(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】美容マスク
(51)【国際特許分類】
A61N 1/04 20060101AFI20231219BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61N1/04
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2021171054
(22)【出願日】2021-10-19
(62)【分割の表示】P 2020075291の分割
【原出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2017217902
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 岩男
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/175936(WO,A1)
【文献】実開平2-49549(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0033569(KR,A)
【文献】特開2008-264088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/22
A61N 1/00 ― 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の顔面に装着する美容マスクであって、
鼻の凸形状に対応する形状の鼻当て部と、
使用者の頬骨筋又は咬筋のすくなくともいずれかに対応する部位に電気刺激を与える刺激体と、
美容マスクの左右両頬の位置にそれぞれ該刺激体を装着するための一対の刺激体装着部と、
前記刺激体装着部において該刺激体と接触するように設けられた機器側電極と、
美容マスクの肌面と当接する部位に
設けられ、前記機器側電極から導電体で一体形成された肌面側電極と
を備えた構成であって、
該刺激体が、電流を発生させる電流発生器と、電流を制御する制御部と、電池を内蔵して電気を供給する給電部と、
前記機器側電極と接続するマスク側電極を一体的に備え、
前記刺激体装着部が、マスク本体に備える係合部から成り、
前記刺激体が該係合部に係合することで着脱自在に構成される
ことを特徴とする美容マスク。
【請求項2】
前記マスク本体に孔部を設け、前記機器側電極及び前記マスク側電極からなる電極だけが該孔部を通じて肌面側に露出する、
請求項1に記載の美容マスク。
【請求項3】
前記美容マスクが顔面の左右側方に引張力を与えながら装着する左右ベルトを備える
請求項1又は2に記載の美容マスク。
【請求項4】
前記美容マスクが下顎骨下面から顔面の両側を通り頭頂方向に引張力を与えながら装着する上下ベルトを備える
請求項1ないし3のいずれかに記載の美容マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の顔面に装着して刺激を与える美容マスクに関し、特に正しい位置に効果的な刺激を与えるための技術に係る。
【背景技術】
【0002】
使用者の頭部の様々な筋肉に電気刺激を与えるためのマスクが従来から知られている。
例えば、特許文献1には、顔面を覆うマスク本体部を備え、マスク本体部はシリコン製であり、目・鼻・口の位置には開口部を有し、マスク本体の内面には電極部を有する美容用のマスクが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、顔面を覆う伸縮性基材を備え、伸縮性基材はシリコン製であり、目・鼻・口の位置には孔を有し、電気刺激を印加するポイントに刺激電極部を有する技術が開示され、顔のリフトアップに有効であることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、顔面を覆う施術部材を備える美容装置が開示されている。施術部材は、シリコン製のカバー部や、頬の辺りに電極が形成された導電体、目・鼻・口の位置に開口部を有することが記載されている。
【0005】
特許文献4には、顔面を覆うマスク本体を備え、目・鼻・口の位置には開口を有し、マスク本体の内面に電極を有するトリートメント用マスクが開示されている。そして、マスク本体がシリコンゴム材で構成されていること、マスク本体が自重で変形することで皮膚上に均一に密着する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】再表WO2016-009463号公報
【文献】特開2017-108758号公報
