(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】バスバ
(51)【国際特許分類】
H01R 4/58 20060101AFI20231219BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01R4/58 C
H01R4/02 C
(21)【出願番号】P 2021129505
(22)【出願日】2021-08-06
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】茶縁 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】山口 康弘
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-008877(JP,A)
【文献】特開2017-123318(JP,A)
【文献】特開2004-350391(JP,A)
【文献】特開平11-297372(JP,A)
【文献】特開2015-015211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 3/00- 4/72
H01R 9/03- 9/11
H01R 13/00-13/08
H01R 13/15-13/35
H01R 43/00-43/02
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材料からなり、少なくとも2箇所以上で屈曲する屈曲部を有する配索経路を備え、
前記配索経路は、連続的に配置され、板状に形成された複数の部材を有し
、
隣り合う前記部材は、レーザー接合によって接合され
ており、
前記複数の部材は、
前記配索経路の両端側に配置される接続部材であって、電気が出入力される接続部を有する接続部材と、
前記接続部材の間に配置された導体部材と、
を含み、
前記接続部材と前記導体部材とは、特質が異なり、
前記特質は、材質、調質、板厚、板幅、表面処理の少なくとも1つを含み、
前記屈曲部は、
前記接続部材のうちの1つと前記導体部材とのレーザー接合により形成された屈曲部と、
前記導体部材に形成された屈曲部と、
を含む
バスバ。
【請求項2】
前記導体部材は、前記接続部材より板厚が薄く、かつ、板幅が広く形成されている請求項
1に記載のバスバ。
【請求項3】
前記導体部材は、前記接続部材より柔らかい材質で形成されている請求項
1又は2に記載のバスバ。
【請求項4】
前記接続部材は、銅を含み、
前記導体部材は、アルミニウムを含む請求項
1から3のいずれか1項に記載のバスバ。
【請求項5】
前記接続部材と前記導体部材とは、銅とアルミニウムとを含むクラッド材を介して接合されている請求項4に記載のバスバ。
【請求項6】
前記配索経路は、異なるバッテリスタックの間を電気的に接続する請求項1から
5のいずれか1項に記載のバスバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バスバとしては、導電材料からなり、少なくとも2箇所以上で屈曲する屈曲部を有する配索経路を備えたものが知られている(特許文献1参照)。配索経路は、1つの板状の部材で形成されている。
【0003】
1つの板状の部材は、1枚の平板状の母材に対して、プレス加工を施すことによって、配索経路に沿った形状に形成される。或いは、1つの板状の部材は、1本の線状の母材に対して、フォーミング加工を施すことによって、配索経路に沿った形状に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プレス加工で配索経路に沿った部材を形成させる場合には、用いる金型の複雑化や製造工程が多いなど、高コスト化していた。フォーミング加工で配索経路に沿った部材を形成させる場合には、屈曲部の曲げRが小さいときに割れなどが生じるなど、製造要件に対応できないことがあった。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、様々な配索経路に容易に対応することができるバスバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係るバスバは、導電材料からなり、少なくとも2箇所以上で屈曲する屈曲部を有する配索経路を備え、前記配索経路は、連続的に配置され、板状に形成された複数の部材を有し、前記複数の部材のうち少なくとも2つの部材は、特質が異なり、隣り合う前記部材は、レーザー接合によって接合されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、様々な配索経路に容易に対応することができるバスバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】異なるバッテリスタック間に本実施形態に係るバスバが適用されたブロック図である。
