(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】検査室試料分配システムおよび検査室自動化システム
(51)【国際特許分類】
B65G 54/02 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B65G54/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021189084
(22)【出願日】2021-11-22
【審査請求日】2021-11-22
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ダウン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス マルティン
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136313(JP,A)
【文献】特開2019-020390(JP,A)
【文献】実開平02-065005(JP,U)
【文献】国際公開第2016/116972(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 54/02
G01N 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかの容器キャリア(1)であって、前記容器キャリア(1)それぞれが、磁気的に活性なデバイス(2)を備え、試料容器(3)を搬送するように適合されている、いくつかの容器キャリア(1)と、
空気流を生じさせるように適合されている少なくとも1つのファン(6)と、
互いに隣接して配置可能ないくつかの輸送モジュール(100)であって、
前記容器キャリア(1)を搬送するように適合されている移送面(4)、
前記移送面(4)の下方に固定的に配置された、いくつかの放熱電磁アクチュエータ(5)であって、前記容器キャリア(1)に磁力を印加することによって前記移送面(4)の上部に配置された前記容器キャリア(1)を移動させるように適合されている、いくつかの放熱電磁アクチュエータ(5)、および
前記空気流を、最初に前記移送面(4)の下側に向けて案内し、その後、前記放熱電磁アクチュエータ(5)に向けて案内するように適合されている空気案内要素(7)
をそれぞれ備える、いくつかの輸送モジュール(100)と
を備える、検査室試料分配システム(1000)。
【請求項2】
前記空気案内要素(7)がいくつかの空気案内管(8)を備え、
前記空気案内要素(7)が前記移送面(4)の下方にチャンバ(9)を形成し、前記放熱電磁アクチュエータ(5)が少なくとも部分的に前記チャンバ(9)の外側に配置され、
前記空気案内管(8)が前記空気流を前記チャンバ(9)内に案内し、
前記チャンバ(9)がいくつかの開口部(10)を有し、前記空気流が前記開口部(10)を通って前記放熱電磁アクチュエータ(5)に向かって前記チャンバ(9)から出ることを特徴とする、請求項1に記載の検査室試料分配システム(1000)。
【請求項3】
それぞれの輸送モジュール(100)が、前記移送面(4)の上部に配置された前記容器キャリア(1)の位置を感知する位置センサ(12)を含む第1のプリント回路板(11)を備え、前記第1のプリント回路板(11)が前記移送面(4)の前記下側に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の検査室試料分配システム(1000)。
【請求項4】
それぞれの輸送モジュール(100)が、前記放熱電磁アクチュエータ(5)に駆動電流を供給するための駆動回路(14)を含む第2のプリント回路板(13)を備え、前記第2のプリント回路板(13)が前記第1のプリント回路板(11)から離間して平行に配置され、前記放熱電磁アクチュエータ(5)が前記第1のプリント回路板(11)と前記第2のプリント回路板(13)との間に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の検査室試料分配システム(1000)。
【請求項5】
前記空気案内要素(7)がいくつかの空気案内区画(15)を形成し、前記空気案内区画(15)が前記移送面(4)の下方の前記空気案内管(8)から生じる前記空気流を前記放熱電磁アクチュエータ(5)に向かって下方に、および/または前記輸送モジュール(100)の外側境界に向かって側方に案内するように適合されていることを特徴とする、請求項2に記載の検査室試料分配システム(1000)。
