(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/631 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
H01R13/631
(21)【出願番号】P 2021124500
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】元重 佑一
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117711(JP,A)
【文献】特開平11-251012(JP,A)
【文献】実開昭53-029283(JP,U)
【文献】特開2002-093490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/631
H01R 13/42
H01R 4/34,4/38
H01R 12/91
H01R 43/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の端子と、前記端子を収容する端子収容室を有するハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記端子は、
前記端子収容室の内壁と係合して当該端子の軸周りの回転を規制可能な回転規制部と、
当該端子の軸方向において前記回転規制部の一方側に位置して相手側端子と電気的に接続可能な接点部と、前記軸方向において前記回転規制部の他方側に位置する端部に設けられて前記軸周りにボルトを捩じ込み可能な穴部と、を有し、
前記ハウジングは、
前記端子収容室の内部に前記端子を保持する保持部と、前記端子の前記穴部を前記端子収容室の外部に露出させる開口部と、を有し、
前記端子の前記回転規制部から前記ハウジングの前記開口部に向かうにつれて、前記端子収容室の前記内壁と前記端子との間の隙間が広がるように、構成され
、
前記ハウジングの前記端子収容室は、
前記回転規制部から前記開口部に向かうにつれて前記隙間が広がるように、当該端子収容室の前記内壁が前記軸方向に対して傾く傾斜形状を有する、ように構成される、
コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記端子の前記回転規制部は、
前記端子が前記軸周りに回転したときに前記端子収容室の前記内壁に点接触する、
コネクタ。
【請求項3】
請求項
1又は請求項2に記載のコネクタにおいて、
前記ハウジングの前記端子収容室は、
前記端子が前記軸周りに回転したときに前記回転規制部が係合することになる箇所と、前記開口部と、の間にある前記内壁が、前記傾斜形状を有する、ように構成される、
コネクタ。
【請求項4】
請求項1~請求項
3の何れか一項に記載のコネクタにおいて、
前記軸方向における前記端子の少なくとも一部の箇所が多角柱状の形状を有し、
前記少なくとも一部の前記箇所の外周角部が、前記回転規制部として働く、
コネクタ。
【請求項5】
棒状の端子と、前記端子を収容する端子収容室を有するハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記端子は、
前記端子収容室の内壁と係合して当該端子の軸周りの回転を規制可能な回転規制部と、
当該端子の軸方向において前記回転規制部の一方側に位置して相手側端子と電気的に接続可能な接点部と、前記軸方向において前記回転規制部の他方側に位置する端部に設けられて前記軸周りにボルトを捩じ込み可能な穴部と、を有し、
前記ハウジングは、
前記端子収容室の内部に前記端子を保持する保持部と、前記端子の前記穴部を前記端子収容室の外部に露出させる開口部と、を有し、
前記端子の前記回転規制部から前記ハウジングの前記開口部に向かうにつれて、前記端子収容室の前記内壁と前記端子との間の隙間が広がるように、構成され、
前記ハウジングの前記保持部は、
前記回転規制部と前記内壁との係合箇所を中心とした前記端子の傾きを許容するように、前記端子を係止する、
コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状の端子と、その端子を収容するハウジングと、を備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、棒状の端子を電気回路における電気的接続に用いることが提案されている。例えば、従来の例の一つでは、この種の棒状の端子として、円柱状のオス端子と、中空円筒状のメス端子と、が用いられている。そして、オス端子がメス端子の中空部に差し込まれ、メス端子の中空部内に設けられているバネ状接点がオス端子に押圧接触することで、双方の端子が電気的に接続されるようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の例では、端子台に固定された支持部の一端にオス端子が取り付けられ、支持部の他端に設けられた接続ソケット(穴部)に外部端子が接続されるようになっている。ここで、例えば、接続ソケットに環状の外部端子(いわゆるLA端子)をボルト締結する場合、接続ソケットが端子台に十分に強固に固定されているため、接続ソケットやオス端子の回転(即ち、連れ回り)やオス端子の傾き等が防がれることになる。ところが、このようにオス端子が接続ソケットを介して端子台に強固に固定されていると、オス端子とメス端子との接続時に端子同士の軸ズレや傾き等が生じた場合、端子間に生じる摩擦力の増大に起因して、接続作業に要する力(いわゆる挿入力)が増大する。挿入力の増大により、接続作業の作業性が損なわれる可能性がある。
【0005】
このように、棒状の端子に外部端子をボルト締結する際の端子の連れ回り等の抑制と、棒状の端子に相手側端子を接続する際の作業性の向上と、は一般に両立が困難である。
【0006】
本発明の目的の一つは、棒状の端子に外部端子を適正にボルト締結することと、棒状の端子に相手側端子を接続する際の作業性の向上と、を両立可能なコネクタの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記を特徴としている。
【0008】
棒状の端子と、前記端子を収容する端子収容室を有するハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記端子は、
前記端子収容室の内壁と係合して当該端子の軸周りの回転を規制可能な回転規制部と、
当該端子の軸方向において前記回転規制部の一方側に位置して相手側端子と電気的に接続可能な接点部と、前記軸方向において前記回転規制部の他方側に位置する端部に設けられて前記軸周りにボルトを捩じ込み可能な穴部と、を有し、
前記ハウジングは、
前記端子収容室の内部に前記端子を保持する保持部と、前記端子の前記穴部を前記端子収容室の外部に露出させる開口部と、を有し、
前記端子の前記回転規制部から前記ハウジングの前記開口部に向かうにつれて、前記端子収容室の前記内壁と前記端子との間の隙間が広がるように、構成され、
前記ハウジングの前記端子収容室は、
前記回転規制部から前記開口部に向かうにつれて前記隙間が広がるように、当該端子収容室の前記内壁が前記軸方向に対して傾く傾斜形状を有する、ように構成される、
コネクタであること。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコネクタによれば、棒状の端子の端部に設けられた穴部に外部端子をボルト締結する際、端子が有する回転規制部が端子収容室の内壁と係合することで、端子の軸回りの回転(即ち、連れ回り)が抑制される。更に、端子と端子収容室の内壁との間に隙間が設けられており、この隙間が、回転規制部からハウジングの開口部に向かうにつれて広がるようになっている。そのため、ボルト締結に伴って回転規制部と端子収容室の内壁とが強く係合しても、その係合箇所を支点として、上述した隙間内で端子が回動する(いわゆる揺動する)ように、端子が変位することができる。よって、仮にボルト締結時に端子の傾き等が生じても、端子の上述した揺動により、端子を適正位置に容易に復帰できる。別の言い方をすると、コネクタと相手側コネクタとの嵌合の際、相手側端子(例えば、上述した中空筒状のメス端子)が棒状の端子に対して傾いた状態で近づいても、その傾きに応じて棒状の端子が揺動することで、棒状の端子の姿勢を接続に適した姿勢に保つことができ、嵌合に要する力(即ち、挿入力)を低減できる。嵌合しているコネクタ同士を分離する際も、同様である。このように、本発明のコネクタによれば、棒状の端子に外部端子を直接的にボルト締結しても、端子の連れ回り等が抑制され、且つ、棒状の端子と相手側端子の挿抜も容易に行うことができる。したがって、本構成のコネクタは、棒状の端子に外部端子を適正にボルト締結することと、棒状の端子に相手側端子を接続する際の作業性の向上と、を両立可能である。
