(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】空気中微粒子付着防止用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20231219BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20231219BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20231219BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231219BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20231219BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231219BHJP
A61K 9/18 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231219BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20231219BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20231219BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20231219BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/89
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/41
A61Q19/00
A61K9/18
A61K47/32
A61K47/06
A61K47/14
A61K47/44
A61K47/18
A61K9/12
A61K9/08
(21)【出願番号】P 2020531193
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2019024652
(87)【国際公開番号】W WO2020017232
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2018136830
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 和之
(72)【発明者】
【氏名】有野 翔子
(72)【発明者】
【氏名】白神 裕人
(72)【発明者】
【氏名】堀本 真記
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-008867(JP,A)
【文献】特開2006-002147(JP,A)
【文献】特開2016-190820(JP,A)
【文献】特開2013-082687(JP,A)
【文献】特開2012-193172(JP,A)
【文献】特開2018-012673(JP,A)
【文献】特開平09-165317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)2-(メタ)アクリロイロキシ
エチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸
ブチルエステル共重合体、
(B)
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、及び
(C)炭化水素油、エステル油、シリコーン油から選択される1種以上の油分、
を含み、
(B)
塩化ジステアリルジメチルアンモニウムの配合量が組成物全量中に0.001~0.1質量%である、空気中微粒子付着防止用組成物。
【請求項2】
(C)油分のIOBが0.55以下である、請求項1に記載の空気中微粒子付着防止用組成物。
【請求項3】
(C)油分がジメチコン(IOB=0.19)、ミネラルオイル(IOB=0.00)、エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、ジピバリン酸PPG-3(IOB=0.52)からなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の空気中微粒子付着防止用組成物。
【請求項4】
空気中微粒子が、花粉、ハウスダスト、インフルエンザウイルス、PM2.5からなる群から選択される少なくとも1種の空気中に浮遊している有害物質である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の空気中微粒子付着防止用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中微粒子付着防止用組成物に関する。より詳しくは、花粉、ウイルス、PM2.5等の空気中に浮遊している有害物質が衣類、肌、毛髪等に付着するのを抑制する空気中微粒子付着防止用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
花粉等のアレルゲン、インフルエンザウイルス等のウイルス、及びPM2.5や黄砂等の粒子状物質といった空気中に浮遊している微粒子(空気中微粒子)は、人体に接触又は取り込まれることで様々な健康被害をもたらす。例えば、花粉やハウスダスト等のアレルゲンは、種々のアレルギー症状を引き起こし、インフルエンザ等のウイルスは感染症を引き起こす恐れがある。また、物の燃焼などによって排出される粒径2.5μm以下の粒子状物質(いわゆるPM2.5)が呼吸器系疾患、循環器系疾患を誘発するとの報告もある。
【0003】
