IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エナジーサポート株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図1
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図2
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図3
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図4
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図5
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図6
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図7
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図8
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図9
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図10
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図11
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図12
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図13
  • 特許-円筒カットアウト用の上部電極構造体 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】円筒カットアウト用の上部電極構造体
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/20 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
H01H85/20 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021173411
(22)【出願日】2021-10-22
(65)【公開番号】P2023063111
(43)【公開日】2023-05-09
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博光
(72)【発明者】
【氏名】藤森 樹
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-062444(JP,U)
【文献】特開昭63-138624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線と高圧機器側配線に接続される円筒カットアウトにおいて、配電線とヒューズ筒の双方に接続させる上部電極構造体であって、
上部電極構造体は、
ヒューズ筒の端部を収容可能であって、ヒューズ筒が移動する軸線に直交する径方向に沿って設けられている基部と、該基部の端部から軸線方向に沿って伸びているとともにヒューズ筒の端部の外周面に接触する接触部と、を有する上部電極と、
接触部の外面に接触するように上部電極に取り付けられている被覆部材と、
被覆部材の外面に配置されているばね部材と、
を備えている円筒カットアウト用の上部電極構造体。
【請求項2】
接触部の基部側端部に径方向外側に突出している凸部が設けられており、
被覆部材の内面に凹部が形成されており、
接触部の凸部が被覆部材の凹部内に位置している請求項1に記載の円筒カットアウト用の上部電極構造体。
【請求項3】
被覆部材の外面に、周方向に沿って伸びる溝部が形成されており、
ばね部材が、前記溝部内に配置されている請求項1または2に記載の円筒カットアウト用の上部電極構造体。
【請求項4】
前記溝部が、前記凹部の軸方向の中間部分または下端部分に対向する位置に設けられている請求項2を引用する請求項3に記載の円筒カットアウト用の上部電極構造体。
【請求項5】
接触部の基部とは反対側の端部に、径方向外側に向けて突出している突出部が設けられており、
被覆部材の基部とは反対側の端面に窪み部が設けられており、
前記突出部が、前記窪み部内に位置している請求項1から4のいずれか一項に記載の円筒カットアウト用の上部電極構造体。
