(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】金属発泡体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 1/08 20060101AFI20231219BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20231219BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20231219BHJP
B01J 35/08 20060101ALI20231219BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231219BHJP
C22C 19/03 20060101ALN20231219BHJP
C22C 21/00 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
C22C1/08 B
B01J23/755 M
B01J32/00
B01J35/08 B
B01J37/08
C22C19/03 G
C22C21/00 E
(21)【出願番号】P 2020572833
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2020076826
(87)【国際公開番号】W WO2021058706
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2020-12-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-19
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルネ ポス
(72)【発明者】
【氏名】モニカ ベアヴァイラー
(72)【発明者】
【氏名】マイケ ロース
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】佐藤 陽一
【審判官】土屋 知久
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513173号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/10
B01J 21/00 - 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に非合金領域を残存させつつ表面での合金形成を達成する金属発泡体の製造方法であって、
(a)2つの金属成分からなる金属発泡体Aを準備するステップであって、前記金属成分は、
(i)合金として存在するか、または
(ii)2つの個々の金属成分の2つの重なり合う層の構成体として存在することができ、この場合、前記金属成分の一方は前記金属発泡体の内部層を形成し、他方の金属成分は前記金属発泡体の外部層を形成し、
選択肢(i)の場合には、合金として存在する前記金属成分は、次の組み合わせのリスト:ニッケルとコバルト、ニッケルと銅から選択され、
選択肢(ii)の場合には、前記金属成分は、次の組み合わせのリスト:内部がニッケルで外部がコバルト、内部がニッケルで外部が銅、内部が鉄で外部がニッケルから選択されるものとするステップと、
(b)金属発泡体Aに金属含有粉末MPを施与して金属発泡体AXを得るステップであって、
前記金属含有粉末MPは、アルミニウムとクロムとの粉末状合金、もしくはアルミニウムとモリブデンとの粉末状合金であるステップと、
(c)金属発泡体AXの熱処理により、前記金属発泡体Aの金属成分と前記金属含有粉末MPとの間での合金形成を達成して、金属発泡体Bを得るステップであって、
前記金属発泡体AXの熱処理の最高温度は、680~715℃の範囲にあり、
かつ680~715℃の温度範囲での前記熱処理の総持続時間は、5~240秒の間にあるものとするステップと
を含む、方法。
【請求項2】
金属発泡体Aにおいて、前記2つの金属成分が、個々の金属の2つの重なり合う層の構成体として存在し、ニッケルが内部層を形成し、コバルトが外部層を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
金属発泡体Aにおいて、ニッケルとコバルトとが合金として存在する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記、ステップ(b)で使用する金属含有粉末MPが、アルミニウムとクロムとの粉末状合金である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記、ステップ(a)で使用する金属発泡体Aが、それぞれ単一の金属成分を
発泡体上に
析出させる2つの連続する電解
析出ステップによるか、または2つの金属成分を同時に
発泡体上に
析出させる単一の電解
析出ステップによるかのいずれか一方で得られ、すべての電解
