(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】温室フィルムの熱特性を向上させるためのアクリルビーズ
(51)【国際特許分類】
C08L 23/02 20060101AFI20231219BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20231219BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20231219BHJP
G02B 5/00 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
C08L23/02
C08L33/04
G02B5/02 B
G02B5/00 Z
(21)【出願番号】P 2021092322
(22)【出願日】2021-06-01
(62)【分割の表示】P 2016572329の分割
【原出願日】2015-06-17
【審査請求日】2021-06-29
(32)【優先日】2014-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・イー・ラフルール
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ウィリアムソン
(72)【発明者】
【氏名】セクハー・サンダラム
(72)【発明者】
【氏名】ラジェッシュ・ピー・パラドゥカル
(72)【発明者】
【氏名】ヒマル・レイ
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-519864(JP,A)
【文献】特開2013-246445(JP,A)
【文献】特開2015-067756(JP,A)
【文献】特開2015-112746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L23/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物を含む温室フィルムであって、
前記ポリマー組成物が、
a)ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、アクリルエステルとのエチレンまたはプロピレンコポリマー、ビニルアセテートとのエチレンまたはプロピレンコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、50~99重量パーセントの連続ポリマー相と、
b)1~50重量パーセントの
ポリマー粒子であって、アクリルビーズ(EXL-5136)であるポリマー粒子、
を含
む、温室フィルム。
【請求項2】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ならびにこれらのコポリマー及びブレンドからなる群から選択される、請求項1に記載の温室フィルム。
【請求項3】
前記温室フィルムが、25~300μmの範囲の厚さ、50~99%の範囲のヘイズ、85~99%の範囲の透過率、及び60~10%の範囲の熱特性を有することを特徴とし、
前記熱特性は以下の通りに定義される
熱特性=[A
i/A
0]×100
A
iは、700~1400cm
-1の透過率スペクトル下で積分された面積であり、
A
0は、100%の透過率の場合の、700~1400cm
-1の面積である
、
請求項1または2に記載の温室フィルム。
【請求項4】
立体ヒンダードフェノール、紫外光安定剤、ヒンダードアミン光安定剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される酸化防止剤を更に含む、請求項1に記載の温室フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の温室フィルムであって、
前記連続ポリマー相が1.4~1.6の屈折率を有し、および
前記ポリマー粒子と連続ポリマー相の間で、800nm~2500nmで測定される屈折率差の絶対値が、少なくとも0.06である、温室フィルム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2014年6月19日出願
の米国特許仮出願第62/014,454号の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、温室フィルム用途に好適なポリマー組成物、及びそれから作製された温室フ
ィルムに関する。
【0003】
本発明は、向上した熱特性を備える温室フィルムに関する。熱特性とは、温室の床から
放射された赤外(IR)エネルギーを吸収し、これを温室内部に戻すよう再放射するフィ
ルムの能力である。この特性は、太陽からの入熱がない夜間に特に有用であり、加熱コス
トにおける重要な節約をもたらす。
【0004】
現在の温室フィルム技術は、機械的エンボス加工から、無機粒子とポリオレフィン樹脂
とのブレンドにまで及ぶ。ポリオレフィンモノマーのコポリマーが、ポリオレフィンホモ
ポリマーと共押出しされて、多層フィルムを成形することも可能である。別の例は、ガラ
ス粒子、二酸化チタン粒子、透明炭酸カルシウム粒子、及び透明ポリマー粒子などの光散
乱物が内部に分散されたプラスチックシートである。現在、このタイプの光散乱及び光管
理フィルムに対してかなりの数の改質が実行されている。これらの技術の主な短所は、吸
塵、光吸収、及び過剰な散乱に起因する光減衰のために、光透過率が低減することである
。光透過率の犠牲に加えて、機械的強度の付随的損失もあり、これは、プラスチック母材
中の無機充填剤の封入によって顕在化する。改質の一例は、エチレンビニルアセテート(
EVA)コポリマーからフィルムを調製することである。しかしながら、これらのフィル
ムは、エステル加水分解の影響を受けやすく、これが加水分解不安定性をもたらす。
【0005】
したがって、上記短所を克服する、向上した熱特性を備えた温室フィルムが望ましいで