【請求項6】
上部電極に複数の被覆部材が取り付けられており、特定の被覆部材の周方向端部と他の被覆部材の周方向端部との間に隙間が設けられている円筒カットアウト用の請求項1から5のいずれか一項に記載の上部電極構造体。
【請求項7】
各被覆部材の外面のうち、ばね部材が配置されていない部分に磁性部材が取り付けられている請求項1から6のいずれか一項に記載の円筒カットアウト用の上部電極構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、円筒カットアウトで用いられる上部電極構造体に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
変圧器等の高圧機器に過電流が流れることを防止するため、配電線と高圧機器の間には円筒カットアウト(円筒カットアウト)が配置される。円筒カットアウトは、配電線に接続される上部電極と、高圧機器側の配線に接続される下部電極と、上部電極と下部電極の間に配置されるヒューズ筒(高圧溶断用ヒューズが内部に設けられている筒体)を備える。特許文献1に、ヒューズ筒を円筒カットアウトに着脱する際にヒューズ筒が移動する軸線に直交する径方向に沿って設けられている基部と、基部の端部から軸線方向に沿って伸びている接触部を備える上部電極が開示されている。接触部は、ヒューズ筒の上部導電部を円筒カットアウト(上部電極)に取り付けた際、ヒューズ筒の上部導電部の外周面に接触する。
【0003】
特許文献1の円筒カットアウトでは、複数の接触部が基部の径方向端部から軸線方向に伸びている上部電極を用いている。ヒューズ筒が上部電極に取り付けられていない場合、各接触部間の距離は、ヒューズ筒の外径よりも小さい。ヒューズ筒が上部電極に取り付ける際、各接触部が径方向外側に弾性変形し、ヒューズ筒が上部電極内に収容される。その結果、ヒューズ筒が上部電極内に収容されている間、ヒューズ筒は接触部に把持される。換言すると、ヒューズ筒が上部電極内に収容されている間、ヒューズ筒には接触部から挟持力が加わっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭51-156438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上部電極(接触部)には、大電流が流れることがある。上部電極に大電流が流れると、電流に起因する電磁力により、接触部に振動が生じることが起こり得る。接触部に振動が生じると、接触部からヒューズ筒に加わる挟持力が不安定となり、接触部とヒューズ筒の間に隙間が発生することが起こり得る。接触部とヒューズ筒の間に隙間が発生すると、アーク放電が発生し、接触部(上部電極)が損傷することがある。そのため、上部電極に大電流が流れた場合でも、接触部からヒューズ筒に加わる挟持力を維持する技術が必要とされている。本明細書は、接触部からヒューズ筒に加わる挟持力を安定して維持し得る上部電極構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する上部電極構造体は、配電線と高圧機器側配線に接続される円筒カットアウトにおいて、配電線とヒューズ筒の双方に接続させるものである。上部電極構造体は、上部電極と被覆部材とばね部材を備えていてよい。上部電極は、ヒューズ筒の端部を収容可能であって、ヒューズ筒が移動する軸線に直交する径方向に沿って設けられている基部と、その基部の端部から軸線方向に沿って伸びているとともにヒューズ筒の端部の外周面に接触する接触部を有していてよい。被覆部材は、接触部の外面に接触するように上部電極に取り付けられていてよい。ばね部材は、被覆部材の外面に配置されていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】円筒カットアウトの断面図を示す。
図2】第1実施例の上部電極構造体の断面図を示す。
図3】第1実施例の上部電極の斜視図を示す。
図4】第1実施例の上部電極で用いる被覆部材の正面図を示す。
図5】第1実施例の上部電極で用いる被覆部材の側面図を示す。
図6】第1実施例の側面図を示す。
図7】第1実施例の上部電極で用いるばね部材(第1ばね部材)の斜視図を示す。
図8】第1実施例の上部電極で用いるばね部材(第2ばね部材)の斜視図を示す。
図9】第2実施例の上部電極で用いる被覆部材の正面図を示す。
図10】第2実施例の上部電極で用いる被覆部材の側面図を示す。
図11】第2実施例の側面図を示す。
図12】第2実施例の上部電極で用いるばね部材(第1ばね部材)の斜視図を示す。