【
図2】本実施形態に係るバスバの一例を示す平面図である。
【
図3】本実施形態に係るバスバの他例を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態に係るバスバの他例を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態に係るバスバの他例を示す斜視図である。
【
図6】本実施形態に係るバスバの接続部材を配置したときの平面図である。
【
図7】
図6に示す接続部材に導体部材を接合したときの平面図である。
【
図8】本実施形態に係るバスバの他例を示す平面図である。
【
図9】本実施形態に係るバスバの他例を示す平面図である。
【
図10】本実施形態に係るバスバの他例を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本実施形態に係るバスバについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0011】
図1,
図2に示すように、本実施形態に係るバスバ1は、導電材料からなり、例えば、車両に搭載される異なるバッテリスタック3,3の間を電気的に接続する。バスバ1は、バッテリスタック3,3の間に配置された周辺部材(不図示)との干渉を避けるために、少なくとも2箇所以上で屈曲する屈曲部5を有する配索経路7を備えている。配索経路7は、連続的に配置され、板状に形成された複数の部材9を有する。
【0012】
複数の部材9は、少なくとも2つの部材9の特質が異なる。ここで、特質とは、材質、調質、板厚、板幅、表面処理などを示すものとする。例えば、特質としての材質が異なれば、その部材が持つ重さや硬さなど、固有の性質が異なる。複数の部材9は、特質の異なる接続部材11と、導体部材13とを有する。
【0013】
接続部材11は、配索経路7の両端側に配置される第1接続部材15と、第2接続部材17とを有する。第1接続部材15と第2接続部材17とには、バッテリスタック3,3に電気的に接続される接続部19がそれぞれ設けられている。接続部19は、例えば、ボルトなどの締結部材(不図示)が締結される締結部となっている。
【0014】
第1接続部材15は、例えば、バッテリスタック3との電気的な接続に優れ、締結部材の締結に適した銅からなる。なお、第1接続部材15は、銅を主成分とする銅合金であってもよい。第2接続部材17は、例えば、バッテリスタック3との電気的な接続に優れ、締結部材の締結に適したアルミニウムを主成分とする6000番台のアルミニウム合金からなる。なお、接続部材11に用いる材料は、導電性や剛性に優れた材料であればよく、第1接続部材15と第2接続部材17とを同一の材料としてもよい。例えば、第1接続部材15は、アルミニウム合金としてもよい。また、第2接続部材17は、銅、或いは銅合金としてもよい。
【0015】
第1接続部材15と第2接続部材17とは、プレス加工、或いはフォーミング加工によって、四角形の板状に形成される。第1接続部材15と第2接続部材17とは、単純な四角形状であるので、容易に加工を行うことができ、製造コストを低減することができる。ここでは、第1接続部材15と第2接続部材17とは、同一の板厚と板幅であり、長さが異なる。なお、第1接続部材15と第2接続部材17とが同一の材料であり、板厚、板幅、長さが同一である場合には、同一の加工方法で第1接続部材15と第2接続部材17とを成形することができ、製造コストをさらに低減することができる。第1接続部材15と第2接続部材17との間には、導体部材13が配置されている。
【0016】
