(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】密封容器に係合するガス分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/22 20060101AFI20231219BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01N1/22 V
G01N1/00 101S
(21)【出願番号】P 2020560393
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 US2019068254
(87)【国際公開番号】W WO2020171888
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102019000002491
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514062242
【氏名又は名称】クラフト・フーズ・グループ・ブランズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100221899
【氏名又は名称】高倉 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】グース ルエブ
(72)【発明者】
【氏名】サラ サントナスターソ
(72)【発明者】
【氏名】マリア ロサ ヴィオラ ジーノ
(72)【発明者】
【氏名】パオラ スキアッタレーラ
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第03439778(DE,A1)
【文献】米国特許第04282182(US,A)
【文献】特開平02-032240(JP,A)
【文献】特開2014-044135(JP,A)
【文献】米国特許第03849070(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封容器と係合して前記密封容器からガスを引き出して分析するガス分析システムであって、前記システムは、
開口部を形成して前記密封容器からガスを引き出し可能にするように構成される貫通具と、
前記貫通具に動作可能に結合されて前記容器からガスを受け取るチャンバと、
ガス分析器と、
前記貫通具が前記容器内に開口部を形成した後に、前記容器に係合して前記システムに前記チャンバ及び前記容器の内部を含む密閉容積の維持を可能にするように構成され吸盤を含むシールと、
前記容器から前記チャンバへ、及びその後前記チャンバから前記ガス分析器へのガスの流れをもたらす機構であって、前記機構は、前記貫通具に動作可能に結合される第1の弁及び前記ガス分析器に接続するように構成される接続パイプを備える、前記機構と、を備え、
前記第1の弁が、前記容器から前記チャンバへのガスの流れを可能にして前記密閉容積からのガスの漏出又は汚染を防止する第1の位置と、前記チャンバから前記接続パイプ及び前記ガス分析器へのガスの流れを可能にする第2の位置との間で移動可能であ
り、
前記機構がシリンジを更に備え、前記チャンバが前記シリンジのバレルを備える、ガス分析システム。
【請求項2】
前記貫通具が貫通孔パンチを含む、請求項1に記載のガス分析システム。
【請求項3】
前記貫通具が容器の金属閉鎖部を貫通するように構成される、請求項1又は2に記載のガス分析システム。
【請求項4】
請求項1に記載の前記ガス分析システムを使用して前記容器内の前記ガスを分析する方法であって、
前記容器の表面上に前記シールを置くステップと、
前記貫通具で前記表面を穿孔するステップと、
前記容器から前記ガスの試料を引き出し、前記チャンバに前記試料の少なくとも一部の流れをもたらすステップと、
前記試料を希釈ガスで希釈するステップと、
前記試料の少なくとも一部を前記チャンバから前記ガス分析器に移送するステップと、を含む方法。
【請求項5】
前記容器内の生成物の温度を測定するステップを更に含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
熱電対を使用することで前記生成物の前記温度を測定するステップを達成する、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
総ガス体積が約50mLになるまで前記試料を希釈ガスで希釈する、請求項