空気中微粒子から身体を守る手段としては、空気中微粒子をマスクや空気清浄機などで物理的に遮断又は除去することが一般的であるが、近年では、空気中微粒子の多くが帯電していることを利用して、帯電防止剤を配合した組成物を衣類や毛髪等に適用し、静電気を積極的に除去することで空気中微粒子の付着を抑制することが提案されている。
【0004】
例えば、特開2004-068174号公報(特許文献1)には、特定範囲の分子量および表面張力を示す、ホスホリルコリン類似基含有重合体またはポリアルキレングリコール誘導体の重合体を含有する繊維刺激抑制剤が記載されている。この重合体を含む繊維刺激抑制剤で繊維を処理することにより、花粉やダニ等に由来するアレルゲン物質によるアレルギー反応を低減できるとされている。
【0005】
一方、特開2006-2147号公報(特許文献2)には、特定の両性イオン基を有するモノマーユニットおよび/または特定のアニオン基を有するモノマーユニットを構成単位として含むポリマーが、毛髪や衣服等に対する花粉の吸着を防止する作用・効果を有することが記載されている。このポリマーは、衣類やふとん等の繊維以外に、毛髪等に対しても噴霧・塗布できるとされている。ポリマーの具体例として、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸ブチルエステル共重合体が挙げられており、このポリマーを水やエタノール等と混合し、ローションやスプレーとすることが示されている。
【0006】
特許文献2に記載のポリマーは、衣類のほか、毛髪等にも安全に直接適用できることから、皮膚を対象とした化粧料等に応用することが考えられる。ところが、特許文献2に記載のポリマーを含む製剤に油分を配合すると、花粉等の空気中微粒子の付着防止効果が低下してしまうことが本発明者により確認されている。
油分はそれ自体で保湿効果を有するほか、油溶性紫外線吸収剤等の油溶性薬剤を安定に溶解することができる。このため、油分を配合できれば保湿能や紫外線防御能など様々な機能を付与することが可能になる。
【0007】
かくして、特許文献2に記載されるポリマーを含む組成物において、空気中微粒子の付着防止効果を低下させることなく、十分な量の油分を配合可能にする手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-68174号公報
【文献】特開2006-2147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、帯電防止剤として特許文献2に記載されるポリマー、すなわち2-(メタ)アクリロイロキシアルキルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を含有する組成物において、十分な量の油分を配合しても空気中微粒子の付着防止効果が低下しない組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、所定の陽イオン界面活性剤と所定の油分を配合することにより、2-(メタ)アクリロイロキシアルキルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を含有する組成物において、空気中微粒子の付着防止効果を低下させることなく十分な量の油分を配合できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(A)2-(メタ)アクリロイロキシアルキルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、
(B)以下の式(I)で示されるジ長鎖型カチオン界面活性剤:
【化1】
[式(I)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素原子数が12~22で、二重結合を0~3個有するアルキル基を表し;R
2は、それぞれ独立に、炭素原子数が1~3で、二重結合をもたないアルキル基を表し;Yはハロゲン原子、メトサルフェート、またはメトホスフェートを表す]、及び
(C)炭化水素油、エステル油、シリコーン油から選択される1種以上の油分、
を含む、空気中微粒子付着防止用組成物を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、帯電防止剤として2-(メタ)アクリロイロキシアルキルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を含有する組成物において、ジ長鎖型カチオン界面活性剤と特定の油分とを配合することにより、空気中微粒子の付着防止効果を低下させることなく十分な量の油分を配合することができる。
これにより、組成物に油分そのものが有する保湿効果を付加できるほか、油溶性薬剤の安定配合が可能になるため、種々の機能を組成物に付与できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の空気中微粒子付着防止用組成物は、(A)2-(メタ)アクリロイロキシアルキルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、(B)ジ長鎖型カチオン界面活性剤、及び(C)所定の油分を必須に含む。以下、本発明の組成物を構成する各成分について詳述する。
【0014】
<(A)2-(メタ)アクリロイロキシアルキルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体>
本発明に係る組成物に配合される(A)2-(メタ)アクリロイロキシアルキルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)は、上記特許文献2において花粉吸着防止効果を有するとされているポリマーの一態様に該当する。
