の-OH基と前記架橋剤b)の-NCO基との間の反応を触媒するための少なくとも1種の触媒、
d)式RR’R’’CCOOH(I)(式中、R、R’およびR’’基のうちの2つまたは3つが結合して環構造を形成することができることを条件として、各R、R’およびR’’基は独立して、少なくとも1つの炭素原子を含むアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり、前記R、R’および/またはR’’基は置換可能であり、前記R、R’およびR’’基の炭素原子の総数は3~40の範囲である)の少なくとも1種の三級酸、ならびに
e)任意選択で、少なくとも1つの-SH基を含む少なくとも1種の錯化剤を含み、
前記組成物中の三級酸d)の量が、ポリオールa)1グラム当たり三級酸d)0.005~0.5mmolの範囲である、架橋性組成物。
【請求項2】
前記錯化剤e)が存在し、有機化合物から選択される、請求項1に記載の架橋性組成物。
【請求項3】
前記錯化剤e)が、式R-SH(II)(式中、Rは、1つ以上の他の官能基で任意選択に置換されたアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基である)のもの、式HS-(CH-SH(IV)(式中、xは1~20である)のもの、式(HSCH4-mC(CHSCHCHSH)(V)(式中、mは1~4である)のもの、式HS(CHCOOH(VI)(式中、nは1~20である)のカルボン酸と2以上のOH官能価を有するポリオールとの反応生成物であるもの、およびそれらの混合物から選択される、請求項2に記載の架橋性組成物。
【請求項4】
前記1つ以上の他の官能基が、ヒドロキシル基、一級、二級または三級アミン基、シランまたはシロキサン基、エーテル基、エステル基、およびカルボン酸基からなる群から選択される、請求項3に記載の架橋性組成物。
【請求項5】
前記触媒c)が金属系触媒を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項6】
前記触媒c)が、金属系触媒であって、金属がスズ、ビスマス、亜鉛、ジルコニウムもしくはアルミニウムまたはそれらの混合物から選択される金属系触媒から選択される、請求項5に記載の架橋性組成物。
【請求項7】
前記触媒c)が、スズ(II)カルボキシラート、ジアルキルスズ(IV)カルボキシラート、ビスマスカルボキシラート、亜鉛カルボキシラート、アルミニウムカルボキシラート、およびそれらの混合物から選択される、請求項6に記載の架橋性組成物。
【請求項8】
前記触媒c)が、ジアルキルスズジカルボキシラート、ビスマスカルボキシラート、亜鉛カルボキシラート、およびそれらの混合物から選択される、請求項7に記載の架橋性組成物。
【請求項9】
前記触媒c)が、ジメチルスズジラウラート、ジメチルスズジバーサタート(diversatate)、ジメチルスズジオレアート、ジブチルスズジラウラート、ジオクチルスズジラウラート、スズオクトアート、亜鉛2-エチルヘキサノアート、亜鉛ネオデカノアート、ビスマス2-エチルヘキサノアート、ビスマスネオデカノアート、およびそれらの混合物から選択される、請求項7に記載の架橋性組成物。
【請求項10】
前記触媒c)が、ジブチルスズジラウラート、ジオクチルスズジラウラート、亜鉛2-エチルヘキサノアートおよびそれらの混合物から選択される、請求項7に記載の架橋性組成物。
【請求項11】
錯化剤e)の量が、前記金属系触媒c)からの金属1モル当量当たりの-SH基のモル当量が、金属1当量当たり1~20モル当量のSHの範囲にあるような量である、請求項5から10のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項12】
前記三級酸d)が一般式RR’R’’CCOOH(I)(式中、前記R、R’およびR’’基の炭素原子の総数は3~30の範囲である)を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項13】
前記三級酸d)が一般式RR’R’’CCOOH(I)(式中、Rはメチルまたはエチル基であり、R’およびR’’基の炭素原子の総数は2~17であり、R’および/またはR’’が非置換であるか、1つのヒドロキシル基のみで置換されている)を有する、請求項12に記載の架橋性組成物。
【請求項14】
前記三級酸d)が、ネオデカン酸、バーサチック酸、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、アビエチン酸、1-メチルシクロヘキサン酸、ジメチルマロン酸、エチルメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2,2-ジメチルプロピオン酸、2,2-ジメチル酪酸、2-エチル-2-メチル酪酸、2,2-ジエチル酪酸、2,2-ジメチル吉草酸、2-エチル-2-メチル吉草酸、2,2-ジエチル吉草酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、2,2-ジエチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸、2-エチル-2,5-ジメチルヘキサン酸、3-メチルイソクエン酸、4,4-ジメチルアコニット酸、1-メチルシクロペンタンカルボン酸、1,2,2-トリメチル-1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1-メチルシクロヘキサンカルボン酸、2-メチルビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2-カルボン酸、2-メチル-7-オキサビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2-カルボン酸、1-アダマンタンカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の架橋性組成物。
【請求項15】
前記ポリオールa)が、ポリエステルポリオール、ポリアクリラートポリオール、ポリカーボナートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、メラミンポリオール、およびそれらの混合物から選択され、ポリオール1グラム当たり20~1,000mg KOHの範囲のヒドロキシル価と、ポリオール1グラム当たり15mg KOH以下の酸価とを有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の架橋性組成物であって、
ポリオールa)、架橋剤b)、触媒c)、三級酸d)、ならびに存在する場合、錯化剤e)および/または酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)の総量に基づいて、
・ポリオールa)10~90重量%、
・ポリイソシアナート架橋剤b)10~90重量%、
・触媒c)0.001~10重量%
・三級酸d)0.001~10重量%、および
・任意選択で、錯化剤e)0.001~1重量%、
・任意選択で、酸化防止剤f1)0.05~1.5重量%、
・任意選択で、ラジカル消去剤f2)0.05~1.5重量%を含み、
ここで、前記架橋性組成物が、この架橋性組成物の固形分の総量に基づいて、ポリオールa)、架橋剤b)、触媒c)、三級酸d)、ならびに存在する場合、錯化剤e)および/または酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)の総量を20~100重量%含む、架橋性組成物。
【請求項17】
前記三級酸d)に加えて、三級酸の量の1~100モル%の範囲の一級酸および/または二級酸を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の架橋性組成物を調製するためのパーツキットであって、
i.少なくとも1種のポリオールa)および少なくとも1種の三級酸d)、ならびに任意選択で少なくとも1種の触媒c)および/または錯化剤e)および/または酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)を含むバインダーモジュール、ならびに
ii.少なくとも1種のポリイソシアナート架橋剤b)を含む架橋剤モジュールを含むパーツキット。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか一項に記載の架橋性組成物を調製するためのバインダーモジュールであって、少なくとも1種のポリオールa)および少なくとも1種の三級酸d)、ならびに任意選択で少なくとも1種の錯化剤e)、少なくとも1種の酸化防止剤f1)および/または少なくとも1種のラジカル消去剤f2)を含むバインダーモジュール。
【請求項20】
請求項1から17のいずれか一項に記載の架橋性組成物を物体の少なくとも一部に適用する工程、および、前記適用された組成物を硬化させる工程を含む、コーティングを提供する方法。
【請求項21】
