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  • 特許-粉末洗剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】粉末洗剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/50 20060101AFI20231219BHJP
   C11D 1/02 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 1/38 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 1/88 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 1/28 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 3/386 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 3/08 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 1/83 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 3/384 20060101ALI20231219BHJP
   C11D 3/22 20060101ALI20231219BHJP
   B01J 13/16 20060101ALI20231219BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C11D3/50
C11D1/02
C11D1/38
C11D1/66
C11D1/88
C11D1/22
C11D1/14
C11D1/29
C11D1/28
C11D1/68
C11D1/04
C11D3/395
C11D3/386
C11D17/06
C11D3/08
C11D1/83
C11D3/384
C11D3/22
B01J13/16
C11B9/00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020562200
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2019075046
(87)【国際公開番号】W WO2020064467
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】18196796.9
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マリー オズボーン
(72)【発明者】
【氏名】アルノー ストリュイゥ
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0190191(US,A1)
【文献】特表2010-529250(JP,A)
【文献】特開平02-258900(JP,A)
【文献】国際公開第2016/054351(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/075293(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/144798(WO,A1)
【文献】特表2020-512452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1つの界面活性剤系を含む洗剤活性物質と、
- 以下:
a)水溶性ポリマーマトリックスと、
b)前記ポリマーマトリックス中に分散された香料を含む油相であって、前記油は、少なくとも部分的にマイクロカプセルに封入されている油相と
から構成される粒子を含む粒状粉末と
を含む粉末洗剤組成物であって、
前記粒状粉末は、封入された油を、前記粉末の総重量に対して最大30重量%含かつ
前記粒状粉末は、水溶性ポリマーマトリックスを、前記粉末の総重量に対して少なくとも55重量%含む、
粉末洗剤組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤系が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤およびそれらの混合物からなる群において選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む、請求項1記載の粉末洗剤組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、直鎖アルケンベンゼンスルホネート(LABS)、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、α-オレフィンスルホネート(AOS)、エステルスルホン酸メチル(MES)、アルキルポリグリコシド(APG)、ラウリルアルコールエトキシレート(LAE)、第一級アルコールスルホネート(PAS)、石鹸およびそれらの混合物からなる群において選択される、請求項1または2記載の粉末洗剤組成物。
【請求項4】
前記洗剤活性物質が、漂白剤、緩衝剤;ビルダー;汚れ落とし剤または汚れ懸濁ポリマー;造粒酵素粒子、腐食防止剤、消泡剤、泡抑制剤;染料、充填剤およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の粉末洗剤組成物。
【請求項5】
前記洗剤活性物質が、
a)界面活性剤であって、好ましくはアニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群において選択される界面活性剤を、前記組成物の総重量に対して5~50重量%、好ましくは5~30重量%と、
b)充填剤であって、好ましくはケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物からなる群において選択される充填剤を、前記組成物の総重量に対して10~50重量%と、
c)ビルダーであって、好ましくはゼオライト、炭酸ナトリウムおよびそれらの混合物の群において選択されるビルダーを、前記組成物の総重量に対して10~30重量%と、
d)酵素であって、好ましくはセルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼおよびそれらの混合物の群において選択される酵素を、前記組成物の総重量に対して0~2重量%と、
e)自由な状態の香料を、前記組成物の総重量に対して0~2重量%と、