図13】第3実施例の上部電極で用いる被覆部材の正面図を示す。
図14】上部電極構造体の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(円筒カットアウト)
円筒カットアウトは、外部電線を介し、配電線と変圧器等の高圧機器との間に接続される。円筒カットアウトは、磁器製の円筒状の本体碍子と、配電線に接続される上部電極(上部電極構造体)と、高圧機器側の配線に接続される下部電極と、上部電極と下部電極の間に配置されるヒューズ筒を備えている。上部電極、下部電極及びヒューズ筒は、本体碍子内に配置されている。円筒カットアウトに過大な電流(規定値以上の電流)が流れると、ヒューズ筒内に設けられている高圧溶断用ヒューズのエレメント(可溶接続線)が溶断し、配電線と高圧機器の間の配電線路が遮断される。なお、高圧溶断用ヒューズのエレメントが溶断した場合、ヒューズ筒内の高圧溶断用ヒューズを交換することによって、配電線と機器を再度接続することができる。
【0009】
なお、円筒カットアウトでは、上部電極が鉛直方向上方、下部電極が鉛直方向下方に配置される。そして、ヒューズ筒は、本体碍子の下方から挿入し、上方に移動させて上部電極及び下部電極に取り付ける。以下の説明では、ヒューズ筒を本体碍子に着脱する際のヒューズ筒の移動方向を軸線方向と称し、軸線方向に直交する方向を径方向と称することがある。なお、軸線方向は、典型的には鉛直方向である。また、以下の説明では、鉛直方向上方を単に上方(あるいは上側)と称し、鉛直方向下方と単に下方(あるいは下側)と称することがある。
【0010】
(上部電極構造体)
上部電極構造体は、上部電極と被覆部材とばね部材を備えていてよい。上部電極は、ヒューズ筒の端部を収容可能である。具体的には、上部電極は、ヒューズ筒の上部導電部を把持し、ヒューズ筒を本体碍子内に固定することができる。上部電極は、金属製であり、軸線に直交する径方向(水平方向)に沿って設けられている基部と、基部の端部から軸線方向に沿って下方に伸びている複数の接触部を備えていてよい。各接触部の径方向の形状は、円弧状であってよい。複数の接触部がヒューズ筒の上部導電部の外周面に接触し、ヒューズ筒を把持してよい。具体的には、各接触部は、ヒューズ筒が上部電極に収容されていない状態では、複数の接触部の内面によって形成される仮想円の径がヒューズ筒の外径よりも小さくなるように構成されていてよい。そして、ヒューズ筒が上部電極に収容される際に各接触部が径方向外側に弾性変形し、各接触部の弾性力によってヒューズ筒が把持されてよい。
【0011】
特定の接触部の周方向端部と他の接触部の周方向端部の間に隙間が設けられていてよい。すなわち、上部電極の外周面に、上下方向に伸びる隙間が設けられていてよい。典型的に、ヒューズ筒の消弧棒には、径方向外側に突出する突起部が設けられている。接触部,接触部間に隙間を設けることにより、ヒューズ筒を上部電極に取り付ける際、消弧棒の突起部が接触部,接触部間の隙間を移動することができる。より具体的には、ヒューズ筒を本体碍子に取り付ける際、消弧棒の突起部は、ヒューズ筒の上部導電部の上端に取り付けられる。そして、消弧棒は、上部導電部内に収納されながら上方へ移動する。また、消弧棒は、ヒューズ筒を取り外す際、上部導電部と共に下方に移動する。そして、消弧棒の突起部が消弧筒の上端部に当接し、消弧棒が位置決めされる。なお、消弧棒と消弧筒の間には、小さな隙間が形成される。その隙間によって、上部電極とヒューズ筒の上部導電部との間に発生するアークが消弧される。
【0012】
各接触部の基部側端部(上側端部)に径方向外側に突出している凸部が設けられていてよい。上述したように、ヒューズ筒が上部電極に収容される際、各接触部は、径方向外側に弾性変形する。各接触部の基部側端部に凸部を設けることにより、各接触部が弾性変形する際、各接触部の上方端(各接触部と基部の角部)に力が加わることが抑制される。各接触部と基部の角部が塑性変形することが抑制され、上部電極の把持力が低下することを抑制することができる。
【0013】
また、各接触部の基部とは反対側の端部(下方端部)に、径方向外側に向けて突出している突出部が設けられていてよい。すなわち、各接触部の下方端部は、複数の接触部の内面によって形成される仮想円の径が大きくなるように斜め下方に向かって広がっていてよい。各接触部の下方端に突出部を設けることにより、ヒューズ筒を上部電極に収容する際、ヒューズ筒の上部電極部を上部電極にスムーズに案内することができる。また、突出部を利用して、後述する被覆部材が上部電極に対して回転することを防止することができる。すなわち、各接触部の下方端部に突出部を設けることにより、上部電極(各接触部)と被覆部材の位置決めを行うことができる。