析出ステップの終了後に前記
発泡体を熱分解により除去する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記金属発泡体Aにおける2つの金属成分の質量比が、1:1~20:1の範囲にあり、さらに、前記金属含有粉末MPにおける前記アルミニウムの質量の、前記クロムないしは前記モリブデンの質量に対する比が、4:1~50:1の範囲にあり、金属発泡体Bの、金属発泡体Aに対する質量比V(V=m(金属発泡体B)/m(金属発泡体A))が、1.1:1~1.5:1の範囲にある、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
(d)前記金属発泡体Bを塩基性溶液で処理するステップ
をさらに含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記塩基性溶液での前記金属発泡体Bの処理を、20~120℃の範囲の温度で5分間~8時間の範囲の時間にわたって行い、ただし、前記塩基性溶液は、2~30重量%のNaOH濃度を有するNaOH水溶液である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法により得られる、金属発泡体。
【請求項10】
請求項7または8記載の方法により得られる、金属発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本発明は、2つの金属成分からなる金属発泡体の準備、続く金属含有粉末の施与、および合金形成のための最終的な熱処理を含む、金属製成形体の製造方法に関する。熱処理の適切な温度調節および関与する金属の選択によって、合金形成を金属発泡体の上層に限定することが可能となるため、非合金領域が金属発泡体の中心領域に残ることになる。本発明はさらに、合金形成のための熱処理に続いて塩基性溶液での処理を行う方法に関する。本方法は、特に触媒を製造する際に使用される。本発明はさらに、本発明の方法により得られる、例えば支持・構造要素として、および触媒技術において使用される金属発泡体に関する。
【0002】
従来技術
金属発泡体の製造方法は、従来技術から、例えば、国際公開第2019/057533号から公知である。該明細書では、金属粉末を発泡体状金属体に施与し、続いて熱処理するため、合金が、発泡体状金属体と金属粉末との接触領域において形成されることになる。国際公開第2019/057533号には、発泡体状金属体および金属粉末用に選択可能である多数の金属および金属組み合わせ、それに加えて、合金形成のための熱処理の実施に関する一般的な記載、ならびにニッケル発泡体上のアルミニウム粉末を処理するための幾つかの具体的な例が開示されている。
【0003】
合金形成の程度は、熱処理の条件に依存する。つまり、高温での熱処理は、金属発泡体のより深い領域での合金形成をもたらすのに対して、より低い温度での熱処理は、金属発泡体の上部領域での合金形成しかもたらさず、金属発泡体の内部には非合金領域が残る。その上、発泡体状金属体および金属粉末の金属の選択が、合金形成に対して大きな影響を及ぼす。
【0004】
金属発泡体中での非合金領域の残存は、該当する金属発泡体の多数の用途に関して非常に重要であるため、それを保証する方法への需要が存在する。本発明の方法は、この需要を満たす。
【0005】
本発明
本発明による、金属発泡体の製造方法は、
(a)2つの金属成分からなる金属発泡体Aを準備するステップであって、金属成分は、
(i)合金として存在するか、または
(ii)2つの個々の金属成分の2つの重なり合う層の構成体として存在することができ、この場合、金属成分の一方は金属発泡体の内部層を形成し、他方の金属成分は金属発泡体の外部層を形成し、
選択肢(i)の場合には、合金として存在する金属成分は、次の組み合わせのリスト:ニッケルとコバルト、ニッケルと銅から選択され、
選択肢(ii)の場合には、金属成分は、次の組み合わせのリスト:内部がニッケルで外部がコバルト、内部がニッケルで外部が銅、内部が鉄で外部がニッケルから選択されるものとするステップと、
(b)金属発泡体Aに金属含有粉末MPを施与して金属発泡体AXを得るステップであって、
金属含有粉末MPは、アルミニウム粉末とクロム粉末との混合物、もしくはアルミニウム粉末とモリブデン粉末との混合物であるか、またはアルミニウムとクロムとの粉末状合金、もしくはアルミニウムとモリブデンとの粉末状合金であるかのいずれか一方であるものとするステップと、
(c)金属発泡体AXの熱処理により、金属発泡体Aの金属成分と金属含有粉末MPとの間での合金形成を達成して、金属発泡体Bを得るステップであって、
金属発泡体AXの熱処理の最高温度は、680~715℃の範囲にあり、
かつ680~715℃の温度範囲での熱処理の総持続時間は、5~240秒の間にあるものとするステップと
を含む。
【0006】
