(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】人工毛髪用繊維、頭飾品および人工毛髪用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
D01F 6/90 20060101AFI20231219BHJP
A41G 3/00 20060101ALI20231219BHJP
D01F 6/60 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
D01F6/90 301
A41G3/00 A
D01F6/60 341C
D01F6/60 351B
(21)【出願番号】P 2020572279
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2020005371
(87)【国際公開番号】W WO2020166614
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2019024819
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】堀端 篤
(72)【発明者】
【氏名】村岡 喬梓
(72)【発明者】
【氏名】武井 淳
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-246843(JP,A)
【文献】特開2012-012738(JP,A)
【文献】特開2007-332507(JP,A)
【文献】特公昭48-040689(JP,B1)
【文献】特開2007-303014(JP,A)
【文献】国際公開第2010/134581(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 6/90
A41G 3/00
D01F 6/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミドと、無機粒子と、を含有する樹脂組成物から形成された人工毛髪用繊維であって、
前記無機粒子が、タルク、合成マイカ、ガラスフレーク、および合成カオリンの中から選ばれる1種または2種以上であり、
レーザ回折法により測定される前記無機粒子の粒径分布において、体積基準の累積百分率50%相当粒子径であるD
50と体積基準の累積百分率10%相当粒子径であるD
10との比(D
50/D
10)が1.8以上
2.7以下であり、D
50が
4.0μm以上
5.5μm以下である人工毛髪用繊維。
【請求項2】
前記無機粒子のD
10が1.5μm以上3.0μm以下である請求項1に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項3】
前記樹脂組成物がさらにシランカップリング剤を含む、請求項1または2に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項4】
前記シランカップリング剤がエポキシシランまたはアミノシランである請求項3に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項5】
前記無機粒子がタルクである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項6】
前記脂肪族ポリアミドがナイロン6、ナイロン66のいずれか一方または両方である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の人工毛髪用繊維を用いた頭飾品。
【請求項8】
脂肪族ポリアミドと、無機粒子と、を含み、
前記無機粒子が、タルク、合成マイカ、ガラスフレーク、および合成カオリンの中から選ばれる1種または2種以上であり、
レーザ回折法により測定される前記無機粒子の粒径分布において、体積基準の累積百分率50%相当粒子径であるD
50と体積基準の累積百分率10%相当粒子径であるD
10との比(D
50/D
10)が1.8以上
2.7以下であり、D
50が
4.0μm以上
5.5μm以下である人工毛髪用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工毛髪用繊維、頭飾品および人工毛髪用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人工毛髪用繊維を構成する素材として、ポリアミドがある。特許文献1には、ポリアミドを含有する樹脂組成物を繊維化した人工毛髪用繊維が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリアミドを原料とした人工毛髪用繊維は、人毛に似た良好な毛質をある程度有している。近年、人工毛髪の毛質に対して、人毛により近い自然さを再現することが求められており、人工毛髪用繊維の光沢を一層抑えるとともに、毛質を人毛により近づけることが要求されている。