【0014】
(被覆部材)
被覆部材は、接触部の外面に接触するように上部電極に複数個取り付けられていてよい。各被覆部材の径方向の形状は、円弧状であってよい。被覆部材は、絶縁性を有する樹脂材料で形成されており、例えば、ヒューズ筒に設けられている消弧棒と同じ樹脂材料で形成されていてよい。被覆部材の基部側端部(上方端部)の内面に、凹部が設けられていてよい。また、被覆部材は、各接触部の凸部が各被覆部材の凹部内に位置するように、上部電極に取り付けられていてよい。各接触部の凸部を各被覆部材の凹部内に位置させることにより、上部電極に対して被覆部材の上下方向の移動を規制することができる(上部電極と被覆部材の上下方向の位置決めを行うことができる)。なお、特定の被覆部材の周方向端部と他の被覆部材の周方向端部の間にも、隙間が設けられていてよい。ヒューズ筒を上部電極に取り付ける際、消弧棒の突起部が被覆部材,被覆部材間の隙間を移動することができる。
【0015】
各被覆部材の下方端(基部とは反対側の端面)に窪み部が設けられていてよい。換言すると、各被覆部材の下方端は、周方向両端部分が下方に突出していてよい。そして、各接触部の下方端部に設けられている突出部が、窪み部内に位置していてよい。各接触部の突出部を窪み部内に位置させることにより、上部電極に対して被覆部材が周方向に移動することを規制することができる(上部電極に対して被覆部材が回転することを規制することができる)。上述したように、各接触部の凸部を各被覆部材の凹部内に位置させ、各接触部の突出部を窪み部内に位置させることにより、上部電極に対して被覆部材が上下方向及び周方向に移動することを規制することができる。なお、各被覆部材の下方端部に、下方端に向かうに従って周方向長さが短くなるような切欠き部が設けられていてよい。ヒューズ筒を上部電極に収容する際、消弧棒の突起部を、被覆部材,被覆部材間の隙間にスムーズに案内することができる。
【0016】
各被覆部材の外面に、周方向に沿って伸びる溝部が形成されていてよい。そして、ばね部材(環状ばね)が、溝部内に配置されていてよい。ばね部材は、各被覆部材を上部電極に固定するために用いられる。また、ばね部材は、各被覆部材が径方向外側に塑性変形することを抑制し、ヒューズ筒を上部電極に取り付けた際、上部電極の把持力を補助することができる。すなわち、ばね部材は、ヒューズ筒を上部電極に取り付けたときに、ヒューズ筒を上部電極に取り付ける前と比較して、径が増大するように被覆部材の外面(溝部内)に配置されている。
【0017】
各被覆部材に、複数の溝部を設けてもよい。例えば、各被覆部材の上方と下方に溝部を設けてよい。各被覆部材の上方に設ける溝部は、各被覆部材の内面に形成される凹部の中間部分に対向する位置に設けられてよい。より具体的には、各被覆部材の上方に設ける溝部は、接触部の凸部の軸線方向中央部分に対向していてよい。溝部にばね部材を取り付けたときに、上部電極(接触部)に各被覆部材を確実に固定することができる。また、各被覆部材の下方に設ける溝部は、接触部とヒューズ筒の上部電極部が最もよく接触する位置に対向する位置に設けられていてよい。これにより、上部電極(接触部)からヒューズ筒に加わる把持力を大きくすることができる。
【0018】
なお、ばね部材は、中心に対して一端から他端までの角度が360度未満(いわゆるC型の止め輪)であるタイプであってもよいし、一端から他端までの角度が360度(リングの一部を切断した形態)であるタイプであってもよいし、一端から他端までの角度が360度以上(一端と他端が周方向で重複している形態)であるタイプであってもよい。一端から他端までの角度が360度以上のばね部材の場合、重複部分が溝部の周方向中央部分に位置するように、ばね部材を溝部に取り付けてよい。すなわち、ばね部材の重複部分が被覆部材,被覆部材間の隙間に位置しないように、ばね部材を溝部に取り付けてよい。
【0019】
なお、各被覆部材の外面に磁性部材が取り付けられていてもよい。この場合、特定の磁性部材の周方向端部と他の磁性部材の周方向端部との間に隙間が設けられていてよい。各被覆部材の外面に磁性部材を配置することにより、上部電極に大電流が流れたときに、磁性部材,磁性部材間に吸引力が生じ、各接触部が径方向外側に変形することをさらに抑制することができる。すなわち、各被覆部材の外面に磁性部材を取り付けることにより、上部電極の把持力をさらに上昇させることができる。
【実施例
【0020】