あろう。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、温室フィルム用途に好適なポリマー組成物、及びそれから作製された温室フ
ィルムを提供する。
【0007】
一実施形態では、本発明は、a)ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、アクリ
ルエステルとのエチレンプロピレンコポリマー、ビニルアセテートとのエチレンまたはプ
ロピレンコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む
50~99重量パーセントの連続ポリマー相と、b)0.5~10μmの平均粒子直径、
1.474~1.545の屈折率、1.2367E+10N/m2~8.4617E+1
0N/m2の平均粒子硬度、及び少なくとも60%の重合アクリルモノマー単位を有する
、1~50重量パーセントのポリマー粒子と、を含む、温室フィルム用途に好適なポリマ
ー組成物を提供する。
【0008】
別の代替的な実施形態では、本発明は、本発明のポリマー組成物を含む少なくとも1つ
の層を有する温室フィルムを更に提供する。
【0009】
代替的な実施形態では、本発明は、温室フィルムが、25~300μmの範囲の厚さ、
50~99%の範囲のヘイズ、85~99%の範囲の透過率、及び60~10%の範囲の
熱特性を有することを特徴とすることを除いては、前述の実施形態のいずれかに従う、温
室フィルムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】フィルムを通る散乱光の強度を検出器角度の関数として示す。
【
図2】アクリルビーズを含むまたは含まないフィルムのIRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、温室フィルム用途に好適なポリマー組成物、及びそれから作製された温室フ
ィルムを提供する。温室フィルム用途に好適なポリマー組成物は、ポリオレフィン、ポリ
オレフィンコポリマー、アクリルエステルとのエチレンまたはプロピレンコポリマー、ビ
ニルアセテートとのエチレンまたはプロピレンコポリマー、及びこれらの組み合わせから
なる群から選択されるポリマーを含む、50~99重量パーセントの連続ポリマー相と、
0.5~10μmの平均粒子直径、1.474~1.545の屈折率、1.2367E+
10N/m2~8.4617E+10N/m2の平均粒子硬度、及び少なくとも60%の
重合アクリルモノマー単位を有する、1~50重量パーセントのポリマー粒子と、を含む
。
【0012】
連続ポリマー相
様々な実施形態では、連続ポリマー相は、熱可塑性ポリマーマトリックス材料である。
連続ポリマー相中のポリマーの例としては、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー
、アクリルエステルとのエチレンコポリマー、アクリルエステルとのプロピレンコポリマ
ー、ビニルアセテートとのエチレンコポリマー、ビニルアセテートとのプロピレンコポリ
マー、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。様々な実施形態で
は、熱可塑性ポリマーマトリックス材料は、ポリオレフィンを含む。ポリオレフィンは、
アルケンのポリマーまたはコポリマーを含み、様々な実施形態では、2~10個の炭素原
子を有するものであり、様々な他の実施形態では、2~8個の炭素原子を含むものであり
、様々な他の実施形態では、2~4個の炭素原子を含むものである。基層において使用す
るのに好適なポリオレフィンの例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレ
ン、ならびにこれらのコポリマー及びブレンドが含まれるが、これらに限定されない。本
発明において使用されるポリオレフィン重量平均分子量は、様々な実施形態では20,0
00~500,000であり、様々な他の実施形態では50,000~300,000で
ある。
【0013】
ポリオレフィンホモ及びコポリマーも使用することができる。例としては、次のもの、
すなわち0~40重量パーセント(重量%)のエチレン、プロピレン、ブテン、オクテン
及び/またはヘキセンを含有する、ポリプロピレン及びポリエチレンホモポリマーならび
にコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
商業用等級としては、The Dow Chemical Companyから入手可
能な、VERSIFT(商標)プラストマー、DOWLEX(商標)、ENGAGE(商
標)、AFFINITY(商標)、INFUSE(商標)、及びLDPE樹脂が含まれる
が、これらに限定されない。
【0015】
任意に、連続ポリマー相は、ポリオレフィンと他の(コ)ポリマーとの相溶性または非
相溶性ブレンドを含んでもよく、あるいは無機充填剤、または滑り助剤、粘着防止剤、及
び酸化防止剤などの添加剤を含有してもよい。
【0016】
連続ポリマー相は、50~99重量パーセントの範囲で、ポリマー組成物中に存在する
。50~99重量パーセントの全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、かつ
本明細書に開示され、例えば、連続ポリマー相は、51及び83重量パーセント、60~
80重量パーセント、65~99重量パーセント、70~85重量パーセント、及び72
~98重量パーセントの範囲で、ポリマー組成物中に存在することができる。
【0017】
ポリマー粒子
ポリマー粒子は、有機ポリマー、好ましくは付加ポリマーを含み、好ましくは実質的に
球状である。平均粒子直径は、算術平均粒子直径として決定される。様々な実施形態では
、ポリマー粒子は、0.5μm以上の平均粒子直径を有する。0.5μm以上の全ての個
々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、かつ本明細書に開示され、例えば、ポリマー
粒子は、少なくとも0.7μm、少なくとも0.9、少なくとも1μm、少なくとも1.