【0010】
なお、上述した「隙間」の形状は、例えば、端子収容室の内壁が端子から離れるように開口部に近づくにつれて傾斜することで実現してもよいし、端子の太さを開口部に近づくにつれて細くすることで実現してもよいし、それらの双方で実現してもよい。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、外部端子がそれぞれボルト締結された本発明の実施形態に係るオスコネクタ及びメスコネクタが、互いに嵌合した状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すオスコネクタ及びメスコネクタの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すオスコネクタが有するオス端子に外部端子をボルト締結する際の様子を説明するための
図4のB-B断面に相当する断面図である。
【
図7】外部端子のボルト締結が完了した状態における
図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るオスコネクタ1A及びメスコネクタ1Bについて説明する。
図2に示すように、オスコネクタ1Aが有するオス端子10Aには、外部端子30Aがボルト締結され、メスコネクタ1Bが有するメス端子10Bには、外部端子30Bがボルト締結される。外部端子30Aがボルト締結されたオスコネクタ1Aのオスハウジング20Aと、外部端子30Bがボルト締結されたメスコネクタ1Bのメスハウジング20Bとが嵌合することで、オスコネクタ1A及びメスコネクタ1Bは、外部端子30A,30B同士を電気的に接続するように機能する。
【0014】
以下、説明の便宜上、
図1~
図8に示すように、「前後方向」、「上下方向」、及び「左右方向」を定義する。「前後方向」、「上下方向」、及び「左右方向」は、互いに直交している。上下方向は、オスコネクタ1Aとメスコネクタ1Bとの嵌合方向と一致している。
【0015】
オスコネクタ1A及びメスコネクタ1Bは、内蔵する端子(オス端子10A及びメス端子10B)の種別が異なること、及び、上下方向の向きが逆であること、を除いて、同様の構造を有している。このため、
図2及び
図3に示すように、メスコネクタ1Bが有するメス端子10B及びメスハウジング20Bについて、オスコネクタ1Aが有するオス端子10A及びオスハウジング20Aの各部位と対応する部位には、オス端子10A及びオスハウジング20Aについて付された符号と同じ符号が付されている。
【0016】
以下、まず、オスコネクタ1Aについて説明する。オスコネクタ1Aは、
図2に示すように、オス端子10Aと、オス端子10Aを収容するオスハウジング20Aと、を備える。以下、オスコネクタ1Aを構成する各部品について順に説明する。
【0017】
まず、オス端子10Aについて説明する。オス端子10Aは、
図2等に示すように、上下方向に延びる棒状の形状を有しており、金属製の棒状部材に対して切削加工を施すことで形成される。オス端子10Aは、
図2等に示すように、基部11と、基部11の上側に位置する接点部12と、を一体に有している。接点部12は、上下方向に延びる円柱状の形状を有している。接点部12は、メス端子10Bの後述する中空円筒状の接点部12と接続されることなる(
図3等参照)。
【0018】
基部11は、
図2、
図3及び
図5に示すように、上下方向に延びる四角柱状の形状を有しており、外周側壁として、互いに平行に左右方向に対向配置された一対の外壁13と、互いに平行に前後方向に対向配置された一対の外壁14と、を備えている。
【0019】
各外壁13の上端縁には、左右方向外側に突出し且つ前後方向に延びる突条形状を有するフランジ部15が形成されている(
図2及び
図3参照)。各外壁14の上端縁は、回転規制部16として機能する。回転規制部16は、本発明の「回転規制部」に対応する。回転規制部16の作用については後述する。基部11の下端面には、
図3及び
図5に示すように、ボルトを捩じ込み可能なボルト穴17が形成されている。ボルト穴17には、外部端子30Aをボルト締結するためのボルト40A(
図2等参照)が捻じ込まれることになる。
【0020】
次いで、オスハウジング20Aについて説明する。オスハウジング20Aは、
図2及び
図3等に示すように、上下方向に延びる筒状の形状を有する樹脂成形品である。オスハウジング20Aは、端子収容部21と、端子収容部21の上側に位置する嵌合部22と、を一体に有している。