図1を参照し、円筒カットアウト100の概略を説明する。円筒カットアウト100は、配電線路上に設けられ、変圧器等の高圧機器を保護するために用いられる。円筒カットアウト100は、磁器製の本体碍子12と、配電線側に接続される上部電極構造体10と、機器側に接続される下部電極構造体14と、上部電極構造体10と下部電極構造体14を接続している高圧溶断用ヒューズが内部に設けられているヒューズ筒8を備えている。上部電極構造体10は、ボルト6によって上部モールドコーン3内に設けられている連結金具4に固定されている。連結金具4には、上部モールドコーン3の引出線2が接続されている。引出線2は、配電線に接続される。下部電極構造体14は、下部モールドコーン15の引出線16に接続されている。
【0021】
(第1実施例の上部電極構造体)
図2を参照し、上部電極構造体10の概略について説明する。上部電極構造体10内には、ヒューズ筒8の端部が収容される。上部電極構造体10は、金属製の上部電極50と、絶縁性を有する樹脂製の被覆部材30を備えている。上部電極50の上側に、安定金具20及び取付端子24が設けられている。ボルト6の頭部6aが上部電極50内に位置し、ねじ部6bが本体碍子12の貫通孔及び上部電極50に設けられた貫通孔52(図3も参照)を通じて上部電極50の上部に伸びている。ボルト6を連結金具4に固定することにより、上部電極構造体10が本体碍子12内に位置決めされる(図1も参照)。
【0022】
被覆部材30は、上部電極50の外面に取り付けられている。被覆部材30の内面形状は上部電極50の外周面の形状に沿った形状であり、被覆部材30の内面のほぼ全面が上部電極50の外周面に接触している。なお、上部電極50の外周面には凸部56が設けられており、被覆部材30の内周面には凹部31が設けられている。凸部56は、凹部31内に位置している。これにより、上部電極50に対する被覆部材30の上下方向の位置決めがされている。また、上部電極50の内側にコイルばね28が設けられている。コイルばね28は、消弧棒40の上部に接触し、消弧棒40をヒューズ筒8側に押圧している。なお、図2では図示を省略しているが、被覆部材30の外面にはばね部材が取り付けられている。ばね部材については後述する。以下、図3から図6を参照し、各部品の特徴を説明する。
【0023】
図3に示すように、上部電極50は、径方向(水平方向)に広がる板状の基部54と、基部54の端部から下方に伸びる接触部58を備えている。基部54の中心には、ボルト6を通過させるための貫通孔52(図2も参照)が設けられている。上部電極50の接触部58は、周方向の2箇所に分かれて配置されている。上部電極50は、4個の接触部58を備えており、2個の接触部58が1セットとなっている。接触部58の各セットは、上部電極50の中心に対して対称の位置に設けられている。接触部58の基部54側端部に、径方向外側に突出している凸部56が設けられている。各セットの凸部56は一体化している。すなわち、2個の接触部58に対して1個の凸部56が形成されている。上部電極50は、4個の接触部58と2個の凸部56を備えている。なお、凸部56は、接触部58の周方向の一端から他端まで伸びている。各接触部58の下方端部に、斜め下方に向かって広がる突出部60が設けられている。
【0024】
図4から図6に示すように、被覆部材30は、第1部分33と、第1部分33よりも周方向長さが長い第2部分36を備えている。第2部分36は、第1部分33より下方に設けられている。第1部分33の周方向長さは、上部電極50の周方向長さとほぼ等しい。第2部分36の周方向長さは、上部電極50の周方向長さよりも長い。また、第2部分36において、被覆部材30の外面に、周方向に伸びる2個の溝部(第1溝部34,第2溝部38)が設けられている。第1溝部34は第2部分36の上方に設けられており、第2溝部38は第2部分36の下方に設けられている。第1溝部34には第1ばね部材70が取り付けられており、第2溝部38には第2ばね部材80が取り付けられている。ばね部材70,80によって、被覆部材30が上部電極50に固定されている。
【0025】
図7及び図8に示すように、第1ばね部材70は、一端から他端までの角度が360度以上の二重巻の環状ばねである。また、第2ばね部材80は、一端から他端までの角度が360度以上の三重巻の環状ばねである。図7及び図8から明らかなように、ばね部材70,80には、周方向で一端と他端が重複している重複部70a,80aが設けられている。第1ばね部材70は、被覆部材30の上方端部32から下方に滑らせるようにして被覆部材30(第1溝部34)に嵌め込む。一方、第2ばね部材80は、被覆部材30の下方端部42から上方に滑らせるようにして被覆部材30(第2溝部38)に嵌め込む。図4及び図5に示すように、上方端部32は上方端に向かうに従って外径が小さくなり、下方端部42は下方端に向かうに従って外径が小さくなっている。すなわち、上方端部32及び下方端部42には傾斜が設けられている。そのため、ばね部材70,80は、被覆部材30に容易に取り付けることができる。