4に記載の方法。
【請求項8】
前記試料の希釈に使用する前記希釈ガスがほぼ室温である、請求項
4に記載の方法。
【請求項9】
測定値を少なくとも1分後に読み取る、請求項
4に記載の方法。
【請求項10】
密封容器と係合して前記密封容器からガスを引き出して分析するガス分析システムであって、前記システムは、
開口部を形成して前記容器からガスを引き出し可能にするように構成される貫通具と、
前記貫通具に動作可能に結合されて前記容器からガスを受け取るチャンバと、
前記貫通具が前記容器内に開口部を形成した後に、前記容器に係合して前記システムに前記チャンバ及び前記容器の内部を含む密閉容積の維持を可能にするように構成され、前記容器から前記チャンバ内に受け入れたガスの漏出又は汚染を制限し、吸盤を含むシールと、
前記貫通具に動作可能に結合され、ガスの前記漏出又は汚染を更に制限又は防止し、前記貫通具によって引き出される前記ガスを前記チャンバ内に導くように構成される弁と、を備え
、
シリンジを更に備え、前記チャンバが前記シリンジのバレルを備えるガス分析システム。
【請求項11】
前記チャンバの内面に結合される光学センサと、
前記光学センサに動作可能に結合される光ファイバと、
前記光学センサ及び前記光ファイバに動作可能に結合される受信機と、を更に備える、請求項
10に記載のガス分析システム。
【請求項12】
前記貫通具が貫通孔パンチである、請求項
10に記載のガス分析システム。
【請求項13】
前記貫通具が前記容器の金属閉鎖部を貫通するように構成される、請求項
10に記載のガス分析システム。
【請求項14】
前記システム
の重量が1100g未満、前記システムの長さが50cm未満、又は前記システムの幅が50cm未満である、請求項
10に記載のガス分析システム。
【請求項15】
請求項
11に記載の前記ガス分析システムを使用して前記容器内のガスを分析する方法であって、
前記容器の表面上に前記シールを置くステップと、
前記貫通具で前記表面を穿孔するステップと、
前記容器から前記チャンバにガス試料を引き出すステップと、
前記光ファイバを前記チャンバ内の前記光学センサ近傍の前記チャンバの壁に近づけて置くステップと、
前記受信機の値を読み取るステップと、を含む方法。
【請求項16】
前記貫通具及び前記第1の弁に動作可能に接続される第2の弁であって、前記第1の弁が前記第2の弁よりも前記チャンバに近い位置に配置される、前記第2の弁を更に備え、
前記第2の弁が、前記容器から前記チャンバへのガスの流れを防止し、密閉容積を形成して前記容器からのガスの損失を防止する第1の位置と、前記容器から前記チャンバへのガスの流れを可能にする第2の位置との間での間で移動可能である、請求項
1に記載のガス分析システム。
【請求項17】
前記貫通具が前記容器に接触する前に前記シールが前記容器と係合し、前記容器が前記容器内の圧力上昇に応答して外向きに急速に撓む飛び出し部分を有し、前記シールが前記飛び出し部分の直径よりも大きい直径及び前記飛び出し部分の外側で前記容器に対して封止する底縁部を有する、請求項
4又は
15に記載の
方法。
【請求項18】
前記希釈ガスが空気である、請求項
4に記載の方法。
【請求項19】
前記ガス分析器が目盛り付きマーク及び化学試薬を含む検出管である、請求項
4に記載の方法。
【請求項20】
前記目盛り付きマークを用いてガス試料の色変化の長さを測定するステップを更に含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記システム
の重量が1100g未満、前記システムの長さが50cm未満、又は前記システムの幅が50cm未満である、請求項1に記載のガス分析システム。
【請求項22】
前記容器の前記表面上に前記シールを置くステップが、前記シールの底縁部を前記容器の閉鎖部の中央飛び出し部分周りに置くステップを含み、
前記貫通具で前記表面を穿孔するステップに応答して前記閉鎖部の前記中央飛び出し部分が外向きに撓む、請求項