本発明との関連で得られた実験結果は、合金形成のための熱処理の条件に関する選択、特に、金属発泡体および金属粉末における金属の選択ならびに温度条件が、結果に対して著しい影響を及ぼすことを示す。本発明による方法によって、前記の金属組み合わせにおいて合金形成を金属発泡体の上層に限定することが可能となるため、非合金領域が、金属発泡体の中心領域に残ることになる。この非合金領域の存在が、特に得られる金属発泡体の化学的安定性および機械的安定性に影響を及ぼす。
【0007】
本発明に関連して、金属発泡体Aとは、発泡体状金属体と理解される。発泡体状金属体は、例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 章「Metallic Foams」(2012年7月15日にオンラインで公開、DOI: 10.1002/14356007.c16_c=01.pub2)に開示されている。原則的に、細孔径、細孔形状、層厚、面密度、幾何学的表面積、多孔度等に関して様々な形態学的特性を有する金属発泡体が適切である。好ましくは、金属発泡体Aは、400~1500g/m2の範囲の密度、400~3000μm、好ましくは400~800μmの細孔径、および0.5~10mm、好ましくは1.0~5.0mmの範囲の厚さを有する。その製造は、自体公知の方法で行われ得る。例えば、有機ポリマーからなる発泡体を2つの金属成分で順々にまたは同時にコーティングしてから、熱分解によって該ポリマーを除去してもよく、それにより金属発泡体が得られる。少なくとも1つの第1の金属またはその前駆体でコーティングするためには、有機ポリマーからなる発泡体を、第1の金属を含有する溶液または懸濁液と接触させてもよく、例えば、噴霧または浸漬によって行うことができる。化学蒸着(Chemical vapor deposition、CVD)を利用した蒸着も可能である。つまり、例えば、ポリウレタン発泡体を2つの金属で順々にコーティングしてから、そのポリウレタン発泡体を熱分解することができる。発泡体の形の成形体の製造に適切なポリマー発泡体は、好ましくは100~5000μm、特に好ましくは450~4000μm、特に450~3000μmの範囲の細孔径を有する。適切なポリマー発泡体は、好ましくは5~60mm、特に好ましくは10~30mmの層厚を有する。適切なポリマー発泡体は、好ましくは300~1200kg/m3の嵩密度を有する。比表面積は、好ましくは100~20000m2/m3、特に好ましくは1000~6000m2/m3の範囲にある。多孔度は、好ましくは0.50~0.95の範囲にある。
【0008】
本発明による方法のステップ(a)で使用する金属発泡体Aは、あらゆる任意の形、例えば、立方体、直方体、円柱等を有し得る。しかしながら、金属発泡体は、例えば、モノリスに成形されていてもよい。
【0009】
本発明による方法のステップ(b)での金属含有粉末MPの施与は、例えば、金属発泡体Aを、ローラ処理もしくは浸漬により金属含有粉末MPの組成物と接触させるか、または金属含有粉末MPの組成物を、噴霧、散布もしくは注ぎ込みで施与することにより、様々な方法で行うことができる。そのためには、金属含有粉末MPの組成物が、懸濁液または粉末の形で存在し得る。
【0010】
その際、好ましくは、本発明による方法のステップ(b)での金属発泡体Aへの金属含有粉末MPの組成物の本来の施与に先行して、バインダによる金属発泡体Aの事前含浸が行われる。含浸は、例えば、バインダの吹付けまたはバインダ中への金属発泡体Aの浸漬によって行うことができるが、それらの方法に限定はされない。そのように準備した金属発泡体Aに、次いで金属含有粉末MPの組成物を施与することができる。
【0011】
その代わりに、バインダと金属含有粉末MPの組成物とを1つのステップで施与してもよい。そのためには、金属含有粉末MPの組成物を、施与に先立ち、液状バインダ自体に懸濁させるか、または金属含有粉末MPの組成物とバインダとを補助液Fに懸濁させるかのいずれか一方である。
【0012】
バインダは、金属含有粉末MPの組成物の、金属発泡体への付着を促進する有機化合物を含む、100~400℃の温度範囲での熱処理により完全にガス状生成物に変換可能な組成物である。その際、好ましくは、有機化合物は、以下の群:ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレングリコール、それらの化合物の混合物から選択される。PEIが特に好ましい。ポリエチレンイミンの分子量は、好ましくは10000~1300000g/molの範囲にある。ポリエチレンイミン(PEI)の分子量は、好ましくは700,000~800,000g/molの範囲にある。
【0013】
補助液Fは、金属含有粉末MPの組成物とバインダとを懸濁させるため、かつ100~400℃の温度範囲での熱処理により完全にガス状生成物に変換させるために適切である必要がある。好ましくは、補助液Fを、以下の群:水、エチレングリコール、PVP、およびそれらの化合物の混合物から選択する。補助液を使用する場合、典型的には、バインダを1~10重量%の範囲の濃度で水中に懸濁させ、続いてその懸濁液中に、金属含有粉末MPの組成物を懸濁させる。
【0014】