前記物体の少なくとも一部が輸送車両の表面である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記硬化が5~180°Cの範囲の温度で行われる、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアナート架橋剤と反応することができる遊離ヒドロキシル基を有するポリオールと、この反応を触媒する触媒とを含む架橋性組成物、およびコーティングにおけるその使用に関する。
【0002】
2成分ポリウレタンコーティングは、当技術分野で周知である。通常、それらは2液系として製剤化され、第1の液は通常ポリオール樹脂を含有し、第2の液は架橋剤、多くの場合ポリイソシアナートを含む。2液を混合した後、架橋反応が始まり、組成物の粘度が増加する。ここで、初期粘度に対して、DINフローカップ4を用いて粘度が2秒または4秒増加する時間を作業時間(ワーキングタイム)と呼ぶ。粘度が2倍になる時間をポットライフ(貯蔵寿命)と呼ぶ。2液系の使用者ができるだけ効率的に作業することができるようにするには、作業時間およびポットライフの両方をできるだけ長くすべきである。
【0003】
生産性を高めるために、2液組成物の迅速な硬化が望まれることが多い。環境的および経済的な理由から、高められた温度(例えば60℃)での乾燥はできるだけ短時間にすべきである。あるいは、それよりも低温であるが依然として高い温度(例えば、60℃ではなく40℃)での硬化が好ましい。理想的には、硬化は加熱せずに周囲温度で行われる。しかし、乾燥時間とも呼ばれる硬化速度が増加すると、多くの場合、作業時間およびポットライフが減少し、硬化した材料の品質が低下する。したがって、ポットライフおよび/または作業時間と乾燥時間との間の良好なバランスを有する必要があり、ポットライフおよび/または作業時間と乾燥時間との比はできるだけ高くあるべきである。
【0004】
また、硬化後すぐに高い硬度値が必要とされることも増えている。そのような高い初期硬度により、架橋性組成物を用いて処理された物体をさらに早く取り扱うことが可能になり、ひいては生産性が高まる。言うまでもなく、架橋性組成物は、VOC規制に準拠すべきであり、好ましくは、毒性の高い材料の使用は避けるべきである。ここで、揮発性有機化合物またはVOCとは、硬化温度および硬化圧力の条件下で蒸発することができる組成の有機化合物である。
【0005】
長い間、例えば米国特許第3808162号明細書および欧州特許第0454219号明細書から、酸および/または-SH基を含む錯化剤の使用により、ポリオールおよびポリイソシアナートを含む触媒組成物のポットライフを増大させることができることが知られている。米国特許第3808162号明細書は一連のアルカン酸を記載しており、2-エチルヘキサン酸が最も好ましい。この特許に記載されているゲル時間は非常に短く、多くの現代の用途では許容することができない。さらに、記載されている現在の二級酸(secondary acid)は、胎児に損傷を与える可能性のある放射性人体ラベル(radiant man label)を有し、これは、今日の基準では許容されないことが多い。
【0006】
欧州特許第0454219号明細書は、ポットライフ-乾燥比が大幅に改善されたポリウレタン製造用の、ポリオール、ポリイソシアナート、揮発性酸、特に酢酸またはギ酸、および錯体化触媒を含む組成物を記載している。しかし、これらのコーティングは初期硬度が非常に低いという欠点を有し、さらに揮発性酸の使用はVOCの一因となる。
【0007】
国際公開第2005/019362号パンフレットは、ポリオール、非ブロック化ポリイソシアナート、および150℃未満の沸点を有する揮発性カルボン酸、特に酢酸およびプロピオン酸を含むフィルム形成組成物を開示している。良好なポットライフ‐乾燥バランスが得られたが、これらの組成物の作業時間は極端に短いものであった。さらに、そこに記載されているような揮発性酸は、VOCの一因となり、組成物の適用(塗布)中に不快な臭いを発生させる。
【0008】
国際公開第2007/020270号パンフレットは、低VOCが必要とされる組成物の硬化速度、ポットライフおよび外観特性のバランスを改善するための共役酸、特に安息香酸の使用を記載している。しかし、多くの有機媒体では安息香酸の溶解性は限られている。さらに、現在の安息香酸は、肺に損傷を与える可能性のある放射性人体ラベルを有し、これは、今日の基準では許容されないことが多い。
【0009】
国際公開第2013/131835号パンフレットは、ポリオール、ポリイソシアナート架橋剤、金属系触媒、SH官能性化合物、少なくとも7のpKaを有する塩基、および酸、特に安息香酸およびヘキサン酸、ドデシルおよびトルエンスルホン酸ならびにリン酸ジブチルを含む組成物を記載している。周囲温度での速乾性と1日後の良好な硬度とを有するコーティングを得ることができても、ゲル時間は非常に短いものであった。
【発明の概要】
【0010】
したがって、改善されたポットライフ-乾燥時間比、高い初期硬度、および長い作業時間を提供する架橋性組成物に対する必要性が依然として存在する。さらに、組成物は、周囲温度未満、周囲温度または高められた温度で硬化可能であるべきである。さらに、組成物は、(屋外)耐久性、日光に対する耐性、湿気、酸性雨および他の汚染物質などのいくつかの化学物質に対する耐性、機械的特性などの他の重要な特性の良好なバランスを提供し、優れた外観を有するべきである。重要なことに、組成物は、放射性人体ラベルによってラベル付けされた材料を使用することなく製剤化することができるべきであり、揮発性有機成分の排出に関する現行および今後の規制に準拠するために、揮発性有機成分(VOC)含有量を低くするべきである。
【0011】
出願人は、以前に記載された組成物の欠点を克服し、上記の特性の組合せを提供する組成物を発見した。したがって、本発明は、
a)遊離-OH(ヒドロキシル)基を有する少なくとも1種のポリオールと、
b)遊離-NCO(イソシアナート)基を含む少なくとも1種のポリイソシアナート架橋剤と、
c)上記ポリオールa)の-OH基と上記架橋剤b)の-NCO基との間の反応を触媒するための少なくとも1種の触媒と、
d)式RR’R’’CCOOH(I)(式中、R、R’およびR’’基のうちの2つまたは3つが結合して環構造を形成することができることを条件として、各R、R’およびR’’基は独立して、少なくとも1つの炭素原子を含むアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり、R、R’および/またはR’’基は置換可能であり、R、R’およびR’’基の炭素原子の総数は3~40の範囲である)の少なくとも1種の三級酸(tertiary acid)と、
e)任意選択で、少なくとも1つの-SH基を含む少なくとも1種の錯化剤とを含む架橋性組成物に関する。
【0012】
このような架橋性組成物は、改善されたポットライフ-乾燥比を有し、長い作業時間と良好な(初期)硬度とのバランスが取れたコーティング組成物を得ることを可能にすることが見出された。組成物は、毒性の高い材料を用いることなく、揮発性有機成分の含有量が低い状態で製剤化するのに非常に適している。さらに、得られた架橋材料は、化学物質および日光に対する良好な耐性を提供し、耐久性があり、良好な機械的特性を有し、優れた外観を有する。特に、三級酸を少なくとも1つの-SH基を含む錯化剤と組み合わせて使用しても組み合わせずに使用しても、先行技術に記載された一級酸(primary acid)、二級酸または共役酸と比較して、ポットライフ-乾燥比、(初期)硬度および作業時間の間の優れたバランスを提供することは驚くべきことである。
【0013】
本発明による組成物は、好ましくはいわゆる非水性組成物であり、一般に10%未満の水、好ましくは5%未満の水、さらに好ましくは1%未満の水を含むか、実質的に水を含まない組成物である。
【0014】
本発明による組成物に使用されるポリオールa)は、通常、少なくとも2つの-OH基を含むポリマーである。ただし、本発明による組成物は、高分子ポリオールa)に加えて、いくつかのモノマーおよび/またはオリゴマーも含むことができる。好適なモノマーおよび/またはオリゴマーポリオールには、少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を含む化合物、例えば、ヒマシ油、アルキレンジオールおよびトリメチロールプロパンが含まれる。
【0015】
ポリオールa)は、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリアクリラートポリオール、ポリカーボナートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、メラミンポリオールならびにそれらの混合物およびハイブリッドから選択される。そのようなポリマーは一般に当業者に知られており、市販されている。
【0016】