【文献】特開2013-081606号公報
【文献】実登3082187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術によると、目・鼻・口の位置に開口部を有して、おおむね頬の辺りに電気刺激を与える電極を備えることは知られているが、個別の筋肉の位置や特性に対応させることは着想されていない。特に頬部の電極はいずれも大きすぎ、不適切な刺激を与えてしまう恐れもあった。
【0008】
さらに、装着時にマスクの弾性を利用して適切な引き締め効果を有するとは言えず、装着性と引き締め効果を合わせもつマスクが提供されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は次のような美容マスクを提供する。
すなわち、第1の実施形態によれば、使用者の顔面に装着する美容マスクであって、
鼻の凸形状に対応する形状の鼻当て部と、使用者の頬骨筋又は咬筋のすくなくともいずれかに対応する部位に電気刺激を与える刺激体と、美容マスクのの左右両頬の位置にそれぞれ該刺激体を装着するための一対の刺激体装着部と、美容マスクの肌面と当接する部位に肌面側電極とを備えた構成であって、その刺激体が、電流を発生させる電流発生器と、電流を制御する制御部と、電池を内蔵して電気を供給する給電部と、美容マスク上に設けられた機器側電極と接続するマスク側電極を一体的に備え、刺激体装着部に対して刺激体を着脱自在に構成したことを特徴とする。
【0010】
第2の実施形態によれば、上記の刺激体装着部が、マスク本体に備える係合部から成り、刺激体が係合部に係合することで着脱自在に構成されていてもよい。
【0011】
第3の実施形態によれば、上記の美容マスクが顔面の左右側方に引張力を与えながら装着する左右ベルトを備える構成でもよい。
【0012】
第4の実施形態によれば、上記の美容マスクが下顎骨下面から顔面の両側を通り頭頂方向に引張力を与えながら装着する上下ベルトを備える構成でもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記構成により次のような効果を奏する。
すなわち、主に鼻当て部を基準として適切な位置に美容マスクを装着することができるようにすると共に、使用者の咬筋又は頬骨筋に対応する部位に電気刺激を与える刺激体によって美容効果の高い頬骨筋を対象としたトリートメントを行うことができる。
【0014】
頬骨筋に電気刺激を与える場合には、頬のたるみやホウレイ線を持ち上げる筋肉を鍛える効果を有する。咬筋に電気刺激を与える場合には、咬筋をもみほぐし、やわらげることにより、整ったすっきりとしたフェイスラインとなる効果を有する。
【0015】
本発明の刺激体は、電流を制御する制御部と、電気を供給する給電部と、該電極とを一体的に備えており、その一体化された刺激体を、刺激体装着部に簡便に着脱することができるので、充電やマスク本体の水洗いなども容易に行える。また、煩わしいコードがないため、美容マスクを付けたまま室内を移動したり、家事を行うこともできる。
【0016】
本発明の左右バンド、上下バンドによれば、顎のラインや口元、フェイスラインを物理的に引き上げ、シャープなフェイスラインを形成することができる。特に、このようなフェイスラインの状態において、刺激を与えることで最適なトリートメントを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図7】本発明に係る美容マスクを使用状態を示す説明図。
【
図8】頬骨筋及び咬筋の位置と電極の関係を示す説明図。
【
図9】頬骨筋及び咬筋に与える電気刺激の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
本発明の美容マスクは、使用者の顔面に装着する美容マスクであり、少なくとも鼻の凸形状に一致する鼻当て部を備えるが、その他に口や目の位置に孔部、開口部などを設けることもできる。例えばシリコンや天然ゴムなどの弾性材料から形成することが好ましい。特に、シリコンは医療用として多用されているように、皮膚に当てて使用することや、引き締め強さの観点からも最適である。
【0019】
鼻当て部等によって顔面で適切な位置を合わせた上で、使用者の頬骨筋に対応する部位に電気又は超音波の刺激を与える一対の頬骨筋刺激体、咬筋に対応する部位に電気又は超音波の刺激を与える一対の咬筋刺激体のどちらか、又は両方を備えることを特徴とする。
【0020】
以下の実施例では、美容マスクをマスク本体と電流発生器に分離した構成を説明するが、本発明の実施において必ずしも分離可能にする必要はなく、一体で構成してもよい。