【0005】
そこで、本発明は、光沢が抑制され、毛質が人毛により近づけられた人工毛髪用繊維に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、脂肪族ポリアミドと、無機粒子と、を含有する樹脂組成物から形成される人工毛髪用繊維であって、レーザ回折法により測定される前記無機粒子の粒径分布において、体積基準の累積百分率50%相当粒子径であるD50と体積基準の累積百分率10%相当粒子径であるD10との比(D50/D10)が1.8以上3.0以下である人工毛髪用繊維が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、上述した人工毛髪用繊維を用いた頭飾品が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、脂肪族ポリアミドと、無機粒子と、を含み、レーザ回折法により測定される前記無機粒子の粒径分布において、体積基準の累積百分率50%相当粒子径であるD50と体積基準の累積百分率10%相当粒子径であるD10との比(D50/D10)が1.8以上3.0以下である人工毛髪用樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光沢が抑制され、毛質が人毛に近づけられた人工毛髪に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
実施形態に係る人工毛髪用繊維は脂肪族ポリアミドと無機粒子とを含む人工毛髪用樹脂組成物で構成される。以下、人工毛髪用繊維および人工毛髪用樹脂組成物の成分について詳細に説明する。
【0012】
<脂肪族ポリアミド>
本実施形態の人工毛髪用繊維および人工毛髪用樹脂組成物を構成する樹脂組成物は、脂肪族ポリアミドを含有する。
脂肪族ポリアミドは、芳香環を有さないポリアミドであり、脂肪族ポリアミドとして、ラクタムの開環重合によって形成されるn-ナイロンや、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の共縮重合反応で合成されるn,m-ナイロンが挙げられる。ラクタムの炭素原子数は、6~12が好ましく、6がさらに好ましい。脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸の炭素原子数は、それぞれ、6~12が好ましく、6がさらに好ましい。脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸は、炭素原子鎖の両末端に官能基(アミノ基又はカルボキシル基)を有するものが好ましいが、官能基は、両末端以外の位置に設けられていてもよい。炭素原子鎖は、直鎖状であることが好ましいが分岐を有していてもよい。脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6(ナイロン6)及びポリアミド66(ナイロン66)が挙げられる。耐熱性の観点からはポリアミド66が好ましい
【0013】
具体的には、ポリアミド6として、東レ株式会社製CM1007、CM1017、CM1017XL3、CM1017K、CM1026などが挙げられる。ポリアミド66として、東レ株式会社製CM3007、CM3001-N、CM3006、CM3301L、デュポン株式会社製ザイテル101、ザイテル42A、旭化成ケミカルズ株式会社製レオナ1300S、1500、1700などが挙げられる。
【0014】
脂肪族ポリアミドの重量平均分子量の下限は、4万以上が好ましく、5万以上がより好ましく、6万以上がさらに好ましい。また、脂肪族ポリアミドの重量平均分子量の上限は、15万以下が好ましく、14万以下がより好ましく、13万以下がさらに好ましい。脂肪族ポリアミドの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、得られる人工毛髪用繊維の光沢を抑えつつ、触感についても滑らかなものとすることができ、人毛の質感により一層近いものとすることができる。
【0015】
<無機粒子>
本実施形態の人工毛髪用繊維および人工毛髪用樹脂組成物を構成する無機粒子は以下で説明する粒径分布を有する。
【0016】
具体的には、本実施形態の人工毛髪用繊維および人工毛髪用樹脂組成物を構成する無機粒子は、レーザ回折法でJIS R1629に準じて測定される粒径分布において、体積基準の累積百分率50%相当粒子径であるD50と体積基準の累積百分率10%相当粒子径であるD10との比(D50/D10)の下限が1.8以上であり、1.9以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。また、上記比(D50/D10)の上限が3.0以下であり、2.7以下が好ましく、2.4以下がより好ましい。比(D50/D10)を上記範囲とすることにより、得られる人工毛髪用繊維の光沢を抑制し、人毛により近い質感を得ることができる。