【0026】
図5及び図6に示すように、被覆部材30の上方端部32は、径方向内側に向けて屈曲している。上方端部32は、被覆部材30の内面に形成されている凹部31の側壁(上側の側壁)を兼ねている。上方端部32は、上部電極50の基部54の表面(上面)に接触している。第1溝部34は、凹部31の軸方向下端部分に対向する位置に設けられている。被覆部材30の下方端部42には、切欠き部44が形成されている。そのため、被覆部材30の下方端部42は、下方端に向かうに従って周方向長さが短くなっている。また、被覆部材30の下方端には、窪み部40が設けられている。図6に示すように、窪み部40内に、接触部58の突出部60が位置している(図2,3も参照)。これにより、上部電極50に対する被覆部材30の周方向の位置決めがされている(被覆部材30が上部電極50に対して回転することが抑制されている)。第2溝部38は、接触部58の下方側で突出部60より上方の表面に対向する位置に設けられている。
【0027】
図6に示すように、被覆部材30の下方部分36では、被覆部材30,30の周方向端部間に、隙間30a、30bが設けられている。上部電極50に被覆部材30及びばね部材70,80を取り付けた状態(ヒューズ筒8が上部電極構造体10に収容されていない状態)では、下部側の隙間30bが上部側の隙間30aよりも小さい。すなわち、ヒューズ筒8が上部電極構造体10に収容されていない状態では、4個の接触部58の内面によって形成される仮想円の径が、上部側より下部側の方が小さい。ヒューズ筒8を上部電極構造体10に挿入すると、ヒューズ筒8の上部電極部8aによって接触部58が径方向外側に弾性変形し、隙間30a、30bのサイズが等しくなる(図2も参照)。すなわち、ヒューズ筒8を上部電極構造体10に挿入すると、接触部58の上部側の変形量と比較して接触部58の下部側は大きく変形する。そのため、接触部58からヒューズ筒8の上部電極部8aに大きな把持力を加えることができる。また、ヒューズ筒8を上部電極構造体10に挿入すると、ばね部材80の変形量は、ばね部材70の変形量よりも大きくなる。その結果、ばね部材80から接触部58に大きな力を加えることができ、接触部58からヒューズ筒8の上部電極部8aに加わる把持力をさらに大きくすることができる。
【0028】
上部電極構造体10では、ばね部材70,80の重複部70a,80aが、隙間30a、30bに位置しないように、ばね部材70,80が被覆部材30に取付けられている。具体的には、ばね部材70,80は、重複部70a,80aが、第1溝部34,第2溝部38の径方向中心に位置するように被覆部材30に取付けられている。重複部70a,80aを第1溝部34,第2溝部38の径方向中心に位置させることにより、ばね部材70,80の変形量が抑制され、上部電極部8aに対する把持力を大きくすることができる。
【0029】
なお、上述したように、接触部58の下方端部に斜め下方に向かって広がる突出部60が設けられている。そのため、ヒューズ筒8の上部電極部8aを上部電極構造体10に下方から取り付ける際、すなわち、ヒューズ筒8を本体碍子12に取り付ける際に、ヒューズ筒8を容易に上部電極50内に挿入することができる。また、被覆部材30の下方端部42に切欠き部44が形成されている。そのため、ヒューズ筒8の消弧棒40に設けられている突起部41が被覆部材30,30間の隙間にスムーズに案内される。ヒューズ筒8を本体碍子12に取り付ける際、消弧棒40の突起部41は、ヒューズ筒8の上部電極部8aの上端に取付けられる。ヒューズ筒8を本体碍子12に取り付ける際、消弧棒40は、上部電極部8a内に収容されながら、上方に移動する。一方、ヒューズ筒8を上部電極構造体10から下方に取り外す際、すなわち、ヒューズ筒8を本体碍子12から取り外す際に、消弧棒40は、上部電極部8aと共に下方に移動する。ヒューズ筒8を本体碍子12から取り外す際、消弧棒40の突起部41は、消弧筒90の上端部に当接して位置決めされている。消弧棒40と消弧筒90の間には、小さな隙間が形成される。その隙間によって、上部電極50とヒューズ筒8の上部電極部8aとの間に発生するアークが消弧される。
【0030】