f)過酸化水素の供給源であって、好ましくは過炭酸ナトリウムまたは過ホウ酸ナトリウム、より好ましくは過炭酸ナトリウムを、前記組成物の総重量に対して0~20重量%と、
g)漂白剤活性剤、好ましくはTAEDを、前記組成物の総重量に対して0~5重量%と
を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の粉末状組成物。
【請求項6】
a)少なくとも1つの洗剤活性物質を、前記組成物の総重量に対して10~99.9重量%、好ましくは50~99.9重量%と、
b)粒状粉末を、前記組成物の総重量に対して0.1~90重量%、好ましくは0.1~50重量%、より好ましくは0.2~20重量%、さらにより好ましくは0.2~10重量%と
を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の粉末洗剤組成物。
【請求項7】
粒状粉末が、封入された油を、前記粉末の総重量に対して最大25重量%含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の粉末洗剤組成物。
【請求項8】
粒状粉末が、封入された油を、前記粉末の総重量に対して最大20重量%含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の粉末洗剤組成物。
【請求項9】
前記油相がすべて封入されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の粉末洗剤組成物。
【請求項10】
前記油相が、少なくとも1つの非封入部分を含み、前記粒状粉末が、前記油相の総量を、前記粉末の総重量に対して最大45重量%含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の粉末洗剤組成物。
【請求項11】
前記油相が、少なくとも1つの非封入部分を含み、前記粒状粉末が、前記油相の総量を、前記粉末の総重量に対して最大35重量%含む、請求項10記載の粉末洗剤組成物。
【請求項12】
前記油の封入部分が、コアシェル構造を有する少なくとも1つのマイクロカプセルに封入されており、前記コアが、封入された油を含み、ポリマーシェルが、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリスルホンアミド、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートまたは芳香族ポリオールで架橋されたメラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、メラミングリオキサール樹脂、ゼラチン/アラビアガムシェル壁およびそれらの混合物からなる群から選択される材料から構成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の粉末洗剤組成物。
【請求項13】
前記マイクロカプセルのシェルが、メラミンホルムアルデヒド樹脂、または少なくとも1つのポリイソシアネートもしくは芳香族ポリオールで架橋されたメラミンホルムアルデヒド樹脂をベースとする、請求項12記載の粉末洗剤組成物。
【請求項14】
前記マイクロカプセルが、非イオン性多糖類および/またはカチオン性ポリマーからなる群から選択される外側コーティングを含む、請求項1から13までのいずれか1項記載の粉末洗剤組成物。
【請求項15】
前記水溶性ポリマーが、デンプン、マルトデキストリン、多糖類、炭水化物、キトサン、アラビアガム、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アクリルアミド、アクリレート、ポリアクリル酸および関連する無水マレイン酸コポリマー、アミン官能性ポリマー、ビニルエーテル、スチレン、ポリスチレンスルホネート、ビニル酸、エチレングリコール-プロピレングリコールブロックコポリマーおよびそれらの混合物からなる群において選択される、請求項1から14までのいずれか1項記載の粉末洗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末洗剤組成物の分野に関する。より具体的には、本発明は、界面活性剤系を含む洗剤活性物質と、香料を低負荷で有する粒子を含む粒状粉末、すなわち封入された油を最大30重量%含む粒状粉末とを含む粉末洗剤組成物を記載したものである。
【0002】
発明の背景
フレグランスは、消費者製品の性能の識別において重要な役割を果たしており、したがって多くの場合、所与の製品に対する消費者の選択を決定づける。
【0003】
洗剤、硬質表面クリーナーまたはパーソナルケアもしくはボディケア製品では、フレグランスは、布地、表面または皮膚に心地よい匂いを送達するために、自由な状態の油として組み込まれる、かつ/またはマイクロカプセルに封入される。
【0004】
封入されたフレグランスの主な利点の1つは、適用中または適用後(例えば皮膚または布地のすすぎまたは乾燥後)のフレグランス性能および嗅覚上の知覚の持続性が増強されることにある。
【0005】
しかし、香料マイクロカプセルを使用する場合には、消費者製品に高品質を提供するために、他の特性を考慮する必要がある。実際には、消費者製品ベースに組み込む際に、香料マイクロカプセルは「攻撃性の」環境にあることが多いため、香料の漏出がわずかであって良好な安定性を示す必要がある。さらに、消費者製品の種類によっては、マイクロカプセルはベースとの混合段階で高い機械的応力に曝されることがあるため、優れた機械的特性を示す必要がある。
【0006】
したがって、安定性の点での良好な性能および嗅覚性能を有するだけでなく、高剪断を必要とする製造プロセスにも耐え得る粒状粉末を提供することが重要であろう。
【0007】
本発明の粉末洗剤組成物は、製造プロセス中の粒子の摩耗を防止する最適化された相対的割合による、ポリマーマトリックスと封入された油とから構成される粒子を含む粒状粉末を含むため、この課題を解決する。
【0008】
発明の概要
本発明の第1の対象は、
- 少なくとも1つの界面活性剤系を含む洗剤活性物質と、
- 以下:
a)水溶性ポリマーマトリックスと、
b)該ポリマーマトリックス中に分散された香料を含む油相であって、該油は、少なくとも部分的にマイクロカプセルに封入されている油相と
から構成される粒子を含む粒状粉末と
を含む粉末洗剤組成物であって、
該粒状粉末は、封入された油を、該粉末の総重量に対して最大30重量%含む、粉末洗剤組成物である。
【0009】