【0017】
無機粒子のD50の下限は、3.0μm以上であり、3.5μm以上が好ましく、4.0μm以上がさらに好ましい。無機粒子のD50の上限は、6.0μm以下であり、5.5μm以下がより好ましく、5.0μm以下がさらに好ましい。無機粒子のD50の値を上記下限値以上とすることにより、外観が良好になる。一方、無機粒子のD50の値を、上記上限値以下とすることにより、触感を良好にできる。
また無機粒子のD50を上記数値範囲とすることにより、得られる人工毛髪用繊維の光沢と質感のバランスを良好にできる。
【0018】
無機粒子のD10の下限は、1.5μm以上であり、1.7μm以上がより好ましく、1.9μm以上がさらに好ましい。無機粒子のD10の上限は、3.0μm以下であり、2.8μm以下がより好ましく、2.6μm以下がさらに好ましい。無機粒子のD10の値を上記下限値以上とすることにより、外観が良好になる。一方、無機粒子のD10の値を、上記上限値以下とすることにより、触感を良好にできる。
また無機粒子のD10を上記数値範囲とすることにより、得られる人工毛髪用繊維の光沢と質感のバランスを良好にできる。
【0019】
なお、比(D50/D10)、D50およびD10を上記範囲に調節する方法としては、たとえば、所定の目開きの篩を用いて無機粒子を分級する方法が挙げられる。
【0020】
無機粒子としては、タルク、マイカ、ガラスフレーク、合成ハイドロタルサイト、カオリンなどフィラーが挙げられる。この中でも、得られる人工毛髪用繊維の光沢を抑制する観点から、無機粒子としてタルクを使用することが好ましい。また、無機粒子全体に対して、タルクを90質量%以上含むことが好ましく、95質量%以上含むことがより好ましく、98質量%以上含むことがさらに好ましく、100質量%含むことが特に好ましい。
【0021】
脂肪族ポリアミド100質量部に対する無機粒子の含有量の下限は0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。一方、脂肪族ポリアミド100質量部に対する無機粒子の含有量の上限は10質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。無機粒子の含有量を上記範囲とすることにより、人工毛髪用繊維の光沢を抑制し、触感や外観を人毛により近づけることができる。
【0022】
無機粒子は、後述するシランカップリング剤で表面処理が施されたものであることが好ましい。言い換えると、無機粒子の表面にシランカップリング剤が付着していることが好ましい。これによれば、光沢をより一層抑えることができる。
【0023】
本実施形態で用いられる樹脂組成物は、必要に応じて添加剤、たとえば、シランカップリング剤、難燃剤、難燃助剤、微粒子、耐熱剤、光安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、染料、可塑剤、潤滑剤等を含有してもよい。
【0024】
上記のシランカップリング剤としては、エポキシシラン、イソシアネートシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、およびメタクリルシランなどが挙げられる。これらの中でも、人工毛髪用繊維の光沢を抑制する観点からエポキシシランおよびアミノシランが好ましく用いられる。
【0025】
エポキシシランとしては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、および3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
アミノシランとしては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0026】
人工毛髪用繊維の光沢度としては、70未満が好ましく、68以下がより好ましく、67以下がさらに好ましい。これにより、毛髪の外観と触感のバランスを良好にできる
【0027】
(人工毛髪用繊維の製造方法)
実施形態に係る人工毛髪用繊維の製造方法の一例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
まず、上述した脂肪族ポリアミドを含有する樹脂組成物と上述した粒度分布を持つ無機粒子を溶融混練する。溶融混練するための装置としては、種々の一般的な混練機を用いることができる。溶融混練としては、たとえば一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどが挙げられる。これらのうちでは、二軸押出機が、混練度の調整、操作の簡便性の点から好ましい。本実施形態の人工毛髪用繊維は、ポリアミドの種類により適正な温度条件のもと、通常の溶融紡糸法で溶融紡糸することにより製造することができる。