多種多様な潜在的に好適なポリオールa)のうち、ポリエステルポリオールおよびポリアクリルポリオールならびにそれらの混合物およびハイブリッドが好ましい。好適なポリエステルポリオールは、例えば、任意選択で1種以上の単官能性カルボン酸および/またはヒドロキシル官能性化合物と組み合わせて、1種以上の二官能性および/またはさらに高い官能性のヒドロキシル化合物と、1種以上の二官能性および/またはさらに高い官能性のカルボン酸との重縮合によって得ることができる。非限定的な例として、二官能性および/またはさらに高い官能性のヒドロキシル化合物は、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールから選択される1種以上のアルコールであり得る。非限定的な例として、二官能性および/またはさらに高い官能性のカルボン酸は、アジピン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、コハク酸およびそれらの機能的等価物からなる群から選択される1種以上である。あるいは、ポリエステルポリオールは、二官能性および/またはさらに高い官能性のヒドロキシル化合物から、および酸の無水物および/またはC1-C4アルキルエステルから調製することができる。
【0017】
好適なアクリルポリオールは、例えば、フリーラジカル開始剤の存在下でのヒドロキシル官能性アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和コモノマーとの(共)重合により得ることができる。非限定的な例として、(メタ)アクリルポリオールは、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸のポリプロピレングリコールエステル、ならびに(メタ)アクリル酸の混合ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールエステルなど、(メタ)アクリル酸の1種以上のヒドロキシアルキルエステルの重合から形成される残基を含むことができる。アクリルポリオールは、好ましくは、メチル(メタ)アクリラート、tert-ブチル(メタ)アクリラート、イソボルニル(メタ)アクリラート、イソブチル(メタ)アクリラート、(置換)シクロヘキシル(メタ)アクリラート、(メタ)アクリル酸など、ヒドロキシル基を含まないモノマーをさらに含む。アクリル系バインダーは、任意選択で、スチレン、ビニルトルエン、分岐モノカルボン酸のビニルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、およびマレイン酸のモノアルキルエステルなどの非(メタ)アクリラートモノマーを含む。
【0018】
本発明による組成物に使用されるポリオールa)は、好ましくは、ASTM法E222-17に従って測定された、ポリオール1グラム当たり20~1,000mg KOHの範囲、さらに好ましくはポリオール1グラム当たり50~500mg KOHの範囲、最も好ましくはポリオールa)1グラム当たり100~250mg KOHの範囲のヒドロキシル価を有する。
【0019】
本発明による組成物に使用されるポリオールa)は、好ましくはポリオールa)1グラム当たり15mg KOH以下の酸価を有するポリマーであり、より好ましくはポリマーポリオールである。ポリオールの酸価がポリオールa)1グラム当たり最大10mg KOHであることが特に好ましく、ポリオールの酸価がポリオールa)1グラム当たり最大6mg KOHであることがさらに好ましい。酸価はISO 3682-1996に従って測定される。
【0020】
ポリオールa)は、通常、ポリオールa)、架橋剤b)、触媒c)、三級酸d)、および存在する場合、錯化剤e)および/または酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)の総量に基づいて、10~90、さらに好ましくは20~80、最も好ましくは30~70重量パーセントの範囲のレベルで組成物中に存在する。
【0021】
架橋性組成物は、好ましくは少なくとも2つの遊離-NCO(イソシアナート)基を含む少なくとも1種のポリイソシアナート架橋剤b)を含む。架橋剤b)は、通常、少なくとも2つの-NCO基を含む(シクロ)脂肪族および/または芳香族ポリイソシアナートおよびそれらの混合物から選択される。架橋剤b)は、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,2-シクロヘキシレンジイソシアナート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアナート、4,4’-ジシクロヘキシレンジイソシアナートメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシレンジイソシアナートメタン、ノルボルナンジイソシアナート、m-およびp-フェニレンジイソシアナート、1,3-および1,4-ビス(イソシアナートメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアナート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアナート(TMXDI)、1,5-ジメチル-2,4-ビス(イソシアナートメチル)ベンゼン、2,4-および2,6-トルエンジイソシアナート、2,4,6-トルエントリイソシアナート、4,4’-ジフェニレンジイソシアナートメタン、4,4’-ジフェニレンジイソシアナート、ナフタレン-1,5-ジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、4-イソシアナートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアナート、ならびに前述のポリイソシアナートの混合物から選択される。他の好ましいイソシアナート架橋剤は、ポリイソシアナートの付加物、例えば、ビウレット、イソシアヌラート、イミノオキサジアジンジオン、アロファナート、ウレトジオンおよびそれらの混合物である。そのような付加物の例は、例えばエチレングリコールなどのジオールへの2分子のヘキサメチレンジイソシアナートまたはイソホロンジイソシアナートの付加物、1分子の水への3分子のヘキサメチレンジイソシアナートの付加物、3分子のイソホロンジイソシアナートへの1分子のトリメチロールプロパンの付加物、4分子のトルエンジイソシアナートへの1分子のペンタエリスリトールの付加物、ヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌラート(DESMODUR(登録商標)(E)N3390またはTOLONATE(登録商標)HDT-LVの商品名の下に入手可能)、ウレトジオンとヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌラートとの混合物(DESMODUR(登録商標)N3400の商品名の下に入手可能)、ヘキサメチレンジイソシアナートのアロファナート(DESMODUR(登録商標)LS 2101の商品名の下に入手可能)、およびイソホロンジイソシアナートのイソシアヌラート(VESTANAT(登録商標)T1890の商品名の下に入手可能)である。さらに、α,α’-ジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアナートなどのイソシアナート官能性モノマーの(コ)ポリマーが使用に適している。所望であれば、疎水性または親水性に修飾されたポリイソシアナートを使用して、コーティングに特定の特性を付与することも可能である。
【0022】
架橋剤b)は、通常、ポリオールa)、架橋剤b)、触媒c)、三級酸d)、および存在する場合、錯化剤e)および/または酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)の総量に基づいて、10~90、さらに好ましくは20~80、最も好ましくは30~70重量パーセントの範囲のレベルで組成物中に存在する。
【0023】
本発明による架橋性組成物は、通常、イソシアナート官能基とヒドロキシル基との当量比が0.5~4.0の間、好ましくは0.7~3.0の間、さらに好ましくは0.8~2.5の間となるような量で、ポリオールa)とポリイソシアナート架橋剤b)とを含む。
【0024】
触媒c)は、好ましくは、イソシアナート基とヒドロキシル基との反応を促進する触媒である。そのような触媒は当業者に知られている。触媒は、一般に、ポリオールa)、架橋剤b)、触媒c)、三級酸d)、および存在する場合、錯化剤e)および/または酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)の総量に基づいて、0.001~10重量%の量、好ましくは0.002~5重量%、さらに好ましくは0.01~1重量%の量で使用される。
【0025】