本発明の第2の対象は、上記で定義された粉末洗剤組成物の製造方法であって、上記で定義された粒状粉末と洗剤活性物質とを混合するステップを含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による(すなわち、封入された香油を含む)粒状粉末の粉末洗剤における嗅覚性能を、直接添加されたマイクロカプセルスラリーと比較して示す。
【0011】
本発明の詳細な説明
特に明記しない限り、パーセンテージ(%)は、組成物の重量パーセントを示すことを意味する。
【0012】
「粒子」または「粒状粉末」に言及する場合、パーセンテージ(%)は、乾燥した組成物について示したものである。
【0013】
ここで本発明は、粉末洗剤の製造プロセス中に高剪断条件に供する際の粒状粉末の機械的耐久性を改善する方法を定める。
【0014】
実際には、本発明の第1の対象は、
- 少なくとも1つの界面活性剤系を含む洗剤活性物質と、
- 以下:
a)水溶性ポリマーマトリックスと、
b)該ポリマーマトリックス中に分散された香料を含む油相であって、該油は、少なくとも部分的にマイクロカプセルに封入されている油相と
から構成される粒子を含む粒状粉末と
を含む粉末洗剤組成物であって、
該粒状粉末は、封入された油を、該粉末の総重量に対して最大30重量%含む、粉末洗剤組成物である。
【0015】
本発明の粉末洗剤組成物とは、布地の洗濯が可能な界面活性剤系を含む組成物と理解されるべきである。対照的に、固体のセントブースター(すなわち、固体の香料ビーズ)は、界面活性剤系を含んでおらず、本発明による粉末洗剤組成物とは見なされない。
【0016】
一実施形態によれば、本発明で定義される粉末洗剤は、固体のセントブースター香料ビーズを含まない。
【0017】
洗剤活性物質
洗剤活性物質は、少なくとも1つの界面活性剤系を含む。
【0018】
界面活性剤系は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤およびそれらの混合物からなる群において選択される少なくとも1つの界面活性剤を含むことができる。
【0019】
洗剤活性物質中の界面活性剤は、好ましくは、直鎖アルケンベンゼンスルホネート(LABS)、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、α-オレフィンスルホネート(AOS)、エステルスルホン酸メチル(MES)、アルキルポリグリコシド(APG)、第一級アルコールエトキシレート、特にラウリルアルコールエトキシレート(LAE)、第一級アルコールスルホネート(PAS)、石鹸およびそれらの混合物からなる群において選択される。
【0020】
洗剤活性物質は、粉末洗剤組成物で一般に使用されるさらなる成分を含んでいてもよく、該成分は、漂白剤、緩衝剤;ビルダー;汚れ落とし剤または汚れ懸濁ポリマー;造粒酵素粒子、腐食防止剤、消泡剤、泡抑制剤;染料、充填剤およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0021】
特定の一実施形態によれば、洗剤活性物質は、
a)界面活性剤であって、好ましくはアニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群において選択される界面活性剤を、組成物の総重量に対して5~50重量%、好ましくは5~30重量%と、
b)充填剤であって、好ましくはケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物からなる群において選択される充填剤を、組成物の総重量に対して10~50重量%と、
c)ビルダーであって、好ましくはゼオライト、炭酸ナトリウムおよびそれらの混合物の群において選択されるビルダーを、組成物の総重量に対して10~30重量%と、
d)酵素であって、好ましくはセルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼおよびそれらの混合物の群において選択される酵素を、組成物の総重量に対して0~2重量%と、
e)自由な状態の香料を、組成物の総重量に対して0~2重量%と、
f)過酸化水素の供給源であって、好ましくは過炭酸ナトリウムまたは過ホウ酸ナトリウム、より好ましくは過炭酸ナトリウムを、組成物の総重量に対して0~20重量%と、
g)漂白剤活性剤、好ましくはTAED(テトラアセチルエチレンジアミン)を、組成物の総重量に対して0~5重量%と
を含む。
【0022】
もう1つの特定の実施形態によれば、洗剤活性物質は、
(i)界面活性剤であって、好ましくはアニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群において選択される界面活性剤を、組成物の総重量に対して5~50重量%、好ましくは5~30重量%と、
(ii)充填剤であって、好ましくはケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物からなる群において選択される充填剤を、組成物の総重量に対して10~50重量%と、
(iii)ビルダーであって、好ましくはゼオライト、炭酸ナトリウムおよびそれらの混合物の群において選択されるビルダーを、組成物の総重量に対して10~30重量%と、
(iv)酵素であって、好ましくはセルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼおよびそれらの混合物の群において選択される酵素を、組成物の総重量に対して0重量%超~2重量%と、
(v)自由な状態の香料を、組成物の総重量に対して0重量%超~2重量%と、
(vi)過酸化水素の供給源であって、好ましくは過炭酸ナトリウムまたは過ホウ酸ナトリウム、より好ましくは過炭酸ナトリウムを、組成物の総重量に対して0重量%超~20重量%と、
(vii)漂白剤活性剤、好ましくはTAEDを、組成物の総重量に対して0重量%超~5重量%と
を含む。
【0023】
粒子を含む粒状粉末
本発明によれば、粒状粉末は、
a)水溶性ポリマーマトリックスと、
b)該ポリマーマトリックス中に分散された香料を含む油相であって、該油は、少なくとも部分的にマイクロカプセルに封入されている油相と
から構成される粒子を含む。
【0024】
水溶性ポリマーマトリックス
本発明において、任意の水溶性ポリマーを使用することができる。好ましくは、水溶性ポリマーは、乳化特性を有する。
【0025】
「水溶性ポリマー」とは、本発明において、単相の水溶液を形成する任意のポリマーを包含することを意図している。好ましくは、該ポリマーは、20重量%の濃度、より好ましくは50重量%の濃度で水に溶解させると単相の溶液を形成する。最も好ましくは、該ポリマーは、いずれの濃度で水に溶解させても単相の溶液を形成する。
【0026】