【0029】
溶融紡糸の際、単純な円形のみならず、ノズル孔が特殊形状の紡糸ノズルを用い、人工毛髪繊維の断面形状を繭型、Y型、H型、X型、花びら型等の異形にすることもできる。
【0030】
得られた未延伸糸に対して、繊維の引張強度を向上させるために延伸処理を行う。延伸処理は、未延伸糸を一旦ボビンに巻き取ってから溶融紡糸工程とは別の工程にて延伸する2工程法や、ボビンに巻き取ることなく溶融紡糸工程から連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によってもよい。また、延伸処理は、1度で目的の延伸倍率まで延伸する1段延伸法、または2回以上の延伸によって目的の延伸倍率まで延伸する多段延伸法で行なわれる。熱延伸処理を行う場合における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することもできる。
【0031】
本実施形態の人工毛髪用繊維の繊度の下限は10dtex以上が好ましく、30dtex以上がより好ましく、35dtex以上がさらに好ましい。また、本実施形態の人工毛髪用繊維の繊度の上限は、150dtex以下が好ましく、120dtex以下がより好ましい。人工毛髪用繊維の繊度を上記範囲とすることにより、光沢を抑制しつつ、触感をより滑らかなものとすることができる。
【0032】
以上説明した人工毛髪用繊維によれば、光沢を抑制しつつ、毛質を人毛により近づけることができる。
【0033】
(頭飾品)
上述した人工毛髪用繊維は頭飾品を構成する繊維として好適に用いられる。頭飾品とは、人の頭部を飾る装飾品であり、具体的には、かつら、部分かつら、ヘアピース、ブレード、エクステンションヘア、ドールヘアー、リボン、ビーズ等である。
【0034】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 脂肪族ポリアミドと、無機粒子と、を含有する樹脂組成物から形成された人工毛髪用繊維であって、
レーザ回折法により測定される前記無機粒子の粒径分布において、体積基準の累積百分率50%相当粒子径であるD
50
と体積基準の累積百分率10%相当粒子径であるD
10
との比(D
50
/D
10
)が1.8以上3.0以下である人工毛髪用繊維。
2. 前記無機粒子のD
50
が3.0μm以上6.0μm以下である1.に記載の人工毛髪用繊維。
3. 前記無機粒子のD
10
が1.5μm以上3.0μm以下である1.または2.に記載の人工毛髪用繊維。
4. 前記樹脂組成物がさらにシランカップリング剤を含む、1.乃至3のいずれか1つに記載の人工毛髪用繊維。
5. 前記シランカップリング剤がエポキシシランまたはアミノシランである34.に記載の人工毛髪用繊維。
6. 前記無機粒子がタルクである1.乃至5.のいずれか1つに記載の人工毛髪用繊維。
7. 前記脂肪族ポリアミドがナイロン6、ナイロン66のいずれか一方または両方である1.乃至6.のいずれか1つに記載の人工毛髪用繊維。
8. 1.乃至7.のいずれか1つに記載の人工毛髪用繊維を用いた頭飾品。
9. 脂肪族ポリアミドと、無機粒子と、を含み、
レーザ回折法により測定される前記無機粒子の粒径分布において、体積基準の累積百分率50%相当粒子径であるD
50
と体積基準の累積百分率10%相当粒子径であるD
10
との比(D
50
/D
10
)が1.8以上3.0以下である人工毛髪用樹脂組成物。
【実施例1】
【0035】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
<ポリアミド>
ポリアミドとして、ナイロン66:東レ株式会社製、アミランCM3001-N(重量平均分子量Mw:50000)を用いた。重量平均分子量Mwは下記設備、条件によって測定した。
使用装置:ポンプ・・shodexDS-4、カラム・・shodex GPC HFIP-806M×2 + HFIP-803
検出器・・shodex RI-71
溶離液:ヘキサフルオロイソプロパノ-ル(+添加剤CF3COONa(5mmol/L))
前処理:メンブレンフィルタ-(0.2μm)で濾過
濃度:0.2w/v%
注入量:100μL
カラム温度:40℃
流速:1.0ml/min.
標準物質:標準ポリメチルメタクリレ-ト(PMMA)
検量線は標準PMMAで作成し、重量平均分子量MwはPMMA換算値で表した。
【0037】
<無機粒子>
無機粒子として表1に示す複数種類を用意した。タルクについては、以下のように粒度の異なる複数種類を用意した。
実施例1、5、6、8、9:日本タルク株式会社製、P-4