5μm、少なくとも2μm、少なくとも2.5μm、少なくとも3μm、または少なくと
も3.5μmの平均粒子直径を有することができる。様々な実施形態では、これらの粒子
は、15μm以下の平均粒子直径を有する。15μm以下の全ての個々の値及び部分範囲
が、本明細書に含まれ、かつ本明細書で開示され、例えば、この粒子は、10μm以下、
8μm以下、6μm以下、または5.5μm以下の平均粒子直径を有することができる。
様々な実施形態では、ポリマー粒子は、単一モードを示す粒径分布を有し、半値における
粒径分布の幅は、様々な実施形態では0.1~3μmであり、様々な他の実施形態では0
.2~1.5μmである。このフィルムは、それぞれの平均直径の粒子が、直前に記載さ
れた粒径分布を有する限りにおいて、異なる平均直径を有する粒子を含有してもよい。粒
径分布は、粒度分析器を用いて決定される。
【0018】
屈折率(RI)値は、別段の定めがない限り、20℃にて、λ=589.29nmであ
る、ナトリウムD線で決定される。一般に、このポリマー粒子の屈折率は、1.474~
1.545である。1.474~1.545の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書
に含まれ、かつ本明細書に開示され、例えば、屈折率は、1.49~1.53、1.50
~1.53、または1.52~1.545である。一般に、連続ポリマー相の屈折率は、
1.4~1.6である。1.4~1.6の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含
まれ、かつ本明細書に開示され、例えば、連続ポリマー相の屈折率は、1.45~1.5
5、1.47~1.53、または1.48~1.52である。一般に、ポリマー粒子の屈
折率は、赤外領域、すなわち、800~2500nmにおいて、連続ポリマー相の屈折率
よりも大きい。
【0019】
本明細書で述べられる屈折率差は、絶対値である。一般に、ポリマー粒子と連続ポリマ
ー相との間で、800nm~2500nmで測定される屈折率差(すなわち、差の絶対値
)は、少なくとも0.06である。0.06以上の全ての個々の値及び部分範囲が、本明
細書に含まれ、かつ本明細書に開示され、例えば、屈折率差は、少なくとも0.08、少
なくとも0.09、または少なくとも0.1である。一般に、ポリマー粒子と連続ポリマ
ー相との間で、800nm~2500nmで測定される屈折率差は、0.2以下である。
0.2以下の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、かつ本明細書に開示さ
れ、例えば、屈折率差は、0.17以下、または0.15以下である。一般に、ポリマー
粒子と連続ポリマー相との間で、400nm~800nmで測定される屈折率差は、少な
くとも0.04である。0.04以上の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含ま
れ、かつ本明細書に開示され、例えば、屈折率差は、少なくとも0.05、少なくとも0
.06、少なくとも0.07、または少なくとも0.08である。一般に、ポリマー粒子
と連続ポリマー相との間で、400nm~800nmで測定される屈折率差は、0.2以
下であり、様々な他の実施形態では0.15以下であり、様々な他の実施形態では0.1
以下である。
【0020】
様々な実施形態では、ポリマー組成物中のポリマー粒子は、連続的屈折率勾配を有する
ものである(例えば、米国第2009/0097123号の「GRIN」粒子を参照)。
GRIN粒子は、粒子の中心から表面に向かって連続的に増加する屈折率を有する。一般
に、GRIN粒子は、表面において、1.46~1.7の屈折率を有する。1.46~1
.7の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、かつ本明細書に開示され、例
えば、表面における屈折率は、1.52~1.68、1.53~1.65、または1.5
4~1.6である。一般に、GRIN粒子は、中心において1.46~1.7の屈折率を