上部電極構造体10は、被覆部材30及びばね部材70,80を備えていない従来の上部電極と比較して、接触部58の径方向外側への変形をばね部材70,80によって抑制することができる。そのため、上部電極50に大電流が流れ、接触部58が振動しても、接触部58とヒューズ筒8の上部電極部8aの間に隙間が生じることを抑制することができる。接触部58とヒューズ筒8の上部電極部8aの間でアーク放電が発生することが抑制され、ヒューズ筒8の上部電極部8a、接触部58(上部電極構造体10)等が溶融損傷することを抑制することができる。
【0031】
(第2実施例の上部電極構造体)
図9から図12を参照し、上部電極構造体110について説明する。上部電極構造体10aは上部電極構造体10の変形例であり、被覆部材130及び第1ばね部材72の構造が、上部電極構造体10の被覆部材30及び第1ばね部材70と異なる。上部電極構造体110について、上部電極構造体10と同じ構成については上部電極構造体10に付した参照番号と同一の参照番号を付すことにより説明を省略することがある。なお、上部電極構造体110は、上部電極構造体10に代えて、円筒カットアウト100の上部電極構造体として用いることができる。
【0032】
上部電極構造体110では、第1溝部134が第1部分33に設けられている。より具体的には、第1溝部134は、凹部31の軸方向中間部分に対向する位置に設けられている。また、第1溝部134には、図12に示す第1ばね部材72が取り付けられている。第1ばね部材72は、一端から他端までの角度が360度以上の一重巻の環状ばねである。第1ばね部材72には、周方向で一端と他端が重複している重複部72aが設けられている。第1ばね部材72は、被覆部材130の上方端部32から下方に滑らせるようにして第1溝部134に嵌め込む。上部電極構造体110は、上部電極構造体10と比較して、上方端部32から第1溝部134までの距離が短い。そのため、上部電極構造体110は、第1ばね部材72の取付作業を簡単化することができる。
【0033】
なお、上部電極構造体110においても、第1ばね部材72は、重複部72aが隙間30a、30bに位置しないように、被覆部材130に取付けられている。すなわち、第1ばね部材72は、重複部72a,80aが第1溝部134の径方向中心に位置するように被覆部材130に取付けられている。
【0034】
(第3実施例の上部電極構造体)
図13を参照し、上部電極構造体210について説明する。上部電極構造体210は上部電極構造体110の変形例であり、被覆部材130に磁性部材46が取り付けられている点が、上部電極構造体110と異なる。そのため、上部電極構造体210については、被覆部材130の特徴のみを説明する。上部電極構造体210の他の構造については、上部電極構造体110の説明を参照されたい。
【0035】
上部電極構造体210では、被覆部材130の外面(第2部分36の外面)に、金属製の磁性部材46が取り付けられている。被覆部材130の上下方向において、磁性部材46は、第1溝部134と第2溝部38の間に設けられている。磁性部材46の周方向の長さは、被覆部材30の下方部分36の周方向長さと等しい。そのため、磁性部材46,46の周方向端部間には、隙間が形成される(図11を参照)。上部電極構造体210は、上部電極50に大きな電流(例えば、短絡電流)が流れると、磁性部材46に電磁力が生じ、磁性部材46,46間に吸引力が発生する。その結果、接触部58の径方向外側への変形をさらに抑制することができる。なお、磁性部材46の周方向の長さは、被覆部材30の第2部分36の周方向長さと異なっていてもよい。例えば、磁性部材46の周方向の長さは、被覆部材30の下方部分36の周方向長さより長くてもよい。この場合でも、磁性部材46,46の周方向端部間に隙間が設けられていれば、上部電極50に大きな電流が流れたときに、磁性部材46,46間に吸引力を発生させることができる。
【0036】
(上部電極構造体の他の変形例)
上述したように、上部電極構造体10,110,210では、ヒューズ筒8を上部電極50に取り付けていない状態において、被覆部材30,130の内面のほぼ全面が上部電極50(接触部58)の外周面に接触している。しかしながら、ヒューズ筒8を上部電極50に取り付けていない状態では、被覆部材30,130の内面と接触部58の間に隙間が設けられていてもよい。この場合、被覆部材30,130の内面を軸方向に沿うようにし、ヒューズ筒8を上部電極50に取り付けて接触部58が径方向外側に変形したときに、被覆部材30,130の内面のほぼ全面が接触部58の外周面に接触するようにすればよい。
【0037】