本発明による方法のステップ(b)で使用する金属含有粉末MPは、粉末状金属成分の他に、流動性または水安定性の上昇に貢献する添加物も含有し得る。そのような添加物は、100~400℃の温度範囲での熱処理により、完全にガス状生成物に変換可能である必要がある。本発明による方法のステップ(b)で使用する金属含有粉末MPは、以下の群:アルミニウム粉末とクロム粉末との混合物、アルミニウム粉末とモリブデン粉末との混合物、アルミニウムとクロムとの粉末状合金、アルミニウムとモリブデンとの粉末状合金から選択される1つまたは複数の粉末状金属成分を含む。好ましくは、本発明による方法のステップ(b)で使用する金属含有粉末MPは、唯一の金属成分として(i)アルミニウム粉末とクロム粉末との混合物、または(ii)アルミニウムとクロムとの粉末状合金のいずれか一方を含む。特に好ましくは、本発明による方法のステップ(b)で使用する金属含有粉末MPは、唯一の金属成分として、アルミニウムとクロムとの粉末状合金を含む。
【0015】
金属含有粉末MPの組成物は、好ましくは、80~99.8重量%の範囲にある金属成分含有量を有する。その際、金属成分粒子が5μm以上200μm以下の粒径を有する組成物が好ましい。金属成分粒子の95%が5μm以上75μm以下の粒径を有する組成物が特に好ましい。組成物が、元素形態の金属成分の他に、さらに酸化型の金属成分を含有する場合がある。この酸化成分は、通常、酸化物化合物の形態、例えば、酸化物、水酸化物、および/または炭酸塩の形態で存在する。典型的には、酸化成分の質量分率は、金属粉末組成物の総質量の0.05~10重量%の範囲にある。
【0016】
本発明による方法のステップ(c)では、1つまたは複数の合金の形成を達成するために熱処理を行う。本発明との関連で得られた実験結果から、金属発泡体Aおよび金属含有粉末MPにおける金属の選択が、合金形成の進行に対して著しい影響を及ぼすことが判明した。さらにその結果から、合金形成を金属発泡体の上部領域に限定し、かつ非合金領域を金属発泡体の内部に残すためには、比較的厳密な温度制御が不可欠であることが判明した。
【0017】
本発明による方法のステップ(c)では、金属発泡体AXの熱処理により、金属発泡体Aの金属成分と金属含有粉末MPとの間での合金形成を達成して、金属発泡体Bを取得し、ただし、金属発泡体AXの熱処理の最高温度は、680~715℃の範囲にあり、かつ680~715℃の温度範囲での熱処理の総持続時間が5~240秒の間にある。
【0018】
熱処理は、金属発泡体AXの、通常は段階的な加熱、および続く室温への冷却を含む。熱処理は、不活性ガス下または還元条件下で行う。還元条件とは、水素および少なくとも1つの、反応条件下で不活性のガスを含有するガス混合物の存在と理解され、適切であるのは、例えば50体積%のN2と50体積%のH2とを含有するガス混合物である。不活性ガスとして、好ましくは窒素を使用する。加熱は、例えばベルト炉中で行ってもよい。適切な加熱速度は、10~200K/分、好ましくは20~180K/分の範囲にある。熱処理中、典型的には、まず温度を室温からおよそ300~400℃へと高め、その温度でおよそ2~30分間にわたりコーティングから水分および有機成分を除去し、次いで温度を680~715℃の範囲へと高めると、金属発泡体AXの金属成分と金属含有粉末MPの組成物との間で合金形成が起こり、次いでおよそ200℃の温度の保護ガス環境との接触により、金属発泡体を急冷する。
【0019】
本発明により関与する金属において、合金形成を金属発泡体の上部領域に限定し、かつ非合金領域を金属発泡体の内部に残すためには、ステップ(c)での金属発泡体AXの熱処理の最高温度が680~715℃の範囲にあること、さらには680~715℃の温度範囲での熱処理の総持続時間が5~240秒の間にあることが不可欠である。熱処理の持続時間は、最高処理温度の高さをある程度までは補整でき、その逆も同様であるものの、金属発泡体の上部領域での合金形成と、金属発泡体の内部での非合金領域の残存とが同時に達成される実験の頻度は、熱処理の最高温度において680~715℃の間の温度領域外にあるおよび/または680~715℃の間の温度領域での熱処理の持続時間が5~240秒の範囲外にある場合、著しく低下することが認められた。最高温度が高すぎる、および/または金属発泡体の最高温度の範囲での所在が長すぎると、合金形成が、金属発泡体の最深層まで進行して非合金領域が残らなくなる。最高温度が低すぎる、および/または金属発泡体の最高温度の範囲での所在が短すぎると、合金形成がまったく開始しなくなる。金属発泡体Aおよび金属含有粉末MPに関して本発明により関与する金属とは異なる選択を行った場合も同様に、680~715℃の間の温度領域での5~240秒の持続時間の熱処理にもかかわらず、合金形成がまったく得られないかまたは発泡体の内部に非合金領域が残らないことにつながりかねない。
【0020】