【請求項6】
前記いくつかの空気案内区画(15)が前記チャンバ(9)の内部に形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の検査室試料分配システム(1000)。
【請求項7】
前記いくつかの空気案内区画(15)が前記チャンバ(9)の中心点(17)から前記輸送モジュール(100)の前記外側境界に向かって延在する壁(16)によって境界が定められていることを特徴とする、請求項6に記載の検査室試料分配システム(1000)。
【請求項8】
前記空気案内要素(7)が前記移送面(4)を支持する駆動面支持体(18)を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の検査室試料分配システム(1000)。
【請求項9】
前記第1のプリント回路板(11)が前記駆動面支持体(18)の上部に配置されていることを特徴とする、請求項3を引用する請求項8に記載の検査室試料分配システム(1000)。
【請求項10】
前記駆動面支持体(18)が前記チャンバ(9)の壁を形成することを特徴とする、
請求項2を引用する請求項8または
請求項2を引用する請求項9に記載の検査室試料分配システム(1000)。
【請求項11】
各輸送モジュール(100)がそれぞれの空気流を生じさせるように適合されているファン(6)を備えることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の検査室試料分配システム(1000)。
【請求項12】
いくつかの検査室ステーション(300)と、
請求項1から11のいずれか一項に記載の検査室試料分配システム(1000)であって、前記検査室ステーション(300)間で前記容器キャリア(1)を分配するように適合されている、検査室試料分配システム(1000)と
を備える、検査室自動化システム(2000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査室試料分配システムおよび検査室自動化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の基礎となる検査室試料分配システムは、WO2013/064662A1に開示されている。検査室試料分配システムは、いくつかの容器キャリアを備え、容器キャリアそれぞれが、磁気的に活性なデバイスを含み、試料容器を搬送するように適合されている。検査室試料分配システムは、容器キャリアを搬送するように適合されている移送面をさらに備える。検査室試料分配システムは、移送面の下方に固定的に配置された放熱電磁アクチュエータをさらに備える。電磁アクチュエータは、容器キャリアに磁力を印加することによって、移送面の上部に配置された容器キャリアを移動させるように適合されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、電磁アクチュエータによって生成された熱が容器キャリアに向かって伝達されるのを低減する検査室試料分配システムおよび検査室自動化システムを提供することである。
【0004】
検査室試料分配システムは、いくつかの、例えば1~10000個の容器キャリアを備え、容器キャリアそれぞれが、例えば永久磁石の形態の磁気的に活性なデバイスを含む。容器キャリアは、試料容器を搬送するように適合されており、試料容器には典型的には、分析される試料が収容されている。
【0005】
検査室試料分配システムは、空気流を生じさせるように適合されている少なくとも1つのファンをさらに備える。
【0006】
検査室試料分配システムは、いくつかの、例えば、1~500個の輸送モジュールをさらに備える。輸送モジュールは、共通の移送面を形成するために、互いに隣接して配置可能である。
【0007】
各輸送モジュールは、容器キャリアを搬送または支持するための移送面と、移送面の下方に行列状に固定的に配置された、例えばコイルまたはソレノイドの形態の、いくつかの、例えば1~120個の放熱電磁アクチュエータとを備える。電磁アクチュエータは、容器キャリアに磁力を印加することによって、移送面の上部に配置された容器キャリアを個々の移送経路に沿って移動させるように適合されている。
【0008】
各輸送モジュールは、少なくとも1つのファンによって生成された空気流または空気流の一部を、最初に移送面の下側に向かって、その後、電磁アクチュエータに向かって案内するように適合されている空気案内要素を備える。空気案内要素は、電磁アクチュエータから移送面の下側に向かう空気の逆流が防止されるように形成されてもよい。
