IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コネクタ、及び、コネクタの製造方法 図1
  • 特許-コネクタ、及び、コネクタの製造方法 図2
  • 特許-コネクタ、及び、コネクタの製造方法 図3
  • 特許-コネクタ、及び、コネクタの製造方法 図4
  • 特許-コネクタ、及び、コネクタの製造方法 図5
  • 特許-コネクタ、及び、コネクタの製造方法 図6
  • 特許-コネクタ、及び、コネクタの製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】コネクタ、及び、コネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/405 20060101AFI20231219BHJP
   H01R 43/24 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01R13/405
H01R43/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021151567
(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公開番号】P2023043776
(43)【公開日】2023-03-29
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 紘明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徹
(72)【発明者】
【氏名】早坂 暢
(72)【発明者】
【氏名】竹田 和也
(72)【発明者】
【氏名】細野 龍矢
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 純
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-114970(JP,A)
【文献】特開2014-072169(JP,A)
【文献】特開2003-272798(JP,A)
【文献】特開2008-006721(JP,A)
【文献】特開2003-254844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/405
H01R 43/24
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具と、前記端子金具を保持するハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、
前記端子金具の少なくとも一部を埋設する第1樹脂成形体と、
前記第1樹脂成形体の少なくとも一部を埋設する第2樹脂成形体と、を有し、
前記第1樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数は、前記第2樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数よりも小さ
前記端子金具は、
中空筒状の形状を有し且つ相手側端子と接触することになる接点部を有し、
前記第1樹脂成形体は、
前記接点部の中空内に配置される軸状部と、前記軸状部の一端に繋がり且つ前記接点部の一方の開口端を覆う一端部と、前記軸状部の他端に繋がり且つ前記接点部の他方の開口端を覆う他端部と、を有する、
コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタにおいて、
前記第1樹脂成形体及び前記第2樹脂成形体は、
ポリエチレンテレフタレート樹脂とガラス繊維とを含む組成物を材料として構成され、
前記第1樹脂成形体を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率は、前記第2樹脂成形体を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率よりも大きい、
コネクタ。
【請求項3】
請求項に記載のコネクタにおいて、
前記第1樹脂成形体を構成する組成物は、エラストマを更に含む、
コネクタ。
【請求項4】
端子金具がハウジングに保持されたコネクタの製造方法であって、
前記端子金具の少なくとも一部を埋設する第1樹脂成形体を、前記ハウジングの一部の形状を有するように成形する一次成形工程と、
前記第1樹脂成形体の少なくとも一部を埋設する第2樹脂成形体を、前記ハウジングの他の一部の形状を有するように成形する二次成形工程と、を備え、
前記第1樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数は、前記第2樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数よりも小さ
前記端子金具は、
中空筒状の形状を有し且つ相手側端子と接触することになる接点部を有し、
前記第1樹脂成形体は、