本発明で定義される水溶性ポリマーの例は、デンプン、化工デンプン、マルトデキストリン、多糖類、炭水化物、キトサン、アラビアガム、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アクリルアミド、アクリレート、ポリアクリル酸および関連する無水マレイン酸コポリマー、アミン官能性ポリマー、ビニルエーテル、スチレン、ポリスチレンスルホネート、ビニル酸、エチレングリコール-プロピレングリコールブロックコポリマーおよびそれらの混合物である。
【0027】
特定の一実施形態によれば、水溶性ポリマーは、3~20、好ましくは10~18で構成されるデキストロース当量(DE)を有するマルトデキストリンを含む。
【0028】
一実施形態によれば、水溶性ポリマーは、マルトデキストリン18DEおよび/またはマルトデキストリン10DEを含む。
【0029】
特定の一実施形態によれば、水溶性ポリマーは、マルトデキストリン10DEを含む。
【0030】
一実施形態によれば、粒状粉末は、粉末の総重量に対して少なくとも55重量%の水溶性ポリマーを含む。
【0031】
特定の一実施形態によれば、粒状粉末は、粉末の総重量に対して55~95重量%、好ましくは60~85重量%、より好ましくは70~80重量%の水溶性ポリマーを含む。
【0032】
一実施形態によれば、粒状粉末内の水溶性ポリマーと封入された油との重量比は、2~20、好ましくは3.5~10で構成される。
【0033】
マトリックスは、耐火剤または防爆剤を含み得る。噴霧乾燥エマルション中のそのような薬剤の種類および濃度は、当業者に知られている。そのような耐火剤または防爆剤の非限定的な例として、無機塩、C~C12カルボン酸、C~C12カルボン酸の塩およびそれらの混合物が挙げられる。好ましい防爆剤は、サリチル酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、クエン酸、コハク酸、ヒドロキシコハク酸、マレイン酸、フマル酸、オキシル酸、グリオキシル酸、アジピン酸、乳酸、酒石酸、アスコルビン酸、前述の酸のいずれかのカリウム、カルシウムおよび/またはナトリウム塩、ならびにこれらのいずれかの混合物である。
【0034】
香料を含む油相
本発明によれば、油相は香料を含む。
【0035】
特定の一実施形態によれば、油相は、香料と、栄養補助食品、化粧品、害虫駆除剤および殺生物剤活性物質からなる群から選択されるもう1つの成分との混合物を含む。
【0036】
特定の一実施形態によれば、油相は香料からなる。
【0037】
本明細書中での「香油」(または「香料」ともいう)とは、約20℃で液体である成分または組成物を意味する。上記の実施形態のいずれか1つによれば、前述の香油は、賦香成分のみであってもよいし、賦香組成物の形態の複数成分の混合物であってもよい。「賦香成分」とは、本明細書では、匂いを付与または変調するという主な目的に使用される化合物を意味する。換言すれば、賦香成分であると見なされるべきそのような成分は、単に匂いを有するだけでなく、組成物の匂いを少なくともポジティブにまたは心地よいように付与または変調し得るものと当業者には認識されるはずである。本発明において、香油には、賦香成分と、該賦香成分の送達を一緒に改善、増強または変調する物質、例えば香料前駆体、エマルションまたは分散液との組合せ、ならびに匂いの変調または付与以外の追加の有益性、例えば持続性、ブルーミング作用、悪臭への対抗作用、抗菌作用、微生物安定性、害虫駆除性を付与する組合せも含まれる。
【0038】
油相中に存在する賦香成分の性質および種類は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、これらはいずれにせよ網羅できるものではなく、当業者は、自身の常識に基づいて、用途および望ましい官能効果に応じてそれらを選択することができる。総じて、これらの賦香成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、含窒素または含硫複素環式化合物および精油などの様々な化学クラスに属し、前述の賦香補助成分は、天然起源のものであっても合成起源のものであってもよい。これらの補助成分の多くは、いずれにせよ、S. Arctanderによる書籍Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはその最新版などの参照テキスト、または同様の性質の他の著作物に、また香料分野での多数の特許文献に列挙されている。前述の成分が、様々な種類の賦香化合物を制御された様式で放出することが知られている化合物であってもよいことも理解される。
【0039】
賦香成分は、香料産業で現在使用されている溶媒に溶解させることができる。溶媒は、好ましくはアルコールではない。このような溶媒の例としては、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(Eastmanより入手可能なロジン樹脂)、安息香酸ベンジル、クエン酸エチル、リモネンもしくは他のテルペン、またはイソパラフィンである。好ましくは、溶媒は、例えばAbalyn(登録商標)または安息香酸ベンジルのように非常に疎水性が高く、かつ高度に立体障害性を示す。
【0040】
水溶性ポリマーマトリックス内のマイクロカプセルに封入された油
本発明によれば、油相は、水溶性ポリマーマトリックス内に分散されており、かつ少なくとも1つのマイクロカプセルに封入された少なくとも1つの部分を有する。
【0041】
本発明によれば、「封入された油」とは、マイクロカプセルに封入された油を指す。
【0042】
対照的に、本発明によれば、「封入されていない油」とは、ポリマーマトリックス内に単に閉じ込められている(または分散されている)が、マイクロカプセルには封入されていない油を指す。
【0043】
本発明のマイクロカプセルのポリマーシェルの性質は、様々であってよい。非限定的な例として、シェルは、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリスルホンアミド、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートまたは芳香族ポリオールで架橋されたメラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、メラミングリオキサール樹脂、ゼラチン/アラビアガムシェル壁およびそれらの混合物からなる群から選択される材料から構成されていてよい。
【0044】
一実施形態によれば、マイクロカプセルのシェルは、メラミンホルムアルデヒド樹脂、または少なくとも1つのポリイソシアネートもしくは芳香族ポリオールで架橋されたメラミンホルムアルデヒド樹脂をベースとする。
【0045】