【0021】
嵌合部22は、オスハウジング20Aに収容されたオス端子10Aの接点部12の外周を隙間を開けて囲う上下方向に延びる筒状の形状を有しており(
図4参照)、オス端子10Aの接点部12を保護する機能を果たす。更に、嵌合部22は、メスハウジング20Bの筒状の嵌合部22に内挿されて嵌合可能な形状を有しており(
図3参照)、メスハウジング20Bの嵌合部22と嵌合する機能を果たす。
【0022】
端子収容部21は、オス端子10Aの基部11の外形状に対応して上下方向に延びる略四角柱状の端子収容室を画成する筒状の形状を有しており(
図3及び
図5参照)、オス端子10Aの基部11を収容する機能を果たす。端子収容部21の下端には、略矩形状の開口部21aが形成されている。
【0023】
端子収容部21の左右方向に対向配置された一対の内壁には、
図3に示すように、開口部21aの左右方向に対向配置された一対の端縁部から左右方向に互いに対向するように上方に向けて延びる一対の係止片23が形成されている。各係止片23は、左右方向に弾性変形可能である。各係止片23の先端部には、左右方向内側に突出する突起24が形成されている。
【0024】
図3から理解できるように、一対の係止片23は、オス端子10Aの一対のフランジ部15と係合することで、端子収容部21に収容されたオス端子10Aの下方への抜けを防止する機能を果たす。(非弾性変形時の)一対の係止片23の左右方向の間隔は、一対のフランジ部15の先端同士の左右方向の間隔より僅かに広い。(非弾性変形時の)一対の係止片23の突起24の先端同士の左右方向の間隔は、一対のフランジ部15の先端同士の左右方向の間隔より僅かに狭く、一対の外壁13の左右方向の間隔より僅かに広い。
【0025】
端子収容部21の前後方向に対向配置された一対の内壁25は、
図5に示すように、上端部を除いて、上下方向からみて互いに平行であり、且つ、左右方向からみて下方(開口部21a)に向かうにつれて互いの間隔が広がる向きに上下方向に対してそれぞれが傾斜した一対の平面となっている。一対の内壁25の上端部には、前後方向内側に突出する一対のストッパ部26が形成されている。一対のストッパ部26の先端同士の前後方向の間隔は、オス端子10の一対の外壁14の前後方向の間隔より狭い。一対のストッパ部26は、オス端子10Aの一対の外壁14の上端縁(=回転規制部16)と干渉することで、端子収容部21に収容されたオス端子10Aの上方への抜けを防止する機能を果たす。以上、オスコネクタ1Aを構成する各部品について説明した。
【0026】
次いで、コネクタ1Aの組み付けについて説明する。コネクタ1Aは、オス端子10Aをオスハウジング20Aに収容することで形成される。より具体的には、オス端子10Aは、開口部21aを介して、下側から、オスハウジング20Aに挿入される。この挿入は、接点部12が端子収容部21の内部から嵌合部22の内部まで移行し、且つ、一対のフランジ部15からの押圧による一対の係止片23の左右方向外側への一時的な弾性変形を経て一対のフランジ部15が弾性復帰した一対の係止片23の突起24と係合するまで継続される(
図3参照)。一対のフランジ部15が一対の係止片23の突起24と係合することで、オス端子10Aのオスハウジング20Aへの組み付けが完了し、
図4に示すコネクタ1Aが得られる。
【0027】
コネクタ1Aの組付完了状態では、
図5及び
図6に示すように、オス端子10Aの一対の外壁14の上端縁(=回転規制部16)とオスハウジング20Aの一対の内壁25とが係合することで、オス端子10Aのオスハウジング20Aに対する軸周りの回転が規制される。
【0028】
コネクタ1Aの組付完了状態では、
図5に示すように、オスハウジング20Aの一対の内壁25が上下方向に対してそれぞれ傾斜していることに起因して、内壁25とオス端子10Aの外壁14との間の隙間Sが、外壁14の上端縁(=回転規制部16)から開口部21aに向かうにつれて徐々に広がっている。このため、オスハウジング20Aに対してオス端子10Aが、上下端が前後方向に移動する向きに(即ち、左右方向に延びる軸線回りに)、隙間S内を回動(揺動)可能となっている。
【0029】