前記接点部の中空内に配置される軸状部と、前記軸状部の一端に繋がり且つ前記接点部の一方の開口端を覆う一端部と、前記軸状部の他端に繋がり且つ前記接点部の他方の開口端を覆う他端部と、を有する、
コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具がハウジングに保持されたコネクタ、及び、コネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂製のハウジングに端子金具を埋設するように構成されたコネクタが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この種のコネクタは、例えば、端子金具をハウジング内にインサート成形することで製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-017197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したようなコネクタが実際に使用される際、端子金具の通電時には、通電に伴うジュール熱により、端子金具および端子金具周辺のハウジングの温度が上昇する。逆に、端子金具の非通電時には、そのような温度の上昇は生じない。換言すると、端子金具の通電と非通電との切り替えが繰り返されることにより、端子金具およびハウジングの温度が上下に繰り返し変動することになる。ここで、一般に、端子金具を構成する金属材料と、ハウジングを構成する樹脂材料とは、熱膨張率(例えば、線膨張係数)が異なるため、温度変動に伴う膨張・収縮の度合いも異なる。例えば、上述したコネクタが使用される通常の環境下で、銅の線膨張係数は約17.7×10-6/℃であり、ポリプロピレンの線膨張係数は約110.0×10-6/℃である。このような線膨張係数の相違に起因し、上述した温度変動が繰り返されると、例えば端子金具の角部等の鋭利な箇所に隣接するハウジング部分等を起点として、亀裂等の損傷がハウジングに生じる場合がある。
【0005】
一方、このようなハウジングの損傷を防ぐ(即ち、いわゆる耐ヒートショック性を向上させる)ために、端子金具を構成する金属材料と熱膨張率における差が小さい樹脂材料を用いてハウジングを構成することが考えられる。しかし、そのような熱特性を有する樹脂材料は一般に高価であるため、コネクタの製造コストが高まることが懸念される。
【0006】
本発明の目的の一つは、製造コストの増大を抑えつつ耐ヒートショック性を向上可能なコネクタ、及び、コネクタの製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記を特徴としている。
【0008】
端子金具と、前記端子金具を保持するハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、
前記端子金具の少なくとも一部を埋設する第1樹脂成形体と、
前記第1樹脂成形体の少なくとも一部を埋設する第2樹脂成形体と、を有し、
前記第1樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数は、前記第2樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数よりも小さ
前記端子金具は、
中空筒状の形状を有し且つ相手側端子と接触することになる接点部を有し、
前記第1樹脂成形体は、
前記接点部の中空内に配置される軸状部と、前記軸状部の一端に繋がり且つ前記接点部の一方の開口端を覆う一端部と、前記軸状部の他端に繋がり且つ前記接点部の他方の開口端を覆う他端部と、を有する、
コネクタであること。
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタの製造方法は、下記を特徴としている。
【0010】
端子金具がハウジングに保持されたコネクタの製造方法であって、
前記端子金具の少なくとも一部を埋設する第1樹脂成形体を、前記ハウジングの一部の形状を有するように成形する一次成形工程と、
前記第1樹脂成形体の少なくとも一部を埋設する第2樹脂成形体を、前記ハウジングの他の一部の形状を有するように成形する二次成形工程と、を備え、
前記第1樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数は、前記第2樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数よりも小さ
前記端子金具は、
中空筒状の形状を有し且つ相手側端子と接触することになる接点部を有し、
前記第1樹脂成形体は、
前記接点部の中空内に配置される軸状部と、前記軸状部の一端に繋がり且つ前記接点部の一方の開口端を覆う一端部と、前記軸状部の他端に繋がり且つ前記接点部の他方の開口端を覆う他端部と、を有する、