【0009】
一実施形態によると、空気案内要素は、いくつかの、例えば8つの空気案内管を備える。空気案内要素は、移送面の下にチャンバを形成し、電磁アクチュエータは、少なくとも部分的にチャンバの外側に配置される。空気案内管は、空気流をチャンバ内に案内する。チャンバは、いくつかの開口部を有し、空気流は、開口部を通って電磁アクチュエータに向かって/電磁アクチュエータに沿ってチャンバを出る。
【0010】
一実施形態によると、それぞれの輸送モジュール100は、移送面の上部に配置された容器キャリアの位置を感知する位置センサを含む第1のプリント回路板を備え、第1のプリント回路板は、移送面の下側に配置されている。
【0011】
一実施形態によると、それぞれの輸送モジュール100は、電磁アクチュエータに駆動電流を供給するための駆動回路を含む第2のプリント回路板を備え、第2のプリント回路板は、第1のプリント回路板から離間して平行に配置され、電磁アクチュエータは、第1のプリント回路板と第2のプリント回路板との間に配置されている。
【0012】
一実施形態によると、空気案内要素は、いくつかの空気案内区画を形成し、空気案内区画は、移送面の下方の空気案内管から生じる空気流を電磁アクチュエータに向かって下方に、および/または輸送モジュールの外側境界に向かって側方に案内するように適合されている。
【0013】
一実施形態によると、いくつかの空気案内区画は、チャンバの内部に形成されている。
【0014】
一実施形態によると、いくつかの空気案内区画は、チャンバの中心点から輸送モジュールの外側境界に向かって延在する壁によって少なくとも部分的に形成されまたは境界が定められている。
【0015】
一実施形態によると、空気案内要素は、移送面を支持する駆動面支持体を含む。
【0016】
第1のプリント回路板は、駆動面支持体の上部に配置されてもよい。
【0017】
駆動面支持体は、チャンバの壁を形成してもよい。
【0018】
一実施形態によると、各輸送モジュールは、それぞれの空気流を生じさせるように適合されているファンを備える。
【0019】
検査室自動化システムは、いくつかの、例えば1~100個の分析前検査室ステーション、分析検査室ステーション、および/または分析後検査室ステーションと、上述の検査室試料分配システムとを備え、検査室試料分配システムは、検査室ステーション間で容器キャリアおよび/または試料容器を分配するように適合されている。
【0020】
本発明によると、冷たい空気が、最初に移送面の下側の方向に案内され、その後、放熱電磁アクチュエータに向かって導かれる。空気案内要素は、移送面の下方の冷たい空気が電磁アクチュエータの周囲の暖かい空気から分離されるように具現化されており、それにより、電磁アクチュエータの周囲の暖かい空気と移送面の下方の冷たい空気との混合が防止される。
【0021】
電磁アクチュエータからの熱は、試料容器内に収容された試料の温度に影響を与える。熱は、移送面を通って容器キャリアに向かって伝達される。熱流には温度勾配が必要であり、試料温度に影響を及ぼす他の主要な熱源が存在しないため、試料温度は、移送面の温度を超えて上昇することはできない。したがって、移送面の温度を制限すること、および移送面を通る暖かな空気流/対流熱伝達を防止または少なくとも制限することは、試料温度を制限するための有効なアプローチである。
【0022】
これは、例えば電磁アクチュエータ間に配置された案内管を通して、冷たい空気を最初に移送面の底部に向けることによって達成される。冷たい空気は、移送面の下方を流れるため、移送面は、電磁アクチュエータから生じる暖かい空気によって加熱されない。移送面の下側を通過した後、空気は、輸送モジュール内の主な熱源である電磁アクチュエータに向かって下方に導かれる。
【0023】
ここで、空気は、加熱されながら電磁アクチュエータを冷却する。加熱された空気の移送面へのリフロー、したがって冷たい空気との再混合が設計によって抑制されているため、加熱された空気の温度は、移送面の温度に大きな影響を与えることなく、許容される試料温度よりもはるかに高くなる可能性がある。この目的のために、空気案内要素は、空気分離構造として設計されている。この空気分離構造には、小さな開口部しかなく、その結果、移送面の下方から下向きに、上向きに逆流することなく、電磁アクチュエータに向かって冷たい空気の規定された空気流が生じる。
【0024】
本発明の空気冷却は、熱CFD(計算流体力学)シミュレーションおよび試験の両方によって調査された。