シェルはまた、ハイブリッドの、すなわち、架橋された少なくとも2種の無機粒子から構成されるハイブリッドシェルなどの有機無機シェルであってもよいし、ポリアルコキシシランマクロモノマー組成物の加水分解および縮合反応から生じるシェルであってもよい。
【0046】
一実施形態によれば、シェルは、メラミン-ホルムアルデヒドまたは尿素-ホルムアルデヒドまたは架橋メラミンホルムアルデヒドまたはメラミングリオキサールなどのアミノプラストコポリマーを含む。
【0047】
特定の一実施形態によれば、コアシェル型マイクロカプセルは、
1)香油を、少なくとも2つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1つのポリイソシアネートと混合して、油相を形成するステップと、
2)1つ以上のアミノプラスト樹脂および任意に安定剤を水に分散または溶解させて、水相を形成するステップと、
3)油相を水相と混合することにより油相を水相に加えて、平均液滴サイズが1~100ミクロンで構成される水中油型分散液を形成するステップと、
4)硬化ステップを実施して、前述のマイクロカプセルの壁を形成するステップと、
5)任意に、最終分散液を乾燥させて、乾燥したコアシェル型マイクロカプセルを得るステップと
を含む方法によって得ることができる、架橋されたメラミンホルムアルデヒドマイクロカプセルである。
【0048】
この方法は、国際公開第2013/092375号および国際公開第2015/110568号により詳細に記載されており、その内容は参照により含まれる。
【0049】
もう1つの実施形態によれば、シェルは、これらに限定されるものではないが例えば、イソシアネートベースのモノマーおよびアミン含有架橋剤、例えば炭酸グアニジンおよび/またはグアナゾールから製造されるポリ尿素をベースとするものである。好ましいポリ尿素ベースのマイクロカプセルは、少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1つのポリイソシアネートと、アミン(例えば、水溶性グアニジン塩およびグアニジン)からなる群から選択される少なくとも1つの反応物との重合の反応生成物であるポリ尿素壁;コロイド安定剤または乳化剤;および封入された香料を含む。ただし、アミンの使用は省略できる。
【0050】
もう1つの実施形態によれば、シェルは、これらに限定されるものではないが例えば、ポリイソシアネートおよびポリオール、ポリアミド、ポリエステルなどから製造されるポリウレタンをベースとするものである。
【0051】
特定の一実施形態によれば、コロイド安定剤は、0.1%~0.4%のポリビニルアルコール、0.6%~1%のビニルピロリドンのカチオン性コポリマーおよび4級化ビニルイミダゾールの水溶液を含む(いずれのパーセンテージも、コロイド安定剤の総重量に対する重量により定めたものである)。もう1つの実施形態によれば、乳化剤は、好ましくはポリアクリレート(および特にアクリルアミドとのコポリマー)、アラビアガム、大豆タンパク質、ゼラチン、カゼインナトリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるアニオン性または両親媒性生体高分子である。
【0052】
特定の一実施形態によれば、ポリイソシアネートは芳香族ポリイソシアネートであり、好ましくはフェニル、トルイル、キシリル、ナフチルまたはジフェニル部分を含む芳香族ポリイソシアネートである。好ましい芳香族ポリイソシアネートは、ビウレットおよびポリイソシアヌレート、より好ましくは、トルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレート(Bayerより商品名Desmodur(登録商標)RCで市販)、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(Bayerより商品名Desmodur(登録商標)L75で市販)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学株式会社より商品名Takenate(登録商標)D-110Nで市販)である。
【0053】
特定の一実施形態によれば、ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学株式会社より商品名Takenate(登録商標)D-110Nで市販)である。
【0054】
コアシェル型マイクロカプセルの水性分散液/スラリーの製造は、当業者によく知られている。一態様では、前述のマイクロカプセルの壁材料は、任意の適切な樹脂、特にメラミン、グリオキサール、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステルなどを含み得る。適切な樹脂には、アルデヒドとアミンとの反応生成物が含まれ、適切なアルデヒドには、ホルムアルデヒドおよびグリオキサールが含まれる。適切なアミンには、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリルおよびそれらの混合物が含まれる。適切なメラミンには、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、イミノメラミンおよびそれらの混合物が含まれる。適切な尿素には、ジメチロール尿素、メチル化ジメチロール尿素、尿素-レゾルシノールおよびそれらの混合物が含まれる。製造に適した材料は、以下の1つ以上の企業より入手可能である:Solutia Inc.(米国ミズーリ州セントルイス)、Cytec Industries(米国ニュージャージー州ウェストパターソン)、Sigma-Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)。
【0055】
特定の一実施形態によれば、コアシェル型マイクロカプセルは、ホルムアルデヒド不含のカプセルである。ホルムアルデヒド不含のアミノプラストのマイクロカプセルスラリーを製造するための典型的な方法は、
1)
a)メラミン形態、またはメラミンと2つのNH官能基を含む少なくとも1つのC~C化合物との混合物の形態のポリアミン成分;
b)グリオキサールと、C4~62,2-ジアルコキシエタナールと、任意にグリオキサレートとの混合物の形態のアルデヒド成分であって、前述の混合物が1/1~10/1で構成されるグリオキサール/C4~62,2-ジアルコキシエタナールのモル比を有するアルデヒド成分;および
c)プロトン酸触媒;
の反応生成物を含むか、これらを一緒に反応させることにより得ることができるオリゴマー組成物を製造するステップと、
2)
i.油;
ii.水媒体;
iii.ステップ1で得られる少なくとも1つのオリゴマー組成物;
iv.