触媒は、好ましくは金属系触媒を含有する。金属系触媒中の好ましい金属には、スズ、ビスマス、亜鉛、ジルコニウムおよびアルミニウムが含まれる。好ましい金属系触媒c)は、前述の金属のカルボキシラート錯体、特にスズ(II)カルボキシラート、ジアルキルスズ(IV)カルボキシラート、ビスマスカルボキシラート、亜鉛カルボキシラートもしくはアルミニウムカルボキシラートまたはそれらの混合物であり、さらに好ましくはジアルキルスズジカルボキシラート、ビスマスカルボキシラートまたは亜鉛カルボキシラートである。本発明で使用される好ましい金属系触媒c)は、スズ、ビスマスおよび亜鉛カルボキシラートであり、さらに具体的には、ジメチルスズジラウラート、ジメチルスズジバーサタート(diversatate)、ジメチルスズジオレアート、ジブチルスズジラウラート、ジオクチルスズジラウラート、およびスズオクトアート、亜鉛2-エチルヘキサノアート、亜鉛ネオデカノアート、ビスマス2-エチルヘキサノアート、ビスマスネオデカノアートが好ましい。ジブチルスズジラウラート、ジオクチルスズジラウラートおよび亜鉛2-エチルヘキサノアートならびにそれらの混合物が特に好ましい。また、ジアルキルスズジ(アルキルスルフィド)、ジアルキルスズマレアートおよびジアルキルスズアセタートも適している。金属系触媒の混合物および組合せを使用することも可能である。触媒c)はまた、1種以上の三級アミン触媒と組み合わせて、上記の金属系触媒を含むことができる。三級アミン触媒は、好ましくは、1,4-ジアザ(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、N-エチルモルホリン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、3-ジメチルアミノ-N,N-メチルプロピオンアミド、3-[4-[3-(ジメチルアミノ)-3-オキソプロピル]、3-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルブタンアミドおよびそれらのいずれかの混合物から選択される。
【0026】
本発明による組成物に使用される三級酸d)は、一般式RR’R’’CCOOH(I)(式中、R、R’およびR’’基のうちの2つまたは3つが結合して環構造を形成することができることを条件として、各R、R’およびR’’基は独立して、少なくとも1つの炭素原子を含むアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり、R、R’および/またはR’’基は置換可能であり、R、R’およびR’’基の炭素原子の総数は3~40の範囲である)を有する。
【0027】
R、R’およびR’’基の炭素原子の総数が3~30、さらに好ましくは3~18、最も好ましくは3~8の範囲であるこの式(I)の三級酸d)が好ましい。R、R’およびR’’は同じでも異なっていてもよく、直鎖および分岐基、ならびに-OH基、一級、二級または三級アミン基、カルボン酸基、エステル基、エーテル基、-SH基などの1つ以上の官能基で置換された基を含む。あるいは、R’またはR’’の一方は、カルボン酸基であり得る。
【0028】
好ましい三級酸d)は、式(I)(式中、Rはアルキル基、さらに好ましくはメチル基であり、R’およびR’’はアルキルまたはアルケニル基、さらに好ましくは互いに結合して環構造を形成し得るか、1つ以上のヒドロキシル基で置換され得るアルキル基である)のものである。特に好ましい三級酸は、Rがメチルまたはエチル基であり、R’およびR’’基の炭素原子の総数が2~17であり、最も好ましくは2~7であり、特に2~5であり、R’および/またはR’’が非置換であるか、1つのヒドロキシル基のみで置換されているものである。
【0029】
特に好ましい三級酸は、Rがメチル基であり、R’およびR’’基の炭素原子の総数が2~17、最も好ましくは2~7、特に2~5であるものである。
【0030】
上記で定義した一般式RR’R’’CCOOHを有する三級酸d)は、通常揮発性ではない。酸d)は、一般に、クラペイロン式から計算すると、同じ温度で計算した酢酸と比較して少なくとも1桁低い0~60℃の間の蒸気圧を有する。
【0031】
本発明による組成物に使用することができる三級酸の非限定的な例は、ネオデカン酸、バーサチック酸、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、アビエチン酸、1-メチルシクロヘキサン酸、ジメチルマロン酸、エチルメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2,2-ジメチルプロピオン酸、2,2-ジメチル酪酸、2-エチル-2-メチル酪酸、2,2-ジエチル酪酸、2,2-ジメチル吉草酸、2-エチル-2-メチル吉草酸、2,2-ジエチル吉草酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、2,2-ジエチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸、2-エチル-2,5-ジメチルヘキサン酸、3-メチルイソクエン酸、4,4-ジメチルアコニット酸、1-メチルシクロペンタンカルボン酸、1,2,2-トリメチル-1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1-メチルシクロヘキサンカルボン酸、2-メチルビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2-カルボン酸、2-メチル-7-オキサビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2-カルボン酸、1-アダマンタンカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸およびビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸またはそれらの混合物である。
【0032】
組成物中に存在する三級酸d)の量は、一般に、ポリオールa)1グラム当たり三級酸d)0.005~0.5mmolの範囲、好ましくはポリオールa)1グラム当たり三級酸d)0.02~0.3mmolの範囲、さらに好ましくはポリオールa)1グラム当たり三級酸d)0.04~0.25mmolの範囲である。
【0033】
三級酸d)は、一般に、ポリオールa)、架橋剤b)、触媒c)、三級酸d)、および存在する場合、錯化剤e)および/または酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)の総量に基づいて、三級酸d)0.001~10、好ましくは0.002~5、さらに好ましくは0.01~2.5重量%の量で使用される。
【0034】
本発明による組成物ではまた、三級酸d)に加えて、一級酸および/または二級酸、好ましくは非ポリマー結合酸も使用され得る。使用する場合、一級酸および/または二級酸の量は、好ましくは三級酸の量の100モル%を超えない。使用する場合、一級酸および/または二級酸の量は、好ましくは三級酸の量の1~100モル%の範囲である。一級酸および二級酸の例は、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、イソノナン酸、2-エチルヘキサン酸、ペンタン酸および3-メチルブタン酸および/またはそれらの混合物である。
【0035】
本発明による組成物はまた、好ましくは、少なくとも1つの-SH基を含む少なくとも1種の錯化剤e)を含む。この錯化剤e)は、一般に、1つ以上の-SH基を含む有機化合物である。好ましい錯化剤e)は、一般式R-SH(II)(式中、Rはアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり得る)のものである。-SH基は、一級、二級または三級-SH基であり得る。Rは、直鎖、環状または分岐基であり得、例えばヒドロキシル基、一級、二級または三級アミン基、シランまたはシロキサン基、エーテル基、エステル基、カルボン酸基などの1つ以上の他の官能基を含むことができる。好ましくは、Rは、一般式-C2n+1(式中、nは4~40、さらに好ましくは8~30である)の直鎖または分岐アルキル基である。例には、n-C1225SH、n-C1633SH、式C1123SH、C1225SHおよびC1327SHの直鎖または分岐分子、ならびにそれらの混合物、および(CH(iPr)C-C(CH-C(CHSHが挙げられる。Rが複数の他の官能基を含む場合、それらは異なっていても同じであってもよい。他の官能基として特にヒドロキシルまたはエステル基が好ましい。エステル基を含むRの場合、Rは好ましくは一般式-(CH(C=O)O-R’を有する。式中、nは1~20の範囲、好ましくは1~10の範囲で選択することができ、特に好ましいnは1または2である。R’は、例えば、ブチル、2-エチルヘキシル、イソオクチル、トリデシル、オクタデシルなど、好ましくは1~24の炭素原子を含む任意のアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり得る。式HS-(CH(C=O)O-R’(III)(式中、nは1または2であり、R’は3~20の炭素原子を含むアルキル基である)の錯化剤が特に好ましい。