導体部材13は、配索経路7において、第1接続部材15と第2接続部材17との間に配置される第1導体部材21と、第2導体部材23とを有する。第1導体部材21と第2導体部材23とは、例えば、接続部材11より柔らかく成形性に優れたアルミニウムを主成分とする1000番台のアルミニウム合金からなる。なお、導体部材13に用いる材料は、導電性や成形性に優れた材料であればよく、第1導体部材21と第2導体部材23とを異なる材料としてもよい。
【0017】
第1導体部材21と第2導体部材23とは、プレス加工、或いはフォーミング加工によって、配索経路7に対応した形状に成形される。第1導体部材21は、四角形の板状に形成されている。第1導体部材21は、用いられた材料が接続部材11の材料より柔らかく、接続部材11より板厚が薄くされている。このため、第1導体部材21は、接続部材11より成形性が優れており、容易に加工を行うことができ、製造コストを低減することができる。第1導体部材21は、接続部材11より板幅が広くされている。このため、第1導体部材21は、接続部材11より表面積が大きく、接続部材11より放熱性が高められている。
【0018】
第2導体部材23は、1つの屈曲部5を有するように板状に形成されている。第2導体部材23は、用いられた材料が接続部材11の材料より柔らかく、接続部材11より板厚が薄くされている。このため、第2導体部材23は、接続部材11より成形性が優れており、屈曲部5を形成させる加工を容易に行うことができ、製造コストを低減することができる。なお、第2導体部材23の板厚は、第1導体部材21と同一となっているが、接続部材11より板厚が薄ければ、第1導体部材21より板厚を厚くしてもよい。また、第2導体部材23の板幅は、接続部材11と同一となっているが、放熱性を高めるために、接続部材11の板幅より広くしてもよい。
【0019】
このような接続部材11と導体部材13とからなる複数の部材9は、配索経路7に沿って配置され、互いに当接する部分がレーザー接合によって接合される。ここで、第1接続部材15と第1導体部材21とは、異なる金属(ここでは銅とアルミニウム)からなる。このため、第1接続部材15と第1導体部材21とを、直接、接合させてしまうと、金属間化合物が発生し、接合強度が低くなってしまう。そこで、第1接続部材15と第1導体部材21とは、クラッド材25を介して接合されている。なお、第2接続部材17を、第1接続部材15と同様に、銅、或いは銅合金(第2導体部材23と異なる材料)とした場合には、第2接続部材17と第2導体部材23とを、クラッド材25を介して接合してもよい。
【0020】
クラッド材25は、第1接続部材15と第1導体部材21と同種の金属(ここでは銅とアルミニウム)を含む導電材料からなる。クラッド材25は、例えば、銅とアルミニウムとを爆発させる、或いは銅とアルミニウムとを圧延することによって形成される。クラッド材25は、第1接続部材15と第1導体部材21との間に配置され、第1接続部材15と第1導体部材21とのそれぞれにレーザー接合によって接合される。このようにクラッド材25を介在させることにより、第1接続部材15と第1導体部材21との間に金属間化合物が発生することがなく、接合強度を保持することができる。
【0021】
このようなバスバ1における複数の部材9の接合の一例としては、まず、第1接続部材15の長さ方向の一端面にクラッド材25を当接して配置し、互いに当接する部分をレーザー接合によって接合する。次に、第1導体部材21の幅方向の一端面である接合面27にクラッド材25の端面である接合面29を当接して配置し、接合面27,29が位置する部分をレーザー接合によって接合する。第1接続部材15(クラッド材25)と第1導体部材21との接合により、配索経路7における屈曲部5が形成される。
【0022】
次に、第1導体部材21の長さ方向の一端面である接合面31に第2導体部材23の幅方向の一端面である接合面33を当接して配置し、接合面31,33が位置する部分をレーザー接合によって接合する。第1導体部材21と第2導体部材23との接合により、配索経路7における屈曲部5が形成される。なお、第2導体部材23には、配索経路7における屈曲部5が形成されている。そして、第2導体部材23の幅方向の一端面である接合面35に第2接続部材17の長さ方向の一端面である接合面37を当接して配置し、接合面35,37が位置する部分をレーザー接合によって接合する。第2導体部材23と第2接続部材17との接合により、配索経路7における屈曲部5が形成される。
【0023】