オスハウジング20Aの一対の係止片23(突起24)は、このようなオス端子10Aの隙間S内の回動を許容するように、一対のフランジ部15と係合している。即ち、一対の係止片23と一対のフランジ部15との係合は、オス端子10Aの回動を妨げない。同様に、オスハウジング20Aに収容されたオス端子10Aの接点部12の外周が、隙間を開けて筒状の嵌合部22に囲われているので、筒状の嵌合部22は、オス端子10Aの回動を妨げない。
【0030】
組み付けが完了したコネクタ1Aのオス端子10Aの下端には、
図5に示すように、外部端子30Aがボルト締結される。外部端子30Aは、本例では、
図1及び
図2に示すように、細長の矩形平板状の形状を有しており、その長手方向一端部に貫通孔31が形成されている(
図5も参照)。外部端子30Aは、貫通孔31に挿入されたボルト40Aをオス端子10Aのボルト穴17に捻じ込むことで、その長手方向他端側が後方に延びる向きで、オス端子10Aに締結固定される。
【0031】
ボルト40Aの締結の際、
図6に矢印で示す向きの締付けトルクがオス端子10Aに作用することで、一対の回転規制部16の端部P(外周角部。2箇所、
図6参照)が、オスハウジング20Aの一対の内壁25にそれぞれ点接触する(
図7及び
図8参照)。締付けトルクに起因して、端部Pが内壁25と強く押圧接触(係合)しても、その係合箇所を支点として、隙間S内を回動(揺動)するように、オス端子10Aが変位可能となっている。更に、端部Pが内壁25に点接触することで、係合箇所を支点としたオス端子10Aの隙間S内の回動をより容易かつ適正に生じさせることができる。即ち、仮にボルト40Aの締結の際にオス端子10Aの軸ズレや傾きが生じても、オス端子10Aの上述した回動により、オス端子10Aが適正位置に容易に復帰され得る。以上、オスコネクタ1Aについて説明した。
【0032】
次いで、メスコネクタ1Bについて説明する。
図2に示すように、メスコネクタ1Bは、メス端子10Bと、メス端子10Bを収容するメスハウジング20Bと、を備える。上述したように、オスコネクタ1A及びメスコネクタ1Bは、内蔵する端子(オス端子10A及びメス端子10B)の種別が異なること、及び、上下方向の向きが逆であること、を除いて、同様の構造を有している。よって、以下、メス端子10Bの接点部12を除き、メス端子10B及びメスハウジング20Bの詳細な説明を省略する。
【0033】
メス端子10Bの接点部12は、
図3に示すように、下方に開口した中空円筒状の形状を有する。接点部12の中空部は、オス端子10Aの接点部12の形状に対応した円柱状の形状を有している。接点部12の中空部を画成する内壁面には、バネ状接点27(
図3参照)が設けられている。
【0034】
組み付けが完了したメスコネクタ1Bにおいても、オスコネクタ1Aと同様、メス端子10Bの一対の外壁14の下端縁(=回転規制部16、
図2参照)と、メスハウジング20Bの一対の内壁25(図示なし)とが係合することで、メス端子10Bのメスハウジング20Bに対する軸周りの回転が規制される。
【0035】
更に、メスハウジング20Bの一対の内壁25が上下方向に対してそれぞれ傾斜していることに起因して、メスハウジング20Bに対してメス端子10Bが、上下端が前後方向に移動する向きに(即ち、左右方向に延びる軸線回りに)、隙間S(図示なし)内を回動(揺動)可能となっている。メスハウジング20Bの一対の係止片23(突起24、
図3参照)は、このようなメス端子10Bの隙間S内の回動を許容するように、メス端子10Bの一対のフランジ部15(
図2参照)と係合している。
【0036】
組み付けが完了したコネクタ1Bのメス端子10Bの上端には、
図1及び
図2に示すように、外部端子30Bがボルト締結される。外部端子30Bは、本例では、
図1及び
図2に示すように、細長の矩形平板状の形状を有しており、その長手方向一端部に貫通孔31が形成されている(
図3参照)。外部端子30Bは、貫通孔31に挿入されたボルト40Bをメス端子10Bのボルト穴17(
図2及び
図3参照)に捻じ込むことで、その長手方向他端側が前方に延びる向きで、メス端子10Bに締結固定される。
【0037】
ボルト40Bの締結の際、締付けトルクがメス端子10Bに作用することで、メス端子10Bの一対の回転規制部16(