【0036】
錯化剤e)は、複数の-SH基を含むことができる。式HS-(CH-SH(IV)(式中、x=1~20である)のもの、式(HSCH4-mC(CHSCHCHSH)(V)(式中、m=1~4である)のもの、ならびに例えば欧州特許第0665219号明細書および欧州特許第0435306号明細書に記載されているような類似の化合物が好ましい。特に好ましい他の錯化剤e)は、SH官能性酸、特にSH官能性カルボン酸、およびポリオールからのエステルである。縮合反応合成のみに必ずしも限定されないが、そのような生成物は、例えば、HS(CHCOOH(式中、n=1~20である)とポリオールとの間の(ポリ)エステル結合の形成によって得ることができる。式HS(CHCOOH(VI)(式中、nは1~20である)のカルボン酸と2以上のOH官能価を有するポリオールとの反応生成物であるものが好ましい。この場合、ポリオールは通常2以上のOH官能価を有し、モノマー、オリゴマーまたはポリマーであり得る。そのようなポリオールの非限定的な例は、グリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、エトキシル化トリメチロールプロパン、トリ(ヒドロキシエチル)イソシアヌラート、ヒマシ油、OH官能性ポリエステル、OH官能性ポリアクリラート、ポリカプロラクトン、OH官能性ポリカーボナート、米国特許第6486298号明細書に記載されているようなジエピスルフィドモノマーに基づくポリマーであり得る。
【0037】
1つのSH部分を有する化合物e)と複数の硫黄-水素結合を含む化合物e)の混合物を含め、異なる錯化剤e)の混合物を使用することができる。
【0038】
本発明による組成物中の錯化剤e)の量は、一般に、金属系触媒c)中の金属1モル当量当たりの-SH基のモル当量が、金属系触媒c)からの金属1当量当たり1~20モル当量のSHの範囲、好ましくは金属系触媒からの金属1当量当たり2~10モル当量のSHの範囲にあるような量である。
【0039】
錯化剤e)は、ポリオールa)、架橋剤b)、触媒c)、三級酸d)および錯化剤e)および/または酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)の総量に基づいて、好ましくは、錯化剤e)0.001~1、さらに好ましくは0.01~0.5、最も好ましくは0.02~0.3重量%の量で使用される。
【0040】
架橋性組成物は、反応性希釈剤をさらに含有してもよい。反応性希釈剤は、一般に、ポリオールa)の粘度を低下させるために使用されるモノマー、オリゴマーまたはポリマー化合物であり、ポリオールa)および/または架橋剤b)と反応することができる。好ましくは、反応性希釈剤は揮発性ではなく、したがって組成物の総揮発性有機含有量に寄与しない。好ましい反応性希釈剤は、通常は触媒c)の影響下で架橋剤b)と反応することができ、ポリオールa)の粘度を低下させるために使用される、1つの-OH基を含むモノマー、オリゴマーもしくはポリマー化合物、もしくは2~5の-OH基を含むモノマーもしくはオリゴマー化合物、またはそれらの混合物である。好ましくは、コーティング組成物は、ポリオールa)100g当たり30g未満、さらに好ましくはポリオールa)100g当たり20g未満、最も好ましくはポリオールa)100g当たり15g以下の反応性希釈剤を含む。
【0041】
本発明による組成物は、任意選択で、1種以上の揮発性有機化合物を含んでもよい。一般に、揮発性有機化合物は、大気圧で200°C以下の沸点を有する化合物であり、組成物を適用(塗布)するのに適した粘度まで組成物を希釈するために使用される。したがって、必要であれば、反応性希釈剤を使用するか、揮発性有機化合物、または反応性希釈剤と揮発性有機化合物との混合物を使用することにより、組成物の適用に適した粘度を得ることができる。好ましくは、コーティング組成物は、組成物全体に基づいて500g/l未満、さらに好ましくは480g/l未満、最も好ましくは420g/l以下の揮発性有機化合物を含む。好適な揮発性有機化合物の例は、炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、SOLVESSO(登録商標)100、ケトン、テルペン、例えば、ジペンテンまたはパイン油、ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、エーテル、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エステル、例えば、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸n-ブチルまたはエーテルエステル、例えば、酢酸メトキシプロピルまたはプロピオン酸エトキシエチルである。これらの化合物の混合物も使用することができる。
【0042】
所望であれば、組成物に1種以上のいわゆる「免除溶剤」(“exempt solvents”)を含めることが可能である。免除溶剤は、一般に、スモッグを形成する大気光化学反応に関与しない揮発性有機化合物であると定義される。免除溶剤は有機溶剤であり得るが、日光の存在下で窒素酸化物と反応するのに非常に時間がかかり、アメリカ合衆国の環境保護庁はその反応性を無視できると考えている。塗料およびコーティングへの使用が承認されている免除溶剤の例には、アセトン、酢酸メチル、パラクロロベンゾトリフルオリド(OXSOL(登録商標)100の名称の下に市販されている)および揮発性メチルシロキサンが挙げられる。また、第三級酢酸ブチルは免除溶剤と考えられている。
【0043】
組成物の不揮発分は、通常固形分と呼ばれ、好ましくは組成物全体に基づいて40重量%よりも高く、さらに好ましくは45重量%よりも高く、最も好ましくは50重量%よりも高い。組成物の固形分とは、揮発性有機化合物の蒸発後に組成物を適用および硬化または架橋した後に生じる物質の量と理解される。本発明による架橋性組成物は、特に上記の1種以上の反応性希釈剤が使用される場合、またはさらに高い適用(塗布)粘度が必要な用途では、揮発性成分を含むことなく使用および適用され得る。
【0044】
上記の成分に加えて、本発明による架橋性組成物中には他の化合物が存在し得る。このような化合物は、ポリオールa)および/または反応性希釈剤以外のバインダーであってよく、前述のポリオールa)および/または架橋剤b)と架橋し得る反応性基を含んでもよい。そのような他の化合物の例は、ケトン樹脂、ならびにオキサゾリジン、ケチミン、アルジミンおよびジイミンなどの潜在的なアミノ官能性化合物である。これらおよび他の化合物は、当業者に知られており、特に米国特許第5214086号明細書で言及されている。
【0045】
架橋性組成物は、コーティング組成物に一般的に使用される他の成分、添加剤または助剤、例えば、顔料、染料、界面活性剤、顔料分散助剤、レベリング剤、湿潤剤、へこみ防止剤、消泡剤、艶消し剤、垂れ落ち防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル抑制剤およびフィラーをさらに含んでもよい。
【0046】
架橋性組成物は、好ましくは、少なくとも1種の酸化防止剤f1)を含む。コーティング組成物に使用される酸化防止剤はよく知られており、一般にフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、ホスホナイト系酸化防止剤、チオエーテルおよびそれらのブレンドから選択される。本発明による架橋性組成物は、好ましくは、ホスファイトまたはホスホナイト系の少なくとも1種の酸化防止剤を含有する。
【0047】
任意選択で、架橋性組成物はまた、少なくとも1種のラジカル消去剤f2)を含む。コーティング組成物に使用されるラジカル消去剤はよく知られている。架橋性組成物は、任意のタイプのラジカル消去剤を含むことができる。好ましくは、架橋性組成物は、立体障害フェノール部分に基づくラジカル消去剤、さらに好ましくは3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナートフラグメントを含むエステルに基づくラジカル消去剤を含む。
【0048】
垂れ落ち防止剤は、架橋性組成物にチキソトロピー性を与えるレオロジー的に活性な化合物である。これらの垂れ落ち防止剤はよく知られており、一般に粘土垂れ落ち防止剤、シリカ系垂れ落ち防止剤、ミクロゲル垂れ落ち防止剤、アミド系垂れ落ち防止剤、またはポリ尿素生成物に基づく垂れ落ち防止剤から選択される。架橋性組成物が垂れ落ち防止剤を含む場合、好ましくは、架橋性組成物はポリ尿素生成物に基づく垂れ落ち防止剤を含み、さらに好ましくは、架橋性組成物は、典型的にはポリイソシアナートとモノアミンとの反応から調製されるポリ尿素生成物を含み、最も好ましくはベンジルアミンまたはメトキシプロピルアミンとヘキサメチレンジイソシアナートまたはそのイソシアヌラートとの反応から調製されるポリ尿素生成物を含む。