このように複数の部材9をレーザー接合によって連続的に接合することにより、少なくとも2箇所以上で屈曲する屈曲部5を有する配索経路7を形成することができる。このため、1つの部材を、プレス加工やフォーミング加工を用いて配索経路7に沿った形状に成形する必要がなく、様々な形状の配索経路に容易に対応することができる。また、特質の異なる部材9を接合することにより、配索経路7の様々な箇所で最適の部材を配置することができる。
【0024】
なお、バスバ1は、複数の部材9が同一平面上に配置されているが、これに限るものではない。例えば、
図3~
図5に示すように、複数の部材9を立体的に配置させ、複数の部材9を連続的にレーザー接合によって接合してもよく、立体的な配索経路に対しても対応することができる。また、屈曲部5における屈曲角度は、90度に限るものではなく、配索経路の屈曲形状に合わせて、屈曲部5の屈曲角度は90度未満、或いは90度を超えてもよい。
【0025】
ここで、配索経路7の両側に配置される第1接続部材15と第2接続部材17とは、異なるバッテリスタック3,3のように、固定された固定点に対して接続部19,19が位置しなければならない。しかしながら、1つの部材を配索経路7に沿って成形した場合、製造公差によって、接続部19,19の位置がズレてしまう可能性がある。そこで、複数の部材9の接合部分には、公差吸収部39が設けられている。
【0026】
公差吸収部39において、第1接続部材15(ここではクラッド材25)と第1導体部材21との接合部分では、第1接続部材15の接合面29と第1導体部材21の接合面27との幅が異なっている。第1接続部材15の接合面29は、長さ方向の第1導体部材21と対向する端面となっており、第1接続部材15の板幅を有している。第1導体部材21の接合面27は、幅方向の第1接続部材15と対向する端面となっており、第1導体部材21の長さを有している。この公差吸収部39では、第1接続部材15の幅方向に公差が生じたとしても、第1接続部材15の接合面29に対して、第1接続部材15の幅方向に第1導体部材21を移動させることにより、公差を吸収することができる。なお、第1導体部材21の長さは、配索経路7に合わせた所定の長さ以上に設定されている。このため、例えば、
図2の右側に第1導体部材21を配置させたとしても、第1接続部材15の接合面29に対する第1導体部材21の接合面27の接合代が足りなくなることがなく、接合強度を保持することができる。
【0027】
公差吸収部39において、第1導体部材21と第2導体部材23との接合部分では、第1導体部材21の接合面31と第2導体部材23の接合面33との幅が異なっている。第1導体部材21の接合面31は、長さ方向の第2導体部材23と対向する端面となっており、第1導体部材21の板幅を有している。第2導体部材23の接合面33は、第1接続部材15側から屈曲部5までの部分の幅方向の第1導体部材21と対向する端面となっており、第1接続部材15側から屈曲部5までの長さを有している。この公差吸収部39では、第1導体部材21の幅方向に公差が生じたとしても、第2導体部材23の接合面33に対して、第1導体部材21の幅方向に第1導体部材21を移動させることにより、公差を吸収することができる。なお、第2導体部材23の第1接続部材15側から屈曲部5までの部分の長さは、配索経路7に合わせた所定の長さ以上に設定されている。このため、例えば、
図2の上側に第1導体部材21を配置させたとしても、第1導体部材21の接合面31に対する第2導体部材23の接合面33の接合代が足りなくなることがなく、接合強度を保持することができる。
【0028】
公差吸収部39において、第2導体部材23と第2接続部材17との接合部分では、第2導体部材23の接合面35と第2接続部材17の接合面37との幅が異なっている。第2導体部材23の接合面35は、屈曲部5から第2接続部材17側までの部分の幅方向の第2接続部材17と対向する端面となっており、屈曲部5から第2接続部材17側までの長さを有している。第2接続部材17の接合面37は、長さ方向の第2導体部材23と対向する端面となっており、第2接続部材17の板幅を有している。この公差吸収部39では、第2接続部材17の幅方向に公差が生じたとしても、第2接続部材17の接合面37に対して、第2接続部材17の幅方向に第2導体部材23を移動させることにより、公差を吸収することができる。なお、第2導体部材23の屈曲部5から第2接続部材17側までの部分の長さは、配索経路7に合わせた所定の長さ以上に設定されている。このため、例えば、
