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特許7405785マネージャ、制御方法、プログラム及びマネージャを備える車両
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  • 特許-マネージャ、制御方法、プログラム及びマネージャを備える車両 図1
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  • 特許-マネージャ、制御方法、プログラム及びマネージャを備える車両 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】マネージャ、制御方法、プログラム及びマネージャを備える車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/18 20120101AFI20231219BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20231219BHJP
【FI】
B60W30/18
B60W60/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021031448
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022132795
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一城
(72)【発明者】
【氏名】酒井 陽次
(72)【発明者】
【氏名】田澤 信浩
(72)【発明者】
【氏名】東 祥太
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-032894(JP,A)
【文献】特開2018-016107(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0173601(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のADASアプリケーションから複数のアプリケーションID及び複数の行動計画を受け付ける受付部と、
前記複数の行動計画を調停する調停部と、
前記調停部による調停結果に基づいて、運動要求をアクチュエータシステムに出力する出力部とを備え、
前記出力部は、前記運動要求を前記アプリケーションIDに対応するアクチュエータシステムに出力する、マネージャ。
【請求項2】
前記アプリケーションIDと、前記アプリケーションIDに対応するアクチュエータシステムに関する情報とを関連付けて記憶する記憶部を備える、請求項1に記載のマネージャ。
【請求項3】
前記調停部による調停結果に基づいて、前記運動要求を複数のアクチュエータシステムの少なくとも1つに分配する分配部を備え、
前記分配部は、前記アプリケーションIDと、前記アプリケーションIDに対応するアクチュエータシステムに関する情報とに基づいて、前記運動要求を前記アプリケーションIDに対応するアクチュエータシステムに分配する、請求項2に記載のマネージャ。
【請求項4】
車両に搭載された電子制御ユニットが実行する制御方法であって、
複数のADASアプリケーションから複数のアプリケーションID及び複数の行動計画を受け付けるステップと、
前記複数の行動計画を調停するステップと、
前記調停するステップによる調停結果に基づいて、運動要求を前記アプリケーションIDに対応するアクチュエータシステムに出力するステップとを含む、制御方法。
【請求項5】
車両に搭載された電子制御ユニットが実行するプログラムであって、前記電子制御ユニットに、
複数のADASアプリケーションから複数のアプリケーションID及び複数の行動計画を受け付けるステップと、
前記複数の行動計画を調停するステップと、
前記調停するステップによる調停結果に基づいて、運動要求を前記アプリケーションIDに対応するアクチュエータシステムに出力するステップとを実行させる、プログラム。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載のマネージャを備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のADAS(Advanced Driver Assistace System)アプリケーションからの行動要求を調停するマネージャ等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の運転支援アプリケーションのそれぞれからアクチュエータに対して出力される要求を調停し、調停結果に基づいて、アクチュエータに対する指示情報を出力する情報処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-32894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、運転支援アプリケーションは、特定のアクチュエータに対する動作要求を行うように設計されていた。これに対して、特許文献1に記載されるように、複数の運転支援アプリケーションからの要求を調停し、調停結果に基づいてアクチュエータを制御する装置の使用を前提とした場合、運転支援アプリケーションは、動作させるアクチュエータを特定することなく、制御目標をマネージャに出力するように設計される。
【0005】
しかしながら、運転支援アプリケーションの不具合等により、運転支援アプリケーションが想定外の制御目標を出力した場合、運転支援アプリケーションの機能実現にとって適切でないアクチュエータが動作してしまう可能性があり、車両の動作が不安定になることが考えられる。