【0049】
コーティング組成物は、好ましくは、
ポリオールa)、架橋剤b)、触媒c)、三級酸d)、ならびに存在する場合、錯化剤e)、酸化防止剤f1)およびラジカル消去剤f2)の総量に基づいて、
・ポリオールa)10~90重量%、好ましくは20~80重量%、さらに好ましくは30~70重量%、
・ポリイソシアナート架橋剤b)10~90重量%、好ましくは20~80重量%、さらに好ましくは30~70重量%、
・触媒c)0.001~10重量%、好ましくは0.002~5重量%、さらに好ましくは0.005~1重量%
・三級酸d)0.001~10重量%、好ましくは0.002~5重量%、さらに好ましくは0.01~2.5重量%、および
・任意選択で、錯化剤e)0.001~1重量%、好ましくは0.01~0.5重量%、さらに好ましくは0.02~0.3重量%、
・任意選択で、少なくとも1種の酸化防止剤f1)、さらに好ましくはホスファイトまたはホスホナイト系酸化防止剤0.05~1.5%、好ましくは0.2~1%。
・任意選択で、少なくとも1種のラジカル消去剤f2)、さらに好ましくは立体障害フェノールに基づくラジカル消去剤0.05~1.5%、好ましくは0.2~1%を含む。
【0050】
コーティング組成物は、好ましくは、コーティング組成物の固形分の総量に基づいて、ポリオールa)、架橋剤b)、触媒c)、三級酸d)、および存在する場合、錯化剤e)、酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)の総量を20~100重量%含む。
【0051】
架橋性組成物は、ポリオールa)と触媒c)および/または三級酸d)とを混合してバインダーモジュールを形成すること、ならびに、上記バインダーモジュールと架橋剤b)とを混合することを含むプロセスにより好適に調製することができる。錯化剤e)は別個に加えることができるか、好ましくはバインダーモジュールに加えられる。酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)は、別個に加えることができるか、好ましくはバインダーモジュールに加えることができる。
【0052】
ヒドロキシル官能性バインダーおよびイソシアナート官能性架橋剤を含む架橋性組成物では通常のように、本発明による組成物のポットライフ(貯蔵寿命)は限られている。したがって、組成物は、多成分組成物として、例えば2成分組成物または3成分組成物として好適に提供され、ポリオールa)および架橋剤b)は少なくとも2つの異なる成分のパーツである。したがって、本発明はまた、架橋性組成物を調製するためのパーツキットであって、
i.少なくとも1種のポリオールa)および少なくとも1種の三級酸d)、ならびに任意選択で少なくとも1種の触媒c)および/または錯化剤e)および/または酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)を含むバインダーモジュール、
ii.少なくとも1種のポリイソシアナート架橋剤b)を含む架橋剤モジュールを含むパーツキットに関する。
【0053】
あるいは、パーツキットは、
i.ポリオールa)を含むバインダーモジュール、
ii.架橋剤b)を含む架橋剤モジュール、および
iii.揮発性有機希釈剤を含む希釈剤モジュールを含む3つの成分を含んでもよく、
触媒c)、および/または1種以上の三級酸d)、ならびに任意選択で1種以上の成分e)および任意選択で1種以上の酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)は、モジュールi)、ii)またはiii)に分配され、モジュールのうちの少なくとも1種は触媒c)を含み、モジュールのうちの少なくとも1種は三級酸d)を含む。
【0054】
架橋性組成物の他の成分は、モジュールが必要な貯蔵安定性を示す限り、上記のように様々な方法でモジュールに分配されてもよい。貯蔵時に互いに反応する架橋性組成物の成分は、好ましくは1つのモジュールに組み合わされない。所望であれば、コーティング組成物の成分は、さらに多くのモジュール、例えば4つまたは5つのモジュールに分配されてもよい。
【0055】
本発明はまた、上記のように、ポリオールa)および少なくとも1種の三級酸d)、ならびに任意選択で少なくとも1種の錯化剤e)、および任意選択で少なくとも1種の酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)を含むバインダーモジュールに関する。バインダーモジュールは、好ましくは少なくとも1種の酸化防止剤f1)、特に少なくとも1種のホスファイトまたはホスホナイト系酸化防止剤および/または好ましくは立体障害フェノールに基づくタイプの1種のラジカル消去剤f2)を含有する。
【0056】
バインダーモジュールは、好ましくは、
ポリオールa)、三級酸d)、ならびに存在する場合、触媒c)、錯化剤e)および/または酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)の総量に基づいて、
・ポリオールa)30~95重量%、好ましくは40~85重量%、さらに好ましくは50~80重量%、
・任意選択で、触媒c)0.001~10重量%、好ましくは0.002~5重量%、さらに好ましくは0.005~1重量%、
・三級酸d)0.05~12重量%、好ましくは0.1~6重量%、さらに好ましくは0.2~3.0重量%、および
・任意選択で、錯化剤e)0.001~1重量%、好ましくは0.01~0.7重量%、さらに好ましくは0.02~0.5重量%、
・任意選択で、少なくとも1種の酸化防止剤f1)、さらに好ましくはホスファイトまたはホスホナイト系酸化防止剤0.1~3%、好ましくは0.3~2%、
・任意選択で、少なくとも1種のラジカル消去剤f2)、さらに好ましくは立体障害フェノールに基づくタイプのラジカル消去剤0.1~3%、好ましくは0.3~2%を含む。
【0057】
本発明の架橋性組成物は、任意の基材に適用(塗布)することができる。基材は、例えば、金属、例えば、鉄、鋼、ブリキおよびアルミニウム、プラスチック、木材、ガラス、合成材料、紙、革、コンクリートまたは別のコーティング層であり得る。他のコーティング層は、本発明のコーティング組成物から構成することができるか、例えば溶剤系または水性ベースコートまたはプライマーなどの異なるコーティング組成物であり得る。このプライマーは任意のプライマーであり得るが、当業者であれば、多くの場合、エポキシ系またはポリウレタン系のプライマーが様々な応用分野で使用されることが多いことを知っている。本発明のコーティング組成物は、クリアコート、ベースコート、着色トップコート、プライマーおよびフィラーとして特定の有用性を示す。
【0058】
本発明による架橋性組成物は、車両補修剤または自動車OEM用のクリアコートとしての使用に非常に適している。クリアコートは本質的に顔料を含まず、可視光に対して透明である。しかし、クリアコート組成物は、コーティングの光沢レベルを制御するために、艶消し剤、例えばシリカベースの艶消し剤を含んでもよい。
【0059】
本発明の架橋性組成物がクリアコートである場合、好ましくは、色および/または効果を付与するベースコート上に適用(塗布)される。その場合、クリアコートは、典型的には自動車の外部または内部に適用されるような多層ラッカーコーティングの最上層を形成する。ベースコートは、水系ベースコートまたは溶剤系ベースコートであってよい。本発明の架橋性組成物はまた、橋、パイプライン、工業プラントもしくは建物、石油およびガス設備、または船舶などの物体を被覆する保護コーティング用の着色トップコートとしても適している。組成物は、自動車、ならびに電車、トラック、バスおよび飛行機などの大型輸送車両の仕上げおよび補修に特に適している。また、本発明の架橋性組成物は、床材用途に使用することができる。一般に、本発明の架橋性組成物は、スプレー、例えば、空気圧スプレー、静電スプレー、エアレススプレーもしくはエアミックススプレー、ブラッシング、ドローダウン、注入、キャスティング、または組成物を基材に移す任意の他の方法によって適用することができる。
【0060】
したがって、本発明はまた、コーティング、好ましくは物体の少なくとも一部、例えば輸送車両の表面にコーティングを提供する方法に関し、該方法は、物体の少なくとも一部、例えば輸送車両の外面に本発明によるコーティング組成物を適用(塗布)する工程と、通常5~180℃、好ましくは5~150℃、さらに好ましくは5~100℃の温度範囲で、適用されたコーティング組成物を硬化させる工程とを含む。硬化工程は、有利には、中程度の温度、例えば60~80℃、または40℃以下の温度もしくは周囲温度で実施することができる。本発明の架橋性組成物は、例えば、接着剤、複合材料、シーラントおよびインクなどの非コーティング用途にも同様に使用することができる。
【実施例
【0061】

ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシエチルアクリラート、ブチルアクリラート、イソボルニルメタクリラートおよびスチレンの混合物の重合からポリアクリラートポリオール(樹脂A)を調製した。樹脂Aは、135mg KOH/gのヒドロキシル価(不揮発分)、1mg KOH/gの酸価(不揮発分)、M 3,100およびM 1,650(GPC、ポリスチレン標準)を有した。ポリアクリラートポリオールを酢酸ブチルに溶解し、不揮発分が74重量%の溶液を得た。
【0062】
SETATHANE(登録商標)D 1150は、allnexが提供するヒマシ油系ポリオールであり、ヒドロキシル価は155mg KOH/g、酸価は<2mg KOH/gである。
TINUVIN(登録商標)292は、2つの活性三級アミン成分、すなわち、ビス(1,2,3,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバカートおよびメチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバカートの混合物である。TINUVIN(登録商標)1130は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
TOLONATE(登録商標)HDT-LVは、ヘキサメチレンジイソシアナート系三量体である。
NOURACID(登録商標)LE80は亜麻仁油脂肪酸である。
FINMA-SORB(登録商標)430は、Finma Chemie GmbHが提供するモレキュラーシーブである。
Barytes EWO:Sachtleben Chemie GmbHが提供する硫酸バリウム増量剤である。
R-KB-2は、Sachtleben Chemie GmbHが提供するSachtleben R-KB-2顔料(二酸化チタン)である。
DBTLは、TINSTAB(登録商標)BL277の名称の下に市販されているジブチルスズジラウラート系触媒である。
二塩基エステルは、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびアジピン酸ジメチルの混合物である。
SOLVESSO(登録商標)100は、ExxonMobil Chemicalsから購入した芳香族炭化水素、C9の混合物である。
BYK(登録商標)315Nは、ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサンの2-フェノキシエタノールおよび2-メトキシ-1-メチルエチルアセタート溶液である。
BYK(登録商標)A501は、シリコーンを含まない泡破壊ポリマーの溶液である。
BYK(登録商標)A530は、泡破壊ポリマーおよびポリシロキサンの溶液である。
LANKROMARK(商標)LE527は、トリスアルキルホスファイト系酸化防止剤である。
【0063】
タックフリー乾燥時間を以下のように決定した:人工気象環境(climatized environment)(22℃、相対湿度60%)では、乾燥中のコーティング上に綿球を置き、1kgの重量を10秒間綿球上に置き、重量を除去し、綿球を吹き飛ばした。架橋性組成物を適用した後、時間の関数としてこの手順を繰り返した。綿球が何の跡も残さなかった場合、コーティングはタックフリー(粘着性無し)であるとした。この時間をタックフリー時間として記録した。
【0064】
ポットライフおよび作業時間を決定するために、DIN 53211に従ってDINフローカップ4を用いてスプレー前の反応中の塗料の粘度を時間内に測定した。これを秒単位で示す。作業時間(+2)は、初期粘度に対して粘度が2秒増加するまでに要した時間である。作業時間(+4)は、初期粘度に対して粘度が4秒増加するまでに要した時間である。ポットライフは、粘度が初期粘度の2倍になるまでに要した時間である。
【0065】
23°Cおよび相対湿度55+/-5%の人工気象室(climatized room)でペルソ硬度を測定した。ASTM D 4366に記載されているように、振子(acc.Persoz)を用いて硬度を測定した。
【0066】
ISO 868 2003に従ってショアD硬度を決定した。
【0067】
例1~4ならびに比較例C1およびC2
表1に示すように2つの成分を調製し、次いでそれらを混合することにより、クリアコート配合物を調製した。量はグラム単位で示す。各組成物について、NCO/OH比は1.1で一定に保ち、DBTL触媒のレベルは全配合物について全樹脂固形分(樹脂A+イソシアナート成分の不揮発分)に対して0.075%であった。4つの三級酸を試験し(例1~4)、いずれも等しいモルレベルおよび等しいモル濃度で、一級酸および共役酸(例C1およびC2)と比較した。
【0068】
等しい乾燥層厚でドローダウン適用(塗布)によりガラス上に配合物を適用し、室温で乾燥させた。タックフリー時間を決定した。ポットライフおよび作業時間と同様に、1日室温後のペルソ硬度を測定した。
【表1】
【0069】
結果を表2に示す。ポットライフ-乾燥比は、上記で指定されているように測定されたポットライフとタックフリー時間との比である。
【0070】
データは、本発明による組成物が、比較例C1の組成物と比較して、はるかに改善されたポットライフ-乾燥比、作業時間および初期硬度を示すことを明らかに実証している。さらに、本発明による組成物は、比較例C2の組成物と比較して、同様のまたは改善された作業時間および同様のまたは改善された初期硬度とともに、非常に改善されたポットライフ-乾燥比を示す。結論として、表2のデータは、本発明による組成物が顕著な改良物であり、良好なバランスの取れたコーティングをもたらすことを示している。
【表2】
【0071】
例5および6ならびに比較例C3およびC4
上記の例と同様に、三級酸に加えて、錯化剤e)としてC-(CHOC(=O)CHCHSH)も含む組成物を調製した。表3に示すように、クリアコート配合物を調製した。NCO/OH比は1.1で一定に保ち、DBTL触媒のレベルは全配合物について全樹脂固形分(樹脂A+イソシアナート成分)に対して0.15%であった。4つの三級酸を試験し(例5~6)、いずれも等しいモルレベルおよび等しいモル濃度で、一級酸および共役酸(例C3およびC4)と比較した。等しい乾燥層厚でドローダウン適用によりガラス上に配合物を適用し、室温で乾燥させた。タックフリー時間を決定し、30分60°C硬化の1時間後にペルソ硬度を測定した。さらに、作業時間(+2)および作業時間(+4)を決定した。
【表3】
【0072】
結果を表4に示す。作業時間(+4)/乾燥時間比は、上記で指定されているように測定された作業時間(+4)とタックフリー時間との比である。
【0073】
データは、本発明による組成物が、比較例C3と比較して、はるかに改善された作業時間および初期硬度を示すことを明らかに実証している。さらに、本発明による組成物は、比較例C4と比較して、非常に改善された作業時間(+4)-乾燥時間比、改善された作業時間および同様の初期硬度を示す。結論として、表4のデータは、本発明による例が顕著な改良物であり、良好なバランスの取れたコーティングをもたらすことを示している。
【表4】
【0074】
例7および8ならびに比較例C5~C7
比較例C5~C7および例7~8は、本発明による組成物が着色系および他の用途にも有益であることを実証している。表5の成分1の全成分を一緒に加え、粒径が<10μmになるまで粉砕した。混合物を真空下に置いて脱気した。成分2を加え、混合し、硬化性混合物を注ぎ、平らにした。ショア硬度を決定し、外観を視覚的に判定した。
【表5】
【0075】
床材用途などの一部の用途では、比較的高い蒸気圧、ほぼゼロのVOCおよび臭いという要件のために、酢酸などの低分子量酸の使用は望ましくない。したがって、比較例として、はるかに高い沸点を有する他の酸を試験した。ここでも、表6のデータは、本発明の三級酸の使用によって、一級酸または二級酸を含有する比較例と比較して、はるかに良好なバランスのとれたコーティング、すなわち、より高いショアD硬度および優れた外観が得られたことを示している。
【表6】
【0076】
例9
410.3gの樹脂A、6.14gのC-(CHOC(=O)CHCHSH)の10重量%酢酸ブチル溶液、28.01gの2,2-ジメチルプロピオン酸の10重量%酢酸ブチル溶液、および1.97gの酸化防止剤LANKROMARK(商標)LE 527を混合することによって組成物(樹脂B)を調製した。
【0077】
次いで、この樹脂Bの50重量%を、表7に記載の成分1の他の成分とさらに混合し、次いで成分2と混合し、例5と同じ方法で試験した。t=0の結果を表8に示す。
【0078】
樹脂Bの残りの50重量%は、50℃の密閉容器内で1カ月保管し、その後、成分1の他の成分(表7)と混合し、次いで、成分2(表7)と混合し、同じ方法で試験した。t=0で樹脂Bについて得られた結果と比較して類似した結果が得られた。
【0079】
この例9は、本発明によるバインダーが安定であり、長期間保存した後でもその特性を維持することを示している。
【表7】

【表8】

なお、本発明に包含され得る諸態様または諸実施形態は、以下のとおり要約される。
[1].