図2の左側に第2導体部材23を配置させたとしても、第2接続部材17の接合面37に対する第2導体部材23の接合面35の接合代が足りなくなることがなく、接合強度を保持することができる。
【0029】
このような公差吸収部39における公差吸収の一例を
図6,
図7を用いて説明する。なお、
図6,
図7では、クラッド材25と第2導体部材23とが省略されており、導体部材13は第1導体部材21のみとしている。また、第1接続部材15と第1導体部材21との公差吸収部39は、接合面41,43となっている。さらに、第1導体部材21と第2接続部材17との公差吸収部39は、接合面45,47となっている。また、接合面41,43からなる公差吸収部39の平面方向と接合面45,47からなる公差吸収部39の平面方向とは、交差する方向となっている。詳細には、接合面41,43からなる公差吸収部39の平面方向と接合面45,47からなる公差吸収部39の平面方向とは、直交する方向となっている。
【0030】
まず、
図6に示すように、接続部19が形成された第1接続部材15と第2接続部材17とを、接続部19の位置を所定の位置で固定するように配置する。次に、
図7に示すように、第1接続部材15と第2接続部材17との間に、第1接続部材15の接合面41に対して接合面43を、第2接続部材17の接合面45に対して接合面47を当接するように、第1導体部材21を配置する。このとき、第1接続部材15及び第2接続部材17の長さ方向に公差がある場合には、第1接続部材15の接合面41と第1導体部材21の接合面43との公差吸収部39で公差を吸収する。第1接続部材15及び第2接続部材17の幅方向に公差がある場合には、第1導体部材21の接合面47と第2接続部材17の接合面45との公差吸収部39で公差を吸収する。そして、レーザー接合によって、接合面41,43と接合面45,47とをそれぞれ接合する。
【0031】
このようにバスバ1に公差吸収部39を設けることにより、配索経路7における製造公差を吸収することができる。このため、様々な配索経路に対して、寸法精度がばらつくことなく、対応することができる。特に、接続部材11の接続部19の位置がズレることがなく、電気的な接続信頼性を保持することができる。また、接合面41,43からなる公差吸収部39の平面方向と接合面45,47からなる公差吸収部39の平面方向とを交差する方向とすることにより、2つの交差する方向に対して公差を吸収することができる。
【0032】
なお、公差吸収部39による公差吸収は、複数の部材9が同一の平面上に配置された場合に限るものではなく、
図3~
図5に示すバスバ1のように複数の部材9が立体的に配置されている場合にも適用することができる。例えば、
図3に示すバスバ1において、第1接続部材15と導体部材13との接合部分では、第1接続部材15の接合面49と導体部材13の接合面51とに公差吸収部39を適用することができる。第1接続部材15の接合面49は、板厚方向の導体部材13と対向する端面(
図3では下面)となっており、第1接続部材15の長さを有している。導体部材13の接合面51は、長さ方向の第1接続部材15と対向する端面となっており、導体部材13の板厚を有している。この公差吸収部39では、第1接続部材15の長さ方向に公差が生じたとしても、第1接続部材15の接合面49に対して、第1接続部材15の長さ方向に導体部材13を移動させることにより、公差を吸収することができる。なお、導体部材13の板幅を第1接続部材15の板幅より広く設定することにより、接合面49,51からなる公差吸収部39によって、第1接続部材15の幅方向の公差を吸収することができる。
【0033】
ここで、バスバ1は、バッテリスタック3,3の間を電気的に接続する部材であるため、電気的な接続信頼性を向上するために、表面処理としてのめっき処理を施すことが好ましい。しかしながら、バスバ1が1つの部材から成形されている場合、バスバ1の全てにめっき処理を施す必要があるが、めっきの使用量が多く高コスト化していた。また、めっきの使用量を削減するために、バスバ1の接続部19以外の部分をマスキングしてめっき処理を施すことも考えられるが、マスキング作業が必要であり、高コスト化してしまう。そこで、バスバ1では、接続部材11のみにめっき処理が施されている。
【0034】
このようなめっき処理が施されるバスバ1の一例を
図8,
図9を用いて説明する。なお、