好ましい一実施形態では、金属発泡体A中の2つの金属成分の質量比は、1:1~20:1の範囲にあり、その上、金属含有粉末MP中でのアルミニウムの質量の、その他の全金属成分の質量に対する比は、4:1~50:1の範囲にあり、その上、金属発泡体Bの、金属発泡体Aに対する質量比V(V=m(金属発泡体B)/m(金属発泡体A))は、1.1:1~1.5:1の範囲にある。
【0021】
さらなる好ましい一実施形態では、金属発泡体Aにおける2つの金属成分の質量比は、1:1~10:1の範囲にあり、その上、金属含有粉末MPにおけるアルミニウムの質量の、その他の全金属成分の質量に対する比は、10:1~20:1の範囲にあり、その上、金属発泡体Bの、金属発泡体Aに対する質量比V(V=m(金属発泡体B)/m(金属発泡体A))は、1.2:1~1.4:1の範囲にある。
【0022】
さらなる一態様では、本発明はさらに、(d)金属発泡体Bを塩基性溶液で処理するステップを有する方法を含む。塩基性溶液での金属発泡体Bの処理は、施与された金属含有粉末MPの組成物の金属成分、および金属発泡体の金属成分と金属含有粉末MPの組成物との間の合金を少なくとも部分的に溶解させ、かつそのようにして金属発泡体から除去することに役立ち得る。典型的には、塩基性溶液での処理により、施与された金属含有粉末MPの組成物の金属成分、および金属発泡体の金属成分と金属含有粉末MPの組成物との間の合金の総質量の30~70%が、金属発泡体から除去される。塩基性溶液として、典型的には、NaOH、KOH、LiOH、またはそれらの混合物の塩基性水溶液を使用する。塩基性処理における温度は、通常、25~120℃の範囲に保たれる。塩基性溶液での処理の持続時間は、典型的には5分間~8時間の範囲にある。金属成分を適切に選択した場合、塩基性溶液での処理の結果として得られる金属発泡体は、例えば、国際公開第2019/057533号で開示されるように触媒として使用できる。
【0023】
好ましい一実施形態では、塩基性溶液での金属発泡体Bの処理を、20~120℃の範囲の温度で5分間~8時間の範囲の時間にわたって行い、ただし、塩基性溶液は、2~30重量%のNaOH濃度を有するNaOH水溶液である。
【0024】
さらなる一態様では、本発明はさらに、本発明による方法の1つにより得られる、コーティングされた金属発泡体を含む。
【0025】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明はさらに、金属発泡体Aにおいて、2つの金属成分が、個々の金属の2つの重なり合う層の構成体として存在し(ただし、ニッケルが内部層を形成しコバルトが外部層を形成する)、かつステップ(d)において金属発泡体Bを塩基性溶液で処理する、方法ならびにその方法によって得られる金属発泡体に関する。
【0026】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明はさらに、金属発泡体Aにおいて、ニッケルとコバルトとが合金として存在し、かつステップ(d)において金属発泡体Bを塩基性溶液で処理する、方法ならびにその方法によって得られる金属発泡体に関する。
【0027】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明はさらに、ステップ(b)で使用する金属含有粉末MPが、唯一の金属成分として(i)アルミニウム粉末とクロム粉末との混合物または(ii)アルミニウムとクロムとの粉末状合金のいずれか一方を含み、かつステップ(d)において金属発泡体Bを塩基性溶液で処理する、方法ならびにその方法によって得られる金属発泡体に関する。
【0028】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明はさらに、ステップ(b)で使用する金属含有粉末MPが、唯一の金属成分としてアルミニウムとクロムとの粉末状合金を含み、かつステップ(d)において金属発泡体Bを塩基性溶液で処理する、方法ならびにその方法によって得られる金属発泡体に関する。
【0029】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明はさらに、金属発泡体Aにおいて、2つの金属成分が、個々の金属の2つの重なり合う層の構成体として存在し(ただし、ニッケルが内部層を形成しコバルトが外部層を形成する)、かつステップ(b)で使用する金属含有粉末MPが、唯一の金属成分として(i)アルミニウム粉末とクロム粉末との混合物または(ii)アルミニウムとクロムとの粉末状合金のいずれか一方を含む、方法ならびにその方法によって得られる金属発泡体に関する。
【0030】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明はさらに、金属発泡体Aにおいて、2つの金属成分が、個々の金属の2つの重なり合う層の構成体として存在し(ただし、ニッケルが内部層を形成しコバルトが外部層を形成する)、かつステップ(b)で使用する金属含有粉末MPが、唯一の金属成分として(i)アルミニウム粉末とクロム粉末との混合物または(ii)アルミニウムとクロムとの粉末状合金のいずれか一方を含み、かつステップ(d)において金属発泡体Bを塩基性溶液で処理する、方法ならびにその方法によって得られる金属発泡体に関する。