A)C~C12芳香族または脂肪族のジ-もしくはトリ-イソシアネート、およびそれらのビウレット、トリウレット、三量体、トリメチロールプロパン付加物、およびそれらの混合物、ならびに/または
B)式
A-(オキシラン-2-イルメチル)
[式中、nは2または3を表し、1は2~6個の窒素原子および/または酸素原子を任意に含んでいてもよいC~C基を表す]のジ-もしくはトリ-オキシラン化合物
の中から選択される少なくとも1つの架橋剤;
v.任意に2つのNH官能基を含むC~C化合物;
を含む、水中油型分散液を製造するステップであって、液滴サイズが1~600umで構成されるステップと、
3)前述の分散液を加熱するステップと、
4)前述の分散液を冷却するステップと
を含む。この方法は、国際公開第2013/068255号により詳細に記載されており、その内容は参照により含まれる。
【0056】
もう1つの実施形態によれば、マイクロカプセルのシェルは、ポリ尿素またはポリウレタンをベースとする。ポリ尿素およびポリウレタンをベースとするマイクロカプセルスラリーの製造方法の例は、例えば国際公開第2007/004166号、欧州特許出願公開2300146号明細書、欧州特許出願公開第2579976号明細書に記載されており、その内容も参照により含まれる。通常、ポリ尿素またはポリウレタンをベースとするマイクロカプセルスラリーの製造方法は、
a)少なくとも2つのイソシアネート基を有する少なくとも1つのポリイソシアネートを油に溶解させて、油相を形成するステップと、
b)乳化剤またはコロイド安定剤の水溶液を製造して、水相を形成するステップと、
c)油相を水相に加えて水中油型分散液を形成するステップであって、平均液滴サイズが1~500μm、好ましくは5~50μmで構成されるステップと、
d)界面重合を誘発するのに十分な条件を適用して、スラリーの形態のマイクロカプセルを形成するステップと
を含む。
【0057】
一実施形態によれば、この方法のいずれの段階でもアミンは加えられない。
【0058】
本発明によれば、封入後、1つ以上のマイクロカプセルの性質の如何を問わず、カプセルの内部コアは、香油から構成されるコア油のみから製造されると理解されるべきである。
【0059】
本発明で定義される粒子は、それらの内部のコア香油および/または壁が様々であり得るマイクロカプセルを含むことができる(異なる化学的性質または同一の化学的性質であるが、架橋温度または持続時間のような異なるプロセスパラメータ)。
【0060】
本発明の特定の一実施形態によれば、マイクロカプセルは、非イオン性多糖類、カチオン性ポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択される外側コーティングを有する。
【0061】
このようなコーティングは、カプセルの堆積および洗浄プロセス中の基材への保持を促進するのに役立ち、それによって、洗浄段階で/泡立てた際に破壊しなかったカプセルのかなりの部分が基材(皮膚、毛髪、布地)に移り、乾燥後に擦った際にカプセルが破壊されると香料が放出される。
【0062】
非イオン性多糖ポリマーは、当業者によく知られている。好ましい非イオン性多糖類は、ローカストビーンガム、キシログルカン、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアー、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0063】
カチオン性ポリマーも、当業者によく知られている。好ましいカチオン性ポリマーは、少なくとも0.5meq/g、より好ましくは少なくとも約1.5meq/gであるが、好ましくは約7meq/g未満、より好ましくは約6.2meq/g未満のカチオン電荷密度を有する。カチオン性ポリマーのカチオン電荷密度は、米国薬局方で窒素測定のための化学試験に記載されているようにケルダール法によって測定することができる。好ましいカチオン性ポリマーは、主ポリマー鎖の一部を形成し得るかまたはそれに直接結合した側鎖置換基が有し得る第1級、第2級、第3級および/または第4級アミン基を含む単位を含むものから選択される。カチオン性ポリマーの重量平均(Mw)分子量は、好ましくは10,000~3.5Mダルトン、より好ましくは50,000~2Mダルトンである。
【0064】
特定の一実施形態によれば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、4級化N,N-ジメチルアミノメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、4級化ビニルイミダゾール(3-メチル-1-ビニル-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド)、ビニルピロリドン、アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドまたはポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドをベースとするカチオン性ポリマーが使用される。好ましくは、コポリマーは、ポリクオタニウム-5、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-28、ポリクオタニウム-43、ポリクオタニウム-44、ポリクオタニウム-46、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドまたはポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0065】