4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に化学分析機器に関し、より具体的には、ヘッドスペースガスの引き出し及びリアルタイム分析用の携帯型分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前のヘッドスペースガス分析は、組立ライン内の機器を使用して試料を引き出し、ガスクロマトグラフを使用して試料を分析することが多かった。しかしながら、この方法は携帯できないかさばる機器を要することが多く、生成物の貯蔵寿命中の様々な時期に容器内のヘッドスペースを試験することは容易ではない。他の機器は容器内のヘッドスペースを分析することができるが、金属容器又は金属閉鎖部付き容器から試料の過剰な漏れ及び/又は希釈を生じることなくヘッドスペースガスを引き出すことには不向きである。したがって、食品の貯蔵寿命の多くの段階で容器から効率的にヘッドスペースガスを引き出し、ガスをリアルタイムで分析することができる携帯型機器が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
食品の貯蔵寿命の様々な段階で容器内のヘッドスペースガスを分析するための引き出し及びリアルタイムガス分析システムを本明細書に記載する。このシステムは携帯可能であり、貫通具を含み、容器に開口部を形成する。この開口部によりガスを容器から引き出し可能にし、その後貫通具に結合するチャンバ内でガスを受け取ることができる。ガスの漏出又は汚染を制限又は防止するために、シールが容器に係合し、貫通具が容器に開口部を形成した後に、システムにチャンバ及び容器内部を含む密閉容積を維持可能にする。第1の気密弁はシール及び貫通具に動作可能に接続し、ガスの漏出又は汚染を更に制限することができる。第2の気密弁を設けることもできる。第2の弁は、貫通具によって引き出されるガスの流れを容器ヘッドスペースからチャンバ内に導く第1の位置と、容器からチャンバへのガスの引き抜き及び移送が完了した後に、チャンバからのガスを接続パイプを通してガス分析器に導き得る第2の位置との間で移動可能であってもよい。
【0004】
いくつかの実施形態では、ガス分析器は小型軽量の使い捨てガス検出管であってもよい。他の実施形態では、ガス分析器は電子装置又は計器を備え、可読デジタル表示若しくは色分け表示のような可視表示、可聴信号若しくはレポート、又は他の出力により試料に関する情報を提供してもよい。
【0005】
いくつかの実施形態では、システムは光学センサシステムを含み、試料がチャンバ内に留まる間にガス試料を分析することができ、分析のために試料をチャンバから移送する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】ガス分析システムの第1の実施形態を図示する。
【
図2】ガス分析システムの第2の実施形態を図示する。
【
図3】
図1の実施形態の一部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の一態様によれば、密封容器12内のヘッドスペースガスをリアルタイムで引き出し分析するガス分析システム10を本明細書に開示する。ガス分析システム10は携帯型であってもよく、より具体的には、システム10が製造中及び食品の貯蔵寿命の様々な段階で容器に容易にアクセスできるように手持型であってもよい。いくつかの実施形態では、システムの重量は約1100g未満、約1050g未満、約300g未満、又は約250g未満であってもよい。いくつかの実施形態では、システムの長さは約50cm未満、約40cm未満、又は約30cm未満であってもよい。いくつかの実施形態では、システムの幅は約50cm未満、約40cm未満、約30cm未満、又は約20cm未満であってもよい。
【0008】
図1を参照すると、図示のガス分析システム10は、貫通具16を有するチャンバ14を含み、貫通具16はチャンバ14に動作可能に結合される。貫通具16は容器12の閉鎖部18を貫通又は穿刺し、容器からヘッドスペースガスを引き出すように構成されている。いくつかの実施形態では、容器の閉鎖部は、鋼、ステンレス鋼、錫、又はアルミニウムなどの1つ以上の金属、及び/又はポリエチレン又はポリプロピレンなどのプラスチック又は高分子材料を含む材料から作ることができる。いくつかの実施形態では、閉鎖部は上記材料及び/又は他の材料の2つ以上の層を含む積層構造を有することができる。いくつかの実施形態では、閉鎖部は瓶のブリキ板蓋を含むことができる。いくつかの実施形態では、貫通具16は貫通孔パンチ又は斜方先端、正方形先端、鈍い先端、円錐先端、若しくはドーム形先端を有する針とすることができる。いくつかの実施形態では、貫通具16は例えばベビーフードの瓶のような瓶のブリキ板蓋などの金属閉鎖部を貫通する強度及び鋭さを有することができる。
【0009】