また、頬骨筋刺激体や咬筋刺激体として電気刺激を与える構成で説明しているが、公知のように美容方法として超音波刺激を与えることもでき、本発明の刺激体として超音波を用いる構成でもよい。電気刺激と超音波刺激の療法を与える構成でもよい。
【0021】
図1、
図2はそれぞれ本発明に係るマスク本体(1)の正面図と背面図である。マスク本体(1)はシリコンで一体形成された弾性体であり、使用者の目から顎にかけての下半分を覆うマスク部(10)と、マスク部(10)の左右方向に延設される左右ベルト部(11)、マスク部(10)の下端と連結され開いた状態では左右方向に延設される上下ベルト部(12)とを形成している。
【0022】
マスク本体(1)には電流発生器を装着するための刺激体装着部(16)を図示のように左右両頬の位置に開口している。刺激体装着部(16)は必ずしも本実施例のように開口することに限定されず、マスク本体(1)に係合するような係合部を設けたり、マスク本体(1)に孔部を設け、機器側電極及びマスク側電極からなる電極だけが孔部を通じて肌面側に露出するようにしたり、溝部を形成したり、いかなる形状でもよい。
【0023】
マスク本体(1)には電流発生器を装着するための刺激体装着部(16)を頬の位置に開口している。刺激体装着部(16)は必ずしも本実施例のように開口することに限定されず、マスク本体(1)の肌面側に係合するような係合部を設けたり、電極だけが露出するように複数の孔部を設けたり、溝部を形成したり、いかなる形状でもよい。
【0024】
マスク本体(1)を合わせたら、左右ベルト(11)を側頭部両側に回して後ろ側で面ファスナー(11a)(11b)を係着させることによりマスク部(10)を左右方向に緊張させる。これによって、顔面の特に頬部分に適度な圧迫を加えて引き締め効果を奏する。
【0025】
さらに、上下ベルト(12)はマスク部(10)から直角に下顎骨下面に屈曲させた上で、側頭部両側を通り頭頂方向に引張力を与えながら装着する。これも同様に面ファスナー(12a)(12b)を係着させる。
上下ベルト(12)が緊張することで上下ベルト(12)とその下のマスク部(10)が合わせて頬を上方向にリフトアップさせる効果を奏する。
【0026】
本発明において、左右ベルト(11)、上下ベルト(12)は必ずしも備えていなくてもよく、マスク部(10)を別の方法、例えば別に容易するベルト等で顔面に固定してもよい。また、
図8に開示されるように耳に対応する開口を設けてこれを耳に引っ掛ける形状で固定してもよい。上下ベルトを設けず、左右ベルト(12)だけを備えてもよい。
【0027】
図3、
図4及び
図5は、本発明に係る電流発生器(2)の正面図と背面図、左側面図である。電流発生器(2)は装着時に外側となる表面に電源ボタン(20)、調整ボタン(21)(22)を備えた略三角形状であり、一部に切り欠き部(23)を備えている。
一方、裏面には3つのマスク側電極(240)(241)(242)を備えている。
【0028】
電流発生器(2)の形状は略三角形に限らず、円形、楕円形、矩形、六角形など何れの形でもよい。特に、装着方向が分かりやすいように対称でない形状とすることも好ましい。
【0029】
上述したように本実施例では刺激体として電気刺激を与える構成を示しており、電流発生器(2)の内部には、電流を制御する図示しない制御部を備え、給電部として切り欠き部(23)に設けた給電端子(25)から図示しない充電池に充電して給電することが可能である。本構成により、使用時に電源ケーブルや電池を必要とせず、良好かつ低コストな使用を実現している。もちろん外部から給電したり電池を使用する構成でも良い。
【0030】
図6は、本発明に係る美容マスクの正面図であり、マスク本体(1)と電流発生器(2)とを組み合わせた状態を示している。マスク本体(1)の刺激体装着部(16)には切り欠き部(23)に対応した凹凸が形成されており、電流発生器(2)の向きを規制する。
適切に装着された電流発生器(2)のマスク側電極(240)(241)(242)は、刺激体装着部(16)の内周に設けられた機器側電極(161a)(161b)(161c)と接して通電する。
【0031】
そして、機器側電極(160a)(161a)(162a)から導電体で一体形成された肌面側電極(160b)(161b)(162b)が肌面側、すなわちマスク本体(1)の裏面に露出する。この時、
図2に示されるように、各電極(160)(161)(162)は三角の各頂点から放射状の矢印形となっている。
【0032】
図7は、本発明に係る美容マスクを使用状態を示す説明図であり、すでに説明したように左右ベルト(11)が後頭部で、上下ベルト(12)が頭頂部でそれぞれ係着されており、そのとき電流発生器(2)が頬部分にちょうど当たっていることが分かる。