【0006】
それ故に、本開示は、ADASアプリケーションの要求に基づいて不適切なアクチュエータが動作することを抑制できるマネージャ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施態様に係るマネージャは、複数のADASアプリケーションから複数のアプリケーションID及び複数の行動計画を受け付ける受付部と、複数の行動計画を調停する調停部と、調停部による調停結果に基づいて、運動要求をアクチュエータシステムに出力する出力部とを備え、出力部が、運動要求をアプリケーションIDに対応するアクチュエータシステムに出力するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、ADASアプリケーションの要求に基づいて不適切なアクチュエータが動作することを抑制できるマネージャ等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る車両制御システムのブロック図
図2】実施形態に係るマネージャの機能ブロック図
図3】記憶部に記憶される組み合わせ許可テーブルの一例を示す図
図4】実施形態に係るマネージャが実行する制御処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係る車両制御システムのブロック図である。
【0011】
図1の車両制御システムは、複数のADASアプリケーション1a~1cと、マネージャ10と、複数のアクチュエータシステム20a~20dとを備える。
【0012】
ADASアプリケーション1a~1cは、自動運転や自動駐車、アダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシスト、衝突軽減ブレーキ等の車両の運転支援機能を実現すソフトウェアである。ADASアプリケーション1a~1cは、CPU等のプロセッサとメモリと記憶装置とを有するECU等のコンピュータによって実行される。ADASアプリケーション1a~1cは、1つのECU上で実行されても良いし、2以上の複数のECUで分散して実行されても良い。図1においては、説明を簡略化するため、3つのADASアプリケーション1a~1cを示しているが、実行されるADASアプリケーションの数は限定されず、2以下または4以上であっても良い。
【0013】
ADASアプリケーション1a~1cは、車両に搭載された各種センサの出力値やドライバ入力に基づいて、車両の制御目標である行動計画を生成する。ADASアプリケーション1a~1cは、生成した行動計画と、自身の識別情報であるアプリケーションIDとをマネージャ10に出力する。
【0014】
マネージャ10は、ADASアプリケーション1a~1cから受け付けた行動計画を調停し、調停結果に基づいて、アクチュエータシステム20a~20dに対して運動要求を出力する。マネージャ10の詳細については後述する。
【0015】
アクチュエータシステム20a~20dは、マネージャ10からの運動要求を実現するシステムである。アクチュエータシステム20a~20dは、それぞれ、ECU30a~30dと、アクチュエータ(ACT)40a~40dとを含む。ECU30a~30dは、それぞれ対応するアクチュエータ40a~40dを制御する。
【0016】
図2は、実施形態に係るマネージャの機能ブロック図である。
【0017】
マネージャ10は、受付部11と、調停部12と、分配部13と、出力部14と、記憶部15とを備える。
【0018】
受付部11は、ADASアプリケーション1a~1cから行動計画と、アプリケーションIDとを受け付ける。
【0019】
調停部12は、ADASアプリケーション1a~1cから受け付けた複数の行動計画を調停する。行動計画は、例えば、車両の前後方向の運動の目標値と、車両の横方向の運動の目標値、シフトレンジ、電動パーキングブレーキの動作状態等を含むことができる。2以上のADASアプリケーションから相関のある行動計画を受け付けた場合、調停部12は、例えば、予め定められた規則に基づいて、受け付けた複数の行動計画の中から1つの行動計画を選択したり、受け付けた複数の行動計画に基づいて制御の許容範囲を設定したりすることにより調停を行う。
【0020】
分配部13は、調停部12による調停結果に基づいて、アクチュエータシステム20a~20dに対する運動要求を算出し、複数のアクチュエータシステム20a~20dの少なくとも1つに分配する。分配部13は、調停部12によって選択された行動計画を出力したADASアプリケーションのアプリケーションIDと、後述する記憶部15に記憶される組み合わせ許可テーブルとに基づいて、調停により選択された行動計画に基づく運動要求をアクチュエータシステム20a~20dのうちの1つ以上に分配する。
【0021】
出力部14は、調停部による調停結果に基づいて算出および分配された運動要求をアクチュエータシステム20a~20dに出力する。
【0022】
記憶部15は、各ADASアプリケーションのアプリケーションIDと、当該アプリケーションIDに対応するアクチュエータシステムに関する情報とを関連付けた組み合わせ許可テーブルを記憶する。
【0023】
図3は、記憶部に記憶される組み合わせ許可テーブルの一例を示す図である。
【0024】
組み合わせ許可テーブルは、ADASアプリケーションのアプリケーションIDに、ADASアプリケーションからの行動計画を実現するために動作させることが許可されているアクチュエータシステムを対応付けて定義したものである。
【0025】