【0031】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明はさらに、金属発泡体Aにおいて、2つの金属成分が、個々の金属の2つの重なり合う層の構成体として存在し(ただし、ニッケルが内部層を形成しコバルトが外部層を形成する)、かつステップ(b)で使用する金属含有粉末MPが、唯一の金属成分としてアルミニウムとクロムとの粉末状合金を含む、方法ならびにその方法によって得られる金属発泡体に関する。
【0032】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明はさらに、金属発泡体Aにおいて、2つの金属成分が、個々の金属の2つの重なり合う層の構成体として存在し(ただし、ニッケルが内部層を形成しコバルトが外部層を形成する)、かつステップ(b)で使用する金属含有粉末MPが、唯一の金属成分としてアルミニウムとクロムとの粉末状合金を含み、かつステップ(d)において金属発泡体Bを塩基性溶液で処理する、方法ならびにその方法によって得られる金属発泡体に関する。
【0033】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明はさらに、金属発泡体Aにおいて、ニッケルとコバルトとが合金として存在し、かつステップ(b)で使用する金属含有粉末MPが、唯一の金属成分として(i)アルミニウム粉末とクロム粉末との混合物または(ii)アルミニウムとクロムとの粉末状合金のいずれか一方を含む、方法ならびにその方法によって得られる金属発泡体に関する。
【0034】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明はさらに、金属発泡体Aにおいて、ニッケルとコバルトとが合金として存在し、かつステップ(b)で使用する金属含有粉末MPが、唯一の金属成分として(i)アルミニウム粉末とクロム粉末との混合物または(ii)アルミニウムとクロムとの粉末状合金のいずれか一方を含み、かつステップ(d)において金属発泡体Bを塩基性溶液で処理する、方法ならびにその方法によって得られる金属発泡体に関する。
【0035】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明はさらに、金属発泡体Aにおいて、ニッケルとコバルトとが合金として存在し、かつステップ(b)で使用する金属含有粉末MPが、唯一の金属成分としてアルミニウムとクロムとの粉末状合金を含む、方法ならびにその方法によって得られる金属発泡体に関する。
【0036】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明はさらに、金属発泡体Aにおいて、ニッケルとコバルトとが合金として存在し、かつステップ(b)で使用する金属含有粉末MPが、唯一の金属成分としてアルミニウムとクロムとの粉末状合金を含み、かつステップ(d)において金属発泡体Bを塩基性溶液で処理する、方法ならびにその方法によって得られる金属発泡体に関する。
【0037】
実施例
1.金属発泡体の準備
ポリウレタン発泡体上でのニッケルとコバルトとの同時電解析出に続くプラスチック成分の熱分解により製造された、コバルト-ニッケル合金からなる3つの金属発泡体(a、b、c)を準備した(Co/Ni=9:1)、(製造者:AATM、寸法:220mmx180mmx1.6mm、面密度:1000g/m2、平均細孔径:580μm)。
【0038】
2.金属含有粉末の施与
続いて、すべての金属発泡体にまずバインダ溶液を吹き付け(水中のポリエチレンイミン(2.5重量%))、次いで、粉末状アルミニウム-クロム合金(製造者:AMG、平均粒径:<63μm、Al/Cr=70/30、3重量%のエチレンビス(ステアロアミド)の添加)を乾燥粉末として施与した(およそ400g/m2)。
【0039】
3.熱処理
次いで、すべての金属発泡体を、炉中の窒素雰囲気下で熱処理した。その際、まずおよそ15分以内に室温から最高温度へと加熱し、その温度を一定時間維持してから、200℃の窒素雰囲気との接触により急冷した。
【0040】
金属発泡体a用の最高温度:
700℃、2分間
金属発泡体bの温度推移:
600℃、2分間
金属発泡体cの温度推移:
750℃、2分間
【0041】
4.合金程度の特定
最後に、金属発泡体中での合金形成の程度を特定した。そのためには、金属発泡体の横断切片を、顕微鏡および走査型電子顕微鏡下で検査した。その際、以下の結果が得られた。金属発泡体aでは表面での合金形成が起こったが金属発泡体の内部での非合金領域は残っていたのに対して、金属発泡体bでは合金形成が起こらず、金属発泡体cでは金属発泡体の内部に非合金領域が残っていないほどに合金形成が進行した。
【0042】
この結果は、本発明による熱処理に関する条件から逸脱すると、金属発泡体の内部に非合金領域を残存させつつ表面での合金形成を達成することが困難となることを明らかに示している。