図8では、バスバ1が、第1接続部材15と、第1導体部材21と、第2接続部材17とで構成されている。
図9では、バスバ1が、第1接続部材15と、第1導体部材21と、第2導体部材23とで構成されている。また、
図8,
図9では、公差吸収部39については省略している。
【0035】
図8に示すように、バスバ1は、第1接続部材15と、第1導体部材21と、第2接続部材17とを、レーザー接合によって接合することにより、連続的に形成されている。第1接続部材15と第1導体部材21とは、第1接続部材15の長さ方向の一端面である接合面53と、第1導体部材21の幅方向の第1接続部材15と対向する端面である接合面55とを当接し、レーザー接合によって接合されている。第1導体部材21と第2接続部材17とは、第1導体部材21の長さ方向の一端面である接合面57と、第2接続部材17の幅方向の第1導体部材21と対向する端面である接合面59とを当接し、レーザー接合によって接合されている。
【0036】
このようなバスバ1において、第1接続部材15及び第2接続部材17には、例えば、プレス加工やフォーミング加工によって成形された後、表面処理としてのめっき処理が施されている。一方、第1導体部材21には、例えば、プレス加工やフォーミング加工によって成形された後、表面処理としてのめっき処理が施されていない。このため、第1接続部材15と第1導体部材21と第2接続部材17とを接合した状態では、第1接続部材15及び第2接続部材17のみにめっき処理が施されている。従って、マスキング作業を必要とせずに、接続部19を有する第1接続部材15及び第2接続部材17にめっき処理が施された状態とすることができ、低コスト化することができる。加えて、めっきの使用量を削減し、低コスト化することができる。
【0037】
図9に示すように、バスバ1は、第1接続部材15と、第1導体部材21と、第2導体部材23とを、レーザー接合によって接合することにより、連続的に形成されている。第1接続部材15と第1導体部材21とは、第1接続部材15の長さ方向の一端面である接合面61と、第1導体部材21の幅方向の第1接続部材15と対向する端面である接合面63とを当接し、レーザー接合によって接合されている。第1導体部材21と第2導体部材23とは、第1導体部材21の長さ方向の一端面である接合面65と、第2導体部材23の幅方向の第1導体部材21と対向する端面である接合面67とを当接し、レーザー接合によって接合されている。
【0038】
このようなバスバ1において、第1接続部材15には、例えば、プレス加工やフォーミング加工によって成形された後、表面処理としてのめっき処理が施されている。一方、第1導体部材21及び第2導体部材23には、例えば、プレス加工やフォーミング加工によって成形された後、表面処理としてのめっき処理が施されていない。このため、第1接続部材15と第1導体部材21と第2導体部材23とを接合した状態では、第1接続部材15のみにめっき処理が施されている。従って、マスキング作業を必要とせずに、接続部19を有する第1接続部材15にめっき処理が施された状態とすることができ、低コスト化することができる。加えて、めっきの使用量を削減し、低コスト化することができる。なお、表面処理としてのめっき処理が施された第2接続部材17を、第2導体部材23にレーザー接合によって接合してもよい。
【0039】
このように接続部材11に表面処理としてのめっき処理を施すことにより、バッテリスタック3,3との電気的な接続信頼性を高めることができる。なお、接続部材11に表面処理としてのめっき処理を施すことは、
図3~
図5に示すバスバ1のように複数の部材9が立体的に配置されている場合にも適用することができる。立体的なバスバ1において、めっき処理された接続部材11とめっき処理されていない導体部材13とを接合させる場合には、同一平面上に配置された接合面同士を当接させ、レーザー接合によって接合することが好ましい。
【0040】
例えば、
図3に示すバスバ1では、第1接続部材15と導体部材13との接合部分において、
図10に示すように、導体部材13の一部が、第1接続部材15と同一平面上に位置するように導体部材13を屈曲させる。そして、同一平面上に位置する第1接続部材15の端面である接合面69と、導体部材13の端面である接合面71とを当接し、当接した接合面69,71の部分をレーザー接合によって接合する。
【0041】