架橋性組成物であって、
a)遊離-OH基を有する少なくとも1種のポリオール、
b)遊離-NCO基を有する少なくとも1種のポリイソシアナート架橋剤、
c)前記ポリオールa)の-OH基と前記架橋剤b)の-NCO基との間の反応を触媒するための少なくとも1種の触媒、
d)式RR’R’’CCOOH(I)(式中、R、R’およびR’’基のうちの2つまたは3つが結合して環構造を形成することができることを条件として、各R、R’およびR’’基は独立して、少なくとも1つの炭素原子を含むアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり、前記R、R’および/またはR’’基は置換可能であり、前記R、R’およびR’’基の炭素原子の総数は3~40の範囲である)の少なくとも1種の三級酸、ならびに
e)任意選択で、少なくとも1つの-SH基を含む少なくとも1種の錯化剤を含む架橋性組成物。
[2].
前記錯化剤e)が存在し、有機化合物から選択される、前記項目[1]に記載の架橋性組成物。
[3].
前記錯化剤e)が、式R-SH(II)(式中、Rは、例えば、ヒドロキシル基、一級、二級または三級アミン基、シランまたはシロキサン基、エーテル基、エステル基、カルボン酸基などの1つ以上の他の官能基で任意選択に置換されたアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキル基であり得る)のもの、式HS-(CH -SH(IV)(式中、xは1~20である)のもの、式(HSCH 4-m C(CH SCH CH SH) (V)(式中、mは1~4である)のもの、式HS(CH COOH(VI)(式中、nは1~20である)のカルボン酸と2以上のOH官能価を有するポリオールとの反応生成物であるもの、およびそれらの混合物から選択される、前記項目[2]に記載の架橋用組成物。
[4].
前記触媒c)が金属系触媒、好ましくは、金属がスズ、ビスマス、亜鉛、ジルコニウムもしくはアルミニウムまたはそれらの混合物から選択される金属系触媒を含む、前記項目[1]~[3]のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
[5].
前記触媒c)が、スズ(II)カルボキシラート、ジアルキルスズ(IV)カルボキシラート、ビスマスカルボキシラート、亜鉛カルボキシラート、アルミニウムカルボキシラートから、好ましくはジアルキルスズジカルボキシラート、ビスマスカルボキシラート、亜鉛カルボキシラートから、さらに好ましくはジブチルスズジラウラート、ジオクチルスズジラウラート、亜鉛2-エチルヘキサノアートおよびそれらの混合物から選択される、前記項目[4]に記載の架橋性組成物。
[6].
錯化剤e)の量が、前記金属系触媒c)からの金属1モル当量当たりの-SH基のモル当量が、金属1当量当たり1~20モル当量のSHの範囲にあるような量である、前記項目[1]~[5]のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
[7].
前記三級酸d)が一般式RR’R’’CCOOH(I)(式中、前記R、R’およびR’’基の炭素原子の総数は3~30の範囲である)を有する、前記項目[1]~[6]のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
[8].
前記三級酸d)が一般式RR’R’’CCOOH(I)(式中、Rはメチルまたはエチル基であり、R’およびR’’基の炭素原子の総数は2~17であり、R’および/またはR’’が非置換であるか、1つのヒドロキシル基のみで置換されている)を有する、前記項目[7]に記載の架橋性組成物。
[9].
前記三級酸d)が、ネオデカン酸、バーサチック酸、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、アビエチン酸、1-メチルシクロヘキサン酸、ジメチルマロン酸、エチルメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2,2-ジメチルプロピオン酸、2,2-ジメチル酪酸、2-エチル-2-メチル酪酸、2,2-ジエチル酪酸、2,2-ジメチル吉草酸、2-エチル-2-メチル吉草酸、2,2-ジエチル吉草酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、2,2-ジエチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸、2-エチル-2,5-ジメチルヘキサン酸、3-メチルイソクエン酸、4,4-ジメチルアコニット酸、1-メチルシクロペンタンカルボン酸、1,2,2-トリメチル-1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1-メチルシクロヘキサンカルボン酸、2-メチルビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2-カルボン酸、2-メチル-7-オキサビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2-カルボン酸、1-アダマンタンカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸およびビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸またはそれらの混合物からなる群から選択される、前記項目[7]に記載の架橋性組成物。
[10].
前記組成物中の三級酸d)の量が、ポリオールa)1グラム当たり三級酸d)0.005~0.5mmolの範囲である、前記項目[1]~[9]のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
[11].
前記ポリオールa)が、ポリエステルポリオール、ポリアクリラートポリオール、ポリカーボナートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、メラミンポリオールならびにそれらの混合物およびハイブリッドから選択され、ポリオール1グラム当たり20~1,000mg KOHの範囲のヒドロキシル価と、ポリオール1グラム当たり15mg KOH以下の酸価とを有する、前記項目[1]~[10]のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
[12].
前記項目[1]~[11]のいずれか一項に記載の架橋性組成物であって、
ポリオールa)、架橋剤b)、触媒c)、三級酸d)、および存在する場合、錯化剤e)および/または酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)の総量に基づいて、
・ポリオールa)10~90重量%、
・ポリイソシアナート架橋剤b)10~90重量%、
・触媒c)0.001~10重量%
・三級酸d)0.001~10重量%、および
・任意選択で、錯化剤e)0.001~1重量%、
・任意選択で、酸化防止剤f1)0.05~1.5重量%、
・任意選択で、ラジカル消去剤f2)0.05~1.5重量%を含む架橋性組成物。
[13].
前記三級酸d)に加えて、三級酸の量の1~100モル%の範囲の一級酸および/または二級酸を含む、前記項目[1]~[12]のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
[14].
前記項目[1]~[13]のいずれか一項に記載の架橋性組成物を調製するためのパーツキットであって、
i.少なくとも1種のポリオールa)および少なくとも1種の三級酸d)、ならびに任意選択で少なくとも1種の触媒c)および/または錯化剤e)および/または酸化防止剤f1)および/またはラジカル消去剤f2)を含むバインダーモジュール、ならびに
ii.少なくとも1種のポリイソシアナート架橋剤b)を含む架橋剤モジュールを含むパーツキット。
[15].
前記項目[1]~[13]のいずれか一項に記載の、少なくとも1種のポリオールa)および少なくとも1種の三級酸d)、ならびに任意選択で少なくとも1種の錯化剤e)、少なくとも1種の酸化防止剤f1)および/または少なくとも1種のラジカル消去剤f2)を含むバインダーモジュール。
[16].
前記項目[1]~[13]のいずれか一項に記載の架橋性組成物を物体の少なくとも一部、好ましくは輸送車両の表面に適用する工程、および、前記適用された組成物を好ましくは5~180°Cの範囲の温度で硬化させる工程を含む、コーティングを提供する方法。