コネクタの製造方法であること。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコネクタ及びコネクタの製造方法によれば、端子金具を埋設する第1樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数が、第1樹脂成形体を埋設する第2樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数よりも小さい。そのため、ハウジングの全体を第2樹脂成形体で構成する場合に比べ、端子金具に直接接触することになる箇所(即ち、第1樹脂成形体)の熱変形の度合いを小さくすることができる。よって、端子金具への通電時・非通電時の温度変動に起因して端子金具の周辺のハウジング部分に損傷等が生じることを抑制できる。更に、ハウジングの全体を第1樹脂成形体で構成する場合に比べ、一般に高価な線膨張係数の小さい材料の使用量を低減できるため、コネクタの製造コストの増大を抑えられる。したがって、本発明によれば、コネクタの製造コストの増大を抑えつつ耐ヒートショック性を向上可能である。
【0012】
なお、第1樹脂成形体および第2樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数の値は、例えば、JIS K 7197に定められる線膨張率試験方法に準じて測定することができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコネクタと、相手側コネクタとを示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すコネクタの図1のA-A断面図である。
図3図3は、端子を保持するハウジングを示す斜視図である。
図4図4は、端子を示す斜視図である。
図5図5は、端子をインサート部材とした一次成形によって端子と一体化された第1樹脂成形体を示す斜視図である。
図6図6は、図5のB-B断面図である。
図7図7は、端子と一体化された第1樹脂成形体をインサート部材とした二次成形によって第1樹脂成形体と一体化された第2樹脂成形体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタ1について説明する。図1に示すように、コネクタ1は、相手側コネクタ2と嵌合可能となっている。コネクタ1及び相手側コネクタ2は、典型的には、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載されたインバータやモータ等の電源回路に用いられるコネクタである。
【0016】
図1に示すように、コネクタ1は、電力線である一対の電線3の端末部に接続され、相手側コネクタ2は、電力線である一対の電線4の端末部に接続されている。コネクタ1と相手側コネクタ2とを互いに嵌合させることにより、電線3,4同士が電気的に接続される。
【0017】
以下、説明の便宜上、図1図7に示すように、「前後方向」、「上下方向」、及び「幅方向」を定義する。「前後方向」、「上下方向」、及び「幅方向」は、互いに直交している。前後方向は、コネクタ1と相手側コネクタ2との嵌合方向と一致している。コネクタ1における相手側コネクタ2との嵌合の進行側及び退行側がそれぞれ、前側及び後側とされている。
【0018】
コネクタ1は、図2に示すように、端子10と、端子10を保持するハウジング20と、ハウジング20の上部を覆うアッパシールドシェル50と、ハウジング20の下部を覆うロアシールドシェル60と、を備える。以下、コネクタ1を構成する各部品について順に説明する。
【0019】
まず、端子10について説明する。端子10は、1枚の金属板に対してプレス加工及び曲げ加工等を施すことで形成される。端子10は、図4に示すように、前後方向に延びる接続部(オス端子部)11と、接続部11の後端部から下方に延びる垂下部12と、で構成され、幅方向からみて略L字状の形状を有している。
【0020】
接続部11には、その後端部(垂下部12との境界部)を除いた前後方向に亘って延びる円筒状の接点部13が形成されている。垂下部12は、板厚方向が前後方向を向いた平板状の形状を有しており、その下端部には、前後方向に貫通するネジ挿通孔14が形成されている。端子10は、銅又はアルミニウムによって構成されている。なお、銅の線膨張係数は約16.6×10-6/℃であり、アルミニウムの線膨張係数は約23.0×10-6/℃である。なお、線膨張係数の値は、例えば、JIS K 7197に定められる線膨張率試験方法に準じて測定することができる。
【0021】
次いで、ハウジング20について説明する。ハウジング20は、図2に示すように、一次成形体である第1樹脂成形体30と、二次成形体である第2樹脂成形体40とで構成されている。第1樹脂成形体30を構成する材料の線膨張係数は、第2樹脂成形体40を構成する材料の線膨張係数よりも小さい。このことによる作用・効果については後述する。
【0022】
まず、第1樹脂成形体30について説明する。第1樹脂成形体30は、図5及び図6に示すように、端子10をインサート部材とした一次成形(インサート成形)によって端子10と一体化された一次成形体である。第1樹脂成形体30は、ポリエチレンテレフタレート樹脂とガラス繊維とを含む組成物を材料として構成されている。第1樹脂成形体30を構成する組成物には、エラストマが更に含まれていてもよい。第1樹脂成形体30を構成する材料の線膨張係数は、端子10を構成する金属材料の線膨張係数よりも大きいものの、第2樹脂成形体40を構成する材料の線膨張係数よりも小さい(詳細は後述)。