上記実施例では、上部電極と被覆部材とばね部材を備える上部電極構造体について説明した。しかしながら、図14に示すように、被覆部材及びばね部材を省略し、上部電極50(接触部58)の外面に直接金属製の磁性部材62を取り付けてもよい。このような形態は、被覆部材を用いる形態の上部電極構造体10,110,210と比較して、被覆部材を省略した分だけ、熱伝導性が向上し、上部電極構造体の熱容量を大きくすることができる。その結果、上部電極に大きな電流が流れた際に、上部電極の温度上昇が抑制され、上部電極の溶融破損を抑制することができる。なお、図14に示す上部電極構造体は、以下のように表現することができる。
【0038】
配電線と高圧機器側配線に接続される円筒カットアウトにおいて、配電線とヒューズ筒の双方に接続させる上部電極構造体であって、
上部電極構造体は、金属製の上部電極と、金属製の磁性部材を備えており、
上部電極は、ヒューズ筒の端部を収容可能であって、ヒューズ筒が移動する軸線に直交する径方向に沿って設けられている基部と、該基部の端部から軸線方向に沿って伸びているとともにヒューズ筒の外周面に接触する複数の接触部と、を備えており、
各接触部は、ヒューズ筒が上部電極に収容されていない状態では、複数の接触部の内面によって形成される仮想円の径がヒューズ筒の外径よりも小さくなるように構成されており、
磁性部材は、接触部の外面に接触するように上部電極に複数個取り付けられており、
特定の磁性部材の周方向端部と他の磁性部材の周方向端部との間に隙間が設けられている、上部電極構造体。
【0039】
上記実施例では、被覆部材の外面に溝部(第1溝部,第2溝部)を設け、溝部にばね部材(第1ばね部材,第2ばね部材)を嵌め込む例について説明した。しかしながら、被覆部材の外面にばね部材を固定(位置決め)することができれば、固定方法は任意である。例えば、被覆部材の外面に突起を形成し、その突起を利用して被覆部材の外面にばね部材を固定(位置決め)してもよい。
【0040】
上記実施例では、隣り合う被覆部材の周方向端部間に隙間30a,30bが設けられており、下部側の隙間30bが上部側の隙間30aよりも小さい例について説明した。しかしながら、隙間30aが隙間30bより小さくてもよいし、隙間30a,30bが同サイズでもよい。あるいは、隣り合う被覆部材の周方向端部は、上下方向の一部で接していてもよい(例えば隙間30bのサイズがゼロ)。
【0041】
上記実施例では、被覆部材の外面の上下方向に、ばね部材を取り付けるための2個の溝部を設ける例について説明した。しかしながら、被覆部材を上部電極50の外面に固定するとともに、上部電極50の接触部58からヒューズ筒8の上部電極部8aに把持力を加えることができれば、被覆部材に設ける溝部の数(ばね部材の数)は適宜変更可能である。例えば、被覆部材の外面に1個の溝部を設けてもよいし、3個以上の溝部を設けてもよい。
【0042】
第1実施例では、被覆部材の上方(第1溝部)に二重巻の環状ばね(第1ばね部材70)を取り付け、被覆部材の下方(第2溝部)に三重巻の環状ばね(第2ばね部材80)を取り付ける例について説明した。また、第2及び第3実施例では、第1溝部に一重巻の環状ばね(第1ばね部材72)を取り付け、第2溝部に三重巻の環状ばね(第2ばね部材80)を取り付ける例について説明した。しかしながら、各溝部に配置するばね部材の巻数は、必要に応じて適宜変更可能である。また、ばね部材は、環状ばねに限定されるものではなく、接触部58(上部電極50)からヒューズ筒8の上部電極部8aに対して把持力を加えられるものであれば、任意のばね部材を用いることができる。なお、上述したように、被覆部材に設ける溝部の数は適宜変更可能であり、溝部の数に応じて、被覆部材に取り付けるばね部材の数も適宜変更可能である。また、絶縁性を有する樹脂製の被覆部材に代えて、金属製の被覆部材を用いてもよい。
【0043】
第3実施例では、第2実施例で用いる被覆部材130の外面に磁性部材46を設ける例について説明した。磁性部材46は、第1実施例で用いる被覆部材30の外面に設けてもよい。この場合、磁性部材46は、被覆部材30の上下方向において、第1溝部34と第2溝部38の間に設ける。
【0044】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0045】
10:上部電極構造体
30:被覆部材
50:上部電極
54:基部
58:接触部
70,80:ばね部材
90:消弧筒
100:円筒カットアウト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14