貫通具16はルアーロックコネクタ20によって第1の弁24に動作可能に固着することができ、これにより貫通具とチャンバとの間で実質的に漏れのない接続を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、このようなルアーロックコネクタ20の貫通具を使用毎に交換可能とすることができる。しかしながらいくつかの使用方法では、貫通具を複数の容器に対して再使用してもよい。いくつかの実施形態では、ルアーロック以外のコネクタを使用することができる。このようなコネクタは、例えば急速脱着機構、ねじ式コネクタ、又は他の機構を含むことができる。
【0010】
シール22は貫通具16を取り囲み、貫通具が容器の金属閉鎖部18に開口部を形成するときに容器12からのガスの損失又は漏出を防止することができる。いくつかの実施形態では、シールはガスケット、吸盤、Oリング、又は気密シールとすることができ、ゴム、ポリテトラフルオロエチレン(PFTE)、フルオロシリコーン(FVMQ)、ポリウレタン(PUR)、又は他の変形可能な物質のうちの1つ以上から作ることができる。シール22は貫通具16が閉鎖部に接触する前に閉鎖部18と係合することができる。いくつかの実施形態では、シール22が閉鎖部18と係合するとき、シールは閉鎖部の表面積の少なくとも25%、40%、50%、60%、70%、80%、又は少なくとも90%を覆うことができる。いくつかの実施形態では、閉鎖部は容器内の圧力上昇に応答して外向きに急速に撓む又は「飛び出す」、中央「飛び出し(pop-out)」又は「フリップ」部分を有する。いくつかの実施形態では、シール22は底縁部23を有する。底縁部23は飛び出し部分の直径よりも大きい直径を有し、飛び出し部分の外側で閉鎖部に対して封止する。他の実施形態では、底縁部23は飛び出し部分の直径よりも小さい直径を有し、飛び出し部分に対して封止する。
【0011】
いくつかの実施形態では、1つ以上の弁を設けてガスの流れを制御することができる。いくつかの実施形態では、チャンバ、1つ以上の弁、及び貫通具の全長は約30cm未満とすることができる。いくつかの実施形態では、チャンバ、1つ以上の弁、及び貫通具の総重量は約250g未満又は約220g未満とすることができる。
【0012】
図1の実施形態では、第1の弁24は貫通具16、チャンバ14、及びシール22に動作可能に関連付けられている。いくつかの実施形態では、第1の弁は気密回転可能弁、押しボタン弁、押し引き弁、又は隔壁弁とすることができる。
【0013】
図1にも示すように、第2の弁26は気密であってもよく、チャンバ14により近い第1の弁24に動作可能に接続することができる。第2の弁は、貫通具16からチャンバ内へのガスの流れを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、第2の弁26は三方弁とすることができる。このような実施形態では、第2の弁26はチャンバ14と接続パイプ28との間、又は貫通具16と接続パイプとの間のガスの流れを可能にすることもできるが、同時にはできない。いくつかの実施形態では、第1の弁を排除することができ、第2の弁26を貫通具16に直接接続することができる。
【0014】
図1の実施形態では、接続パイプ28はガス検出管38に動作可能に接続されている。システムの使用中、ガス検出管38の第1の端部40をハサミ、ペンチ等を使用して又は使用せずに、手動で若しくは他の方法で、折る、切断する、又は他の方法で取り外す。次いで開口端部40を接続パイプ28に挿入することができる。接続パイプに挿入する前に、第1の端部40をサンドペーパーのような研磨材と接触させて第1の端部40の表面を滑らかにし、試料の漏れをもたらすかもしれない接続パイプの穿孔を防止するようにしてもよい。いくつかの実施形態では、ガス検出管は硫化水素、水素、二酸化炭素、又は酸素などの1つ以上のガス濃度を検出及び/又は測定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、ガス検出管の長さは約7cm未満、約6cm未満、又は約5cmとすることができる。
【0015】