【0023】
第1樹脂成形体30は、図5及び図6に示すように、端子10の円筒状の接点部13の中空部に充填された軸状部31と、軸状部31の前端に繋がり且つ接点部13の前端開口を覆う前端部32と、軸状部31の後端に繋がり且つ接点部13の後端開口を覆う後端部33と、後端部33の後側に繋がり且つ接続部11と垂下部12との境界部の近傍箇所を覆う延出部34と、を一体に有する。端子10の接点部13の外周面における後端部を除いた大部分、及び、端子10の垂下部12の外周面における上端部を除いた大部分は、第1樹脂成形体30に覆われることなく外部に露出している。このように、第1樹脂成形体30は、端子10の一部を埋設している。
【0024】
前端部32は、前方に突出する先細りの形状となっている。これにより、前端部32は、端子10の触指防止機能、及び、端子10と接続されることになる相手側コネクタ2内の相手側端子(図示省略)の拾い機能(耐挿抜性向上機能)を果たす、いわゆる樹脂キャップとして機能する。後端部33は、端子10の接点部13の径方向外側に突出する環状フランジ部となっている。
【0025】
次いで、第2樹脂成形体40について説明する。第2樹脂成形体40は、図7に示すように、端子10と一体化された第1樹脂成形体30をインサート部材とした二次成形(インサート成形)によって第1樹脂成形体30と一体化された二次成形体である。
【0026】
第2樹脂成形体40も、第1樹脂成形体30と同様、ポリエチレンテレフタレート樹脂とガラス繊維とを含む組成物を材料として構成されている。ただし、ガラス繊維の線膨張係数がポリエチレンテレフタレート樹脂の線膨張係数より小さいこと等を利用して、第1樹脂成形体30を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率を、第2樹脂成形体40を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率より大きくすることで、第1樹脂成形体30を構成する材料の線膨張係数が、第2樹脂成形体40を構成する材料の線膨張係数よりも小さくされている。本例では、第1樹脂成形体30を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率は30重量%であり、第2樹脂成形体40を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率は15質量%である。なお、一般に、ポリエチレンテレフタレート樹脂よりガラス繊維の方が高価である。
【0027】
第2樹脂成形体40は、図2図3及び図7に示すように、前後方向に延びる端子保持部41と、端子保持部41の後端部から下方に延びる電線導出部42とで構成され、幅方向からみて略L字状の形状を有している。
【0028】
端子保持部41には、端子10と一体化された一対の第1樹脂成形体30が、幅方向に並ぶように配置された状態で一体化されている。図2及び図7に示すように、第1樹脂成形体30のうち、後端部33及び延出部34が端子保持部41に埋設されており、端子10の接点部13は端子保持部41に埋設されていない(前方に露出している)。このため、第1樹脂成形体30のうち、接点部13の内部及び先端部に位置する軸状部31及び前端部32も、端子保持部41には埋設されていない。このように、第2樹脂成形体40(の端子保持部41)は、第1樹脂成形体30の一部を埋設している。
【0029】
端子保持部41には、幅方向に並ぶ一対の端子10の接点部13に対応して、一対の端子収容凹部43が幅方向に並ぶように形成されている。各端子収容凹部43の内部空間には、対応する端子10の接点部13が前方に露出するように且つ同軸的に位置している。端子保持部41には、幅方向に長い長穴状の環状溝44が、一対の端子収容凹部43を囲うように設けられている。環状溝44には、図2に示すように、環状のシール部材71が設けられる。
【0030】
電線導出部42には、図2及び図7に示すように上下方向に貫通する電線挿通孔45が形成されている。電線挿通孔45の上端開口の直上には、一対の端子10の垂下部12が位置している。電線導出部42の上端部(端子保持部41と電線導出部42との境界部)の後端面には、開口46が形成されている。開口46が形成されることで、一対の端子10の垂下部12に形成された一対のネジ挿通孔14が後方に露出している(図2及び図7参照)。
【0031】
図2に示すように、電線挿通孔45には、環状のシール部材72が外周に装着された一対の電線3が下方から挿通される。このシール部材72によって、一対の電線3と電線挿通孔45との間が封止される。電線挿通孔45に挿通された各電線3の端末部は、金属製の接続端子5を介して、対応する端子10の垂下部12にそれぞれ接続される。
【0032】