【0033】
以上のように適切な位置合わせを行った上で、
図8に示すように各電極(160)(161)(162)から頬骨筋と咬筋とにそれぞれ電流を印加する。
頬骨筋は、頬の弛みやホウレイ線を持ち上げる機能を有しており、大頬骨筋と小頬骨筋があるが、本実施例ではこの両方の部分に電流を印加して鍛える作用を及ぼす。加齢や筋力の低下によって口角が落ちたり、ホウレイ線や二重顎、フェイスラインのもたつきが生じているときに頬骨筋を鍛えることで改善することができる。
【0034】
咬筋は、噛む力をつかさどる筋肉であり、咀嚼や歯の食いしばりなどで疲労が溜まりやすい。また歯ぎしりなどによって咬筋を発達させてしまうと所謂エラが張った状態になり、フェスラインを崩してしまう問題がある。同じように、電気刺激などで咬筋を鍛えてしまうと同様にフェイスラインが崩れ、美容の面で逆効果となる問題がある。
【0035】
本発明では、頬骨筋や咬筋に対して最適な刺激を与えることができるように、電極(160)(161)(162)を配置し、マスクによる適切な位置合わせの後に、電極間に制御された電流を印加する。
具体的には、頬骨筋の部位に相当する電極間(160)(161)には筋肉を鍛えるのに好適な周波数の電気刺激(30)を与える。
図9に示すように本実施例では15Hzの低周波電流を印加する。
【0036】
また、咬筋の部位に相当する電極間(160)(162)には筋肉をほぐすのに好適な周波数の電気刺激(31)を与える。
図9に示すように本実施例では33Hzの低周波電流を印加する。
そして、電流発生器(2)の制御部が、咬筋に対する電流と頬骨筋に対する電流を交互に印加し、10分間の施術とする制御を行う。
【0037】
具体的な使用方法としては、使用者は洗顔後、化粧品やローション等で肌を整え、十分に保湿する。そして美容マスク(1)を顔に当て、頬がリフトアップするように左右バンド(11)及び上下バンド(12)を巻く。美容マスク(1)には予め充電した電流発生器(2)を装着しておき、電流発生器(2)の電流をオンにする。
調整ボタン(21)(22)を操作して、好みの強度、例えば6段階から調整する。上記10分間のトリートメントが行われた後、自動的に停止する。
【0038】
本発明によれば、肌に優しく、伸縮性の強いシリコン製の美容マスクにより顎のライン、口元、フェイスラインを物理的に引き上げ、シャープなフェイスラインを作ることができる。理想的なフェイスラインの状態で、本体より電流を出力し、自動的に表情筋を鍛えることができる。表情筋のトレーニングは難しく、従来、理想的な結果を得ることが困難であったが、本発明によればホウレイ線まわり、目元、顎周りに予め電極を配置しているため、理想的な筋肉だけを効率良く収縮させることができる。さらに電流の周波数を筋肉毎に制御しているので、心地良く、効果的に施術することができる。
【0039】
電流発生器は簡便に着脱することができるので、充電やマスク本体の水洗いなども容易に行える。また、煩わしいコードがないため、美容マスクを付けたまま室内を移動したり、家事を行うこともできる。
【0040】
(実験例)
発明者らの実験によれば、このように制御された低周波電流を10分間頬骨筋部位に印加したことによりホウレイ線の大きさの相対値が、約12%減少することが示されている。検証は3人の被験者に対して行い、全員について改善傾向が見られた。測定にはアンテラ3D装置を用いた。
【0041】
本実施例の説明は以上の通りであるが、請求項記載の範囲で任意に変更可能である。
例えば、刺激体は分離可能ではなく、マスクと一体として構成されていてもよい。刺激体は頬骨筋刺激体又は咬筋刺激体のどちらか一方だけ備えられていてもよいし、更に他の筋肉、例えば口輪筋、眼輪筋を鍛える電極を備えていてもよい。
【0042】
印加する電流は低周波、中周波、高周波を問わないが、上述した通り、筋肉の性質に応じて制御部によりそれぞれ最適な電流とすることが必要である。例えば、低周波を印加すると不快に感じる前頭筋、皺眉筋、鼻筋などには電気刺激を与えない、あるいは不快に感じない周波数の電流を印加するように制御する。また、銀歯にしているときに電気刺激を与えると痛む笑筋も回避する。
【0043】
上記した従来の文献では、頬部分に広く電流を印加する構成が開示されているが、説明したように筋肉に応じて刺激の有無や、刺激の方法を変化させることが好ましい。本発明によれば、これが実現され、格段の美容効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 マスク本体
10 マスク部
11 左右バンド
12 上下バンド
13 上縁部
14 鼻当て部
15 口開口部
16 刺激体装着部