貫通具16が容器12の金属閉鎖部18と係合する前に、第1の弁24及び/又は第2の弁26を閉じてもよい。第1の弁24は、第1の弁が閉位置にあるときに密閉容積を形成することにより、シール22が容器12からのガスの損失を防止するのに役立つように構成することができる。閉位置にある第1の弁24は、密閉容積内の圧力不足を補って、容器12の金属閉鎖部18に対するシール22の気密性を確保するのに役立つ。密閉容積内よりも密閉容積外の圧力がより大きいことによるシール22のこの気密性によって、ガスが容器12から引き出されるときにシールをしっかりと保持することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、第2の弁とルアーロックコネクタとの間に第1の弁24を設けずに、第2の弁26を貫通具16のルアーロックコネクタ20に直接接続することができる。このような実施形態では、第2の弁はシール、ルアーロックコネクタ、及び貫通具に動作可能に接続され、容器とチャンバとの間の流れを制御する。このような実施形態では、第2の弁26は第2の弁が閉位置にあるときに密閉容積を形成することにより、シール22が容器12からのガスの損失を防止するのに役立つように構成することができる。閉位置にある第2の弁26は、密閉容積内の圧力不足を補って、容器12の金属閉鎖部18に対するシール22の気密性を確保するのに役立つ。
【0017】
いくつかの実施形態では、チャンバ14は可変容積を有することができ、気密シリンジなどのシリンジのバレル30の内部にあってもよい。いくつかの実施形態では、チャンバ14は、バレル30の内部及びプランジャ32によって画定することができ、プランジャ32は
図3に示すピストン又は他の封止要素42を下端部又はその近傍に有する。貫通具16から離れて配置されているバレル30の端部、すなわち上端部又は遠位端部は、フレア状の環状バレルフランジ34を有し、使用中のバレルの長手方向を容易に安定させることができる。貫通具16に向かって配置されているバレル30の端部、すなわち下端部又は近位端部は、第1の弁24又は第2の弁26にほとんど又はまったく漏れなく嵌合するように構成されるアダプタ35を有することができる。プランジャ32はフランジ36又は他の手段を有し、プランジャを手動で上向きに引いたり下向きに押したりすることを容易にすることができる。貫通具16が容器12の金属閉鎖部18内に開口部を形成する前に、バレル30及びプランジャ32は第1の閉位置すなわち
図1に示すような下方位置にあってもよく、これによりプランジャの底部42がバレルの底部と係合し、プランジャの下のバレル内には空気がほとんど又は全く存在しない。
【0018】
貫通具16が容器12の金属閉鎖部18に開口部を形成した後、第1の弁24(存在する場合)及び第2の弁26を開位置に移動させて、貫通具16とチャンバ14との間のガスの流れを可能にする一方、他の場所での流れを防止することができる。チャンバ14のバレル30内のプランジャ32を第2の位置まで上向きに引き、容器12からのガスを貫通具を通してバレル内に引き込むことができる。一旦ガスを引き出すと、第1の弁24及び/又は第2の弁26を閉じ、そこを通る流れを防止することができる。次いで貫通具16を容器12から取り外すことができる。
【0019】
第1の弁24を使用せずに第2の弁26を貫通具16に接続する実施形態では、ルアーロックコネクタ20を係合解除することによって貫通具を第2の弁から取り外すことができる。このような実施形態では、貫通具16を容器12から取り外す必要はない。
【0020】
いくつかの実施形態では、バレル30の容積は5~95mL、30~70mL、40~60mL、又は約50mLであってもよい。バレルの容積によって引き出しプロセスの複雑さを低減することが可能となる場合がある。例えば低温殺菌処理又は滅菌処理された食品を容器に高温充填する場合、食品及び容器が冷えると容器内の圧力は通常の大気圧未満に低下する(すなわち真空が形成される)。貫通具がより長いシリンジを用いて容器からヘッドスペースガスを引き出すことは、ヘッドスペースガスと共に食品を引き出すリスクを高める場合がある。しかし貫通具がより短いシリンジは、食品を引き出すリスク高めることなくサンプリングに十分な量のヘッドスペースガスを引き出すことを可能にし得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、貫通具16は、例えば鉄、クロム、マンガン、ケイ素、炭素、ニッケル、モリブデン等を含有し得るステンレス鋼から作ることができる。硫化水素(H2S)が容器から引き出されるヘッドスペースガスの成分である場合、ステンレス鋼中の鉄がH2Sと反応して硫化鉄を形成し、貫通具がガスを更に引き出すことを妨害することがある。