より具体的には、電線3は、導体芯線3aの外周が外被3bで被覆された被覆電線であり、電線3の端末部において、外被3bから導体芯線3aが露出している。電線3の露出した導体芯線3aは、上下方向に延びる接続端子5の下端部に設けられた加締片5aを用いて接続端子5の下端部に加締め固定される。接続端子5の上端部には、ネジ挿通孔5bが設けられている。接続端子5のネジ挿通孔5bと端子10のネジ挿通孔14とを位置合わせした状態で、ネジ挿通孔5b及びネジ挿通孔14に順に挿入されたネジ77とナット78とを用いて、接続端子5の上端部と端子10の垂下部12とが締結固定される。
【0033】
これにより、各電線3の端末部が、接続端子5を介して対応する端子10の垂下部12に接続される。このようにして、一対の電線3と一対の端子10との接続がそれぞれ完了した後、開口46が、シール部材73が装着された蓋部材74によって塞がれる。このシール部材73によって、開口46の内壁と蓋部材74との間が封止される。
【0034】
次いで、アッパシールドシェル50について説明する。金属製のアッパシールドシェル50は、図1に示すように、ハウジング20の上部を、上方、側方及び後方から覆うことが可能な形状を有している。アッパシールドシェル50は、ハウジング20の上部を、上方、側方及び後方から覆うように、後方から、ハウジング20(第2樹脂成形体40)に装着される。
【0035】
アッパシールドシェル50には、ボルト孔51が形成された一対のフランジ部52が形成されている。一対のボルト孔51は、コネクタ1と相手側コネクタ2との嵌合の際に使用される。更に、アッパシールドシェル50には、孔部53が形成された固定片54が形成されている。コネクタ1は、アッパシールドシェル50の固定片54の孔部53に挿入したボルト(図示省略)をインバータやモータ等の機器のボルト孔に捻じ込むことにより、当該機器に固定可能とされている。
【0036】
次いで、ロアシールドシェル60について説明する。金属製のロアシールドシェル60は、図1に示すように、ハウジング20の下部(より具体的には、電線導出部42)を覆うことが可能な形状を有している。ロアシールドシェル60は、ハウジング20の下部を覆うように、下方から、ハウジング20(第2樹脂成形体40)に装着される。
【0037】
アッパシールドシェル50及びロアシールドシェル60は、ハウジング20に装着した状態にて、ネジ76(図1及び図2参照)によって締結されて互いに電気的に接続される。また、ロアシールドシェル60には、シールドリング75(図1及び図2参照)によって一対の電線3を束ねた電線束を覆う導電性の編組(図示略)が固定されて電気的に接続される。以上、コネクタ1を構成する各部品について説明した。
【0038】
上記構成を有するコネクタ1は、一対の電線4が接続された相手側コネクタ2(図1参照)と嵌合される。コネクタ1と相手側コネクタ2との嵌合状態では、相手側コネクタ2が有する一対の端子収容部(図示省略)が、コネクタ1の一対の端子収容凹部43(図1参照)にそれぞれ挿入され嵌合される。これにより、一対の端子収容部に収容されている一対の相手側端子(メス端子、図示省略)が、一対の端子10の接点部(オス端子)13と接続される。
【0039】
更に、相手側コネクタ2のフード部(図示省略)が、コネクタ1の環状溝44に嵌め込まれる。これにより、フード部がシール部材71(図2参照)に密着されることで、コネクタ1と相手側コネクタ2との嵌合箇所が封止される。
【0040】
更に、相手側コネクタ2のアッパシールドシェル80(図1参照)の一対のフランジ部82に形成された孔部81に挿し込んだ一対のボルト(図示略)を、コネクタ1のアッパシールドシェル50の一対のフランジ部52に形成されたボルト孔51にそれぞれねじ込む。これにより、一対のボルトによってコネクタ1のアッパシールドシェル50と相手側コネクタ2のアッパシールドシェル80とが締結され且つ電気的に接続され、良好なシールド効果が得られる。
【0041】
<作用・効果>
上述のように、コネクタ1と相手側コネクタ2と嵌合された状態で、コネクタ1が実際に使用される際、端子10の通電時には、通電に伴うジュール熱によって端子10および端子10の周辺のハウジング20の温度が上昇する。逆に、端子10の非通電時には、そのような温度の上昇は生じない。換言すると、端子10の通電と非通電との切り替えが繰り返されることにより、端子10及びハウジング20の温度が上下に繰り返し変動する。ここで、端子10を構成する金属材料と、ハウジング20を構成する樹脂材料とは、線膨張係数が異なるため、温度変動に伴う膨張・収縮の度合いも異なる。線膨張係数の相違に起因し、上述した温度変動が繰り返されると、例えば端子10の角部等の鋭利な箇所に隣接するハウジング20の部分等を起点として、亀裂等の損傷がハウジング20に生じる場合がある。このようなハウジング20の損傷を防ぐ(即ち、耐ヒートショック性を向上させる)ことが望まれる。
【0042】