実施例5では、タルク100質量部と、エポキシシラン(信越シリコーン社製、「KBM-403」)3質量部とを、加熱攪拌処理し、処理量3%のエポキシシラン処理されたタルク(3%エポキシシラン処理タルク)を調製した。実施例6では、エポキシシランに代えて、アミノシラン(信越化学工業株式会社製、KBE-903、3-アミノプロピルトリエトキシシラン)を用いたことを除き、実施例5と同様にアミノシラン処理されたタルク(3%アミノシラン処理タルク)を調製した。
実施例2:日本タルク株式会社製、P-3
実施例3:日本タルク株式会社製、PAOG-3
実施例4:日本タルク株式会社製、P-6
実施例7、10、11:特開2011-73901に記載の公知の方法に準拠し、合成タルクを作製し、分級機を用いて表1に記載の所定の粒径分布とした。
実施例12:特開平11-240714号公報に記載の方法に準拠し、合成マイカを作製し、分級機を用いて表1に記載の所定の粒径分布とした。
実施例13:特開2015-214478号公報に記載の方法に準拠し、ガラスフレークを作製し、分級機を用いて表1に記載の所定の粒径分布とした。
実施例14:特開2001-172529号公報に記載の方法に準拠し、合成カオリンを作製し、分級機を用いて表1に記載の所定の粒径分布とした。
比較例1:日本タルク株式会社製、SG-200
比較例2:日本タルク株式会社製、SG-2000
比較例3:特開2011-73901に記載の公知の方法に準拠し、合成タルクを作製し、分級機を用いて表1に記載の所定の粒径分布とした。
【0038】
<無機粒子の粒径分布>
各無機粒子について、レーザ回折法(株式会社堀場製作所製:LA-920)でJIS R1629に準じて粒径分布を測定した。表1に、各無機粒子の体積基準の累積百分率50%相当粒子径であるD50、体積基準の累積百分率10%相当粒子径であるD10、および比(D50/D10)を示す。
【0039】
(人工毛髪用繊維の作製)
表1に示す成分および配合量となるように、各成分をタンブラーミキサーで混合し、φ30mm二軸押出機を用いて混練し、紡糸用の原料ペレットを得た。
【0040】
ついで、吸水率が1000ppm以下になるようにペレットを除湿乾燥した後、φ40mm単軸溶融紡糸機を用いて紡糸し、穴径0.5mm/本のダイスから排出した溶融樹脂を、約30℃の水槽を通して冷却しながら、吐出量と巻き取り速度を調整し、設定繊度の未延伸糸を作成した。φ40mm溶融紡糸機の設定温度は、脂肪族ポリアミド類と半芳香族ポリアミドの添加量の割合に応じて、適宜調整した。
【0041】
得られた未延伸糸を100℃で延伸し、その後、180℃でアニールを行い、所定維度の人工毛髪用繊維を得た。延伸倍率は3倍、アニール時の弛緩率は5%にて行った。アニール時の弛緩率とは、(アニール時の巻き取りローラの回転速度)/(アニール時の送り出しローラの回転速度)で算出される値である。
【0042】
得られた人工毛髪用繊維について、後述する評価を行った。その結果を表1に示す。
【0043】
(光沢度)
各実施例および各比較例の人工毛髪用繊維の光沢度を下記の装置および条件にて測定した。得られた結果を表1に示す。
装置:株式会社村上色彩技術研究所社製変角光度計 GP-700型
入射角:45°
感度調整ダイヤル値(COARSE):718
感度調整ダイヤル値(FINE):737
【0044】
(毛質(外観))
人工毛髪用繊維の外観が人毛に近いか否かについて、人工毛髪用繊維処理技術者により判定を行った。外観が人毛にきわめて近いと評価しものを「○」、外観が人毛とやや異なるが人毛に近いと評価したものを「△」、人毛の外観と明らかに異なると評価したものを「×」とした。外観の評価結果を表1に示す。
【0045】
(毛質(触感))
「触感」は人工毛髪用繊維に触れたときの感触であり、人工毛髪用繊維処理技術者により判定を行った。手触りが非常に滑らかで触感が特に良いと評価しものを「○」、滑らかさがやや劣るが触感が良いと評価したものを「△」、滑らかさがなく触感が良くないと評価したものを「×」とした。触感の評価結果を表1に示す。
【表1】
【0046】
表1に示すように、実施例1~14の人工毛髪用繊維は、比較例1~3の人工毛髪用繊維に比べて、光沢度が顕著に低下することが確認された。また、実施例1~14の人工毛髪用繊維は、毛質が外観、触感ともに良好であり、この中でも、実施例1~9、実施例12~14の人工毛髪用繊維は、外観が人毛にきわめて近く、かつ、触感が特に良いことが確認された。これに対して、比較例1、3では外観が人毛と異なり、比較例2では、外観が人毛と異なるとともに、触感が不良であることが確認された。
【0047】
この出願は、2019年2月14日に出願された日本出願特願2019-024819号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。