【0025】
熱CFD分析は、十分な冷却のために必要とされる空気流量が、8つの空気案内管および空気分離構造に基づく空気流設計によって65%も低減され得ることを示した。この改善は、ダストフィルタの交換間隔を10倍増加させ、これはシステムのメンテナンスコストに非常に強い影響を与える。あるいは、サイドパネル上のダストフィルタのサイズ、したがってサイドパネル自体のサイズを小さくし、システムの外観を改善することができる。さらに、本発明は、音圧に関して20dB(A)を超えて騒音放出を低減する。
【0026】
次に、本発明を図面に関して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の輸送モジュールの概略断面図である。
【
図2】本発明による輸送モジュールの斜視図である。
【
図3】本発明の検査室自動化システムの高度な概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の輸送モジュール100の概略断面図を示す。輸送モジュール100は、容器キャリア1を搬送するように適合されている移送面4を備える。説明を容易にするために、1つの例示的な容器キャリア1のみが示されている。
【0029】
容器キャリア1は、それぞれ永久磁石2の形態の磁気的に活性なデバイスを備え、典型的には分析される試料を含む試料容器3を搬送するように適合されている。
【0030】
輸送モジュール100は、移送面4の下方に行列状に固定的に配置されたコイル5の形態のいくつかの、例えば64個の放熱電磁アクチュエータを含む。
【0031】
電磁アクチュエータ5は、容器キャリア1に磁力を印加することによって移送面4の上部に配置された容器キャリア1を移動させる。
【0032】
輸送モジュール100は、空気流を生じさせるように適合されているファン6を備える。輸送モジュール100は、最初に移送面4の下側に向かって、その後、電磁アクチュエータ5に向かって空気流を案内するように適合されている空気案内要素7を備える。
【0033】
空気案内要素7は、移送面4の下にチャンバ9を形成し、電磁アクチュエータ5の主要部分は、チャンバ9の外側に配置されている。空気案内要素7は、空気流をチャンバ9内に案内する8つの空気案内管8を有する。チャンバ9は、いくつかの開口部10を有し、空気流は、開口部10を通って電磁アクチュエータ5に向かってチャンバ9から出る。
【0034】
輸送モジュール100は、移送面4の上部に配置された容器キャリア1の位置を感知する位置センサ12を含む第1のプリント回路板11を備え、第1のプリント回路板11は、移送面4の下側に配置されている。
【0035】
輸送モジュール100は、電磁アクチュエータ5に駆動電流を供給するための駆動回路14を含む第2のプリント回路板13を備え、第2のプリント回路板13は、第1のプリント回路板11から離間して平行に配置され、電磁アクチュエータ5は、第1のプリント回路板11と第2のプリント回路板13との間に配置されている。
【0036】
次に、
図1の輸送モジュール100の斜視図を示す
図2を参照すると、空気案内要素7は、チャンバ9の内部に配置された8つの空気案内区画15を形成し、空気案内区画15は、移送面4の下方の対応する空気案内管8から生じる空気流を輸送モジュール100の外側境界に向かって案内する。空気案内区画15は、チャンバ9の中心点17から輸送モジュール100の外側境界に向かって延在する壁16によって境界が定められている。
【0037】
空気案内要素7は、その外側境界に、空気案内管8から輸送モジュール100の境界領域に横向きに流れる空気に下向きの出口経路を提供する開口部19を備える。境界領域に開口部19がなければ、側面に向かう空気流は十分ではない。その結果、輸送モジュール100の外側領域の移送面4は、中央領域と比較してより暖かくなる。
【0038】
再び
図1を参照すると、空気案内要素7は、移送面4を支持する駆動面支持体18を備える。第1のプリント回路板11は、駆動面支持体18の上部に配置されている。駆動面支持体18は、チャンバ9の壁を形成する。
【0039】
図3は、本発明の検査室自動化システム2000の高度な概略ブロック図を示す。検査室自動化システム2000は、検査室ステーション300と、共通の移送面を形成するように互いに隣接して配置された
図1および
図2に示されるようないくつかの輸送モジュール100によって形成される検査室試料分配システム1000とを備える。検査室試料分配システム1000は、検査室ステーション300間で容器キャリア1を分配する。