この点、本実施形態に係るコネクタ1では、ハウジング20が、端子10の一部を埋設する第1樹脂成形体30と、第1樹脂成形体30の一部を埋設する第2樹脂成形体40とで構成され、第1樹脂成形体30を構成する材料の線膨張係数が、第2樹脂成形体40を構成する材料の線膨張係数よりも小さい。このため、ハウジング20の全体を第2樹脂成形体40で構成する場合に比べ、端子10に直接接触する箇所(即ち、第1樹脂成形体30)の熱変形の度合いを小さくすることができる。よって、コネクタ1の使用時の発熱に起因する端子10周辺におけるハウジング20の損傷等を抑制できる。更に、コネクタ1では、第1樹脂成形体30及び第2樹脂成形体40が、同じ物質の組み合わせ(ポリエチレンテレフタレート樹脂+ガラス繊維)からなる組成物を材料として構成され、且つ、第1樹脂成形体30を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率を、第2樹脂成形体40を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率より大きくすることで、第1樹脂成形体30を構成する材料の線膨張係数を、第2樹脂成形体40を構成する材料の線膨張係数よりも小さくしている。一般に、ポリエチレンテレフタレート樹脂よりガラス繊維の方が高価である。よって、ハウジング20の全体を第1樹脂成形体30で構成する場合に比べ、高価な線膨張係数の小さい材料(本例の場合、ガラス繊維)の使用量を少なくできるため、コネクタ1の製造コストの増大を抑えることができる。したがって、本実施形態に係るコネクタ1は、製造コストの増大を抑えつつ耐ヒートショック性を向上可能である。
【0043】
更に、第1樹脂成形体30を構成する樹脂組成物が、エラストマを更に含む場合、エラストマが樹脂組成物に含有されることで、第1樹脂成形体30の破断ひずみの値が大きくなるとともに、より大きな応力に耐えられることになる。よって、コネクタ1の耐ヒートショック性を更に向上できる。
【0044】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0045】
上記実施形態では、第1樹脂成形体30及び第2樹脂成形体40が、同じ物質の組み合わせ(ポリエチレンテレフタレート樹脂+ガラス繊維)からなる組成物を材料として構成され、且つ、第1樹脂成形体30を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率を、第2樹脂成形体40を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率よりも大きくすることで、第1樹脂成形体30を構成する材料の線膨張係数を、第2樹脂成形体40を構成する材料の線膨張係数よりも小さくしている。これに対し、第1樹脂成形体30及び第2樹脂成形体40が、互いに異なる物質の組み合わせからなる組成物を材料として構成されることで、第1樹脂成形体30を構成する材料の線膨張係数を、第2樹脂成形体40を構成する材料の線膨張係数よりも小さくしてもよい。
【0046】
上記実施形態では、第1樹脂成形体30を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率が30重量%であり、第2樹脂成形体40を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率が15質量%である。しかし、ガラス繊維の含有率によって線膨張係数の大小関係を実現する場合、第1樹脂成形体30を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率が、第2樹脂成形体40を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率よりも大きければよく、双方のガラス繊維の含有率は、必ずしも上述した具体的な値には限定されない。
【0047】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ1及びコネクタ1の製造方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
【0048】
[1]
端子金具(10)と、前記端子金具(10)を保持するハウジング(20)と、を備えるコネクタ(1)であって、
前記ハウジング(20)は、
前記端子金具(10)の少なくとも一部を埋設する第1樹脂成形体(30)と、
前記第1樹脂成形体(30)の少なくとも一部を埋設する第2樹脂成形体(40)と、を有し、
前記第1樹脂成形体(30)を構成する材料の線膨張係数は、前記第2樹脂成形体(40)を構成する材料の線膨張係数よりも小さい、
コネクタ(1)。
【0049】
上記[1]の構成のコネクタによれば、端子金具を埋設する第1樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数が、第1樹脂成形体を埋設する第2樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数よりも小さい。そのため、ハウジングの全体を第2樹脂成形体で構成する場合に比べ、端子金具に直接接触することになる箇所(即ち、第1樹脂成形体)の熱変形の度合いを小さくすることができる。よって、端子金具への通電時・非通電時の温度変動に起因して端子金具の周辺のハウジング部分に損傷等が生じることを抑制できる。更に、ハウジングの全体を第1樹脂成形体で構成する場合に比べ、一般に高価な線膨張係数の小さい材料の使用量を低減できるため、コネクタの製造コストの増大を抑えられる。したがって、本構成のコネクタは、製造コストの増大を抑えつつ耐ヒートショック性を向上可能である。