有する。1.46~1.7の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、かつ本
明細書に開示され、例えば、中心における屈折率は、1.46~1.52、1.47~1
.51、1.55~1.6、または1.6~1.7である。
【0021】
マイクロGRINレンズは、光の損失を低減し、球面収差及び色収差を最小化する。G
RIN球体レンズの屈折率は、レンズ媒体内で連続的に変化するために、特有の焦点が、
レンズを透過する光線によって画定される。その結果、光線が屈折率の変化によって曲げ
られることが観測される。光線の屈曲は、全内反射を通しての光損失の排除、及び球状レ
ンズ形状に特有の明確に定義された焦点ならびに焦点距離の創出をもたらす。
【0022】
GRINポリマー粒子は、球状の形状で、特有の形態を有する。GRINポリマー粒子
の2つの明確に定義されたケースがある。ケースIとして説明される、あまり知られてい
ない方のケースにおいて、球状粒子の屈折率は、粒子の表面からその中心コアに向かって
連続的に減少する。よりよく知られている第2のタイプのGRINポリマー粒子、すなわ
ちケースIIにおいては、粒子の屈折率は、粒子の外部の球状表面からその内部コアに向
かって連続的に増加する。これらのレンズ様ポリマー粒子は、これらの粒子が被覆されて
いるかまたは分散されているポリマーマトリックスに入射する光線の屈折を向上させる。
向上した光屈折からの、光学強度における高利得の全体的な効果は、反射及び回折に対す
る入射光線の損失における低減である。その結果として、粒子は、ケースIでは光拡散を
向上させ、ケースIIでは全内反射に対する光子の低損失を伴って透過率を向上させる。
【0023】
GRIN粒子は、GRIN粒子を生成するために用いられる種ポリマーに由来するコア
を有してもよい。一般に、GRIN粒子のコアは、粒子の95重量%以下であり、様々な
他の実施形態では80重量%以下であり、様々な他の実施形態では60重量%以下であり
、様々な他の実施形態では40重量%以下であり、様々な他の実施形態では20重量%以
下である。屈折率差を計算する目的のためのGRIN粒子の屈折率は、粒子表面における
屈折率である。屈折率は、粒子のコア内の高いものから表面上の低いものまで、及び粒子
のコア内の低いものならびに表面上の高いものまで変化することができる。したがって、
粒子の中心は、1.61の屈折率を有することができ、表面は1.40の屈折率を有する
ことができる。
【0024】
屈折率における変動は、マッハ-ツェンダー干渉顕微鏡によって測定される。シヤリン
グ干渉法として定義される測定技術は、光路差の決定を中心に構成されている。光路差は
、屈折率及びまたは厚さにおける差によって生じる2つの光路長間の差であると理解され
る。干渉顕微鏡の光路差は、物体における光路長とその周辺における光路長との間の差で
ある。光路長Sは、光線によって横断される距離dと、光線が通過する媒体の屈折率nと
の積である。
【0025】
合成による調製後に、球体は、25℃で屈折率(Nd=1.54)を有する屈折率整合
流体中の第1の浸漬によって、光学特性(光路差による屈折率分布)について評価される
。総合倍率は約110である。ピクセルが、顕微鏡スケールバーによる較正後に、物体平
面において約100nmであると推定されたCCDカメラで、干渉または縞パターンが撮
影される。
【0026】
ポリマー粒子は、アクリル系モノマーを含有することができる。アクリル系モノマーと
しては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、AA及びMAAのエステル、イ
タコン酸(IA)、クロトン酸(CA)、アクリルアミド(AM)、メタクリルアミド(
MAM)、ならびにAM及びMAMの誘導体、例えば、アルキル(メタ)アクリルアミド
が含まれる。AA及びMAAのエステルとしては、アルキル、ヒドロキシアルキル、ホス
ホアルキル及びスルホアルキルエステル、例えば、メチルメタクリレート(MMA)、エ
チルメタクリレート(EMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、ヒドロキシエチルメ