市販品の具体例として、Salcare(登録商標)SC60(アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリドとアクリルアミドとのカチオン性コポリマー、供給元:BASF)またはLuviquat(登録商標)、例えばPQ 11N、FC 550またはStyle(ポリクオタニウム-11~68またはビニルピロリドンの4級化コポリマー、供給元:BASF)またはさらにはJaguar(登録商標)(C13SまたはC17、供給元:Rhodia)が挙げられる。
【0066】
本発明で定義される粒状粉末は、封入された油を、粉末の総重量に対して最大30重量%、好ましくは最大25重量%、より好ましくは最大20重量%含み、それにより、大量の水溶性ポリマーマトリックスを有する堅牢な粒子が得られる。
【0067】
本発明によれば、粒状粉末は、封入された油を、粉末の総重量に対して3~30重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは5~20重量%含む。
【0068】
封入された油を低負荷とし、水溶性ポリマーマトリックスを高負荷とすることで、加工時の造粒体およびマイクロカプセルの破壊を低減させるのに役立つことから、このような、粉末の総重量に対して最大30重量%、好ましくは最大25重量%、より好ましくは最大20重量%という、封入された油の負荷が比較的低い粒状粉末が、該粉末を洗剤粉末配合物と混合する高剪断の工業的製造プロセスに耐えるのに最良に適していることが判明した。
【0069】
結果として、工業的な加工の際の破壊が限定的であるためにそのような粒子をわずかな適用量でしか必要としないことから、粒子を高い費用対効果で使用することができる。
【0070】
したがって本発明は、効果的であり、かつ高剪断を必要とする製造プロセスに耐え得る粉末洗剤を提供する。
【0071】
特定の一実施形態によれば、粒状粉末に含まれる油相がすべて封入される。
【0072】
水溶性ポリマーマトリックス内の任意に封入されていない油
一実施形態によれば、油相は、少なくとも1つの非封入部分を含む。
【0073】
「封入されていない油」とは、油相がマイクロカプセルには封入されておらず、水溶性ポリマーマトリックス内に単に閉じ込められていることであると理解されるべきである。
【0074】
この実施形態によれば、粒状粉末は、油相の総量を、粉末の総重量に対して最大45重量%、好ましくは最大35重量%含む。
【0075】
一実施形態によれば、粒状粉末は、油相を、粉末の総重量に対して3~45重量%、好ましくは5~35重量%含む。
【0076】
一実施形態によれば、粒状粉末は、封入されていない油を、粉末の総重量に対して0.1~40重量%、好ましくは10~30重量%含む。
【0077】
特定の一実施形態によれば、組成物は、
(i)洗剤活性物質を、組成物の総重量に対して10~99.9重量%、好ましくは50~99.9重量%と、
(ii)粒状粉末を、組成物の総重量に対して0.1~90重量%、好ましくは0.1~50重量%、より好ましくは0.1~20重量%、さらにより好ましくは0.1~10重量%と
を含む。
【0078】
粒状粉末の製造方法
本発明で定義される粒状粉末の製造方法には、いくつかの代替案がある。実際には、低いフレグランス負荷が得られれば、乾燥粒子を得る方法に関して制限はない。それらの方法のうち、例えば周知のフレグランス封入方法である噴霧乾燥が挙げられる。したがって、一実施形態によれば、組成物は、噴霧乾燥粒子を含む。したがって、一実施形態によれば、組成物は、
(i)水溶性ポリマーを含む水相を製造するステップと、
(ii)任意に、香料を含む油相を製造し、油相を水相と混合してエマルションを得るステップと、
(iii)ステップ(i)の水相またはステップ(ii)のエマルションを、香料を含む油性コアとポリマーシェルとを有する少なくとも1つのマイクロカプセルを含むマイクロカプセルスラリーと混合するステップと、
(iv)ステップ(iii)のスラリーを噴霧乾燥して、噴霧乾燥粒子を得るステップと
を含む方法により得られた噴霧乾燥粒子を含む粒状粉末を含み、粒状粉末は、封入された油を、粉末の総重量に対して最大30重量%含むことを特徴とする。
【0079】
上記のプロセスのステップ(iii)および/またはステップ(iv)の間、および/またはステップ(iv)の後に、シリカのような固化防止剤を加えることができる。
【0080】
しかし、押出、めっき、噴霧造粒、流動層、またはさらには室温での乾燥などの他の乾燥方法も挙げられる。
【0081】
本発明のもう1つの対象は、上記で定義された粉末洗剤組成物の製造方法であって、上記で定義された粒状粉末と洗剤活性物質とを混合するステップを含む方法である。
【0082】