【0050】
[2]
上記[1]に記載のコネクタ(1)において、
前記端子金具(10)は、
中空筒状の形状を有し且つ相手側端子と接触することになる接点部(13)を有し、
前記第1樹脂成形体(30)は、
前記接点部(13)の中空内に配置される軸状部(31)と、前記軸状部(31)の一端に繋がり且つ前記接点部(13)の一方の開口端を覆う一端部(32)と、前記軸状部(31)の他端に繋がり且つ前記接点部(13)の他方の開口端を覆う他端部(33)と、を有する、
コネクタ(1)。
【0051】
上記[2]の構成のコネクタによれば、第1樹脂成形体が、端子金具の筒状の接点部の中空内、及び、接点部の一対の開口部の双方に配置されるように、一体的に成形される。これにより、端子金具の通電時に、端子金具そのものの電気的抵抗に加えて相手側端子との接触抵抗に起因して特に大きな温度変動が生じ得る接点部の周辺に、第1樹脂成形体が配置されることになる。よって、コネクタの耐ヒートショック性を更に向上できる。
【0052】
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のコネクタ(1)において、
前記第1樹脂成形体(30)及び前記第2樹脂成形体(40)は、
ポリエチレンテレフタレート樹脂とガラス繊維とを含む組成物を材料として構成され、
前記第1樹脂成形体(30)を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率は、前記第2樹脂成形体(40)を構成する組成物におけるガラス繊維の含有率よりも大きい、
コネクタ(1)。
【0053】
上記[3]の構成のコネクタによれば、ポリエチレンテレフタレート樹脂とガラス繊維とを含む樹脂組成物を用いて、第1樹脂成形体および第2樹脂成形体が構成される。更に、第1樹脂成形体の樹脂組成物のガラス繊維の含有率が、第2樹脂成形体の樹脂組成物のガラス繊維の含有率よりも大きい。このような組成の相違により、上述した線膨張係数の大小関係を実現できる。
【0054】
[4]
上記[3]に記載のコネクタ(1)において、
前記第1樹脂成形体(30)を構成する組成物は、エラストマを更に含む、
コネクタ(1)。
【0055】
上記[4]の構成のコネクタによれば、第1樹脂成形体を構成する樹脂組成物が、エラストマを更に含む。エラストマが樹脂組成物に含有されることで、第1樹脂成形体の破断ひずみの値が大きくなるとともに、より大きな応力に耐えられることになる。よって、コネクタの耐ヒートショック性を更に向上できる。
【0056】
[5]
端子金具(10)がハウジング(20)に保持されたコネクタ(1)の製造方法であって、
前記端子金具(10)の少なくとも一部を埋設する第1樹脂成形体(30)を、前記ハウジング(20)の一部の形状を有するように成形する一次成形工程と、
前記第1樹脂成形体(30)の少なくとも一部を埋設する第2樹脂成形体(40)を、前記ハウジング(20)の他の一部の形状を有するように成形する二次成形工程と、を備え、
前記第1樹脂成形体(30)を構成する材料の線膨張係数は、前記第2樹脂成形体(40)を構成する材料の線膨張係数よりも小さい、
コネクタ(1)の製造方法。
【0057】
上記[5]の構成のコネクタの製造方法によれば、端子金具を埋設するように第1樹脂成形体を成形(一次成形)した後、第1樹脂成形体を埋設するように第2樹脂成形体が成形(二次成形)される。更に、第1樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数が、第1樹脂成形体を埋設する第2樹脂成形体を構成する材料の線膨張係数よりも小さい。そのため、ハウジングの全体を第2樹脂成形体で構成する場合に比べ、端子金具に直接接触することになる箇所(即ち、第1樹脂成形体)の熱変形の度合いを小さくすることができる。よって、端子金具への通電時・非通電時の温度変動に起因して端子金具の周辺のハウジング部分に損傷等が生じることを抑制できる。更に、ハウジングの全体を第1樹脂成形体で構成する場合に比べ、一般に高価な線膨張係数の小さい材料の使用量を低減できるため、コネクタの製造コストの増大を抑えられる。したがって、本構成の製造方法によって製造されるコネクタは、製造コストの増大を抑えつつ耐ヒートショック性を向上可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 コネクタ
10 端子(端子金具)
13 接点部
20 ハウジング
30 第1樹脂成形体
31 軸状部
32 前端部(一端部)
33 後端部(他端部)
40 第2樹脂成形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7