図2参照)の端部が、メスハウジング20Bの一対の内壁25にそれぞれ点接触する。締付けトルクに起因して、当該端部が内壁25と強く押圧接触(係合)しても、その係合箇所を支点として、隙間S内を回動(揺動)するように、メス端子10Bが変位可能となっている。更に、当該端部が内壁25に点接触することで、係合箇所を支点としたメス端子10Bの隙間S内の回動をより容易かつ適正に生じさせることができる。即ち、仮にボルト40Bの締結の際にメス端子10Bの軸ズレや傾きが生じても、メス端子10Bの上述した回動により、メス端子10Bが適正位置に容易に復帰され得る。以上、メスコネクタ1Bについて説明した。
【0038】
外部端子30Aが締結されたオスコネクタ1Aと、外部端子30Bが締結されたメスコネクタ1Bとは、
図3に示すように、オス端子10Aの接点部12がメス端子10Bの接点部12の中空部に挿入されるように、且つ、オスハウジング20Aの嵌合部22がメスハウジング20Bの嵌合部22に内挿されるように、嵌合される。このとき、オス端子10Aとメス端子10Bとが互いに僅かに傾いた状態で近づいても、その傾きに応じてオス端子10A及びメス端子10Bの少なくとも一方が回動(揺動)することで、オス端子10Aの接点部12をメス端子10Bの接点部12の中空部に容易に挿入させることができ、嵌合に要する力(いわゆる挿入力)を低減できる。嵌合しているオスコネクタ1A及びメスコネクタ1Bを分離する際も、同様である。
【0039】
オスコネクタ1Aとメスコネクタ1Bとの嵌合完了状態(
図1参照)では、
図3に示すように、オス端子10Aの接点部12がメス端子10Bの接点部12の中空部に設けられたバネ状接点27と押圧接触することで、オス端子10Aとメス端子10Bとが電気的に接続される。この結果、オス端子10A及びメス端子10Bを介して、外部端子30Aと外部端子30Bとが電気的に接続される。
【0040】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るオスコネクタ1A(メスコネクタ1Bも同様)によれば、オス端子10Aの端部に設けられたボルト穴17に外部端子30Aをボルト締結する際、オス端子10Aが有する回転規制部16が端子収容部21の内壁25と係合することで、オス端子10Aの軸回りの回転(即ち、連れ回り)が抑制される。更に、オス端子10Aと端子収容部21の内壁25との間に隙間Sが設けられており、この隙間Sが、回転規制部16からオスハウジング20Aの開口部21aに向かうにつれて広がるようになっている。そのため、ボルト40Aによる外部端子30Aのボルト締結に伴って回転規制部16と端子収容部21の内壁25とが強く係合しても、その係合箇所を支点として、その隙間S内を回動する(いわゆる揺動する)ように、オス端子10Aが変位することができる。即ち、仮にボルト締結時にオス端子10Aの軸ズレや傾きが生じても、オス端子10Aの上述した回動により、オス端子10Aを適正位置に容易に復帰できる。別の言い方をすると、オスコネクタ1Aとメスコネクタ1Bとの嵌合の際、メス端子10Bがオス端子10Aに対して傾いた状態で近づいても、その傾きに応じてオス端子10Aが回動することで、オス端子10A及びメス端子10Bを容易に接続させることができ、嵌合に要する力(いわゆる挿入力)を低減できる。嵌合しているオスコネクタ1A及びメスコネクタ1Bを分離する際も、同様である。このように、オス端子10Aに外部端子30Aを直接的にボルト締結しても、オス端子10Aの連れ回り等が抑制され、且つ、オス端子10Aとメス端子10Bとの挿抜も容易に行うことができる。したがって、本実施形態に係るオスコネクタ1Aは、オスハウジング20Aに収容されたオス端子10Aに外部端子30Aを適正にボルト締結可能である。
【0041】
更に、ボルト締結時、オス端子10Aの回転規制部16と端子収容部21の内壁25とが点接触する。これにより、上述した係合箇所を支点としたオス端子10Aの回動を、より容易かつ適正に生じさせることができる。
【0042】
更に、オスハウジング20Aの係止片23(突起24)がオス端子10Aの回動を許容する状態で、オス端子10Aのフランジ部15が係止片23の突起24に係止される。よって、オス端子10Aの回動が係止片23(突起24)によって妨げられ難く、オス端子10Aの回動を容易かつ適正に生じさせることができる。
【0043】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0044】