タクリレート(HEMA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロ
ピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、メチルア
クリレート(MA)、エチルアクリレート(EA)、ブチルアクリレート(BA)、2-
エチルヘキシルアクリレート(EHA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、
ベンジルアクリレート(BzA)、及びホスホアルキルメタクリレート(例えば、PEM
)が含まれるが、これらに限定されない。一般に、ポリマー粒子は、少なくとも60モル
パーセント(モル%)のアクリル系モノマー単位を含む。60モル%以上の全ての個々の
値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、かつ本明細書に開示され、例えば、ポリマー粒子
は、少なくとも65モル%のアクリル系モノマー単位、少なくとも70モル%のアクリル
系モノマー単位、少なくとも75モル%のアクリル系モノマー単位、または少なくとも8
0モル%のアクリル系モノマー単位を含むことができる。ポリマー粒子は、スチレン、α
-メチルスチレン、メチル-及びエチル-スチレンを含む2-、3-、または4-アルキ
ルスチレンが含まれ得るスチレン系モノマーも含むことができる。一実施形態では、この
スチレン系モノマーは、スチレンである。
【0027】
一般に、ポリマー粒子は、少なくとも70モル%のアクリル系及びスチレン系モノマー
単位を含む。70モル%以上の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、かつ
本明細書に開示され、例えば、ポリマー粒子は、少なくとも80モル%のアクリル系及び
スチレン系モノマー単位、少なくとも90モル%のアクリル系及びスチレン系モノマー単
位、少なくとも95モル%のアクリル系及びスチレン系モノマー単位、または少なくとも
97モル%のアクリル系及びスチレン系モノマー単位を含む。一般に、ポリマー粒子は、
0~5モル%の酸モノマー単位(例えば、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)
、イタコン酸(IA)、クロトン酸(CA))、または0.5~4%のAA及び/または
MAAも含み、少量のビニルモノマーの残留物も含有してもよい。
【0028】
様々な実施形態では、ポリマー粒子は、架橋されている。架橋は、粒子がフィルム押出
し温度で融解することを防止する。架橋されたポリマー粒子は、架橋剤を含有する。架橋
剤は、2つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーであるか、またはカップリング剤
(例えば、シラン)もしくはイオン性架橋剤(例えば、金属酸化物)である。2つ以上の
エチレン性不飽和基を有する架橋剤としては、例えば、ジビニル芳香族化合物、ジ-、ト
リ-、及びテトラ-アクリレートもしくはメタクリレートエステル、ジ-、トリ-、及び
テトラ-アリルエーテルもしくはエステル化合物ならびにアリルアクリレートまたはアリ
ルメタクリレートが含まれ得る。このようなモノマーの例としては、ジビニルベンゼン(
DVB)、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、テトラアリルペンタエリスリトー
ル、トリアリルペンタエリスリトール、ジアリルペンタエリスリトール、ジアリルフタレ
ート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、ビスフェノールAジアリルエーテ
ル、アリルスクロース、メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリアク
リレート、アリルメタクリレート(ALMA)、エチレングリコールジメタクリレート(
EGDMA)、ヘキサン-1,6-ジオールジアクリレート(HDDA)、及びブチレン
グリコールジメタクリレート(BGDMA)が含まれる。一般に、ポリマー粒子中の重合