(A)成分は、2-(メタ)アクリロイロキシアルキルホスホリルコリンからなるモノマーユニットと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなるモノマーユニットの共重合体であり、「アルキル」は炭素数1~6の低級アルキルである。また、(A)成分の重量平均分子量は50万~80万が好ましく、60万~70万がさらに好ましい。
(A)成分の好適な例としては、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸ブチルエステル共重合体を挙げることができる。市販品を使用することもでき、例えば「Lipidure-PMB」(日本油脂(株)製)等を使用できる。
【0015】
(A)成分の配合量は、組成物全量中に0.01~5.0質量、好ましくは0.05~3.0質量%である。0.01質量%未満では、十分な空気中微粒子の付着防止効果が得られない場合がある。一方、5.0質量%超では揮発に時間がかかるほか、乾燥時の感触にべたつきが出る場合があるため好ましくない。(A)成分として、上記2-(メタ)アクリロイロキシアルキルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
<(B)ジ長鎖型カチオン界面活性剤>
本発明に係る組成物に配合される(B)ジ長鎖型カチオン界面活性剤(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、下記式(I)で表されるジ長鎖型カチオン界面活性剤が好ましく用いられる。
【化2】
式(I)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素原子数が12~22で、二重結合を0~3個有するアルキル基を表し;R
2は、それぞれ独立に、炭素原子数が1~3で、二重結合をもたないアルキル基を表し;Yはハロゲン原子、メトサルフェート、またはメトホスフェートを表す。
【0017】
上記式(I)で表されるジ長鎖型カチオン界面活性剤としては、限定するものではないが、例えば、塩化ジベヘニルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(市販品として「カチオンDSV」(三洋化成工業(株)製)など)、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジセトステアリルジメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジベヘニルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジセチルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジセトステアリルジメチルアンモニウムメトサルフェート等が挙げられる。なかでも、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムが好ましく用いられる。
【0018】
(B)成分の配合量は、組成物全量中に0.001~0.1質量、好ましくは0.005~0.05質量%である。0.001質量%未満では、油分を配合した際に空気中微粒子の付着防止効果の低下を十分に抑えることができない場合がある。一方、0.1質量%超ではべたつきを生じて空気中微粒子が却って付着しやすくなる場合があり、好ましくない。(B)成分として、上記ジ長鎖型カチオン界面活性剤の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
<(C)油分>
本発明に係る組成物に配合される(C)油分(以下、単に「(C)成分」と称する場合がある)は、炭化水素油、エステル油、シリコーン油から選択される1種以上の油分である。
【0020】
炭化水素油としては、例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、イソパラフィン、流動パラフィン(ミネラルオイル)、オゾケライト、スクワラン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0021】
エステル油としては、例えば、エチルヘキサン酸セチル、トリエチルヘキサノイン、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジピバリン酸PPG-3、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、トリイソステアリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、オレイン酸オレイル、アジピン酸ジイソブチル、パルミチン酸ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ホホバ油、マカデミアナッツ油等が挙げられる。
【0022】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等)、環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)等が挙げられる。
【0023】
上記の中でも、(C)油分として、特にIOBが0.55以下の油分が好ましく、より好ましくはIOBが0.52以下である。
ここで、IOBとは有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比(Inorganic Organic Balance)であり、「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。有機概念図とは、すべての有機化合物の根源をメタン(CH4)とし、他の化合物はすべてメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値、無機性値を求め、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである(「有機概念図-基礎と応用-」(甲田善生著、三共出版、1984)参照)。