粒状粉末を1つ以上の洗剤活性物質と混合する前に、前述の洗剤活性物質は、好ましくは固体形態で提供され、(最初は固体および/または液体および/またはペーストの形態の)洗剤活性物質を噴霧乾燥または乾式混合して固体混合物を得ることによって得ることができる。
【0083】
次に、本発明を例示的にさらに説明する。特許請求される本発明は、これらの実施例によって何ら限定されることが意図されていないことが理解されよう。
【0084】
実施例
実施例1
本発明の組成物に使用される粒状粉末の製造
1.香油を含むメラミン-ホルムアルデヒドマイクロカプセルの合成(マイクロカプセル1)
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、供給元:Mitsui Chemicals)と、香油(上記の表1a)参照)から構成されるコア油とを混合することによって、油相を製造した。この油相は、2%のTakenate(登録商標)D-110Nと、98%のコア油とからなっていた。封入し、Takenate D-110Nを使用してメラミン-ホルムアルデヒド壁を架橋した後、コア油中の未反応ポリイソシアネートの残留レベルは非常に低く、したがってカプセルの内部コアは、香油から構成されたコア油のみで構成されていた。
【0087】
カプセルスラリーを製造するために、アクリルアミドとアクリル酸とのコポリマーと、2種のメラミン-ホルムアルデヒド樹脂のブレンドとを水に溶解させて、水相を形成した。次に、この溶液に香料プレミックス油を加え、酢酸でpHを5に調整した。2時間かけて温度を90℃に上げて、カプセルを硬化させた。この時点でカプセルが形成され、架橋され、安定していた。次に、この混合物にSalcare SC60(アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド/アクリルアミドコポリマー)の3%水溶液を80℃で加え、80℃で2時間反応させた。次に、エチレン尿素の溶液(水中50重量%)を、通常行われるように、残留遊離ホルムアルデヒドを捕捉するための薬剤としてのアミノプラストカプセルとともに加えた。最終的なスラリーは、該スラリーの重量に対して約3重量%のエチレン尿素を含んでおり、この混合物を室温まで放冷した。水酸化ナトリウムで、最終pHを7に調整した。
【0088】
2.本発明による組成物に使用される粒状粉末の製造
以下の成分を有するエマルションA~Eを製造した:
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
ポリマーマトリックスの成分(マルトデキストリンおよびcapsul(商標)、またはcapsulTM、クエン酸およびクエン酸三カリウム)を、完全に溶解するまで45~50℃の水に加えた。エマルションEについては、自由な状態の香料Cを水相に加えた。得られた混合物に、マイクロカプセルスラリーを加えた。次に、得られた混合物を25℃(室温)で穏やかに混合した。
【0092】
給気口温度を215℃に設定し、スループットを毎時500mlに設定したSodeva Spray Dryer(供給元:フランス)を使用して、表2または3に開示されているエマルションを噴霧乾燥することにより、粒状粉末を製造した。排気口温度は105℃であった。アトマイゼーション前のエマルションは、周囲温度であった。適切な較正を使用したGC-MSにより、噴霧乾燥粒状粉末中のフレグランス油含有量を測定した。
【0093】
実施例3
粉末洗剤の製造における本発明で定義された粒状粉末の性能
1.プロセス中の粒状粉末A~Dおよびマイクロカプセルスラリー1の破壊
表5に定められた組成を有する粉末洗剤を使用して試験を行った。
【0094】
【表6】
【0095】
プロセスステップの後、GC-MSを使用して生成物の破壊性を測定し、混合中に粒状粉末カプセルからどのくらいの香料が漏出したかを定量化した。
【0096】
【表7】
【0097】
生成物製造中の破壊値を、次のように調べた。
【0098】
粒状粉末香料カプセルまたはマイクロカプセルスラリー(比較試料F)を、表5に詳述された洗剤粉末に加えた。Turbula Shakerミキサーを使用して、試料を1~15分間混合した。その後、これらの混合粉末の試料を、後続のGC-MS(Shimadzu、日本)分析に使用した。
【0099】
表6に示すように、製造プロセス中の(混合後の香料漏出%として見積もった)破壊性は、ニートマイクロカプセルスラリー(比較試料F)に対して、いずれの造粒体も著しく低い。さらに、粒状粉末のフレグランス負荷が低いほど、製造プロセス中の破壊性が低くなる。実際に、上記の結果は、フレグランス負荷が30%を超えると(典型的には、フレグランス負荷が40% - 比較粒状粉末Dの場合)、製造プロセス中の破壊性が高く、最終的な洗剤粉末組成物におけるマイクロカプセルの安定性および性能が低下することを示している。
【0100】
マイクロカプセルスラリーと比較した粒状粉末Aの粉末洗剤の嗅覚性能も評価した。感覚パネルを実施し、パネリストに、擦る前および擦った後の乾いたタオルの香料強度を、1(知覚できない香料)~7(非常に強い香料強度)の尺度を用いて評価するよう依頼した。
【0101】
図1から、粒状粉末は、マイクロカプセルスラリーよりも擦った後の効果がはるかに高いと結論付けることができる。
図1