させた架橋剤残留物の量は、10%以下である。10%以下の全ての個々の値及び部分範
囲が、本明細書に含まれ、かつ本明細書に開示され、例えば、ポリマー粒子中の重合させ
た架橋剤残留物は、9%以下、8%以下、7%以下、または6%以下である。一般に、ポ
リマー粒子中の重合させた架橋剤残留物の量は、少なくとも0.1%である。0.1%以
上の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、かつ本明細書に開示され、例え
ば、ポリマー粒子中の重合させた架橋剤残留物の量は、少なくとも0.5%、少なくとも
1%、少なくとも2%、または少なくとも3%である。一般に、架橋剤が存在する場合、
これらは、100~250の分子量を有する。100~250の全ての個々の値及び部分
範囲が、本明細書に含まれ、かつ本明細書に開示され、例えば、架橋剤は、110~23
0、110~200、または115~160の分子量を有することができる。一般に、架
橋剤は、二官能性または三官能性であり、すなわち、これらは、それぞれ、ジエチレン性
またはトリエチレン性不飽和である。様々な実施形態では、アクリル粒子の表面は、(a
)3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(MATS)、または(b)ビニ
ルトリメトキシシラン(VTMS)、及び(c)アセトアセトキシエチルメタクリレート
(AAEM)との第2段階重合中に、化学的に官能化され得る。これらのモノマーのそれ
ぞれは、温室フィルムの連続相を形成するポリオレフィンマトリックスに対して、カップ
リング剤として機能することができる。
【0029】
代替の実施形態では、ポリマー粒子の乾燥重量に基づいて、0.1~10重量%、好ま
しくは3~7重量%のシロキサンカップリング剤が、ポリマー粒子に添加される。本明細
書の「アミノシラン」とは、少なくとも1つの一級または二級アミノ基を担持する、非ポ
リマーの有機官能性アルコキシシラン分子を意味し、例えば、(3-アミノプロピル)-
トリエトキシシラン[CAS登録番号919-30-2]、(3-アミノプロピル)-ジ
エトキシ-メチルシラン、(3-アミノプロピル)-ジメチル-エトキシシラン、(3-
アミノプロピル)-トリメトキシシラン[CAS登録番号13822-56-5]、及び
N-ベータ-(アミノエチル)-ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシランなどである
。シロキサンカップリング剤は、調製後であるが、噴霧乾燥の前に、ポリマー粒子に添加
される。
【0030】
ポリマー粒子は、一般に、既知のエマルジョン重合技術によって、水性媒体中で調製さ
れ、その後得られたポリマーラテックスの噴霧乾燥を行う。噴霧乾燥は、通常、0.5~
15μmの平均直径を有する、ポリマー粒子の塊をもたらす。
【0031】
ポリマー粒子は、一般に、1重量(weight)(重量(wt))%~50重量%の
範囲で存在する。1重量%~50重量%の全ての個々の値及び範囲が、本明細書に含まれ
、かつ本明細書に開示され、例えば、ポリマー粒子は、1重量%~46重量%、1重量%
~37重量%、2重量%~37重量%、3重量%~50重量%、及び4重量%~50重量
%の範囲でスキン層中に存在することができる。
【0032】
任意の成分
ポリマー組成物は、任意に、1つ以上の顔料を更に含んでもよい。ポリマー組成物は、
0~10重量パーセントの1つ以上の顔料を含んでもよい。0~10重量パーセントの全
ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、かつ本明細書に開示され、例えば、顔
料の重量パーセントは、0.1、0.2、0.3、0.5、1、2、3、4、または5重
量パーセントの下限から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10重量パーセ
ントの上限までとすることができる。例えば、ポリマー組成物は、0~9重量パーセント
の1つ以上の顔料を含んでもよく、または代替的に、ポリマー組成物は、0.1~8重量
パーセントの1つ以上の顔料を含んでもよく、または代替的に、ポリマー組成物は、0.