図3で示すバスバ1において、第1接続部材15の接合面49と導体部材13の接合面51とを接合する場合では、第1接続部材15側からレーザー照射したとき、導体部材13の位置が見え難く、レーザーを照射する位置が特定し難い。また、
図3で示す接合面49,51の接合では、第1接続部材15側からレーザー照射したとき、導体部材13側まで溶かしての溶接になるので、溶接品質が低下する可能性があった。これに対して、
図10に示すように、同一平面上に位置する接合面69,71を接合することにより、接合部を視認し易く、作業性を向上することができる。また、接合面69,71の接合境界に沿って直接溶接することができ、反対面まで溶かす必要がなく、溶接品質を向上することができる。
【0042】
このようなバスバ1では、導電材料からなり、少なくとも2箇所以上で屈曲する屈曲部5を有する配索経路7を備えている。また、配索経路7は、連続的に配置され、板状に形成された複数の部材9を有する。さらに、複数の部材9のうち少なくとも2つの部材9は、特質が異なる。そして、隣り合う部材9,9は、レーザー接合によって接合されている。
【0043】
このため、1つの部材を、プレス加工やフォーミング加工を用いて配索経路7に沿った形状に成形する必要がなく、様々な形状の配索経路に容易に対応することができる。また、特質の異なる部材9を接合することにより、配索経路7の様々な箇所で最適の部材を配置することができる。
【0044】
従って、このようなバスバ1では、様々な配索経路に容易に対応することができる。
【0045】
また、複数の部材9は、配索経路7の両端側に配置され電気が出入力される接続部19を有する接続部材11,11と、接続部材11,11の間に配置された導体部材13とを有する。そして、接続部材11と導体部材13とは、特質が異なる。このため、接続部材11を電気的な接続に優れた部材とし、導体部材13を成形性に優れた部材とすることで、電気的な接続信頼性を向上しつつ、様々な配索経路に対応することができる。
【0046】
さらに、導体部材13は、接続部材11より板厚が薄く、かつ、板幅が広く形成されている。このため、導体部材13の板厚が薄いので、剛性を低下させ、導体部材13の成形性を向上することができる。また、導体部材13の板幅が広いので、表面積を増大させ、導体部材13の放熱性を向上することができる。
【0047】
また、導体部材13は、接続部材11より柔らかい材質で形成されている。このため、導体部材13の加工を行い易く、導体部材13の成形性を向上することができる。
【0048】
さらに、導体部材13は、少なくとも1箇所に屈曲部5を有する。導体部材13は、接続部材11より柔らかい材質で形成されているので、導体部材13に屈曲部5を容易に設けることができる。
【0049】
また、接続部材11は、銅を含み、導体部材13は、アルミニウムを含む。このため、接続部材11を電気的な接続に優れた部材とし、導体部材13を成形性に優れた部材とすることができる。
【0050】
さらに、接続部材11と導体部材13とは、銅とアルミニウムとを含むクラッド材25を介して接合されている。このため、接続部材11と導体部材13との間に、異種金属による金属間化合物が発生することがなく、接続部材11と導体部材13との接合強度を保持することができる。
【0051】
また、配索経路7は、異なるバッテリスタック3,3の間を電気的に接続する。このため、バッテリスタック3,3間に設計される様々な配索経路に対して、容易に対応することができる。
【0052】
さらに、バスバ1は、導電材料からなり、連続的に配置されて配索経路7を形成する板状に形成された複数の部材9を備えている。また、隣り合う部材9,9は、レーザー接合によって接合されている。そして、接合される隣り合う部材9,9の間には、互いの接合面の幅が異なる公差吸収部39が設けられている。
【0053】
このため、1つの部材で配索経路7を形成するときに発生する製造公差を、公差吸収部39によって吸収することができる。従って、このようなバスバ1では、設計された配索経路7に対して、精度よく対応することができる。
【0054】
また、複数の部材9は、少なくとも3つの部材9を有する。さらに、少なくとも2箇所の接合される隣り合う部材9,9の間には、公差吸収部39が設けられている。そして、それぞれの公差吸収部39における接合面の平面方向は、交差する方向となっている。このため、複数の交差する方向に対して公差を吸収することができる。