上記実施形態では、オス端子10Aの四角柱状の形状を有する基部11の外周面の一部(具体的には、外周角部)が、端子収容部21の内壁25に係合することで、回転規制部16として機能している。これに対し、オス端子10Aの四角柱状以外の多角柱状の形状を有する基部11の外周面の一部(例えば、外周角部)が、端子収容部21の内壁25に係合することで、回転規制部16として機能してもよいし、オス端子10Aの基部11の外周面に設けられた突起部が、端子収容部21の内壁25に係合することで、回転規制部16として機能してもよい。
【0045】
更に、上記実施形態では、オスハウジング20Aの一対の内壁25が下方(開口部21a)に向かうにつれて互いの間隔が広がる向きに上下方向に対してそれぞれが傾斜していることに起因して、内壁25とオス端子10Aの外壁14との間の隙間Sが、外壁14の上端縁(=回転規制部16)から開口部21aに向かうにつれて徐々に広がっている。これに対し、オス端子10Aの一対の外壁14が下方(開口部21a)に向かうにつれて互いの間隔が狭まる向きに上下方向に対してそれぞれが傾斜していることに起因して、内壁25とオス端子10Aの外壁14との間の隙間Sが、外壁14の上端縁(=回転規制部16)から開口部21aに向かうにつれて徐々に広がっていてもよい。或いは、一対の内壁25及び一対の外壁14の双方が傾斜することで、隙間Sが、外壁14の上端縁(=回転規制部16)から開口部21aに向かうにつれて徐々に広がっていてもよい。
【0046】
更に、上記実施形態では、オスハウジング20Aの一対の係止片23が、オス端子10Aの一対のフランジ部15と係合することで、端子収容部21に収容されたオス端子10Aの下方への抜けが防止されている。これに対し、オスハウジング20Aの開口部21aをカバー部材によって塞ぐことで、端子収容部21に収容されたオス端子10Aの下方への抜けが防止されてもよい。
【0047】
更に、上記実施形態では、ボルト締結時、オス端子10Aの回転規制部16と端子収容部21の内壁25とが点接触する。これに対し、ボルト締結時、オス端子10Aの回転規制部16と端子収容部21の内壁25とが面接触してもよい。
【0048】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ1A,1Bの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
【0049】
[1]
棒状の端子(10A,10B)と、前記端子(10A,10B)を収容する端子収容室(21)を有するハウジング(20A,20B)と、を備えるコネクタ(1A,1B)であって、
前記端子(10A,10B)は、
前記端子収容室(21)の内壁(25)と係合して当該端子(10A,10B)の軸周りの回転を規制可能な回転規制部(16)と、当該端子(10A,10B)の軸方向において前記回転規制部(16)の一方側に位置して相手側端子と電気的に接続可能な接点部(12)と、前記軸方向において前記回転規制部(16)の他方側に位置する端部に設けられて前記軸周りにボルト(40A,40B)を捩じ込み可能な穴部(17)と、を有し、
前記ハウジング(20A,20B)は、
前記端子収容室(21)の内部に前記端子(10A,10B)を保持する保持部(23)と、前記端子(10A,10B)の前記穴部(17)を前記端子収容室(21)の外部に露出させる開口部(21a)と、を有し、
前記端子(10A,10B)の前記回転規制部(16)から前記ハウジング(20A,20B)の前記開口部(21a)に向かうにつれて、前記端子収容室(21)の前記内壁(25)と前記端子(10A,10B)との間の隙間(S)が広がるように、構成される、
コネクタ(1A,1B)。
【0050】
上記[1]の構成のコネクタによれば、棒状の端子の端部に設けられた穴部に外部端子をボルト締結する際、端子が有する回転規制部が端子収容室の内壁と係合することで、端子の軸回りの回転(即ち、連れ回り)が抑制される。更に、端子と端子収容室の内壁との間に隙間が設けられており、この隙間が、回転規制部からハウジングの開口部に向かうにつれて広がるようになっている。そのため、ボルト締結に伴って回転規制部と端子収容室の内壁とが強く係合しても、その係合箇所を支点として、上述した隙間内で端子が回動する(いわゆる揺動する)ように、端子が変位することができる。よって、仮にボルト締結時に端子の傾き等が生じても、端子の上述した揺動により、端子を適正位置に容易に復帰できる。別の言い方をすると、コネクタと相手側コネクタとの嵌合の際、相手側端子(例えば、上述した中空筒状のメス端子)が棒状の端子に対して傾いた状態で近づいても、その傾きに応じて棒状の端子が揺動することで、棒状の端子の姿勢を接続に適した姿勢に保つことができ、嵌合に要する力(いわゆる挿入力)を低減できる。嵌合しているコネクタ同士を分離する際も、同様である。このように、本発明のコネクタによれば、棒状の端子に外部端子を直接的にボルト締結しても、端子の連れ回り等が抑制され、且つ、棒状の端子と相手側端子の挿抜も容易に行うことができる。したがって、本構成のコネクタは、棒状の端子に外部端子を適正にボルト締結することと、棒状の端子に相手側端子を接続する際の作業性の向上と、を両立可能である。