1~7重量パーセントの1つ以上の顔料を含んでもよく、または代替的に、ポリマー組成
物は、0.1~6重量パーセントの1つ以上の顔料を含んでもよい。このような顔料とし
ては、DuPont,Wilmington,DE,USAからTi-Pure(商標)
の商品名で市販されている、炭酸カルシウム及び二酸化チタンが含まれるが、これらに限
定されない。任意の2つ以上の顔料の混合物も使用することができる。
【0033】
最終使用用途
本発明によるポリマー組成物は、温室フィルムに成形することができる。本発明のポリ
マー組成物は、例えば、流涎成形、または吹込みフィルムプロセスを介してフィルムに成
形されてもよい。一実施形態では、ポリマー組成物は、フィルム流涎成形、または吹込み
フィルムプロセスを介して単層フィルムに成形される。別の実施形態では、ポリマー組成
物は、多層フィルム構造に成形されてもよい。別の実施形態では、1つ以上の基材と結合
された単層または多層温室フィルム構造に成形されてもよく、温室フィルムの少なくとも
1つの層は、このポリマー組成物を含む。
【0034】
本発明による温室フィルムは、25μm~300μm、例えば75μm~275μmの
範囲の厚さを有する。本発明による温室フィルムは、50~99%、例えば52~97%
、または56~93%、または62~85%、または66~79%の範囲のヘイズを有す
る。本発明による温室フィルムは、85~99%、例えば、87~97%の範囲の透過率
を有する。温室フィルムは、60%~10%、例えば58~15%の範囲の熱特性を有す
る。
【実施例】
【0035】
アクリルビーズ(EXL-5136、直径5マイクロメートル、10重量%)を、Mi
cro-18二軸押出機を用いて、Dowlex 2045G中に混ぜ合わせた。得られ
た濃縮物を使用して、Collin流涎フィルムラインを用いて、異なる厚さの単層フィ
ルムに流涎した。ビーズを含まない参照フィルムも生成した。配合組成及び厚さを、以下
の表1に示す。
【0036】
【0037】
フィルムを、ヘイズ、透過率、及び熱特性について試験した。結果を、以下の表2に示
す。
【0038】
【0039】
熱特性のフィルム厚さに対する依存性を示すために、これらの結果を
図2にも示し、図
2は、フィルム厚さ対熱特性のプロットである。
【0040】
ゴニオフォトメーターを用いて、アクリルビーズを含有するフィルムの前方散乱特性を
定量化した。使用された試料及びそれらの特性を表3に示し、結果を
図1に示す。
【0041】
【0042】
図1は、フィルムを通して散乱された光の強度を、検出器角度の関数として示す。(0
°=フィルムの平面が、光源と検出器との間の軸に対して垂直であると同時に、検出器が
光源に正反対にある状態。
【0043】
図1は、アクリルビーズを含有するフィルムについての非常に広範な散乱を示す。透過
率がほとんど減少しない状態でのヘイズ及び前方散乱における増加は、入射光が温室全体
を通してより効率的に散乱されるために、温室フィルムにとって有益である。
【0044】
フィルムのIRスペクトルを、
図3に示す。特に、アクリルビーズを含むフィルムにつ
いて、700~1400cm
-1の領域における顕著な吸収が見られた。
【0045】
アクリルビーズを含有するフィルムの熱特性を、熱特性増強剤のEVA(ポリ(エチレ
ン-co-ビニルアセテート))を含有するフィルムのものと比較するために、10%の
EVAを、Dowlex中に混ぜ合わせ、以下の組成により流涎した。
【0046】
比較例D:10%のEVAを含む90%のDowlex 2045G(Scienti
fic Polymer Products)。EVAの特性:MI=7.5g/10分
、ビニルアセテート含有量=14重量%、d=0.932
【0047】
比較例E:10%のEVAを含む90%のDowlex 2045G(Dow DXM
-337)。EVAの特性:MI=1.6~2.1g/10分、ビニルアセテート含有量
=8~11重量%
【0048】
Dow EVA(DXM-337、8~11%のVA)を含有するフィルムの特性:
厚さ=134マイクロメートル
熱特性=44.5%
【0049】
市販のEVA(Scientific Polymer Products、14重量
%のVA))を含有するフィルムの特性
厚さ=132マイクロメートル
熱特性=41.1%
【0050】
図2のグラフに適合させた直線を用いると、10%のアクリルビーズを含む同様のフィ
ルム厚さは、約37%の熱特性を提供するであろうが、これは、同等な厚さのEVA含有
フィルムよりも良好である。このようなことが起きる理由は、アクリルビーズが、それら
のアクリレート組成に起因して、IRを吸収する-O-C=O官能基の質量分率がEVA
よりもはるかに高いためである。
【0051】
試験法
透過率及びヘイズは、ASTM法D1003に従って測定した。
【0052】
熱特性は、フィルムのFTIRスペクトルを用いて測定した。熱特性は以下の通りに定
義される。
熱特性=[Ai/A0]×100
Aiは、700~1400cm-1の透過率スペクトル下で積分された面積である。
A0は、100%の透過率の場合の、700~1400cm-1の面積である。