図3の例では、アプリケーションIDがID_1であるADASアプリケーションからの行動計画に対し、ACTa及びACTbを動作させることが許可され、これら以外のアクチュエータを動作させることが禁止されている。同様に、アプリケーションIDがID_mであるADASアプリケーションからの行動計画に対し、ACTcを動作させることが許可され、ACTc以外のアクチュエータを動作させることが禁止されている。アプリケーションIDがID_nであるADASアプリケーションからの行動計画に対し、ACTdを動作させることが許可され、ACTd以外のアクチュエータを動作させることが禁止されている。
【0026】
組み合わせ許可テーブルでは、アクチュエータシステムの動作全体の可否を包括的に定義することに加え、アクチュエータシステムの動作の一部の可否を定義することも可能である。例えば、ADASアプリケーションが、シフトレンジの変更を含む行動計画を出力する場合、組み合わせ許可テーブルに、全てのシフトレンジへのシフト変更を許可する情報を定義しても良いし、特定のシフトレンジ(例えば、Pレンジ)以外のシフトレンジにシフト変更を許可する情報を定義しても良い。
【0027】
図4は、実施形態に係るマネージャが実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。図4に示す制御処理は、例えば、車両の始動時(IG-ON時)に開始され、ADASアプリケーションの実行中に所定サイクルで繰り返し行われる。
【0028】
ステップS1において、受付部11は、ADASアプリケーション1a~1cからアプリケーションIDと行動計画とを受け付ける。その後、処理はステップS2に進む。
【0029】
ステップS2において、調停部12は、受付部11が受け付けた複数の行動計画を調停する。その後、処理はステップS3に進む。
【0030】
ステップS3において、分配部13は、記憶部15に記憶される組み合わせ許可テーブルを参照する。その後、処理はステップS4に進む。
【0031】
ステップS4において、分配部13は、参照した組み合わせ許可テーブルに基づき、ステップS2において選択された行動計画によって動作を要求されたアクチュエータシステムが許可されたアクチュエータであるか否かを判定する。ステップS4の判定がYESの場合、処理はステップS5に進む。一方、ステップS4の判定がNOの場合は、ステップS1に進み、ステップS2で選択された行動計画は棄却される。
【0032】
ステップS5において、分配部13は、選択された行動計画に基づき、アクチュエータシステムに対する運動要求を算出する。また、分配部13は、組み合わせ許可テーブルに基づいて、ステップS2で選択された行動計画を出力したADASアプリケーションのアプリケーションIDに対応するアクチュエータシステムに運動要求を分配する。例えば、図1及び図3の例において、ADASアプリケーション1aからの行動計画が調停により選択された場合、ADASアプリケーション1aのアプリケーションID:1に対応するアクチュエータであるACT_aおよびACT_bに運動要求を分配する。運動要求の分配とは、1つの目標値(例えば、前後加速度)を実現するために、1または複数のアクチュエータシステム(例えば、パワートレイン及び/またはブレーキ)に向けた運動要求を算出することと、異なる目標値を実現するために、複数のアクチュエータシステム(例えば、シフト制御とEPB制御)に向けた運動要求を算出することとを含む。その後、処理はステップS6に進む。
【0033】
ステップS6において、出力部14は、ステップS5で算出、分配された運動要求をアクチュエータシステムに出力する。その後、処理はステップS1に進む。
【0034】
以上のように、本実施形態に係るマネージャ10は、調停結果に基づいて算出した運動要求を、調停により選択された行動計画を出力したADASアプリケーションのアプリケーションIDに対応するアクチュエータシステムに出力する。したがって、ADASアプリケーションが出力した行動計画に対して、アプリケーションIDに対応付けられていないアクチュエータシステムが動作することを抑制できる。
【0035】
また、マネージャ10の記憶部15に、アプリケーションID及びこれに対応する1以上のアクチュエータシステムに関する情報(組み合わせ許可テーブル)を記憶しているため、車両に搭載されるECUの種類等に応じて、許可するアクチュエータの定義を適宜変更することができる。
【0036】
尚、上記の実施形態で示したマネージャ10の機能は、プロセッサ(CPU)とメモリと記憶装置とを備える車載のコンピュータが実行する制御方法、あるいは、当該コンピュータに実行させるプログラム、プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な非一時的記憶媒体として実現することも可能である。また、上記の実施形態で示したマネージャ10の機能は、上記の制御方法を実装したマイクロコンピュータもしくはECU、または、記憶装置に上記の制御方法を実現するプログラムがインストールされたマイクロコンピュータもしくはECUとして実現することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本開示は、ADASアプリケーションの要求を調停し、複数のアクチュエータシステムを制御する車載制御装置として利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1a~1c ADASアプリケーション
10 マネージャ
20a~20c アクチュエータシステム
30a~30c ECU
40a~40c アクチュエータ
図1
図2
図3
図4