【0051】
[2]
上記[1]に記載のコネクタ(1A,1B)において、
前記端子(10A,10B)の前記回転規制部(16)は、
前記端子(10A,10B)が前記軸周りに回転したときに前記端子収容室(21)の前記内壁(25)に点接触する、
コネクタ(1A,1B)。
【0052】
上記[2]の構成のコネクタによれば、ボルト締結時、端子の回転規制部と端子収容室の内壁とが点接触する。これにより、上述した係合箇所を支点とした端子の回動を、より容易かつ適正に生じさせることができる。
【0053】
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のコネクタ(1A,1B)であって、
前記ハウジング(20A,20B)の前記端子収容室(21)は、
前記回転規制部(16)から前記開口部(21a)に向かうにつれて前記隙間(S)が広がるように、当該端子収容室(21)の前記内壁(25)が前記軸方向に対して傾く傾斜形状を有する、ように構成される、
コネクタ(1A,1B)。
【0054】
上記[3]の構成のコネクタによれば、端子収容室の内壁が、回転規制部からハウジングの開口部に向かうにつれて隙間が広がるように、端子の軸方向に対して傾く傾斜形状を有する。これにより、上述した隙間の広がりを実現できる。
【0055】
[4]
上記[3]に記載のコネクタ(1A,1B)において、
前記ハウジング(20A,20B)の前記端子収容室(21)は、
前記端子(10A,10B)が前記軸周りに回転したときに前記回転規制部(16)が係合することになる箇所と、前記開口部(21a)と、の間にある前記内壁(25)が、前記傾斜形状を有する、ように構成される、
コネクタ(1A,1B)。
【0056】
上記[4]の構成のコネクタによれば、端子収容室の内壁と端子との係合箇所と、ハウジングの開口部と、の間の内壁が、上述した傾斜形状を有する。これにより、上述した端子の回動に影響を及ぼす内壁部分にのみ傾斜形状を設け、他の内壁部分の設計自由度を向上できる。
【0057】
[5]
上記[1]~上記[4]の何れか一つに記載のコネクタ(1A,1B)において、
前記軸方向における前記端子(10A,10B)の少なくとも一部の箇所が多角柱状の形状を有し、
前記少なくとも一部の前記箇所の外周角部が、前記回転規制部(16)として働く、
コネクタ(1A,1B)。
【0058】
上記[5]の構成のコネクタによれば、端子の少なくとも一部が多角柱状の形状を有している。ボルト締結の際、例えば、この多角柱状の形状を有する箇所の外周角部の一部が、端子収容室の内壁に係合することで、回転規制部として機能することになる。これにより、端子の回転を規制するための複雑な形状の構造物等を要することなく、回転規制部を端子に容易に設けることができる。
【0059】
[6]
上記[1]~上記[5]の何れか一つに記載のコネクタ(1A,1B)において、
前記ハウジング(20A,20B)の前記保持部(23)は、
前記回転規制部(16)と前記内壁(25)との係合箇所を中心とした前記端子(10A,10B)の傾きを許容するように、前記端子(10A,10B)を係止する、
コネクタ(1A,1B)。
【0060】
上記[6]の構成のコネクタによれば、ハウジングの保持部が上述した端子の回動を許容する状態で、端子が保持部に係止される。よって、上述した端子の回動が保持部によって妨げられ難く、端子の回動を容易かつ適正に生じさせることができる。
【符号の説明】
【0061】
1A オスコネクタ(コネクタ)
1B メスコネクタ(コネクタ)
10A オス端子(端子)
10B メス端子(端子)
16 回転規制部
17 ボルト穴(穴部)
20A オスハウジング(ハウジング)
20B メスハウジング(ハウジング)
21 端子収容部(端子収容室)
21a 開口部
23 係止片(保持部)
25 内壁
40A ボルト
40B ボルト
S 隙間