【0024】
(C)成分として特に好ましい油分としては、例えば、ジメチコン(IOB=0.19)、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(IOB=0.16)、ミネラルオイル(IOB=0.00)、植物性スクワラン(IOB=0.00)、エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、トリエチルヘキサノイン(IOB=0.35)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.35)、水添ポリイソブテン(IOB=0.00)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.25)、トリイソステアリン(IOB=0.16)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB=0.28)、コハク酸ジ2-エチルヘキシル(IOB=0.32)、ジピバリン酸PPG-3(IOB=0.52)等を挙げることができる。
なかでも特に好ましいのは、ジメチコン(IOB=0.19)、ミネラルオイル(IOB=0.00)、エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、ジピバリン酸PPG-3(IOB=0.52)である。
【0025】
(C)成分の配合量は、組成物全量中に0.01~1質量%、好ましくは0.05~0.5質量%である。0.01質量%未満では、種々の油溶性薬剤を安定に溶解できないなど油分配合による効果が得られない場合があり、一方、1質量%超ではべたつきを生じて空気中微粒子が却って付着しやすくなる場合があり好ましくない。(C)成分として、上記油分の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
<その他の配合可能な成分>
本発明の空気中微粒子付着防止用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、さらに、各種溶媒、界面活性剤、油溶性薬剤、紫外線吸収剤、高級アルコール、増粘剤、精油、保湿剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、pH調整剤、香料、防腐剤、噴射剤等を配合してもよい。
【0027】
溶媒としては、例えば、水、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール類、低沸点鎖状シリコーン油、環状シリコーン油、低沸点イソパラフィン系炭化水素油などの揮発性油等を挙げることができる。
【0028】
界面活性剤としては、例えば、従来から水中油型乳化化粧料に使用されている非イオン性界面活性剤から選択される1種又は2種以上を使用でき、特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の具体例としては、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-25水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油等が挙げられる。
【0029】
油溶性薬剤としては、例えば油溶性の、美白剤、保湿剤、抗炎症剤、抗菌剤、ホルモン剤、ビタミン類、各種アミノ酸およびその誘導体や酵素、抗酸化剤、育毛剤、紫外線吸収剤などの薬剤成分が挙げられる。具体的には、ビタミンA(=レチノール)およびその誘導体(例えば、レチノールアセテート、レチノールパルミテート等)、ビタミンB2誘導体(例えば、リボフラビン酢酸エステル等)、ビタミンB6誘導体(例えば、ピリドキシンジカプリレート、ピリドキシンジパルミテート、ピリドキシンジラウリレート等)、ビタミンD(=カルシフェロール)およびその誘導体(例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェノール等)、ビタミンE(=トコフェロール)およびその誘導体〔例えば、ビタミンEアセテート(=酢酸トコフェロール)等〕、必須脂肪酸〔例えば、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、およびこれらを含有する植物抽出エキス(例えばハクシニンなど)等〕、ユビキノン(=補酵素Q10)およびその誘導体、ビタミンK類(例えば、フィロキノン、メナキノン、メナジオン等)、レゾルシン誘導体(例えば、4-アルキルレゾルシノール誘導体および/またはその塩等)、グリチルレチン酸およびその誘導体(例えば、グリチルレチン酸ステアリル等)、油溶性のビタミンC誘導体〔例えば、ビタミンCジパルミテート(=ジパルミチン酸アスコビル)、ステアリン酸アスコルビル等〕、ステロイド化合物(例えば、女性ホルモンや男性ホルモン等)、ニコチン酸ベンジル(育毛剤成分)、トリクロロカルバニリド(殺菌剤成分)、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル(防腐剤成分)、γ-オリザノール(抗酸化剤成分)、ジブチルヒドロキシトルエン(抗酸化剤成分)、紫外線吸収剤としてオクチルメトキシシンナメート、4-(1,1-ジメチルエチル)-4’-メトキシベンゾイルメタン、およびオクトクリレン等が挙げられる。ただしこれらの例示に限定されるものでない。油溶性薬剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0030】
<空気中微粒子付着防止用組成物>