50mLバレルに付随するような小さな貫通具を使用する場合、貫通具が硫化鉄によって妨害されないように反応を回避することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、貫通具16を取り外した後に、容器12内の食品の温度を熱電対、温度計、又は他の温度センサによって測定してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、容器12内のヘッドスペースガスの量は50mL未満であってもよい。引き出されるヘッドスペースガスの試料は、容器から引き出した後に空気などの希釈ガスで所定の容積に希釈する必要があり得る。いくつかの実施形態では、希釈ガスは窒素、アルゴン、又は別のタイプのガスであってもよく、単独又は組み合わせであってもよい。
【0024】
試料を希釈するために、第2の弁26は、第1の弁を通してチャンバ内への希釈ガスの流れを可能にする位置まで作動させることができる。いくつかの実施形態では、希釈前に貫通具16を取り外すことができる。他の実施形態では、貫通具16は所定の位置に留まることができる。いくつかの実施形態では、試料の希釈前にチャンバ及び関連する要素を容器から離れるように移動させることができる。他の実施形態では、チャンバ及び関連する要素は所定の位置に留まることができ、シールの外側の閉鎖部に第2の開口部を形成することによって希釈を容易にすることができる。
【0025】
第2の弁のみを使用する実施形態では、貫通具を取り外した後、プランジャ32を第3の位置まで上向きに引いて希釈ガスをチャンバ14内に引き込み、希釈前のヘッドスペースガス試料の一部の損失を防止又は制限するまで、第2の弁の底部開口部を外部から遮断することができる。引き込む希釈ガスは、室温であってもよいし、室温未満の温度であってもよい。第1の弁を使用する実施形態では、第1の弁24を開き、次いでプランジャ32を第3の位置まで上向きに引いて希釈ガスをチャンバ14内に引き込むことができる。所望の量の希釈ガスをチャンバ内に引き込み、試料を所定の体積に希釈すると、第1の弁24及び/又は第2の弁26を閉じることができる。
【0026】
試料の希釈後、ガス検出管38の第2の端部44を(第1の端部を取り外したのと同じ又は異なる方法で)取り外し、ガス検出管38がチャンバ14から引き出されたガスの希釈試料の少なくとも一部を受け取り可能にすることができる。チャンバ14からの希釈ガスが接続パイプ28内に及び接続パイプ28を通って流れることを可能にする位置まで第2の弁26が移動するときに、プランジャ32はバレル30内に押し下げられ、バレルは実質的に第1の閉位置に戻り、これによりチャンバ14からの希釈ガスを接続パイプ28を通してガス検出管38に押し込む。
【0027】
いくつかの実施形態では、検出管38は目盛り付きマーク42を含むことができる。希釈ガス試料がガス検出管の内部で化学試薬と反応すると、色の変化が生じることがある。サンプリング時間の終了時に、目盛り付きマーク42を用いて色変化の長さを測定することにより希釈ガス試料中の検出ガス量を推定又は計算することができる。具体的には、目盛り付きマーク42の色変化の長さの測定値に希釈係数(Vf/Vi、ここでVfは試料の最終体積であり、Viは試料の初期体積である)を乗算し、検出ガス濃度を求める。いくつかの実施形態では、ガス検出管38内の化学試薬と希釈ガス試料との反応が完結する待機時間は、3分未満、2分未満、又は約1分であってもよい。検出ガス濃度は、ガス検出管38上の測定値及び希釈ガス試料の既知の体積から計算することができる。
【0028】
大気中の成分であるガスの分析を含むいくつかの実施形態では、容器内のガス濃度を測定するプロセスをグローブボックスなどの制御された環境下で行ってもよい。例えば、窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素、ネオン、ヘリウム、メタン、クリプトン、酸化二窒素、水素、又はキセノンを分析する場合、環境を制御する必要があり得る。容器のヘッドスペース内のガス濃度を測定する前に、周囲の大気中の同じガス濃度を測定し、その後希釈ガス試料の濃度から計算する必要があり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、希釈ガス試料を後で分析するために検出管内ではなく瓶内に導く。例えば、接続パイプ28に第2のルアーロックコネクタを取り付けることができる。針を第2のルアーロックコネクタに嵌合することができる。試料を容器のヘッドスペースから引き込んで(上記のように)希釈した後、瓶を針に結合できる。例えば、予め真空化した瓶には、瓶の内部にアクセスするために針が貫通する隔壁がある。シリンジのバレルが実質的に第1の閉位置に戻ると、希釈ガス試料は接続パイプ及び針を通してチャンバから瓶に押し出され得る。次いで、針を瓶から引き抜くことができる。瓶中の希釈試料は、後にガスクロマトグラフで分析することができる。