【0055】
また、それぞれの公差吸収部39における接合面の平面方向は、直交する方向となっている。このため、複数の直交する方向に対して公差を吸収することができる。
【0056】
さらに、配索経路7の両端側に配置される部材9,9は、電気が出入力される接続部19を有する接続部材11である。このため、公差吸収部39によって公差を吸収することで、接続部19,19の位置がズレることがなく、電気的な接続信頼性を保持することができる。
【0057】
また、接続部19は、締結部材が締結される締結部である。このため、公差吸収部39によって公差を吸収することで、固定点である接続部19,19の位置がズレることがなく、締結部材を安定して締結することができ、電気的な接続信頼性を保持することができる。
【0058】
さらに、バスバ1は、導電材料からなり、連続的に配置されて配索経路7を形成する板状に形成された複数の部材9を備えている。また、隣り合う部材9,9は、レーザー接合によって接合されている。さらに、複数の部材9は、配索経路7の両端側に配置され電気が出入力される接続部19を有する接続部材11,11と、接続部材11,11の間に配置された導体部材13とを有する。そして、複数の部材9では、接続部材11,11のみにめっき処理が施されている。
【0059】
このため、1つの部材で配索経路7を形成したときのように、マスキング作業を必要とせずに、接続部19を有する接続部材11,11にめっき処理が施された状態とすることができ、低コスト化することができる。加えて、めっきの使用量を削減し、低コスト化することができる。従って、このようなバスバ1では、低コスト化することができる。
【0060】
また、接続部材11,11と導体部材13とは、同一平面上に位置する部分の接合面を当接させて接合されている。このため、接合部を視認し易く、作業性を向上することができる。また、接合面の接合境界に沿って直接溶接することができ、溶接品質を向上することができる。
【0061】
さらに、バスバ1は、導電材料からなり、連続的に配置されて配索経路7を形成する板状に形成された複数の部材9を備えている。また、隣り合う部材9,9は、レーザー接合によって接合されている。さらに、複数の部材9は、配索経路7の一端側に配置され電気が出入力される接続部19を有する接続部材11と、接続部材11に対して同一平面上に位置する部分の接合面を当接させて接合される導体部材13とを有する。そして、複数の部材9では、接続部材11のみにめっき処理が施されている。
【0062】
このため、1つの部材で配索経路7を形成したときのように、マスキング作業を必要とせずに、接続部19を有する接続部材11にめっき処理が施された状態とすることができ、低コスト化することができる。加えて、めっきの使用量を削減し、低コスト化することができる。また、接続部材11と導体部材13とは、同一平面上に位置する部分の接合面を当接させて接合しているので、接合部を視認し易く、作業性を向上することができる。また、接合面の接合境界に沿って直接溶接することができ、溶接品質を向上することができる。従って、このようなバスバ1では、低コスト化することができる。
【0063】
また、複数の部材9は、配索経路7の他端側に配置され電気が出入力される接続部19を有する接続部材11を有する。また、接続部材11は、導体部材13に対して同一平面上に位置する部分の接合面を当接させて接合される。そして、複数の部材9では、接続部材11,11のみにめっき処理が施されている。このため、配索経路7の両端側に配置される接続部材11,11のみにめっき処理を施すことができ、低コストで、電気的な接続信頼性を保持することができる。
【0064】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0065】
例えば、本実施形態に係るバスバでは、異なるバッテリスタック間を電気的に接続しているが、これに限らず、例えば、電源と機器との間、機器と機器との間など、バスバをどのような電気部材の間に配置してもよい。
【0066】
また、導体部材には、1つの屈曲部が設けられているが、これに限らず、導体部材に2つ以上の屈曲部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 バスバ
3 バッテリスタック
5 屈曲部
7 配索経路
9 部材
11 接続部材
13 導体部材
19 接続部
25 クラッド材