本発明の空気中微粒子付着防止用組成物は、水中油型乳化化粧料の形態で提供することが可能である。具体的な剤型としては、スプレー、ローション等、任意の剤型とすることができ、各剤型に適した常法を用いて製造することができる。
【0031】
本発明の空気中微粒子付着防止用組成物は、所望の対象表面に 噴霧・塗布して付着させることで効果を発揮する。例えば、顔や毛髪を含む体の一部、あるいは衣服やハンカチ、マスク等の携帯品等に付着させることができる。
【0032】
本発明の空気中微粒子付着防止用組成物は、適用した部位から静電気を積極的に除去することで空気中微粒子の付着を抑制する。付着を防止できる空気中微粒子としては、空気中に浮遊している有害物質全般であり、特に限定されるものではないが、例えば、花粉、ハウスダスト等のアレルゲン、インフルエンザウイルス等のウイルス、PM2.5、黄砂、アスベスト等の粒子状物質が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
【0034】
<実験例1~4>
以下の表1に掲げた組成を有するローションを常法に従って調製し、下記評価方法に従って花粉付着防止効果を調べた。評価結果を表1に併せて示す。
【0035】
<花粉付着防止効果>
空気中微粒子として擬似花粉である石松子(ヒカゲノカズラの胞子)を用い、塩化ビニルシートに対する石松子の付着をどの程度防止できるかを、以下のように評価した。
(i)試験片の作成
塩化ビニルシート(1.5cm×4.5cm)を準備し、糸に吊したクリップで挟む。塩化ビニルシートを各実験例のサンプル液に浸した後に、室温で1時間風乾させる。
(ii)花粉付着試験
100mlスクリュー管に、石松子を20mg入れる。スクリュー管の蓋に試験片を繋いでいる糸を固定し、試験片がスクリュー管の内壁に接触しないように注意しながら蓋を閉める。スクリュー管の蓋を持ち、ボルテックスミキサー(品番「SI-0286」(サイエンティフィックインダストリーズ社):回転数1000rpm)の中心に垂直にスクリュー管を立てて、10秒間振とうする。花粉が付着した量を目視により確認し、水とエタノールのみを含む対照(表1では実験例1、表2では実験例5)と比較して、以下の基準で判定した。
(iii)判定基準
A:対照より大幅に花粉の付着が少ない
B:対照よりやや花粉の付着が少ない
C:対照と花粉の付着が同等
D:対照より花粉の付着が多い
本発明においては、評価A又はBの場合に、花粉付着防止効果の低下が十分に抑制されたと判断して「合格」とし、それ以外は「不合格」とした。
【0036】
【0037】
表1に示されるように、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸ブチルエステル共重合体を配合しない場合(実験例1)に比べて、この共重合体を配合した場合に花粉付着防止効果が大幅に向上した(実験例2)。これに油分を配合することにより花粉付着防止効果は著しく損なわれたが(実験例3)、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムの配合により十分な花粉付着防止効果を保持することができた(実験例4)。
【0038】
<実験例5~13>
以下の表2に掲げた組成を有するローションを常法に従って調製し、上記評価方法に従って花粉付着防止効果を調べた。なお、エタノールを減量したことに伴って、試験片を作成する際の風乾時間を3時間とした。評価結果を表2に併せて示す。
【0039】
【0040】
表2に示されるように、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムを配合することにより十分な花粉付着防止効果を保持することができたが(実験例8)、化粧品に汎用される他の界面活性剤を用いた場合には、油分配合による花粉付着防止効果の低下を抑制することができなかった(実験例11~13)。また、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム自体にも帯電防止効果があることは知られているが、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸ブチルエステル共重合体を含まない場合には花粉付着防止効果は得られなかった(実験例9)。
【0041】
<実験例14~19>
(B)ジ長鎖型カチオン界面活性剤以外の陽イオン界面活性剤の効果を調べるために、以下の表3に掲げた組成を有するローションを常法に従って調製し、上記花粉付着防止効果の評価方法と同様に(i)試験片の作成及び(ii)花粉付着試験を行い、陽イオン界面活性剤を配合しない対照(実験例14)と比較した花粉付着量の変化を目視により確認し、以下の基準で判定した。
(iii)判定基準
A:花粉付着量が明らかに減少した
B:花粉付着量にほとんど変化が認められなかった
C:花粉付着量が却って増加した
【0042】
【0043】
表3に示されるように、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムを配合することにより花粉付着量は明らかに減少したが(実験例15)、化粧品に汎用される他の陽イオン界面活性剤を用いた場合には、花粉付着量を減少できなかった(実験例16~19)。
【0044】
<実験例20~25>
配合する油分の種類を変えて以下の表4に掲げた組成を有するローションを常法に従って調製し、上記評価方法に従って、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムの有無による花粉付着量の変化を調べた。評価結果を表4に併せて示す。
【0045】
【0046】
表4に示されるように、炭化水素油、エステル油、シリコーン油のいずれかを用いた場合には、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムを配合することによって花粉付着量を減少できることが確認された(実験例21、23、25)。