【0030】
図2を参照すると、ガス分析システム110の第2の実施形態が示されており、以下に説明する点を除いて第1の実施形態と同一である。ガス分析システム110のこの第2の実施形態は、ガス濃度を測定する光学センサシステム138を更に含む。光学センサシステム138は、光学センサ140と、ポリマー光ファイバ142と、受信機144と、を含む。光学センサ140はチャンバ114の内側にあってもよい。光学センサ140はバレル130の内側に配置することができ、ガスを引き出すと光学センサが試料ガスに曝されることになる。いくつかの実施形態では、光学センサを貫通具116近傍のチャンバの底部近傍に配置してもよい。例えば光学センサは、チャンバ114の底部から0mm~75mm、0mm~50mm、0mm~25mm、又は0mm~10mmの間にあってもよい。チャンバの底部近傍及び貫通具近傍に設置することによって、光学センサ140がプランジャ132の動作に干渉するのを防止することができる。いくつかの実施形態では、光学センサ140をプランジャ132により近いチャンバの内壁上に配置してもよい。
【0031】
第1の実施形態と同様に、貫通具116は容器112の閉鎖部118に開口部を形成する。シール122及び気密弁124、126は、ヘッドスペースガスが漏出するのを制限又は防止することができる。プランジャ132及び貫通具116は、金属閉鎖部118の開口部を通して容器112のヘッドスペースからガスを引き出すことができる。一旦ヘッドスペースガスを引き出すと、光学センサ140がチャンバ内に配置される場所の近傍で、チャンバ114の壁の外側近傍にポリマー光ファイバ142を置いてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、ポリマー光ファイバ142はチャンバ114の外壁と接触していてもよい。他の実施形態では、ポリマー光ファイバをチャンバの外壁から0mm~5mm、0mm~3mm、0mm~2mm、又は約1mm離れて配置してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、ポリマー光ファイバ142は被覆で囲まれる外装によって囲まれるコアを含むことができる。コアは光学センサ140との間で光を伝搬させ、容器112内のガス濃度の測定値を得ることができる。外装の屈折率をコアの屈折率よりも低くすることで、光をコアに閉じ込めることができる。被覆により、外装を引っ掻き傷、切り傷、擦り傷、湿気による損傷、及び他の損傷から保護することができる。
【0034】
ポリマー光ファイバが所定の位置にあると、ポリマー光ファイバ142に動作可能に接続される受信機144から検出ガス濃度を読み取ることができる。いくつかの実施形態では、受信機の長さは約20cm未満、及び幅は約15cm未満であってもよい。いくつかの実施形態では、受信機の重量は約850g未満であってもよい。いくつかの方法では、受信機をシステムの動作中に保持する必要はないが、所望であれば表面上に置いて使用者が両手でシステムを操作できるようにしてもよい。
【0035】
光学センサシステムを使用するいくつかの実施形態では、第1の弁124のみを使用し、第2の弁126は不要である。光学センサシステムを使用してヘッドスペース内の特定のガス濃度を測定するとき、引き出されるヘッドスペースガス試料を希釈する必要がない場合がある。いくつかの実施形態では、正確な測定値を得るためのヘッドスペースガス試料の量は約10mL、約9mL、約8mL、約7mL、約6mL、約5mL、約4mL、約3mL、約2mL、又は約1mLなどの少量で十分である。
【0036】
当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく上述の実施形態に関して多種多様な修正、変更、及び組み合わせを行うことができ、そのような修正、変更、及び組み合わせは本発明の概念の範囲内にあると考えるべきであることを理解するであろう。